(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】関節リウマチの治療
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220830BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220830BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220830BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220830BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220830BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220830BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20220830BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220830BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220830BHJP
C07K 16/24 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P19/02 ZNA
A61P29/00 101
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/34
A61K31/519
A61P43/00 121
C12N15/13
C07K16/24
(21)【出願番号】P 2020002684
(22)【出願日】2020-01-10
(62)【分割の表示】P 2018061614の分割
【原出願日】2013-09-19
【審査請求日】2020-01-20
(32)【優先日】2012-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2012-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】316005432
【氏名又は名称】モルフォシス・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100171505
【氏名又は名称】内藤 由美
(72)【発明者】
【氏名】ヘールトル,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ルクレール,ステファヌ
(72)【発明者】
【氏名】シェブル,アムガッド
(72)【発明者】
【氏名】シュタイドル,シュテファン
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-512814(JP,A)
【文献】特表2008-545632(JP,A)
【文献】国際公開第2011/109365(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/128035(WO,A1)
【文献】特表2010-510323(JP,A)
【文献】特表2010-523493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 31/00-31/80
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗GM-CSF抗体を、製薬上許容され得る担体、賦形剤または安定剤と共に含有する、関節リウマチを患っている患者の治療における使用のための医薬組成物であって、該製薬上許容され得る担体
および/または賦形剤が30 mMヒスチジン、pH 6.0、200 mMソルビトールおよび0.02% Tween-80で構成され、前記抗GM-CSF抗体は、配列QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYWMNWVRQAPGKGLEWVSGIENKYAGGATYYAASVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGFGTDFWGQGTLVTVSS(配列番号8)の可変重鎖と、配列DIELTQPPSVSVAPGQTARISCSGDSIGKKYAYWYQQKPGQAPVLVIYKKRPSGIPERFSGSNSGNTATLTISGTQAEDEADYYCSAWGDKGMVFGGGTKLTVLGQ(配列番号9)の可変軽鎖とを含み、前記治療が前記抗GM-CSF抗体を前記患者に約1.0 mg/kgの用量で静脈内投与するか、または約2.0 mg/kgの用量で皮下投与することを含む、上記組成物。
【請求項2】
前記抗GM-CSF抗体がヒトモノクローナル抗体である、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項3】
前記抗GM-CSF抗体が毎週投与される、請求項1
または2に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項4】
前記抗GM-CSF抗体が、メトトレキサートなどのDMARDと併用投与される、請求項1~
3のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節リウマチの治療に用いるための抗GM-CSF抗体、およびこのような抗体を用いた関節リウマチの治療のための方法を提供する。抗GM-CSF抗体、特にMOR103は、関節リウマチを患っている患者に臨床背景において有効な用量で投与される。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチ(RA)は、世界中の成人人口の0.5%~1%に発症する慢性全身性炎症性疾患である。RAは主として関節を侵し、滑膜組織の慢性炎症を特徴とし、それは、最終的には軟骨、骨および靭帯の破壊を引き起こし、関節変形を引き起こし得る。RAは40~60歳に発症のピークを有し、主に女性に発症する。RAの原因は不明であるが、ある組織適合抗原はより悪い転帰と関連している。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は、症状の緩和しかもたらさない。疾患のすべての段階にわたってRA治療の基礎である疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)は、身体機能を維持または改善し、X線画像上の関節損傷を遅らせる。免疫細胞の活性化および増殖を引き起こす炎症性サイトカイン、例えば、腫瘍壊死因子-アルファ(TNFα)、インターロイキン-1、インターロイキン-6ならびに顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などは、炎症関節において増加することが見出されている。
