(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】操船システムおよび船舶
(51)【国際特許分類】
B63H 25/02 20060101AFI20220830BHJP
B63H 25/42 20060101ALI20220830BHJP
B63H 21/21 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
B63H25/02 A
B63H25/42 A
B63H21/21
(21)【出願番号】P 2020154645
(22)【出願日】2020-09-15
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】南條 盛彦
(72)【発明者】
【氏名】大場 則之
(72)【発明者】
【氏名】池ヶ谷 祐次
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第10766589(US,B1)
【文献】特開2003-175854(JP,A)
【文献】特開2015-116847(JP,A)
【文献】特開2013-163439(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0277721(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 25/02
B63H 25/42
B63H 21/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶を推進するための推進力を発生する推進力発生部と、
前記推進力発生部を転舵する転舵機構部と、
前記船舶を操縦するための操作部に対するユーザの操作に基づいて、前記推進力発生部の推進力および前記転舵機構部による転舵を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
転舵角を基準位置から転舵させるように前記操作部が中立位置から移動された場合に、転舵速度を第1転舵速度に制御するとともに、
前記転舵角を前記基準位置に戻すように前記操作部が前記中立位置に戻された場合に、転舵速度を前記第1転舵速度よりも小さい第2転舵速度に制御するように構成されている、操船システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記操作部が前記中立位置に戻された場合に、前記推進力発生部の推進力の発生を停止させた状態で、転舵速度を前記第2転舵速度に制御するように構成されている、請求項1に記載の操船システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記操作部が前記中立位置に戻された場合に、前記転舵機構部に対して出力する舵角指令値または速度指令値を調整することによって、転舵速度を前記第2転舵速度に制御するように構成されている、請求項1または2に記載の操船システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記操作部が前記中立位置に戻された場合に、前記舵角指令値に対して追従して変化する転舵の実舵角が前記舵角指令値に追い付いたか否かを判断するとともに、前記舵角指令値に転舵の実舵角が追い付いたと判断された場合に、転舵速度を前記第2転舵速度に制御するように構成されている、請求項3に記載の操船システム。
【請求項5】
前記制御部は、所定の周期毎に前記舵角指令値を調整することによって、転舵速度を前記第2転舵速度に制御するように構成されている、請求項3または4に記載の操船システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記船舶を操縦するためのジョイスティック、ステアリングホイールおよびリモートコントローラの少なくともいずれかの前記操作部が前記中立位置に戻された場合に、転舵速度を前記第2転舵速度に制御するように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記船舶の回頭、横移動および旋回のうちの少なくともいずれかを行うための操作後に前記操作部が前記中立位置に戻されたことに基づいて、転舵速度を前記第2転舵速度に制御するように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項8】
前記第2転舵速度は、前記第1転舵速度の半分以下に設定されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項9】
前記第1転舵速度は、設定可能な最大の転舵速度に設定されており、
前記第2転舵速度は、前記第1転舵速度の半分以下に設定されている、請求項8に記載の操船システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記操作部が前記中立位置に戻された場合に、転舵速度を一定の前記第2転舵速度に制御するように構成されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項11】
前記転舵機構部は、
モータと、
前記転舵を行う転舵軸と、
前記モータの回転力を前記転舵軸に伝達するための複数のギア部材と、を含み、
前記制御部は、前記モータに供給する電流を調整することによって、転舵を前記第1転舵速度で行う状態と前記第2転舵速度で行う状態との間で変更するように前記転舵機構部を制御するように構成されている、請求項1~1
0のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項12】
前記転舵機構部の前記モータは、ブラシ付き直流モータを含む、請求項1
1に記載の操船システム。
【請求項13】
前記制御部は、前記転舵機構部による前記転舵をPI制御によってフィードバック制御するように構成されている、請求項1~1
2のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項14】
前記推進力発生部および前記転舵機構部は、複数組設けられており、
前記制御部は、前記操作部が前記中立位置に戻された場合に、前記複数組の前記転舵機構部の転舵速度を前記第2転舵速度に制御するように構成されている、請求項1~1
3のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項15】
船舶を推進するための推進力を発生する推進力発生部と、
前記推進力発生部を転舵する転舵機構部と、
前記船舶を操縦するための操作部に対するユーザの操作に基づいて、前記推進力発生部の推進力および前記転舵機構部による転舵を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記操作部が中立位置から移動された場合に、転舵速度を第1転舵速度に制御するとともに、前記操作部が前記中立位置に戻された場合に、転舵速度を前記第1転舵速度よりも小さい第2転舵速度に制御するように構成されており、
前記制御部は、前記転舵機構部が前記第2転舵速度で転舵を行っている途中で、前記操作部が前記中立位置から移動された場合に、前記転舵速度を前記第2転舵速度から前記第1転舵速度に変更するように前記転舵機構部を制御するように構成されている、操船システム。
【請求項16】
船体と、
前記船体に取り付けられる船舶推進装置と、を備える船舶であって、
前記船舶推進装置は、
前記船舶を推進するための推進力を発生する推進力発生部と、
前記推進力発生部を転舵する転舵機構部と、を備え、
前記船体は、
前記船舶を操縦するための操作部と、
前記操作部に対するユーザの操作に基づいて、前記推進力発生部の推進力および前記転舵機構部による転舵を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
転舵角を基準位置から転舵させるように前記操作部が中立位置から移動された場合に、転舵速度を第1転舵速度に制御するとともに、
前記転舵角を前記基準位置に戻すように前記操作部が前記中立位置に戻された場合に、転舵速度を前記第1転舵速度よりも小さい第2転舵速度に制御するように構成されている、船舶。
【請求項17】
