(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】水溶液からのヨウ素の回収方法
(51)【国際特許分類】
C01B 7/14 20060101AFI20220830BHJP
C07C 237/32 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
C01B7/14 Z
C07C237/32
(21)【出願番号】P 2019567625
(86)(22)【出願日】2018-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2018064981
(87)【国際公開番号】W WO2018224581
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-06-03
(32)【優先日】2017-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504448162
【氏名又は名称】ブラッコ・イメージング・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】BRACCO IMAGING S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ラウラ・ガリンベルティ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・バニン
(72)【発明者】
【氏名】ソニア・ガッツェット
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンダ・ディ・ジョルジョ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルタ・フレッタ
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】西独国特許出願公開第19702814(DE,A1)
【文献】特公昭39-011454(JP,B1)
【文献】特開昭57-205304(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103508421(CN,A)
【文献】特表平8-502469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 7/14
C07C 237/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素含有芳香族化合物
、および
ヨウ化物イオンを含んだヨウ素含有無機化合物を含む水溶液からヨウ素分子を回収する方法であって、以下の工程:
A)ヨウ素含有芳香族化合物のヨウ素をヨウ素分子に変換すること;および
B)ヨウ素分子を収集すること
を含み、
工程Aの変換がなされるヨウ素含有芳香族化合物を含む水溶液のpHは、1以下であ
り、そして、溶液中の、ヨウ化物イオンと芳香族化合物に含まれるヨウ素との重量比が、少なくとも0.5以上である、回収方法。
【請求項2】
水溶液のpHが0.5以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程Aが触媒の非存在下で実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程Aの変換が、80℃~300℃の温度に水溶液を加熱することにより実施される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
温度が90℃~200℃である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
温度が100℃~150℃である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記重量比が、少なくとも1以上である、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
工程Aで収集した溶液に酸化剤を加え、残留し得るヨウ化物イオンをヨウ素分子に変換することを含む工程A’をさらに含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程Bが、本方法の工程Aおよび/またはA’で形成されたヨウ素分子を昇華により除去し、別の装置で収集することを含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
残留し得るヨウ素含有芳香族化合物および/またはヨウ素分子の回収を含む工程Cをさらに含む、請求項1~
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程Cが、
i)工程A、A’またはBのいずれかからの水溶液を、残留する、未分解のヨウ素含有芳香族化合物、ヨウ素含有無機化合物および/またはヨウ素分子を固定する吸着材を含むカラムに供給すること、
ii)カラムを塩基で処理することにより、ヨウ素含有芳香族化合物、ヨウ素含有無機化合物およびヨウ素分子を脱着し、ヨウ素含有芳香族化合物、ヨウ素含有無機化合物および/またはヨウ素分子を含む濃縮塩基性溶液を得ること、
を含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記塩基性溶液が、任意の酸性化の後、本方法の工程Aに再利用される、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記塩基性溶液が、ヨウ素含有芳香族化合物をヨウ化物に変換する無機化処理に付される、請求項
11に記載の方法。
【請求項14】
前記ヨウ化物が、本方法の工程AまたはA’に再利用される、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
