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特許7132229電極が隔離された廃水処理用の電気化学セルのスタック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】電極が隔離された廃水処理用の電気化学セルのスタック
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20060101AFI20220830BHJP
   C25B 9/01 20210101ALI20220830BHJP
   C25B 9/19 20210101ALI20220830BHJP
【FI】
C02F1/461 101A
C25B9/01
C25B9/19
C02F1/461 101C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019542670
(86)(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 US2018020269
(87)【国際公開番号】W WO2018160727
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】62/465,448
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513305179
【氏名又は名称】アクシン ウォーター テクノロジーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Axine Water Technologies Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ハーヴィー,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ウッド,ブレンダン
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤサンカール、バラスラム
(72)【発明者】
【氏名】ベルマール-デイヴィス,アレクサンダー
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-507354(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0079510(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0110462(KR,A)
【文献】特開2012-217883(JP,A)
【文献】特開昭54-15361(JP,A)
【文献】特開平8-155463(JP,A)
【文献】特表2016-506288(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0014758(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46 - 1/48
C25B 1/00 - 9/77
13/00 - 15/08
A61L 2/00 - 2/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの電気化学セルを有する1以上の繰り返しユニットを備える廃水処理用の電気化学セルのスタックにおいて、各電気化学セルが:
a.固体高分子電解質膜と;
b.前記固体高分子電解質膜の第1の側に隣接するアノード触媒層と、当該第1の側とは反対側の固体高分子電解質膜の第2の側に隣接するカソード触媒層と、
c.前記アノード触媒層に隣接する第1の開孔メッシュと、前記カソード触媒層に隣接する第2の開孔メッシュと、
d.前記第1の開孔メッシュに隣接する第1の圧縮フレームと、前記第2の開孔メッシュに隣接する第2の圧縮フレームとであって、各圧縮フレームは、フレームの周縁部で区切られた領域内に広がる圧縮アームを有し、これらの圧縮アームは接続部位で互いに接続されている、圧縮フレームと、
e.前記接続部位において前記第1および第2の圧縮フレームの圧縮アームに設けられた穴を通り、前記第1および第2の開孔メッシュに設けられた穴を通り、前記固体高分子電解質膜および前記アノード触媒層とカソード触媒層を貫通して突出する留め具と、
を備え、前記スタックが廃水またはカソード溶液を含む反応槽に浸漬されており、前記スタックはさらに、
-前記繰り返しユニット内の第1の電気化学セルを前記繰り返しユニット内の第2の電気化学セルから距離を置いて保持し、前記第1の電気化学セルのアノード側が前記第2の電気化学セルのアノード側に面するか、前記第1の電気化学セルのカソード側が前記第2の電気化学セルのカソード側に面するように、前記スタック内の電気化学セルを接続する1以上のロッドと、
-前記繰り返しユニットの2つの電気化学セルの圧縮フレーム間に配置されたカバーであって、前記繰り返しユニットの2つの電気化学セル間の距離に及ぶエンクロージャを形成し、それによって前記反応槽内の溶液から、前記繰り返しユニットの2つの電気化学セルのアノード触媒層またはカソード触媒層を隔離するカバーと、
を備えることを特徴とするスタック。
【請求項2】
前記カバーが、アノード溶液、廃水またはカソード溶液を前記カバーによって形成された前記エンクロージャに供給するための入口パイプと、前記アノード触媒層またはカソード触媒層において形成される反応生成物を前記カバーによって形成された前記エンクロージャから除去するための出口パイプと、前記カバーによって形成されたエンクロージャからガスを除去するための通気管と、互いに反対側の第1の側部および第2の側部とを備え、各側部には、前記アノード溶液、廃水またはカソード溶液の、前記繰り返しユニットの2つの電気化学セルのアノード触媒層またはそれぞれのカソード触媒層へアクセスできるようにする開口が設けられている、請求項に記載のスタック。
【請求項3】
前記カバーの各側部と、その側部に隣接する前記圧縮フレームとの間にシールをさらに備える、請求項に記載のスタック。
【請求項4】
前記固体高分子電解質膜が陰イオン固体高分子電解質である、請求項に記載のスタック。
【請求項5】
前記固体高分子電解質膜が陽イオン固体高分子電解質である、請求項に記載のスタック。
【請求項6】
前記カバーが非導電性材料でなる、請求項に記載のスタック。
【請求項7】
請求項に記載の電気化学セルのスタックを2つ以上備える廃水処理システムであって、前記スタックが廃水またはカソード溶液を含む反応槽に浸漬される、システム。
【請求項8】
前記スタックが直列または並列に接続されている、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
廃水処理方法において:
a.処理される廃水を含む反応槽に浸漬される請求項に記載の少なくとも1つの繰り返しユニットを提供するステップと、
b.前記繰り返しユニットの第1の電気化学セルの第2の圧縮フレームおよび繰り返しユニットの第2の電気化学セルの第2の圧縮フレームに取り付けられたカバーによって形成されたエンクロージャに、処理されるカソード溶液を供給するステップと、
c.前記第1および第2の電気化学セルに電圧を供給するステップと、
d.前記電気化学セルをある電流密度で動作させ、それにより廃水中の汚染物質を分解するステップと、を含む方法。
【請求項10】
廃水処理方法において:
a.処理される廃水を含む反応槽に浸漬される請求項に記載の少なくとも1つの繰り返しユニットを提供するステップと、
b.前記繰り返しユニットの第1の電気化学セルの第1の圧縮フレームと前記繰り返しユニットの第2の電気化学セルの第1の圧縮フレームに取り付けられたカバーによって形成されるエンクロージャにアノード溶液を供給するステップと、
c.前記電気化学セルに電圧を供給するステップと、
d.前記電気化学セルをある電流密度で動作させ、それにより廃水中の汚染物質を分解するステップと、を含む方法。
【請求項11】
廃水処理方法において:
a.カソード溶液を含む反応槽に浸漬される請求項に記載の少なくとも1つの繰り返しユニットを提供するステップと、
b.前記繰り返しユニットの第1の電気化学セルの第1の圧縮フレームと前記繰り返しユニットの第2の電気化学セルの第1の圧縮フレームとの間に取り付けられたカバーによって形成されるエンクロージャに廃水を供給するステップと、
c.前記電気化学セルに電圧を供給するステップと、
d.前記電気化学セルをある電流密度で動作させ、それにより廃水中の汚染物質を分解するステップと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、廃水処理用の電気化学セルのスタックに関し、特に、反応槽に浸漬された少なくとも1つの電気化学セルを備え、電気化学セルの1つの電極が、廃水や反応槽内の他の溶液から隔離するカバーで保護されている、有機および無機汚染物質を除去するための電気化学セルのスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]新しい廃水処理ソリューション、特に、費用対効果が高く、持続可能で、二次汚染を発生せず、水質基準に準拠し、運用および保守の要件が最小限である水処理システムの需要が高まっている。廃水処理の好ましいアプローチは、例えば電気化学的酸化による非化学的酸化技術によるものである。電気化学的酸化は、残留性有機汚染物質、ダイオキシン、窒素種(アンモニアなど)、医薬品、病原体、微生物、重要汚染物質および農薬の大部分など、広範囲の汚染物質を除去するのに効果的である。
【0003】
[0003]廃水処理の直接的および間接的な電気化学酸化のために、フロースルー平行プレート、分割チャンバ、充填層電極、積層ディスク、同心円筒、移動層電極、フィルタプレスを含む様々なセル構成が開発されている。
【0004】
[0004]廃水処理用の電解セルの1つの構成は、例えば、出願人の特許公開WO2012167375に記載されているような固体高分子電解質(SPE)を使用する。このシステムは、カソードガス拡散層およびカソード触媒層を備えたカソードと、アノード拡散層およびアノード触媒層を備えたアノードと、アノード層とカソード層を分離する固体高分子膜電解質を備えた電解セルを備える。廃水は、アノード流体送達層の隣に配置されたアノードフローフィールドプレートに設けられたフローフィールドチャネルを介して誘導することにより、アノード流体送達層との間で均一に送達される。廃水の電気化学的処理中に生成された水素ガスは、カソードから回収され、カソード流体送達層の隣に配置されたフローフィールドプレートに設けられたフローフィールドチャネルを介して電解槽の外に導かれる。このシステムは、複数の電解セルをスタックで、直列および/または並列配置で構成することができ、陰極液または他の支持電解質なしで動作可能である。
【0005】
[0005]出願人はさらに、出願人の特許出願WO2017123969に開示されているシステムを開発しており、ここでは電気化学セルのスタックが、処理される廃水を含む反応槽に浸漬され、各電気化学セルは固体高分子電解質(SPE)膜と、アノードおよびカソード触媒層とを備え、各触媒層は固体高分子電解質膜の片側に隣接し、開孔メッシュを備え、各開孔メッシュは触媒層に隣接している。システムは圧縮フレームをさらに備え、各フレームは、開孔メッシュに隣接し、その周縁部で区切られた領域内に広がる圧縮アームを有し、圧縮アームは接続部位で互いに接続されている。このシステムはさらに、接続部位で圧縮フレームのアームに設けられた穴を通り、開孔メッシュに設けられた穴を通り、触媒層付き膜を通って、固体高分子電解質膜、触媒層、および2つの圧縮フレーム間の開孔メッシュを圧縮する留め具を備える。このシステムは、フローフィールドプレートとランダムで不均一な多孔質媒体(ガス拡散層)の除去により、運用コストが低くより高い汚染物質除去率を達成することが実証されている。このシステムは低い電圧動作とエネルギー消費を提供し、様々な排水流量で動作することができる。
【0006】
[0006]出願人の同時係属中の特許出願に記載されているような、処理される廃水にさらされるカソードおよびアノード触媒層の両方を有する反応槽に電気化学セルのスタックが浸漬されるシステムでは、廃水の酸化中にアノードで形成される中間反応物がカソード触媒を汚染する可能性がある。さらに、アノード側で酸化され、重要汚染物質は実質的に除去されているが、酸化プロセスの中間反応物を潜在的に含む可能性がある廃水は、カソード触媒と接触する可能性があり、中間反応物を減らすことができるため、アノード側で生じる洗浄酸化プロセスが逆となる。さらに、場合によっては、例えばアンモニアを含む廃水の処理の場合、その場での次亜塩素酸塩の形成を誘発し、汚染水の間接酸化を完了するために、反応槽に塩化ナトリウム(NaCl)が添加される。これらの場合、塩化ナトリウムの一部は反応槽内の処理水に残る可能性があり、処理水を処理水回収タンクに移送する出口配管を通じて槽から廃棄されることがある。塩化ナトリウムは高い導電性を呈するため、場合によっては、処理システムの下流の配管を腐食させるリスクがある。
【0007】
[0007]したがって、電気化学セルのスタックが反応槽に浸漬されるシステムのパフォーマンスは、反応槽内のバルク溶液からアノードまたはカソードのいずれかを隔離することによってさらに改善することができる。本発明は、本書に開示されるいくつかの利点を提供する要望に対処するものである。
【発明の概要】
【0008】
[0008]本発明は、少なくとも1つの電気化学セルを含む廃水処理用の電気化学セルのスタックを記載するものであり、電気化学セルは、固体高分子電解質膜と、当該固体高分子電解質膜の第1の側に隣接するアノード触媒層と、前記固体高分子電解質膜の第1の側とは反対側の第2の側に隣接するカソード触媒層とを備える。電気化学セルはさらに、アノード触媒層に隣接する第1の開孔メッシュおよびカソード触媒層に隣接する第2の開孔メッシュと、アノード触媒層に隣接する第1の開孔メッシュに隣接する第1の圧縮フレームおよびカソード触媒層に隣接する第2の開孔メッシュに隣接する第2の圧縮フレームとを備え、各圧縮フレームは、フレームの周縁部で区切られた領域内に広がる圧縮アームを有し、圧縮アームは、接続サイトにおいて互いに接続されている。留め具が、接続部位において第1および第2の圧縮フレームの圧縮アームに設けられた穴を出て、第1および第2の開孔メッシュに設けられた穴を出て、固体高分子電解質膜、アノードおよびカソード触媒層を貫通する。留め具と圧縮フレームは、固体高分子電解質膜、触媒層、および2つの圧縮フレーム間の開孔メッシュを圧縮する力を提供する。セルのアノード触媒層側に配置された第1の圧縮フレームまたはセルのカソード触媒層側に配置された第2の圧縮フレームにカバーが取り付けられており、スタックが反応槽内に浸漬されるとき、アノードまたはカソード触媒層を反応槽内の溶液から隔離することによりそれらを保護するエンクロージャを形成する。