前記制御部は、前記操作部が前記中立位置に戻された場合に、前記推進力発生部の推進力の発生を停止させた状態で、転舵速度を前記第2転舵速度に制御するように構成されている、請求項16に記載の船舶。
【請求項18】
前記制御部は、前記操作部が前記中立位置に戻された場合に、前記転舵機構部に対して出力する舵角指令値または速度指令値を調整することによって、転舵速度を前記第2転舵速度に制御するように構成されている、請求項16または17に記載の船舶。
【請求項19】
前記制御部は、前記操作部が前記中立位置に戻された場合に、前記舵角指令値に対して追従して変化する転舵の実舵角が前記舵角指令値に追い付いたか否かを判断するとともに、前記舵角指令値に転舵の実舵角が追い付いたと判断された場合に、転舵速度を前記第2転舵速度に制御するように構成されている、請求項18に記載の船舶。
【請求項20】
前記制御部は、所定の周期毎に前記舵角指令値を調整することによって、転舵速度を前記第2転舵速度に制御するように構成されている、請求項18または19に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、操船システムおよび船舶に関し、特に、ユーザの操作に基づいて推進力および転舵を制御する操船システムおよび船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザの操作に基づいて推進力および転舵を制御する操船システムが開示されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、船体を推進させる船舶推進装置が記載されている。上記特許文献1に記載の船舶推進装置は、モータにより駆動されるプロペラ部と、ステアリングシャフトと、モータ制御部と、転舵機構と、を備えている。また、上記特許文献1に記載の船舶推進装置は、船体に取り付けられている。船体には、リモコンと、ステアリングホイールとが設けられている。そして、上記特許文献1に記載の船舶推進装置では、ユーザのリモコンに対する操作に基づいて、モータ制御部によりプロペラ部の回転駆動を制御することにより、船体を推進させるための推進力の大きさが調整される。また、ユーザのステアリングホイールに対する操作に基づいて、転舵機構によりステアリングシャフトを回動させることにより、推進力の方向が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1には記載されていないが、上記特許文献1に記載のような従来のモータによりプロペラ部が駆動される船舶推進装置では、たとえば、船舶の回頭や横移動等を行う際に、ユーザの操作部に対する操作によって、操作部が中立位置にある状態から移動された場合、操作部に対する操作に基づいて、推進力の大きさおよび転舵角の両方が調整される。その後、操作部が中立位置に戻された場合、モータによる推進力の発生を停止させた状態で、転舵角が基準位置(推進力の方向が船体の前後方向と平行な方向になる位置)に戻される。この場合、推進力が発生せずに水流が生じない状態で転舵機構が駆動されるので、水流が生じている状態で転舵機構が駆動される場合と異なり、転舵機構の駆動音が目立つ。なお、操作部が中立位置に戻された場合に、モータによる推進力の発生が完全には停止せずに推進力の発生が比較的小さな状態で転舵角が基準位置に戻される場合も、転舵機構の駆動音が目立つという点では同様である。また、エンジンによりプロペラ部が駆動される場合、推進力の発生を停止させた状態でも、アイドリングにより比較的大きな動作音が継続して発生するので、転舵機構の駆動音が目立ちにくい。一方、モータによりプロペラ部が駆動される場合、推進力の発生を停止させた状態では、モータの駆動が停止するので、転舵機構の駆動音が特に目立ち易い。このため、転舵機構(転舵機構部)の駆動音が目立つことに起因して静音性が低下してしまうのを抑制したいという要望がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、転舵機構部の駆動音が目立つことに起因して静音性が低下してしまうのを抑制することが可能な操船システムおよび船舶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による操船システムは、船舶を推進するための推進力を発生する推進力発生部と、推進力発生部を転舵する転舵機構部と、船舶を操縦するための操作部に対するユーザの操作に基づいて、推進力発生部の推進力および転舵機構部による転舵を制御する制御部と、を備え、制御部は、転舵角を基準位置から転舵させるように操作部が中立位置から移動された場合に、転舵速度を第1転舵速度に制御するとともに、転舵角を基準位置に戻すように操作部が中立位置に戻された場合に、転舵速度を第1転舵速度よりも小さい第2転舵速度に制御するように構成されている。
【0008】
この発明の第1の局面による操船システムでは、上記のように、制御部は、操作部が中立位置から移動された場合に、転舵速度を第1転舵速度に制御するとともに、操作部が中立位置に戻された場合に、転舵速度を第1転舵速度よりも小さい第2転舵速度に制御するように構成されている。これにより、操作部が中立位置に戻された場合に、転舵角を基準位置に戻す際の転舵速度を比較的小さくすることができる。したがって、転舵角を基準位置に戻す際に、転舵機構部の駆動速度を低下させて転舵機構部の駆動音を比較的小さくすることができる。その結果、転舵機構部の駆動音が目立つことに起因して静音性が低下してしまうのを抑制することができる。この効果は、転舵機構部の駆動音が目立ち易いモータ駆動による推進力発生部を有する場合において特に有効である。また、転舵角を基準位置に戻す際の転舵機構部の駆動速度が低下する分だけ転舵機構部の部品が消耗するのを抑制することができるので、転舵機構部の部品の寿命を向上させることができる。
【0009】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、制御部は、操作部が中立位置に戻された場合に、推進力発生部の推進力の発生を停止させた状態で、転舵速度を第2転舵速度に制御するように構成されている。このように構成すれば、推進力の発生が停止した状態で転舵角を基準位置に戻す際の転舵速度を比較的小さくすることができる。その結果、推進力が発生せずに水流が生じないため転舵機構部の駆動音が目立ち易い状態において転舵速度を比較的小さくすることができるので、転舵機構部が駆動されることに起因して転舵機構部の駆動音が目立つのを効果的に抑制することができる。
【0010】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、制御部は、操作部が中立位置に戻された場合に、転舵機構部に対して出力する舵角指令値または速度指令値を調整することによって、転舵速度を第2転舵速度に制御するように構成されている。このように構成すれば、転舵角の目標値としての舵角指令値を継続して調整することによって、間接的に転舵速度を調整することができるとともに、転舵の速度としての速度指令値を調整することによって、直接的に転舵速度を調整することができるので、転舵角を基準位置に戻す際の転舵速度を第2転舵速度に容易に制御することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、制御部は、操作部が中立位置に戻された場合に、舵角指令値に対して追従して変化する転舵の実舵角が舵角指令値に追い付いたか否かを判断するとともに、舵角指令値に転舵の実舵角が追い付いたと判断された場合に、転舵速度を第2転舵速度に制御するように構成されている。このように構成すれば、転舵角を基準位置に戻す際に、舵角指令値に転舵の実舵角が追い付いてから転舵速度が第2転舵速度に制御されるので、転舵の実舵角が追従して変化する舵角指令値を、転舵速度が第2転舵速度となるように適切に制御することができる。
【0012】
上記第1の局面による船舶において制御部が舵角指令値または速度指令値を調整することによって転舵速度を第2転舵速度に制御する構成において、好ましくは、制御部は、所定の周期毎に舵角指令値を調整することによって、転舵速度を第2転舵速度に制御するように構成されている。このように構成すれば、所定の周期毎に転舵角の目標値としての舵角指令値を調整することができるので、転舵角を基準位置に戻す際の転舵速度をより容易に第2転舵速度に制御することができる。