【0003】
より最近では、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、B細胞、またはT細胞を標的とする生体化合物、例えば抗体などがRAを治療するために使用されているが、まだ多くの患者はこれらの治療に反応しない。コロニー刺激因子(CSF)は、RAのような炎症性疾患への見込みのある治療介入点として提案されている(例えば、Nat Rev Immunol (2008) 8, 533-44またはNat Rev Rheumatol (2009) 5, 554-9に概説される)。このようなCSFの1つは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)である。
【0004】
MOR103は完全ヒト抗GM-CSF抗体である(Mol Immunol (2008) 46, 135-44; WO 2006/122797)。MOR 103はまた、多発性硬化症に対して第Ib相臨床試験中である。本発明は、RAに対する臨床的に有効なMOR103を含む治療計画の開発を記載する。
【発明の概要】
【0005】
1つの態様では、本発明は、関節リウマチを患っている患者の治療に用いるための抗GM-CSF抗体を提供し、前記抗体は、少なくとも1.0 mg/kgの用量で少なくとも4週間の間毎週前記抗体を静脈内投与した場合と比較して同等またはより高い、前記患者の治療上有効な血中抗体濃度を達成する方法で、前記患者に投与される。
【0006】
別の態様では、本発明はまた、関節リウマチを患っている患者を治療する方法を提供し、その方法は、少なくとも1.0 mg/kgの用量で少なくとも4週間の間毎週前記抗体を静脈内投与した場合と比較して同等またはより高い、前記患者の治療上有効な血中抗体濃度を達成する方法で、前記患者に抗GM-CSF抗体を投与することを含む。
【0007】
ある実施形態では、抗GM-CSF抗体は、任意選択で少なくとも1.0 mg/kgの用量で、または約1.0 mg/kgもしくは約1.5 mg/kgの用量で静脈内投与される。ある実施形態では、抗GM-CSF抗体は、毎週、少なくとも4週間の間投与される。
【0008】
ある実施形態では、抗GM-CSF抗体は、任意選択で少なくとも2.0 mg/kgの用量で、または約2.0 mg/kg、約3.0 mg/kgもしくは約4.0 mg/kgの用量で皮下投与される。ある実施形態では、抗GM-CSF抗体は、隔週、毎月または隔月で投与される。別の実施形態では、抗体は、約75 mg、約100 mg、約150 mg、約200 mg、約300 mgまたは約400 mgの固定用量で投与される。固定用量の投与は、毎週、2週間毎、3週間毎、4週間毎または6週間毎でありうる。
【0009】
ある実施形態では、前記患者に投与される抗GM-CSF抗体の用量および前記投与の頻度は、前記治療の期間中、前記患者において少なくとも2μg/mlの前記抗体血清濃度をもたらし、維持するのに十分である。
【0010】
別の態様では、本発明は、抗GM-CSF抗体を提供し、前記抗GM-CSF抗体は、関節リウマチを患っている患者の治療に用いるための、配列GFTFSSYWMN(配列番号2)のHCDR1領域、配列GIENKYAGGATYYAASVKG(配列番号3)のHCDR2領域、配列GFGTDF(配列番号4)のHCDR3領域、配列SGDSIGKKYAY(配列番号5)のLCDR1領域、配列KKRPS(配列番号6)のLCDR2領域および配列SAWGDKGM(配列番号7)のLCDR3領域を含む抗体であり、前記抗体は、少なくとも1.0 mg/kgの用量で少なくとも4週間の間毎週投与された場合の前記抗体の静脈内投与と比較して同等またはより高い、治療上有効な前記患者の血中抗体濃度を達成する方法で、前記患者に投与される。
【0011】
別の態様では、本発明は、抗GM-CSF抗体を提供し、前記抗GM-CSF抗体は、関節リウマチを患っている患者の治療に用いるための、配列GFTFSSYWMN(配列番号2)のHCDR1領域、配列GIENKYAGGATYYAASVKG(配列番号3)のHCDR2領域、配列GFGTDF(配列番号4)のHCDR3領域、配列SGDSIGKKYAY(配列番号5)のLCDR1領域、配列KKRPS(配列番号6)のLCDR2領域および配列SAWGDKGM(配列番号7)のLCDR3領域を含む抗体であり、前記抗体は、約1.0 mg/kgの用量、または約1.5 mg/kgの用量で静脈内投与され、少なくとも4週間の間毎週投与される。
【0012】
別の態様では、本発明は、関節リウマチを患っている患者の治療に用いるための抗GM-CSF抗体を提供し、前記抗体は、少なくとも1.0 mg/kgまたは少なくとも1.5 mg/kgの用量で少なくとも4週間の間毎週前記抗体を静脈内投与した場合と比較して同等またはより高い、前記患者の治療上有効な血中抗体濃度を達成する方法で、前記患者に投与され、前記抗GM-CSF抗体は、メトトレキサートなどのDMARDと併用投与される。
【0013】
ある実施形態では、このような治療上有効な量を達成するための前記抗体の投与は、少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.8、少なくとも0.9または少なくとも1.0 mg/kgの用量での前記抗体の静脈内投与を含む。他の実施形態では、本発明の抗体は、約1.0 mg/kgの用量または約1.5 mg/kgの用量で静脈内投与される。投与は、毎月、隔週(2週間毎)または毎週でありうる。
