(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】平版印刷版を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
B41C 1/10 20060101AFI20220830BHJP
B41N 1/14 20060101ALI20220830BHJP
G03F 7/00 20060101ALI20220830BHJP
G03F 7/032 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
B41C1/10
B41N1/14
G03F7/00 503
G03F7/032
(21)【出願番号】P 2020502361
(86)(22)【出願日】2018-07-09
(86)【国際出願番号】 US2018041189
(87)【国際公開番号】W WO2019018143
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-05-14
(32)【優先日】2017-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000846
【氏名又は名称】イーストマン コダック カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 亮
(72)【発明者】
【氏名】石井 里志
【審査官】井出 元晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-107399(JP,A)
【文献】特開2005-349801(JP,A)
【文献】特開2006-047370(JP,A)
【文献】特開2007-144910(JP,A)
【文献】特開平06-318538(JP,A)
【文献】特開平02-063114(JP,A)
【文献】特開平10-020510(JP,A)
【文献】米国特許第06840176(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0279380(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41C 1/00-3/08
B41D 1/00-99/00
G03F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数のネガ型平版印刷版前駆体から1つ又は複数の平版印刷版を調製するための方法であって、
画像化手段と、前記画像化手段を完全に取り囲む包囲体とを備える画像化装置を提供する工程であり、その包囲体が、前記包囲体内への制御された空気流を供給するための空気取入ユニットを備える、工程、
前記包囲体内への前記制御された空気流から又は前記包囲体内の周囲空気からオゾンを除去するための手段を使用する工程、
1つ又は複数のネガ型平版印刷版前駆体を前記画像化手段に供給する工程であり、各ネガ型平版印刷版前駆体が、ネガ型画像形成可能層をその上に有する基板を含む、工程、
前記ネガ型画像形成可能層内に露光領域及び非露光領域を含む1つ又は複数の画像化された前駆体を提供するために前記1つ又は複数のネガ型平版印刷版前駆体を画像様露光させる工程、並びに
1つ又は複数の平版印刷版を形成するために前記ネガ型画像形成可能層内の前記非露光領域を除去するために前記1つ又は複数の画像化された前駆体を加工する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記画像化装置が、複数のネガ型平版印刷版前駆体の積層体と、自動ローディング装置とをさらに含み、
1つ又は複数のネガ型平版印刷版前駆体を前記画像化手段に供給する前記工程が、前記1つ又は複数のネガ型平版印刷版前駆体を前記積層体から前記画像化手段の上にロードするように前記自動ローディング装置を操作することにより実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記画像化装置が、前記包囲体としてハウジングを備え、オゾンを除去するための前記手段が前記ハウジング内にある、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記包囲体内の前記周囲空気から少なくとも50mol%のオゾンを除去する工程を含む、請求項1
乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記1つ又は複数のネガ型平版印刷版前駆体が赤外放射感受性である、請求項1
乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記1つ又は複数の画像化された前駆体を加工する前記工程がオンプレスであり、湿し水、平版印刷インキ、又は湿し水及び平版印刷インキの両方を使用する、請求項1
乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法により調製された前記1つ又は複数の平版印刷版
の新聞印刷用紙の平版印刷
のための使用
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前駆体の画像化感受性に悪影響を及ぼし得る周囲のオゾンのレベルが低下した環境中でネガ型平版印刷版前駆体から平版印刷版を調製するための方法に関する。この方法は、画像化装置の近くに保管され、画像化装置の上に自動的にロードされる前駆体の画像化中に特に有用である。そのような画像化された前駆体は、平版印刷操作中にオンプレスで容易に現像され得る。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ・ツー・プレート(CTP)画像化システムなどの画像化システムは当技術分野において既知であり、平版印刷版前駆体上に画像を記録するために使用される。そのような前駆体は、その上に1つ又は複数の放射感受性画像形成可能層が配置されている親水性表面を有するアルミニウムから典型的に構成された平面基板を含む。平版印刷では、画像部として既知の平版インキ受容領域が、平面基板の親水性表面に形成される。印刷版表面を水で湿らせて平版印刷インキを塗布すると、親水性領域は水を保持して平版印刷インキをはじき、平版インキ受容画像領域は平版印刷インキを受容して水をはじく。平版印刷インキは、おそらくブランケットローラーを使用して、画像が複製される材料の表面に転移される。
【0003】
平版印刷版前駆体は、「ポジ型」又は「ネガ型」とみなされる。適した放射への画像様露光時、層の露光領域がよりアルカリ溶液可溶になり、加工中に除去されて、印刷用平版インキを受容する非露光領域を残せるように、1つ又は複数の放射感受性層を有するポジ型平版印刷版前駆体が設計される。
【0004】
一方、適した放射への画像様露光時、層の露光領域は硬化し、加工中に除去されなくなるが、非露光領域は、湿し水、平版印刷インキ又はその両方の存在下で平版印刷中にオンプレスで実施され得る加工中に除去可能であるように、放射感受性層を有するネガ型平版印刷版前駆体が設計される。
【0005】