工程Aの水溶液が、X線造影剤またはそのヨウ素含有中間体を製造する工業プロセスから直接収集されたものである、請求項1~
14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記水溶液が、ベンゼンモノまたはジカルボン酸、または、アミノベンゼンモノまたはジカルボン酸のヨウ素化誘導体を含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記プロセスが、5-アミノ-1,3-ベンゼンジカルボン酸、および、式(I):
【化1】
[式中、
R
1は、1つ以上のヒドロキシル基で置換されたC
1-C
3アルキルであり、
R
2は、Hであるか、またはR
1と同じである。]
で示されるそのN,N’-ビスアミドからなる群から選択される放射線造影剤中間体のヨウ素化を含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項18】
前記中間体が、5-アミノ-1,3-ベンゼンジカルボン酸である、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
本方法の工程Aにおいて、芳香族化合物に含まれるヨウ素のヨウ素分子への変換が、95%(w/w)以上である、請求項
15~
18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
ヨウ素含有芳香族化合物およびヨウ素含有無機化合物を含む水溶液からヨウ素分子を回収する方法であって、以下の工程:
A)芳香族化合物に含まれるヨウ素をpH1未満でヨウ素分子に直接変換すること、
A’)工程Aの溶液に酸化剤を加えることにより、残留し得るヨウ化物イオンをヨウ素分子に酸化すること、
B)工程Aおよび/またはA’で形成されたヨウ素分子を収集すること、
C)残留し得るヨウ素含有芳香族化合物および/またはヨウ素分子を回収すること、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ヨウ素、特に、ヨウ素含有芳香族化合物を含む水溶液からヨウ素を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在使用されている市販の放射線造影剤(例えば、Bracco Imagingのイオパミドールおよびイオメプロールが挙げられる)のほとんどは、三ヨウ素化芳香環を含むことを特徴としている。
【0003】
これらの造影剤およびその中間体の製造方法では、その方法にもよるが、いろいろな酸化状態で無機の形態(すなわち、遊離イオンまたは無機化合物に組み込まれて)、または有機の形態(すなわち、有機化合物に組み込まれて)の両方で存在し得るヨウ素を含む、母液および廃水が生成される。
【0004】
近年、ヨウ素の回収は、経済的および環境的理由の両方で、ますます重要になっており、実際、高価な原材料であり、その排出には非常に厳しい制限が課されている。
【0005】
この観点から、有機および無機のヨウ素両方の高い回収率を確保し、実質的にヨウ素を含まない廃液をもたらす廃水処理の実施は、ヨウ素化造影剤の工業的製造にとって主要なポイントとなる。
【0006】
ヨウ素の効率的な回収のための重要な工程は、ヨウ素含有芳香族化合物、典型的にはヨウ素化造影剤およびその中間体に組み込まれた有機ヨウ素の除去、およびその後回収されるヨウ素分子への変換である。
【0007】
EP0106934は、銅イオンまたは微分散の銅の存在下で、有機化合物に含まれるヨウ素をヨウ化物に変換する無機化方法を開示している。その後、ヨウ素の回収は、無機化された溶液の酸性化、形成されたヨウ化物の酸化、およびヨウ素元素の回収によって行われる。
【0008】
EP1133346は、無機化中に母液または廃水の熱濃縮物を処理し、有機溶媒を除去し、酸化工程の前にナノろ過により濃縮溶液を精製することを含む、上記の方法の改良を提案している。
【0009】
CN103508421は、有機化合物に含まれるヨウ素のヨウ化物イオンへの変換(特にアルカリ還元)を、アルカリ性条件(pH12以上)での還流下、銅粉末、マグネシウム粉末、亜鉛粉末、鉄粉末、およびそれらの混合物から選択される還元物質の存在下で実施する、代替的なヨウ素回収方法を開示している。その後、H2O2-FeCl3複合酸化剤を用いて、ヨウ化物イオンをヨウ素分子に変換し、ろ過によって分離する。
【0010】
CN105460896は、C/Fe2+およびFe/Fe3+から選択される酸化混合物を使用すること(酸化変換)により、有機化合物に含まれるヨウ素を、酸性条件下でヨウ素分子またはヨウ化物イオンに変換する、産業廃棄物からヨウ素を回収する複数工程の方法を開示している。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、概して、ヨウ素含有(単に「ヨウ素化」という)芳香族化合物に含まれるヨウ素(以下「有機ヨウ素」という)を、ヨウ素分子に直接変換し、回収することを含む、ヨウ素含有芳香族化合物を含む水溶液の処理方法に関する。
【0012】
より具体的には、本発明は、ヨウ素含有芳香族化合物およびヨウ素含有無機化合物を含む水溶液から、ヨウ素分子を回収する方法であって、以下の工程:
A)ヨウ素含有芳香族化合物のヨウ素をヨウ素分子に変換すること;および
B)ヨウ素分子を収集すること
を含み、
工程Aの変換がなされるヨウ素含有芳香族化合物を含む水溶液のpHは、1以下である回収方法、に関する。
【0013】
さらにより具体的には、本発明は、水溶液のpHが0.5以下、例えば0.01~0.3である、上記で規定された方法に関する。
【0014】
反応温度は、好ましくは少なくとも80℃以上、より好ましくは少なくとも90℃以上、さらにより好ましくは100℃以上であり、その温度は、好ましくは300℃未満、より好ましくは200℃未満である。特に、工程Aの変換は、80℃~300℃、好ましくは90℃~200℃、より好ましくは100℃~150℃の温度に、水溶液を加熱することにより実施される。
