IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ センスエア アクチボラグの特許一覧

特許7132294ガス中の成分を検出するセンサ装置及び方法
<>
  • 特許-ガス中の成分を検出するセンサ装置及び方法 図1
  • 特許-ガス中の成分を検出するセンサ装置及び方法 図2
  • 特許-ガス中の成分を検出するセンサ装置及び方法 図3
  • 特許-ガス中の成分を検出するセンサ装置及び方法 図4
  • 特許-ガス中の成分を検出するセンサ装置及び方法 図5
  • 特許-ガス中の成分を検出するセンサ装置及び方法 図6
  • 特許-ガス中の成分を検出するセンサ装置及び方法 図7a
  • 特許-ガス中の成分を検出するセンサ装置及び方法 図7b
  • 特許-ガス中の成分を検出するセンサ装置及び方法 図8
  • 特許-ガス中の成分を検出するセンサ装置及び方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】ガス中の成分を検出するセンサ装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3504 20140101AFI20220830BHJP
   G01N 21/17 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
G01N21/3504
G01N21/17 N
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020151284
(22)【出願日】2020-09-09
(62)【分割の表示】P 2017568436の分割
【原出願日】2016-06-27
(65)【公開番号】P2021001900
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2020-09-16
(31)【優先権主張番号】1550898-9
(32)【優先日】2015-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】520347605
【氏名又は名称】センスエア アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】Senseair AB
【住所又は居所原語表記】Box 96, 824 08 Delsbo SWEDEN
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】ギィルファソン,クリスティン ビイ.
(72)【発明者】
【氏名】ソールストルム,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ブリアーノ,フローリア オットネッロ
(72)【発明者】
【氏名】ステンメ,ヨーラン
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-329680(JP,A)
【文献】特開2011-232574(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0264030(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0036975(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0292236(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
G02B 6/00-6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板平面(4)を画定する基板(3)及び電磁波を案内するための導波管(2)を備えるセンサ装置において、
前記導波管(2)が、前記基板平面(4)と平行な導波管面(4')において、長さ方向に延び、
前記導波管(2)が、前記導波管面(4')において、長さ方向に垂直な方向に幅(W、w)を有し、かつ、長さ方向に垂直な方向において前記導波管面(4')から高さ(h)を有し、
前記基板(3)上に、前記導波管(2)を支持する支持構造体(5)を有し、
前記導波管(2)の高さ(h)は、前記電磁波の波長よりも小さく、
前記導波管(2)は、長さ方向の少なくとも第一の部分に沿って前記支持構造体(5)によって前記基板(3)上に支持され、前記導波管(2)は、長さ方向の少なくとも第二の部分に沿って遊離しており、
前記導波管(2)が第一の組成材料から成り、前記支持構造体(5)が第二の組成材料から成り、
前記導波管(2)の高さ(h)に対する幅(W,w)の比率が5倍以上である
