(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】メタラシクロアルキレン錯体、および環状ポリアセチレンへのアルキン重合のための使用
(51)【国際特許分類】
C08F 4/78 20060101AFI20220830BHJP
C08F 38/00 20060101ALI20220830BHJP
C08F 8/04 20060101ALI20220830BHJP
C07F 11/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C08F4/78
C08F38/00
C08F8/04
C07F11/00 C
(21)【出願番号】P 2020151852
(22)【出願日】2020-09-10
(62)【分割の表示】P 2019165103の分割
【原出願日】2015-06-09
【審査請求日】2020-09-23
(32)【優先日】2014-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507371168
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファンデーション インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイジュ アダム スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】サルカール サウミャ
(72)【発明者】
【氏名】マクゴーワン ケビン パトリック
(72)【発明者】
【氏名】クップスワミィ サブラマニアム
(72)【発明者】
【氏名】ローランド クリストファー ディー.
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/085707(WO,A1)
【文献】特開平07-048419(JP,A)
【文献】特開昭60-049013(JP,A)
【文献】特開昭61-185337(JP,A)
【文献】特開2013-014562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/00- 4/82
C08F 6/00-246/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式:
【化1】
で表される、
アルキン重合用触媒。
【請求項2】
請求項1に記載の触媒と、アルキンモノマーと、を含む、複合体。
【請求項3】
前記アルキンモノマーが、フェニルアセチレン、1-エチニル-4-メトキシベンゼン、1-エチニル-4-フルオロベンゼン、1-エチニル-3,5-ビス(トリフルオロ-メチル)ベンゼン、1-デシン、3,3-ジメチル-1-ブチン、トリメチルシリルアセチレン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
前記アルキンモノマーがフェニルアセチレンを含む、請求項2に記載の複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2012年11月19日に出願された国際特許出願PCT/US2012/065841の一部継続出願であり、2011年12月7日に出願された米国仮出願第61/567,909号の恩典を主張すると共に、2013年7月12日に出願された米国仮出願第61/845,764号の恩典も主張する、2014年6月9日に出願の米国実用新案出願第14/299,449号の一部継続出願であり、それらの開示はその全体において参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、全米科学財団により与えられたCHE-0748408の下で政府の支援によって行われた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
高酸化状態のアルキリデンおよびアルキリジン金属錯体は、約40年間にわたって知られている。これらの金属錯体を介したアルケンおよびアルキンメタセシスは、広範囲に研究されてきた。アルキリジン金属錯体は、これらのアルキリデンアナログほどには研究されてきていないが、容易に入手可能なニトリルから新規なアルキンを調製するための潜在的に有益な手段となるニトリル-アルキン交差メタセシス(NACM)を促進するそれらの可能性のため特に関心が高い。
【0004】
金属-アルキリジンは、金属-炭素三重結合を含有する。金属をその最も高い酸化状態で有する金属-アルキリジンは、Schrock型金属-アルキリジンとして知られており、広く検討されてきた。高酸化状態の金属-アルキリジンにおいて、アルキリジン炭素は、金属中心にπ-供与する6電子供与体である。多くのπ-供与にもかかわらず、高酸化状態の金属-アルキリジンの大部分は、電子が不足しており、追加のリガンドにより安定化されなければならない。