平版印刷業界の現在の最先端技術において、平版印刷版前駆体は通常、画像化された前駆体から不要な材料を除去する別の加工(現像)の前に、プレートセッター(CTP画像化の場合)として一般に既知の画像化装置内でレーザを使用して赤外放射などの画像化放射に画像様露光させる。メーカーは、典型的には、おそらく合紙により互いに分離された等しいサイズの要素の「積層体」で前駆体を供給する。前駆体の積層体は、パレット、又は支持し、運搬を簡単にする他の構造体に載せて配送することができる。あるいは、前駆体の積層体は、カートン、カセット、又は所望の保護及び使用のための向きを実現する他の保護容器の中に保持することができる。
【0006】
多くの画像化システムが、使用される一定量(積層体)の平版印刷版前駆体のための一体化された保管設備を設けており、画像化のための各前駆体を選択及びロードするための自動化された機構又は装置を設けている。例えば、積層体から個々の前駆体を自動的に取り上げ、適した放射により各前駆体が適切に画像様露光される画像化ドラムの上に個々の前駆体をロードするオートローダ(又はローディング装置若しくはプレート送り装置)と共にプレートセッターが使用され得る。画像化装置内の特徴のそのような組合せは、ある種の高生産印刷作業、例えば新聞印刷用紙の印刷においてかなりの自動化及びハイスループットを実現する。複数の平版印刷版前駆体の積層体は、オートローダを使用してロードする準備が整ったプレートセッターの近くの供給部内に配列され得る。
【0007】
米国特許第6840176号明細書(Armoni)には、画像化ユニットと、画像化ユニット(プレートセッター)内への自動ローディングのために並べられた平版印刷版前駆体の積層体とを含むCTPシステムが記載されている。平版印刷版をロードするための装置が米国特許第8739702号明細書(Korolikら)にも記載されており、この目的のためのプレート取扱いシステムが米国特許第7861940号明細書(Cummingsら)に記載されている。
【0008】
そのような自動印刷操作では、各前駆体内の放射感受性画像形成可能層を周囲条件から保護するカバーもなく平版印刷版前駆体がプレートセッターの近くで長期間保管されることが多い。
【0009】
ネガ型平版印刷版前駆体などのある種の平版印刷版前駆体は、プレートセッターの近く又はプレートセッターの内部で保護カバーなしで周囲のオゾンに曝されたとき画像化感受性を失いやすいことが明らかになっている。周囲のオゾン含有量は、典型的にはおよそ50ppbであり、電気装置の近くでは、そのような装置により発生するオゾンのために、より高くなり得る。オゾンの作用によるこの問題が見つかったため、画像化感受性が失われず、新聞印刷用紙の高速平版印刷が効率的に実現できるように、平版印刷業界のためにこの問題を解決することが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第6840176号明細書
【文献】米国特許第8739702号明細書
【文献】米国特許第7861940号明細書
【文献】米国特許出願第2011/104450号明細書
【文献】米国特許出願第2009/004595号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、1つ又は複数のネガ型平版印刷版前駆体から1つ又は複数の平版印刷版を調製するための方法であって、
画像化手段と、画像化手段を完全に取り囲む包囲体とを備える画像化装置を提供する工程であり、その包囲体が、包囲体内への制御された空気流を供給するための空気取入ユニットを備える、工程、
包囲体内への制御された空気流から又は包囲体内の周囲空気からオゾンを除去するための手段を使用する工程、
1つ又は複数のネガ型平版印刷版前駆体を画像化手段に供給する工程であり、各ネガ型平版印刷版前駆体が、ネガ型画像形成可能層をその上に有する基板を含む、工程、
ネガ型画像形成可能層内に露光領域及び非露光領域を含む1つ又は複数の画像化された前駆体を提供するために1つ又は複数のネガ型平版印刷版前駆体を画像様露光させる工程、並びに
1つ又は複数の平版印刷版を形成するためにネガ型画像形成可能層内の非露光領域を除去するために1つ又は複数の画像化された前駆体を加工する工程
を含む、方法を提供する。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態において、画像化装置は、複数のネガ型平版印刷版前駆体の積層体と、自動ローディング装置とをさらに含み、
1つ又は複数のネガ型平版印刷版前駆体を画像化手段に供給する工程が、1つ又は複数のネガ型平版印刷版前駆体を積層体から画像化手段の上にロードするように自動ローディング装置を操作することにより実施される。
【0013】
画像化装置の近く又は内部に保管された前駆体において画像化感受性が失われる記載した問題が見つかると、前駆体が曝される空気中のオゾンレベルを最小限に抑える特殊なオゾン除去手段により問題が解決できることが明らかになった。画像化装置及び自動ローディング装置と一緒に前駆体の1つ又は複数の積層体を囲むハウジング内で使用されるプレートセッター(画像化手段)の場合、オゾン除去手段は、例えばオゾンを除去するオゾン除去フィルターの形態で提供され得る。そのようなオゾン除去フィルターは、活性炭、オゾン分解触媒又はその両方を含み得る。オゾン除去手段は、画像化装置ハウジングの内部に置かれた1つ又は複数の空気浄化装置であり得る。画像化装置ハウジングの内部又は外部の周囲空気を処理するためにそのような空気浄化装置が使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】以下の本発明の実施例1に示す本発明の実施形態の略図である。
【
図2】以下の本発明の実施例2に示す本発明の別の実施形態の略図である。
【
図3】以下の本発明の実施例3に示す本発明のさらに別の実施形態の略図である。
【
図4】以下の本発明の実施例4に示す本発明のさらに別の実施形態の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の議論は本発明の様々な実施形態を対象とし、いくつかの実施形態が特定の使用にとって望ましい可能性があるが、開示されている実施形態は、以下で請求される本発明の範囲を限定するものと解釈されたり、みなされたりすべきではない。さらに、以下の開示は、任意の実施形態の議論において明示的に記載されているよりも広範囲の用途を有することを当業者なら理解するであろう。
【0016】
定義
本発明の実施において使用されるネガ型画像形成可能層及び配合物並びに他の材料の様々な構成要素を定義するために本明細書において使用されるとき、特に記載のない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は、1つ又は複数の構成要素を含む(すなわち、複数の指示対象を含む)ことを意図している。
【0017】
本出願に明示的に定義されていない各用語は、当業者に一般に受け入れられている意味を有すると理解されるべきである。用語の構成が、その文脈においてその用語を無意味又は実質的に無意味にする場合、その用語は、標準的な辞書の意味を有すると解釈されるべきである。
