(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】干渉顔料、ならびにこれを含む化粧料、塗料、インク、および樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C09C 3/06 20060101AFI20220830BHJP
C09C 1/28 20060101ALI20220830BHJP
C09C 1/30 20060101ALI20220830BHJP
C09C 1/40 20060101ALI20220830BHJP
C09C 1/00 20060101ALI20220830BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20220830BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20220830BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20220830BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20220830BHJP
A61Q 3/02 20060101ALI20220830BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20220830BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20220830BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20220830BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20220830BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20220830BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C09C3/06
C09C1/28
C09C1/30
C09C1/40
C09C1/00
A61K8/19
A61K8/25
A61K8/29
A61Q1/00
A61Q3/02
C09D7/62
C09D201/00
C09D11/037
C09D11/322
C08K9/04
C08L101/00
(21)【出願番号】P 2020198838
(22)【出願日】2020-11-30
(62)【分割の表示】P 2017521949の分割
【原出願日】2016-05-31
【審査請求日】2020-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2015111637
(32)【優先日】2015-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】日置 雅博
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-516154(JP,A)
【文献】特表2008-546880(JP,A)
【文献】特表2010-538096(JP,A)
【文献】特表2002-535435(JP,A)
【文献】特表2002-516375(JP,A)
【文献】特表2004-510013(JP,A)
【文献】特開平04-193725(JP,A)
【文献】特開平10-088026(JP,A)
【文献】国際公開第2006/068255(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/130040(WO,A1)
【文献】特表2004-522853(JP,A)
【文献】国際公開第2009/051243(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 3/06
A61K 8/19
A61K 8/25
A61K 8/29
A61Q 1/00
A61Q 3/02
C08K 9/04
C08L 101/00
C09C 1/00
C09C 1/28
C09C 1/30
C09C 1/40
C09D 7/62
C09D 11/037
C09D 11/322
C09D 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鱗片状の無機基材と、
前記無機基材を被覆する透明金属膜と、
前記透明金属膜を被覆する金属酸化物膜とを含む、干渉顔料であって、
前記無機基材が、ガラス、マイカ、シリカおよびアルミナからなる群から選択される少なくとも1種の材料から実質的に形成され、
前記透明金属膜中の金属が、金属単体または金属合金であって、前記金属が、銀、金、白金およびパラジウムからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記金属酸化物が、
ルチル型酸化チタン
であり、
前記金属酸化物膜の平均厚みが、124~350nmであり、
CIE 1976(L
*a
*b
*)表色系にて測定されるブランクに対する色差ΔEが、4以上20以下であり、
波長680nmの光の反射率が、60%以上75.5%以下である、干渉顔料。
【請求項2】
鱗片状の無機基材と、
前記無機基材を被覆する第2の金属酸化物膜と、
前記第2の金属酸化物膜を被覆する透明金属膜と、
前記透明金属膜を被覆する第1の金属酸化物膜とを含む、干渉顔料であって、
前記無機基材が、ガラス、マイカ、シリカおよびアルミナからなる群から選択される少なくとも1種の材料から実質的に形成され、
前記透明金属膜中の金属が、金属単体または金属合金であって、前記金属が、銀、金、白金およびパラジウムからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記金属酸化物が、
ルチル型酸化チタンであり、
前記
第1の金属酸化物膜
及び前記第2の金属酸化物膜それぞれの平均厚みが、80~350nmであり、
CIE 1976(L
*a
*b
*)表色系にて測定されるブランクに対する色差ΔEが、4以上20以下であり、
波長680nmの光の反射率が、60%以上75.5%以下である、干渉顔料。
【請求項3】
鱗片状の無機基材と、
前記無機基材を被覆する第2の金属酸化物膜と、
前記第2の金属酸化物膜を被覆する透明金属膜と、
前記透明金属膜を被覆する第1の金属酸化物膜とを含む、干渉顔料であって、
前記無機基材が、ガラス、マイカ、シリカおよびアルミナからなる群から選択される少なくとも1種の材料から実質的に形成され、
前記透明金属膜中の金属が、金属単体または金属合金であって、前記金属が、銀、金、白金およびパラジウムからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記金属酸化物が、酸化チタン、三酸化二鉄および水酸化鉄からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記第1の金属酸化物膜及び前記第2の金属酸化物膜それぞれの平均厚みが、80~350nmであり、
前記第1の金属酸化物膜が、透明金属膜と金属酸化物膜とを少なくとも1層ずつ含みかつこれらが交互に積層された積層膜によって被覆されて
おり、
CIE 1976(L
*
a
*
b
*
)表色系にて測定されるブランクに対する色差ΔEが、4以上20以下であり、
波長680nmの光の反射率が、60%以上75.5%以下である、干渉顔料。
【請求項4】
前記無機基材の材料が、ガラスである、請求項1
~3のいずれか1項に記載の干渉顔料。
【請求項5】
前記透明金属膜は、金単体又は金の合金を含む金属膜である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の干渉顔料。
【請求項6】
前記透明金属膜は、銀単体又は銀の合金を含む金属膜と、金単体又は金の合金を含む金属膜とを含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の干渉顔料。
【請求項7】
前記透明金属膜は、無電解めっき法によって前記金属の被膜を形成した後、焼成することにより形成された金属膜である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の干渉顔料。
【請求項8】
前記透明金属膜と、前記透明金属膜を被覆する金属酸化物膜とは互いに接している、請求項1に記載の干渉顔料。
【請求項9】
前記
積層膜中の金属酸化物が、
ルチル型酸化チタンである、請求項
3に記載の干渉顔料。
【請求項10】
前記第1の金属酸化物膜及び第2の金属酸化物膜の少なくとも一方の金属酸化物が、
ルチル型酸化チタンである、請求項
3又は9に記載の干渉顔料。
【請求項11】
前記透明金属膜の平均厚みが、2nm以下である、請求項1~
10のいずれか1項に記載の干渉顔料。
【請求項12】
前記透明金属膜を被覆する金属酸化物膜を第1の金属酸化物膜と称することとすると、 前記第1の金属酸化物膜が、透明金属膜と金属酸化物膜とを少なくとも1層ずつ含みかつこれらが交互に積層された積層膜によって被覆されている、請求項1に記載の干渉顔料。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の干渉顔料を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の干渉顔料を含有することを特徴とする塗料。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか1項に記載の干渉顔料を含有することを特徴とするインク。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか1項に記載の干渉顔料を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉顔料、ならびにこれを含む化粧料、塗料、インク、および樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メタリック顔料として、フレーク状のアルミニウム粉末、二酸化チタンまたは酸化鉄等の金属酸化物で被覆された雲母片粒子若しくはグラファイト片粒子、またはα―酸化鉄結晶粒子を主成分とする酸化鉄粒子等が知られている。これらのメタリック顔料は、その表面が光を反射してキラキラと輝くという特性を有しており、塗料、インク、成形用樹脂組成物、または化粧料などの材料として使用される。
【0003】
例えば、特開平1-108267号公報(特許文献1)では、金属を用いた干渉顔料の一例として、セラミック製鱗片状の基材と、該基材の全表面に形成された二酸化チタン層と、該二酸化チタン層表面に形成された金属質の光輝部とを含む干渉顔料が提案されている。この干渉顔料では、金属質の光輝部が二酸化チタン層表面に島状に点在しており、二酸化チタン層の全表面積に対する光輝部の割合が0.05~95%である。また、その他の例として、特開2003-89758号公報(特許文献2)では、金属顔料からなる基質を、金属酸化物および半透明性金属薄膜の順で被覆した、高彩度で干渉色を有する高彩度薄片状顔料が提案されている。さらにその他の例として、特開平6-32995号公報(特許文献3)では、平板状の基材(酸化鉄、金属粉末(アルミニウムまたはニッケル)、金属箔、または金属で被覆したフレーク状ガラス若しくは雲母)を、二酸化チタンで被覆した有彩色の光輝性パウダーが提案されている。
【0004】
また、特公平7-759号公報(特許文献4)では、基材(酸化鉄、金属粉末(アルミニウム、ニッケル)、金属箔、または金属を被覆したフレーク状ガラス若しくは雲母)を、酸化ケイ素と二酸化チタンとで交互に被覆した有彩色の光輝性パウダーが提案されている。
【0005】
特開平7-258579号公報(特許文献5)では、平板状(白雲母、タルク、ガラス、金雲母、または黒雲母)を、Al2O3またはSiO2、金属および/または非選択的吸収性金属酸化物、ならびに無色および/または選択的吸収性の金属酸化物の順で被覆した強力な金属効果を持つ顔料が提案されている。
【0006】
これらの文献に開示された顔料は、当該顔料を含む化粧料、塗料、インク、および樹脂組成物に有彩色や強い金属効果を付与することができる。しかしながら、これらの顔料の基材は、不透明である基材、または透明基材が金属光沢を有する金属膜で被覆された基材である。このため、得られた顔料は、透明性が低く、また十分に鮮明な干渉色を発現することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平1-108267号公報
【文献】特開2003-89758号公報
【文献】特開平6-32995号公報
【文献】特公平7-759号公報