【0009】
[0009]本発明のこの第1の実施形態では、カバーの片側に、スタック内の電気化学セルのアノードまたはそれぞれカソード触媒層への、廃水、アノード溶液またはカソード溶液のアクセスを可能にする開口が設けられている。カバーは、カバーによって形成されるエンクロージャに廃水、アノード溶液またはカソード溶液を供給するための入口パイプと、アノード触媒またはカソード触媒で形成される反応生成物を、カバーによって形成されたエンクロージャから除去するための出口パイプと、カバーによって形成されたエンクロージャからガスを除去するための通気パイプとを備える。
【0010】
[0010]スタックはさらに、開口部が設けられたカバーの面とその面の隣の圧縮フレームとの間にシールを含む。
【0011】
[0011]カバーは非導電性材料でなる。
【0012】
[0012]スタックは、隣接する電気化学セルからある距離でスタック内の電気化学セルを保持する1以上のロッドを介して接続された複数の電気化学セルを含む。
【0013】
[0013]本発明の別の実施形態では、電気化学セルのスタックは、2つの電気化学セルを有する1以上の繰り返しユニットを備え、ここでは各電気化学セルが固体高分子電解質膜と、固体高分子電解質膜の第1の側面に隣接するアノード触媒層と、固体高分子電解質膜の第1の側の反対側の第2の側に隣接するカソード触媒層とを備える。各電気化学セルは、アノード触媒層に隣接する第1の開孔メッシュおよびカソード触媒層に隣接する第2の開孔メッシュと、第1の開孔メッシュに隣接する第1の圧縮フレームおよび第2の開孔メッシュに隣接する第2の圧縮フレームとを備え、各圧縮フレームは、フレームの周縁部で区切られた領域内に広がる圧縮アームを有し、圧縮アームは接続部位で互いに接続されている。留め具が、接続部位の第1および第2の圧縮フレームの圧縮アームに設けられた穴を通り、第1および第2の開孔メッシュに設けられた穴を通り、固体高分子電解質膜およびアノードおよびカソード触媒層を貫通し、圧縮フレームとともに、電気化学セルの構成要素の圧縮に必要な力を提供する。スタックはさらに、第1の電気化学セルのアノード側が第2の電気化学セルのアノード側に面するか、第1の電気化学セルのカソード側が第2の電気化学セルのカソード側に面するように、スタック内の電気化学セルを接続し、繰り返しユニット内の第1の電気化学セルを繰り返しユニット内の第2の電気化学セルから距離を置いて保持するための1以上のロッドを備える。
【0014】
[0014]この実施形態では、繰り返しユニットの2つの隣接する電気化学セルの圧縮フレームの間にカバーが配置され、2つの隣接するセル間の距離に及ぶエンクロージャを形成して、それによって繰り返しユニットの2つの隣接する電気化学セルのアノード触媒層またはカソード触媒層を反応槽内の溶液から隔離する。
【0015】
[0015]一実施形態において、スタックの繰り返しユニット内の電気化学セルは、繰り返しユニットの第1の電気化学セルのカソード触媒層の隣の開メッシュに隣接する圧縮フレームが、スタック内の繰り返しユニットの第1の電気化学セルに隣接している繰り返しユニットの第2の電気化学セルのカソード触媒層に隣接する開メッシュに隣接する圧縮フレームに面するように配置される。。
【0016】
[0016]この実施形態において、カバーは、繰り返しユニットの隣接する電気化学セルの圧縮フレームの間に配置され、カバーは、カバーによって形成されるエンクロージャにカソード溶液を供給するための入口パイプと、反応生成物を除去するための出口パイプと、カバーによって形成されたエンクロージャからガスを除去するための通気パイプと、それぞれ2つの隣接するセルのカソード触媒層へのカソード溶液のアクセスを可能にする開口が設けられた、互いに反対側の第1の側および第2の側とを有する。
【0017】
[0017]別の実施形態において、スタック内の電気化学セルは、繰り返しユニットの第1の電気化学セルのアノード触媒層の隣の開メッシュに隣接する圧縮フレームが、スタック内の繰り返しユニットの第1の電気化学セルに隣接する、繰り返しユニットの第2の電気化学セルのアノード触媒層の隣の開メッシュに隣接する圧縮フレームに面するように配置される。
【0018】
[0018]この実施形態において、カバーは、アノード触媒の隣に、繰り返しユニット内の第1および第2の電気化学セルの圧縮フレームの間に配置され、カバーは、廃水またはアノード溶液をカバーによって形成されるエンクロージャ内に供給するための入口パイプと、アノード触媒層に形成された反応生成物をカバーによって形成されたエンクロージャから除去するための出口パイプと、カバーによって形成されたエンクロージャからガスを除去するための通気パイプと、それぞれ繰り返しユニットの2つの隣接するセルのカソード触媒層への廃液またはアノード溶液のアクセスを可能にする開口が設けられた、互いに反対側の第1の側および第2の側とを有する。
【0019】
[0019]それぞれ開口を有する2つの対向する側が設けられた実施形態では、カバーの各側とその側の隣の圧縮フレームとの間にシールが配置される。
【0020】
[0020]提示されたすべての実施形態において、固体高分子電解質膜は、陰イオン固体高分子電解質または陽イオン固体高分子電解質であり得、カバーは非導電性材料でできている。
【0021】
[0021]本発明はまた、本書記載の電気化学セルの少なくとも1つのスタックを含む廃水処理システムに関し、スタックは廃水またはカソード溶液を含む反応槽に浸漬される。スタックは、直列または並列に接続することができる。
【0022】
[0022]また、廃水処理の方法が記載されており、この方法は:
a.電気化学セルの少なくとも1つのスタックであって、アノード側のスタックの少なくとも1つの電気化学セルの圧縮フレームに取り付けられたカバーを備え、カバーは電気化学セルのアノード触媒層側に面する開口を有する側を有し、処理される廃水を含む反応槽に浸漬されるスタックを提供するステップと、
b.カバーと圧縮フレームによって形成されたエンクロージャにアノード溶液を供給するステップと、
c.電気化学セルに電圧を供給するステップと、
d.電気化学セルをある電流密度で動作させ、それによって廃水中の汚染物質を分解するステップとを含む。
【0023】
[0023]また、廃水処理の方法が記載されており、この方法は:
a.電気化学セルの少なくとも1つのスタックであって、アノード側のスタックの少なくとも1つの電気化学セルの圧縮フレームに取り付けられたカバーを備え、カバーは電気化学セルのアノード触媒層側に面する開口を有する側を有し、カソード溶液を含む反応槽に浸漬されるスタックを提供するステップと、
b.カバーと圧縮フレームで形成されたエンクロージャに、処理される廃水を供給するステップと、
c.電気化学セルに電圧を供給するステップと、
d.電気化学セルをある電流密度で動作させ、それによって廃水中の汚染物質を分解するステップとを含む。
【0024】
[0024]本発明の別の実施形態による廃水処理の別の方法は:
a.電気化学セルの少なくとも1つのスタックであって、カソード側のスタックの少なくとも1つの電気化学セルの圧縮フレームに取り付けられたカバーを備え、カバーは電気化学セルのカソード触媒層側に面する開口を有する側を有し、処理される廃水を含む反応槽に浸漬されるスタックを提供するステップと、
b.圧縮フレームに取り付けられたカバーで形成されたエンクロージャにカソード溶液を供給するステップと、