【0014】
別の態様では、本発明は、関節リウマチを患っている患者の治療に用いるための抗GM-CSF抗体を提供し、前記抗体は、少なくとも1.0 mg/kgまたは少なくとも1.5 mg/kgの用量で少なくとも4週間の間毎週前記抗体を静脈内投与した場合と比較して同等またはより高い、前記患者の治療上有効な血中抗体濃度を達成する方法で、前記患者に皮下投与され、前記抗GM-CSF抗体は、メトトレキサートなどのDMARDと併用投与される。
【0015】
ある実施形態では、このような治療上有効な量を達成するための前記抗体の投与は、少なくとも1.0、少なくとも1.5、少なくとも2.0、少なくとも2.5、少なくとも3.0、少なくとも3.5または少なくとも4.0 mg/kgの用量での前記抗体の皮下投与を含む。他の実施形態では、本発明の抗体は、約2.0 mg/kgの用量、約3.0 mg/kgの用量または約4.0 mg/kgの用量で皮下投与される。投与は、毎月、隔週(2週間毎)または毎週でありうる。
【0016】
ある実施形態では、このような治療上有効な量を達成するための前記抗体の投与は、約40 mgの固定用量、約75 mgの固定用量、約100 mgの固定用量、約140 mgの固定用量、約150 mgの固定用量、約180 mgの固定用量、約200 mgの固定用量、約280 mgの固定用量、約300 mgの固定用量または約400 mgの固定用量での前記抗体の皮下投与を含む。固定用量の投与は、毎週、2週間毎、3週間毎、4週間毎または6週間毎でありうる。
【0017】
別の態様では、本発明は、関節リウマチを患っている患者を治療する方法を提供し、その方法は、
(i)少なくとも1.0 mg/kgの用量、または
(ii)40 mg~400 mgの固定用量で
前記患者に抗GM-CSF抗体を皮下投与することを含む。
抗GM-CSF抗体は、前記治療の期間中、前記患者において少なくとも2μg/mlの前記抗体血清濃度を達成する方法で、前記患者に投与されうる。抗体は、少なくとも1.0 mg/kgの用量で少なくとも4週間の間毎週前記抗体を静脈内投与した場合と比較して同等またはより高い、前記患者の治療上有効な血中抗体濃度を達成する方法で、前記患者に投与されうる。
【0018】
別の態様では、本発明は、少なくとも1.0 mg/kgの用量で少なくとも4週間を超えて毎週投与された場合の前記抗体の静脈内投与と比較して同等またはより高い、治療上有効な前記患者の血中抗体濃度を達成する方法で、前記患者に前記抗体を投与することを含む、関節リウマチ患者における構造的な関節損傷の進行を抑制するための抗GM-CSF抗体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、MOR04357のアミノ酸配列およびDNA配列を示す。
【
図2】
図2は、治療の4週間後(左パネル)および8週間後(右パネル)のDAS28スコアの平均変化の比較を示す。DAS28スコアの変化は、ベースライン値、すなわち、治療前の疾患状態と比較される。
【
図3】
図3は、4週間後のすべての治療群の平均ACR20スコアを示す。ACR20スコアの増加は、疾患の重症度の改善に対応する。
【
図4】
図4は、8週間後のすべての治療群の平均ACR20スコアを示す。ACR20スコアの増加は、疾患の重症度の改善に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
説明
「GM-CSF」および「GMCSF」という用語は、下記の同義語、すなわち、コロニー刺激因子2、CSF2、GMCSF、GM-CSF、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、MGC131935、MGC138897、モルグラモスチン(Molgramostin)、サルグラモスチム(Sargramostim)を有する、GM-CSFまたは顆粒球マクロファージコロニー刺激因子として知られるタンパク質を指す。ヒトGM-CSFは、下記のアミノ酸配列(UniProt P04141)、すなわち、
MWLQSLLLLGTVACSISAPARSPSPSTQPWEHVNAIQEARRLLNLSRDTAAEMNET VEVISEMFDLQEPTCLQTRLELYKQGLRGSLTKLKGPLTMMASHYKQHCPPTPETS CATQIITFESFKENLKDFLLVIPFDCWEPVQE(配列番号1)を有する。
【0021】
「MOR103」は、そのアミノ酸配列およびDNA配列が
図1に示されている抗GM-CSF抗体である。「MOR103」および「MOR04357」および「MOR4357」は、
図1に示される抗体を表すための同義語として用いられる。MOR04357は、配列GFTFSSYWMN(配列番号2)のHCDR1領域、配列GIENKYAGGATYYAASVKG(配列番号3)のHCDR2領域、配列GFGTDF(配列番号4)のHCDR3領域、配列SGDSIGKKYAY(配列番号5)のLCDR1領域、配列KKRPS(配列番号6)のLCDR2領域、および配列SAWGDKGM(配列番号7)のLCDR3領域を含む。MOR04357は、配列
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYWMNWVRQAPGKGLEWVSGIENKYAGGA TYYAASVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGFGTDFWGQGTLVTVSS(配列番号8)の可変重鎖および配列
DIELTQPPSVSVAPGQTARISCSGDSIGKKYAYWYQQKPGQAPVLVIYKKRPSGIPERFSGS NSGNTATLTISGTQAEDEADYYCSAWGDKGMVFGGGTKLTVLGQ(配列番号9)の可変軽鎖を含む。
【0022】
ある実施形態では、本発明に用いられる抗体は、GM-CSFに特異的な抗体である。他の実施形態では、本発明に用いられる抗体は、配列番号1を含むアミノ酸配列をコードするポリペプチドに特異的な抗体である。
【0023】