【0013】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、制御部は、船舶を操縦するためのジョイスティック、ステアリングホイールおよびリモートコントローラの少なくともいずれかの操作部が中立位置に戻された場合に、転舵速度を第2転舵速度に制御するように構成されている。このように構成すれば、ジョイスティック、ステアリングホイールおよびリモートコントローラの少なくともいずれかに対するユーザの操作に基づいて船舶が操縦される操船システムにおいて、転舵角を基準位置に戻す際の転舵速度を比較的小さくして静音性が低下するのを抑制することができる。
【0014】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、制御部は、船舶の回頭、横移動および旋回のうちの少なくともいずれかを行うための操作後に操作部が中立位置に戻されたことに基づいて、転舵速度を第2転舵速度に制御するように構成されている。このように構成すれば、船舶の回頭、横移動または旋回が行われた後に転舵角を基準位置に戻す際の転舵速度を比較的小さくすることができる。その結果、船舶の回頭、横移動または旋回が行われた後に操作部が中立位置に戻される場合のように推進力が発生せずに水流が生じないため転舵機構部の駆動音が目立ち易い状態において転舵速度を比較的小さくすることができるので、転舵機構部が駆動されることに起因して転舵機構部の駆動音が目立つのを効果的に抑制することができる。
【0015】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、第2転舵速度は、第1転舵速度の半分以下に設定されている。このように構成すれば、転舵角を基準位置に戻す際の転舵速度を転舵機構部の駆動音が目立つのが抑制されるように十分に小さくすることができる。
【0016】
この場合、好ましくは、第1転舵速度は、設定可能な最大の転舵速度に設定されており、第2転舵速度は、第1転舵速度の半分以下に設定されている。このように構成すれば、操作部に対して操作が行われることによって操作部が中立位置から移動された場合の転舵速度を低下させることなく、転舵角を基準位置に戻す際の転舵速度を転舵機構部の駆動音が目立つのが抑制されるように十分に小さくすることができる。
【0017】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、制御部は、操作部が中立位置に戻された場合に、転舵速度を一定の第2転舵速度に制御するように構成されている。このように構成すれば、第2転舵速度を変化させる場合と比較して、転舵角を基準位置に戻す際の転舵速度の制御処理を簡素化することができる。
【0019】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、転舵機構部は、モータと、転舵を行う転舵軸と、モータの回転力を転舵軸に伝達するための複数のギア部材と、を含み、制御部は、モータに供給する電流を調整することによって、転舵を第1転舵速度で行う状態と第2転舵速度で行う状態との間で変更するように転舵機構部を制御するように構成されている。このように構成すれば、モータに供給する電流を調整することによって、複数のギア部材および転舵軸を介して、転舵速度を第1転舵速度および第2転舵速度に容易に制御することができる。また、転舵角を基準位置に戻す際の転舵機構部の駆動速度が低下する分だけ、モータ、ギア部材および転舵軸が消耗するのを抑制することができるので、モータ、ギア部材および転舵軸の寿命を向上させることができる。
【0020】
この場合、好ましくは、転舵機構部のモータは、ブラシ付き直流モータを含む。このように構成すれば、転舵角を基準位置に戻す際の転舵機構部の駆動速度が低下する分だけ、ブラシ付き直流モータのブラシが消耗するのを抑制することができるので、モータの寿命を効果的に向上させることができる。
【0021】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、制御部は、転舵機構部による転舵をPI制御によってフィードバック制御するように構成されている。このように構成すれば、転舵機構部により転舵させる制御の精度を向上させることができるので、転舵速度を第2転舵速度にさせる制御の精度を向上させることができる。
【0022】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、推進力発生部および転舵機構部は、複数組設けられており、制御部は、操作部が中立位置に戻された場合に、複数の転舵機構部の転舵速度を第2転舵速度に制御するように構成されている。このように構成すれば、複数組の推進力発生部および転舵機構部が設けられている場合でも、複数の転舵機構部全ての転舵速度を第2転舵速度に制御することができるので、複数の転舵機構部の間で転舵角を基準位置に戻すタイミングがずれることなく、転舵角を基準位置に戻す際の転舵速度を比較的小さくすることができる。
また、上記目的を達成するために、この発明の第2の局面による操船システムは、船舶を推進するための推進力を発生する推進力発生部と、推進力発生部を転舵する転舵機構部と、船舶を操縦するための操作部に対するユーザの操作に基づいて、推進力発生部の推進力および転舵機構部による転舵を制御する制御部と、を備え、制御部は、操作部が中立位置から移動された場合に、転舵速度を第1転舵速度に制御するとともに、操作部が中立位置に戻された場合に、転舵速度を第1転舵速度よりも小さい第2転舵速度に制御するように構成されており、制御部は、転舵機構部が第2転舵速度で転舵を行っている途中で、操作部が中立位置から移動された場合に、転舵速度を第2転舵速度から第1転舵速度に変更するように転舵機構部を制御するように構成されている。
この発明の第2の局面による操船システムでは、上記のように、上記第1の局面による操船システムと同様に、制御部は、操作部が中立位置から移動された場合に、転舵速度を第1転舵速度に制御するとともに、操作部が中立位置に戻された場合に、転舵速度を第1転舵速度よりも小さい第2転舵速度に制御するように構成されている。これにより、上記第1の局面による操船システムと同様に、転舵角を基準位置に戻す際の転舵速度を比較的小さくすることができる。その結果、上記第1の局面による操船システムと同様に、転舵機構部の駆動音が目立つことに起因して静音性が低下してしまうのを抑制することが可能な船舶を提供することができる。この効果は、上記第1の局面による操船システムと同様に、転舵機構部の駆動音が目立ち易いモータ駆動による推進力発生部を有する場合において特に有効である。また、上記第1の局面による操船システムと同様に、転舵機構部の部品の寿命を向上させることが可能な船舶を提供することができる。
また、上記第2の局面による操船システムでは、上記のように、制御部は、転舵機構部が第2転舵速度で転舵を行っている途中で、操作部が中立位置から移動された場合に、転舵速度を第2転舵速度から第1転舵速度に変更するように転舵機構部を制御するように構成されている。これにより、転舵速度を第1転舵速度から第2転舵速度に低下させた状態で転舵角を基準位置に戻す途中で、操作部に対する次の操作が行われた場合にも、操作部に対する次の操作に基づいて、転舵速度を第2転舵速度から第1転舵速度に戻した状態で、直ちに転舵機構部による転舵を制御することができる。
【0023】
また、上記目的を達成するために、この発明の第3の局面による船舶は、船体と、船体に取り付けられる船舶推進装置と、を備える船舶であって、船舶推進装置は、船舶を推進するための推進力を発生する推進力発生部と、推進力発生部を転舵する転舵機構部と、を備え、船体は、船舶を操縦するための操作部と、操作部に対するユーザの操作に基づいて、推進力発生部の推進力および転舵機構部による転舵を制御する制御部と、を備え、制御部は、転舵角を基準位置から転舵させるように操作部が中立位置から移動された場合に、転舵速度を第1転舵速度に制御するとともに、転舵角を基準位置に戻すように操作部が中立位置に戻された場合に、転舵速度を第1転舵速度よりも小さい第2転舵速度に制御するように構成されている。
【0024】