【0015】
注目すべきことに、本発明の方法によれば、芳香族化合物に含まれるヨウ素のヨウ素分子への工程Aによる変換は、触媒の非存在下で効率的に実施される。
【0016】
変換は、好ましくは、無機陰イオン(例えば、ハロゲン化物、硫酸塩、または硝酸塩が挙げられる)の存在下で行われる。(処理されるのに)好ましい水溶液は、さらにヨウ化物イオンを含む。
【0017】
一実施形態では、本発明は、触媒の非存在下で、その化合物に組み込まれたヨウ素をpH1未満でヨウ素分子に変換する、ヨウ素化芳香族化合物を含む水溶液からのヨウ素の処理および回収方法に関する。
【0018】
好ましい実施形態では、本発明は、放射線造影剤またはそのヨウ素化中間体を製造する工業的方法による水性の液体からのヨウ素の処理および回収方法に関する。
【0019】
一実施形態では、本方法は、以下の工程を含む。
A)ヨウ素化芳香族化合物に含まれるヨウ素を、pH1未満でヨウ素分子に変換すること;
A’)ヨウ化物イオンのヨウ素分子への任意の酸化;
B)形成されたヨウ素分子の収集;および、
C)残留するヨウ素の任意の回収。
【発明を実施するための形態】
【0020】
特に断りのない限り、本明細書および特許請求の範囲における用語は以下のとおりである。
・「ヨウ素含有芳香族化合物」とは、炭素原子に結合した少なくとも1つのヨウ素原子を含む芳香族化合物を意味する。
・「有機ヨウ素」とは、通常、炭素原子に共有結合した有機化合物、好ましくは芳香族化合物、に含まれるヨウ素を意味する。
・「ヨウ素含有無機化合物」とは、無機酸または塩などの無機化合物に含まれるヨウ素を意味し、ヨウ化物イオンが含まれる。
・「ヨウ化物」または「ヨウ化物イオン」とは、通常、水溶液中の場合に解離した形態となり、プロトンまたは他のカウンター陽イオンと結合し得る、酸化数-1のヨウ素、すなわち、I-イオン、を意味する。
・「無機ヨウ素」とは、無機酸または塩(例えば、ヨウ素酸またはヨウ素酸塩)などの無機化合物に含まれるヨウ素を含む、さまざまな酸化状態のヨウ素を意味する。
【0021】
本発明は、概して、ヨウ素含有芳香族化合物およびヨウ素含有無機化合物を含む水溶液からヨウ素分子を処理および回収するための方法に関し、前記方法は以下の工程を含む。
A)ヨウ素含有芳香族化合物のヨウ素をヨウ素分子に変換すること;および、
B)ヨウ素分子を収集すること。
ここで、工程Aの変換がなされるヨウ素化芳香族化合物を含む水溶液のpHは、1以下である。
【0022】
本方法の工程Aは、上記のように、酸性条件下で実施される。
【0023】
適切な条件としては、pHが、1未満であり、好ましくは0.5未満である。より好ましくは、本方法の工程Aは、0.3未満(例えば約0)のpHの水溶液で実施される。必要に応じて、処理される溶液のpHは、これらのpH値に、例えば、HCl、H3PO4、および50%H2SO4から選択される(強)酸の添加によって、適切に調整されてもよい。
【0024】
反応は、好ましくは80℃よりも高い温度、例えば、80℃~300℃、より好ましくは90℃~200℃で実施される。
【0025】
より好ましくは、本方法の工程Aは、100℃~150℃の範囲の温度で、例えば約140℃~150℃で、実施される。
【0026】
特に好ましい実施形態では、本方法の工程Aは、pHが1未満、好ましくは0.5未満の水溶液を90℃よりも高い温度で、好ましくは100℃~150℃、例えば約140℃~150℃で、加熱することによって行われる、芳香族化合物に含まれるヨウ素を直接ヨウ素分子に変換する処理を含む。
【0027】
芳香族化合物に含まれるヨウ素のヨウ素分子への直接的な変換は、具体的には、水素化脱ヨウ素化反応である。
【0028】
「水素化脱ヨウ素化」(または「プロト脱ヨウ素化」)との用語は、その意味内に、芳香環の炭素原子に結合したヨウ素原子が水素原子に置き換わる反応を含む。
【0029】
水素化脱ヨウ素化に付される水溶液は、ヨウ素含有芳香族化合物を含む。溶液中の芳香族化合物の濃度は、好ましくは、0.01mg/g以上であり、好ましくは、例えば0.1mg/g~20mg/gである。
【0030】
好ましい実施形態では、水素化脱ヨウ素化に付される水溶液は、ヨウ素含有芳香族化合物およびヨウ化物イオンを含む。
【0031】
これらの溶液の適切な例としては、例えば、通常pHが1未満であり、以下のものを含む、ヨウ素化造影剤、特に非イオン性X線造影剤の製造のための工業プロセスから生じる水性の液体、が挙げられる。
・ヨウ化物、および任意にヨウ素分子。
・ヨウ素化芳香族化合物。
【0032】
これらの水性の液体はさらに以下を含んでもよい。
・ヨウ化物またはヨウ素分子以外の無機ヨウ素。
・非ヨウ素化有機化合物。
・塩化物、硫酸塩、リン酸塩などの、非ヨウ素化無機陰イオン。
【0033】
溶液中のヨウ化物:有機ヨウ素の重量比(すなわち、ヨウ化物イオンの重量 対 芳香族化合物に組み込まれたヨウ素の重量)は、好ましくは、少なくとも0.5以上である。
【0034】
この比は、より好ましくは、少なくとも1以上であり、さらにより好ましくは、少なくとも2以上であり、例えば、10以下である。
【0035】
上記のより好ましい条件下では、ヨウ素化芳香族化合物のほぼ完全な水素化脱ヨウ素化を得ることができ、(処理溶液内における)有機ヨウ素のヨウ素分子へのほぼ定量的な変換が可能になり、本方法の工程Bに従って容易に収集することができる。
【0036】
注目すべきことに、本発明の方法によれば、この変換は、脱ハロゲン化または変換触媒の非存在下でなされる。
【0037】
一実施形態では、工程Aの水素化脱ヨウ素化反応は、大気圧および100℃未満の温度で実施される。
【0038】