【0005】
Schrock型金属-アルキリジンは、塩基がα-炭素を脱プロトン化してアルキリデンからアルキリジンを形成するα-CHの脱プロトン化によって、または嵩高なアルキル基がα-CHの脱プロトン化を促進して金属-アルキリジンの形成の際に立体的な込み合いが解放されるα-脱離反応によって通常は形成される。まれなケースでは、これらの錯体は、アルキンと金属-金属三重結合のメタセシス反応によって、またはgem-ジクロリドが金属錯体と反応して金属塩化物錯体と金属アルキリデンとの混合物を形成した後、金属塩化物錯体の還元により元の金属錯体に戻る一連の還元的リサイクル反応によって形成される。
【0006】
触媒的NACMは、Geyer et al, J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 3800-1(非特許文献1)によって報告されており、(RO)3W≡N形態のタングステン-窒化物が、アルキンで処理すると対応する金属-アルキリジンに可逆的に変換することが見出された。生憎、反応の速度は非常に遅く、非常に限定的な基質範囲が観察された。PNPが亜リン-窒素-亜リン三座ピンサー型配位子である新規なチタンアルキリデン-アルキル錯体(PNP)Ti=CHtBu(CH2
tBu)および嵩高なニトリルを使用して、NACMが達成された。しかしながら、触媒は、Bailey et al., J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 2234-5(非特許文献2)に報告されるようにアルキンを遊離するためには外部求電子剤が必要であった。
【0007】
ポリアセチレンは、導電性、常磁性磁化率、光学的非線形性、光伝導性、ガス透過性、液晶性、および鎖のらせん性を見せうる有機ポリマーである。アセチレンの重合は、通常は遷移金属触媒を共触媒と共に利用する。高分子量ポリアセチレン(>106g/mol)は、活性種が金属-アルキリデンであることが判明したM(CO)6-CCl4-hv (M=Mo, W)などの触媒から生成されており、重合はメタセシス経路を伴う。金属-アルキリジン(R3CO)3W≡CC(CH3)3は、Mortreux et al., J. Mol. Catal. A: Chem. 1995, 96, 95-105(非特許文献3)によって報告されているようにアルキンメタセシスおよびアルキン重合を促進することが示されており、生成物の組成は置換基によって異なった。重合は、フェニルまたはトリメチルシリル一置換アセチレンだけの専用経路であることが示された。金属-アルキリジンH5C6C≡W(CO)4Brは、Katz et al., J. Am. Chem. Soc. 1984, 106, 2659-68(非特許文献4)に報告されているようにアルキンメタセシスを伴わない緩慢なアルキン重合を促すが、数日後わずかなモノマー変換率が観察されるのみである。
【0008】
OCOピンサー配位子のトリアニオン性によって金属-アルキリジンに必要とされる+6酸化状態へ達することが可能になる;OCOピンサー配位子の強固な平坦性が金属中心の周囲に幾何学的な制約を課し、これが反応性の増大を許容することがある;強力なM-C結合が配位子の面外まで金属-アルキリジンを歪めるはずであり、これが、得られる錯体の反応性をさらに増大させうる、ということから、OCOピンサー配位子担持金属-アルキリジンもアルキンのメタセシスまたは重合触媒として好適であるはずだと予想する人がいるかもしれない。
【0009】
末端基を含有しない環状ポリマーへのモノマーの重合は、独自の物性を示すポリマーを提供する。例えば、環状ポリマーの密度、屈折率、Tg、粘弾性、溶液動力学、および表面特性はすべてそれらのより一般的な直鎖状のアナログのものとは異なる。半世紀以上にわたるこの分野における研究にもかかわらず、重要な商用ポリマーの環状アナログの特性および基本的挙動に関する知識は依然として欠如している。大きな鎖の閉環は環状ポリマーを作成する1つの方法ではあるが、効率的には無限希釈条件を必要とするので、大規模な合成が妨げられる。2個の別々の鎖の分子間クロスカップリングは必然的に直鎖状不純物につながり、ほんの微量の非環状不純物でも試料の物性に顕著な影響がありうる。直鎖状副生成物を除去するための徹底的な精製、二相条件、または分取規模のGPCが多くの場合に必要であり、環状ポリマーの大規模合成を制限する。
【0010】