この発明の第3の局面による船舶では、上記のように、上記第1の局面による操船システムと同様に、制御部は、操作部が中立位置から移動された場合に、転舵速度を第1転舵速度に制御するとともに、操作部が中立位置に戻された場合に、転舵速度を第1転舵速度よりも小さい第2転舵速度に制御するように構成されている。これにより、上記第1の局面による操船システムと同様に、転舵角を基準位置に戻す際の転舵速度を比較的小さくすることができる。その結果、上記第1の局面による操船システムと同様に、転舵機構部の駆動音が目立つことに起因して静音性が低下してしまうのを抑制することが可能な船舶を提供することができる。この効果は、上記第1の局面による操船システムと同様に、転舵機構部の駆動音が目立ち易いモータ駆動による推進力発生部を有する場合において特に有効である。また、上記第1の局面による操船システムと同様に、転舵機構部の部品の寿命を向上させることが可能な船舶を提供することができる。
【0025】
上記第3の局面による船舶において、好ましくは、制御部は、操作部が中立位置に戻された場合に、推進力発生部の推進力の発生を停止させた状態で、転舵速度を第2転舵速度に制御するように構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による操船システムと同様に、推進力が発生せずに水流が生じないため転舵機構部の駆動音が目立ち易い状態において転舵速度を比較的小さくすることができるので、転舵機構部が駆動されることに起因して転舵機構部の駆動音が目立つのを効果的に抑制することが可能な船舶を提供することができる。
【0026】
上記第3の局面による船舶において、好ましくは、制御部は、操作部が中立位置に戻された場合に、転舵機構部に対して出力する舵角指令値または速度指令値を調整することによって、転舵速度を第2転舵速度に制御するように構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による操船システムと同様に、転舵角を基準位置に戻す際の転舵速度を第2転舵速度に容易に制御することが可能な船舶を提供することができる。
【0027】
この場合、好ましくは、制御部は、操作部が中立位置に戻された場合に、舵角指令値に対して追従して変化する転舵の実舵角が舵角指令値に追い付いたか否かを判断するとともに、舵角指令値に転舵の実舵角が追い付いたと判断された場合に、転舵速度を第2転舵速度に制御するように構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による操船システムと同様に、転舵の実舵角が追従して変化する舵角指令値を、転舵速度が第2転舵速度となるように適切に制御することが可能な船舶を提供することができる。
【0028】
上記第3の局面による船舶において制御部が舵角指令値または速度指令値を調整することによって転舵速度を第2転舵速度に制御する構成において、好ましくは、制御部は、所定の周期毎に舵角指令値を調整することによって、転舵速度を第2転舵速度に制御するように構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による操船システムと同様に、転舵角を基準位置に戻す際の転舵速度をより容易に第2転舵速度に制御することが可能な船舶を提供することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、上記のように、転舵機構部の駆動音が目立つことに起因して静音性が低下してしまうのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態による船舶を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態による船舶推進装置を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態による操船システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態による船舶推進装置の転舵機構部の構成を示す模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態による船舶を操縦するためのジョイスティックを示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態による船舶の回頭および横移動に伴う推進力および転舵の制御を説明するための図である。
【
図7】本発明の一実施形態によるジョイスティックが中立位置から移動した場合および中立位置に復帰した場合の転舵速度を説明するための図である。
【
図8】本発明の一実施形態による操船システムにおけるジョイスティックによる転舵の制御フローである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0032】
図1~
図7を参照して、本発明の一実施形態による操船システム100および船舶110の構成について説明する。操船システム100は、船舶110を操船するためのシステムである。操船システム100は、船舶110に設けられている。
【0033】
図1に示すように、船舶110(操船システム100(
図3参照))は、船体111と、船舶推進装置112と、を備える。船舶推進装置112は、船体111の後方に取り付けられている。すなわち、船舶推進装置112は、船外機である。船舶110は、たとえば、運河や湖沼等において遊覧等に用いられる船舶である。また、船舶110は、比較的小型の船舶である。なお、
図1のFWDおよびBWDは、それぞれ、船舶110の前方および後方を示している。
【0034】
図2に示すように、船舶推進装置112(操船システム100(
図3参照))は、船舶110を推進するための推進力を発生する推進力発生部10と、推進力発生部10を転舵する転舵機構部20と、を備える。
【0035】
推進力発生部10は、プロペラ11を含む。また、
図3に示すように、推進力発生部10は、モータ12を含む。推進力発生部10は、モータ12の回転に伴ってプロペラ11(
図2参照)が回転することにより、推進力を発生させる。すなわち、推進力発生部10は、モータ12により駆動される電動の推進力発生部(電動推進器)である。
【0036】
図2(A)~(C)に示すように、転舵機構部20は、船舶推進装置112(船舶110)に対する推進力発生部10の向きを変更可能に構成されている。なお、
図2(A)、図(B)および図(C)では、それぞれ、
転舵角θが基準位置P10(推進力の方向が船舶110の前後方向と平行になる位置)に位置する状態、船舶110が左舷方向に進路を変更するように
転舵角θが基準位置P10から右舷方向に転舵している状態、および、船舶110が右舷方向に進路を変更するように
転舵角θが基準位置P10から左舷方向に転舵している状態を示している。
【0037】
具体的には、
図4に示すように、転舵機構部20は、モータ21と、転舵(推進力の方向の変更)を行う転舵軸22と、モータ21の回転力を転舵軸22に伝達するための複数のギア部材23と、を含む。転舵軸22は、推進力発生部10に固定されたシャフト部材である。モータ21は、ブラシ付き直流モータである。複数のギア部材23は、平歯車23aと、平歯車23bと、平歯車23cと、平歯車23dと、ウォームギア23eと、ウォームホイール23fと、を含む。
【0038】
平歯車23aは、モータ21の回転軸と共に同軸で回転するように、モータ21の回転軸に固定されている。平歯車23bは、平歯車23aと噛合されている。平歯車23cは、平歯車23bと共に同軸で回転するように、平歯車23bに固定されている。平歯車23dは、平歯車23cと噛合されている。ウォームギア23eは、平歯車23dと共に回転するように、平歯車23dに固定されている。ウォームホイール23fは、ウォームギア23eと噛合されている。ウォームホイール23fは、転舵軸22と共に転舵中心軸A1を中心に同軸で回転するように、転舵軸22に固定されている。そして、転舵機構部20は、モータ21の回転に伴って、転舵軸22が回転することにより、転舵(推進力発生部10の向きを変更)させる。なお、転舵機構部20では、モータ21の回転は、複数のギア部材23によって、(たとえば、略1/400の減速比で)減速して転舵軸22に伝達されるように構成されている。
【0039】
これにより、
図1に示すように、転舵機構部20は、船舶110の推進力(太矢印)の方向を変更可能(転舵可能)に構成されている。
図1では、