本明細書において用いられる場合、「~に特異的に」または「~に特異的に結合する」とは、GM-CSFに選択的または優先的に結合する抗体を指す。好ましくは、抗原に対する結合親和性は、10-9mol/l以下(例えば10-10 mol/l)のKd値であり、好ましくは10-10 mol/l以下(例えば10-12 mol/l)のKd値を有する。結合親和性は、表面プラズモン共鳴法(BIACORE(登録商標))のような標準的な結合アッセイによって測定される。
【0024】
ある実施形態では、本発明に用いられる抗体はMOR103である。他の実施形態では、本発明に用いられる抗体は、配列GFTFSSYWMN(配列番号2)のHCDR1領域、配列GIENKYAGGATYYAASVKG(配列番号3)のHCDR2領域、配列GFGTDF(配列番号4)のHCDR3領域、配列SGDSIGKKYAY(配列番号5)のLCDR1領域、配列KKRPS(配列番号6)のLCDR2領域、および配列SAWGDKGM(配列番号7)のLCDR3領域を含む抗体である。他の実施形態では、本発明に用いられる抗体は、配列
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYWMNWVRQAPGKGLEWVSGIENKYAGGA TYYAASVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGFGTDFWGQGTLVTVSS(配列番号8)の可変重鎖および配列
DIELTQPPSVSVAPGQTARISCSGDSIGKKYAYWYQQKPGQAPVLVIYKKRPSGIPERFSGS NSGNTATLTISGTQAEDEADYYCSAWGDKGMVFGGGTKLTVLGQ(配列番号9)の可変軽鎖を含む抗体である。他の実施形態では、本発明に用いられる抗体は、配列GFTFSSYWMN(配列番号2)のHCDR1領域、配列GIENKYAGGATYYAASVKG(配列番号3)のHCDR2領域、配列GFGTDF(配列番号4)のHCDR3領域、配列SGDSIGKKYAY(配列番号5)のLCDR1領域、配列KKRPS(配列番号6)のLCDR2領域、および配列SAWGDKGM(配列番号7)のLCDR3領域を含む抗体と交差競合する抗体である。他の実施形態では、本発明に用いられる抗体は、配列GFTFSSYWMN(配列番号2)のHCDR1領域、配列GIENKYAGGATYYAASVKG(配列番号3)のHCDR2領域、配列GFGTDF(配列番号4)のHCDR3領域、配列SGDSIGKKYAY(配列番号5)のLCDR1領域、配列KKRPS(配列番号6)のLCDR2領域、および配列SAWGDKGM(配列番号7)のLCDR3領域を含む、GM-CSFに特異的な抗体と同一のエピトープに結合する抗体である。
【0025】
「抗体」という用語は最も広い意味で用いられ、具体的には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの完全な抗体で構成される多特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、およびそれらが望ましい生物学的活性を示すかぎりは抗体断片を含む。
【0026】
本明細書における「抗体断片」は、抗原に結合する能力を保持している完全な抗体の一部を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片;ダイアボディ(diabodies);線状抗体(linear antibodies);一本鎖抗体分子;ならびに抗体断片で形成される多特異性抗体を含む。
【0027】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書において用いられる場合、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す、すなわち、その集団を構成している個々の抗体は、モノクローナル抗体の作製の間に生じうる変異の可能性を除いて、同一である、および/または、同一のエピトープに結合するが、このような変異は通常微量に存在している。通常、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、それぞれのモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を標的とする。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが他の免疫グロブリンによる混入がない点において有利である。
【0028】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、具体的には、その中の重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一、あるいは相同であり、一方、鎖の残りの部分が、別の種に由来する抗体、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一、あるいは相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、同様に、それらが望ましい生物学的活性を示すかぎりは、このような抗体の断片を含む。
【0029】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、その中でレシピエントの超可変領域由来の残基が、望ましい特異性、親和性および能力を有する、マウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域由来の残基に置き換えられる。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基に置き換えられる。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含みうる。これらの改変は、抗体の性能を更に改良するために行われる。通常、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、一般的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、その中で、すべてのまたは実質的にすべての超可変領域は、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、上述のようなFR置換を除いて、すべてのまたは実質的にすべてのFRはヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、任意選択で、免疫グロブリン定常領域、通常ヒト免疫グロブリンのそれの少なくとも一部を含む。