環拡大重合は、環状ポリマーを入手するための別の方法である。メカニズムは、金属-炭素または金属-酸素結合などの不安定な結合において、成長する環へのモノマーの挿入を伴う。環拡大法は、閉環と同じ厳密な濃度の制約を被ることがなく、環状ポリマーを合成するための魅力的な手法である。Kricheldorf Macromolecules 1995, 28, 6718-6725(非特許文献5)に開示のジブチルチン触媒は、ラクトンを用いたこの種の重合の初期の例であった。多くの場合では、触媒は特定のモノマーにあわせて調整されなければならない。Grubbsによって提唱され、Bielawski et al., Science 2002, 297, 2041-2044(非特許文献6)およびXia, Y. et al , J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 2670-2677(非特許文献7)に記載の、環拡大オレフィンメタセシス重合(REMP)は、効率的に環状ポリマーを生成することに対処したものである。環状ポリマーを作成する環拡大法は、大規模合成のために閉環において必要とされる後重合処理よりもはるかに好ましい一方で、環拡大は、重合度が高まるにつれ連鎖移動(backbiting)を被ることがあり、かつモノマー原料に微量の直鎖状アルケンが存在する場合には直鎖状ポリマーが反応の際に形成することがある。
【0011】
さらに、REMP触媒系は、シクロオクテンおよびその誘導体等の環状モノマーを必要とする。より容易に利用可能でありより安価な基質を利用することが有益であると考えられる。よって、ポリマー化学における長年の全般的な課題は、多様な組成、高い純度、高い分子量をもつ環状ポリマーを、容易に利用可能であり安価なモノマーから効率的に合成することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】Geyer et al, J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 3800-1
【文献】Bailey et al., J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 2234-5
【文献】Mortreux et al., J. Mol. Catal. A: Chem. 1995, 96, 95-105
【文献】Katz et al., J. Am. Chem. Soc. 1984, 106, 2659-68
【文献】Kricheldorf Macromolecules 1995, 28, 6718-6725
【文献】Bielawski et al., Science 2002, 297, 2041-2044
【文献】Xia, Y. et al , J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 2670-2677
【発明の概要】
【0013】
概要
発明のある態様は、発明の態様に係る、トリアニオン性ピンサー配位子担持金属-アルキリジン錯体からのテトラアニオン性ピンサー配位子担持メタラシクロアルキレン錯体の調製のための方法に向けられる。
【0014】
本発明の別の態様は、アルキンの重合のための開始剤としての三座ピンサー配位子金属錯体の使用に向けられる。高分子量ポリマーは、三座ピンサー配位子金属錯体を用いて速い速度で形成される。発明のある態様では、ポリ(アルキン)は、大環状ポリ(アルキン)である。
【0015】
発明の別の態様は、飽和ポリマーへのポリ不飽和環状ポリ(アルキン)の水素化に向けられる。大環状ポリ(フェニルアセチレン)は、環状ポリ(スチレン)まで水素化することができる。
以下に、本発明の基本的な諸特徴および種々の態様を列挙する。
[1]
トリアニオン性ピンサー配位子担持金属-アルキリジン錯体またはテトラアニオン性ピンサー配位子担持金属-アルキンまたはテトラアニオン性ピンサー配位子担持メタラシクロアルキレン錯体からなる触媒を提供する工程;
複数のアルキンモノマーを提供する工程;および
アルキンモノマーを触媒と混合する工程であって、アルキンモノマーがポリ不飽和環状ポリマーまで重合する、工程
を含む、ポリ不飽和環状ポリマーを調製する方法。
[2]
触媒が、[
t
BuOCO]W≡CC(CH
3
)
3
(THF)
2
(1)、[O
2
C(
t
BuC=)W(η
2
-HC≡CPh)](2)、[O
2
C(PhC=)W(η
2
-HC≡C
t
Bu)](3)、または[O
2
C(
t
BuC=)W(η
2
-HC≡C
t
Bu)](4)である、[1]の方法。
[3]
触媒が、[O
2
C(
t
BuC=)W(η
2
-HC≡C
t
Bu)](4)である、[1]の方法。
[4]
非プロトン性溶媒をさらに含む、[1]の方法。
[5]
アルキンモノマーがフェニルアセチレンである、[1]の方法。
[6]
ポリ不飽和環状ポリマーが直鎖状不純物を含んでいない、[1]の方法。
[7]
[1]の方法によってポリ不飽和環状ポリマーを調製する工程;および
飽和環状ポリマーを形成するためにポリ不飽和環状ポリマーを水素化する工程
を含む、飽和環状ポリマーを調製する方法。
[8]
ポリ不飽和環状ポリマーが環状ポリフェニルアセチレンであり、飽和環状ポリマーがポリ(スチレン)である、[7]の方法。