転舵角θが基準位置P10(推進力の方向が船舶110の前後方向と平行になる位置)に位置する状態、および、
転舵角θが基準位置P10か
ら変更されている状態を、それぞれ、鎖線および実線で示している。
【0040】
船舶推進装置112は、1つの船舶110に対して複数(2つ)設けられている。すなわち、操船システム100において、推進力発生部10および転舵機構部20は、複数組(2組)設けられている。
【0041】
図3に示すように、船体111(操船システム100)は、船舶110を操縦するための操作部30を備える。操作部30は、ユーザ(船舶110の使用者)の操作を受け付けるように構成されている。操作部30は、リモートコントローラ31と、ステアリングホイール32と、ジョイスティック33と、を含む。
【0042】
リモートコントローラ31には、推進力を調整するためのレバーが設けられており、レバーが操作されることにより、推進力発生部10(による推進力の大きさ)が制御される。ステアリングホイール32は、回動可能に構成されており、ステアリングホイール32が回動した量に応じて、転舵機構部20(による転舵)が制御される。
【0043】
図5に示すように、ジョイスティック33は、台座33aと、レバー部33bと、含む。レバー部33bは、台座33aに対して傾倒および回転が可能なように取り付けられている。レバー部33bが傾倒された場合、レバー部33bが傾倒した量および方向に応じて、推進力発生部10(による推進力の大きさ)および転舵機構部20(による転舵)が制御される。また、レバー部33bが回転された場合、レバー部33bが回転した量に応じて、推進力発生部10(による推進力の大きさ)および転舵機構部20(による転舵)が制御される。レバー部33bは、ユーザにより触れられていない状態では、中立位置P20(レバー部33bが直立した状態となっている位置)に自動的に復帰するように、ばね等の付勢部材により付勢されている。
【0044】
図3に示すように、船体111(操船システム100)は、第1制御部41と、第2制御部42と、制御切換部43と、を備える。第1制御部41、第2制御部42および制御切換部43は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む回路基板である。なお、第2制御部42は、特許請求の範囲の「制御部」の一例である。
【0045】
第1制御部41は、ステアリングホイール32およびリモートコントローラ31に対するユーザの操作に基づいて、推進力発生部10の推進力および転舵機構部20による転舵を制御するように構成されている。また、第2制御部42は、ジョイスティック33に対するユーザの操作に基づいて、推進力発生部10の推進力および転舵機構部20による転舵を制御するように構成されている。
【0046】
第1制御部41および第2制御部42は、推進力発生部10の推進力および転舵機構部20による転舵をPI制御によってフィードバック制御するように構成されている。具体的には、推進力発生部10は、推進力制御部13と、回転数センサ14と、を含む。推進力制御部13は、たとえば、モータドライバおよびインバータを含む。回転数センサ14は、モータ12の回転数を検出するように構成されている。そして、第1制御部41および第2制御部42は、回転数センサ14により検出されたモータ12の回転数が目標値となるように、推進力制御部13を介して、モータ12の回転数を制御する。
【0047】
また、転舵機構部20は、転舵制御部24と、舵角センサ25と、を含む。転舵制御部24は、たとえば、モータドライバを含む。舵角センサ25は、転舵軸22(
図4参照)の回転角度を検出するように構成されている。
図4に示すように、転舵機構部20には、センサギア26が設けられている。センサギア26は、平歯車26aと、平歯車26bと、を含む。平歯車26aは、ウォームホイール23fと共に同軸で回転するように、ウォームホイール23fに固定されている。平歯車26bは、平歯車26aと噛合されているとともに、舵角センサ軸A2を中心に回転するように配置されている。
図4には図示しないが、舵角センサ25は、平歯車26bの近傍に配置されており、平歯車26bの回転量を検出するように構成されている。舵角センサ25は、たとえば、光学式センサ、磁気センサ等である。そして、
図3に示すように、第1制御部41および第2制御部42は、舵角センサ25により検出された転舵軸22の回動角度が目標値となるように、転舵制御部24を介して、モータ21の回転数を制御する。
【0048】
制御切換部43は、第1制御部41によって、推進力発生部10の推進力および転舵機構部20による転舵を制御する状態と、第2制御部42によって、推進力発生部10の推進力および転舵機構部20による転舵を制御する状態と、を切り換えるように構成されている。また、
図5に示すように、ジョイスティック33の台座33aには、ジョイスティックモードスイッチ33cが設けられている。制御切換部43は、ジョイスティックモードスイッチ33cが押下されることにより、操船システム100がジョイスティック33に対する操作を受け付ける状態(ジョイスティックモード)と、ジョイスティック33に対する操作を受け付けない状態と、を切り換えるように構成されている。
【0049】
ここで、
図6に示すように、本実施形態では、第2制御部42(
図3参照)は、ジョイスティック33が中立位置P20から移動された場合に、転舵速度V(
図7参照)を第1転舵速度V1に制御するとともに、ジョイスティック33が中立位置P20に戻された場合に、転舵速度Vを第1転舵速度V1よりも小さい第2転舵速度V2に制御するように構成されている。詳細には、第2制御部42は、ジョイスティック33が中立位置P20に戻された場合に、推進力発生部10の推進力の発生を停止させた状態で、転舵速度Vを第2転舵速度V2に制御するように構成されている。また、第2制御部42は、船舶110の回頭または横移動を行うための操作後にジョイスティック33が中立位置P20に戻されたことに基づいて、転舵速度Vを第2転舵速度V2に制御するように構成されている。
【0050】
具体的には、船舶110の回頭または横移動を行う際には、第2制御部42(
図3参照)は、ユーザのジョイスティック33に対する操作によって、ジョイスティック33が中立位置P20にある状態から移動された場合、ジョイスティック33に対する操作に基づいて、推進力および転舵の両方を制御する。すなわち、第2制御部42は、推進力発生部10のプロペラ11を回転させた状態で、転舵機構部20により第1転舵速度V1で転舵させる。本実施形態では、第1転舵速度V1は、操船システム100において設定可能な最大の転舵速度Vに設定されている。
【0051】
その後、第2制御部42(
図3参照)は、ユーザがジョイスティック33を離すことによって、ジョイスティック33が中立位置P20に戻された場合、推進力の発生を停止させた状態で、転舵角θ(
図1参照)を基準位置P10(
図1参照)に戻すように第2転舵速度V2で転舵させる。すなわち、第2制御部42は、推進力発生部10のプロペラ11の回転を停止させた状態で、転舵機構部20を第2転舵速度V2で転舵させる。本実施形態では、
図7に示すように、第2転舵速度V2は、(操船システム100において設定可能な最大の転舵速度Vである)第1転舵速度V1の半分以下に設定されている。
図7では、第1転舵速度V1が第2転舵速度V2の半分の場合を示している。なお、第2転舵速度V2は、一定の転舵速度Vである。すなわち、本実施形態では、第2制御部42は、操作部30が中立位置P20に戻された場合に、転舵速度Vを一定の第2転舵速度V2に制御するように構成されている。
【0052】
また、本実施形態では、
図3に示すように、第2制御部42は、モータ21に供給する電流を調整することによって、転舵を第1転舵速度V1(
図6参照)で行う状態と第2転舵速度V2(
図6参照)で行う状態との間で変更するように転舵機構部20を制御するように構成されている。具体的には、第2制御部42は、転舵制御部24を制御して、転舵機構部20のモータ21に供給する電力を調整することによってモータ21の回転量を調整する。これにより、モータ21の回転量が調整されることによって、転舵機構部20の転舵軸22の単位時間当たりの回動角度(転舵速度V)が調整される。
【0053】
また、本実施形態では、第2制御部42は、ジョイスティック33が中立位置P20(