【0018】
本明細書に記載の様々な範囲内の数値の使用は、特に明記されていない限り、記載の範囲内の最小値及び最大値の両方の前に「約」という語が付いているかのような近似値である。このように、記載の範囲の上下のわずかな変動値を使用して、範囲内の値と実質的に同じ結果を得ることができる。さらに、これらの範囲の開示は、最小値と最大値の間のすべての値並びに範囲の終点を含む連続した範囲を意図している。
【0019】
文脈により特に示されていない限り、本明細書において使用されるとき、「ネガ型平版印刷版前駆体」、「前駆体」及び「平版印刷版前駆体」という用語は、本発明の実施形態を等しく指すことを意図する。
【0020】
「支持体」という用語は、本明細書において、様々な層が配置される親水性平面を有する親水性物品を指す「基板」を調製するために、その後に処理又はコーティングされ得るアルミニウム含有材料(ウェブ、ストリップ、シート、箔又は他の形態)を指すために使用される。
【0021】
本明細書において使用されるとき、「赤外放射吸収剤」という用語は、赤外領域の電磁放射を吸収する化合物又は材料を指し、典型的には、赤外領域に吸収極大を有する化合物又は材料を指す。
【0022】
本明細書において使用されるとき、「赤外領域」という用語は、少なくとも750nm以上の波長を有する放射を指す。ほとんどの場合、「赤外」という用語は、本明細書において少なくとも750nmから1400nm以下と定義される電磁スペクトルの「近赤外」領域を指すために使用される。
【0023】
ポリマーに関するあらゆる用語の定義を明確にするために、International Union of Pure and Applied Chemistry(「IUPAC」)により公表されている「Glossary of Basic Terms in Polymer Science」、Pure Appl.Chem.68,2287-2311(1996)を参照すべきである。しかし、本明細書に明示的に記載されているすべての定義が優先するものとみなされるべきである。
【0024】
本明細書において使用されるとき、「ポリマー」という用語は、多くの反応した小さいモノマーを互いに結合することによって生成される、比較的大きな分子量を有する化合物を表すために使用される。ポリマー鎖が成長するとき、ポリマー鎖はそれ自体の上にランダムに折りたたまれ、コイル状構造を形成する。溶媒の選択によっては、鎖長が長くなり、溶媒中に分散したポリマー粒子になるにつれて、ポリマーは不溶性になり得る。これらの粒子の分散は、本発明における使用について記載の放射感受性画像形成可能層内で非常に安定且つ有用になり得る。本発明において、特に記載のない限り、「ポリマー」という用語は非架橋材料を指す。したがって、非架橋ポリマー粒子は、溶媒和特性が良好な特定の有機溶媒に溶解し得る一方、架橋ポリマー粒子は、膨潤し得るが、強い共有結合によってポリマー鎖が結合されているため有機溶媒に溶解しないという点で、架橋ポリマー粒子は非架橋ポリマー粒子とは異なる。
【0025】
「コポリマー」という用語は、ポリマー骨格に沿って配列されている2つ以上の異なる繰返し単位又は反復単位から構成されるポリマーを指す。
【0026】
「骨格」という用語は、複数のペンダント基が結合され得るポリマー内の原子鎖を指す。そのような骨格の一例は、1つ又は複数のエチレン性不飽和重合性モノマーの重合から得られる「全炭素」骨格である。
【0027】
本明細書に記載のポリマーバインダー内の反復単位は一般に、重合プロセスにおいて使用される対応するエチレン性不飽和重合性モノマーから誘導され、このエチレン性不飽和重合性モノマーは、様々な商業的供給源から得たり、又は既知の化学合成法を使用して調製したりすることができる。
【0028】
本明細書において使用されるとき、「エチレン性不飽和重合性モノマー」という用語は、フリーラジカル重合又は酸触媒重合の反応及び条件を使用して重合可能な1つ又は複数のエチレン性不飽和(-C=C-)結合を含む化合物を指す。これらの条件下で重合可能でない不飽和-C=C-結合のみを有する化合物を指すことを意図しない。
【0029】
特に記載のない限り、「重量%」という用語は、組成物、配合物又は層の全固形分に基づく成分又は材料の量を指す。特に記載のない限り、その百分率は、乾燥した層或いは配合物又は組成物の全固形分のいずれについても同じであり得る。
【0030】
本明細書において使用されるとき、「層」又は「コーティング」という用語は、配置又は塗布された1つの層或いは順次配置又は塗布されたいくつかの層の組合せからなり得る。層が赤外放射感受性及びネガ型とみなされる場合、層は、(「放射吸収剤」について上述の通り)放射に対して感受性があり、且つ平版印刷版の形成においてネガ型である。
【0031】
使用
本発明の方法は、以下で説明する通り、適した現像剤を使用してオフプレスで、又は平版印刷インキ、湿し水、若しくは平版印刷インキ及び湿し水の組合せを使用してオンプレスで露光前駆体を画像様露光させ、加工することにより、平版印刷する準備が整った平版印刷版を調製するのに有用である。
【0032】
画像化装置及び使用
以下の本発明の実施例1~4に示される特定の実施形態を示す
図1~
図4を参照することによって本発明の方法はさらに理解されるが、本発明は、
図1~
図4に示した特定の画像化装置の使用に限定されない。
【0033】
図1では、画像化装置10が、典型的には以下でより詳しく説明するようなプレートセッターである画像化手段15と共に示されているが、ネガ型平版印刷版前駆体を画像化するために設計されている他の機械も可能である。画像化手段15は、典型的には、特定の画像化機械に特有の設計のハウジングであり得る包囲体20(又はハウジング)内に位置し、又はこれは特別に設計された部屋であり得る。包囲体20内には、未処理の周囲空気を取り込むための手段、例えば空気取入ユニット25があり、これは、1つ又は複数の空気入口を有するように設計することができて、一般に、包囲体20内への未処理の周囲空気の流れを実現及び制御するための手段(図示せず。)に接続されている。空気取入ユニット25を通って包囲体20に入る周囲空気流が矢印30で示されている。
【0034】
画像化手段15と接触し、その周りを循環する未処理の周囲空気がオゾン除去手段35を通過する可能性が高く、それによって包囲体20内を循環するオゾンの濃度を、例えば、包囲体20内の未処理の周囲空気中又は包囲体20に導入された制御された空気中のオゾンの当初の量に基づいて、少なくとも50mol%、又はさらに少なくとも80mol%低下させるように、未処理の周囲空気からオゾンを吸収する化学成分、例えば活性炭、オゾン分解化学物質(触媒)を含む設計された1つ又は複数のオゾン除去フィルターを含み得るオゾン除去手段35が、包囲体20(ハウジング)内の画像化手段15の近くに位置し得る。当業者なら、未処理の周囲空気中のオゾンの量(典型的には約50ppb)及び包囲体20に取り込まれる未処理の周囲空気の体積又は速度の知識に基づいて、この結果を達成するオゾン除去手段35を容易に設計することができる。