c.電気化学セルに電圧を提供するステップと、
d.電気化学セルをある電流密度で動作させ、それにより廃水中の汚染物質を分解するステップとを含む。
【0025】
[0025]廃水処理の別の方法が記載されており:この方法は、
a.2つの電気化学セルと、繰り返しユニットの2つの隣接する電気化学セルの圧縮フレーム間に配置されたカバーとを有する少なくとも1つの繰り返しユニットを提供するステップであって、カバーは、その2つの対向する側のそれぞれに開口を有し、各開口は、2つの隣接するセルのうちの1つのカソード触媒層に面し、スタックは、処理される廃水を含む反応槽に浸漬される、ステップと、
b.カバーと2つの隣接するセルの圧縮フレームとによって形成されるエンクロージャにカソード溶液を供給するステップと、
c.繰り返しユニットの電気化学セルに電圧を提供するステップと、
d.電気化学セルをある電流密度で動作させ、それにより廃水中の汚染物質を分解するステップとを含む。
【0026】
[0026]廃水処理の方法が開示されており、
a.2つの電気化学セルと、繰り返しユニットの2つの隣接する電気化学セルの圧縮フレーム間に配置されたカバーとを有する少なくとも1つの繰り返しユニットを提供するステップであって、カバーは、その2つの対向する側のそれぞれに開口を有し、各開口は、2つの隣接するセルのうちの1つのアノード触媒層に面し、スタックは、処理される廃水を含む反応槽に浸漬される、ステップと、
b.カバーと2つの隣接するセルの圧縮フレームとによって形成されるエンクロージャにアノード溶液を供給するステップと、
c.繰り返しユニットの電気化学セルに電圧を提供するステップと、
d.電気化学セルをある電流密度で動作させ、それにより廃水中の汚染物質を分解するステップとを含む。
【0027】
[0027]廃水処理の方法が開示されており、
a.2つの電気化学セルと、繰り返しユニットの2つの隣接する電気化学セルの圧縮フレーム間に配置されたカバーとを有する少なくとも1つの繰り返しユニットを提供するステップであって、カバーは、その2つの対向する側のそれぞれに開口を有し、各開口は、2つの隣接するセルのうちの1つのアノード触媒層に面し、スタックは、カソード溶液を含む反応槽に浸漬される、ステップと、
b.カバーと繰り返しユニットの2つの隣接するセルの2つの圧縮フレームによって形成されるエンクロージャに廃水を供給するステップと、
c.電気化学セルに電圧を供給するステップと、
d.電気化学セルをある電流密度で動作させ、それにより廃水中の汚染物質を分解するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
[0028]図面は、本発明の特定の好ましい実施形態を示しているが、決して本発明の精神または範囲を制限するものと見なされるべきではない。
図1】[0029]図1は、本システムで使用される廃水処理用の電気化学セルの分解図を示す。
図2】[0030]図2は、本システムによる、スタック内の2つの隣接するセルのカソード間に配置されたカバーを含む電気化学セルのスタックの概略図を示す。
図3】[0031]図3は、図2に示す反応槽と電気化学セルのスタックとを含む廃水処理用モジュールの分解図を示す。
図4】[0032]図4は、本発明の第1の実施形態による電気化学セルのスタックの概略図を示す。
図5】[0033]図5は、本発明による2つの隣接するセルの間に配置できるカバーの分解図を示している。
図6】[0034]図6は、本発明による、反応槽内の廃水に浸漬されたスタック内の2つの隣接するセルのアノード間に配置されたカバーを含む電気化学セルのスタックの概略図を示す。
図7】[0035]図7は、反応槽内のカソード溶液に浸漬されたスタック内の2つの隣接するセルのアノード間に配置されたカバーを含む電気化学セルのスタックの概略図であり、廃水がカバーと2つの隣接するセルとによって形成されるエンクロージャを通して循環されている。
図8】[0036]図8は、スタック内の各セルのカソード側に配置されたカバーを有する電気化学セルのスタックの概略図を示す。
図9】[0037]図9は、図8に示すスタック内の電気化学セルの1つに取り付けることができるカバーの分解図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[0038]本明細書で使用される特定の用語は、以下に提供される定義に従って解釈されることを意図している。さらに、「a」や「comprises」などの用語は、オープンエンドと解釈される。さらに、本書で引用するすべての米国特許公報や他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれることを意図している。
【0030】
[0039]本書において、SPEは固体高分子電解質の略であり、Nafion(商標名)などの任意の適切なイオン伝導イオノマー(陰イオンまたは陽イオン、有機または無機形態のいずれか)とすることができる。したがって、SPE電気化学セルは、電気エネルギーが供給されると、所望の電気化学反応(セルのアノードに正の電圧が印加される)を生じさせる電解質としてのSPEを含む。
【0031】
[0040]本システムで使用される廃水処理用の例示的な電気化学セルが、図1の分解図に示されている。電気化学セル100は、触媒層付き膜102(CCM)を備え、これは、その両側のそれぞれに触媒層106でコーティングされた固体重合体電解質膜104からなる。膜の第1の側の1つの触媒層106のみが図1に示されており、例えば、これはアノード触媒層であり得るが、当業者は膜の反対側も、本例ではアノード触媒層と実質的に同じ面積を有するカソード触媒層でコーティングされていることを容易に理解するであろう。これに関連して、本開示では、電気化学セルのアノード活性領域は、アノード側の触媒層でコーティングされた膜(または、代替実施形態で以下で詳述する開孔メッシュ)の領域として定義され、カソード活性領域は、カソード側の触媒層でコーティングされた膜(または開孔メッシュ)の領域として定義される。図示の実施形態では、固体高分子電解質膜104には、以下で詳述するように、電気化学セルの組み立て中に膜を通る留め具122の貫通を可能にする穴105が設けられている。別の実施形態では、固体高分子電解質膜104には事前に穴が設けられず、この場合、留め具は電気化学セルの組み立てプロセス中に膜に貫通される。電気化学セルは、CCMの各側の触媒層付き膜102の隣に配置された開孔メッシュ108および110と、開孔メッシュ108とそれぞれ110の隣にそれぞれ配置された圧縮フレーム112および114をさらに含む。開孔メッシュ108および110は、当該メッシュに比較的高い多孔性を与える開孔が設けられたメッシュであり、電気化学セルの組み立て中に留め具122が貫通可能な穴116も設けられている。開孔メッシュ108および110のそれぞれの面積は、膜の触媒被覆領域である電気化学セルのアノード活性領域およびそれぞれカソード活性領域と実質的に同じである。CCM(102)の周辺の領域128は、その周囲に沿って、触媒でコーティングされておらず、電気絶縁性を有する。
【0032】