他の実施形態では、工程Aは、より高い温度、例えば100℃以上で実施される。この場合、約140℃~150℃の反応温度に達することができ、例えば、上端がタンクの本体に外側フランジで開くタンクを備えた適切な装置が用いられ、大気圧よりも高い圧力で水素化脱ヨウ素化反応を行うことができ、水素化脱ヨウ素化反応の完了を促進する。反応温度に応じて、処理の圧力は、例えば1atm~85atm、好ましくは1atm~15atm、より好ましくは1atm~5atmに変えることができ、例えば、約3.5barにできる。
【0039】
一般に、液中のヨウ素含有芳香族化合物のヨウ素分子への完全な変換を行うことができる反応時間は、ヨウ化物イオン含有量、および水素化脱ヨウ素化条件、例えば反応温度および溶液pHなど、に依存する。
【0040】
例えば、水素化脱ヨウ素化が、ヨウ化物イオン含有量が高く、例えば有機ヨウ素の含有量(重量)以上の、pHが0.5未満、例えば約0~0.3の水溶液において、100℃より高い、好ましくは140℃~150℃の温度で実施された場合、有機ヨウ素のヨウ素分子への、90%(w/w)以上、より好ましくは95%(w/w)以上、さらに好ましくは97%(w/w)以上、またはそれ以上(元の出発溶液の芳香族化合物に含まれるヨウ素量に対して)の変換は、3時間未満で、例えば、20分~120分、好ましくは20分~60分の範囲の時間でなされる。
【0041】
あるいは、本方法の工程Aが、より低い温度で、例えば約100℃で実施される場合、同様の変換は、例えば20~50時間、好ましくは20~30時間、より好ましくは約25時間の時間でなされる。
【0042】
工程Aの水素化脱ヨウ素化が行われた後(またはその間)、任意に工程A’によって残留する無機ヨウ素を酸化した後、残存する水溶液を工程Bに従って処理し、形成されたヨウ素分子を収集する。
【0043】
一実施形態では、本方法の工程A中に形成されたヨウ素分子は、本方法の工程Bに従って、反応環境から昇華によって(例えば、連続的に)、例えば、別の装置で収集される純粋なヨウ素の蒸気流を形成して、(少なとも1部が)直接除去される。あるいは、工程A中に生成したヨウ素分子は、反応が完了するまで反応器内の水溶液中に残り、そこで沈殿し(例えば、冷却後)、ろ過により除去される。
【0044】
他の実施形態では、工程Aの後、本方法は、残留し得るヨウ化物イオンのヨウ素分子への酸化を含む、任意の工程A’をさらに含む。
【0045】
任意の工程A’は、例えば、(溶液中の)ヨウ化物:有機ヨウ素の比が、0.5より大きい、好ましくは1より大きい、ヨウ化物の豊富な水溶液を処理するのに、有利に実行することができる。
【0046】
好ましくは、工程A’の酸化は、酸性条件下、例えば、工程Aから生じる酸性溶液への酸化剤の添加により、実施される。
【0047】
一実施形態では、酸化剤は、工程Aから収集された酸性溶液に添加され、液中に残留し得るヨウ化物イオンをヨウ素分子に変換する。
【0048】
あるいは、酸化剤は、水素化脱ハロゲン化の終了時に、水素化脱ハロゲン化を行った反応器に直接添加してもよい。
【0049】
適切な酸化剤は、例えば、次亜塩素酸塩、塩素酸塩、塩素(ガス)、亜硝酸塩、および過酸化水素からなる群から選択され、後者のものが特に好ましい。
【0050】
酸化剤、例えば過酸化水素(H2O2)は、例えば少量ずつ、工程Aから収集された酸性溶液に、30~120分、好ましくは50~70分、例えば約60分の時間で、混合物の酸化還元電位が600mV(例えば、D.R.Lide,CRC Handbook of Chemistry and Physics,ed.83rd,2002 CRC Press LLC,pag.8-21からpag.8-23を参照)に達するまで、添加される。
【0051】
一実施形態では、H2O2は、例えば、50℃未満、好ましくは20℃~40℃、より好ましくは20℃~30℃の温度に予め冷却される、工程Aから収集された溶液に、例えば室温で添加され、それにより、本方法の工程Bに従って、ヨウ化物の酸化により形成されたヨウ素分子の沈殿を促進し、その沈殿はろ過により収集される。
【0052】
好ましい実施形態では、本方法の工程A’は、工程Aで得られた、同じ反応器内で約100℃の温度において撹拌下で保持された酸性液に、直接、H2O2を少しずつ添加することを含む。
【0053】
この温度で処理する場合、工程Aおよび任意に工程A’で形成されたヨウ素分子は、本方法の工程Bに従って、例えば、別の装置で収集される純粋なヨウ素の蒸気流を形成して、昇華によって高温の液体から適切に除去される。
【0054】
特に、一実施形態では、本方法の工程Bは、本方法の工程Aおよび/またはA’中に形成されたヨウ素を、昇華によって、例えば蒸気流で、除去し、別の容器に昇華したヨウ素を収集することを含む。あるいは、特に、工程Aが加圧下で密閉した反応器内で実施される場合、工程A中に生成したヨウ素は、任意の工程A’が開始するまでそのような反応器内に留まってもよい。
【0055】
例えば、工程Bによれば、ヨウ素を含む蒸気流は、運ばれて、I2がヨウ素酸塩(I+5)イオンおよびヨウ化物(I-1)イオンに不均化する吸収液、例えば、有機溶媒、または好ましくはアルカリ、例えば30%水酸化ナトリウム(NaOH)で収集される。アルカリ液の、例えば50%硫酸(H2SO4)による酸性化によって、ろ過によって収集され、所望の放射線造影剤の製造方法に再利用される、純粋なヨウ素分子(I2)の沈殿が生じる。
【0056】
上記の工程A、A’またはBのそれぞれの後、残留する有機、無機および/または分子のヨウ素の量がさまざまな(通常AからBにおいて減少する)水溶液が得られる。
【0057】
一実施形態では、本発明の方法は、任意の有機ヨウ素、無機ヨウ素および/またはヨウ素分子の残留物を回収するための追加の工程Cをさらに含む。有機ヨウ素の残留物は、例えば、本方法の工程Aでの、例えば、最適よりも劣る温度または時間で、または十分に酸性でない廃棄物質で、または特にヨウ化物が不足して、実施された不完全な脱ヨウ素化に由来し得る。その他としては、ヨウ素分子の残留物は、工程Bでの、例えば、ヨウ素分子の溶解性(低下しても)のある水溶液からの沈殿およびろ過により実施された、または水溶液からの不完全な昇華が原因となった、不完全な回収に由来し得る。