【0035】
複数のネガ型平版印刷版前駆体の積層体は、画像化装置10内の画像化手段15及びオゾン除去手段35の近くに位置するそのような前駆体のパレット40として示されている。複数の前駆体の積層体は、隣接する前駆体の間に配置された合紙を有し得るが、本発明の1つの利点は、パレット40上のネガ型平版印刷版前駆体が合紙なしで保管され得、包囲体20内を循環する周囲空気中のオゾンによって画像化感受性が著しく低下しないことである。
図1に示した実施形態では、画像化手段15の上にロードされる前に循環する周囲空気に曝される複数の前駆体のうちの1つ又は複数において、ネガ型画像化層化学に対する悪影響を低減することが可能である。したがって、オゾン除去手段35は、平版印刷版前駆体の両方のパレット40、オートローディング装置(図示せず。)及び画像化手段15に接近している。各画像化された前駆体は、画像化手段15から離れ、矢印45で示された方向に、適したオフプレス加工(現像)装置又はオンプレス現像のための印刷機まで移動され得る。加工条件、装置及び溶液は以下で詳しく説明する。
【0036】
図2は、
図1に示す画像化装置10の変更形態を示す。違いは、オゾン除去手段35が包囲体20の外部に位置し、処理された周囲空気のみが、処理された周囲空気を導く適した手段を通って、例えば、周囲空気流30(今では処理された空気)を制御し、導くのに有用な可撓空気管50又は同様の管若しくは導管を通って包囲体20に入ることが許されることである。
【0037】
図3は、本発明を実施するのに有用な特徴のさらに別の配列を示す。特徴は、
図1に示したものと同じである。ただし、未処理の周囲空気が空気取入ユニット25を通過した後、周囲空気流30(今では処理された空気)として包囲体20内を循環するように、オゾン除去手段35が空気取入ユニット25内に直接位置することを除く。そのような実施形態において、オゾン除去手段35は、各ユニット内の1つ又は複数のファンと、1つ又は複数のファンユニットの周囲空気流30の経路内に置かれた1つ又は複数のオゾン除去フィルターとを含む1つ又は複数のファンユニット内に組み込まれ得、1つ又は複数のファンユニットは、空気取入ユニット25の1つ又は複数の開口部(図示せず。)内に位置する。
【0038】
最後に、
図4に示した画像化装置10は、
図2に示したものに似ている。ただし、画像化装置10を含む部屋内に位置するオゾン除去手段35を使用して周囲空気が処理されることを除く。
【0039】
ネガ型平版印刷前駆体
本発明において有用なネガ型平版印刷版前駆体は、以下の構成要素及び材料を使用して構成され得る。典型的には、各前駆体は、放射画像化と、画像化層の非露光領域を除去するのに適した加工とに適した化学を含むネガ型画像形成可能層がその上に配置される基板を含む。
【0040】
基板:
前駆体内に存在する基板は一般に、親水性画像化面平面、すなわち少なくとも、基板の画像化面上の塗布されたネガ型画像形成可能層よりも親水性である表面を有する。基板は、平版印刷版前駆体を調製するために従来使用される任意の材料から構成され得る支持体を含む。
【0041】
1つの有用な基板は、物理的(機械的)グレイニング、電気化学的グレイニング又は化学的グレイニングと、その後の陽極酸化とによるいくつかのタイプの粗面化を含む、当技術分野において既知の技術を使用して処理され得るアルミニウム含有支持体から構成される。陽極酸化は、典型的には、リン酸又は硫酸、及びアルミニウム含有支持体上に所望の親水性酸化アルミニウム(又は陽極酸化物)層又はコーティングを形成する従来の手順を使用して行われ、その酸化アルミニウム(陽極酸化物)層は、様々な深さ及び形状の細孔開口部を持つ複数の細孔を有する単層又は複数の層の複合材を含み得る。したがって、そのようなプロセスは、以下で説明する通り形成され得るネガ型画像形成可能層の下に陽極酸化物層を形成する。
【0042】
陽極酸化アルミニウム支持体は、陽極酸化物の細孔を封じるため、若しくはその表面をさらに親水化するため、又はその両方のために、ポリ(ビニルホスホン酸)(PVPA)、ビニルホスホン酸コポリマー、ポリ[(メタ)アクリル酸]若しくはそのアルカリ金属塩、又はアクリル酸コポリマー若しくはそのアルカリ金属塩、リン酸塩及びフッ化物塩の混合物、又はケイ酸ナトリウムの水性溶液中の後処理など、既知の後陽極処理(PAT)プロセスを使用してさらに処理され得る。
【0043】
基板の厚さは変化し得るが、印刷による摩耗に十分耐え、印刷版に巻き付くのに十分薄い厚さであるべきである。有用な実施形態は、少なくとも100μmから700μm以下の厚さを有する処理されたアルミ箔を含む。基板の裏面(非画像化面)は、前駆体の取扱い及び「感触」を改善するために、帯電防止剤、滑り層又は艶消し層でコーティングされ得る。
【0044】
基板は一般に、シート材料の連続ロール(又は連続ウェブ)として形成され、これが、ネガ型画像形成可能層配合物及び任意選択で保護層配合物で適切にコーティングされ、続いて大きさに合わせてスリッティング又は切断(又はその両方)されることにより、4つの直角の角を有する形状又は形態(したがって、典型的には、正方形又は長方形の形状又は形態)を有する個々の平版印刷版前駆体が形成される。典型的には、切断された個々の前駆体は、平面又は概して平坦な長方形の形状を有する。
【0045】
ネガ型画像形成可能層:
前駆体は、その基板上のネガ型画像形成可能層を形成するための、(上述の)適した基板への以下で説明するネガ型放射感受性組成物の適した塗布によって形成され得る。一般に、ネガ型放射感受性組成物(及び得られる放射感受性画像形成可能層)は、必須成分として、(a)1つ又は複数のフリーラジカル重合性成分、(b)画像化放射へのネガ型画像形成可能層の露光時にフリーラジカルを与える開始剤組成物、及び(c)1つ又は複数の放射吸収剤、並びに任意選択で、前述の(a)、(b)及び(c)成分のすべてと異なるポリマーバインダーを含み、これらの必須成分及び任意選択の成分はすべて以下でより詳しく説明する。そのようなネガ型画像形成可能層は一般に前駆体内の最外層であるが、いくつかの実施形態において、ネガ型画像形成可能層上に配置された(トップコート又は酸素バリア層としても既知の)最も外側の水溶性の親水性保護層が存在し得る。
【0046】
放射感受性組成物(及びそれから調製されたネガ型画像形成可能層)は、1つ又は複数のフリーラジカル重合性成分を含み、そのそれぞれが、フリーラジカル開始を利用して重合され得る1つ又は複数のフリーラジカル重合性基(及び、いくつかの実施形態では、2つ以上のそのような基)を含む。いくつかの実施形態において、ネガ型画像形成可能層は、各分子内に同じ数又は異なる数のフリーラジカル重合性基を有する2つ以上のフリーラジカル重合性成分を含む。
【0047】
有用なフリーラジカル重合性成分は、1つ又は複数の別の重合性エチレン性不飽和基(例えば、2つ以上のそのような基)を有する1つ又は複数のフリーラジカル重合性モノマー又はオリゴマーを含み得る。同様に、そのようなフリーラジカル重合性基を有する架橋性ポリマーもまた使用され得る。ウレタンアクリレート及びメタクリレート、エポキシドアクリレート及びメタクリレート、ポリエステルアクリレート及びメタクリレート、ポリエーテルアクリレート及びメタクリレートなどのオリゴマー又はプレポリマー、並びに不飽和ポリエステル樹脂が使用され得る。いくつかの実施形態において、フリーラジカル重合性成分はカルボキシル基を含む。