[9]
[
t
BuOCO]W≡CC(CH
3
)
3
(THF)
2
(1)を提供する工程:および
[
t
BuOCO]W≡CC(CH
3
)
3
(THF)
2
(1)を約5当量の3,3-ジメチル-1-ブチン(HCC
t
Bu)と混合する工程であって、[O
2
C(
t
BuC=)W(η
2
-HC≡C
t
Bu)](4)が形成される、工程
を含む、[O
2
C(
t
BuC=)W(η
2
-HC≡C
t
Bu)](4)を調製する方法。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の態様に係る、トリアニオン性ピンサー配位子担持金属-アルキリジン錯体1からのテトラアニオン性ピンサー配位子担持メタラシクロアルキレン錯体2、3、および4の合成を示す。
【
図2】
図2は、楕円体を50%の確率水準で描き、かつ明確性のため錯乱したTHF原子および格子状溶媒分子(ペンタン)を取り除いた、4のX線で決定した分子構造を示し、選択した結合距離[Å]は、W1-O1 1.990(1)、W1-O2 1.984(1)、W1-O3 2.328(1)、W1-C27 2.045(2)、W1-C32 2.014(2)、W1-C33 1.902(2)であり、結合角[°]は、O1-W1-O2 152.37(6)、C32-W1-C27 37.47(8)である。
【
図3】
図3は、4についての
1Hおよび
13C NMRシグナルを与える。
【
図4】
図4は、2、3および4についての時間(分)に対するポリ(フェニルアセチレン)の定量的収率によって決定したTONのプロットを示し、3つ組(triplicate)のデータの平均をプロットしたものである。a)発明の態様にしたがって調製した環状ポリフェニルアセチレンおよびb)同じ分子量の直鎖状ポリフェニルアセチレンの動的光散乱プロットを示す。
【
図5】
図5Aは、発明の態様に係る環状ポリ(フェニルアセチレン)についてのGPCトレースを示し、
図5Bは、分子量を一致させた直鎖状のものである。
【
図6】
図6Aは、発明の態様に係る環状ポリ(フェニルアセチレン)についての動的光散乱体積のプロットを示し、
図5Bは、分子量を一致させた直鎖状のものである。
【
図7】
図7は、4になるように実施した重合プロセスについての触媒ループを示す。
【
図8】
図8Aは、環状ポリ(フェニルアセチレン)のオゾン分解を示し、
図8Bは、直鎖状ポリ(フェニルアセチレン)についてのものであり、30秒間および16分間の試料である。
【
図9】
図9Aは、環状および直鎖状PSの重ね合わせたGPCトレースを示す。環状PS Mw = 31,000, PDI = 1.28;青色:直鎖状基準PS Mw = 30,000, PDI = 1.06;および
図9Bは、環状および直鎖状PSの重ね合わせたGPCトレースを示す。黒色:環状PS Mw = 31000, PDI = 1.28;赤色:直鎖状基準PS Mw = 20,000, PDI = 1.02.
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な開示
2012年11月19日に出願された国際特許出願PCT/US2012/065841は、トリアニオン性ピンサー配位子担持金属-アルキリジン錯体の調製を教示している。その中では、トリアニオン性ピンサー配位子担持金属-アルキリジン錯体へアルキンを付加すると、テトラアニオン性ピンサー配位子担持金属-アルキンまたは、下に示すように、次の構造のテトラアニオン性ピンサー配位子担持メタラシクロアルキレン錯体への変換が起きることが開示されている:
式中:Rは、独立して、H、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル t-ブチル、もしくはより大きなアルキル、またはテトラアニオン性ピンサー配位子担持メタラシクロアルキレンの形成を阻害しない任意の他の置換基であり;R'は、独立して、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、C
5-C
22アルキル、フェニル、ナフチル、C
13-C
22アリール、置換アリール、またはトリメチルシリルであり;R'''は、Hまたはメチルであり;Xは、独立して、O、N、S、P、またはSeであり;R''は、独立して、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、C
5-C
22、フェニル、ナフチル、C
13-C
22アリールであってもよく、または2個のR''は、ヘテロ環として単一のXと組み合わせたC
4-C
6アルキレンであり;nは、Xに応じて1~3であり;mは、nは、1~2であり;Mは、5~7族の遷移金属である。R'が置換アリールである場合は、1つまたは複数の置換基は、フルオロ、C
1-C
3アルコキシ、またはトリフルオロメチルであってもよい。
【0018】