【0058】
工程Cは、例えば、工程Bから生じる水性の液体、すなわち、工程Aおよび/またはA’で形成されたヨウ素の除去および収集後に残る液体を、吸着剤、例えばカーボンまたはXAD樹脂が充填された1つ以上のカラムに供給することによって実施される。残留する微量の有機、無機、および/または分子のヨウ素は、まず、カラムに固定され、その後、例えば、適切な溶媒または塩基の使用により脱着されて、本方法の工程Aに再利用できる濃縮溶液を得る。あるいは、例えばEP0106934に開示されているような公知の方法に従って処理されてもよい。
【0059】
より具体的には、上記方法の工程Cは、好ましくは、以下を含む。
i)上記の工程A、A’またはBのいずれかからの水溶液を、残留する、未分解のヨウ素含有芳香族化合物、ヨウ素含有無機化合物および/またはヨウ素分子を固定する、好ましくはカーボンまたはXAD樹脂から選択される吸着材料を含むカラムまたは直列のカラムセットに供給し;その後、実質的にヨウ素を含まない処理溶出液を排出すること;
ii)ヨウ素含有芳香族化合物、ヨウ素含有無機化合物および/またはヨウ素分子を、例えば、カラムを溶媒または塩基(例えば、NaOH30%)で処理することにより、脱着し、前記ヨウ素含有芳香族化合物、ヨウ素含有無機化合物および/またはヨウ素分子を含む濃縮塩基性溶液を得ること;
iii)任意に上記の値に酸性化した後、塩基性溶液を本方法の工程Aに再利用すること;また、あるいは、
iv)工程ii)で収集された塩基性溶液を、例えば、EP0106934に開示されているような無機化に付し、有機ヨウ素を、本方法の工程Aまたは工程A’に再利用されるヨウ化物に変換し、または、上記のようにろ過または昇華によって収集されるヨウ素分子に直接酸化すること。
【0060】
上記の工程ii)のヨウ素分子(I2)は、通常、ヨウ素酸(I+5)イオンとヨウ化物(I-1)イオンに不均化される。
【0061】
したがって、一実施形態では、本発明の方法は以下を含む。
A)芳香族化合物に含まれるヨウ素をヨウ素分子に変換するための、ヨウ素化芳香族化合物の水素化脱ヨウ素化;
A’)残留し得る無機ヨウ素含有化合物(例えば、ヨウ化物)のヨウ素分子への酸化;
B)例えば、沈殿または昇華による、形成されたヨウ素の除去および収集;および、
C)残留するヨウ素含有化合物またはヨウ素分子の回収。
【0062】
上記の方法は、そのバリエーションを包括しており、一般的に使用され、さまざまな形態のヨウ素(例えば上記で定義したようなヨウ化物、分子、および/または無機ヨウ素の混合物中の有機ヨウ素)を含む溶液(特に工業液)を効率的に処理することができる。特に、本方法は、各ヨウ素の形態の濃度に依存することなく、放出され得る、ヨウ素を実質的に含まない排出された廃棄物質の収集によって、総ヨウ素含有量の実質的に定量的な回収を提供する。この程度まで、もし存在する場合、本方法の工程Aの酸性条件下およびヨウ化物の存在下において、酸化状態が1より大きい任意の微量の無機ヨウ素は、通常、ヨウ素分子に変換され得る。
【0063】
吸着/脱着の工程Cにより、熱濃縮などの濃縮処理を行うことなく、希釈溶液に存在する有機ヨウ素を効率的に回収できることは、注目に値する。熱濃縮は大きなエネルギーを必要とするため、その除去は、大きな工業規模で適用されるプロセスにおいて特に有利である。
【0064】
特に、本発明の方法は、強酸性の液体、例えば、通常、高含有量のヨウ化物を含む放射線造影剤中間体の工業的製造プロセスから直接収集される強酸性の液体を、効率的に処理することを可能にし、工程Aにおいて直接、液中の有機ヨウ素のヨウ素分子への徹底的な変換を促進し、例えば、実施例1および9の試験で示されるように、本方法の工程AおよびA’から全ヨウ素の実質的に定量的な回収をもたらす。
【0065】
好ましい実施形態では、本方法は、以下を含む。
A)pH1未満で、芳香族化合物に含まれるヨウ素をヨウ素分子に直接変換すること;
A’)工程Aの溶液に酸化剤を添加することにより、残留し得るヨウ化物イオンをヨウ素分子に酸化すること;
B)工程Aおよび/またはA’で形成されたヨウ素分子を収集すること;および、
C)残留し得るヨウ素含有芳香族化合物、ヨウ素含有無機化合物および/またはヨウ素分子を回収すること。
【0066】
実際には、上記の方法は、上記で広く述べられているように、提供された順序で工程AからCを実行することで実施することができ、この場合、工程Aによるヨウ素化芳香族化合物の水素化脱ヨウ素化は、工程Bにより収集されるヨウ素分子の形成を伴う、任意に同じ反応器で直接、工程A’により実施される残留ヨウ素の酸化よりも先行し、そして、残留溶液は、任意に、提案された方法の工程Cに従って、有機ヨウ素および/またはヨウ素分子の任意の残留物の回収に供される。
【0067】
A’からCまでの工程が異なる設計手順で実行される、または任意の工程A’およびCの一方または両方を含まない、上記の実施の任意の変形例は、本発明の範囲に含まれるものとみなされるべきである。
【0068】
例えば、一実施形態では、特に、処理される水溶液が低濃度のヨウ化物イオンを有する場合(例えば、溶液中のヨウ化物:有機ヨウ素の比が0.5未満の場合)、本発明の方法は、工程A’を含むことなく、実施され得る。この場合、残留する有機または分子のヨウ素の回収を含む工程Cは、(この後)工程Bに従って行われる、本方法の工程Aで形成されたヨウ素の回収の直後に行われる。
【0069】
異なる実施形態では、例えば、工程AまたはA’の反応が開放型の反応器で実行される場合、工程Bは、これらの工程がそれぞれ終了する前に、開始され得る。
【0070】
別の実施形態では、本方法の工程Cは、工程A’に先行し、それにより、工程Aで得られた溶液から残留有機ヨウ素を除去し得る。この場合、例えば、ヨウ化物のその後の酸化は、より低温度で、例えば室温で、都合よく実施することができ、ろ過および任意に公知の方法に従ってさらに精製されるヨウ素分子の沈殿をもたらす。