ことを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記支持構造体(5)の少なくとも一部は、前記導波管(2)の支持点における前記導波管(2)の幅(W、w)よりも小さい幅(Ws)を有することを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記導波管(2)の少なくとも一部の幅(W、w)は、前記導波管(2)の長さ方向に沿って変化することを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記支持構造体(5)の幅(Ws)は、前記導波管(2)の長さ方向の少なくとも一部に沿って、前記導波管(2)の幅に応じて変化することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記導波管(2)の少なくとも一部の断面形状は、長方形である請求項1から4の何れか一項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記支持構造体(5)は、前記導波管(2)の長さ方向の少なくとも前記第二の部分に沿って前記導波管(2)が遊離するようにその一部が存在することを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記基板(3)は前記第一の組成材料から成る請求項5または6に記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記導波管(2)が長さ方向の複数の部分に沿って遊離するように、前記支持構造体(5)が複数の支持柱(21)を備え、支持柱(21)の中心から隣接する支持柱(21)の中心までの距離が、長さ方向に沿って変化することを特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載のセンサ装置。
【請求項9】
前記導波管(2)が、長さ方向の複数の部分に沿って遊離するように、前記支持構造体(5)の一部が、前記複数の支持柱(21)における隣接する支持柱(21)間に存在することを特徴とする請求項8に記載のセンサ装置。
【請求項10】
前記装置が熱放射源(10)を備え、前記熱放射源(10)は、前記熱放射源(10)からの前記電磁波を前記導波管(2)に結合するように配置され、前記熱放射源(10)が前記電磁波の一波長の5分の1未満の幅を有することを特徴とする請求項1から9の何れか一項に記載のセンサ装置。
【請求項11】
前記装置が検出要素(13、13'、13")を備え、前記検出要素(13、13'、13")は、前記導波管(2)からの前記電磁波を前記検出要素(13、13'、13")に結合するように配置されることを特徴とする請求項1から10の何れか一項に記載のセンサ装置。
【請求項12】
前記導波管(2)が、周期的な構造体(8)を備え、前記周期的な構造体(8)は回析要素(9)を備えることを特徴とする請求項1から11の何れか一項に記載のセンサ装置。
【請求項13】
前記装置が熱放射源(10)と検出要素(13、13'、13")を備え、前記熱放射源(10)は、前記熱放射源(10)からの前記電磁波を前記導波管(2)に結合するように配置され、前記検出要素(13、13'、13")は、前記導波管(2)からの前記電磁波を前記検出要素(13、13'、13")に結合するように配置され、前記熱放射源(10)及び/又は前記検出要素(13、13'、13")は、前記周期的な構造体(8)に包含されていることを特徴とする請求項12に記載のセンサ装置。
【請求項14】
前記第一の組成材料における屈折率が、前記電磁波の波長において、前記第二の組成材料における屈折率よりも高いことを特徴とする請求項1から13の何れか一項に記載のセンサ装置。
【請求項15】
前記基板(3)、前記支持構造体(5)、及び前記導波管(2)が、シリコン基板、二酸化ケイ素層、及びシリコンデバイス層から成るSOIウェーハから形成され、前記SOIウェーハの前記シリコン基板が前記装置の前記基板(3)を形成し、前記SOIウェーハの前記二酸化ケイ素層が前記装置の前記支持構造体(5)を形成し、前記SOIウェーハの前記シリコンデバイス層が前記装置の前記導波管(2)を形成することを特徴とする請求項1から14の何れか一項に記載のセンサ装置。
【請求項16】
流体中の少なくとも1つの成分を検出するための、請求項1から15の何れか一項に記載のセンサ装置を備えるガスセンサ装置であって、流体中の少なくとも1つの成分が、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化二窒素、水蒸気、炭化水素、アンモニア、クロロフルオロカーボン及び/又はCFSを含むことを特徴とするガスセンサ装置。
【請求項17】
流体中の成分を検出する方法(800)であって、
請求項1から15の何れか一項に記載のセンサ装置を準備するステップ(801)と、
前記導波管と接触して流体を供給するステップ(802)と、
前記導波管(2)の第一の部分に電磁波を送るステップ(803)と、
前記導波管(2)の周りのエバネッセント波の領域で前記流体と前記電磁波を相互作用させるステップ(804)と、