【文献】特開平7-258579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、透明な基材を酸化チタンで被覆することによって、酸化チタン層表面で反射した光と基材表面で反射した光との干渉が起こり、それによって鮮明な干渉色を発現することができることが知られている。また、この場合、基材が透明である為、下地の色を生かした意匠を出すことも可能である。しかしながら、これらの顔料を使用した場合、下地の色が濃色(黒色等)である場合は、鮮やかな干渉色を発現できるが、下地の色が淡色(白色等)である場合は、干渉色の発色が非常に弱いという問題がある。なぜなら、下地の色が淡色の場合、酸化チタン層表面および基材表面で反射した光以外の光(顔料を透過した光)が下地で反射し、それが干渉を起こしている光に混じることで干渉色が見えにくくなるからである。特に、基材がガラスの場合、ガラスが透明である為、基材の透過率が高く、干渉色を発現しにくくなる。
【0009】
本発明は、下地の色が淡色であっても鮮明な干渉色を発色することができる干渉顔料、ならびにこれを含む化粧料、塗料、インク、および樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の干渉顔料は、鱗片状の無機基材と、前記無機基材を被覆する透明金属膜と、前記金属膜を被覆する金属酸化物膜とを含む。
【0011】
本発明の化粧料は、本発明の干渉顔料を含む。
【0012】
本発明の塗料は、本発明の干渉顔料を含む。
【0013】
本発明のインクは、本発明の干渉顔料を含む。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、本発明の干渉顔料を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、下地の色が淡色であっても鮮明な干渉色を発色することができる干渉顔料、ならびにこれを含む化粧料、塗料、インク、および樹脂組成物ができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の干渉顔料の一例を示す模式断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の干渉顔料のその他の例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、一態様において、鱗片状の無機基材(以下、「無機基材」ともいう)が透明金属膜で被覆され、さらに該透明金属膜が金属酸化物膜とで被覆された干渉顔料に関する。本発明は、無機基材を、透明金属膜および金属酸化物膜の順で被覆することによって、下地の色が淡色でも鮮明な干渉色を発色することができる干渉顔料の提供が可能になるという知見に基づく。
【0018】
本発明の干渉顔料により、下地の色が淡色でも鮮明な干渉色を発色することができるメカニズムについては明らかではないが、以下のように推定される。無機基材が、上記の金属膜および金属酸化物膜という相互に異なる材質の被膜で覆われているため、干渉顔料に可視光が入射されると、金属膜、金属酸化物膜および無機基材における光の透過と、干渉顔料の内部(例えば、互いに接する膜と膜との界面など)における光の反射とによって光の干渉が生じる。また、従来の干渉顔料では、下地(特に、下地の色が白色の場合)で反射した光が、この光の干渉によって発現した干渉色を打ち消し、干渉色がほとんど確認できなかった。これに対し、本発明の干渉顔料では、金属酸化物膜と無機基材との間(金属酸化物膜からみて無機基材側)に配置された金属膜が、適度に光を吸収する光吸収層として作用することで、下地で反射した光の一部が金属膜で吸収され、それにより干渉色を打ち消す力が低減される。その結果、干渉顔料が呈する干渉色が鮮明になり、下地の色が淡色であってもより鮮明な干渉色を発色できると推定される。但し、本発明はこれらのメカニズムに限定されない。
【0019】
本発明によれば、透明金属膜および金属酸化物膜といった相互に異なる材質を有する被膜を備えるため、例えば、透明な鱗片状基材と該鱗片状基材を被覆する金属酸化物膜とで構成された従来の干渉顔料では得られにくい色(例えば、薄桃色及び薄紫色)を発色することができる干渉顔料が得られる。また、本発明の干渉顔料を用いれば、下地の色が淡色である場合や、干渉顔料をアイシャドウおよびパウダー型ファンデーション等の粉末化粧料のように粉末の状態で使用される用途に処方した場合であっても、鮮明な干渉色を呈することができる。
【0020】
本発明は、特に限定されない好ましい態様として、鱗片状の無機基材と、無機基材を被覆する金属酸化物膜(以下、「第2の金属酸化物膜」ともいう)と、第2の金属酸化物膜を被覆する透明金属膜と、透明金属膜を被覆する金属酸化物膜(以下、「第1の金属酸化物膜」ともいう)とを含む干渉顔料に関する。本態様の干渉顔料によれば、干渉顔料が呈する干渉をより強くし、より鮮明な干渉色を発現することができる。
【0021】
本明細書において「干渉顔料」とは、干渉色を呈する顔料をいい、好ましくは干渉顔料に可視光線を入射した場合、入射光の一部が干渉顔料の内部で反射するとともに光の干渉を生じ、かつ残りの入射光を透過する顔料をいう。また、本明細書において「干渉顔料」とは、例えば、その内部に、入射光の一部を反射させかつその他の入射光を透過可能な反射面を少なくとも一つ備える顔料ともいうことができる。反射面としては、例えば、異なる屈折率を有する材質で形成された層の界面が挙げられる。界面としては、例えば、無機基材と無機基材に隣接する被膜との界面、互いに隣接する被膜同士の界面(例えば、金属酸化物膜と金属酸化物膜に隣接する透明金属膜との界面等)等が挙げられる。
【0022】
本明細書において「干渉色」とは、干渉顔料に可視光線を入射した場合に、例えば、隣接する透明金属膜と金属酸化物膜との界面、または無機基材と無機基材に隣接する被膜との界面等で反射した光が互いに強めあうことにより発現する色をいう。本発明の干渉顔料が呈する干渉色は、干渉顔料が配合される化粧料、塗料または樹脂組成物等のベースカラー、および/または、干渉顔料から反射される反射光を観察する角度によって変化しうる。干渉色としては、例えば、干渉顔料の表面および/または界面において反射される反射光の色、または干渉顔料を透過する透過光の色が挙げられ、これらの色はベースカラーによって変化しうる。本明細書において「鮮明な干渉色」とは、干渉顔料の内部等で反射した光の干渉が強いこと、または干渉によって生じる干渉色が強いことをいう。本明細書において「淡い干渉色」とは、干渉によって生じる色の明度が高いこと、好ましくは彩度が低くかつ明度が高いことをいう。淡い干渉色としては、例えば、パステルカラーが挙げられ、パステルカラーとしては、純色(例えば、赤色、青色および紫色等)に白色を混ぜた色(例えば、淡黄色、水色、桜色および藤色等)等が挙げられる。
【0023】
本明細書において「下地の色」とは、本発明の干渉顔料が配合された化粧料、塗料、インクまたは樹脂組成物が塗布等される対象の色、または本発明の干渉顔料を配合する化粧料、塗料、インクまたは樹脂組成物を構成する母材の色をいう。
【0024】
本明細書において「透明金属膜」とは、例えば、透明金属膜の内側(無機基材側)に位置しかつ透明金属膜に接した、無機基材や金属酸化物膜等の透明金属膜以外の被膜を視認可能とする、金属単体または合金を含む被膜である。透明金属膜は不連続であってもよいし、連続であってもよい。透明金属膜が不連続であることとしては、例えば、透明金属膜で被覆された対象の表面に部分的に透明金属膜が形成されていることが挙げられる。例えば、透明金属膜は、無機基材と金属酸化物膜との間に部分的に形成されていてもよい。透明金属膜が連続であることとしては、例えば、透明金属膜で被覆された対象の表面全体に透明金属膜が形成されていることが挙げられる。
透明金属膜の平均厚みは、金属光沢がほとんど確認されず、また下地で反射した反射光を適度に吸収できるという理由から、例えば、5nm以下であり、5nm未満が好ましく、より好ましくは3nm以下であり、さらに好ましくは1nm以下であり、さらにより好ましくは0.1nm以下であり、さらにより好ましくは0.09nm以下であり、さらにより好ましくは0.08nm以下であり、さらにより好ましくは0.07nm以下である。透明金属膜の平均厚みの下限は、下地で反射した反射光を適度に吸収できるという点から、例えば、0.01nm以上であり、好ましくは0.03nm以上である。透明金属膜の平均厚みは、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0025】
透明金属膜の厚みは、例えば、透明金属膜に含まれる金属の量およびその比重と、透明金属膜で被覆された対象の表面積とで算出することができる。したがって、透明金属膜に含まれる金属の量およびその比重と、透明金属膜で被覆された対象の表面積とで算出された透明金属膜の厚みが、例えば、5nm以下であり、5nm未満が好ましく、より好ましくは3nm以下であり、さらに好ましくは1nm以下であり、さらにより好ましくは0.1nm以下であり、さらにより好ましくは0.09nm以下であり、さらにより好ましくは0.08nm以下であり、さらにより好ましくは0.07nm以下である。透明金属膜の平均厚みの下限は、下地で反射した反射光を適度に吸収できるという点から、例えば、0.01nm以上であり、好ましくは0.03nm以上である。透明金属膜で被覆された対象の表面積とは、透明金属膜で被覆された対象における透明金属膜が形成された面の表面積をいい、例えば、透明金属膜が無機基材表面に形成されている場合、無機基材の表面積をいう。透明金属膜が無機基材を覆う金属酸化物膜表面に形成されている場合、金属酸化物膜で被覆された無機基材全体の表面積をいう。透明金属膜に含まれる金属の量は、例えば、該金属の含有率を用いて求めることができる。透明金属膜に含まれる金属の量および含有率ならびに表面積は、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0026】
本発明の干渉顔料において、透明金属膜に含まれる金属の含有率は、金属膜の吸収により干渉色以外の発色を抑制できるという理由から、例えば、0.1質量%以下であり、0.08質量%以下であると好ましい。また、透明金属膜に含まれる金属の含有率の下限は、少なくとも無機基材等の被覆対象の表面の少なくとも一部が被覆されていればよく、特に限定されるものではないが、例えば、0.01質量%以上であり、0.03質量%以上であると好ましい。本明細書において「透明金属膜に含まれる金属の含有率」は、透明金属膜と透明金属膜で被覆された対象(例えば、無機基材等)の合計重量に対する、透明金属膜に含まれる金属の質量の割合(質量%)をいう。
【0027】
本明細書において「金属酸化物膜」とは、金属酸化物を含む被膜である。金属酸化物は、例えば、酸化チタン、三酸化二鉄、水酸化鉄およびこれらの混合物が挙げられる。
【0028】
本発明の干渉顔料の平均粒径は、干渉顔料を塗料や樹脂組成物に配合する過程における干渉顔料の破砕が十分抑制される点から、例えば、1μm~500μmである。干渉顔料の平均粒径は、破砕が抑制されるという理由から、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、さらに好ましくは50μm以上であり、さらにより好ましくは75μm以上であり、さらにより好ましくは80μm以上である。干渉顔料の平均粒径は、同様の理由から、好ましくは250μm以下であり、より好ましくは200μm以下であり、さらに好ましくは100μm以下であり、さらにより好ましくは90μm以下である。干渉顔料の平均粒径は、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0029】
本発明の干渉顔料の平均厚みは、干渉顔料を塗料や樹脂組成物に配合する過程における干渉顔料の破砕が十分抑制される点から、例えば、0.1μm~10μmである。干渉顔料の平均厚みは、破砕が抑制され、塗膜の欠点を防ぐという理由から、好ましくは0.2μm以上であり、より好ましくは0.3μm以上であり、さらに好ましくは0.5μm以上であり、さらにより好ましくは0.8μm以上であり、さらにより好ましくは1μm以上である。干渉顔料の平均厚みは、同様の理由から、好ましくは7μm以下であり、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは3μm以下であり、さらにより好ましくは2.5μm以下であり、さらにより好ましくは2μm以下である。干渉顔料の平均厚みは、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0030】