テトラアニオン性ピンサー配位子担持メタラシクロアルキレン錯体は、トリアニオン性ピンサー配位子担持金属-アルキリジン錯体へのアルキンの付加により形成されたメタラシクロプロピレン錯体である。
図1に示すように、2当量のアセチレンモノマーを用いた低温でのテトラアニオン性ピンサー配位子担持メタラシクロアルキレン錯体の調製は、重合向けの生成物の混合物を与える。発明のある態様では、室温でトリアニオン性ピンサー配位子担持金属-アルキリジン錯体と共に数当量のアセチレンモノマーが含まれ、下の式1に表されるように、得られるテトラアニオン性ピンサー配位子担持メタラシクロアルキレン錯体上に2つの同様のモノマーがある単一のテトラアニオン性ピンサー配位子担持メタラシクロアルキレン錯体をもたらす。
【0019】
発明のある態様は、重合触媒としてトリアニオン性ピンサー配位子担持金属-アルキリジン錯体またはテトラアニオン性ピンサー配位子担持メタラシクロプロペン錯体を用いたアルキンの重合のための方法に向けられる。この方法により調製されるポリ(アルキン)は、得られたポリ(アルキン)主鎖の二重結合にわたって1つまたは複数の幾何的配置を呈することがある。式2によって表されるすべてシスのアルキレン鎖は例示のみを目的とし、すべての考えられるトリアニオン性ピンサー配位子担持金属-アルキリジン錯体を使用するかまたは反応条件の任意の組み合わせの下でのすべての考えられるモノマーの重合の際に予想される幾何的配置を示唆することを意図するものではない。重合反応は、溶液であってもよい流体状態でアルキンモノマーにトリアニオン性ピンサー配位子担持金属-アルキリジン錯体を組み合わせた際に起きる。アルキンは、非置換、一置換、または二置換であってもよい。トリアニオン性ピンサー配位子担持金属-アルキリジン錯体は、中性錯体または、メチルトリフラートなどの強力な求電子剤と共に利用された場合には塩のアニオンであってもよい。重合は、比較的穏やかな条件、例えば、周囲温度、乾燥条件にて不活性雰囲気下で実施してもよい。重合は、高触媒対モノマーターンオーバー、高重合度、高ポリマー収率で起こりうる。当業者により予想されるように、重合速度および実際の変換は、モノマーの性質、触媒、および重合の条件によって異なる。発明のある態様では、得られるポリ(アルキン)は、環状ポリマーであってもよい。
錯体4は、触媒2について観察されるものと同様の高活性を維持している。触媒2、3、または触媒4のいずれかを、2mLのトルエン中で10,000:1のフェニルアセチレン対触媒比で添加して、重合および、我々が現在環状ポリ(フェニルアセチレン)であると理解する生成物がもたらされる。重合の最初の2分間では、2は平均して6.89×10
6g
pol/mol/hであり、3は平均して4.39×10
6g
pol/mol/hであるが、驚いたことに4は平均して9.00×10
6g
pol/mol/hである。4は、優れた活性を有するだけではなく、これらの条件下では22分後に
となる完全な変換を達成する。スチレンまたは過剰なTEMPO(ラジカル捕捉剤)の存在下で実施する重合は、フェニルアセチレンの重合を改変または阻害しない。触媒が環状ポリ(フェニルアセチレン)を生成するという最初の徴候は、2のW-アルケン結合に1-フェニル-1-プロピンが入り5員メタラシクロペンタジエン錯体が生成するという所見からきたものである。
図7は、アルキンの環拡大重合のスキームを示す。
【0020】
環状ポリマーは、直鎖状のアナログと比較して、流体力学的体積が小さいのでGPCによる溶出時間が長い。また、静的および動的光散乱手法は、環状ポリマーが直鎖状の等価物に対して粒径がより小さいことを確認できる。計算では、環状ポリマーの二乗平均平方根(rms)回転半径(<Rg
2>
0.5)は、直鎖状のトポロジーの同一ポリマーのものの半分であることを表している。いくつかの場合では、得られた大環を結合切断を通じて開裂することができ、直鎖状のトポロジーおよび結果として起こる物性の変化がもたらされる。触媒として(アセチルアセトナト)(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(1)を用いて合成した直鎖状ポリ(フェニルアセチレン)は、4によって生成される環状ポリマーに対する比較となり、分子量および多分散性を一致させることによって、トポロジーの影響を明確に決定することができる。DLSおよびSLS手法を用いて、直鎖状および環状ポリマーについて流体力学的半径(R
H)およびrms回転半径(<R
g
2>
0.5)を決定した。
の比がよくわかる。下の表4に環状および直鎖状ポリマーについてのR
HおよびR
gの実験値を列記する。実験的に決定した比が、触媒4を用いて生成したポリマーが環状であることを明らかに表していることにほとんど疑いはない。
の実験比は、トポロジーの違いを明らかに表している。理論値は、sp
3結合を含有するポリオレフィンをモデルにしているので、より強固なsp