【0048】
ネガ型画像形成可能層内の他の成分の「ポリマーバインダー」として機能する架橋性ポリマーマトリックスを生成するために、1つ又は複数のフリーラジカル重合性成分が、十分大きい分子量を有すること、又は十分な重合性基を有することが可能である。そのような実施形態において、(以下で説明する)別の非重合性又は非架橋性ポリマーバインダーは必要ではないが、存在してもよい。
【0049】
フリーラジカル重合性成分は、複数(2つ以上)の重合性基を有する尿素ウレタン(メタ)アクリレート又はウレタン(メタ)アクリレートを含む。各化合物が2つ以上の不飽和重合性基を有し、化合物のいくつかが3つ、4つ又はそれ以上の不飽和重合性基を有するような化合物の混合物が使用され得る。例えば、フリーラジカル重合性成分は、ヘキサメチレンジイソシアネートに基づくDESMODUR(登録商標)N100脂肪族ポリイソシアネート樹脂(Bayer Corp.(コネティカット州ミルフォード))をヒドロキシエチルアクリレート及びペンタエリトリトールトリアクリレートと反応させることによって調製され得る。有用なフリーラジカル重合性化合物には、Kowa Americanから入手できるNK Ester A-DPH(ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート)、並びにSartomer Company,Inc.から入手できるSartomer 399(ジペンタエリトリトールペンタアクリレート)、Sartomer 355(ジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート)、Sartomer 295(ペンタエリトリトールテトラアクリレート)及びSartomer 415[エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート]が含まれる。
【0050】
多数の他のフリーラジカル重合性成分が当技術分野において既知であり、A Reiser著、Photoreactive Polymers:The Science and Technology of Resists、Wiley、New York、1989、p.102-177、B.M.Monroe著(Radiation Curing:Science and Technology、S.P.Pappas編、Plenum、New York、1992、p.399-440)、並びにA.B.Cohen及びP.Walker著、「Polymer Imaging」(Imaging Processes and Material、J.M.Sturgeら(編)、Van Nostrand Reinhold、New York、1989、p.226-262)を含む多数の文献に記載されている。例えば、有用なフリーラジカル重合性成分はまた、欧州特許出願公開第1182033(A1)号明細書(Fujimakiら)に段落[0050]から、米国特許第6309792号明細書(Hauckら)、米国特許第6569603号明細書(Furukawa)及び米国特許第6893797号明細書(Munnellyら)に記載されている。他の有用なフリーラジカル重合性成分には、米国特許出願公開第2009/0142695号明細書(Baumannら)に記載のものが含まれる。
【0051】
1つ又は複数のフリーラジカル重合性成分は一般に、すべてネガ型画像形成可能層の全乾燥重量に基づいて、少なくとも10重量%から70重量%以下、又は典型的には少なくとも20重量%から50重量%以下の量でネガ型画像形成可能層内に存在する。
【0052】
さらに、ネガ型画像形成可能層はまた、所望の放射感受性を与える、又は放射を熱に変換する、又はその両方の1つ若しくは複数の放射吸収剤を含む。いくつかの実施形態において、1つ又は複数の放射吸収剤は、赤外放射感受性画像形成可能層内に位置する1つ又は複数の異なる赤外放射吸収剤であり、したがって、平版印刷版前駆体は、赤外放射を発するレーザによって画像化され得る。本発明はまた、およそ405nmに発光ピークを有する紫色レーザによる、およそ488nm若しくは532nmの発光ピークを有するものなどの可視レーザによる、又は400nm未満の著しい発光ピークを有するUV放射による画像化のために設計された平版印刷版前駆体に適用できる。そのような実施形態において、放射吸収剤は、放射源に適合するように選択することができて、多くの有用な例が当技術分野において既知である。
【0053】
1つ又は複数の放射吸収剤の総量は、放射感受性画像形成可能層の全乾燥重量に基づいて、少なくとも0.5重量%から30重量%以下、又は典型的には少なくとも1重量%から15重量%以下である。
【0054】
有用な赤外放射吸収剤は、顔料又は赤外放射吸収色素であり得る。適した色素はまた、例えば、米国特許第5208135号明細書(Patelら)、第6153356号明細書(Uranoら)、第6309792号明細書(Hauckら)、第6569603号明細書(Furukawa)、第6797449号明細書(Nakamuraら)、第7018775号明細書(Tao)、第7368215号明細書(Munnellyら)、第8632941号明細書(Balbinotら)及び米国特許出願公開第2007/056457号明細書(Iwaiら)に記載のものである。いくつかの赤外放射感受性実施形態において、赤外放射感受性画像形成可能層内の少なくとも1つの赤外放射吸収剤が、テトラフェニルボレートアニオンなどのテトラアリールボレートアニオンを含むシアニン色素であることが望ましい。そのような色素の例には、米国特許出願公開第2011/003123号明細書(Simpsonら)に記載のものが含まれる。
【0055】
低分子量IR吸収色素に加えて、ポリマーに結合したIR色素発色団も同様に使用され得る。さらに、IR色素カチオンも同様に使用され得、すなわち、このカチオンは、側鎖内にカルボキシ基、スルホ基、ホスホ基又はホスホノ基を含むポリマーとイオン相互作用する色素塩のIR吸収部分である。
【0056】
ネガ型画像形成可能層はまた、1つ又は複数のフリーラジカル重合性成分の重合を開始するために、適した放射へのその画像形成可能層の露光時にフリーラジカルを与える開始剤組成物を含む。開始剤組成物は、単一化合物、又は複数の化合物の組合せ若しくは系であり得る。
【0057】
開始剤組成物中の特に有用な化合物はオニウム塩であり、そのそれぞれが、分子内に少なくとも1個のオニウムイオン原子を有するカチオンとアニオンとを含む。オニウム塩中のオニウムイオン原子の例には、スルホニウム、ヨードニウム、アンモニウム、ホスホニウム及びジアゾニウムが含まれる。オニウム塩の例には、トリフェニルスルホニウム、ジフェニルヨードニウム、ジフェニルジアゾニウム、及び1つ又は複数の置換基をこれらの化合物のベンゼン環に導入することにより得られる誘導体が含まれる。適した置換基には、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基及びニトロ基が含まれるが、これらに限定されない。オニウム塩中のアニオンの例は、例えば、米国特許第7524614号明細書(Taoら)に記載されている。
