(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】高含量の植物性バターを含む化粧品フォーム組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/92 20060101AFI20220830BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20220830BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220830BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
A61K8/92
A61K8/44
A61Q19/00
A61K8/02
(21)【出願番号】P 2019566272
(86)(22)【出願日】2018-05-24
(86)【国際出願番号】 FR2018051230
(87)【国際公開番号】W WO2018220315
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-05-10
(32)【優先日】2017-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517121892
【氏名又は名称】ラボラトワール・エム・アンド・エル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デルフィーヌ・アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】マージョリー・ロベルジョン
【審査官】山中 隆幸
(56)【参考文献】
【文献】特公昭51-022054(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0147390(US,A1)
【文献】特開2013-224275(JP,A)
【文献】国際公開第2004/000243(WO,A1)
【文献】国際公開第2003/082225(WO,A1)
【文献】特開2014-062087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォームとして充填された化粧品組成物であって、生理学的に許容可能な媒体中に:
-
40質量%から90質量%の少なくとも一つの植物性バター、
-C
6~C
20脂肪酸でN-アシル化されたアミノ酸の塩から選択される、少なくとも一つのアニオン性界面活性剤、
-少なくとも一つのワックス、
-少なくとも一つのオイル、
-0質量%から5質量%の水、及び
-少なくとも一つの気体
を含み、上記パーセントは、前記組成物の総質量に対して表され、0.40~0.75g/cm
3の密度を有する、組成物。
【請求項2】
前記アニオン性界面活性剤が
、アシル化グルタミン酸、アシル化植物性タンパク質加水分解物、及びそれらの混合物の
無機塩から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アニオン性界面活性剤が、ラウロイルグルタミン酸のナトリウム塩、ココイルグルタミン酸のナトリウム塩及びカリウム塩、カプリロイルグルタミン酸の二ナトリウム塩、パルミトイルグルタミン酸のマグネシウム塩、ミリストイルグルタミン酸のカリウム塩、ラウロイルアスパラギン酸のナトリウム塩、ラウロイルグリシンのナトリウム塩、ココイルグリシンのナトリウム塩及びカリウム塩、ラウロイルサルコシンのナトリウム塩、ココイルアラニンのナトリウム塩、並びに燕麦又は小麦のたんぱく質加水分解物のラウリル酸でのアシル化物のナトリウム塩及びカリウム
塩から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アニオン性界面活性剤が、ラウロイルグルタミン酸のナトリウム塩であることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記アニオン性界面活性剤が、前記組成物の総質量に基づいて、0.2質量%から2質量%を表すことを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
グリセロール、又は任意選択で少なくとも一つの脂肪アルコールと結合させたポリグリセロール脂肪酸エステルからなる、少なくとも一つの非イオン性界面活性剤を更に含有することを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
有機充填剤;アクリルポリマー粉末
;ポリアミド
;ポリオレフィン
;乾燥海藻粉末
;無機充填剤;並びにそれらの混合
物から選択される少なくとも一つの粉末充填剤を更に含有することを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記粉末充填剤がデンプンであることを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