[0041]図示された実施例では四辺を有する長方形の形状を有する圧縮フレーム112、114は、それぞれ、接続部位120で互いに接続され、圧縮フレームの四辺の間の領域内に広がる圧縮アーム118を備える。圧縮フレームには接続部位120に穴119が設けられており、電気化学セルの組み立て時に留め具122の貫通を可能にしている。接続部位は、各圧縮フレームの四辺の間の領域内に分散されている。圧縮フレーム112および114には、電源、一般的にはDC電源との電気接続を行うためのリード130が設けられている。当業者は、圧縮フレーム112および114は、本図に示される長方形とは異なる形状を有することができ、圧縮アーム118および接続部位120は、各圧縮フレームにおいてその周縁部で区切られた領域内に分散されることを理解するであろう。長方形の圧縮フレームの場合、フレームの周縁部はその側縁によって画定される。
【0033】
[0042]図1~3において、留め具122は、必要な圧縮力を確保するためにナット126と協働するねじボルトとして示されているが、当業者は、リベット等の他の留め具を使用して圧縮フレームから開孔メッシュやCCMに圧縮を提供できること、およびそのような留め具は、必要な圧縮力を確保するためにナット126などの追加要素を必要としないことを容易に理解するであろう。
【0034】
[0043]SPE膜104は、電極間のギャップ(膜のアノード側とカソード側の触媒層)を減少させる。本発明では、触媒層を支持するガス拡散層はなく、電極は、本実施形態では、膜の片側にそれぞれ堆積されたアノードおよびカソード触媒層106のみを含み、これも運用コストの低減に寄与する。開孔メッシュ108、110は、局所的な電流回収を提供し、それらの比較的高い多孔性により、触媒層の反応部位へ/からの汚染水および処理水の容易なアクセスを実現し、触媒層の隣で形成されるガスの除去を容易にする。圧縮フレーム112および114は、開孔メッシュ108および110の周囲電流収集を可能にし、それらの圧縮アーム118は、主に圧縮アームとそれぞれの接続部位の分布によって、膜の開孔メッシュおよびアノードおよびそれぞれカソードの活性領域全体にわたる触媒層の実質的に均一な圧縮を達成する。圧縮フレーム112および114は、例えば、0.5~5mmの厚さを有する導電性金属またはセラミックでできている。当業者は、接続部位の数および圧縮フレームの縦横比を変更し、開孔メッシュおよびCCMの実質的に均一な圧縮を可能にし、市場で入手可能な異なるサイズの固体高分子膜を利用できることを理解するであろう。
【0035】
[0044]開孔メッシュ108および110は、上記目的のために比較的高い多孔性を有する。本発明の文脈において、多孔性とは、開孔面積とメッシュの体積との間の比として定義される。利用可能なメッシュの種類には、メッシュの厚さが250~550ミクロン、繊維直径が22~50ミクロン、気孔率が50~85%のBekaertが提供する焼結チタン繊維メッシュや、10~5,000ミクロンのメッシュ厚、0.04~0.055インチのストランド幅、30~95%の気孔率、平方インチあたり約33~493の開口数であり、菱形であってLWD(菱形の長い距離)は0.075~0.289インチ、SWD(菱形の短い距離)は0.032~0.2インチの寸法の開口部を有するDexmetが提供するエキスパンドメタルメッシュが含まれるが、これらに限定されない。ここでLWDとSWDは、菱形の開口部の対角線の寸法であり、例えば提供者のウェブサイトで説明されている。好ましくは、開孔メッシュは導電性金属またはセラミックでなり、厚さが10~5,000ミクロンであり、気孔率が約30~95%である。
【0036】
[0045]電気化学セルは、接続部位120で圧縮アーム118に設けられた穴119を貫通し、開孔メッシュ108および110に設けられた孔116を通り、触媒層106、および固体高分子電解質膜104に設けられた孔105を通る留め具122を用いて、開孔メッシュ108と110の間、および圧縮フレーム112と114の間でCCM102を圧縮することによって一緒に組み立てられる。固体高分子電解質膜104が穴を有さない場合、電気化学セルの組み立て時に、留め具122が膜を直接貫通するようにしてもよい。留め具122には、留め具から圧縮アーム118に圧縮力を拡散するワッシャ124を設けることができ、あるいは、圧縮力を拡散できる形状を有してもよい。
【0037】
[0046]留め具122、ワッシャ124、およびナット126は、非導電性材料で作られている。本発明の電気化学セルにおいて、留め具122は、接続部位、開孔メッシュおよびCCMを貫通して、電気化学セルの活性領域全体にわたって圧縮力の実質的に均一な分布を確保し、電極間のギャップを小さく維持する。これは、圧縮手段がSPE、特にSPE膜を貫通するのを回避するために、電気化学セルの圧縮が、バネ付きボルトを介したフレームの周辺圧縮によってのみ達成される既存の従来技術に記載された圧縮システムとは異なる。
【0038】
[0047]本システムで使用される電気化学セルのスタックを図2に示す。スタック200は、上述の図1に示されたものと同じ構成を有する複数の電気化学セル100を含む。セルは、個々の電気化学セル100間に必要な間隔を提供する1以上のロッド202を介して互いに接続されている。図示されたスタックは6個の電気化学セルを含むが、当業者は、本発明によるスタックがより多くの電気化学セルを含むことができることを理解するであろう。好ましい実施形態では、1つのスタックは50個のセルを含むが、スタックは約500個までの個々の電気化学セルを有してもよい。以下に詳述し図4に示すように、カバー260は、隣接するセル100の間に配置され、2つの隣接するセルのカソードを反応槽内の溶液から隔離する。
【0039】
[0048]本発明の実施形態でさらに示すように、スタックへと組み立てられると、電気化学セルは、1つの電気化学セルのアノード側が隣接するセルのカソード側に面するように、あるいは1つの電気化学セルのカソード側が隣接するセルのカソード側に面し、1つの電気化学セルのアノード側が隣接するセルのアノード側に面するように配置することができる。
【0040】
[0049]図3の分解図に示されるように、廃水処理用のモジュール300は、反応槽に浸漬された電気化学セルのスタック200を備える。スタック200は、スタック内の各電気化学セルの一方の電極(後述するようにアノードまたはカソードのいずれか)が反応槽に含まれる廃水および汚染物質または溶液に直接さらされ、他方の電極がカバーによって反応槽内の廃水または溶液から隔離されるように、反応槽302内に収容される。モジュール300はさらに、供給口(図示せず)およびガス排出口314を備えた外蓋304と、供給口(図示せず)およびガス排出口316を備えた内蓋306とを備え、廃水およびスタック200を収容するとともにモジュールからの放出を制御するために、内蓋および外蓋の両方が反応槽302をその頂部で覆う。モジュール300には、水位が所望の閾値を下回るとスタック動作が停止することを保証するレベルセンサ308も設けられ、これにより抵抗燃焼および不均一な水和から膜や電極システムが保護される。反応槽内では、槽内の水位を監視するために使用されるレベルセンサ308がチューブ310内に収容される。モジュール300にはさらに、槽内の水位が所定のレベルに達したときに反応槽への廃水の流入を止めるためのレベルスイッチ312が設けられている。
【0041】
[0050]2つの隣接するセルの間に配置されたカバーは図2および3に概略的に示されているだけであり、当業者は、各カバーが追加の要素、例えば図5および9で説明され図示されるような入口パイプや出口パイプや通気パイプを備えてもよいことを容易に理解するであろう。
【0042】