【0030】
本明細書における「ヒト抗体」は、ヒトB細胞から得られる抗体のアミノ酸配列構造に対応するアミノ酸配列構造を含むものであり、ヒト抗体の抗原結合性断片を含む。このような抗体は、下記を含むがそれらに限定されない、様々な技術によって同定または生成され得る。すなわち、免疫付与した際に、内因性の免疫グロブリンの非存在下でヒト抗体を産生することができるトランスジェニック動物(例えばマウス)による産生;ヒト抗体を発現するファージディスプレイライブラリーからの選択;in vitro活性化B細胞による産生;およびヒト抗体産生ハイブリドーマからの単離である。
【0031】
ある実施形態では、本発明に用いられる抗体は、モノクローナル抗体である。
【0032】
他の実施形態では、本発明に用いられる抗体は、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体である。好ましい実施形態では、本発明に用いられる抗体は、ヒト抗体である。
【0033】
ある実施形態では、本発明に用いられる抗体は、RAを治療する更なる薬物と併用投与される。
【0034】
更なる薬剤は、1つ以上の薬剤であってもよく、例えば、免疫抑制薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、メトトレキサート(MTX)などの疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、抗CD20抗体(例えばリツキシマブ)などの抗B細胞表面マーカー抗体、TNF-α阻害剤、コルチコステロイド、および共刺激調節薬(co-stimulatory modifier)、またはそれらの任意の組合せを含む。任意選択で、第二のまたは更なる薬物は、非生物学的DMARD、NSAID、およびコルチコステロイドからなる群より選択される。
【0035】
これらの更なる薬物は、通常、上記および下記で用いられるものと同一の用量および投与経路で用いられる。このような更なる薬物が用いられる場合、それによって生じる副作用を解消または減少させるために、好ましくは、それらは、特に、第一の薬剤による初期投与を過ぎた後続投与では、第一の薬剤が存在しない場合より少量で用いられる。更なる薬物の併用投与は、個別の製剤または単一の医薬製剤を用いた共投与(co-administration)(同時投与(concurrent administration))、およびいずれかの順番での連続投与を含み、好ましくは、両方(またはすべての)活性物質(薬剤)が同時にそれらの生物学的活性を発揮する時期がある。
【0036】
「DMARD」という用語は、「疾患修飾性抗リウマチ薬(Disease-Modifying Anti-Rheumatic Drug)」を指し、特に、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、メトトレキサート、レフルノミド、アザチオプリン、D-ペニシラミン、金塩(経口)、金塩(筋肉内)、ミノサイクリン、シクロスポリンAおよび局所シクロスポリン(topical cyclosporine)などのシクロスポリン、ならびにTNF-阻害剤を含み、それらの塩、変異体(variant)、および誘導体などを含む。本明細書における典型的なDMARDは、アザチオプリン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、メトトレキサートおよびスルファサラジンなどの、非生物学的、すなわち古典的DMARDである。
【0037】
メトトレキサートは、本発明の特に好ましいDMARDである。従って、ある実施形態では、本発明に用いられる抗体は、DMARDと併用投与される。他の実施形態では、本発明に用いられる抗体は、メトトレキサートと併用投与される。
【0038】
「TNF-阻害剤」は、本明細書において用いられる場合、通常TNF-αおよび/またはその受容体に結合し、その活性を中和することによって、TNF-αの生物学的機能をある程度阻害する薬剤を指す。TNF阻害剤の例は、エタネルセプト(エンブレル(ENBREL(登録商標)))、インフリキシマブ(レミケード(REMICADE(登録商標)))、アダリムマブ(ヒュミラ(HUMIRA(登録商標)))、セルトリズマブペゴール(シムジア(CIMZIA(登録商標)))、およびゴリムマブ(シンポニー(SIMPONI(登録商標)))を含む。
【0039】
患者または被験体の「治療」とは、治療的処置と予防法との両方を指す。「有効量」または「治療上有効な」という用語は、関節リウマチの治療に対して有効な抗体の量を指す。このような有効量は、任意の1つ以上の、RAの兆候もしくは症状の減少(例えばACR20の達成)、疾患活動性の減少(例えば疾患活動性スコア、DAS20)、構造的な関節損傷の進行の減速、または身体機能の改善を引き起こし得る。1つの実施形態では、このような臨床反応は、静脈内投与された抗GM-CSF抗体によって達成されるものに匹敵する。
【0040】
本発明の抗体は、種々の適切な形態で投与されうる。可能性のある投与形態には、全身投与(皮下、静脈内、筋肉内)、経口投与、吸入、経皮投与、局所適用(例えば、局所クリームもしくは軟膏など)または当技術分野において既知の他の方法が含まれる。本発明において規定される用量(mg/kg)は、患者の体重キログラムあたりの抗体のミリグラムを指す。in vitroでの細胞に基づくアッセイは、抗GM-CSF抗体(MOR103)が、いくつかのGM-CSFを介した反応を阻害できることを示した。評価された反応には、TF-1細胞の増殖、STAT5のリン酸化、多形核好中球(PMN)の遊走、PMNでのCD11bの上方制御、単球でのMHC IIの上方制御、および好酸球の生存が含まれる。完全な阻害効果は、通常、約0.2μg/mlの抗GM-CSF抗体の濃度で達成された。最大1 ng/mlのGM-CSF濃度が、このような研究に適用された。参考として、RA患者の滑液中のGM-CSF濃度は<500 pg/mlであると報告された。これらのin vitro試験に用いられたものと同様のGM-CSF濃度が、RA患者の罹患組織中に存在すると考えることは妥当である。