本発明の干渉顔料において、CIE 1976(L*a*b*)表色系にて測定されるブランクに対する色差ΔEが、2を超えると好ましく、さらに淡い干渉色を呈する干渉顔料が得られるという理由から、4以上であるとより好ましく、さらに好ましくは5以上であり、さらにより好ましくは10以上であり、さらにより好ましくは11以上であり、さらにより好ましくは12以上であり、さらにより好ましくは13以上である。ΔEの上限は、特に制限されないが、例えば、20以下であり、好ましくは18以下である。ΔEは実施例に記載の方法により算出することができる。
【0031】
本発明の干渉顔料における波長480nmの光の反射率は、透明金属膜が適度に光を吸収するという理由から、例えば、50%以上90%以下であり、同様の理由から、好ましくは60%以上75%以下である。
【0032】
本発明の干渉顔料における波長580nmの光の反射率は、透明金属膜が適度に光を吸収するという理由から、例えば、40%以上80%以下であり、同様の理由から、好ましくは50%以上70%以下である。
【0033】
本発明の干渉顔料における波長680nmの光の反射率は、透明金属膜が適度に光を吸収するという理由から、例えば、50%以上90%以下であり、同様の理由から、好ましくは60%以上80%以下であり、より好ましくは60%以上75.5%以下である。
【0034】
本発明の干渉顔料における波長480nmの光の透過率は、塗布した時に下地の色を隠ぺいしない(下地の色を生かせる)という理由から、例えば、40%以上90%以下であり、同様の理由から、好ましくは50%以上90%以下である。
【0035】
本発明の干渉顔料における波長580nmの光の透過率は、塗布した時に下地の色を隠ぺいしない(下地の色を生かせる)という理由から、例えば、40%以上90%以下であり、好ましくは50%以上90%以下である。
【0036】
本発明の干渉顔料における波長680nmの光の透過率は、塗布した時に下地の色を隠ぺいしない(下地の色を生かせる)という理由から、例えば、40%以上90%以下であり、好ましくは50%以上90%以下である。
【0037】
前記干渉顔料における光の反射率及び透過率は、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0038】
本発明の干渉顔料は、より鮮明な干渉色を発現できるという理由から、透明金属膜および金属酸化物膜の少なくとも一方を複数層含んでいてもよい。本発明の干渉顔料は、金属酸化物膜を1層、透明金属膜を複数層含む形態であってよいし、透明金属膜を1層、金属酸化物膜を複数層含む形態であってもよいし、金属酸化物膜および透明金属膜の双方を複数層含む形態であってもよい。本明細書において「複数層」とは、2層、3層、4層、5層または6層以上を含む。透明金属膜および金属酸化物膜の少なくとも一方を複数層含む場合、透明金属膜と金属酸化物膜とは、交互に形成されていてもよいし、複数の透明金属膜同士が接するように形成されていてもよいし、複数の金属酸化物膜同士が接するように形成されていてもよい。中でも、干渉を強めることができるという理由から、透明金属膜と金属酸化物膜とが交互に積層された積層膜を含み、積層膜が、第1の金属酸化物膜(透明金属膜を被覆する金属酸化物膜)を被覆することが好ましい。
【0039】
本発明の干渉顔料は、下地の白色と混じりあった淡い発色の干渉色を発現できるという理由から、透明金属膜が金属酸化物膜で被覆されていることが好ましい。
【0040】
(実施形態1)
実施形態1では、透明金属膜および金属酸化物膜をそれぞれ1層ずつ含む形態を例にとり、本発明の干渉顔料の一例について説明する。
【0041】
実施形態1の干渉顔料の一例の断面模式図を
図1に示す。
図1に示すように、干渉顔料1は、鱗片状の透明無機基材10と、無機基材10の表面を覆う透明金属膜20と、無機基材10を透明金属膜20の外側から覆う金属酸化物膜30とを含む。すなわち、実施形態1の干渉顔料は、金属酸化物膜30からみて無機基材10側に配置された透明金属膜20を含み、透明金属膜20は、無機基材10と金属酸化物膜30との間にこれらに隣接して配置されている。
【0042】
図1に示すように、無機基材10表面全体は透明金属膜20によって覆われている。金属酸化物膜30は、透明金属膜20の表面全体を覆うように形成されている。
【0043】
[無機基材]
無機基材は、下地の色が淡色の場合、下地の色と交ることでより淡い干渉色を発現できる干渉顔料を提供できるという理由から、透明な無機基材であると好ましい。透明な無機基材としては、例えば、ガラス、マイカ、シリカおよびアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む基材が挙げられ、実質的に、ガラス、マイカ、シリカおよびアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種の材料からなる基材が好ましい。本明細書において「実質的にガラス、マイカ、シリカおよびアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種の材料(以下、「基材材料」ともいう)からなる基材」とは、無機基材の原料に含まれる不可避的不純物および/または無機基材の製造過程で混入する不可避的不純物を除いては基材材料から形成されていることをいう。より具体的には、無機基材における基材材料の含有量が、例えば、99原子%以上であり、好ましくは99.5原子%以上であり、より好ましくは略100原子%である。
【0044】
これらのうち、無機基材の材料は、透明性が高いという理由から、ガラスであると好ましい。ガラス組成は、鱗片状のガラスを成形可能な公知のガラス組成であれば特に制限されない。ガラス組成は、鱗片状のガラス基材を成形しやすいという理由から、例えば、ガラス繊維に用いられるCまたはEのガラス組成であると好ましい。CガラスおよびEガラスはそれぞれ、JIS R3410で規定されている。Cガラスは、一般的に5~20%程度のアルカリ酸化物(Na2O+K2O)を含むガラスのことをいい、含アルカリガラスともよばれる。Eガラスは、アルカリ(Na2O、K2O)含有率が、2.0%以下の組成のガラスをいい、無アルカリガラスともよばれる。
【0045】
無機基材は、表面が平滑な無機基材が得られやすいという理由から、例えば、ブロー法で製造された鱗片状ガラス基材であると好ましい。ブロー法では、まず、原料カレットを溶融し、溶融したガラスを円形スリットから連続的に排出するとともに、円形スリットの内側に設けられたブローノズルから空気等の気体を吹き込む。これにより、溶けたガラスは、膨らませられながら引っ張られてバルーン状となり、このバルーン状のガラスを粉砕することによって鱗片状ガラス基材が得られる。
【0046】
このような鱗片状ガラス基材の市販品としては、例えば、日本板硝子(株)製の、マイクログラス(登録商標)ガラスフレーク(登録商標)シリーズ(RCF-160、REF-160、RCF-015、REF-015)等が挙げられる。
【0047】
無機基材の平均粒径および平均厚みは、干渉顔料の用途によって適宜決定できる。無機基材の平均粒径は、一般的には、1μm~500μmであると好ましい。上記範囲の平均粒径であれば、干渉顔料を塗料や樹脂組成物に配合する過程における干渉顔料の破砕が十分に抑制される。また、上記範囲の平均粒径であれば、干渉顔料を塗料や樹脂に配合した場合、得られる塗膜や樹脂組成物等における干渉顔料の主面が略一定方向になることから、各干渉顔料で反射した光の散乱が抑制される。特に、無機基材がガラスを含む場合、干渉顔料の破砕が抑制されることにより、ガラスに含まれるアルカリ成分が塗料や樹脂組成物中に拡散することを抑制できる。無機基材の平均粒径は、破砕が抑制されるという理由から、5μm~250μmがより好ましく、さらに好ましくは10μm~150μmである。
【0048】
本明細書において「無機基材の平均粒径」とは、粒度分布の体積累積50%に相当する粒径(D50)である。粒度分布は、測定対象となる粒子群の中に、どのような大きさ(粒径)の粒子がどのような割合で含まれているかを示す指標である。平均粒径は、例えば、レーザー回折・散乱法に基づいて測定でき、実施例に記載の方法により求めることができる。レーザー回折・散乱法では、粒子に光を照射した際の散乱光を利用して粒度分布を求める。
【0049】
無機基材の平均厚みは、一般的には、0.1μm~10μmであると好ましい。上記範囲の平均厚みであれば、干渉顔料を塗料や樹脂組成物に配合する過程における干渉顔料の破砕が十分抑制される。特に、無機基材がガラスを含む場合、干渉顔料の破砕が十分抑制されることにより、ガラスに含まれるアルカリ成分が塗料や樹脂組成物中に拡散することを抑制できる。また、上記範囲の平均厚みであれば、干渉顔料を塗料や樹脂に配合した場合、得られる塗膜や樹脂組成物等において干渉顔料の主面が略一定方向になることから、各干渉顔料で反射した光の散乱が抑制される。無機基材の平均厚みは、破砕が抑制され、塗膜の欠点を防ぐという理由から、0.2μm~7μmであるとより好ましく、さらに好ましくは0.3μm~5μmである。
【0050】
無機基材の平均厚みは、干渉顕微鏡を用い、無機基材に照射する直接光(位相物体の影響を受けていない光)と無機基材を透過した光との光路差を測定して無機基材の厚みを算出し、100粒の無機基材から得られた厚みを平均することによって得られる。また、干渉顔料中の無機基材の平均厚みは、電子顕微鏡(SEM)を用いて測定することができる。具体的には、干渉顔料を樹脂に閉じ込め、液体窒素で凍結させた後、破断させ、その破断面から無機基材の厚みを測定することにより得ることができる。
【0051】
無機基材の屈折率は、無機基材の材料に応じて決定される。無機基材がガラスである場合、その屈折率は、例えば、1.5~1.6である。無機基材の屈折率は、アッベ屈折計を用いベッケライン法によって測定できる。具体的には、デッキガラスの上に載せた無機基材に屈折液を滴下浸漬させた後、カバーガラスをかぶせ、顕微鏡にてベッケライン(試料の周囲に沿った明るい線)の追跡を行う。ベッケラインは、顕微鏡の鏡筒を上げると高い屈折率側の媒質へ移動し、下げれば低い屈折率側の媒質へ移動する。屈折液の屈折率を順次変え、ベッケラインが移動しなくなるまでベッケラインの追跡を行うことにより、試料(無機基材)の屈折率の絞込みを行う。試料(無機基材)に近い屈折率(上と下)を有する屈折液をみつけ、その屈折液の屈折率をアッベ屈折計にて検定し、0.001まで読み取り、それらの平均を算出することにより屈折率を得ることできる。
【0052】
[透明金属膜]
透明金属膜20は、金属単体または金属合金を含み、実質的に金属単体または金属合金から形成されていると好ましい。透明金属膜に含まれる金属としては、例えば、銀、金、白金、およびパラジウムが挙げられ、淡い干渉色を呈する干渉顔料が得られやすいという理由から、又は金または銀を含むと好ましく、実質的に金単体、銀単体、金合金または銀合金から形成されているとより好ましい。本明細書において「実質的に金属単体または金属合金から形成されている」とは、透明金属膜の原料に含まれる不可避的不純物および/または透明金属膜の製造過程で混入する不可避的不純物を除いては金属単体または金属合金のみから形成されていることをいう。より具体的には、透明金属膜における金属単体または金属合金の含有量が、例えば、99原子%以上であり、好ましくは99.5原子%以上、より好ましくは略100原子%である。
【0053】
金属合金としては、例えば、銀-金合金、銀-白金合金、銀-パラジウム合金、金-白金合金、金-パラジウム合金、白金-パラジウム合金等の2元合金、銀-金-パラジウム合金、銀-白金-パラジウム合金、銀-金-白金合金、金-白金-パラジウム合金等の3元合金、銀-金-白金-パラジウム合金等の4元合金が挙げられる。
【0054】
透明金属膜に含まれうる金属は、光吸収が大きい金属が好ましい。
金属の屈折率は、通常、屈折率(n)と消衰係数(k)とで定義される複素屈折率(N)として表される(なお、下記式においてiは虚数単位を示し、i2=-1である)。銀、金、白金、パラジウムの屈折率(n)および消衰係数(k)を下記表1に示す。
複素屈折率(N)=n-ik
【0055】
【0056】
[金属酸化物膜]
金属酸化物膜30は、金属酸化物を含み、好ましくは実質的には金属酸化物からなる。金属酸化物は、例えば、酸化チタン、三酸化二鉄、および水酸化鉄からなる群から選ばれる少なくとも1種である。屈折率が高く、化学的な安定性が高いという理由から、酸化チタンが好ましい。本明細書において「実質的に金属酸化物からなる」とは、金属酸化物膜の原料に含まれる不可避的不純物および/または金属酸化物膜の製造過程で混入する不可避的不純物を除いては金属酸化物のみから形成されていることをいう。より具体的には、金属酸化物膜における金属酸化物の含有量が、例えば、99原子%以上であり、好ましくは99.5原子%以上であり、より好ましくは略100原子%である。
【0057】
金属酸化物膜30および透明金属膜20は、膜に含まれうる金属の種類が互いに異なる。