アシル基が14~22個の炭素原子を含有する、少なくとも一つのアシル乳酸
塩を更に含有することを特徴とする、請求項1~
8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記アシル乳酸塩が、ラウロイル乳酸又はステアロイル乳酸のナトリウム塩であることを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記植物性バターがシアバター、ココアバター、マンゴーバター、及びそれらの混合物から選択さ
れることを特徴とする、請求項1~
10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記植物性バターが前記組成物の総質量に基づいて、40質量%~75質量%を表すことを特徴とする、請求項1~
11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記ワックスが、任意選択で別のワックスと組み合わせられる、水素化植物性油から選択され
、前記ワックスが、前記組成物の総質量に基づいて0.5質量%~5質量%を表すことを特徴とする、請求項1~
12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記オイルが、前記組成物の総質量に基づいて、10質量%~40質量%を表すことを特徴とする、請求項1~1
3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
一つの瓶内で充填されることを特徴とする、請求項1~1
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1~1
5のいずれか一項に記載の組成物を調製する方法であって、下記連続工程:
-植物性バター、ワックス及びオイルを70℃~80℃の温度で混合する工程、
-前記混合物を25℃~40℃に冷却する工程、
-30%~150%の膨張率に達するまで前記混合物に空気を導入する工程、及び
-結果として得られたフォーム組成物を熟成する工程、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項17】
乾燥肌の兆候を抑制及び/又は治療するための
、請求項1~1
5のいずれか一項に記載
の化粧
品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪酸でN-アシル化されたアミノ酸の塩から選択される少なくとも一つのアニオン性界面活性剤により安定化された、実質上無水の高含量-植物性バター化粧品フォーム組成物に関する。また、この組成物の製造方法、並びに乾燥肌の兆候を抑制及び/又は治療するための、それらの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
シアバターは、アフリカの木の種類シアバターノキ(Vitellaria paradoxa)(かつては、Butyrospermum parkii (G. Don) Kotschy)の果実由来の油脂であり、特に固体及び液体の脂肪酸の混合物からなる。シアバターは、皮膚及び唇に栄養を与え、及び保護するため、高く評価される一方、高濃度のシアバターを含有する組成物は、ある消費者にはその使用を迷わせる、重く、油分の多い触感の欠点を有する。
【0003】
この欠点を改善するため、通気した触感を有するフォーム組成物に処方化されることがすでに提案されている。例えば、米国特許出願公開第2006/0147390号明細書は、シアバターの固体画分を含む、植物性油、及びワックスなどの脂質の混合物を含む無水のフォーム組成物を開示している。脂質は、有利には、組成物の75質量%~85質量%を表す。これらの組成物は、界面活性剤の非存在下で安定であることが示唆されている。しかしながら、本出願人は、明細書中で提案されるより高いワックス/オイル比の使用が、組成物の不安定化をもたらすことを示した。
【0004】
この安定性の問題を改善するため、溶液が提案された。特に、米国特許第8,802,118号明細書は、主に油脂、すなわちワックス、粘りのある基質及び不揮発性油を含有する唇用フォーム組成物を開示している。粘りのある基質は、組成物の50質量%超を表すシアバターであり得る。上述した安定性の問題は、シリカの組み込みによって解決される。連続油脂層を有する他のフォーム組成物は、仏国特許発明第2915892号明細書及び仏国特許発明第2915877号明細書において提案されている。これら組成物は、合成構造化ポリマー又はパルミチン酸デキストリンの導入によって、それぞれ安定化される。
【0005】