【0058】
さらに、特開2002-082429号公報[又は米国特許出願公開第2002/0051934号明細書(Ippeiら)]の明細書の段落[0059]~[0060]に記載のオニウム塩又は(上述の)米国特許第7524614号明細書に記載のホウ酸ヨードニウム複合体もまた本発明において使用され得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、開始剤組成物は、ヨードニウム塩の組合せ、例えば、以下で説明する化合物A及び化合物Bの組合せなどの開始剤化合物の組合せを含み得る。
【0060】
化合物Aは、下に示す構造(I)により表すことができて、化合物Bと総称される1つ又は複数の化合物は、構造(II)又は(III)のいずれかにより下に表すことができる:
【化1】
【0061】
これらの構造(I)、(II)及び(III)において、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立して、置換又は非置換のアルキル基或いは置換又は非置換のアルコキシ基であり、これらアルキル基又はアルコキシ基のそれぞれが、2個~9個の炭素原子(又は特に3個~6個の炭素原子)を有する。これらの置換又は非置換のアルキル基及びアルコキシ基は、直鎖又は分岐鎖の形態であり得る。多くの有用な実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立して、3個~6個の炭素原子を有する独立して選ばれた置換又は非置換のアルキル基などの置換又は非置換のアルキル基である。
【0062】
さらに、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、R1又はR2とは異なり得;R1及びR2中の炭素原子の総数とR3及びR4中の炭素原子の総数との間の差は0~4(すなわち、0、1、2、3又は4)であり;R1及びR2中の炭素原子の総数(合計)とR5及びR6中の炭素原子の総数(合計)との間の差は0~4(すなわち、0、1、2、3又は4)であり;X1、X2及びX3は、同じか又は異なるアニオンである。
【0063】
有用なアニオンには、ClO4
-、PF6
-、BF4
-、SbF6
-、CH3SO3
-、CF3SO3
-、C6H5SO3
-、CH3C6H4SO3
-、HOC6H4SO3
-、ClC6H4SO3
-、及び以下の構造により表されるボレートアニオンが含まれるが、これらに限定されない:
B-(R1)(R2)(R3)(R4)
(式中、R1、R2、R3及びR4は独立して、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基(ハロゲン置換アリール基を含む。)、置換若しくは非置換のアルケニル基、置換若しくは非置換のアルキニル基、置換若しくは非置換のシクロアルキル基、又は置換若しくは非置換の複素環基を表し、或いはR1、R2、R3及びR4のうちの2つ以上が互いに結合されて、ホウ素原子を持つ置換若しくは非置換の複素環を形成し得、そのような環は、最大7個の炭素原子、窒素原子、酸素原子又は窒素原子を有する)。R1、R2、R3及びR4上の任意選択の置換基は、クロロ基、フルオロ基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基及びアセトキシ基を含み得る。いくつかの実施形態において、R1、R2、R3及びR4はすべて、置換若しくは非置換のフェニル基など、同じか又は異なる置換若しくは非置換のアリール基であり、或いは、これらの基はすべて非置換のフェニル基である可能性が高い。多くの実施形態において、X1、X2及びX3のうちの少なくとも1つが、同じか又は異なるアリール基を含むテトラアリールボレートアニオンであり、或いは特に有用な実施形態において、1つ若しくは複数がテトラフェニルボレートアニオンであり、又はX1、X2及びX3のそれぞれがテトラフェニルボレートアニオンである。
【0064】
希望するならば、構造(II)又は(III)により表される化合物Bの化合物の混合物が使用され得る。構造(I)、(II)及び(III)により表される多くの有用な化合物は、Sigma-Aldrichなどの商業的供給源から得たり、又は、既知の合成法及び容易に入手できる出発材料を使用して調製したりすることができる。
【0065】
開始剤組成物は一般に、ネガ型画像形成可能層内に、すべてネガ型画像形成可能層の全重量に基づいて、少なくとも3重量%から30重量%以下、又は典型的には少なくとも5重量%から18重量%以下、又はさらに少なくとも7重量%から15重量%以下の量の1つ若しくは複数の重合開始剤を与えるのに十分存在する。
【0066】
多くの実施形態において、ネガ型画像形成可能層が、述べた層内のすべての材料に対してポリマーバインダーとして働くポリマー材料をさらに含むことが任意選択ではあるが望ましい。そのような「ポリマーバインダー」は、上述の(a)、(b)及び(c)成分とは異なり、一般に非重合性且つ非架橋性である。
【0067】
そのようなポリマーバインダーは、例えば、米国特許第6899994号明細書(Huangら)に記載のものなどのポリアルキレンオキシドセグメントを含む側鎖を有する反復単位を含むポリマーを含む、当技術分野において既知のポリマーバインダー材料から選択され得る。他の有用なポリマーバインダーは、例えば国際公開第2015/156065号パンフレット(Kamiyaら)に記載のポリアルキレンオキシドセグメントを含む異なる側鎖を有する2つ以上のタイプの反復単位を含む。そのようなポリマーバインダーのいくつかはさらに、例えば米国特許第7261998号明細書(Hayashiら)に記載のもののようなペンダントシアノ基を有する反復単位を含み得る。
【0068】
いくつかの有用なポリマーバインダーは粒子状で、すなわち、分離した粒子(非凝集粒子)の形態で存在する。そのような分離した粒子は、少なくとも10nmから1500nm以下、又は典型的には少なくとも80nmから600nm以下の平均粒径を有し得、一般に、放射感受性画像形成可能層内に均一に分布している。他のポリマーバインダーは、少なくとも50nmから400nm以下の平均粒径を有する粒子として存在し得る。平均粒径は、電子走査顕微鏡画像内の粒子を測定すること、及び設定数の測定値を平均することを含む様々な既知の方法により決定され得る。
【0069】
いくつかの実施形態において、ポリマーバインダーは、ネガ型画像形成可能層の平均乾燥厚さ(t)未満の平均粒径を有する粒子の形態で存在する。マイクロメートル(μm)単位の平均乾燥厚さ(t)は、以下の式によって計算される:
t=w/r
(式中、wは、放射感受性画像形成可能層の乾燥コーティング被覆量(g/m2)、rは1g/cm3である。) 例えば、そのような実施形態では、ポリマーバインダーは、少なくとも0.05%から80%以下の、又は少なくとも10%から50%以下である可能性が高いネガ型画像形成可能層の平均乾燥厚さ(t)を備え得る。