【0058】
金属酸化物膜の平均厚みは、光学的な干渉が強くなるという理由から、20nm~350nmであると好ましく、より好ましくは40nm~350nmであり、さらに好ましくは50nm~300nmであり、さらにより好ましくは50nm~250nmであり、さらにより好ましくは80nm~200nmである。金属酸化物膜の平均厚みは、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0059】
金属酸化物膜の屈折率は、金属酸化物膜に含まれる金属酸化物の種類や、所望の干渉色に応じて適宜決定でき、例えば、1.8~3.3であると好ましく、より好ましくは2.3~3.3である。金属酸化物膜に含まれうる上記の金属酸化物の屈折率は、例えば、酸化チタン(ルチル結晶相)(2.71)、三酸化二鉄(3.01)、水酸化鉄(2.33)である(括弧内の数字は各金属酸化物の屈折率を示す)。
【0060】
金属酸化物膜について、二酸化チタンおよび三酸化二鉄を例にとり以下に説明する。
【0061】
<二酸化チタン膜>
二酸化チタンは、アナターゼ型、ブルッカイト型、およびルチル型の3種類の結晶型を有する。二酸化チタンは、工業的に製造されている点から、アナターゼ型二酸化チタンまたはルチル型二酸化チタンであると好ましく、ルチル型二酸化チタンがより好ましい。金属酸化物膜がルチル型酸化チタン膜である干渉顔料であれば、干渉顔料を樹脂や塗料に配合した場合に、金属酸化物膜に含まれる金属酸化物(ルチル型酸化チタン)が有する光触媒活性による樹脂や塗料の分解や変色を抑制できる。ルチル型酸化チタンを用いることにより、屈折率が高く、緻密で均一な二酸化チタン膜を容易に形成できる。また、ルチル型酸化チタンを用いることによって、光干渉による発色性が優れる二酸化チタン膜が得られる。金属酸化物膜は、実質的にルチル型二酸化チタンからなることが好ましい。ルチル型酸化チタン膜の平均厚みは、20nm~350nmであると好ましく、より好ましくは50nm~300nmであり、さらに好ましくは70nm~250nmであり、さらにより好ましくは80nm~200nmである。
【0062】
<三酸化二鉄膜>
金属酸化物膜が三酸化二鉄膜である干渉顔料であれば、干渉顔料を樹脂や塗料に配合した場合に、金属酸化物膜に含まれる金属酸化物が有する光触媒活性による樹脂や塗料の分解や変色を抑制できる。また、三酸化二鉄膜を含む干渉顔料であれば、三酸化二鉄膜の光の吸収や反射によって、酸化チタンとは異なるさらなる色を実現できる。三酸化二鉄膜の平均厚みは、20nm~300nmであると好ましい。
【0063】
[干渉顔料の製造方法]
実施形態1の干渉顔料は、例えば、鱗片状の透明無機基材表面を透明金属膜で被覆する工程(金属膜被覆工程)、および透明金属膜で被覆された無機基材を、透明金属膜を覆うように金属酸化物膜で被覆する工程(金属酸化物膜被覆工程)を含む製造方法により得ることができる。
【0064】
〔金属膜被覆工程〕
金属膜被覆工程において、無機基材を、金属単体または金属合金を含む金属膜で被覆し、焼成する。金属膜は、例えば、スパッタ法、CVD法、または無電解(化学)めっき法等を用いて形成できる。中でも、鱗片状の透明無機基材に対して均一な成膜が容易であるという理由から、無電解めっき法が好ましい。
【0065】
無電解めっき法に用いるめっき液の金属原料としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。金属合金の被膜は、これらの金属原料を混合すること等により形成できる。
(1)銀原料:硝酸銀
(2)金原料:亜硫酸金(I)ナトリウム、塩化金(III)酸[テトラクロロ金(III)酸四水和物]
(3)白金原料:塩化白金(IV)酸[ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物]、塩化白金(IV)酸カリウム、塩化白金(IV)酸ナトリウム、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸ナトリウム水和物、塩化白金(II)酸カリウム、ジニトロジアンミン白金(II)、テトラニトロ白金(II)カリウム、テトラアンミンジクロロ白金(II)
(4)パラジウム原料:ジニトロジアンミンパラジウム(II)(ジアミノ亜硝酸パラジウム)、塩化パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)酸ナトリウム、硝酸パラジウム(II)2水和物、ジクロロテトラアンミンパラジウム(II)1水和物(テトラアンミンパラジウム(II)ジクロライド)、ジクロロジアンミンパラジウム(II)
【0066】
金属膜被覆工程において、金属膜の被覆に先立ち、無機基材を前処理することが好ましい。前処理は、金および銀等の金属を均一に被覆しやすくするという理由から、スズによる前処理が好ましい。スズによる前処理は、例えば、以下の手順で行うことができる。まず、無機基材を水に分散させた後、攪拌しながらそのpHを酸を用いてpH1.4~1.6に調整して無機基材を含むスラリー液を調製する。得られたスラリー液に塩化スズ水溶液を加えた後、そのpHを酸を用いてpH1.4~1.6に調整し、所定の時間攪拌し、ついで水洗する。酸としては、例えば、塩酸、硝酸等が挙げられる。
【0067】
〔金属酸化物膜被覆工程〕
金属酸化物膜被覆工程において、透明金属膜で被覆された無機基材を、金属酸化物膜で被覆する。金属酸化物膜は、酸化チタン、三酸化二鉄、および水酸化鉄からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いて、公知の方法により形成することができる。以下に、二酸化チタン膜および三酸化二鉄膜を例にとり、被膜の形成方法を説明する。
【0068】
<二酸化チタン膜>
ルチル型二酸化チタン膜は、例えば、温度55~85℃、pH1.3以下の条件下で、チタンを含む溶液中で中和反応を生じさせ、該溶液からルチル型二酸化チタンを析出させることによって製造できる(例えば、特開2001-31421号公報)。この方法では、結晶型を転移するための加熱を本質的に必要としないため、例えば、耐熱性の低い無機基材であっても、ルチル型二酸化チタン膜を形成することができる。
【0069】
<三酸化二鉄膜>
三酸化二鉄膜は、例えば、50~80℃、pH2~4の条件下で、鉄を含む溶液中で中和反応を生じさせ、該溶液から三酸化二鉄を析出させることによって製造できる(例えば、特開2005-187782号公報)。
【0070】
ついで、金属酸化物膜で被覆された無機基材を、300℃を超える雰囲気下で加熱する。この加熱によって、被覆した金属酸化物膜を構成する金属酸化物の結晶化を進行させる。例えば、金属酸化物膜が酸化チタン膜である場合、この加熱によってルチル型酸化チタンへの結晶化を進行させることができる。
【0071】
金属酸化物膜で被覆された無機基材を加熱する雰囲気の温度は、金属酸化物膜を構成する金属酸化物の結晶化を進行できるという理由から、300℃を超え、好ましくは450℃以上、より好ましくは600℃以上である。加熱温度の上限は、無機基材が耐えうる温度であればよく、1000℃以下が好ましい。よって、加熱温度は、300℃を超え、好ましくは300℃~1000℃、より好ましくは400℃~1000℃、さらに好ましくは400℃~750℃である。加熱時間は、十分な熱量を与え、結晶化を進めるという理由から、1~10時間が好ましく、2~6時間がより好ましい。
【0072】
金属酸化物膜被覆工程において、金属酸化物膜の被覆に先立ち、被覆対象(金属膜で被覆された無機基材)を前処理することが好ましい。前処理は、上述の金属膜被覆工程における前処理と同様に行うことができる。
【0073】
(実施形態2)
実施形態2では、1層の透明金属膜と、2層の金属酸化物膜とを含む形態を例にとり、本発明の干渉顔料のその他の例について説明する。
【0074】
実施形態2の干渉顔料の一例の断面模式図を
図2に示す。
図2において、実施形態1と共通する要素には
図1と同じ符号を付してそれらの説明を省略する。
【0075】
図2に示すように、干渉顔料2は、第1の金属酸化物膜30と、透明金属膜20と、第2の金属酸化物膜40と、鱗片状の透明無機基材10とを含み、鱗片状の透明無機基材10を覆うように、第2の金属酸化物膜40、透明金属膜20および第1の金属酸化物膜30がこの順で積層されている。すなわち、実施形態2の干渉顔料は、第1の金属酸化物膜30からみて無機基材10側に配置された透明金属膜20を含み、透明金属膜20は、第1の金属酸化物膜30と第2の金属酸化物膜40の間にこれらに隣接して配置されており、第2の金属酸化物膜40は、無機基材10と透明金属膜20との間にこれらに隣接して配置されている。最外層は、第1の金属酸化物膜30である。このように透明金属膜を金属酸化物の下(無機基材側)に配置するとともに、透明金属膜および金属酸化物膜を交互に積層することにより、屈折率の差から反射が強まり、かつ光学的距離(光路差)から光干渉が強まることから、さらに淡い色合を呈する干渉顔料を得ることができる。
【0076】
実施形態2の干渉顔料は、実施形態1の干渉顔料の製造方法と同様に、金属膜被覆工程および金属酸化物膜被覆工程を行うことにより製造することができる。
【0077】
第1の金属酸化物膜30の厚みは、例えば、20nm~350nmであり、好ましくは50nm~300nmであり、より好ましくは70nm~250nmであり、さらに好ましくは80nm~200nmであり、さらにより好ましくは120nm~180nmである。第2の金属酸化物膜40の厚みは、例えば、20nm~350nmであり、好ましくは50nm~300nmであり、より好ましくは70nm~200nmであり、さらに好ましくは80nm~150nmであり、さらにより好ましくは80nm~100nmである。
【0078】
実施形態2では、透明金属膜を1層含み、金属酸化物膜を複数層(2層)含む形態を例にとり説明したが、これに限定されるものではなく、金属酸化物膜および透明金属膜の双方が複数層であってもよい。また、金属酸化物膜および/または透明金属膜を複数層含む場合、その数は2層に限られるものではなく、3層、4層または5層以上であってもよい。
【0079】
実施形態1および2(
図1および2)では、鱗片状の透明無機基材、透明金属膜および金属酸化物膜からなる形態の干渉顔料を例示したが、実施形態1および2における干渉顔料の形態はこれに限定されることはない。実施形態1および2の干渉顔料は、例えば、鱗片状の透明無機基材、透明金属膜および金属酸化物膜に加えて、その他の成分で形成された被膜を含んでいてもよい。その他の成分で形成された被膜は、例えば、鱗片状の透明無機基材と透明金属膜との間、透明金属膜と第1の金属酸化物膜との間、鱗片状の透明無機基材と第2の金属酸化物膜との間に形成されていてもよい。
【0080】
その他の成分で形成された被膜としては、多価金属化合物膜が挙げられる。多価金属化合物膜としては、例えば、ランタン、セリウム、ネオジム、およびアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素の水酸化物または酸化物水和物を含む被膜が挙げられる。このような多価金属化合物膜を形成することにより、干渉顔料に高い耐候性を付与できる。例えば、本発明の干渉顔料を屋外で利用される自動車やオートバイに使用した場合であっても、多価金属化合物膜によって紫外線の曝露による金属酸化物膜中の金属酸化物(例えば、チタンおよび酸化鉄等)の光触媒活性が抑制されることから、金属酸化物による塗膜の分解や変色が抑制される。多価金属化合物膜は、紫外線を吸収し、干渉顔料の耐候性を向上できるという理由から、金属酸化物膜を覆うように形成することが好ましい。また、干渉顔料の耐候性および耐水二次密着性(耐候性試験後の密着性)を向上できるという理由から、干渉顔料の最外層に、オキサゾリン環を有する有機化合物および/またはシランカップリング剤を用いた表面処理層を設けることがさらに好ましい。
【0081】
その他の成分で形成された被膜について、セリウム、ランタンまたはアルミニウムの水酸化物または酸化物水和物の被膜を例にとり説明する。
【0082】
<セリウムの水酸化物または酸化物水和物膜>