安定な油脂-豊富フォーム組成物を得る別の解決法は、国際公開第2016/150978号において提案されている。それは、脂質を結晶化させるため-23℃に組成物を冷却し、その後空気導入前に約5℃に温度を変更することにある。脂質の比率は、オイルがワックス及びバターより多い量で存在する方法で、調整もされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2006/0147390号明細書
【文献】米国特許第8,802,118号明細書
【文献】仏国特許発明第2915892号明細書
【文献】仏国特許発明第2915877号明細書
【文献】国際公開第2016/150978号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
広範囲の調査の後、アシル化アミノ酸塩の形態でのアニオン性界面活性剤を組成物に導入することによって、先行技術において提案されるより高い濃度のシアバターが、安定性の問題を引き起こさず、上述の安定剤又は複雑な製造方法を使用せず、フォーム組成物を処方化し得ることを本出願人は明らかにした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、従って、化粧品組成物に関し、生理学的に許容可能な媒体中に:
-30質量%から90質量%の少なくとも一つの植物性バター、
-C6~C20、好ましくはC12~C18の脂肪酸でN-アシル化されたアミノ酸の塩から選択される少なくとも一つのアニオン性界面活性剤、
-少なくとも一つのワックス、
-少なくとも一つのオイル、
-0質量%~5質量%の水、及び
-少なくとも一つの気体、
を含み、上記パーセントは組成物の総質量に対して表され、組成物は、0.40g/cm3~0.75g/cm3の密度を有する。
【0009】
本発明は、この組成物を調製する方法にも関し、下記連続工程:
-植物性バター、ワックス及びオイルを70℃~80℃の温度で混合する工程、
-混合物を25℃~40℃に冷却する工程、
-30%~150%の膨張率に達するまで、撹拌機を用いて、混合物に空気を導入する工程、及び
-結果として得られたフォーム組成物を熟成する工程、
を含む。
【0010】
本発明は、更に、乾燥肌の兆候を抑制又は治療するため、特に皮膚に栄養を与える及び/又は軟化させるための、この組成物の化粧的使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述したとおり、本発明による組成物は、生理学的に許容可能な媒体中に、油脂及び特に界面活性剤の混合物を含む。これらの組成物は、ここからより詳細に説明される。
【0012】
「生理学的に許容可能な媒体」は、特に化粧的に許容可能な媒体を意味し、すなわち、化粧的使用で不適合であるうずき又は赤味を生じさせない物を意味する。この媒体は、正確に0質量%から5質量%、好ましくは0質量%から3質量%、さらには0質量%から2質量%の水を含有する連続油脂層を有する組成物からなる。したがって、それは無水組成物、すなわち使用される原料中に本来存在する以外の水の添加をせずに調整された組成物である。
【0013】
油脂
本発明による、化粧品組成物は、高含量の植物性バター、すなわち30質量%~90質量%のバター、例えば50質量%~80質量%、更には、60質量%~80質量%のバター及び優先的に、40質量%から75質量%、例えば50質量%から75質量%、より好ましくは、60質量%から70質量%のバターを含む。
【0014】
「植物性バター」は、可逆の液体/固体状態遷移を有する粘りのある油脂を意味し、固体状態で、異方性結晶組織を有し、23℃の温度で、液体画分及び固体画分を含む。植物性バターの例はシアバター、ココアバター、及びマンゴーバター並びにそれらの混合物である。シアバターの使用が好ましい。
【0015】
植物性バターに加えて、本発明による組成物は、1以上の揮発性及び/又は不揮発性オイルを含む。本明細書の文脈において、「オイル」は室温(25℃)及び大気圧下(105Pa)で、液体の化合物を意味し、25℃で少なくとも1質量%の量で水中に導入された際に、水中に全く溶けない、又は水中に導入されたオイルの質量を基準として10質量%未満で溶解する。「揮発性オイル」は、室温(20℃)及び大気圧下で、0.001~300mmHg、及び好ましくは0.01~10mmHgの範囲の蒸気圧を有するオイルを意味する。有利には、これらのオイルは、(ASTM D93で測定される)100℃未満、好ましくは50℃~95℃、例えば70℃~90℃、更には、80℃~90℃の引火点、及び/又は40℃での5cSt未満、又は更には1cSt~3cStの動粘性率も有する。
【0016】
揮発性オイルの例は、イソドデカンなどの分岐アルカン、及びC10~C13の直鎖アルカンである。不揮発性オイルとしては:
-C2~C10(好ましくはC6~C10)直鎖飽和酸及びC10~C18(好ましくはC10~C14)の直鎖飽和モノアルコールのモノ及びポリエステル、C10~C20直鎖飽和酸及びC3~C20(好ましくはC3~C10)の分岐又は不飽和モノアルコールのモノ及びポリエステル;C5~C20の分岐又は不飽和酸及びC5~C20の分岐又は不飽和モノアルコールのモノ及びポリエステル;C5~C20の分岐又は不飽和酸及びC2~C4の直鎖モノアルコールのモノ及びポリエステル:から選択される酸及びモノアルコールのエステル;
-カプリル酸及びカプリン酸のトリグリセリド並びにトリヘプタノインなどのC6~C12の脂肪酸トリグリセリド;
-(リノール酸、ラウリン酸及びミリスチン酸などの)C10~C20の分岐及び/又は不飽和脂肪酸;
-(オクチルドデカノール及びオレイルアルコールなどの)C10~C20分岐及び/又は不飽和脂肪アルコール;
-特にオリーブオイルから抽出される植物性のスクワラン(C30)、及びヘミスクワラン(C15)などの炭化水素;
-炭酸ジカプリリル及び炭酸ジエチルヘキシルなどの、炭酸ジアルキル;
-ジカプリリルエーテルなどのジアルキルエーテル;及び
-それらの混合物が具体的に挙げられる。
【0017】
酸及びモノアルコールのエステルとしては、ココナッツカプレート及びココナッツカプリレート混合物、エチルマカダミエート、シアバターエチルエステル、イソステアリルイソステアレート、イソノニルイソノナノエート、エチルヘキシルイソノナノエート、ヘキシルネオペンタノエート、エチルヘキシルネオペンタノエート、イソステアリルネオペンタノエート、イソデシルネオペンタノエート、イソプロピルミリステート、オクチルドデシルミリステート、イソプロピルパルミテート、エチルヘキシルパルミテート、ヘキシルラウレート、イソアミルラウレート、セトステアリルノナノエート、プロピルヘプチルカプリレート並びにそれらの混合物などのモノエステルが具体的に挙げられる。他の有用なエステルは、ジイソプロピルアジペート、ジエチルヘキシルアジペート、ジイソプロピルセバケート、及びイソアミルセバケートなどのジカルボン酸及びモノアルコールのジエステルである。
【0018】
上記1以上の構成成分を含有する植物性オイルについても言及することができる。
【0019】
植物性オイルの具体例は、小麦胚芽、ヒマワリ、アルガン、ハイビスカス、コリアンダー、グレープシード、ゴマ、トウモロコシ、アプリコット、キャスター、シアバター、アボカド、オリーブ、大豆、スイートアーモンド、パーム、セイヨウアブラナ、コットン、ヘーゼルナッツ、マカダミア、ホホバ、アルファルファ、ポピー、カボチャ、ゴマ、カボチャ、クロスグリ、マツヨイグザ、ラベンダー、ルリジサ、キビ、大麦、キヌア、ライ麦、ベニバナ、ククイナッツ、トケイソウ、マスカットローズ、シャゼンムラサキ(Echium)、ナガミノアマナズナ又は椿を含む。
【0020】
本発明によると、不揮発性オイル及びより優先的には植物性オイルを使用することが好ましい。オイルは、組成物の総質量の10質量%~40質量%及び好ましくは15質量%~25質量%を表し得る。
【0021】
本発明による組成物は、少なくとも一つのワックスを更に含む。本明細書の文脈内では、用語「ワックス」は25℃での固体脂肪を表し、可逆の固体液体状態遷移を有し、示差走査熱量計(DSC)により測定される、30℃~160℃、好ましくは50℃~90℃の融点を一般に有する。ワックスの例は、特に、蜜蝋、カンデリラろう、カルナバワックス、アカシアワックスなどの動物性又は植物性由来のワックス;C14~C30の直鎖飽和脂肪酸及びC16~C36の直鎖飽和脂肪アルコールのエステル;C10~C30の直鎖及び飽和酸;C8~C30の直鎖及び飽和アルコール:並びにそれらの混合物である。45℃~55℃のスリップ融点を有する、UNIVAR製、商品名Cremerlin(登録商標)Puraの植物性トリグリセリドの混合物が言及され得る。これらのワックスは、微粒化された形態、すなわち、その粒子が50μm以下、特に0.5~50μm、好ましくは1~30μm、更には3~20μmの平均粒子径を有する形態で見いだされ、「平均粒子径」は、D50と呼ばれる、母集団の半分の統計的な粒度分析の分布によって与えられる寸法に相当する。
【0022】
好ましい実施態様によると、ワックスは、水素化植物性油から選択され、任意選択で、植物性トリグリセリドワックスなどの別のワックスと組み合わされる。水素化植物性油は、特に水素化した菜種油、大豆油、ひまわり油、ホホバ油、ココナッツ油、コプラ油、及びキャスター油並びにそれらの混合物が選択され得る。水素化キャスター油の使用が好ましい。
【0023】
本発明の好ましい実施態様によると、本発明による組成物は植物性由来のワックス以外のワックスを含まない。
【0024】
ワックスは、組成物の総質量の0.5質量%~5質量%を表し得る。
【0025】