図5参照)に戻された場合に、転舵機構部20に対して出力する舵角指令値α(
図8参照)を調整することによって、転舵速度Vを第2転舵速度V2(
図6参照)に制御するように構成されている。詳細には、第2制御部42は、所定の周期毎に舵角指令値αを調整することによって、転舵速度Vを第2転舵速度V2に制御するように構成されている。具体的には、第2制御部42は、所定の期間(たとえば、PI制御の制御周期)が経過する毎に転舵角θ(
図1参照)の目標値としての舵角指令値αを調整して出力することによって、所定の期間毎に転舵する転舵角θを調整する。すなわち、間接的に転舵速度Vを調整する。また、第2制御部42は、所定の期間が経過するまでに転舵する角度が転舵速度Vを第1転舵速度V1に制御する場合と比較して小さくなるように舵角指令値αにフィルタを掛けた状態で、転舵機構部20に対して出力することによって、転舵速度Vを第2転舵速度V2に制御する。以下の説明では、フィルタを掛けた舵角指令値αを「舵角指令値フィルタ値」とする。
【0054】
また、本実施形態では、第2制御部42は、ジョイスティック33が中立位置P20に戻された場合に、舵角指令値αに対して追従して変化する転舵の実舵角βが舵角指令値αに追い付いたか否かを判断するとともに、舵角指令値αに転舵の実舵角βが追い付いたと判断された場合に、転舵速度Vを第2転舵速度V2に制御するように構成されている。具体的には、舵角指令値αに対して転舵の実舵角βが追従して変化することに起因して、ジョイスティック33が中立位置P20に戻された直後には、転舵の実舵角βが、舵角指令値αよりも大きい場合(転舵の実舵角βが舵角指令値αに追いついていない場合)がある。そして、ジョイスティック33が中立位置P20に戻されてから、所定の期間(たとえば、数百m秒)経過後に、転舵の実舵角βが、舵角指令値αよりも小さくなる(舵角指令値αが転舵の実舵角βに追いつく)。そして、第2制御部42は、転舵の実舵角βが、舵角指令値αよりも小さくなった(舵角指令値αが転舵の実舵角βに追いついた)タイミングで、転舵機構部20に対して、転舵速度Vを第2転舵速度V2に制御する(「舵角指令値フィルタ値」を送信する)。なお、ジョイスティック33が中立位置P20に戻された直後に、転舵の実舵角βが舵角指令値αに追いつくまで、転舵速度Vは第1転舵速度V1に制御されている。
【0055】
また、本実施形態では、第2制御部42は、転舵機構部20が第2転舵速度V2で転舵を行っている途中で、ジョイスティック33が中立位置P20から移動された場合に、転舵速度Vを第2転舵速度V2から第1転舵速度V1に変更するように転舵機構部20を制御するように構成されている。具体的には、第2制御部42は、ジョイスティック33が中立位置P20から移動されたことに基づいて転舵角θを基準位置P10に戻す途中において、ジョイスティック33に対して次の操作が行われた場合(ジョイスティック33が中立位置P20から移動された場合)に、転舵角θを基準位置P10に戻すための転舵を中断して、直ちに次の操作に基づく転舵を(第1転舵速度V1で)行うように転舵機構部20を制御する。
【0056】
なお、上述したように、推進力発生部10および転舵機構部20は、複数組(2組)設けられている。したがって、本実施形態では、第2制御部42は、操作部30(ジョイスティック33)が中立位置P20に戻された場合に、複数組(2組)の転舵機構部20の転舵速度Vを第2転舵速度V2に制御するように構成されている。
【0057】
(操船システムにおけるジョイスティックによる転舵の制御フロー)
次に、
図8を参照して、操船システム100におけるジョイスティック33による転舵の制御フローを説明する。なお、
図8の制御は、第2制御部42により行われる。
【0058】
まず、ステップS1において、第2制御部42は、操船システム100がジョイスティックモード(ジョイスティック33に対する操作を受け付ける状態)となっているか否かを判断する。そして、ステップS1において、第2制御部42は、操船システム100がジョイスティックモードとなっていると判断した場合、ステップS2に進む。また、ステップS1において、第2制御部42は、操船システム100がジョイスティックモードとなっていないと判断した場合、ステップS3に進む。
【0059】
ステップS2において、第2制御部42は、ジョイスティック33から舵角指令値α(フィルタの掛かっていない舵角指令値αまたはフィルタの掛かった舵角指令値α(「舵角指令値フィルタ値」))を受信する。そして、ステップS4に進む。
【0060】
また、ステップS3において、第2制御部42は、ステップS2と同様に、ジョイスティック33から舵角指令値α(フィルタの掛かっていない舵角指令値αまたはフィルタの掛かった舵角指令値α(「舵角指令値フィルタ値」))を受信する。そして、ステップS5に進む。
【0061】
ステップS4において、第2制御部42は、船体111に対して船舶推進装置112が取り付けられているかを判断する。そして、ステップS4において、第2制御部42は、船体111に対して船舶推進装置112が取り付けられていると判断した場合、ステップS6に進む。また、ステップS4において、第2制御部42は、船体111に対して船舶推進装置112が取り付けられていないと判断した場合、ステップS5に進む。
【0062】
ステップS5において、第2制御部42は、船舶推進装置112(転舵機構部20)に対して舵角指令値α(フィルタの掛かっていない舵角指令値αまたはフィルタの掛かった舵角指令値α(「舵角指令値フィルタ値」))を送信する。そして、ステップS1に戻る。
【0063】
ステップS6において、第2制御部42は、ジョイスティック33が中立位置P20にあるか否かを判断する。そして、ステップS6において、第2制御部42は、ジョイスティック33が中立位置P20にあると判断した場合、ステップS7に進む。また、ステップS6において、第2制御部42は、ジョイスティック33が中立位置P20にないと判断した場合、ステップS5に進む。
【0064】
ステップS7において、第2制御部42は、舵角指令値αが実舵角βよりも小さいか否か(舵角指令値αに対して追従して変化する転舵の実舵角βが舵角指令値αに追い付いたか否か)を判断する。そして、ステップS7において、第2制御部42は、舵角指令値αが実舵角βよりも小さい(転舵の実舵角βが舵角指令値αに追い付いた)と判断した場合、ステップS8に進む。また、ステップS7において、第2制御部42は、舵角指令値αが実舵角βよりも小さくない(転舵の実舵角βが舵角指令値αに追い付いていない)と判断した場合、ステップS5に進む。
【0065】
ステップS8において、第2制御部42は、前回送信値(前回送信した舵角指令値α)にフィルタが掛かっているか否か(転舵速度Vが第2転舵速度V2に制御されているか否か)を判断する。そして、ステップS8において、第2制御部42は、前回送信値(前回送信した舵角指令値α)にフィルタが掛かっている(転舵速度Vが第2転舵速度V2に制御されている)と判断した場合、ステップS9に進む。また、ステップS8において、第2制御部42は、前回送信値(前回送信した舵角指令値α)にフィルタが掛かっていない(転舵速度Vが第2転舵速度V2に制御されていない(転舵速度Vが第1転舵速度V1に制御されている))と判断した場合、ステップS10に進む。
【0066】
ステップS9において、第2制御部42は、船舶推進装置112(転舵機構部20)に対してフィルタの掛かった舵角指令値α(「舵角指令値フィルタ値」)を送信する。そして、ステップS1に戻る。
【0067】
ステップS10において、第2制御部42は、船舶推進装置112(転舵機構部20)に対して、舵角指令値αにフィルタを掛けて送信する(「舵角指令値フィルタ初期値」を送信する)。そして、ステップS1に戻る。
【0068】
なお、上記の制御フローを、以下のように構成してもよい。たとえば、ステップS1において、第2制御部42は、操船システム100がジョイスティックモードとなっていないと判断した場合、ステップS3に進まずに、ステップS1に戻るように構成してもよい。また、ステップS4において、第2制御部42は、船体111に対して船舶推進装置112が取り付けられていないと判断した場合、ステップS5に進まずに、ステップS1に戻るように構成してもよい。