【0071】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、ベンゼンモノまたはジカルボン酸、またはアミノベンゼンモノまたはジカルボン酸のヨウ素化または部分ヨウ素化誘導体(例えば、アミノベンゼンジカルボン酸のモノ、ジおよびトリヨウ素化誘導体)を含む、X線造影剤およびそのヨウ素化中間体の製造のための工業プロセスから収集された液体の処理に効率的に使用される。
【0072】
これらの製造方法は、一般的な工程として、例えばWO96/37458の開示で実施される、芳香族基質、より典型的には、5-アミノ-1,3-ベンゼンジカルボン酸のヨウ素化を含む。
【0073】
あるいは、放射線造影剤の製造方法は、例えばGB1472050またはEP1337505に開示された、酸性条件下、NaICl
2またはKICl
2の存在下で実施される、5-アミノ-1,3-ベンゼンジカルボン酸のN,N’-ビス-アミド、例えば、式(I):
【化1】
[式中、
R
1は、1つ以上のヒドロキシル基で置換されたC
1-C
3アルキルであり、
R
2は、Hであるか、またはR
1と同じである。]
の化合物のヨウ素化を含み得る。
【0074】
好ましくは、上記式(I)において、R1はプロパンジオール、例えば、1,3-プロパンジオールであり、R2はHである。
【0075】
上記のヨウ素化プロセスから直接収集された母液は、それ自体、最適な酸性条件、すなわちpHが1未満、通常0.5未満で、かなりの量の未反応のヨウ化物、およびヨウ素化または部分ヨウ素化芳香族化合物(例えば、5-アミノ-1,3-ベンゼンジカルボン酸のモノ、ジおよびトリヨウ素化誘導体)を含む。
【0076】
したがって、これらの液体は、本発明の方法それ自体で、すなわち、熱濃縮または酸または任意の追加の反応剤の添加を必要とせずに処理され、例えば95%を超える、好ましくは96~100%、より好ましくは97~100%、最も好ましくは98~100%、例えば、工程Bで直接98~99%の、全ヨウ素回収率をもたらす。
【0077】
興味深いことに、実際、これらの工業液がそれ自体で、本発明のヨウ素回収方法によって処理されると、95%、好ましくは97%を超える(処理溶液内での)有機ヨウ素のヨウ素分子へのほぼ定量的な変換が、本方法の工程Aで直接有利に得られ、冗長で不要な追加の工程Cを避けることができる。
【0078】
特に好ましい実施形態では、本発明は、5-アミノ-2,4,6-トリヨード-1,3-ベンゼンジカルボン酸、および上記式(I)で示されるその1,3-ベンゼンジカルボキサミドからなる群から選択される放射線造影剤中間体の製造のための工業的ヨウ素化プロセスから直接収集される液体からのヨウ素の処理および回収の方法に関する。
【0079】
最も好ましくは、本方法は、5-アミノ-2,4,6-トリヨード-1,3-ベンゼンジカルボン酸の製造のための工業プロセスから収集される水性液からのヨウ素の回収および再利用を含む。
【0080】
本発明のヨウ素化プロセスに関するさらなる詳細は、本発明をより詳細に説明することのみを目的として、以下の実施例の欄で述べられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0081】
以下の実施例は、5-アミノ-1,3-ベンゼンジカルボン酸、または同様の1,3-ベンゼンジカルボキサミドのモノ、ジ、およびトリヨウ素化誘導体として有機ヨウ素、およびヨウ化物を実質的に含む工業液、またはその模擬組成物で、実施される。
【0082】
実施例1:水素化脱ヨウ素化+酸化
工程A:水素化脱ヨウ素化
例えばWO96/37458に開示されたヨウ素化プロセスから得られたpH<0.1の、ヨウ化物10.28g(銀滴定により測定)、および、5-アミノ-1,3-ベンゼンジカルボン酸のモノ、ジ、およびトリヨウ素化誘導体として有機ヨウ素2.00g(Zn/NaOH処理による有機ヨウ素分解後に銀滴定により測定(例えば、欧州薬局方、9.0版、2795-2797ページでイオパミドールについて記載されたヨウ素アッセイを参照))を含む、工業母液1.000kgを、機械式撹拌器と温度計を備え、15%水酸化ナトリウム溶液が充填されたドレクセルトラップに接続されたジャケット付き反応器に投入した。
混合物を100℃に加熱し、約24時間撹拌を続けた。水素化脱ヨウ素化が生じ、水酸化ナトリウムを含むトラップでの吸収により収集されたヨウ素分子の紫色の蒸気を形成した。
最終的に、残留する有機ヨウ素濃度は、0.06g/kgであり、有機ヨウ素のヨウ素分子への直接的な変換は、97.0%に相当した。
トラップで収集されたヨウ素は、初期の全ヨウ素含有量の約31.6%に相当した。
【0083】
工程A’:酸化
次に、混合物を100℃に保ちながら5%の過酸化水素水を加えた。添加は、酸化還元電位が600mVになるまで、0.75時間で行われた。ヨウ化物は、昇華する元素(分子)ヨウ素に酸化され、水酸化ナトリウムを含むトラップでの吸収により収集される蒸気を形成した。
得られた混合物を同じ温度で1時間さらに撹拌して反応とヨウ素の昇華を完了させ、その後、80分で室温まで冷却した。
処理後の溶液(0.926kg)は、残留量のヨウ化物(0.08g)および有機ヨウ素(0.055g)を含んでいた。
工程A’の後、トラップに収集されたヨウ素は、全回収率98.8%に相当した。
【0084】
実施例2:水素化脱ヨウ素化+酸化+カーボンカラムでの処理
工程A:水素化脱ヨウ素化
ヨウ化物5.48g/kg、および、実質的に5-アミノ-1,3-ベンゼンジカルボン酸のモノ、ジ、およびトリヨウ素化誘導体として有機ヨウ素2.04g/kgを含む、pH=0.24の水溶液3.750kgを、機械式撹拌器と温度計を備え、15%水酸化ナトリウム溶液が充填されたドレクセルトラップに接続されたジャケット付き反応器に投入した。混合物を100℃に加熱し、約24.5時間撹拌を続けた。水素化脱ヨウ素化が生じ、水酸化ナトリウムを含むトラップでの吸収により収集されたヨウ素分子の紫色の蒸気を形成した。最終的に、残留する有機ヨウ素濃度は、0.24g/kgであり、有機ヨウ素のヨウ素分子への直接的な変換は、88.2%に相当した。