【0070】
ポリマーバインダーはまた、複数(少なくとも2つ)のウレタン部分並びにポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を含む骨格を有し得る。
【0071】
有用なポリマーバインダーはまた、アクリレートエステル基、メタクリレートエステル基、ビニルアリール基及びアリル基などの重合性基を含むもの、並びにカルボン酸などのアルカリ可溶基を含むものを含む。これらの有用なポリマーバインダーのいくつかは、米国特許出願公開第2015/0099229号明細書(Simpsonら)及び米国特許第6916595号明細書(Fujimakiら)に記載されている。
【0072】
有用なポリマーバインダーは、様々な商業的供給源から得られ得、又は既知の手順及び出発材料を使用して、例えば、上述の刊行物に記載の通り調製され得る。
【0073】
存在するとき、全ポリマーバインダーは、ネガ型画像形成可能層の全乾燥重量に基づいて、少なくとも10重量%から70重量%以下の量で、又は少なくとも20重量%から50重量%以下である可能性が高い量でネガ型画像形成可能層内に存在し得る。
【0074】
当技術分野において既知の他のポリマー材料が、ネガ型画像形成可能層内に追加物として存在し得、そのようなポリマー材料は一般に、上述のポリマーバインダーよりも親水性である。そのような親水性の「第2の」ポリマーバインダーの例には、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、及び様々なけん化度のポリビニルアルコールが含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
ネガ型画像形成可能層への別の添加剤は、当技術分野において既知である色素前駆体及び発色現像剤を含み得る。有用な色素前駆体は米国特許第6858374号明細書(Yanaka)に記載されている。
【0076】
ネガ型画像形成可能層は、少なくとも2μm、又は少なくとも4μmから20μm以下の平均粒径を有する架橋ポリマー粒子を、例えば、(Hayakawaらによって2015年3月10日に出願された)米国特許出願第14/642876号明細書及び米国特許第8383319号明細書(Huangら)及び米国特許第8105751号明細書(Endoら)に記載の通り含み得る。
【0077】
ネガ型画像形成可能層はまた、分散剤、保湿剤、殺生物剤、可塑剤、被覆性若しくは他の特性のための界面活性剤、粘度上昇剤、pH調整剤、乾燥剤、消泡剤、保存剤、酸化防止剤、現像助剤、レオロジー改質剤、又はこれらの組合せ、或いは平版技術において従来の量で一般に使用されるその他の任意の追加物を含むがこれらに限定されない様々な他の任意選択の追加物を含み得る。ネガ型画像形成可能層はまた、米国特許第7429445号明細書(Munnellyら)に記載の一般に250を超える分子量を有するホスフェート(メタ)アクリレートを含み得る。
【0078】
平版印刷版前駆体の調製:
本発明の実施において使用されるネガ型平版印刷版前駆体は、以下のように形成され得る。上述の材料を含むネガ型画像形成可能層配合物は、スピンコーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング、スロットコーティング、バーコーティング、ワイヤロッドコーティング、ローラーコーティング又は押出ホッパーコーティングなどの任意の適した装置及び手順を使用して、上述の通り、通常連続基板ウェブとしての適した基板の親水性表面に塗布され得る。そのような配合s物はまた、適した基板上に吹付により塗布され得る。典型的には、ネガ型画像形成可能層配合物は、適した湿潤被覆量で塗布されると、当技術分野において既知の適した方法で乾燥されて、以下で述べる所望の乾燥被覆量が得られる。
【0079】
製造方法は、典型的には、適した有機溶媒又はその混合物[メチルエチルケトン(2-ブタノン)、メタノール、エタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、iso-プロピルアルコール、アセトン、γ-ブチロラクトン、n-プロパノール、テトラヒドロフラン、及び当技術分野において容易に分かるその他のもの、並びにこれらの混合物など]中でネガ型画像形成可能層の化学に必要な様々な成分を混合する工程、得られるネガ型画像形成可能層配合物を連続基板ウェブに塗布する工程、及び適した乾燥条件下の蒸発により(1つ又は複数の)溶媒を除去する工程を含む。適切な乾燥後、連続基板ウェブ上のネガ型画像形成可能層の乾燥コーティング被覆量は一般に、少なくとも0.1g/m2から4g/m2以下、又は少なくとも0.4g/m2から2g/m2以下であるが、希望するならば他の乾燥被覆量が使用され得る。
【0080】
いくつかの実施形態において、この方法において使用されるネガ型画像形成可能層配合物は、1つ又は複数の放射吸収剤が1つ又は複数の赤外放射吸収剤である赤外放射感受性画像形成可能層配合物である。
【0081】
画像化及びオフプレス現像
使用時、ネガ型平版印刷版前駆体は、ネガ型画像形成可能層内に存在する放射吸収剤に応じて、適した露光放射源に露光され得る。ネガ型画像形成可能層が赤外放射吸収剤を含むいくつかの実施形態において、対応する平版印刷版前駆体は、少なくとも750nmから1400nm以下、又は少なくとも800nmから1250nm以下の範囲内の大量の赤外放射を発する赤外レーザによって画像化され得る。他の実施形態において、ネガ型平版印刷版前駆体は、画像化放射の適した源を使用した電磁スペクトルのUV領域又は可視領域において画像化され得る。
【0082】
例えば、画像化は、放射発生レーザ(又はそのようなレーザのアレイ)による画像化又は露光放射を使用して実施され得る。画像化はまた、希望するならば複数の波長の画像化放射を同時に使用して実施され得る。前駆体の露光に使用されるレーザは、ダイオードレーザシステムの信頼性及び低メンテナンス性のために、通常はダイオードレーザであるが、気体レーザ又は固体レーザなどの他のレーザもまた使用され得る。放射画像化の出力、強度及び露光時間の組合せは、当業者には容易に明らかになるであろう。
【0083】
画像化装置(又は画像化手段)は、フラットベッドレコーダとして、或いはドラムレコーダとして、ドラムの円筒形の内面又は外面に取り付けられた放射感受性平版印刷版前駆体と共に構成され得る。有用な画像化装置の一例は、約830nmの波長の放射を発するレーザダイオードを含むKODAK(登録商標)Trendsetterプレートセッター(Eastman Kodak Company)及びNEC AMZISetter Xシリーズ(NEC Corporation、日本)のモデルとして入手できる。他の適した画像化装置には、810nmの波長で動作するScreen PlateRite 4300シリーズ若しくは8600シリーズプレートセッター(Screen USA(イリノイ州シカゴ)から入手可能)又はPanasonic Corporation(日本)製サーマルCTPプレートセッターが含まれる。