【0069】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0070】
本実施形態では、上記のように、第2制御部42は、ジョイスティック33が中立位置P20から移動された場合に、転舵速度Vを第1転舵速度V1に制御するとともに、操作部30が中立位置P20に戻された場合に、転舵速度Vを第1転舵速度V1よりも小さい第2転舵速度V2に制御するように構成されている。これにより、ジョイスティック33が中立位置P20に戻された場合に、転舵角θを基準位置P10に戻す際の転舵速度Vを比較的小さくすることができる。したがって、転舵角θを基準位置P10に戻す際に、転舵機構部20の駆動速度を低下させて転舵機構部20の駆動音を比較的小さくすることができる。その結果、転舵機構部20の駆動音が目立つことに起因して静音性が低下してしまうのを抑制することができる。また、本実施形態では、推進力発生部10は、モータ12により駆動される電動の推進力発生部である。これにより、転舵機構部20の駆動音が特に目立ち易いので、転舵機構部20の駆動音が目立つことに起因して静音性が低下してしまうのを効果的に抑制することができる。また、転舵角θを基準位置P10に戻す際の転舵機構部20の駆動速度が低下する分だけ転舵機構部20の部品が消耗するのを抑制することができるので、転舵機構部20の部品の寿命を向上させることができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、第2制御部42は、ジョイスティック33が中立位置P20に戻された場合に、推進力発生部10の推進力の発生を停止させた状態で、転舵速度Vを第2転舵速度V2に制御するように構成されている。これにより、推進力の発生が停止した状態で転舵角θを基準位置P10に戻す際の転舵速度Vを比較的小さくすることができる。その結果、推進力が発生せずに水流が生じないため転舵機構部20の駆動音が目立ち易い状態において転舵速度Vを比較的小さくすることができるので、転舵機構部20が駆動されることに起因して転舵機構部20の駆動音が目立つのを効果的に抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、第2制御部42は、ジョイスティック33が中立位置P20に戻された場合に、転舵機構部20に対して出力する舵角指令値αを調整することによって、転舵速度Vを第2転舵速度V2に制御するように構成されている。これにより、転舵角θの目標値としての舵角指令値αを継続して調整することによって、間接的に転舵速度Vを調整することができるので、転舵角θを基準位置P10に戻す際の転舵速度Vを第2転舵速度V2に容易に制御することができる。
【0073】
また、本実施形態では、上記のように、第2制御部42は、ジョイスティック33が中立位置P20に戻された場合に、舵角指令値αに対して追従して変化する転舵の実舵角βが舵角指令値αに追い付いたか否かを判断するとともに、舵角指令値αに転舵の実舵角βが追い付いたと判断された場合に、転舵速度Vを第2転舵速度V2に制御するように構成されている。これにより、転舵角θを基準位置P10に戻す際に舵角指令値αに転舵の実舵角βが追い付いてから転舵速度Vが第2転舵速度V2に制御されるので、転舵の実舵角βが追従して変化する舵角指令値αを、転舵速度Vが第2転舵速度V2となるように適切に制御することができる。
【0074】
また、本実施形態では、上記のように、第2制御部42は、所定の周期毎に舵角指令値αを調整することによって、転舵速度Vを第2転舵速度V2に制御するように構成されている。これにより、所定の周期毎に転舵角θの目標値としての舵角指令値αを調整することができるので、転舵角θを基準位置P10に戻す際の転舵速度Vをより容易に第2転舵速度V2に制御することができる。
【0075】
また、本実施形態では、上記のように、第2制御部42は、船舶110の回頭または横移動を行うための操作後にジョイスティック33が中立位置P20に戻されたことに基づいて、転舵速度Vを第2転舵速度V2に制御するように構成されている。これにより、船舶110の回頭または横移動が行われた後に転舵角θを基準位置P10に戻す際の転舵速度Vを比較的小さくすることができる。その結果、船舶110の回頭または横移動が行われた後にジョイスティック33が中立位置P20に戻される場合のように推進力が発生せずに水流が生じないため転舵機構部20の駆動音が目立ち易い状態における転舵速度Vを比較的小さくすることができるので、転舵機構部20が駆動されることに起因して転舵機構部20の駆動音が目立つのを効果的に抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態では、上記のように、第2転舵速度V2は、第1転舵速度V1の半分以下に設定されている。これにより、転舵角θを基準位置P10に戻す際の転舵速度Vを転舵機構部20の駆動音が目立つのが抑制されるように十分に小さくすることができる。
【0077】
また、本実施形態では、上記のように、第1転舵速度V1は、設定可能な最大の転舵速度Vに設定されており、第2転舵速度V2は、第1転舵速度V1の半分以下に設定されている。これにより、ジョイスティック33に対して操作が行われることによって操作部30が中立位置P20から移動された場合の転舵速度Vを低下させることなく、転舵角θを基準位置P10に戻す際の転舵速度Vを転舵機構部20の駆動音が目立つのが抑制されるように十分に小さくすることができる。
【0078】
また、本実施形態では、上記のように、第2制御部42は、ジョイスティック33が中立位置P20に戻された場合に、転舵速度Vを一定の第2転舵速度V2に制御するように構成されている。これにより、第2転舵速度V2を変化させる場合と比較して、転舵角θを基準位置P10に戻す際の転舵速度Vの制御処理を簡素化することができる。
【0079】
また、本実施形態では、上記のように、第2制御部42は、転舵機構部20が第2転舵速度V2で転舵を行っている途中で、ジョイスティック33が中立位置P20から移動された場合に、転舵速度Vを第2転舵速度V2から第1転舵速度V1に変更するように転舵機構部20を制御するように構成されている。これにより、転舵速度Vを第1転舵速度V1から第2転舵速度V2に低下させた状態で転舵角θを基準位置P10に戻す途中で、ジョイスティック33に対する次の操作が行われた場合にも、ジョイスティック33に対する次の操作に基づいて、転舵速度Vを第2転舵速度V2から第1転舵速度V1に戻した状態で、直ちに転舵機構部20による転舵を制御することができる。
【0080】
また、本実施形態では、上記のように、転舵機構部20は、モータ21と、転舵を行う転舵軸22と、モータ21の回転力を転舵軸22に伝達するための複数のギア部材23と、を含む。そして、第2制御部42は、モータ21に供給する電流を調整することによって、転舵を第1転舵速度V1で行う状態と第2転舵速度V2で行う状態との間で変更するように転舵機構部20を制御するように構成されている。これにより、モータ21に供給する電流を調整することによって、複数のギア部材23および転舵軸22を介して、転舵速度Vを第1転舵速度V1および第2転舵速度V2に容易に制御することができる。また、転舵角θを基準位置P10に戻す際のジョイスティック33が中立位置P20に戻された場合の転舵機構部20の駆動速度が低下する分だけ、モータ21、ギア部材23および転舵軸22が消耗するのを抑制することができるので、モータ21、ギア部材23および転舵軸22の寿命を向上させることができる。
【0081】
また、本実施形態では、上記のように、転舵機構部20のモータ21は、ブラシ付き直流モータである。これにより、転舵角θを基準位置P10に戻す際の転舵機構部20の駆動速度が低下する分だけ、ブラシ付き直流モータのブラシが消耗するのを抑制することができるので、モータ21の寿命を効果的に向上させることができる。
【0082】
また、本実施形態では、上記のように、第2制御部42は、転舵機構部20による転舵をPI制御によってフィードバック制御するように構成されている。これにより、転舵機構部20により転舵させる制御の精度を向上させることができるので、転舵速度Vを第2転舵速度V2にさせる制御の精度を向上させることができる。
【0083】