セリウムの水酸化物または酸化物水和物膜(以下、「セリウム膜」ともいう)は、水溶性セリウム化合物と酸またはアルカリとを反応させ、被覆対象表面にセリウムの水酸化物または酸化物水和物を析出させることによって形成できる。水溶性セリウム化合物としては、例えば、酸性セリウム化合物、およびアルカリ性セリウム化合物が挙げられる。水溶性セリウム化合物として酸性セリウム化合物を用いる場合、セリウム被膜は、酸性セリウム化合物をアルカリ(例えば、水酸化アルカリ金属等)と反応させ、被膜対象表面にセリウムの水酸化物または酸化物水和物を析出させることによって形成できる。一方、水溶性セリウム化合物としてアルカリ性セリウム化合物を用いた場合、セリウム被膜は、アルカリ性セリウム化合物を酸(例えば、硫酸等)と反応させ、セリウムの水酸化物または酸化物水和物を被膜対象表面に析出させることによって形成できる。酸性セリウム化合物としては、例えば、硫酸セリウム、塩化セリウム、および硝酸セリウム等のセリウム鉱酸塩が挙げられる。アルカリ性セリウム化合物としては、例えば、硫酸アンモニウムセリウム、および硝酸アンモニウムセリウム等のアルカリ性セリウム塩が挙げられる。水溶性セリウム化合物としては、硝酸セリウムが好ましく、硝酸セリウムと水酸化ナトリウム溶液とを使用してセリウム被膜を形成することが好ましい。セリウム被膜形成において、セリウム化合物は、セリウム換算で、無機基材を覆う金属酸化物膜に含まれる金属酸化物(例えば、二酸化チタンおよび酸化鉄等)の量(被覆量)に対して約0.01質量%~約1.0質量%の範囲の量で上記析出に用いる溶液(水性スラリー)に添加されることが好ましく、より好ましくは約0.02質量%~約0.5質量%の範囲の量である。使用する酸およびアルカリの量は、セリウム化合物の量等に応じて適宜決定でき、例えば、セリウム化合物と反応し、被覆対象表面にセリウムの水酸化物または酸化水和物を析出させるために十分な量であればよい。
【0083】
<ランタンの水酸化物または酸化物水和物膜>
ランタンの水酸化物または酸化物水和物膜(以下、「ランタン膜」ともいう)は、水溶性ランタン化合物と酸またはアルカリとを反応させ、被覆対象表面にランタンの水酸化物または酸化物水和物を析出させることよって形成できる。水溶性ランタン化合物としては、例えば、硫酸ランタン、塩化ランタン、硝酸ランタン、酢酸ランタン、および炭酸ランタン等の鉱酸塩が挙げられる。これらのランタン化合物を使用する場合、ランタン被膜は、これらのランタン化合物とアルカリ(例えば、水酸化アルカリ金属等)とを反応させ、被覆対象表面にランタンの水酸化物または酸化物水和物を析出させることによって形成できる。水溶性ランタン化合物としては、硝酸ランタンが好ましい。ランタン被膜は、硝酸ランタンと水酸化ナトリウム溶液とを用いて形成することが好ましい。ランタン化合物は、ランタン換算で、無機基材を覆う金属酸化物膜に含まれる金属酸化物(例えば、二酸化チタンおよび酸化鉄等)の量(被覆量)に対して約0.01質量%~約1.0質量%の範囲の量で上記析出に用いる溶液(水性スラリー)に添加されることが好ましく、より好ましくは約0.02質量%~約0.5質量%の範囲の量である。使用する酸およびアルカリの量は、ランタン化合物の量等に応じて適宜決定でき、例えば、ランタン化合物と反応し、被覆対象表面にランタンの水酸化物または酸化水和物を析出させるために十分な量であればよい。
【0084】
<アルミニウムの水酸化物または酸化物水和物膜>
アルミニウムの水酸化物または酸化物水和物膜(以下、「アルミニウム膜」ともいう)は、酸性もしくはアルカリ性のアルミニウム化合物と適切なアルカリまたは酸とを反応させ、アルミニウムの水酸化物または酸化物水和物を被覆対象表面に析出させることによって形成することができる。酸性アルミニウム化合物としては、例えば、鉱酸のアルミニウム塩が挙げられる。鉱酸のアルミニウム塩としては、例えば、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、例えば、硝酸アルミニウム等が挙げられる。アルカリ性アルミニウム化合物としては、例えば、アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリ金属が挙げられる。アルミニウム化合物は、アルミニウム換算で、無機基材を覆う金属酸化物膜に含まれる金属酸化物(例えば、二酸化チタンおよび酸化鉄等)の量(被覆量)に対して約2質量%~約4質量%の範囲の量で上記析出に用いる溶液(水性スラリー)に添加されることが好ましく、より好ましくは約2.5質量%~約3.5質量%の範囲の量である。反応に用いるアルカリまたは酸は、アルミニウム化合物の添加と同時または添加に続いて溶液に添加すればよい。使用するアルカリまたは酸の量は、アルミニウム化合物の量等に応じて適宜決定でき、例えば、被覆対象表面にアルミニウムの水酸化物または酸化水和物を析出させるために十分な量であればよい。
【0085】
(実施形態3)
実施形態3では、本発明の塗料の一例について説明する。
【0086】
本発明の塗料は、本発明の干渉顔料を含み、好ましくは本発明の干渉顔料と樹脂と溶媒とを含む。本発明の塗料は、必要に応じて硬化剤をさらに含んでいてもよい。本発明の塗料が用いられる分野としては、例えば、自動車、オートバイおよび自転車等の外装、建材、瓦、家具、家庭用品、容器、事務用品、スポーツ用品等が挙げられる。
【0087】
塗料に含まれる干渉顔料の平均粒径は、例えば、1μm~50μmであると好ましく、平均厚みは、例えば、0.1μm~3μmであると好ましい。これらの範囲の平均粒径であれば、自動車外板などの塗装工程等において、塗料が循環使用される際に異物除去のためのフィルトレーションが行われるが、これらの範囲の平均粒径であれば、フィルトレーションに起因する圧力損失の上昇や、塗料中の干渉顔料の含有量減少に伴う塗装品質の低下を抑制できる。また、これらの範囲の平均粒径であれば、形成した塗膜表面からの干渉顔料の突出等が抑制されるとともに、塗膜における干渉顔料の配向性が向上され塗膜の仕上がりが良好になる。
【0088】
樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル-ウレタン硬化系樹脂、エポキシ-ポリエステル硬化系樹脂、アクリル-ポリエステル系樹脂、アクリル-ウレタン硬化系樹脂、アクリル-メラミン硬化系樹脂、ポリエステル-メラミン硬化系樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、石油樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、および熱可塑性フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0089】
溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等);エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n-ブチル等);ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等);エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等);セルソルブ類(例えば、メチルセルソルブ(エチレングリコールモノメチルエーテル)、エチルセルソルブ、プロピルセルソルブ、ブチルセルソルブ、フェニルセルソルブ、ベンジルセルソルブ等);カルビトール類(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、カルビトール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル等)が挙げられる。これらは2種以上併用されてもよい。
【0090】
硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネート、アミン、ポリアミド、多塩基酸、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化硼素酸、酸ジヒドラジド、およびイミダゾール等が挙げられる。
【0091】
塗料における各成分の含有量は、本発明において制限されるものではなく、従来公知の塗料に基づき適宜決定できる。
【0092】
塗料における干渉顔料の含有量は、乾燥硬化後の塗膜において0.1質量%~30質量%となるように調整すると好ましく、1質量%~20質量%がより好ましい。
【0093】
塗料における樹脂の含有量は、塗装における塗着効率を向上できるという理由から、乾燥硬化後の塗膜において20質量%~80質量%となるように調整すると好ましく、30質量%~60質量%がより好ましい。
【0094】
塗料における溶媒の含有量は、特に制限はなく、塗料の塗装方法に応じて設定できる。例えば、塗装方法がスプレー塗装である場合は、塗料の20℃における粘度が10Pa・s~30Pa・sとなるように溶媒の含有量を調整すると好ましい。
【0095】
本実施形態の塗料は、本発明の干渉顔料以外の顔料、界面活性剤、潤滑剤、消泡剤、および/またはレベリング剤等をさらに含んでいてもよい。
【0096】
(実施形態4)
実施形態54では、本発明の樹脂組成物の一例について説明する。
【0097】
本発明の樹脂組成物は、本発明の干渉顔料を含み、好ましくは本発明の干渉顔料と母材樹脂とを含む。本発明の樹脂組成物は、必要に応じて硬化剤をさらに含んでいてもよい。本発明の樹脂組成物を用いて成形される成形体としては、例えば、化粧料用容器、食品容器、壁装材、床材、家電製品の筐体、アクセサリー、文房具、玩具、浴槽、バス用品、履き物、スポーツ用品、およびトイレ用品等が挙げられる。
【0098】
樹脂組成物に含まれる干渉顔料の平均粒径は、例えば、30μm~600μmであると好ましく、その平均厚みは3μm~10μmであると好ましい。樹脂組成物を用いて成形される成形物表面についてキラキラ感を高めるという理由から、干渉顔料を構成する無機基材の平均粒径は20μm~500μmであると好ましく、その平均厚みは0.5μm~10μmであると好ましい。
【0099】
干渉顔料を構成する無機基材は、マイカが有するような劈開性が低く、射出成形を経ても成形前の粒径を維持できるという理由から、ガラスであると好ましい。
【0100】
母材樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル-ウレタン硬化系樹脂、エポキシ-ポリエステル硬化系樹脂、アクリル-ポリエステル系樹脂、アクリル-ウレタン硬化系樹脂、アクリル-メラミン硬化系樹脂、およびポリエステル-メラミン硬化系樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、石油樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、および熱可塑性フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。母材樹脂は、射出成形が可能であり、複雑な形状の成形品を成形できるという理由から、熱可塑性樹脂であると好ましい。
【0101】
硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネート、アミン、ポリアミド、多塩基酸、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化硼素酸、酸ジヒドラジド、およびイミダゾール等が挙げられる。
【0102】
樹脂組成物における各成分の含有量は、本発明において制限されるものではなく、従来公知の樹脂組成物に基づき適宜決定できる。樹脂組成物における干渉顔料の含有量は、樹脂組成物を用いて成形される成形物の意匠デザイン性を高めることができるという理由から、0.01質量%~10質量%であると好ましく、0.5質量%~5質量%がより好ましい。
【0103】
本発明の樹脂組成物は、本発明の干渉顔料以外の顔料、界面活性剤、潤滑剤、消泡剤、および/またはレベリング剤等をさらに含んでいてもよい。
【0104】
(実施形態5)
実施形態5では、本発明のインクの一例について説明する。
【0105】
本発明のインクは、本発明の干渉顔料を含み、好ましくは本発明の干渉顔料とビヒクルとを含む。本発明のインクは、例えば、各種ボールペン、またはフェルトペン等の筆記具用インク、グラビアインク、またはオフセットインク等の印刷用インクとして用いることができる。
【0106】
筆跡の表面をより滑らかにできるという理由から、筆記具用インクに含まれる干渉顔料の平均粒径は10μm~120μmであると好ましく、その平均厚みは0.1μm~2μmであると好ましい。
【0107】
版かぶり、インプレッションシリンダー(圧胴)の汚れ、または版の目詰まり等が生じ難い等の印刷適性が向上されるという理由から、印刷用インクに含まれる干渉顔料の平均粒径は10μm~50μmであると好ましく、その平均厚みは0.1μm~2μmであると好ましい。本明細書において「版かぶり」とは、印刷時にドクターブレードによって十分にかきとることができなかった版上のインクが被印刷体に転写され、その結果、印刷物の地汚れを生じさせる現象のことをいう。
【0108】
筆記具用インク用ビヒクルとしては、例えば、アクリル樹脂、スチレン-アクリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、アクリル酢酸ビニル共重合体、ザンサンガム等の微生物産性多糖類、およびグアーガム等の水溶性植物性多糖類からなる群から選ばれる少なくとも1種と、溶剤とを混合して得た混合物が挙げられる。溶剤としては、例えば、水、アルコール、炭化水素、およびエステル等が挙げられる。