上記成分とは別に、本組成物は脂肪層ゲル化剤を含まないことも好ましい。「脂肪層ゲル化剤」は、三次元ネットワークを形成することにより脂肪層のレオロジーを変化させる化合物を表す。そのような化合物は、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムで変性した(特にベントナイト及びヘクトライトの)疎水変成クレイ;疎水変成発熱シリカ;デキストリンパルミテート及びミリステート;ポリアミド、オレフィン/スチレンコポリマー、ポリアルキルアクリレート;Nomcort(登録商標)HGKなどの(好ましくは直鎖及び飽和の)C16~C26の脂肪酸グリセリド;セルロース誘導体及び類似物を含む混合物;並びにそれらの混合物を含む。
【0026】
アニオン性界面活性剤
本発明による組成物は、C6~C20の、好ましくはC12~C18の脂肪酸でN-アシル化されたアミノ酸の塩から選択される、アニオン性界面活性剤を特に含有する。この界面活性剤は、フォーミングの前後で安定な処方を与え、柔らかさ及び容易な広がり触感を含む、良好な化粧特性を有することが示された。組成物の安定性は特に、組成物が60℃で1週間及び/又は50℃で2か月、及び/又は40℃で6か月貯蔵される場合に、泡の滲出及び/又は減少がないという結果を特にもたらし得る。
【0027】
アニオン性界面活性剤は、有利には、アシル化グルタミン酸及びアシル化植物性タンパクの加水分解物の無機塩、特にナトリウム又はカリウム塩から選択され得る。
【0028】
アニオン性界面活性剤の例は、ラウロイルグルタミン酸のナトリウム塩、ココイルグルタミン酸のナトリウム塩及びカリウム塩、カプリロイルグルタミン酸の二ナトリウム塩、パルミトイルグルタミン酸のマグネシウム塩、ミリストイルグルタミン酸のカリウム塩、ラウロイルアスパラギン酸のナトリウム塩、ラウロイルグリシンのナトリウム塩、ココイルグリシンのナトリウム塩及びカリウム塩、ラウロイルサルコシンのナトリウム塩、ココイルアラニンのナトリウム塩、並びにラウリル酸でアシル化された燕麦又は小麦のたんぱく質加水分解物のナトリウム塩及びカリウム塩、並びにそれらの混合物から選択され得る。本発明によると、ラウロイルグルタミン酸のナトリウム塩の使用が好ましい。
【0029】
アニオン性界面活性剤は、組成物の総質量に基づいて、0.2質量%~2質量%、好ましくは0.5質量%~1質量%であり得る。
【0030】
気体
本発明による組成物は、少なくとも一つの気体を含有し、気体は空気、窒素、酸素及び二酸化炭素並びにそれらの混合物から選択されてもよい。空気及び窒素は本発明の使用に好ましい。
【0031】
組成物はしたがって、例えば、0.5~50μmのサイズで気体泡が補足される、半-固体クリームの外観を有する脂質エマルション中気体に擬することができる。フォームが使用の際にのみ形成されるエアロゾルに分配される組成物とは異なり、本発明による組成物は、フォームとして充填され、充填物中に数か月間この形態で貯蔵され得る。本発明の好ましい実施態様において、本発明による組成物が瓶内に充填される。
【0032】
構成内に上述の気体が存在することにより、組成物は、0.40g/cm3~0.75g/cm3、及び好ましくは0.45g/cm3~0.65g/cm3の密度を有する。密度は、既知の体積の比重瓶又はビーカーを使用する従来法で測定され得る。組成物の膨張率Φは、気体相の組み込みにより、組成物の体積増加として定義され、下記式に示される:
[式]
Φ=[(ρc-ρm)/ρm]×100
ρcはフォーミング前の組成物の密度であり、ρmはフォーミング後の密度である。膨張率は一般に30%~150%、好ましくは50%~110%、特に60%~80%である。
【0033】
他の成分
本発明により使用される組成物は、乳化剤、香料、保存料、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、pH調整剤、UVフィルター、粉末充填剤、顔料、染料及びそれらの混合物から選択される1以上の他の成分を更に含んでもよい。
【0034】
好ましい実施態様によると、組成物は、アシル基が14個~22個の炭素原子を含有するアシル乳酸塩である少なくとも一つの他のアニオン性界面活性剤、好ましくはラウロイル乳酸又はステアロイル乳酸のナトリウム塩を含有する。この追加の界面活性剤は、組成物の総質量の0.2質量%~2質量%及び好ましくは0.1質量%~1質量%を表してもよい。
【0035】
別法として又は加えて、組成物は、好ましくは少なくとも一つの脂肪アルコールと任意選択で組み合わせられるグリセロール又はポリグリセロールの脂肪酸エステルからなる、補助の界面活性剤として、少なくとも一つの非イオン性界面活性剤も含有してもよい。非イオン性界面活性剤は組成物の総質量の1質量%~10質量%及び好ましくは2質量%~6質量%を表し得る。
【0036】
好ましい実施態様によると、本発明による組成物はまた、触感を改善させるため、多孔又は中空の形態、好ましくは多孔のマイクロ粒子を挙げる、少なくとも一つの粉末充填剤を含有してもよい。これらのマイクロ粒子は、原則として実質球状である。これらの充填剤は原則として:
-特に天然デンプン、変性デンプン又はセルロースの多糖粉末;ポリ(メチルメタクリレート)などのアクリルポリマー粉末、ポリアミド又はポリオレフィン;サンゴモ(Corallina officinalis)などの乾燥海藻粉末などの有機充填剤;
-シリカ、クレイ、パーライト及びタルクなどの無機充填剤;
-並びにそれらの混合物
から特に選択され得る。
【0037】
デンプンは好ましくは、トウモロコシ、米、タピオカ又は小麦デンプンから選択される。変性デンプンの例は、前ゼラチン化させた及び/又は酸化させたデンプンであり、場合により塩化カルシウムの存在下で、アルケニル無水コハク酸、特にオクテニル無水コハク酸、又はドデシル無水コハク酸とのエステル化デンプン、及び特にヒドロキシプロピル化又はカルボキシメチル化させたエーテル化デンプン、及び特に四級化させた、カチオン化デンプンである。別の例は、トリメタリン酸ナトリウムによって架橋させたデンプンである。デンプン、好ましくは天然デンプンは、本発明において、有機充填剤の使用に好ましい。
【0038】
これらの充填剤は、組成物の総質量に基づいて、1質量%~10質量%、好ましくは2質量%~5質量%を表し得る。
【0039】
組成物は、1以上の保湿活性原料、特にグリセリン又はプロピレングリセロールなどのポリオールも含み、例えば、組成物の総質量の0.1質量%~5質量%、及び好ましくは0.3質量%~1質量%を表す。
【0040】
調製工程
上記組成物は下記連続工程を含む工程によって調製されてもよい:
-植物性バター、ワックス及びオイルを70℃~80℃の温度で混合する工程、
-混合物を25℃~40℃に冷却する工程、
-30%~150%、好ましくは50%~110%の膨張率に達するまで混合物に空気を導入する工程、及び
-結果として得られたフォーム組成物を、例えば少なくとも24時間、好ましくは少なくとも3日間、より好ましくは少なくとも6日間、熟成する工程。
【0041】
組成物への気体の導入は、典型的には機械撹拌及びガス供給手段を含むミキサー内で行われる。そのようなミキサーはMandomix(登録商標)の商品名でHAASから利用可能なエアレーション装置を含む。フォーミングの前に組成物を、少なくとも24時間、例えば少なくとも2日間、更には少なくとも3日間、又は更には少なくとも6日間、熟成させる工程を提供することが有利であってもよい。
【0042】
使用
本発明による組成物は、一般的にバターの触感を有した厚いクリームの形態である。一般には洗い流さない組成物である。
【0043】
皮膚への局所の塗布によって、乾燥肌の兆候を抑制又は治療するため、特に皮膚に栄養を与える及び/又は軟化させるために、それは使用される。別法として、髪、特に毛先に栄養を与えるために使用され得る。本発明による組成物はしたがって、大人及び子供の、体及び髪のすべての場所、特に顔、首及び/若しくは襟足、又は肘、膝、足、髪及び/若しくは唇などのより乾燥した場所に塗布され得る。一日に一回又は二回、好ましくは朝及び/又は晩に塗布され得る。
【実施例】
【0044】
本発明は、下記実施例の観点からより理解され、実施例は説明に役立つ目的のみで与えられ、特許請求の範囲で定義される発明の範囲を制限する意図はない。
【0045】
実施例1:本発明による組成物の調整
下記表に下記比率で使用した組成物から泡立てたバターを調整した。
【表1】
【0046】
これを行うため、油脂及び保存料を75℃で溶解させ、その後酸化防止剤を混合物に加え、その後500rpmで撹拌して均一化させた。50℃へ冷却した後、粉末充填歪を撹拌しながら加え、その後、組成物を30℃に冷却し、香料ベースを冷却工程中に加えた。
【0047】
得られた組成物を25℃~40℃に温め、供給ポンプ、組成物をせん断する混合ヘッド、気体導入バルブ及び背圧バルブを備えたMandomix(登録商標)(HAAS)型装置に移した。装置のパラメーターを、膨張率30%~150%に達するよう調製した。
【0048】
得られたバターは、軽い外観を有し、固定された際、柔らかくて触り心地の良い構成を有する白い撹拌されたクリームのようであった。
【0049】
実施例2:安定性試験
実施例1と同様の組成物のフォーミング前の50℃での安定性(ここでは「C1」)を同様のアニオン性界面活性剤の存在が本質的に異なる(ここでは「C2」、「C3」、「C5」)及びアニオン性界面活性剤が存在しない(「C4」)組成物と比較した。追加試験を、フォーミング前の実施例1の組成物(処方A1)と、界面活性剤の総割合は変化させずに、非イオン性界面活性剤のみ含有する、二つの同一の組成物(処方A2及びA3)の安定性を比較するため、行った。これら3つの組成物を60℃で1週間貯蔵した。
【0050】
結果を表1にまとめた。
【0051】
表1に示すように、本発明による、組成物C1、C2、C3、及びC5(それぞれA1)は、アシル化アミノ酸塩の形態のアニオン性界面活性剤を含有しない、組成物C4(それぞれA2又はA3)より安定である。
【0052】