トラップで収集されたヨウ素は、初期の全ヨウ素含有量の約48%に相当した。
【0085】
工程A’:酸化
次に、混合物を100℃に保ちながら5%の過酸化水素水を加えた。添加は、酸化還元電位が600mVになるまで、1時間で行われた。ヨウ化物は、酸化され、水酸化ナトリウムを含むトラップでの吸収により収集されたヨウ素分子の蒸気を形成した。得られた混合物を同じ温度で1時間さらに撹拌して反応とヨウ素の昇華を完了させ、その後、60分で室温まで冷却した。
処理後の溶液(3.459kg)は、残留量のヨウ化物(0.09g/kg)および有機ヨウ素(0.24g/kg)を含んでいた。
工程A’の後、トラップに収集されたヨウ素は、全回収率96.0%に相当した。
【0086】
工程C:カーボンカラムでの処理
工程Aおよび工程A’の処理を繰り返して、13.55kgの処理溶液を調製した(ヨウ化物/ヨウ素分子0.12g/kg、有機ヨウ素0.20g/kg)。
この溶液を、30.5gのドライカーボン(80mLのウェットカーボンのベッドに相当)が充填されたカーボンカラムに供給した。供給操作は、流速3BV/h、60℃で行い、溶液とカーボンの両方を加熱した。
溶出液を、Knauer検出器(λ=335nm)を用いてUVでモニタリングし、吸光度が0.03μAを超えたときに供給を停止した。
カーボン1gあたり約85mgの有機ヨウ素と24mgのヨウ化物/ヨウ素分子が吸着された。80mLの水酸化ナトリウムおよび320mLの水を、吸着したヨウ素を回収するために、流速2BV/h、60℃で、カーボンベッドに供給した。
得られた溶液(412g)は、それぞれ、5.24g/kgおよび0.56g/kgの有機ヨウ素およびヨウ化物含有量を有しており、EP106934に記載された従来技術の条件に従って処理するか、工程Aで再利用することができる。
工程A、A’およびCを考慮すると、全ヨウ素回収率は98.2%であった。
脱着工程の後、カーボンベッドはリサイクルして再使用できる。
【0087】
実施例3:水素化脱ヨウ素化+酸化
工程A:水素化脱ヨウ素化
ヨウ化物6.66g/kg、および、主に5-アミノ-1,3-ベンゼンジカルボン酸のモノ、ジ、およびトリヨウ素化誘導体として有機ヨウ素1.51g/kgを含む、pH=0.28の水溶液3.790kgを、機械式撹拌器と温度計を備え、15%水酸化ナトリウム溶液が充填されたドレクセルトラップに接続されたジャケット付き反応器に投入した。
混合物を100℃に加熱し、約25時間撹拌を続けた。水素化脱ヨウ素化が生じ、水酸化ナトリウムを含むトラップでの吸収により収集されたヨウ素分子の紫色の蒸気を形成した。
最終的に、残留する有機ヨウ素濃度は、0.16g/kgであり、有機ヨウ素のヨウ素分子への変換は、89.4%に相当した。
トラップで収集されたヨウ素は、初期の全ヨウ素含有量の約33%に相当した。
【0088】
工程A’:酸化
次に、混合物を100℃に保ちながら5%の過酸化水素水を加えた。添加は、酸化還元電位が600mVになるまで、1時間で行われた。ヨウ化物は、昇華するヨウ素元素に酸化され、水酸化ナトリウムを含むトラップでの吸収により収集された蒸気を形成した。
得られた混合物を同じ温度で1時間さらに撹拌して反応とヨウ素の昇華を完了させ、その後、60分で室温まで冷却した。
処理後の溶液(3.563kg)は、残留量のヨウ化物/ヨウ素分子(0.07g/kg)および有機ヨウ素(0.15g/kg)を含んでいた。
工程A’の後、トラップに収集されたヨウ素は、全回収率97.4%に相当した。
次に、実施例1に記載された工程Cの方法に従って、処理後の溶液をカーボンで処理し、全ヨウ素回収率98.5%となった。
【0089】
実施例4:140℃での水素化脱ヨウ素化
本実験は、密閉された反応器で実施し、約140℃という100℃よりも高い温度での変換の影響を試験した。
ヨウ化物(3.93mg/g)と有機ヨウ素(1.11mg/g)を含むpH=0.27の溶液45gを、10mL密閉反応器に均等に分注し、撹拌しながら140℃に加熱した。
90分後、水素化脱ヨウ素化反応が完了し、残留する有機ヨウ素は初期有機ヨウ素の0.9%になり、99%を超える変換率に相当した。
【0090】
実施例5:酸を添加した140℃での水素化脱ヨウ素化
本実験は、水素化脱ヨウ素化の反応速度に対するpHの影響を評価するために実施された。
ヨウ化物(3.93mg/g)および有機ヨウ素(0.94mg/g)を含む、実施例4と同じ溶液28.4gを、37%塩酸(6.6g)の添加により、さらに酸性化した。
得られた溶液を10mLの密閉反応器に均等に分注し、撹拌しながら140℃に加熱した。
30分後、水素化脱ヨウ素化反応が完了し、残留する有機ヨウ素は初期有機ヨウ素の0.5%になった。
【0091】
実施例4と5の結果の比較により、pH値がより低くなると、反応速度が増加することが示される。
【0092】
実施例6:80℃での水素化脱ヨウ素化
本試験は、準最適な水素化脱ヨウ素化温度の影響を評価するために実施された。
ヨウ化物(3.99mg/g水性液)、および有機ヨウ素(1.24mg/g、5-アミノ-1,3-ベンゼンジカルボン酸のモノ、ジ、およびトリヨウ素化誘導体として)を含むpH=0.21の水性液0.50kgを、反応器に入れ、80℃に加熱し、約55時間、撹拌を維持した。水素化脱ヨウ素化が生じ、15%水酸化ナトリウム溶液に吸収されて収集された紫色のヨウ素分子の蒸気が形成し、有機ヨウ素濃度が測定値0.78mg/gに減少し、有機ヨウ素のヨウ素分子への変換は37%に相当した。
その後、処理後の溶液は、実施例2の開示のように実施されるヨウ化物酸化およびカーボン吸着による処理に供され、全ヨウ素回収率は97%となった。