前記導波管(2)の第二の部分で前記電磁波を検出するステップ(805)と、
検出された前記電磁波に基づいて前記流体中の成分を検出するステップ(806)と、
を備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を誘起するための導波管を備えるセンサ装置及びガスなどの流体中の成分を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
可視又は赤外線(IR)波長範囲の様々なガスの吸収帯を利用する光学的な検出は1つの確立された方法である。吸収は、空洞の物理的な寸法よりも長い有効な相互作用長を得るようにミラーを備えた空洞内で測定され得る。このアプローチは、ミラーの光学的損失によって制限される。赤外線の光源は、多くの場合、広帯域白熱電球である。スペクトル分解性能を得るためには、光スペクトル分析が必要である。検出器は、熱式又は半導体式の光子検出器であり得る。
【0003】
光路長が長い高感度装置を作成するためには、高品質のミラー又は物理的なパスを使用するか又は装置の寸法を長くする必要がある。多くの用途では、ガス流量が小さくガス室の容量が大きい場合にセンサの反応速度を制限してしまう。
【0004】
米国特許公開2014/0264030号には、中赤外線感知のための方法及び装置が開示されている。
【0005】
国際公開第WO2008/125797号には、導波管と溝との間にエバネッセント結合を使用する導波管装置が開示されている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、従来技術の欠点を低減することにある。特に、ガス中の成分を検出するのに十分な感度を維持しながら小型化を可能にするセンサ装置を提供することを目的とする。
【0007】
従って、本発明は、基板平面を画定する平面基板及び電磁波を案内するための導波管を備えるセンサ装置に関し、
かかる導波管は、基板平面と平行な導波管面の長さ方向にのび、導波管は、長さ方向に垂直な方向において導波管面内で特定の幅を有し、かつ、長さ方向に垂直な方向において導波管面からの特定の高さを有し、高さに対する幅の比率が5倍以上あり、
導波管の高さが電磁波の波長よりも短く、
導波管が、導波管の長さ方向に沿って基板から導波管にのび、かつ、導波管の支持点で導波管の幅よりも小さい幅を有する支持構造体によって基板の上に支持され、
導波管の幅が導波管の長さ方向に沿って変化し、さらに支持構造体の幅が導波管の長さ方向に応じて変化する。
【0008】
従って、本発明によれば、支持構造体の寸法を変化させる簡単な方法が提供され、かかる方法は、支持構造体が外される際に、その地点まで支持構造体の幅を減少させることを可能にする。従って、支持構造体は導波管の長さに沿って調整可能である。支持構造体の幅の段階的な変化は、導波管内を伝播する電磁波の反射を低減するという利点も有する。
【0009】
よって、本発明によれば、ガス中の成分を検出するために、良好な感度を維持しながら小型化され得るセンサ装置が提供される。導波管の特徴は、電磁波を案内し、かつ、導波管コアの外側にエバネッセント波の領域を有することにある。かかる装置は、導波管及び支持構造体の寸法的特徴によって、光学的損失を軽減する平面微細加工技術を用いて製作することができる。導波管の上面の平面性が非常に良く制御され得るので、導波管上面の光学的損失を軽減できると共に、幅対高さの比率が高いことによって、横方向の側面の光学的損失も軽減することができる。
【0010】
幅対高さの比率は、10倍以上又は20倍以上になる場合がある。導波管の支持点における支持構造体の幅は、導波管の幅の半分未満、導波管の幅の4分の1未満又は導波管の幅の10分の1未満であることができる。好ましくは、導波管の支持点における支持構造体の幅は支持構造体を通る光の損失を低減するために小さい。支持構造体により機械的な剛性を持たせるために、支持構造体は、支持構造体から導波管まで断面幅が減少するような形状を有しても良い。
【0011】
導波管は、長さ方向の少なくとも第一の部分に沿って支持され得、長さ方向の少なくとも第二の部分に沿って導波管を遊離するように、導波管及び支持構造体の幅は減少される。
【0012】
従って、導波管のより広い部分が周囲のガスに曝されることが可能で、支持構造体を通る光の損失は軽減され得る。
【0013】
導波管及び支持構造体の製作に便利な方法は、エッチングの使用である。エッチングを使用する場合、再現性は制限される。従って、エッチング方向で支持構造体の最小可能寸法を得るには制限がある。センサ装置は、支持構造体と導波管との間の接触面積を減少させる方法として、導波管を、長さ方向の複数の部分に沿って遊離して配置することができ、よって複数の支持柱が形成され、支持柱の中心から隣接する支持柱の中心までの距離を長さ方向に沿って変化させることができる。支持柱の中心間の距離を変化させることによって、伝播する波と支持構造体で反射される波との間の不必要に建設的な若しくは破壊的な干渉が回避できる。支持柱の中心間の距離はランダムであってもよい。