2混成主鎖によりポリ(フェニルアセチレン)については理論からずれることが予想される。
【0021】
方法および材料
全般的考察
別途規定しない限り、すべての操作はグローブボックス手法を用いて不活性雰囲気下で実施した。トルエンおよびペンタンは、GlassCountour乾燥用カラムを用いて乾燥させた。フェニルアセチレンは、シグマアルドリッチから購入し、使用する直前に水素化カルシウム上で2回蒸留し、凍結脱気によって脱気し、塩基性アルミナのカラムを通してろ過した。トルエン-d8は、亜リン酸五酸化物(P2O5)で乾燥させ、蒸留し、凍結脱気により脱気し、4Å分子篩上で保管した。[tBuOCO]W≡C(tBu)(THF)2(1)は、文献記載の手順により調製した。NMRスペクトルは、Varian INOVA 500MHzおよびVarian INOVA2 500MHzスペクトロメーター上で取得した。化学シフトはδ(ppm)で報告する。1Hおよび13C NMRスペクトルについては、残留溶媒ピークを内部基準として用いた。分子量および多分散性は、50℃および1.0mL/分の流量で50mM LiClを含むジメチルアセトアミド(DMAc)中のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により決定した(Agilentイソクラティックポンプ、脱気装置、およびオートサンプラー、カラム:PLgel 5μm guard + ViscoGel IシリーズG3078混床式カラム2本:分子量範囲0~20×103および0~100×104g mol-1)。検出は、658nmで作動するWyatt Optilab T-rEX屈折率検出器および659nmで作動するWyatt miniDAWN Treos光散乱検出器で構成した。絶対分子量および多分散性は、Wyatt ASTRAソフトウェアを用いて算出した。
【0022】
[
tBuOCHO]W≡C(CH
3)
3(O
tBu)(THF)の合成
窒素充填したグローブボックス内で、ガラスバイアルにTHF(1mL)中の[
tBuOCO]H
3(140mg、0.37mmol)を仕込み、続いて-35℃まで冷却した。2つめのバイアルにおいては、(
tBuO)
3W≡CC(CH
3)
3(200mg、0.42mmol)をTHF(1mL)に溶解し、撹拌しながら、溶液を1つめの溶液に滴下した。溶液が室温まで温まるにつれて、茶色から暗い黄色までの緩やかな変色が観察された。30分間室温で撹拌を続けた。揮発物を除去した後に、粘着性の暗い黄色の物質が得られた。冷ペンタン(4mL)を加え茶色の懸濁液が形成され、これから鮮やかな黄色の析出物をろ過した。ろ液を追加の冷ペンタンで洗浄した。希釈ペンタン溶液を-35℃で12時間冷却することにより単結晶が得られた;収率(206mg、72%)。
【0023】
{[
tBuOCO]W≡CC(CH
3)
3(O
tBu)}{Ph
3PCH
3}の合成
ガラスバイアルに[
tBuOCHO]W≡C(CH
3)
3(0
tBu)(THF)(206mg, 0.267mmol)およびEt
2O(1mL)を仕込み、続いて-35℃まで冷却した。Et
20(0.5mL)中のPh
3P=CH
2(74mg、0.267mmol)の溶液を調製し冷溶液に加えた。得られた混合物を25℃まで温め、溶液は「暗い」黄色から「カナリア色の」黄色まで色が変化した。溶液を45分間室温で撹拌し、この間に塩生成物が黄色の固形物として析出した。生成物をろ過し、ろ液をペンタン(3×1mL)で収率(216mg、83%)まで洗浄した。
【0024】
錯体の単結晶を取得する試みは不成功となった。NMRスペクトロスコピーおよび燃焼分析を用いた1H、13C、31Pおよび相関実験の組み合わせによって明確な同定が可能になった。
【0025】
[
tBuOCO]W≡CC(CH
3)
3(THF)
2(1)の合成
ガラスバイアルに{[
tBuOCO]W≡CC(CH
3)
3(0
tBu)}{Ph
3PCH
3}(115mg、0.164mmol)およびEt
20(5mL)を仕込みオレンジ色の懸濁液が得られた。THF(0.1mL)を加えてホスホニウムトリフラートを白色の固形物として析出させた。溶液をろ過し減圧下で濃縮した。-35℃まで12時間溶液を冷却して「暗い」赤色の結晶性の物質として化合物1が生成した;収率(100mg、78%)。
【0026】
1Hおよび13C NMRスペクトロスコピーと燃焼分析との組み合わせによって1の明確な同定が可能になった。X線強度データは、MoKα放射(λ=0.71073Å)およびAPEXII CCD面積検出器を使用してBruker DUO回折計上で100Kで収集した。生のデータフレームは、プログラムSAINTにより分析し、3Dプロファイリングアルゴリズムを使用して統合した。得られたデータを解析して、hkl反射およびこれらの対応する強度を生成しかつ標準偏差を推定した。データは、Lorentz偏光因子で補正し、数値的吸収補正はインデックス付けおよび測定した面を基準にして適用した。