【0041】
効果的にRAを治療するために、抗GM-CSF抗体が滑膜を透過することが重要でありうる。皮下または静脈内に投与された場合、モノクローナル抗体が滑膜内に分布し得ることを示唆する証拠がある。30%の予測透過率、持続的なGM-CSF産生に基づき、また、患者の不均一性を考慮して、RA患者における最低限のまたは準最適な臨床効果濃度は、約2μg/ml抗体の血清濃度であると予測される(従って、in vitro試験から得られた阻害濃度より約10倍高い)。
【0042】
特定の抗GM-CSF抗体(MOR103)は、活動性関節リウマチ患者に投与され、患者は毎週0.3、1、および1.5 mg/kgの4回の静脈内投与を受けた。抗GM-CSF抗体は、プラセボと比較して1および1.5 mg/kgで週1回の投与後、DAS28、EULAR、ACR20、ACR50、ACR70および圧痛関節数に有意な臨床効果を示した。
【0043】
ある実施形態では、本発明の抗体は静脈内投与される。他の実施形態では、本発明の抗体は皮下投与される。
【0044】
他の治療用抗体から、静脈内投与された際、特定の血中抗体レベルをもたらす濃度は、同一の抗体濃度が皮下投与された際に達成される血中濃度の約50~76%に相当することが知られている(Meibohm, B.: Pharmacokinetics and Pharmacodynamics of Biotech Drugs, Wiley-VCH, 2006)。MOR103については、この比率は52%であることが測定された。すなわち、皮下投与された所定の濃度は、同一の所定濃度が静脈内投与された際の血中濃度の約52%に相当する血中濃度をもたらす。従って、皮下投与製剤の濃度は、静脈内投与製剤と比較して、同一の薬物血中レベルを達成するために約2倍高くする必要がある。
【0045】
ある実施形態では、患者において達成されるべき血中レベルは、少なくとも1.0 mg/kgの用量で少なくとも4週間の間毎週投与された場合の、本発明の抗体の静脈内投与によって達成される血中濃度と比較して同等またはより高い。
【0046】
別の実施形態では、達成されるべき前記血中濃度は、少なくとも0.4、0.5、0.6、0.7、0.8または0.9 mg/kgの用量で少なくとも4週間の間毎週本発明の抗体を静脈内投与した場合に達成される血中濃度と比較して同等またはより高い。別の実施形態では、患者において達成されるべき血中濃度は、少なくとも1.0 mg/kgの用量で少なくとも2週間または少なくとも3週間の間毎週本発明の抗体を静脈内投与した場合に達成される血中濃度と比較して同等またはより高い。別の実施形態では、患者において達成されるべき血中濃度は、少なくとも1.0 mg/kgの用量で少なくとも2週間または少なくとも4週間の間隔週で本発明の抗体を静脈内投与した場合に達成される血中濃度と比較して同等またはより高い。
【0047】
ある実施形態では、本発明の抗体は静脈内投与される。他の実施形態では、本発明の抗体は、少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.8、少なくとも0.9または少なくとも1.0 mg/kgの用量で静脈内投与される。他の実施形態では、本発明の抗体は、約1.0 mg/kgの用量または約1.5 mg/kgの用量で静脈内投与される。
【0048】
ある実施形態では、本発明の抗体は皮下投与される。RA に有効であった用量、1 mg/kgのiv後に得られるのと同様の血漿濃度を生じさせるために、MOR103の皮下送達を用いて様々な投与計画がシミュレーションされている。シミュレーションの大部分は、抗GM-CSF抗体に関して有効性を生じるために必要な最低血中濃度であると考えられている値である、2μg/mLより高いトラフ濃度値を生じる。これらの研究は、1、2、3および4 mg/kgの皮下用量が、投与頻度に応じて、1 mg/kgのIVと同様の血漿濃度を生じ得ることを示す。
【0049】
他の実施形態では、本発明の抗体は、少なくとも1.0、少なくとも1.5、少なくとも2.0、少なくとも2.5、少なくとも3.0、少なくとも3.5または少なくとも4.0 mg/kgの用量で皮下投与される。他の実施形態では、本発明の抗体は、約2.0 mg/kgの用量、約3.0 mg/kgの用量または約4.0 mg/kgの用量で皮下投与される。ある実施形態では、本発明の抗体は、隔週、毎月または隔月で皮下投与される。
【0050】
他の実施形態では、本発明の抗体は、固定用量で皮下投与される。このような「固定用量」治療では、抗体は、特定の固定された濃度で、すなわち、患者の体重を考慮せずに、投与される。ある実施形態では、本発明の抗体は、40 mg~400 mgの固定用量で、任意選択で75 mgの固定用量、100 mgの固定用量、140 mgの固定用量、150 mgの固定用量、180 mgの固定用量、200 mgの固定用量、280 mgの固定用量、300 mgの固定用量または400 mgの固定用量で投与される。固定用量の投与は、毎週、2週間毎、3週間毎、4週間毎または6週間毎でありうる。通常、抗体は、毎週固定用量で投与される。
【0051】
ある実施形態では、抗体は、毎週40、56、70、75、100、140、150、180、200、210、または280 mgの固定皮下用量で投与される。
【0052】
ある実施形態では、抗体は、隔週で70、75、100、140、150、180、200、210、280または300 mgの固定皮下用量で投与される。
【0053】
ある実施形態では、抗体は、毎月100、140、150、180、200、210、280、300、320、350、360または400 mgの固定皮下用量で投与される。
【0054】
ある実施形態では、抗体は、少なくとも2μg/mLの抗体のトラフ濃度を維持するのに十分な用量で投与される。抗体のトラフ濃度は、治療の過程において、2.0μg/mL、2.5μg/mL、3.0μg/mL、3.5μg/mL、4.0μg/mL、4.5μg/mLまたは5.0μg/mLで維持されうる。