【0014】
かかる装置は、導波管を偏向させるように導波管の遊離する部分に力を加える手段を備えることができる。
【0015】
従って、導波管を介して伝播する電磁波は、導波管の偏向によって変調できる。かかる力は、基板に対して導波管を偏向させるように、基板と導波管との間、少なくとも導波管の遊離している第二の部分に電位を印加することによって提供することができる。或いは、熱作動又は圧電駆動などで力を加えることもできる。
【0016】
導波管は、導波管の長さ方向に沿った少なくとも1つのギャップを備えることができ、少なくとも1つのギャップは、電磁波の波長よりも小さく、好ましくは電磁波の波長の5分の1未満又は10分の1未満である。
【0017】
従って、導波管は、依然として低い損失で電磁放射の伝播を可能にする熱式及び/又は電気式の障害を設けることができる。これは、導波管の一部分から導波管の別の部分に、熱又は電気の乱れが伝播するのを阻止するために使用され得る。
【0018】
かかる装置は熱放射源を備え、該熱放射源からの電磁波を導波管に結合させるよう前記熱放射源が配置され、熱放射源は、電磁波の波長の5分の1未満の幅を有する。
【0019】
このように小さな熱放射源は導波管のエバネッセント波領域内に配置することができるという利点を有し、エミッタに近い場所と導波管モードとの間に強い重なりを生じさせる。これは、波長よりも小さな幅によって部分的に偏光された放射源としても作用する。これは、導波管に好ましい伝播モードを励起するために使用することができる。
【0020】
熱放射源は、導波管に好ましい伝播モードを励起することができるように、導波管の断面内において、導波管から、電磁波の一波長に等しい距離の範囲内に配置され得、好ましくは、導波管から、電磁波の波長の5分の1に等しい距離の範囲以内に配置され得る。
【0021】
熱放射源は、導波管に当接しても良いし、又は導波管から離間しても良い。
【0022】
熱放射源を導波管に当接させることの利点は、導波管が放射源からの熱を伝導するように作用することである。よって、熱源の励起の周波数が高くなり得る。一方、導波管から離間した熱放射源を有することの利点は、熱質量を減少させてエネルギー効率を向上させることができる。
【0023】
センサ装置は、導波管からの電磁波を結合させるよう配置された検出要素を備えることができる。検出要素は、熱式又は半導体式の光子検出器であり得る。
【0024】
従って、導波管を介して伝播された電磁波は、導波管を囲むガスの成分による吸収を検出するために、導波管から検出要素に結合され得る。
【0025】
検出要素は、導波管の好ましい伝播モードを検出できるように、導波管の断面内において、導波管から、電磁波の一波長に等しい距離の範囲内に配置され得、好ましくは導波管から、電磁波の波長の10分の1に等しい距離の範囲以内に配置され得る。
【0026】
従って、導波管内の好ましい伝播モードと検出要素との間の結合は、改善することができる。
【0027】
検出要素は、導波管に当接しても良い。そうすることで、検出の周波数範囲が増大する。或いは検出要素を導波管から離間して配置しても良い。そうすることで、要素の熱質量を低減する。
【0028】
導波管は、周期的な構造、望ましくは導波管の長さ方向に、周期的な構造を備えることができる。
【0029】
従って、かかる構造は、伝播する電磁波を望ましい方向に導く回折格子として作用することができる。回折格子は、電磁波を導波管の方向に導くために、例えば、励起の熱源からの電磁エネルギーを導波管内に結合させる際に使用することができる。回折格子は、電磁波を導波管から外に導出するために、例えば、導波管からの電磁エネルギーを検出要素に結合させる際に使用することができる。
【0030】
周期的な構造は、例えば導波管における凹部又は開口部、導波管の寸法における変化、導波管の材料における変化、又は導波管上に預けられた構造体のような回析要素を備えることができる。
【0031】
周期的な構造は、その他の波長の伝播を選択的に許容する一方で、導波管から外又は後方に特定の波長光を導出することによって、波長フィルタとして使用できる。
【0032】
熱放射源及び/又は検出要素は、周期的な構造に含まれても良い。検出要素は電磁波の波長の5分の1未満の幅を有することができる。従って、検出要素は周期的な構造に組み入れられても良い。
【0033】
これは、熱放射源及び/又は検出要素と導波管との間の電磁的な結合を増大させるために使用され得る。
【0034】
導波管は、高い屈折率でしかも0.4~10μm又は1.2~7μm以下の波長範囲で光学的損失が低い単結晶シリコンから成ることができる。選択的に、導波管は、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、窒化ケイ素、サファイア、又はダイヤモンドのようなその他の物質で構成されても良い。
【0035】