【0093】
実施例7:水素化脱ヨウ素化+100℃での酸化
工程A:水素化脱ヨウ素化
塩酸(pH=0.10)、ヨウ化物(1.40mg/g)、および主に5-アミノ-2,4,6-トリヨード-1,3-ベンゼンジカルボン酸として有機ヨウ素(1.45mg/g)を含む水溶液952.29gを、機械式撹拌器と温度計を備え、15%水酸化ナトリウム溶液が充填されたドレクセルトラップに接続されたジャケット付き反応器に投入した。
混合物を100℃に加熱し、約25.5時間撹拌を続けた。水素化脱ヨウ素化が生じ、水酸化ナトリウムを含むトラップでの吸収により収集されたヨウ素分子の紫色の蒸気を形成した。
最終的に、残留する有機ヨウ素濃度は、0.50mg/gであり、有機ヨウ素のヨウ素分子への変換は、65.7%に相当した。
トラップで収集されたヨウ素は、初期の全ヨウ素含有量の約67.8%に相当した。
【0094】
工程A’:酸化
次に、混合物を100℃に保ちながら5%の過酸化水素水を加えた。添加は、酸化還元電位が600mVになるまで、0.5時間で行われた。ヨウ化物は、昇華するヨウ素元素に酸化され、水酸化ナトリウムを含むトラップでの吸収により収集された蒸気を形成した。
得られた混合物を同じ温度で1.5時間さらに撹拌して反応とヨウ素の昇華を完了させ、その後、60分で室温まで冷却した。
処理後の溶液(866.95g)は、残留する有機ヨウ素(0.48mg/g)のみを含んでいた。
工程A’の後、トラップに収集されたヨウ素は、全回収率84.7%に相当した。
その後、処理後の溶液を、実施例2に記載されたカーボンで処理し、全ヨウ素回収率は96.5%を超えた。
【0095】
実施例8:部分的水素化脱ヨウ素化+酸化+カーボンカラム
本試験は、準最適な水素化脱ヨウ素化条件を補う際の工程C)の有効性を評価するために、酸化工程とおそらくあわせて行われる部分的水素化脱ヨウ素化を含む。
【0096】
部分的水素化脱ヨウ素化+酸化
例えばWO96/37458に開示されたヨウ素化プロセスから得られる、pH<0.1の、ヨウ化物37.08g、および有機ヨウ素7.32g(主に5-アミノ-1,3-ベンゼンジカルボン酸のモノ、ジおよびトリヨウ素化誘導体として)を含有する母液溶液3.700kgを、機械式撹拌器と温度計を備え、15%水酸化ナトリウム溶液が充填されたドレクセルトラップに接続されたジャケット付き反応器に投入した。
溶液を約1時間、100℃に加熱し、次に、混合物を100℃に保ちながら5%の過酸化水素水(約95g)を加えた。添加は、混合物の酸化還元電位が600mVになるまで、1時間で行われた。反応中に形成されたヨウ素分子は昇華し、蒸気がトラップの吸収により収集された。
得られた混合物を同じ温度で1時間さらに撹拌して反応とヨウ素の昇華を完了させ、その後、80分で室温まで冷却した。
処理後の溶液(3.419kg)は、残留量のヨウ化物(0.53g)および有機ヨウ素(4.39g)を含んでいた。
上記の条件下で、有機ヨウ素は水素化脱ヨウ素化メカニズムによって部分的に分解され、トラップに収集されたヨウ素は回収率88.9%に相当した。
【0097】
カーボンカラムでの処理
前述の反応を繰り返して9.78kgの溶液を調製した(ヨウ化物/ヨウ素分子合計0.29g/kg;有機ヨウ素1.39g/kg)。
この溶液を、直列に配置した2つのカーボンカラム(Col1およびCol2)に供給した。各カラムは、38gのドライカーボン(100mLのウェットカーボンのベッドに相当)が充填されていた。
供給は、20~25℃、流速2BV/hで行い、カラムCol2がヨウ素化有機化合物の放出を開始したときに停止した(ブレークスルーポイント)。Col2からの溶出液(9.673kg)は、残留量のヨウ化物(0.18g/kg)および有機ヨウ素(0.04g/kg)を含み、全ヨウ素回収率98.5%に相当した。
【0098】
実施例9:140℃での水素化脱ヨウ素化+酸化
工程A:水素化脱ヨウ素化
例えばWO96/37458に開示されたヨウ素化プロセスから得られ、pH=0.06で、ヨウ化物(9.86g/kg)、および、主に5-アミノ-1,3-ベンゼンジカルボン酸のモノ、ジおよびトリヨウ素化誘導体として有機ヨウ素(1.92g/kg)を含有する母液溶液52.0gを、20mL密閉反応器に均等に分注し、撹拌しながら140℃に加熱した。
30分後、残留する有機ヨウ素濃度は0.04g/kgで、初期有機ヨウ素の2.1%に相当した。
【0099】
工程A’:酸化
工程A’は、実施例1に開示のように実施される。工程A’の後、トラップに収集されたヨウ素は、全回収率99.0%に相当した。
【0100】
実施例10:100℃での水素化脱ヨウ素化
有機ヨウ素3.68gおよびヨウ化物3.49gを含む、WO96/737458に従って実施された、5-アミノ-N,N’-ビス[2-ヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)エチル]-1,3-ベンゼンジカルボキサミドのヨウ素化に由来する母液725gを、30分間、100℃に加熱し、この温度で47時間撹拌を続けた。
最終的に、残留する有機ヨウ素およびヨウ素分子はそれぞれ、0.30gおよび0.20gであり、全ヨウ素回収率は93%に相当した。溶液中に残留ヨウ化物は存在しなかった。
その後、処理後の溶液は、例えば実施例2に記載された方法に従って、カーボンカラムでの吸着により処理され、全回収率は97%を超えた。
【0101】
実施例11:140℃での水素化脱ヨウ素化
本試験は、工程A’を含まない本発明による方法を例示する。
ヨウ化物(0.73mg/g)、および、主に5-アミノ-2,4,6-トリヨード-1,3-ベンゼンジカルボン酸として有機ヨウ素(1.46mg/g)を含む、硫酸でpH=0.1に酸性化された水溶液30gを、撹拌しながら140℃に加熱した。6時間後、残留する有機ヨウ素は、初期有機ヨウ素の30.1%になった。
得られた溶液を実施例2に記載された方法に従ってカーボンで処理し、全回収率が96%になった。