【0055】
別の実施形態では、抗体は、毎週28または35 mgの固定皮下用量で投与される。
【0056】
ある実施形態では、本発明は、関節リウマチを患っている患者の治療に用いるための抗GM-CSF抗体を提供し、前記抗体は、少なくとも1.0 mg/kgの用量で少なくとも4週間の間毎週前記抗体を静脈内投与した場合と比較して同等またはより高い、前記患者の治療上有効な血中抗体濃度を達成する方法で、前記患者に投与される。
【0057】
ある実施形態では、本発明は、関節リウマチを患っている患者を治療する方法を提供し、前記方法は、少なくとも1.0 mg/kgの用量で少なくとも4週間の間毎週前記抗体を静脈内投与した場合と比較して同等またはより高い、前記患者の治療上有効な血中抗体濃度を達成する方法で、前記患者に抗GM-CSF抗体を投与することを含む。
【0058】
ある実施形態では、本発明は、関節リウマチ患者における構造的な関節損傷の進行を抑制するための抗GM-CSF抗体を提供し、少なくとも1.0 mg/kgの用量で少なくとも4週間の間毎週前記抗体を静脈内投与した場合と比較して同等またはより高い、前記患者の治療上有効な血中抗体濃度を達成する方法で、前記患者に前記抗体を投与することを含む。
【0059】
「薬物」および「薬剤」という用語は、関節リウマチまたはRAと関連した関節損傷もしくは症状もしくは副作用を治療するための活性薬物を指す。「医薬製剤」という用語は、活性成分、すなわち本発明の抗体の生物学的活性が有効となるような形状であって、製剤が投与されるであろう被験体にとって許容され得ない毒性を有する付加的な成分を含まない調製物を指す。このような製剤は滅菌されている。
【0060】
本明細書における抗体は、好ましくは、その重鎖および軽鎖をコードする核酸配列によって形質転換された宿主細胞で組み換え技術によって産生される(例えば、宿主細胞は、その中に核酸を含む1つ以上のベクターによって形質転換されている)。好ましい宿主細胞は哺乳動物細胞であり、最も好ましくはPER.C6細胞である。
【0061】
本発明の抗体の治療製剤は、保存のために、望ましい純度を有する抗体を、任意選択の製薬上許容され得る担体、賦形剤または安定剤と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形状に調製される。許容され得る担体、賦形剤、または安定剤は、使用される用量および濃度でレシピエントに毒性を示さないものであり、リン酸塩、クエン酸塩、ヒスチジンおよび他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンなどの抗酸化剤;保存剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量の(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンなどの、単糖、二糖、および他の糖質;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩を形成する対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);ならびに/またはTWEEN(商標)(例えばTween-80)、PLURONICS(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0062】
ある実施形態では、本発明は、本発明の抗体および製薬上許容され得る担体および/または賦形剤を含有する、本発明において提供される任意の方法に用いるための医薬組成物を提供する。ある実施形態では、本発明の抗体のための製剤は、30 mMヒスチジン、pH 6.0、200 mMソルビトールおよび0.02% Tween-80で構成される。他の実施形態では、本発明の抗体のための製剤は、PBS、pH 6.2(0.2 g/l KCl、0.96 g/l KH2P04、0.66 g/l Na2HP04×7H20、8 g/l NaCl)で構成される。
【実施例1】
【0063】
臨床第1b相/第IIa相試験の設計および構想
活動性関節リウマチ患者に静脈内投与される複数回投与のMOR103の安全性、予備的な臨床活性および免疫原性を評価するために、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照の試験を行った。
【0064】
主要評価項目は、有害事象率および安全性プロフィールであった。副次的評価項目には、DAS28スコア、ACRスコアおよびEULAR28応答基準が含まれた。
【0065】
臨床試験は、3つの治療群で構成された。各治療群において、患者はプラセボまたはMOR103のいずれかを投与された。MOR103用量は、治療群1では0.3 mg/kg体重、治療群2では1.0 mg/kg体重、治療群3では1.5 mg/kg体重であった。MOR103およびプラセボは、毎週全4回静脈内投与された。
【0066】
治療群の概要:
【0067】
【0068】
本試験の参加の対象となるのは、18歳以上の両性(男性および女性)の患者であった。健常志願者は受け付けなかった。
【0069】
試験対象患者基準は下記の通りであった:
・改訂された1987年ACR基準による関節リウマチ(RA)
・活動性RA:PIP関節を除く、少なくとも1か所の手の腫脹関節を有する3か所以上の腫脹関節および3か所の圧痛関節
・CRP>5.0 mg/L(RFおよび抗CCP血清反応陰性);CRP>2 mg/l(RFおよび/または抗CCP血清反応陽性)
・DAS28≦5.1
・併用RA治療(NSAID、ステロイド、非生物学的DMARD)の安定的な治療計画
・PPDツベルクリン皮膚試験陰性
試験対象除外基準は下記の通りであった:
・リツキシマブ以外のB細胞またはT細胞除去剤(例えばキャンパス)による治療歴。リツキシマブ、TNF阻害剤、他の生物製剤(例えば抗IL-1治療)および全身性免疫抑制薬による治療歴は、休薬期間があれば許容される。
・進行中の、重篤な、または再発性の感染症の病歴
・RA以外の活動性炎症性疾患
・スクリーニング前6か月以内の全身性被験薬による治療
・メトトレキサートまたはレフルノミドの継続投与を受けている場合を除く、妊娠の可能性がある女性