導波管は、第一の組成材料から成ることができ、支持構造体は、第二の組成材料から成ることができる。第一の組成材料の屈折率は、電磁波の波長において、第二の組成材料の屈折率よりも高くなり得る。例えば、第一の組成材料は、単結晶シリコンであっても良く、第二の組成材料は二酸化ケイ素であっても良い。
【0036】
第一の組成材料は、第二の組成材料とは独立して選択することができる。
【0037】
上記したように、第一の組成材料は、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、窒化ケイ素、サファイア、又はダイヤモンドから選択することができる。
【0038】
従って、導波管と支持構造体との間の光学的損失を低減することができる。
【0039】
基板、支持構造体、及び導波管は、シリコン基板、二酸化ケイ素層、及びシリコンデバイス層から構成されるSOIウェーハから形成することができ、そこでシリコンウェーハのシリコン基板はデバイスの基板を形成し、シリコンウェーハの二酸化ケイ素層は装置の支持構造体を形成し、シリコンウェーハのシリコンデバイス層は装置の導波管を形成する。
【0040】
導波管及び支持構造体は、T字型の断面構造を形成することができる。
【0041】
従って、導波管は、導波管と支持構造体との間の光学的損失を低減すると共に支持され得る。
【0042】
電磁波の波長は、0.4~10μmの範囲内であり、好ましくは1.2~7μmの範囲内であることができる。より好ましくは、電磁波の波長は、3~7μmの範囲内である。3~7μmの波長範囲では、支持構造体の影響を最小限に抑えることが重要である。
【0043】
従って、電磁波は、導波管を囲む物質の中に1つ以上の構成要素を検出するために使用することができる。 導波管を囲む物質は、例えば、ガス又は流体である。
【0044】
本発明はさらに、導波管と接触しているガス中の少なくとも1つの成分を検出するために、本明細書に記載のセンサ装置を備えるガスセンサ装置に関する。ガス中の成分は、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化二窒素、水蒸気、炭化水素、アンモニア、クロロフルオロカーボン及び/又はCFSのうち、少なくとも1つを含んでいる。或いは、センサ装置は、導波管と接触している流体中の少なくとも1つの成分を検出するために、本明細書に記載のセンサ装置を備える流体センサ装置であることができる。
【0045】
本発明はさらに、ガス中の成分を検出する方法に関し、かかる方法は、
センサ装置を準備するステップと、
導波管と接触してガスを供給するステップと、
導波管の第一の部分に電磁波を送るステップと、
導波管の周りの電磁波のエバネッセント波の領域内のガスと電磁波とを相互作用させるステップと、
導波管の第二の部分で電磁波を検出するステップと、
検出された電磁波に基づいてガス中の成分を検出するステップと、を備えている。
【0046】
従って、ガスの容積が小さく及び/又はガス流量が少ない場合であっても、ガス中の成分を検出することができる。
【0047】
或いは、本発明は、導波管と接触する流体中の成分を検出する対応する方法に関する。
【0048】
センサ装置は熱放射源を備え、該熱放射源からの電磁波を導波管に結合させるように前記熱放射源が配置され、放射源は電磁波の波長の5分の1未満の幅を有し、電磁波は熱放射源に交流電流を励起することによって供給され、交流電流は熱放射源から検出器までの熱伝導及び/又は対流経路の熱遮断周波数よりも高い周波数を有し、よって電磁放射の伝播を可能にしつつ熱源から検出器への熱波の伝播を防止する。熱は、導波管だけでなく、基板及び空気を介して伝導及び/又は対流することができる。
【0049】
本発明はさらに、本明細書に記載のセンサ装置を製作する方法に関し、
かかる方法は、
ウェーハを準備するステップと、
ウェーハにおいて導波管を製作するステップと、
ウェーハにおいて支持構造体を製作するステップとで構成される。
【0050】
平面状の材料をウェーハに使用することによってセンサ装置を小型化でき、またウェーハを一括処理で製作可能である。従って、同時に複数の装置を備えたウェーハを製作することによって、製作コストを抑えることができる。
【0051】
かかる方法は、
基板層、中間層及びデバイス層を備えるウェーハを準備するステップと、
デバイス層に導波管を製作するステップと、
中間層に支持構造体を製作するステップとを備え、
基板層がデバイスの基板を形成する。
【0052】
よって、異なる層が、デバイスの異なる構成要素(すなわち、導波管、支持構造体及び基板)の簡単な製作方法を提供する。異なる層は、センサ装置を製作及び/又は操作する目的で最適化することができる。例えば、デバイス層の材料は適当な光学特性を有するために選択され得るが、中間層の材料は支持構造体を介した光学的損失を減らす光学特性を有するために選択することができる。装置のデバイス層及び中間層の材料が、湿式又は乾式のエッチングによって製作される場合、適切な製作選択性をもって、例えば適当なエッチングを選ぶことによって材料特性を持たせるように選択できる。