【0027】
[O2C(tBuC=)W(η2-HC≡CPh)](2)および[O2C(PhC=)W(η2-HC≡CtBu)](3)の合成
錯体1は、-35℃でトルエン-d8中の2当量のフェニルアセチレンと即座に反応し、少量のポリフェニルアセチレン(PPA)と共に、2:1の比で[O2C(tBuC=)W(η2-HC≡CPh)](2)および[O2C(PhC=)W(η2-HC≡CtBu)](3)が得られる(スキーム1)。化合物の混合物にEt2Oを加えると2つの錯体が選択的に溶解し、ろ過するとEt2O不溶性のPPAが分離する。2と3の混合物にペンタンを加えると2が選択的に溶解し、ろ過すると、33%の収率でペンタン不溶性のオレンジ色の固形物である3が偏析する。2のペンタン可溶溶液を真空下で減少させて、40%の収率で黄色の固形物を得た。
【0028】
X線回折実験に適合した単結晶は、-35℃でEt2O中の3の濃縮溶液から沈殿した。3および2は、2つのフェノラートおよびアルキリデン結合を含む三座テトラアニオン性ピンサー型配位子の特有の組み合わせを特徴とする。
【0029】
錯体2および3は、-35℃で1およびフェニルアセチレンから2対1の比で形成する。下の式1に図示するように、トルエン-d
8中の単離した2の溶液を85℃で2.5週間加熱すると平衡状態の2および3ができる。平衡状態では、η
2-HC≡CPhおよびη
2-HC≡
tBu部分上のそれぞれのプロトンの積分は、2および3が17:83の比(K
eq=5)で存在することを示し、85℃での-1.14kcal/molのエネルギー差に相当する。
【0030】
アルキンの重合
窒素充填したグローブボックス内で、[tBuOCO]W≡CC(CH3)3(THF)2(1)の原液(50μLトルエン中0.2μmol)をトルエン(1000μmol)に溶解した無水モノマーに加えた。混合物を室温で30分間撹拌させた。反応混合物をグローブボックスから取り出し、メタノールまたはジエチルエーテル(20mL)のいずれかに析出させた。ポリマー物質をろ過により採取し、真空下80℃で2時間乾燥させた後、秤量して収率を取得した。
【0031】
錯体1は、フェニルアセチレン重合を触媒し、錯体2および3もフェニルアセチレン重合を触媒し、フェニルアセチレンの存在下では1が2および3に変換することを示唆している。
【0032】
典型的な反応では、触媒のトルエン溶液は、アセチレンモノマーとトルエンとの撹拌溶液に加えられた。反応物を1時間激しく撹拌し、メタノールでクエンチした。得られたポリマーを真空下で乾燥させ、秤量して定量的パーセント収率およびターンオーバー数(TON)を得た。ポリマーの特性確認は、FTIRおよび1H NMRと、THFに可溶なすべての試料についてはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)とを含み、MwおよびMw/Mnを決定する。1を使用した重合結果を表1に与える。
【0033】
(表1)1
[a]を使用したアセチレン重合結果
[a]トルエン中の1(0.2μmol)を25℃で1時間トルエン中のアセチレンモノマー(1000μmol)に加えた。
[b]GPCにより決定した。
[c]トルエン中の1(1.0μmol)をトルエン中のアセチレンモノマー(1000μmol)に加え、75℃で1時間加熱した。
[d]THFへのポリマー不溶性によりM
wおよびM
w/M
nを決定することができなかった。
【0034】
触媒の最も顕著な特徴は、並外れて高い活性およびターンオーバー数である。錯体1、2および3をスクリーニングして、最も高い達成可能なターンオーバー数および触媒活性を求めた。錯体2は、すべての場合で最も良い触媒値をもたらした。下の表2に示すように、25,000対1の基質対触媒充填量で、錯体2はフェニルアセチレンモノマー単位をほぼ17,233個変換させる。さらに、2はフェニルアセチレンおよび1-デシンをそれぞれ最大で5.64×106gPPA mol-1 h-1および7.98×106gPA mol-1 h-1までの触媒活性で重合する。
【0035】
【0036】
触媒[O
2C(
tBuC=)W(η
2-HC≡C
tBu)]4の合成
窒素充填したグローブボックス内で、撹拌棒を備えたガラスバイアルに1(400mg、0.52mmol)を仕込み、トルエン(5.0mL)に溶解した。3,3-ジメチル-1-ブチン(214mg、321μL、2.60mmol)を撹拌しながらマイクロピペットを介して加えた。5分後、溶媒および残留3,3-ジメチル-1-ブチンを真空下で除去し、上の式2に示す反応で、薄茶色の固形物4を>99%の収率(405mg、0.52mmol)が得られた。得られた固形物を最小限のペンタンに溶解し-35℃まで冷却して、分子構造を
図2に示すX線回折に適合した単結晶が得られた。
図3は、
1Hおよび
13C化学シフトの図表と共に4の構造を示す。