[0051]廃水に、より具体的にはアンモニアを含む廃水にアノードとカソードの両方がに直接さらされる従来の電気化学セルのスタック内の個々の電気化学セルレベルで生じる反応の概略レビューでは、アノードでの電気化学酸化プロセスは、使用される固体高分子電解質(SPE)の種類、触媒の選択、および廃液の組成に依存する特定の反応を伴う、直接、間接表面媒介酸化、または間接二次酸化剤媒介酸化のカテゴリーに分類される。正の電荷キャリアは陽イオンSPEを用いて移送され、負の電荷キャリアは陰イオンSPEを用いて移送される。アノード側では、汚染廃水がアノード触媒層にさらされると、陽イオンSPEの式1~3と陰イオンSPEのそれぞれ式6、7に示すように、直接、間接表面媒介または間接二次酸化剤媒介酸化のいずれかを含む段階的な酸化プロセスが行われる。
【0043】
[0052]陽イオンSPEベースのセルの場合、廃水(例えばアンモニア汚染物質を含む廃水)がアノード触媒層にさらされると、式1に示すような直接酸化、または、式2(a)および2(b)または式3(a)および3(b)に示すような間接酸化を伴う段階的な酸化プロセスがアノードで行われる。
【0044】
[0053]式1:アンモニアの直接酸化(アノード半反応):
[0001]式2:(a)水からのヒドロキシル表面種の生成と、(b)表面ヒドロキシル種を介したアンモニアの酸化によるアンモニアの間接酸化(アノード半反応):
【0045】
[0054]式3:(a)NaClからの次亜塩素酸塩種の生成と、(b)次亜塩素酸塩によるアンモニアの間接酸化による間接的な二次酸化剤媒介アンモニアの酸化(アノード半反応):
【0046】
[0055]式1または式2にアノード半反応が示されている陽イオンSPEベースの電気化学セルの場合、式4に示すように、カソード反応はSPEを介して転送されるプロトンからの水素の直接生成を伴う:
【0047】
[0056]式5(a)に示すように、アノード半反応が式3に示されている陽イオンSPEベースの電気化学セルの場合、カソード反応は、SPEにわたってナトリウムイオンの転送による水酸化ナトリウムの直接生成を伴う。次に、水酸化ナトリウムは、式5(b)に示すように、溶液中でアノード反応の生成物と反応し、塩と水を再形成する。
【0048】
[0057]式5:
【0049】
[0058]あるいは、陰イオンSPEベースの電気化学セルの場合、廃水(この場合はアンモニア汚染物質)がアノード触媒層にさらされると、式6と式7にそれぞれ示されるようにヒドロキシル表面種または次亜塩素酸塩のいずれかを含む段階的な間接酸化プロセスがアノードで行われる。
【0050】
[0059]式6:表面ヒドロキシル種を介したアンモニアの間接酸化(アノード半反応):
【0051】
[0060]式7:(a)SPEにわたるClイオン転送からの次亜塩素酸塩種の生成と、(b)次亜塩素酸塩を介したアンモニアの間接酸化、を介したアンモニアの間接酸化(アノード半反応):
【0052】
[0061]アノード半反応が式6に示される陰イオンSPEベースの電気化学セルの場合、カソード反応は、式8に示されるような、水からのヒドロキシル電荷キャリアと水素の生成を伴う:
【0053】
[0062]式7にアノード半反応が示される陰イオンSPEベースの電気化学セルの場合、カソード反応は、式9に示されるような、NaClと水からの塩素イオン電荷キャリアと水素の生成を伴う:
【0054】
[0063]式1~3およびそれぞれ式6~7に示される反応はアノード半反応であり、当業者に公知のように、多くの場合、反応には多数の中間段階があり得、その結果として多くの中間種があり得る。しかし、そのような中間種は一般に酸化されて最終生成物となり、典型的には、炭素含有汚染物質の場合はCO、窒素含有汚染物質の場合はN、硫黄含有汚染物質の場合はSOを含有する。
【0055】
[0064]カソードでは、カソード触媒層と接触すると汚染物質も減少する場合があり、このような還元反応は、廃水汚染物質の段階的除去とアノードで形成される中間化合物の酸化を促進し得る。
【0056】
[0065]従来技術に記載のように、アノードとカソードの両方が反応槽内の廃水に直接さらされる電気化学セルのスタックがあるシステムでは、アノードで生成されるか廃水のバックグラウンド種として存在する中間種の一部は、完全に酸化されるわけではなく、廃水によって運ばれて、カソードに到達して汚染を引き起こす可能性がある。例えば、バックグラウンド有機種はカソード上で重合し、および/または溶液中の微量金属がカソード上に電着して、式5(a)、式5(b)、式8および式9に示す所望の電気化学反応が生じなくなる場合がある。
【0057】
[0066]さらに、アンモニアの間接酸化プロセスの場合にカソードで起こる廃水削減プロセスは、槽内の廃水と混合し、カソードに到達し、廃水からアンモニアを除去するシステム効率を低下させ得るアンモニア酸化反応全体からの中間アンモニア酸化生成物を電気化学的に低減させ得る。
【0058】
[0067]アンモニアの間接酸化中に、塩(NaCl)が汚染廃水に加えられ、アノードで酸化され、その場で次亜塩素酸塩種が生成され、これが廃水中のアンモニア汚染物質を酸化する。廃水からの塩は、槽内の除染水と混ざり、配管に到達し、槽から市の廃水処理プラントなどの選択された排出場所にきれいな水が送られる。
【0059】
[0068]本発明は、上述したすべての欠点に対処するものであり、それによってシステムの除去速度をさらに向上させ、それにより、スタック内の少なくとも1つの電気化学セルのアノードまたはカソードがそれぞれ槽内の溶液から隔離されるシステムを記載する。
【0060】
[0069]本システムの第1の実施形態が、図4に概略的に示されている。このシステムは、カソード側「C」が互いに向かい合う2つの電気化学セル410および420を有する繰り返しユニット400を備えるスタックを有するシステムとして示されており、当業者は、本発明によるスタックがより多くの繰り返しユニット400を含み、1つの繰り返しユニット400内の電気化学セルの各アノードが、その隣に位置する繰り返しユニット内の電気化学セルの1つのアノードに面するように、1以上のロッド402を通して一緒に組み立てられてもよいことを理解するであろう。
【0061】
[0070]2つの電気化学セル410および420のそれぞれは、一方の側がそれぞれアノード触媒層412、422でコーティングされ、他方の側がそれぞれカソード触媒層413、423でコーティングされた固体高分子電解質膜411、421からなる触媒層付き膜(CCM)を含む。各電気化学セルはさらに、触媒層付き膜の両側に、それぞれアノードおよびカソード触媒層の隣に配置された開孔メッシュ414、415、およびそれぞれ424、425と、開孔メッシュの隣にそれぞれ圧縮フレーム416、417、およびそれぞれ426、427を備える。図2に関して記載され、図4にさらに示されるように、セルは、個々のセル410と420との間にいくらかの間隔を提供するロッド402を介して互いに接続される。図4ではアセンブリが2本のロッド402を有するように示されているが、当業者はスタック内の電気化学セルを所望の間隔で配置するために少なくとも1本のロッド402が必要であることを理解するであろう。
【0062】