【0109】
グラビアインク用ビヒクルとしては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、ライムロジン、ロジンエステル、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ギルソナイト、ダンマル、およびセラックからなる群から選ばれる少なくとも1種、あるいは上記群から選ばれる樹脂を水溶化した水溶性樹脂、または水中油滴型(O/W)樹脂と、溶剤とを混合して得た混合物が挙げられる。溶剤としては、例えば、炭化水素、アルコール、エーテル、エステル、および水等が挙げられる。
【0110】
オフセットインク用ビヒクルとしては、例えば、ロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂またはアルキド樹脂等の樹脂と、溶剤とを混合して得た混合物が挙げられる。溶剤としては、例えば、アマニ油、桐油もしくは大豆油等の植物油、n-パラフィン、イソパラフィン、アロマテック、ナフテン、α-オレフィン、または水等が挙げられる。
【0111】
上記各ビヒクルには、染料、本発明の干渉顔料以外の顔料、界面活性剤、潤滑剤、消泡剤、および/またはレベリング剤等がさらに含まれていてもよい。
【0112】
インクにおける各成分の含有量については、インクの用途によって適宜決定でき、本発明において制限されるものではなく、従来公知のインクと同様でよい。
【0113】
(実施形態6)
実施形態6では、本発明の化粧料の一例について説明する。
【0114】
本発明の化粧料は、本発明の干渉顔料を含み、必要に応じて媒体を含んでいてもよい。本発明の化粧料としては、その種類について特に限定されないが、例えば、爪化粧料、フェイシャル化粧料、およびメイクアップ化粧料等が挙げられる。爪化粧料としては、ネイルエナメル、ネイルカラーまたはネイルコート等が挙げられる。メイクアップ化粧料としては、アイシャドウ、アイライナー、マスカラまたは眉墨等の眉目化粧料、アイライナーペンシル、またはリップライナーペンシル等のペンシル状のメイクアップ化粧料、ファンデーション、頬紅、フェイスカラー、口紅、リップグロス、水や溶剤にラメ剤を沈降させた状態で配合し使用時に適度に振り混ぜて使用するような沈降タイプ等のメイクアップ化粧料等が挙げられる。
【0115】
化粧料における本発明の干渉顔料の含有率は、化粧料の種類に応じて適宜決定できる。爪化粧料の場合、本発明の干渉顔料の含有量は、高い光輝性と良好な塗布性とが得られるという理由から、化粧料の総質量を100質量%とすると、0.1質量%~50質量%であると好ましく、3質量%~40質量%がより好ましい。
【0116】
固形粉末化粧料の場合、本発明の干渉顔料の含有量は、高い光輝性と良好な使用感とが得られるという理由から、化粧料の総質量を100質量%とすると、5質量%~80質量%であると好ましく、10質量%~60質量%がより好ましい。固形粉末化粧料としては、粉末をプレス等により乾式充填するか、または、粉末を揮発性溶剤を用いて湿式充填し乾燥させて得られる化粧料が挙げられ、具体例としてはこのような製法で得られるアイシャドウ等が挙げられる。
【0117】
粉末状化粧料の場合、本発明の干渉顔料の含有量は、使用時に肌上に存在する人脂と混ざるため、化粧料の総質量を100質量%とすると、70質量%~100質量%であると好ましい。粉末状化粧料としては、ルースパウダー等が挙げられる。
【0118】
油性固形化粧料の場合、本発明の干渉顔料の含有量は、本発明の干渉顔料のラメ剤としての効果が充分に発揮され、かつ、良好な成型性を確保できるという理由から、1質量%~60質量%であると好ましく、3質量%~50質量%がより好ましい。油性固形化粧料の場合、本発明の干渉顔料の平均粒径は10μm~250μmであると好ましく、その平均厚みは0.3μm~3μmであると好ましい。油性固形化粧料としては、例えば、リップグロス、口紅、または油性アイシャドウ等が挙げられる。
【0119】
乳化型メイクアップ化粧料の場合、本発明の干渉顔料の含有量は、本発明の干渉顔料のラメ剤としての効果を充分に確保し、かつ、乳化の高い安定性を確保できるという理由から、化粧料の総質量を100質量%とすると、1質量%~50質量%であると好ましく、3質量%~40質量%がより好ましい。乳化型メイクアップ化粧料としては、水相と油相とを活性剤で乳化して得られるメイクアップ化粧料が挙げられる。
【0120】
水系メイクアップ化粧料の場合、本発明の干渉顔料の含有量は、本発明の干渉顔料のラメ剤としての効果を充分に確保し、かつ、良好な使用感を確保できるという理由から、化粧料の総質量を100質量%とすると、0.1質量%~60質量%であると好ましく、1質量%~40質量%がより好ましい。水系メイクアップ化粧料としては、例えば、水、水溶性樹脂または水中油滴型(O/W)樹脂、および増粘剤等を含む水性マスカラ等が挙げられる。
【0121】
媒体は、化粧料の種類によって異なるが、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノンまたはアセトンのような、室温で液体であるケトン;エタノール、イソプロパノール、ジアセトンアルコール、2-ブトキシエタノールまたはシクロヘキサノールのような、室温で液体であるアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンチレングリコールまたはグリセロールのような、室温で液体であるグリコール;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートまたはジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテルのような、室温で液体であるプロピレングリコールエーテル;エチルアセテート、メチルアセテート、プロピルアセテート、n-ブチルアセテートまたはイソペンチルアセテートのような、炭素数が3~8の短鎖エステル;デカン、ヘプタン、ドデカンまたはシクロヘキサンのような、室温で液体であるアルカン;トルエンまたはキシレンのような、室温で液体である環状芳香族化合物等が挙げられる。中でも人体への安全性の点から、エタノールまたは短鎖エステルが好ましい。
【0122】
本発明の化粧料は、必要に応じて、保湿剤、固形油、液状油、および/または粉体等を含んでいてもよい。
【0123】
保湿剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グルセリン、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル-12-ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl-ピロリドンカルボン酸塩、ジグリセリン(EO)PO付加物、イサイヨバラ抽出物、セイヨウノキギリソウ抽出物、およびメリロート抽出物等が挙げられる。
【0124】
固形油としては、例えば、ポリエチレンワックス、エチレンプロピレンコポリマー、固形パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックスもしくはモンタンワックス等の炭化水素類;カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ビーズワックス、モクロウもしくはゲイロウ等のロウ類;カカオ脂、パーム油もしくは牛脂等の油脂類;ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸もしくはベヘニン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコールもしくはベヘニルアルコール等の高級アルコール類;水添ヤシ油もしくは硬化ヒマシ油等の硬化油類;ステアリン酸メチル、パルミチン酸セチル、ロジン酸ペンタエリトリットエステルもしくはジステアリン酸プロピレングリコール等のエステル類;または、ステアリル変性ポリシロキサンもしくはベヘニル変性ポリシロキサン等のシリコーンワックス類;等が挙げられる。これらの固形油は2種以上併用してもよい。
【0125】
液状油としては、動物油、植物油または合成油等の起源は問わず、炭化水素類、油脂類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類、親油性界面活性剤類または油溶性紫外線吸収剤類等が挙げられる。具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素類;オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油もしくはマカデミアンナッツ油等の油脂類;セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステルもしくはN-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル類;イソステアリン酸もしくはオレイン酸等の脂肪酸類;オレイルアルコールもしくはイソステアリルアルコール等の高級アルコール類;低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサンもしくはフッ素変性シリコーン等のシリコーン類;パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカンもしくはパーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類;酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体;デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、12-ヒドロキシステアリン酸アルミニウムもしくはステアリン酸カルシウム等の油性ゲル化剤類;またはパラアミノ安息香酸エチル、p-メトキシケイ皮酸-2-エチルヘキシル、4-tert-ブチル-4'-メトキシジベンゾイルメタンもしくはオキシベンゾン等の油溶性紫外線吸収剤類;等が挙げられる。また、これらの液状油は2種以上併用してもよい。
【0126】
上記粉体としては、例えば、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類または複合粉体類等が挙げられる。これらの粉体は2種以上併用してもよいし、金属酸化物、金属水酸化物、フッ素化合物、シリコーン系油剤、金属石鹸、ロウ、油脂または炭化水素等で表面処理されていてもよい。粉体の形状について特に制限はなく、球状、板状または針状等のいずれであってもよい。粉体の平均粒径は、本発明の干渉顔料の平均粒径よりも小さくてもよいし、本発明の干渉顔料の平均粒径と同等であってもよいが、良好な伸展性と使用感とが得られるという理由から、粉体の平均粒径は、0.05μm~50μmであると好ましく、0.05μm~10μmがより好ましい。また、粉体は多孔質および無孔質のうちいずれの構造を有していてもよい。
【0127】
無機粉体類としては、例えば、酸化チタン粉体、黒酸化チタン粉体、コンジョウ粉体、群青粉体、ベンガラ粉体、黄酸化鉄粉体、黒酸化鉄粉体、酸化亜鉛粉体、酸化アルミニウム粉体、酸化マグネシウム粉体、酸化ジルコニウム粉体、炭酸マグネシウム粉体、炭酸カルシウム粉体、酸化クロム粉体、水酸化クロム粉体、カーボンブラック粉体、ケイ酸アルミニウム粉体、ケイ酸マグネシウム粉体、ケイ酸アルミニウムマグネシウム粉体、マイカ粉体、合成マイカ粉体、合成セリサイト粉体、セリサイト粉体、タルク粉体、カオリン粉体、無水ケイ酸粉体、シリカビーズ粉体、炭化ケイ素粉体、硫酸バリウム粉体、ベントナイト粉体、スメクタイト粉体、または窒化硼素粉体等が挙げられる。
【0128】
光輝性粉体類としては、例えば、オキシ塩化ビスマス粉体、雲母チタン(マイカを二酸化チタンでコーティングしたもの)粉体、酸化鉄コーティング雲母粉体、酸化鉄被覆雲母チタン粉体、有機顔料処理雲母チタン粉体、またはアルミニウムパウダー等が挙げられる。
【0129】
有機粉体類としては、例えば、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-メタクリル酸共重合体パウダー、塩化ビニリデン-メタクリル酸共重合体パウダー、ポリスチレンパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、ウレタンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、結晶セルロース、またはN-アシルリジン等が挙げられる。