【0053】
導波管は、エッチングによってデバイス層内に形成することができ、導波管をアンダーエッチングすることによって中間層内に支持構造体が形成される。
【0054】
従って、センサ装置は、一括処理に適した比較的簡単な製作技術によって製作することができる。材料のエッチング選択性、保護層の堆積などによって、アンダーエッチングから導波管を保護することができる。
【0055】
ウェーハは、シリコン基板、二酸化ケイ素層、及びシリコンデバイス層を構成するSOIウェーハであることができ、SOIウェーハのシリコン基板は基板層に対応し、SOIウェーハの二酸化ケイ素層は中間層に対応し、SOIウェーハのシリコンデバイス層はデバイス層に対応する。
【0056】
従って、ウェーハの材料は、本明細書に記載のセンサ装置の一括製作及び動作に適している。シリコンデバイス層は、赤外線領域で適切な光学特性を有し、中間二酸化ケイ素層は、光学的損失を低減するのに適した光学特性を有しており、またこれらの材料は、エッチング選択性が非常に高いところをエッチング選択性に提供し、例えば緩衝フッ化水素酸(BHF)によって二酸化ケイ素をエッチングすることを提供する。
【0057】
導波管はエッチングから保護することができ、導波管を製作した後に、支持構造体にエッチングを施す。導波管は、エッチング停止材又はドーピングによってエッチングから保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】基板によってサポートされた導波管の断面図。
図2】基板上を遊離する導波管の断面図。
図3】支持された導波管の一部及び遊離するセクションを示す上面図。
図4】基板によって支持される別の導波管の断面図。
図5】熱放射源及び検出要素を示す斜視図。
図6】周期構造を有する導波管の一部及び放射源を示す斜視図。
図7a】導波管及び熱放射源並びに少なくとも1つの検出要素を備えるガスセンサ装置の第一の例を示す概略図。
図7b】導波管及び熱放射源並びに少なくとも1つの検出要素を備えるガスセンサ装置の第二の例を示す概略図。
図8】ガス中の成分を検出する方法を示すフローチャート。
図9】センサ装置を製作する方法を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明の様々な実施形態を、添付図面を参照して説明する。
本発明は、波長λの電磁波を案内する導波管を備えるセンサ装置に関する。電磁波の波長は、0.4~10μmの範囲内であり、好ましくは1.2~7μmの範囲内である。図1には、一実施形態によるセンサ装置1の導波管2の一部分の断面が示されている。この装置は、センサ装置用の支持構造体を形成する基板3を備える。基板は、材料の平面ウェーハの形態で、基板平面4を画定する。導波管は、基板平面4に平行な、すなわち図1の断面図に垂直な導波管平面4'で長さ方向にのびる。
【0060】
導波管は、前記長さ方向に垂直な方向において、導波管平面で幅Wを有し、かつ、前記長さ方向に垂直な方向において、導波管平面で高さhを有する。この幅対高さの比率W/hが5以上であることが導波管の重要な特徴である。導波管は、これらの寸法的特徴のために、シリコンなどの素材のウェーハから平面製作技術によって製作することができる。従って、導波管の主たる表面すなわち導波管の幅にわたって広がる表面は、非常に滑らかに作ることができる。導波管の小さい方の表面すなわち導波管の高さにわたって広がる表面は、導波管の寸法的特徴に起因して導波管の光学性能の影響が少ない。これらの小さい方の表面は、製作上の問題で主たる表面よりも不規則である。
【0061】
導波管の長さ方向に沿って基板から導波管までのびる支持構造体5によって、導波管2は基板3の上に支持されている。支持構造体5は導波管の支持の地点で、導波管の幅Wよりも小さい幅Wsを有する。よって支持構造体からの光損失を低減することができる。図示された実施形態では、支持構造体の幅は徐々に基板に向かって大きくなり、機械的にさらに強固な構造を提供する。
【0062】
案内するために設計された導波管において、導波管の高さhは電磁波の波長λよりも小さい。従って、導波管内における低レベルの光損失で、大部分のエネルギーがエバネッセント波として伝播する、電磁波を案内するために使用され得る導波管が提供される。
【0063】
導波管の幅は、導波管の長さ方向に沿って変えることができる。これは図2に示されており、図2には、上から見た導波管が示されている。図1に示された断面図は、導波管の幅Wを有する平面A‐Aに対応する。装置を製作するための微細加工技術、例えば湿式又は乾式エッチングを材料に施すことによって、支持構造体の幅は導波管の長さ方向に沿って対応して変化する。従って、導波管の別の部分、例えばB‐Bにおいては導波管の幅はwであり、A‐Aの幅Wより小さい。支持構造体5の幅Wsは、導波管を遊離した状態にするために減少されている。導波管は、長さ方向の複数の部分に沿って遊離し、そのため複数の支持柱21が形成される。このように支持構造体5は、複数の支持柱21から構成される。支持柱の中心から隣接した支持柱21の中心までの距離d、すなわち中心間の距離は、長さ方向に沿って変化する。中心間の距離dを変化させることによって、伝播波と、支持構造体で反射される伝播波と間の不必要な建設的又は破壊的な干渉を避けることができる。支持柱間の中心間の距離dは、ランダムにされても良い。