[0071]カバー460が、2つの電気化学セル410および420の間に配置され、2つの隣接する電気化学セル410および420のそれぞれのカソード側の開孔メッシュの隣にそれぞれ配置される圧縮フレーム417および427を接続している。このカバーは、これらの電気化学セルのカソード間に廃水を透過しないエンクロージャ490を形成し、それにより槽内の排水からカソードを隔離する。図4のアセンブリの概略図は、2つの圧縮フレーム416および417と固体高分子膜411の間、およびそれぞれ圧縮フレーム426および427と固体高分子膜421の間の隙間を示しており、当業者は、X軸に沿った触媒層と開孔メッシュの寸法が非常に小さいため(例えば、5mm未満)、および圧縮システムはこれらの要素を一緒に圧縮するため、圧縮フレーム416および417と膜411の間、およびそれぞれ圧縮フレーム426および427と膜421の間に非常に小さなギャップがあることを理解するであろう。膜411および421のいくらかの部分は、活性領域(膜の触媒被覆領域)を越えて延在し、圧縮フレーム間に挿入されてそれらを互いに電気的に絶縁する。
【0063】
[0072]繰り返しユニット400から形成されたスタック全体は、汚染された廃水450を含むタンク430に浸漬される。
【0064】
[0073]カソード溶液470がエンクロージャ490に供給され、カソード側で起こる反応の生成物480がエンクロージャから除去される。アンモニア除去プロセス中、例えば、塩(NaCl)と水を含む溶液470がエンクロージャ490に供給される。塩素イオン(CI-)は、陰イオン交換膜を介してアノード側に移動して次亜塩素酸(HClO)を形成し、これがさらに、アンモニアの酸化と廃水からの除去に使用される。カソード側で発生する反応の生成物480(例えば、NaOHを含む)は、エンクロージャから流出される。カソード側で生じる反応中に生成されたガス(水素など)を除去するために、通気口475が設けられている。
【0065】
[0074]カバー460の三次元図が図5に示されている。このカバーは、図4に示される実施形態の組み立てられたスタックにおいて、2つの隣接する電気化学セルのそれぞれのカソード側に面する圧縮フレームの隣に配置される、互いに反対の2つの側461および462を有する本体466を備える。各側461および462のそれぞれには、入口パイプ464を介して導入されたカソード溶液が、組み立てられたスタックの電気化学セルのカソード側にアクセスできるようにする開口467と、反応槽から、カバーと組み立てられたスタック内の隣接セルの圧縮フレームとによって形成されるエンクロージャ490への廃水の漏れを防ぐとともに、カソード溶液がエンクロージャ490から反応槽へと漏れることを防ぐシール463が設けられている。カバーには、カソード溶液470をエンクロージャに流すことができる入口パイプ464と、カソード触媒で起こる反応の生成物480をエンクロージャから排出できる出口パイプ465が設けられている。ガスがエンクロージャ490から通気口475を通って大気またはガス封じ込めタンクに排出できるように、通気パイプ476が設けられている。入口パイプ464、出口パイプ465および通気パイプ476は、カバーの本体にねじ込まれてもよいし、カバーの本体と一体成形してもよいし、溶接してもよい。カバーの入口パイプと出口パイプの位置は、本発明の異なる実施形態のスタック設計に従って変えることができるが、一般に、カバーにはそれぞれ入口パイプ、出口パイプおよび通気パイプが設けられることを理解されたい。
【0066】
[0075]図4に示される電気化学セルは、同時に係属している出願人の出願62/279、631に記載され、図1に示されているものと類似の構造を有する。これは、本発明のすべての実施形態に適用される。
【0067】
[0076]図4に示すスタックの電気化学セルは、2つの隣接する電気化学セルのカソードが互いに向き合い、カバー460によって形成されるエンクロージャ490にさらされ、それによって槽内の廃水溶液から隔離されるように構成されている。図6に概略的に示される本発明のさらに別の実施形態では、電気化学セルは、2つの隣接する電気化学セル510および520のアノード側「A」を互いに向き合わせることによりスタックに組み立てられ、電気化学セル510および520のアノード側の触媒層が、カバー560と2つの隣接するセルの圧縮フレームとによって形成されるエンクロージャ590にさらされ、それにより槽内の廃水溶液550から隔離される。図6は、各電気化学セルまたはカバーの構造のさらなる詳細を示していないが、この実施形態の電気化学セルは、図1~5に示す電気化学セルと同じ構造を有し、より具体的には、2つの開孔メッシュと2つの圧縮フレームの間に配置された触媒層付き膜と、CCMによって形成されたアセンブリを貫通する留め具と、スタックの圧縮を確保するためのメッシュと圧縮フレームとを備える。カバー560は、図5に示すカバーと同様の構造を有する。
【0068】
[0077]図6に示す実施形態では、1以上の繰り返しユニット500を有するスタックは、反応槽530内の廃水550に浸漬される。カバー560が、各電気化学セルのアノード(「A」)側に位置する2つの隣接する電気化学セル510および520の圧縮フレーム間に配置される。カバー560は、これら2つの電気化学セルのアノード(アノード触媒層)を反応槽内の廃水から隔離するエンクロージャ590を形成する。本実施形態では、廃水中の汚染物質は、電気化学セルのカソード(「C」)側で削減され、一方、例えばHOおよび場合によってはNaOHまたはHSOなどの電解質を含むアノード溶液570がエンクロージャ590に導入されて、電気化学セル510および520のアノードに到達する。アノード側では、水が電気分解されて、カソード側に移動するプロトンが生成される。カソード側において、プロトンが廃水の組成物(硝酸塩、亜硝酸塩、尿素など)の電解還元に関与する。反応生成物580は、エンクロージャ590から流出する。反応ガス(O、Nなど)は、通気口575を介してエンクロージャから排出される。
【0069】
[0078]図7に示される実施形態では、1以上の繰り返しユニット600を有するスタックが、反応槽630内のカソード溶液650に浸漬される。カバー660が、アノード(「A」)側の2つの隣接するセル610および620の圧縮フレーム(図示せず)の間に配置され、2つの隣接する電気化学セルのアノード(アノード触媒層)を反応槽内の溶液から隔離するエンクロージャ690を作成する。廃水流670がエンクロージャ690内に導入され、廃水が電気化学セルのアノードで酸化されて汚染物質が除去され、きれいな水流680がエンクロージャ690から流出する。アノード側で起こる反応中に生成されたガスを除去するために、通気口675が設けられている。図7に示す実施形態の構造は、図6に示した実施形態と同じであるが、唯一の違いは、図7の反応槽内の溶液が廃水の代わりにカソード溶液となり、アノード溶液の代わりに廃水がエンクロージャ690を循環することである。
【0070】
[0079]電気化学セル610および620のアノードおよびカソードで起こる反応は、図4に示す実施形態で起こる反応と同様である。例えば、アンモニア除去プロセスの場合、槽内のカソード溶液650は、塩(NaCl)と水とを含む。塩素イオンCI-が、陰イオン交換膜を通ってアノード側に移動し、次亜塩素酸(HClO)を形成し、これがさらに、アノード側でアンモニアの酸化と廃水からの除去に使用される。カソード側で発生する反応生成物(NaOHなど)は槽内に残る。カソード側で発生する反応中に形成される水素は、反応槽の上部から排出されるか捕捉される。
【0071】