・重篤な心疾患または肺疾患(メトトレキサート関連肺毒性を含む)
・肝不全または腎不全
【実施例2】
【0070】
患者募集および患者集団
患者の募集、スクリーニングおよび治療のための臨床現場は、ブルガリア、ドイツ、オランダ、ポーランドおよびウクライナに置かれた。
【0071】
96名の患者が試験に加わった。27名の患者はプラセボを投与され、24名の患者は0.3 mg/kgの用量でMOR103を投与され、22名の患者は1.0 mg/kgの用量でMOR103を投与され、23名の患者は1.5 mg/kgの用量でMOR103を投与された。平均年齢および平均体格指数(BMI)は、すべての治療群でほぼ同じであった。重要な特徴を下記の表に要約する:
【0072】
【0073】
試験のすべての患者の90%は、以前にDMARDによって治療されていた。最もよく使用されたDMARDはメトトレキサートであった(すべての患者の75%)。DMARDによる治療歴の割合は、すべての治療群で同程度であった。
【0074】
MOR103またはプラセボの投与前に、すべての患者の疾患活動性を、認められているガイドラインに従って、DAS28スコア、すなわち28関節の疾患活動性スコアを計算することによって測定した(例えば、Ann Rheum Dis (2009) 68, 954-60を参照されたい)。DAS28スコアは、RA患者の疾患状態を数値化する有効かつ一般的に用いられる方法である。平均DAS28スコアは、すべての治療群で同程度であった。
【実施例3】
【0075】
安全性プロフィール
利用可能な観察された安全性データに基づいて、MOR103は、試験されたすべての用量で良好な安全性プロフィールを示した。重要な所見は下記の通りである:
・試験実施の間、死亡は観察されなかった。
・注入に伴う反応(infusion related reaction)は観察されなかった。
・2件の重篤な有害事象(SAE)が観察された:
-プラセボ群の1名の患者が爪周囲炎を発症した。
【0076】
-0.3 mg/kg治療群の1名の患者が胸膜炎を発症した。
・活性物質群(14.5%)よりもプラセボ群(25.9%)でより多くの治療下で発現した有害作用(TEAE)が観察された。
・ほとんどのTEAEは軽度であった。
・活性物質群では重篤なTEAEは観察されなかった。
【0077】
要約すると、試験されたすべての用量でのMOR103による治療は安全であることが結論づけられる。2件の重篤な有害事象が観察され、両方とも臨床効果を示す治療群ではなかった(下記参照)。本試験の静脈内への適用に相当する患者の血中抗体薬濃度をもたらす用量でのMOR103の皮下投与は、同様の安全性プロフィールを示すことが予想される。
【実施例4】
【0078】
有効性-DAS28
MOR103(またはプラセボ)の最初の投与の4週間後および8週間後、すべての患者のDAS28スコアを測定した。DAS28スコアの減少は疾患重症度の低下と相関する。結果は、ベースライン、すなわち治療前の疾患状態と比較した平均変化として、
図2に示す。
【0079】
プラセボ群は、わずかな変化しか示さない。0.3 mg/kgのMOR103で治療された患者は、DAS28スコアの軽度の減少を示し、わずかに低い疾患の重症度を示した。対照的に、1.0 mg/kgまたは1.5 mg/kgのMOR103で治療された患者は、DAS28スコアの有意な減少を示し、これらの用量でのMOR103の高い有効性を示した。
【実施例5】
【0080】
有効性-ACR20
別の有効性の評価基準として、ACR20基準が用いられた。ACR20基準は、圧痛関節数または腫脹関節数の改善および他の特定のパラメーターの改善を測定する。ACRスコアの測定方法は高度に標準化されている。本臨床試験は、それぞれの適切なガイドラインを用いた。結果は
図3および4に示される。より高いスコアは、疾患重症度の改善に対応する。
【0081】
DAS28スコアの結果(実施例4参照)と一致して、ACRスコアもまた、1 .0 mg/kg MOR103または1.5 mg/kg MOR103のいずれかによる治療において、患者の症状の著しい臨床的改善を示す。4週間後の改善は、1.0 mg/kg群で非常に顕著である(p<0.0001)。総合すると、ACR20スコアは、比較的(comparably)少数の各治療群の患者および比較的短い治療期間で、MOR103の有効性がすでに示され得るという驚くべき知見を支持する。
【実施例6】
【0082】
更なるMOR103用量による臨床試験
上記で設計された臨床試験を更なるMOR103用量を用いて繰り返す。0.5 mg/kg(治療群1)および0.75 mg/kg(治療群2)の用量で、MOR103を患者に静脈内投与する。他のすべてのパラメーターは、実施例1と同一である。
【0083】
両治療群は、良好な安全性プロフィールを示し、DAS28スコアおよびACR20スコアによって測定されるような臨床効果を実証する。
【実施例7】
【0084】
MOR103の皮下製剤による臨床試験
上記で設計された臨床試験をMOR103の皮下製剤を用いて繰り返す。静脈内治療で観察されるのと同様の患者の血中MOR103濃度を達成するために、MOR103の皮下用量を増加させる。
【0085】
様々な治療群において、患者に1.5 mg/kg、2.0 mg/kg、3.0 mg/kgおよび4.0 mg/kgでMOR103を投与する。薬物を、隔週、毎月または隔月のいずれかで皮下投与する。他のすべてのパラメーターは、実施例1と同一である。
【0086】
すべての治療群は、良好な安全性プロフィールを示し、DAS28スコアおよびACR20スコアによって測定されるような臨床効果を実証する。
【実施例8】
【0087】
固定用量でのMOR103の皮下製剤による臨床試験
実施例7を固定用量のMOR103を用いて繰り返す。様々な治療群において、患者に75 mg、100 mg、150 mg、200 mg、300 mgおよび400 mgの固定用量でMOR103を投与する。薬物を、毎週、2週間毎、4週間毎または6週間毎に皮下投与する。他のすべてのパラメーターは、上記の実施例と同一である。
【0088】
すべての治療群は、良好な安全性プロフィールを示し、DAS28スコアおよびACR20スコアによって測定されるような臨床効果を実証する。
【配列表】