【0064】
図3は、図2の断面B‐Bと一致するセンサ装置の導波管2の一部分の断面を示す。導波管2の幅がWであり、高さがhである。図1と比較した場合、基板3からのびる支持構造体5は、導波管の幅を減らすことによって減少されている。従って、長さ方向の少なくとも第一の部分に沿って支持される導波管を提供することができ、また長さ方向の少なくとも第二の部分に沿って遊離する導波管が提供される。
【0065】
さらに、図3には、センサ装置が導波管の遊離する部分に力を加える手段を備え得ることが示されている。これは、基板と導波管の遊離部分との間に電圧電位を印加する手段として示されている。このような力は、導波管を伝播する電磁波を変調するために使用され得、導波管を偏向させるために使用され得る。
【0066】
さらに図2に示すように、導波管は導波管の長さ方向に沿って1つ以上のギャップ7を備えることができる。ギャップは電磁波の波長よりも短く、好ましくは電磁波の波長の5分の1よりも短い。ギャップは電磁波の伝播を提供すると同時に、熱又は電気に対する障害物としても使用され得る。
【0067】
導波管及び支持構造体は、図1に示すように、T字型の断面構造を形成する。一実施形態によれば、支持構造体5は、図4に示すように、導波管の断面において均一な幅を有し、T字型を形成する。
【0068】
図5には、導波管2のセクションと一体化された熱放射源10の一例が示されている。熱放射源は、導波管を横切ってのび、電流源を接続するための一対の電気接続パッド11に接続されたワイヤを備えている。ワイヤは導波管を横断してのびる長さを有し、電磁波の波長の5分の1未満の幅を有する。熱放射源は、その源からの電磁波を導波管に結合させるよう導波管の表面上に配置される。従って、その源は導波管内の好ましい伝播モードを励起するよう、導波管から、電磁波の一波長に等しい距離の範囲内に配置されている。
【0069】
同様に、センサ装置は、検出要素に導波管からの電磁波を結合するよう配置された検出要素を備えている。その構成が放射熱源に類似するので、図5にはボロメータ検出要素が示されている。上記検出要素は、導波管内の好ましい伝播モードを検出するように、導波管の断面において、導波管から、電磁波の一波長に等しい距離の範囲内に配置され、好ましくは、導波管から、電磁波の波長の5分の1に等しい距離の範囲内に配置されている。検出要素は、導波管に接しているか又は導波管から離間している。
【0070】
図6に示すように、導波管2は導波管の長さ方向に周期的な構造体8を備えることができ、図6では、切抜かれた開口9の形態の複数の回折要素が間隔pを置いて示されている。或いは、回折要素は導波管における複数の凹部又は開口を備えることができ、また、導波管の寸法の変化、導波管の素材の変更、又は導波管上に配置される構造体を含むことができる。周期構造体8は、放射源10を備えても良い。また周期構造体は、電磁エネルギーを導波管の長さ方向に導くように設定された間隔を有する格子として機能し得る。同様に、検出要素は周期構造体に含まれていても良い。
【0071】
導波管2の材料は、0.4~10μmの波長範囲で、より好ましくは、1.2~7μmの波長範囲で優れた光学特性を有する単結晶シリコンで有り得る。導波管は第一の組成材料から成り、支持構造体5は第二の組成材料から成ることが考えられる。好ましくは、第一の材料における屈折率は、電磁波の波長で第二の材料における屈折率よりも高い。従って、支持構造体5は、例えば二酸化ケイ素から成り得、屈折率の違いによる導波管から支持構造体への光学的損失が低減される。
【0072】
一例によれば、センサ装置の基板3、支持構造体5及び導波管2は、シリコン基板、二酸化ケイ素層及びシリコンデバイス層を含むシリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウェーハから形成される。SOIウェーハのシリコン基板は装置の基板を形成し、SOIウェーハの二酸化ケイ素層は装置の支持構造体5を形成し、SOIウェーハのシリコンデバイス層が装置の導波管を形成する。
【0073】