[0080]本発明の別の実施形態が図8に示されており、図1に示す電気化学セルと同様の構造を有する電気化学セル710および720を含むスタック700が示されている。当業者は、必要に応じて、スタックが電気化学セルを1つのみ、またはより多く含んでもよいことを理解するであろう。スタックが複数の電気化学セルを含む場合、電気化学セルは、1の電気化学セルのアノード側Aがスタック内の隣接する電気化学セルのカソード側Cに面するように配置されることが好ましいが、他の配置も可能であり、1の電気化学セルのアノードが隣接するセルのアノードに面し、1つの電気化学セルのカソードが隣接するセルのカソードに面してもよい。スタック700は、反応槽730内の廃水750に浸漬される。カバー760Aおよび760Bはそれぞれ、カソード側の電気化学セル710および720それぞれの圧縮フレーム(図示せず)に取り付けられている。カソード溶液770は、カバー760Aおよび760Bと、カソード側に配置された電気化学セルの圧縮フレームとの間に形成されるエンクロージャ790Aおよび790Bに供給され、カソードで生じる反応により形成される反応生成物の流れ780Aおよび780Bは、エンクロージャから除去される。
【0072】
[0081]排水中の汚染物質は、アノード触媒で起こる酸化反応によって除去され、カソード側で形成され膜を越えてアノード側に入る中間生成物も、例えば図4に示す実施形態の場合にアノードで起こるアンモニア酸化に関して説明したプロセスと同様に、汚染物質の除去に寄与する。図8の概略図に示されていなくても、カバー760A、760Bには、図9に示す通気口775と同様の、エンクロージャ790Aおよび790Bからのガスの通気を可能にする通気口が設けられている。
【0073】
[0082]図示しない本発明の別の実施形態では、1の電気化学セルのアノードが隣接セルのカソードに面する電気化学セルのスタックは、アノード側でその圧縮フレームに取り付けられたカバーを有する少なくとも1つの電気化学セルを含み、またはスタック内の電気化学セルの多くまたはすべてが、それぞれがアノード側のそれぞれの圧縮フレームに取り付けられたカバーを有する。アノード溶液または廃水は、図6および7に示す実施形態に関連して記載されたのと同様の方法で、このように形成されたエンクロージャに供給され得る。
【0074】
[0083]図8に示される実施形態において電気化学セルのカソードを隔離するために使用されるカバー760Aおよび760Bは、図5に示されるカバー460とは異なる構造を有する。そのようなカバーが、図9にカバー760として示されている。カバー760は、図8に示される実施形態の組み立てられたスタックにおいて、電気化学セルのカソード側に面する圧縮フレームの隣に配置される開口767を備え、ただ1つの開放側面761を有する本体766を有する。開放側面761にはシール763が設けられ、これがカバーと電気化学セルの圧縮フレームとで形成されるエンクロージャ790への反応槽からの廃水の漏れを防ぐとともに、カソード側に配置されエンクロージャ790から反応槽へのカソード溶液の漏れを防ぐ。側面761の反対側の側面762は、開口のない連続パネルであり、反応槽からの廃水がエンクロージャ790に到達するのを防止する。カバーには、カソード溶液をエンクロージャに流すことができる入口パイプ764と、カソードで起こる反応の生成物をエンクロージャから流出させることができる出口パイプ765とが設けられている。ガスをエンクロージャ790から通気口775を介して大気またはガス封じ込めタンクへと排出できるように、通気パイプ776が設けられている。
【0075】
[0084]廃水処理システムは、図3に示す複数のモジュール300を含み得る。汚染廃水は貯蔵タンクに保存され、ここから汚染物質を除去するために処理されるモジュール300の反応槽にポンプで送られる。いくつかの実施形態では、反応槽は、再循環ポンプまたは撹拌機構を含むことができ、または生成ガスを使用して槽内の廃水を混合するのを補助してもよい。システムが2以上のモジュール300を備える場合、モジュール300のスタックは、例えば出願人の共同所有の米国特許出願番号14/648,414に示されるように、直列または並列に接続することができる。
【0076】
[0085]本書に提示される実施形態では、各電気化学セルは、図1に示されるような触媒層付き膜(CCM)を含むことができる。代替の実施形態では、アノードおよびカソード触媒が、例えば、電気化学セルが一緒に組み立てられるときに膜に面する開孔メッシュの面に堆積されてもよい。さらに、他の実施形態では、アノード触媒を膜の片側に堆積するとともにカソード触媒を膜の反対側に面している開孔メッシュの面に堆積するか、カソード触媒を膜の片側に堆積するとともにアノード触媒を電気化学セルを組み立てたときに膜の反対側に面している開孔メッシュの側に堆積させることができる。すべての実施形態において、システムの均一な圧縮システムにより固定される電極(膜のアノード側およびカソード側に隣接配置または堆積される触媒層)間のギャップが減少する。
【0077】
[0086]本発明のすべての実施形態において、電極がガス拡散層を有さず、アノードが実際にアノード触媒層であり、カソードがカソード触媒層であることから、「電極」とは触媒層であると理解される。アノード触媒およびカソード触媒は、白金および、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、コバルト、ニッケル、鉄および鉄合金、銅および銅合金、混合金属酸化物、ダイヤモンド、およびセラミック由来の触媒を含む白金誘導合金を含むがこれらに限定されない様々な触媒材料を含むことができる。当技術分野で知られているように、担持触媒を使用すると、触媒材料の分散が改善され、したがって特定の触媒と支持体の利用および相互作用も触媒活性と耐久性を向上させる。本発明の触媒材料のリストと組み合わせて使用できる担持触媒の例には、チタン、ニオブ、ニッケル、鉄、グラファイト、混合金属酸化物、およびセラミックが含まれる。アノード触媒およびカソード触媒は、ステンレス鋼またはグラファイトを含むこともできる。
【0078】
[0087]本発明に記載されるカバーは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはPVDF、あるいは他のそのようなプラスチック材料などの非導電性材料でなる。
【0079】
[0088]廃水処理のための本電気化学セルおよびその運用方法の利点は、従来技術の解決策と比べて非常に多い。これらの利点には、(1)運用中のカソードの汚損や汚染を防ぐために処理される廃水からカソード電極を隔離すること、(2)閉ループの高濃度塩水を使用できる陰イオン型SPE材料をカソードに組み合わせて、オンデマンドで次亜塩素酸をアノードで生成すること、および(3)アノードを隔離して、例えば、アンモニアへ尿素還元し、生成アンモニアをアノードエンクロージャに通して酸化させるといった還元による廃水の事前処理をカソードで行うことができる、ことが含まれる。
【0080】
[0089]2017年3月1日に出願された米国仮特許出願第62/465,448の開示は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0081】
[0090]本発明の特定の要素、実施形態および用途を示して説明したが、当然のことながら、本発明はそれらに限定されず、当業者は特に前述の教示に照らして、本開示の精神および範囲から逸脱することなく修正を加えることができる。そのような修正は、本明細書に添付される特許請求の範囲および範囲内で考慮されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9