【0130】
色素粉体類としては、例えば、有機タール系顔料、または有機色素のレーキ顔料等が挙げられる。
【0131】
複合粉体類としては、例えば、微粒子酸化チタン被覆還元雲母チタン粉体、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン粉体、硫酸バリウム被覆雲母チタン粉体、酸化チタン含有二酸化ケイ素粉体、または酸化亜鉛含有二酸化ケイ素粉体等が挙げられる。
【0132】
本発明の化粧料は、必要に応じて、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、香料、防腐剤、水、グリセリンや1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール、低級アルコール、および/または美容成分等を含んでいてもよい。
【0133】
上記において、化粧料における本発明の干渉顔料の好ましい含有量について記載したが、化粧料中における各成分の含有量については、本発明において制限されるものではなく、従来公知の各種の化粧料のそれと同様でよい。
【0134】
以下に、実施例および比較例を示して本発明の一例を詳しく説明する。但し、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
【実施例】
【0135】
<干渉顔料の調製>
以下の方法により、実施例1~4の干渉顔料および比較例1~4の顔料を準備した。実施例1および2では、無機基材を、透明金属膜および金属酸化物膜の順で被覆した(
図1の構成)。実施例3および4では、無機基材を、金属酸化物膜、透明金属膜および金属酸化物膜の順で被覆した(
図2の構成)。比較例1および2の顔料としては、無機基材が金属酸化物膜で被覆された市販の顔料(透明金属膜なし)を準備した。比較例3では、透明金属膜を形成しない以外は、実施例3と同様にした。比較例4では、金属酸化物膜を形成しない以外は、実施例3と同様にした。
【0136】
(実施例1(Au+酸化チタン))
下記の通り、鱗片状の透明ガラス基材の表面を金被膜で被覆し、さらにその表面をルチル型酸化チタンで被覆することによって、実施例1の干渉顔料を作製した。
【0137】
[鱗片状ガラス基材の前処理工程]
鱗片状ガラス基材(平均粒径:80μm、平均厚み:1.3μm)1.2kgをイオン交換水8.4リットルに加え、これらを攪拌機で攪拌しながら希塩酸を加えてpHを2.5に調整してスラリー液を得た。得られたスラリー液に常温の塩化スズ(II)0.5質量%水溶液を1.7リットル加えた後、そのpHを希塩酸で2.5に調整して混合スラリー液を得た。得られた混合スラリー液を5分間攪拌した後、混合スラリー液から鱗片状ガラス基材を減圧ろ過により回収した。回収した鱗片状ガラス基材をイオン交換水で水洗してスズによる前処理を行った鱗片状ガラス基材を得た。
【0138】
[金属被覆工程]
イオン交換水8.4リットルを攪拌しながら75℃に加温し、加温したイオン交換水に亜硫酸金ナトリウム6gを加え、75℃で撹拌することによって亜硫酸金ナトリウムを溶解した。これに、上記の前処理を行った鱗片状ガラス基材1.2kgを分散させて懸濁液を得た。得られた懸濁液に3%L-アスコルビン酸ナトリウム水溶液12gを加え、15分間攪拌した後、懸濁液中の固形分(生成物)を減圧ろ過により採取し、それを純水で水洗した。
水洗した生成物を180℃で恒温乾燥した後、電気加熱炉にて450℃で2時間の焼成を行った。これにより、ガラス基材表面が金被膜で被覆された顔料を得た。
【0139】
[金属酸化物被覆工程]
ガラス基材表面が金被膜で被覆された顔料(以下、「金被覆ガラス基材」ともいう)に、処理を行った。
金被覆ガラス基材1.2kgに、イオン交換水を加えて全容量を12Lにした後、これらを攪拌機で攪拌しながら希塩酸を加えてpHを1.5に調整してスラリー液を得た。得られたスラリー液に常温の塩化スズ(IV)0.7質量%水溶液を1.6リットル加えた後、そのpHを希塩酸で1.5に調整して混合スラリー液を得た。得られた混合スラリー液を5分間攪拌した後、混合スラリー液から鱗片状ガラス基材を減圧ろ過により回収した。回収した鱗片状ガラス基材をイオン交換水で水洗してスズによる前処理を行った鱗片状ガラス基材を得た。
スズ処理後の金被覆ガラス基材1.2kgに、イオン交換水を加えて全容量を12Lにした後、35質量%塩酸でpH1.0に調整するとともに75℃に加温した。次いで、これを攪拌しながら、四塩化チタン水溶液(Ti分として16.5質量%)を1時間当たり290gの割合で定量添加するとともに、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を1時間当たり1.4Lの割合で添加した。この四塩化チタン水溶液の添加と水酸化ナトリウム水溶液の添加とを継続して行い、金被膜上に光輝感のある赤のパール調の色調を有するルチル型酸化チタン膜を形成した。酸化チタン膜が形成された金被覆ガラス基材を減圧ろ過で採取し、純水で水洗し、180℃で乾燥し、その後450℃で2時間焼成し、実施例1の干渉顔料を得た。
【0140】
得られた実施例1の干渉顔料は、白地の紙に置くと薄いピンク色を呈し、黒地の紙に置くと赤色の干渉色を呈した。
【0141】
(実施例2(Au+酸化チタン))
青色のパール調の色調を有するルチル型酸化チタン膜が形成されるまで四塩化チタン水溶液の添加と水酸化ナトリウム水溶液の添加とを継続した以外は、実施例1と同様に、前処理工程、金属被覆工程および金属酸化物被覆工程を行い、実施例2の干渉顔料を得た。
【0142】
得られた実施例2の干渉顔料は、白地の紙に置くと薄い水色を呈し、黒地の紙に置くと青色の干渉色を呈した。
【0143】
(実施例3(酸化チタン+Au+酸化チタン))
鱗片状の透明ガラス基材に代えて、市販の光輝性顔料(メタシャイン(商標) MT1080RB 日本板硝子(株)製)を使用した以外は、実施例1と同様に、前処理工程、金属被覆工程および金属酸化物被覆工程を行い、実施例3の干渉顔料を得た。なお、メタシャイン(商標)MT1080RBは、鱗片状の透明ガラス基材の表面が、青色のパール調のルチル型酸化チタンで被覆されたものである。メタシャイン(商標)MT1080RBの平均粒径は85μmであり、メタシャイン(商標)MT1080RBに含まれるガラス基材の厚みは1.3μmである。
【0144】
得られた実施例3の干渉顔料は、白地の紙に置くと薄いピンク色を呈し、黒地の紙に置くとピンク色の干渉色を呈した。
【0145】
なお、メタシャイン(商標) MT1080RBは、例えば、以下の手順により製造できる。
まず、鱗片状ガラス基材(平均粒径:80μm、平均厚み:1.3μm)1.2kgに、イオン交換水を加えて全容量を12Lにした後、これらを攪拌機で攪拌しながら希塩酸を加えてpHを1.5に調整してスラリー液を得た。得られたスラリー液に常温の塩化スズ(IV)0.7質量%水溶液を1.6リットル加えた後、そのpHを希塩酸で1.5に調整して混合スラリー液を得た。得られた混合スラリー液を5分間攪拌した後、混合スラリー液から鱗片状ガラス基材を減圧ろ過により回収した。回収した鱗片状ガラス基材をイオン交換水で水洗してスズによる前処理を行った鱗片状ガラス基材を得た。
スズ処理後のガラス基材1.2kgに、イオン交換水を加えて全容量を12Lにした後、35質量%塩酸でpH1.0に調整するとともに75℃に加温した。次いで、これを攪拌しながら、四塩化チタン水溶液(Ti分として16.5質量%)を1時間当たり290gの割合で定量添加するとともに、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を1時間当たり1.4Lの割合で添加した。この四塩化チタン水溶液の添加と水酸化ナトリウム水溶液の添加とを継続して行い、ガラス基材上に光輝感のある青色のパール調の色調を有するルチル型酸化チタン膜を形成した。酸化チタン膜が形成された鱗片状ガラス基材を減圧ろ過で採取し、純水で水洗し、180℃で乾燥し、その後450℃で2時間焼成した。これにより、鱗片状の透明ガラス基材の表面が、青色のパール調のルチル型酸化チタンで被覆された顔料を得ることができる。
【0146】
(実施例4(酸化チタン+Ag+Au+酸化チタン))
下記の通り、市販の光輝性顔料(メタシャイン(商標) MT1080RB 日本板硝子(株)製)の表面を、銀被膜および金被膜の順で被覆し、さらにその表面にルチル型酸化チタンを被覆することによって、実施例4の干渉顔料を作製した。
【0147】
まず、市販の光輝性顔料に対し、実施例1と同様に前処理工程を行った。
【0148】
[金属膜被覆工程]
イオン交換水8.4リットルを攪拌しながら30℃に加温し、これに前処理を行った光輝性顔料1.2kgを分散させて懸濁液を得た。pH2.5に調整したイオン交換水に硝酸銀0.8gを溶解させ、それを得られた懸濁液に加えて10分間攪拌した後、懸濁液中の固形分(生成物)を減圧ろ過により採取し、それを純水で水洗した。これにより、ルチル型酸化チタン膜表面に銀被膜を形成し、光輝性顔料表面が銀被膜で被覆された顔料を得た。
イオン交換水8.4リットルを攪拌しながら75℃に加温し、これに亜硫酸金ナトリウム6gを溶解した後、この溶解液に銀被膜で被覆された光輝性顔料1.2kgを分散させて懸濁液を得た。得られた懸濁液に3%L-アスコルビン酸ナトリウム水溶液12gを加え、15分間攪拌した後、懸濁液中の固形分(生成物)を減圧ろ過により採取し、それを純水で水洗した。水洗した生成物を180℃で恒温乾燥した後、電気加熱炉にて450℃で2時間焼成した。これにより、ガラス基材表面が、ルチル型酸化チタン膜、銀被膜および金被膜の順で被覆された顔料を得た。
【0149】
[金属酸化物被覆工程]
上記の金属膜被覆工程で得られた顔料に対し、実施例1と同様にルチル型酸化チタン被覆工程を行い、実施例4の干渉顔料を得た。
【0150】
得られた実施例4の干渉顔料は、白地の紙に置くと薄いピンク色を呈し、黒地の紙に置くとピンク色の干渉色を呈した。
【0151】
(比較例1)
比較例1としては、赤色のパール調の市販の光輝性顔料(メタシャイン(商標) MT1080RR(日本板硝子(株)製))を用意した。メタシャイン(商標)MT1080RRは、鱗片状の透明ガラス基材の表面が、赤色のパール調のルチル型酸化チタンで被覆されたものである。メタシャイン(商標) MT1080RRの平均粒径は85μmであり、メタシャイン(商標) MT1080RRに含まれるガラス基材の厚みは1.3μmである。
【0152】
メタシャイン(商標) MT1080RRは、赤色のパール調の色調を有するルチル型酸化チタン膜が形成されるまで四塩化チタン水溶液の添加と水酸化ナトリウム水溶液の添加とを継続した以外は、上記のメタシャイン(商標) MT1080RBの製造手順と同様にして得ることができる。
【0153】
(比較例2)
比較例2としては、市販の光輝性顔料(メタシャイン(商標) MT1080RB 日本板硝子(株)製)を用意した。
【0154】
(比較例3)
比較例3としては、金属膜被覆工程を行わない以外は、実施例3と同様にして比較例3の顔料を得た。
【0155】
(比較例4)
比較例4としては、金属酸化物被覆工程を行わない以外は、実施例3と同様にして比較例4の顔料を得た。得られた顔料は、金被膜の反射が強かった。また、白色の紙の上に置くと、顔料そのものの色が強すぎて下地の色を隠してしまし、淡い発色を得ることができなかった。
【0156】
以上のようにして作製した実施例1~4の干渉顔料および比較例1~4の顔料について、以下の方法により、平均粒径、平均厚み、CIE 1976(L*a*b*)表色系、可視光透過率、可視反射過率、透明金属膜に含まれる金属の含有率、透明金属膜の厚み、および金属酸化物膜の厚みを求めた。その結果を下記表5および6に示す。
【0157】
(1)ガラス基材(無機基材)および干渉顔料の平均粒径
レーザー回折式粒度計(商品名:マイクロトラックHRA、日機装株式会社製)を用いて無機基材または顔料の粒径を測定し、その粒度分布の体積累積50%に相当する粒径(D50)を、無機基材または顔料の平均粒径とした。
【0158】
(2)無機基材の平均厚み
干渉顕微鏡(商品名:インターファコ(INTERPHAKO)、カール・ツァイス・イエーナ(CARLZEISSJENA)製)を用い、直接光(位相物体の影響を受けていない光)と無機基材を透過した光との光路差を測定することで無機基材(100個)の厚みを算出し、それを平均した値を無機基材の平均厚みとした。
【0159】
(3)CIE 1976(L*a*b*)表色系
実施例1~4の干渉顔料および比較例1~4の顔料1gを、アクリルラッカー(日本ペイント社製、アクリルオートクリヤースーパー)9gに配合後、十分に混合して、隠蔽率測定紙の上に9milの塗膜厚みで塗布した。その後、室温で自然乾燥させて評価用サンプルを作製した。