図7には、ガス中の少なくとも1つの成分を検出するためのセンサ装置を含むガスセンサ装置の例が2つ示されている。図7(a)には、ガス中の1つの成分を検出するガスセンサ装置が示されている。センサ装置は、小さな領域に非常に長い導波管を提供する二重螺旋のように形成され、上述のように支持構造体5の上に導波管2を備えている。或いは、導波管は蛇行形状又は他の螺旋形状を有してもよい。さらにセンサ装置は、導波管の第一の部分に熱放射源10を、また導波管の第二の部分に検出要素13を備えている。放射源は電流源12によって駆動され、導波管に結合される特定の周波数の電磁波を生成する。電磁波は導波管に沿って伝播し、エネルギーの大部分を導波管を取り囲む空間でエバネッセント波として伝播させる。この空間及び導波管に沿ったエバネッセント波の領域では、電磁波の波長に対応する吸収ピークを有するガスの任意の成分が伝播する波からエネルギーを吸収することになる。選択された周波数での電磁波のエネルギー量が、検出要素によって検出され、ガスのその成分の量及び/又は存在の測定値になる。
【0074】
図7(b)には、3種類の異なるガスの成分(ガス1、ガス2及びガス3)を検出するための同様のガスセンサ装置が示されている。このガスセンサ装置は、熱放射源が複数のガス成分の吸収ピークに対応する幾つかの波長の電磁波を放射するように構成されているという点で、図7(a)に示された物とは異なる。導波管に沿った電磁波のエバネッセント波の領域におけるガスの3つの成分(ガス1、ガス2及びガス3)の何れかの存在(及び量)は、エネルギーの吸収として検出されることになる。ガスの各成分は、専用の検出要素13、13'、13"によって検出することができる。検出要素は、伝播する電磁波の選択された波長を取り除くために、回折格子などの波長を選択する装置で導波管に結合され得る。
【0075】
本明細書に記載のセンサ装置を用いてガス中の成分を検出する方法は、図8に示されている。かかる方法800は、本明細書に記載のセンサを準備するステップ801と、導波管と接触してガスを供給するステップ802と、導波管の第一の部分に電磁波を送信するステップ803とを備えている。電磁波は導波管を通って伝播し、電磁エネルギーの大部分を、導波管に沿ってエバネッセント波として伝播させる。このエバネッセント波は、導波管の周りの領域でガスと相互作用し(ステップ804)、電磁波の特定の周波数でエネルギーを吸収する。その後、電磁波は導波管の第二の部分で検出要素によって検出される(ステップ805)。吸収の特定のスペクトルから、ガス中の成分が検出され得る(ステップ806)。
【0076】
センサ装置1は、図5に示すように、放射源からの電磁波を導波管に結合するように配置された熱放射源10を備えている。放射源は、電磁波の波長の5分の1未満の幅を有する。電磁波は、熱放射源を交流電流で励起させることによって提供される。ここで、交流電流は、放射源から検出器までの熱伝導及び/又は対流経路の熱遮断周波数よりも高い周波数を有し、それにより、電磁放射の伝播を可能にする一方で、熱放射源から検出器への熱波の伝播を防止する。
【0077】
ガス中の成分は、例えば、 一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化二窒素、水蒸気、炭化水素、アンモニア及び/又はクロロフルオロカーボンを含む。
【0078】
図9には、本明細書に記載のセンサ装置を製作する方法(a)が示されている。この方法は、基板層と、中間層と、デバイス層から構成されるウェーハを提供するステップ(b)を備えている。ウェーハは、シリコン基板、二酸化ケイ素層、及びシリコンデバイス層を含むSOIウェーハから構成され得る。導波管は、リソグラフィ及びエッチングマスクとしてフォトレジストを用いたドライエッチングによって、デバイス層内に製作される(ステップ(c)及び(d))。支持構造体5は、等方性のウェットエッチング、すなわち導波管のアンダーエッチングによって中間層内に製作される(ステップ(e))。最後に、フォトレジストエッチングマスクが除去される(ステップ(f))。導波管の幅に応じて、図面の左手及び右手に示すように、支持構造体5の幅を制御することができ、導波管は、導波管に沿った幾つかの部分で遊離するようにされ得る。ウェーハの基板層は、装置の基板を形成する。SOIウェーハのシリコン基板は基板層に対応し、SOIウェーハの二酸化ケイ素層は中間層に対応し、SOIウェーハのシリコンデバイス層はデバイス層に対応する。
【0079】
選択的に、導波管及び支持構造体5は、導波管を製作し、そして、エッチング停止材を堆積させることによって導波管をエッチングから保護することによって製作することができる。その後、支持構造体5をエッチングすることが可能である。また、ウェーハにおいて導波管を形成するための材料は、導波管及び周囲の材料のエッチング用にエッチング選択性を提供するように、ドーピングされ得る。
【符号の説明】
【0080】
1 センサ装置
2 導波管
3 基板
4 基板平面
4' 導波管面
5 支持構造体
7 ギャップ
8 周期構造体
9 開口
10 熱放射源
11 接続パッド
12 電流源
13;13';13" 検出要素
21 支持柱
λ 波長
d 距離
h 導波管の高さ
p 間隔
W;w 導波管の幅
Ws 支持構造体の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9