また、本実施形態では、上記のように、推進力発生部10および転舵機構部20は、複数組(2組)設けられている。そして、第2制御部42は、ジョイスティック33が中立位置P20に戻された場合に、複数(2つ)の転舵機構部20の転舵速度Vを第2転舵速度V2に制御するように構成されている。これにより、複数組(2組)の推進力発生部10および転舵機構部20が設けられている場合でも、複数の転舵機構部20全ての転舵速度Vを第2転舵速度V2に制御することができるので、複数の転舵機構部20の間で転舵角θを基準位置P10に戻すタイミングがずれることなく、転舵角θを基準位置P10に戻す際の転舵速度Vを比較的小さくすることができる。
【0084】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0085】
たとえば、上記実施形態では、推進力発生部10および転舵機構部20が、複数組(2組)設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、推進力発生部および転舵機構部が、3組以上設けられていてもよいし、1組のみが設けられていてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、第2制御部42(制御部)を、転舵機構部20による転舵をPI制御によってフィードバック制御するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部が、転舵機構部による転舵をPD制御やPID制御によってフィードバック制御するように構成してもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、転舵機構部20のモータ21が、ブラシ付き直流モータである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、転舵機構部のモータが、ブラシ無し直流モータであってもよいし、交流モータやステッピングモータ等の直流モータ以外のモータであってもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、第2制御部42(制御部)を、モータ21に供給する電流を調整することによって、転舵機構部20を制御するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部が、油圧を調整することによって、転舵機構部を制御するように構成してもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、第2制御部42(制御部)を、転舵機構部20が第2転舵速度V2で転舵を行っている途中で、ジョイスティック33(操作部)が中立位置P20から移動された場合に、転舵速度Vを第2転舵速度V2から第1転舵速度V1に変更するように転舵機構部20を制御するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部を、転舵機構部が第2転舵速度で転舵を行っている途中で、操作部が中立位置から移動された場合に、転舵速度を第2転舵速度から第1転舵速度に変更しないように転舵機構部を制御するように構成してもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、第2制御部42(制御部)を、ジョイスティック33(操作部)が中立位置P20に戻された場合に、転舵速度Vを一定の第2転舵速度V2に制御するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部を、操作部が中立位置に戻された場合に、転舵速度を変化する第2転舵速度に制御するように構成してもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、第1転舵速度V1が、設定可能な最大の転舵速度Vに設定されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1転舵速度が、設定可能な最大の転舵速度より小さい値に設定されていてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、第2転舵速度V2が、第1転舵速度V1の半分以下に設定されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2転舵速度が、第1転舵速度の半分よりも大きい値に設定されていてもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、第2制御部42(制御部)を、船舶110の回頭または横移動を行うための操作後にジョイスティック33(操作部)が中立位置P20に戻されたことに基づいて、転舵速度Vを第2転舵速度V2に制御するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部を、船舶の回頭を行うための操作後に操作部が中立位置に戻されたことに基づいて、転舵速度を第2転舵速度に制御しないように構成してもよい。また、制御部を、船舶の横移動を行うための操作後に操作部が中立位置に戻されたことに基づいて、転舵速度を第2転舵速度に制御しないように構成してもよい。また、制御部を、船舶の回頭および横移動以外の操船動作(たとえば、旋回)を行うための操作後に操作部が中立位置に戻されたことに基づいて、転舵速度を第2転舵速度に制御するように構成してもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、第2制御部42(制御部)を、船舶110を操縦するためのジョイスティック33に対するユーザの操作に基づいて、操作部30が中立位置P20に戻された場合に、転舵速度Vを第2転舵速度V2に制御するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部を、船舶を操縦するためのステアリングホイールまたはリモートコントローラに対するユーザの操作に基づいて、操作部が中立位置に戻された場合に、転舵速度を第2転舵速度に制御するように構成してもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、第2制御部42(制御部)を、ジョイスティック33(操作部)が中立位置P20に戻された場合に、転舵機構部20に対して出力する舵角指令値αを調整することによって、転舵速度Vを第2転舵速度V2に制御するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部を、操作部が中立位置に戻された場合に、転舵機構部に対して出力する速度指令値を調整することによって、転舵速度を第2転舵速度に制御するように構成してもよい。この場合、速度指令値を調整することによって、直接的に転舵速度を調整することができるので、転舵角を基準位置に戻す際の転舵速度を第2転舵速度に容易に制御することができる。
【0096】
また、上記実施形態では、第2制御部42(制御部)を、ジョイスティック33(操作部)が中立位置P20に戻された場合に、推進力発生部10の推進力の発生を停止させた状態で、転舵速度Vを第2転舵速度V2に制御するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部を、操作部が中立位置に戻された場合に、推進力発生部の推進力の発生を(完全に)停止させない状態で、転舵速度を第2転舵速度に制御するように構成してもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、推進力発生部10を、モータ12により駆動される電動の推進力発生部として構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、推進力発生部を、モータおよびエンジンにより駆動されるハイブリッド型の推進力発生部として構成してもよい。
【符号の説明】
【0098】
10 推進力発生部
20 転舵機構部
21 モータ
22 転舵軸
23 (複数の)ギア部材
30 操作部
31 リモートコントローラ
32 ステアリングホイール
33 ジョイスティック
42 第2制御部(制御部)
100 操船システム
110 船舶
111 船体
112 船舶推進装置
P20 中立位置
V 転舵速度
V1 第1転舵速度
V2 第2転舵速度
α 舵角指令値
β (転舵の)実舵角