比較として、顔料を含まないアクリル樹脂(アクリルラッカー(日本ペイント社製、アクリルオートクリヤースーパー))を隠蔽率測定紙の上に9milの塗膜厚みで塗布し、室温で自然乾燥させたものをブランクとした。
評価用サンプル及びブランクについて、色彩測色計(コニカミノルタ社)を用い、CIE 1976(L*a*b*)表色系にて白地側を測定し、下記式からブランクに対する色差ΔEを計算した。得られた色差ΔEを下記表6に示す。
ΔE= ((Ls-L1)2+(as-a1)2+(bs-b1)2)1/2
Ls, as, bs:ブランクのLab値
L1,a1,b1:実施例、比較例のLab値
【0160】
(4)可視光透過率
下記の手順にて、実施例1~4の干渉顔料および比較例1~4の顔料の可視光透過率を測定した。
[試料作製]
実施例1~4の干渉顔料または比較例1~4の顔料1.0gをアクリル樹脂9.0gに混合し、それをPETフィルムの表面に9milの塗膜厚みで塗布した。次いで、2時間自然乾燥した後、80℃で10分間乾燥させて試料を作製した。
[測定方法]
紫外可視近赤外分光光度計(製品名:UV-3600、島津製作所製)を用いて、下記表6に示す波長(480nm、580nmおよび680nm)の光の透過率を測定した。なお、ベースライン補正には、顔料を含まないアクリル樹脂をPETフィルム表面に9milの塗膜厚みで塗布し、2時間自然乾燥した後、80℃で10分間乾燥させたものをリファレンスとして使用した。
【0161】
(5)可視光反射率
下記の手順にて、実施例1~4の干渉顔料および比較例1~4の顔料の可視光反射率を測定した。
[試料作製]
実施例1~4の干渉顔料または比較例1~4の顔料1.0gをアクリル樹脂9.0gに混合し、それを隠ぺい率測定紙の表面に9milの塗膜厚みで塗布した。次いで、2時間自然乾燥した後、80℃で10分間乾燥させて試料を作製した。
[測定方法]
紫外可視近赤外分光光度計(製品名:UV-3600、島津製作所製)を用いて、隠ぺい率測定紙の白地部分を下記表6に示す波長(480nm、580nmおよび680nm)の光の反射率を測定した。なお、ベースライン補正は、装置に付属する硫酸バリウムの基準板を用いて行った。
【0162】
(6)透明金属膜と透明金属膜で被覆された対象との合計に対する、透明金属膜に含まれる金属の含有率
実施例1~4及び比較例4における金属膜被覆工程で得られた顔料(金属酸化物膜被覆工程前の顔料)を試料として用い、下記の手順にて、顔料の金属膜に含まれる金属(金または銀)の量を測定し、測定値を用いて試料(重量)あたりの金属(金、または銀および金)の量を算出して、透明金属膜と透明金属膜で被覆された対象との合計に対する、透明金属膜に含まれる金属の含有率を求めた。
<金被膜>
[測定溶液作製]
試料(金被膜が形成された顔料)2.5gに王水5mlを加えた後、さらに水を15ml加えた。125℃で2時間以上加熱した後、放冷し、ろ紙を用いてろ過した。得られた沈殿物を少量の水で数回洗い、洗浄後の沈殿物に水を加えて50mlにして測定溶液を得た。
[測定方法]
得られた測定溶液をICP発光分析装置(商品名:ICPS-7510、島津製作所製)で測定し、測定溶液に含まれる金の量を測定した。得られた測定値を用いて、金の被覆量を以下の式で計算し、得られた値を金膜に含まれる金の含有率(質量%)とした。
金属(ppm)=測定値(ppm)×50(ml)/試料重量(g)
<銀被膜>
[測定溶液作製]
試料(銀被膜が形成された顔料)0.1gに水20mlを加えた後、硝酸(1+1)を5ml加えた。加熱溶解した後、放冷し、ろ紙を用いてろ過した。得られた沈殿物を硝酸で十分洗浄し、洗浄後の沈殿物に水を加えて100mlにして測定溶液を得た。
[測定方法]
得られた測定溶液をICP発光分析装置(商品名:ICPS-7510、島津製作所製)で測定し、銀の被覆量を以下の式で計算し、得られた値を銀の含有率(質量%)とした。金属(ppm)=測定値(ppm)×100(ml)/試料重量(g)
【0163】
(7)金属膜の厚み
実施例1~4および比較例4における金属膜被覆工程で得られた顔料を試料とし、金属膜の厚みを求めた。金属膜の厚みは、実施例1および2は下記表2に示す計算式を、実施例3および比較例4は下記表3に示す計算式を、実施例4は下記表4に示す計算式をそれぞれ使用し、実施例1~4の顔料を100gとして、試料1個当たりの金属膜の重量および金属膜が被覆されている対象の表面積を用いて算出した。なお、実施例1および2の干渉顔料については、金属膜が無機基材表面に被覆されているため、無機基材の表面積を用いて金属膜の厚みを算出した、実施例3および4については、金属膜が無機基材を被覆する金属酸化物膜表面に被覆されているため、金属酸化物膜で被覆された無機基材の表面積を用いて金属膜の厚みを算出した。
【0164】
(8)干渉顔料および金属酸化物膜の厚み
干渉顔料および金属酸化物膜の厚みは、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)(商品名:S-4700)、株式会社日立ハイテクノロジーズ)を用いて、10万倍の倍率で干渉顔料の断面(10箇所)から厚みを測定し、それらの平均を求めた。
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
[評価]
(1)測色データ比較
実施例1および2のΔEと比較例1および2のΔEとを比較すると、表6に示すように、比較例1および2の顔料のΔEは2よりも小さいのに対し、実施例1および2の干渉顔料のΔEは2を超える値であった。つまり、実施例1および2の干渉顔料は、白地におけるブランク(顔料)との色調の違いが大きく、干渉色を測定できた。これは、比較例1および2の顔料では、下地(白色)で反射した光が、ルチル型酸化チタン膜表面およびガラス基材表面で反射した光の干渉を打ち消したため、ほとんど干渉色が発現されず、干渉色が測定できなかった(ブランクとの色調の違いがみられなかった)のに対し、実施例1および2の干渉顔料は、ルチル型酸化チタン膜とガラス基材との間に形成された金被膜が、下地(白色)で反射した光の一部を吸収し、下地で反射した光による上記の光の干渉を打ち消す力が弱くなり、その結果、十分な干渉色を発現されたため、干渉色として測定できたといえる。このことから、実施例1および2の干渉顔料は、ルチル型酸化チタン膜とガラス基材との間に金被膜を含むことにより、下地の色が白色の場合であっても鮮明な干渉色を発現できるといえる。
実施例3および4のΔEと比較例3のΔEとを比較すると、表6に示すように、比較例3の顔料のΔEは2よりも小さいのに対し、実施例3および4の干渉顔料のΔEが10を超える値であった。また、実施例3および4の干渉顔料のΔEは、実施例1および2の干渉顔料のΔEよりも大幅に大きかった。このことから、金被膜または金被膜および銀被膜とガラス基材との間にルチル型酸化チタン膜を含み、かつガラス基材をルチル型酸化チタン膜、金被膜または金被膜および銀被膜、およびルチル型酸化チタン膜の順で被覆した実施例3および4の干渉顔料は、より鮮明な干渉色を発現できるといえる。
比較例4では、ΔEが8.0と、比較的高いΔEを示した。これは、顔料の最表面に金被膜が位置していることにより、金被膜の反射が強く見えているためである。このため、比較例4の顔料では、下地の色が白色の場合、顔料そのものの色が強すぎて下地の色を覆い隠してしまう。
また、実施例1~4の干渉顔料は、干渉顔料を通じて下地の色が透けて見える。このため、実施例1~4の干渉顔料によれば、干渉顔料から透けて見える下地の色と干渉顔料が発現する干渉色とが合わさって、化粧料、塗料、インクまたは樹脂組成物の材料として使用した場合に、これらに淡い発色を呈することができる。
【0171】
(2)可視光反射率
波長480~680nmの可視光反射率について、実施例1の干渉顔料と比較例1の顔料、実施例2の干渉顔料と比較例2の顔料、実施例3および4の干渉顔料と比較例3の顔料とをそれぞれ比較すると、表6に示すように、金属膜を含む実施例の干渉顔料の可視光反射率はいずれも金属膜を含まない比較例1~3の顔料の可視光反射率よりも低かった。このことから、実施例1~4の干渉顔料および比較例4の顔料に含まれる金属膜が、下地からの反射光の一部を吸収しているといえる。
【0172】
(3)可視光透過率
実施例1~4の干渉顔料の可視光透過率は、表6に示すように、いずれも40%以上を超えており、比較例1~4の顔料と比較しても大差のない数値であった。これにより、金被膜または金被膜および銀被膜を形成したことによるによる干渉顔料の可視光透過率の低下はなく、形成された金被膜および銀被膜はいずれも透明であるといえる。
【0173】
以上の結果より、無機基材が金属膜および金属酸化物膜の順で被覆された実施例1~4の干渉顔料によれば、下地の色が白色の場合であっても、金属膜が、下地で反射した光の一部を適度に吸収することから、下地の色が黒色の場合と同様に鮮明な干渉色を呈することができるといえる。
また、上記表6に示すように、実施例1~4の干渉顔料および比較例4の顔料の可視光透過率は、金属膜を含むにも関わらず比較例1~3の顔料と同等のレベルを示していることから、金属膜により干渉顔料の可視光透過性が損なわれないことが確認できた。実施例1~4の干渉顔料は、十分な可視光透過性と鮮明な干渉色を呈することから、実施例1~4の干渉顔料によれば、干渉色と下地の白色が混じりあった淡い発色の干渉色を発現できるといえる。
【0174】
また、実施例1~4の干渉顔料によれば、無機基材と金属酸化物膜との間に平均厚みが5nm以下の金属膜を有するため、下地からの反射光の一部が金属膜で適度に吸収されることによって、より鮮明な干渉光を発現することができる。
【0175】
さらに、実施例3および4のように、無機基材表面が、金属酸化物膜、金属膜および金属酸化物膜の順で被覆された構成の干渉顔料であれば、実施例1および2の干渉顔料と比較して、干渉顔料の内部に異なる材質で形成された被膜の界面が増える。その結果、それらの界面でさらなる光の反射が生じる。このため、実施例3および4の干渉顔料は、実施例1および2の干渉顔料よりも多くの干渉が生じるため、より強度の強い干渉光を生じることができる。ゆえに、実施例3及び4の干渉顔料のように、無機基材表面を金属酸化物膜と金属膜とで交互に被覆した干渉顔料によれば、さらにより鮮明な干渉色を発現することができる。
【0176】
したがって、実施例1~4の干渉顔料は、従来よりも淡い干渉色を呈することができる。このため本発明の干渉顔料は、質感の高い、口紅、マニキュア、アイシャドウ等のパステル調化粧料、塗料、インク、または樹脂成形物の形成に用いられる樹脂組成物等の材料として有用である。
【0177】
<化粧品応用例>
(スティック状口紅)
実施例1~4の干渉顔料および比較例1~4の顔料を用いて、スティック状口紅を作製した。下記表7に示す組成の口紅ベース(油性基剤)に、下記表8に示す原材料(A、B、C)を加えて攪拌した後、型に入れて成型することによりスティック状口紅を製造した。製造された口紅について、パステル調の鮮明さを評価した。評価結果は、下記表8に示した。なお、下記表8における組成は、いずれも重量%で表示した。
<製法>
表8に示す各原材料および表7に示す組成の口紅ベースをステンレス容器に入れて加熱し、ワックス成分等が融解した状態にしてから攪拌機で均一になるまで攪拌して、混合した。混合物を減圧脱泡した後に金型に流し込み、室温まで冷却してスティック状の口紅を得た。
<評価方法>
20名のパネリストにより、実際に口紅を唇に塗布したときのパステル調の鮮明さを官能評価し、以下の評価基準により評価した。
<評価基準>
◎:20名中15名以上が良好と回答した。
○:20名中10~14名が良好と回答した。
△:10名中6~9名が良好と回答した。
×:20名中5名以下が良好と回答した。
【0178】
【0179】
【0180】
上記表8から明らかなように、実施例5~8のスティック状口紅は、パステル調の鮮明さが優れていた。
【0181】
(リップグロス)
実施例1~4の干渉顔料または比較例1~4の顔料を用いて、リップグロスを作製した。すなわち、下記表9に示す原材料を容器に入れ、80℃に加熱してよく撹拌して得られた混合物を容器に入れ、リップグロスを得た。なお、下記表9における組成は、いずれも配合量(質量部)で表示した。
次に、得られたリップグロスについて、パステル調鮮明さの評価を行った。使用対象者は女性パネラー20名とした。
<評価基準>
◎:20名中15名以上が良好と回答した。
○:20名中10~14名が良好と回答した。
△:10名中6~9名が良好と回答した。
×:20名中5名以下が良好と回答した。
【0182】
【0183】
上記表9から明らかなように、実施例9~12のリップグロスは、パステル調の鮮明さが優れていた。
【0184】
上記の通り、鱗片状の無機基材と、前記無機基材を被覆する透明金属膜と、前記金属膜を被覆する金属酸化物膜とを含む干渉顔料を用いれば、淡い色合を呈する干渉色を発現する化粧料を提供できる。