【0037】
4を使用した重合手順
不活性雰囲気のグローブボックス内で、撹拌棒を備えたガラスバイアルにトルエン(2.0mL)を加えた。フェニルアセチレン(218μL、2.00mmol)を撹拌しながらマイクロピペットを介して加えた。4(157μL、0.20μmol)の原液(1mg/mL)を撹拌溶液に一度に加えて重合を開始した。10倍過剰の撹拌メタノールへ加えて重合を終了した。触媒1、2、および3について得られた経時的なターンオーバー数を
図4Aに示し、2、3、および4について
図4Bに示す。得られたポリマー試料を真空ろ過を介して単離し、残留溶媒を真空下で除去した。表3および表4は,3回の試験毎の重合期間に対する収率としての動態データを与え、4からの環状ポリマーについてGPCおよび動的光散乱プロットを
図5Aおよび6Aにそれぞれ示し、
図5Bおよび6Bは直鎖状の等価物をそれぞれ表す。基本的な動態データおよび図表化した流体力学的体積依存特性確認データを下の表3および4に提供する。
【0038】
【0039】
(表4)直鎖状および環状ポリ(フェニルアセチレン)についてのM
n、M
w/M
n、R
Hおよび(<Rg
2>
0.5)値
【0040】
基本的水素化手順
50mL丸底ガラスフラスコおよびテフロン撹拌棒を備えた150mL Parr高圧ステンレス反応容器を用いて水素化を実施した。不飽和ポリマーを無水トルエンに溶解し1時間脱気した後Pd/Cを加えた。丸底フラスコを反応器に入れ、次いで密閉した。Parr容器を500psiのH2で3回パージした。次いで高圧反応器を所望のpsiまで加圧し、混合物を撹拌した。この過程でPd/Cを2日毎に加えた。生じたポリマーをセライト(登録商標)に通してろ過し冷メタノールに析出させて固形物を得、次いでろ過し、バイアルに移し、高真空下(3×10-4mmHg)下で一晩乾燥させた。種々の水素化条件を補足の表5に示す。エントリー1、2、3は部分水素化の条件であり、エントリー4は完全水素化条件である。
【0041】
【0042】
パラジウム炭素を用いて環状および直鎖状ポリ(フェニルアセチレン)試料を部分的に水素化した(飽和させた)。部分水素化によってオゾン分解を介して環を切断できる。直鎖状ポリ(フェニルアセチレン)の部分的に水素化された試料をオゾン分解に供するとC=C結合の切断をもたらすのみであり、流体力学的体積がより小さくそれ故に分子量がより少ないフラグメントが提供される。直鎖状ポリマーの切断の際には流体力学的体積がより大きなポリマーを生成することは不可能である。しかしながら、環状ポリマーの切断は、流体力学的体積がより大きく、よってGPCカラム上の溶出時間がより短い直鎖状フラグメントをもたらす。
図8は、
図8Aが環状ポリ(フェニルアセチレン)のオゾン分解からのポリマーフラグメントのGPCトレース、
図8Bが直鎖のものを示す。14分後のショルダーから明らかなように、オゾン分解は、より短い溶出時間を示すポリマーのフラクションに至り、これはポリマーが環状である場合にのみ可能な結果である。水素化は選択的ではないので、複数の二重結合をもつ環が開裂しより小さいフラグメントへと切断されるため、溶出時間がより長いフラグメントの増加もある。比較すると、bにおいては、直鎖状ポリ(フェニルアセチレン)のオゾン分解は、溶出時間がより長いより小さなフラグメントのみを生成する。動的光散乱は、環状トポロジーの別の実験的検証を提供する。オゾン分解前の水素化された環状ポリマーの平均流体力学的半径は10.14nmであるが、しかしながら、オゾン分解後には平均流体力学的半径は12.49nmまで増加し、これは環状ポリマーについてのみ可能な結果である。
【0043】
水素化されたポリマーは、触媒4から生成されたポリマーの環状特性を見せる。環状ポリ(フェニルアセチレン)を完全に水素化することにより、環状ポリスチレンが取得される。環状ポリスチレンを真正かつ十分に特性確認された直鎖ポリスチレン標準物質と比較する。
図9Aは、環状ポリスチレン(Mn=31,000; PDI=1.28)と共に、緊密に一致させた直鎖ポリスチレン(Mn=30,000; PDI=1.06)のGPCトレースを示す。2つの試料は、ほぼ同等の絶対分子量を有するにもかかわらず著しく異なる保持時間を示す。さらに、
図9Bは、溶出時間を一致させる試みで、環状ポリスチレン(Mn=31,000; PDI=1.28)と、はるかに小さな直鎖ポリスチレン(Mn=20,000; PDI=1.02)の重畳するGPCトレースを示す。
【0044】
本明細書において言及したかまたは引用したすべての出版物は、本明細書の明示的な教示と矛盾しない範囲で、すべての図および表を含むそれらの全体において参照により本明細書に組み入れられる。
【0045】
本明細書において記載の実施例および態様は例示のみを目的としており、それらを考慮して様々な改変または変更が当業者に示唆されると考えられ、本願の精神および範囲内に含まれることになると理解されたい。