【0084】
赤外放射源が使用される実施形態において、画像化エネルギーは、放射感受性画像形成可能層の感受性に応じて、少なくとも30mJ/cm2から500mJ/cm2以下、典型的には少なくとも50mJ/cm2から300mJ/cm2以下であり得る。
【0085】
画像様露光させた後、ネガ型画像形成可能層内に露光領域及び非露光領域を有する露光したネガ型平版印刷版前駆体は、非露光領域を除去するために適した方法で加工され得る。
【0086】
加工は、同じか又は異なる加工溶液の1つ又は複数の連続する塗布(処理工程又は現像工程)において任意の適した現像剤を使用してオフプレスで実施され得る。そのような1つ又は複数の連続する加工処理は、ネガ型画像形成可能層の非露光領域を除去して基板の親水性表面を露出させるには十分な時間だが、同じ層内で硬化した露光領域を大量に除去するには十分長くない時間、露光前駆体を使用して実施され得る。平版印刷中、露出した親水性基板表面はインキをはじくが、残りの露光領域は平版印刷インキを受容する。オフプレスでのそのような加工の後、1つ又は複数の平版印刷版は、新聞印刷用紙の平版印刷に使用され得る。
【0087】
そのようなオフプレス加工の前に、露光前駆体に「予熱」プロセスを施して、ネガ型画像形成可能層内の露光領域をさらに硬化し得る。そのような任意選択の予熱は、任意の既知のプロセス及び装置を使用して、一般に少なくとも60℃から180℃以下の温度で実施され得る。
【0088】
この任意選択の予熱の後、又は予熱の代わりに、露光前駆体を洗浄し(すすぎ)得る。そのような任意選択の洗浄(又はすすぎ)は、任意の適した水性溶液(水又は界面活性剤の水性溶液など)を適した温度で、当業者には容易に明らかになるであろう適した時間使用して実施され得る。
【0089】
有用な現像剤は、通常の水であり得、又は配合された水性溶液であり得る。配合された現像剤は、界面活性剤、有機溶媒、アルカリ剤及び表面保護剤から選択される1つ又は複数の成分を含み得る。例えば、有用な有機溶媒には、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドとのフェノールの反応生成物[エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)など]、ベンジルアルコール、6個以下の炭素原子を有する酸とエチレングリコールのエステル及びプロピレングリコールのエステル、並びに6個以下の炭素原子を有するアルキル基とエチレングリコールのエーテル、ジエチレングリコールのエーテル及びプロピレングリコールのエーテル(2-エチルエタノール及び2-ブトキシエタノールなど)が含まれる。
【0090】
本発明を実施するのに有用な現像剤の例は、TN-D1(Kodak Japan Ltd.)、TN-D2(Kodak Japan Ltd.)及びHN-D(FUJIFILM Global Graphic Systems Co,Ltd.)として入手できる。これらの現像剤はすべて、高濃度で供給され、指定の希釈率で水で希釈されたとき、使用することができる。
【0091】
現像の後、露光及び現像された前駆体を洗浄して(すすいで)残留現像剤溶液を除去し得、次いで、平版印刷版上の平版画像を汚染又は損傷から(例えば、酸化、指紋、ダスト又は擦り傷から)保護(又は「ガム引き」)できるガム引き溶液で処理し得る。
【0092】
有用なガム引き溶液の例は、LNF-11(Kodak Japan Ltd.)、LNF-12(Kodak Japan Ltd.)及びHN-GV(FUJIFILM Global Graphic Systems Co,Ltd.)として入手できる。すべてのガム引き溶液は、高濃度で供給され、指定の希釈率で水で希釈されたとき、使用することができる。
【0093】
場合によっては、非露光領域を除去することによって画像化された前駆体を現像し、且つ、画像化及び現像(加工)された前駆体印刷表面全体にわたって保護層又はコーティングを設けるために水性の加工溶液がオフプレスで使用され得る。本実施形態において、水性溶液は、印刷版上の平版画像を汚染又は損傷から(例えば、酸化、指紋、ダスト又は擦り傷から)保護(又は「ガム引き」)するガムのようにある程度振る舞う。
【0094】
記載のオフプレス加工及び任意選択の乾燥の後、ブランケット、或いはUV又は可視放射へのフラッド様露光あり、又はなしでの平版印刷版のさらなるベークは任意選択である。印刷は、露光及び加工した平版印刷版を適した印刷機上に置き、適した方法で平版印刷インキ及び湿し水を平版印刷版の印刷表面に塗布することによって実施され得る。湿し水は、露光工程及び加工工程により露出した親水性基板の表面に吸収され、平版インキは、画像形成可能層の残りの(露光)領域に吸収される。次いで、平版インキは、適した受容材料(布、紙、金属、ガラス又はプラスチックなど)に転移され、その上に画像の所望の刷りを与える。希望するならば、平版インキを平版印刷版から受容材料(例えば、用紙)に転移させるために中間の「ブランケット」ローラーが使用され得る。
【0095】
オンプレス現像
オフプレス現像の代替として、露光した平版印刷版前駆体は、平版印刷インキ、湿し水、又は平版印刷インキ及び湿し水の組合せを使用してオンプレスで現像され得る。そのような実施形態では、画像化された放射感受性平版印刷版前駆体が印刷機上に取り付けられ得、印刷操作が、例えば新聞印刷用紙の平版印刷中に始まる。ネガ型画像形成可能層内の非露光領域は、初期の印刷刷りが行われるとき、適した湿し水、平版印刷インキ又はその両方の組合せによって除去される。水性の湿し水の典型的な原料には、pH緩衝剤、減感剤、界面活性剤及び湿潤剤、保湿剤、低沸点溶媒、殺生物剤、発泡防止剤並びに金属イオン封鎖剤が含まれる。湿し水の代表例は、Varn Litho Etch 142W+Varn PAR(アルコール代替)(Varn International(イリノイ州アディソン)から入手可能)である。
【0096】
枚葉印刷機での典型的な印刷機の立上げにおいて、湿しローラーがまず係合して取り付けられた画像化された前駆体に湿し水を供給し、少なくとも非露光領域内の露光した放射感受性画像形成可能層を膨潤させる。数回転した後、インキローラーが係合して(1つ又は複数の)平版印刷インキを供給し、平版印刷版の印刷表面全体を覆う。典型的には、インキローラーが係合してから5~20回転以内で印刷シートが供給され、生成されたインキ壺のエマルションを使用して、平版印刷版からネガ型画像形成可能層の非露光領域が除去されると共に、存在する場合はブランケット胴上の材料が除去される。
【0097】
平版印刷前駆体のオンプレス現像性は、前駆体が、ネガ型画像形成可能層内に1つ又は複数のポリマーバインダーを含み、そのポリマーバインダーのうちの少なくとも1つが、少なくとも50nmから400nm以下の平均径を有する粒子として存在するとき、特に有用である。
【0098】
本発明は、少なくとも以下の実施形態及びこれらの組合せを提供するが、当業者なら本開示の教示から理解するように、特徴の他の組合せは本発明内とみなされる。
【0099】
1.1つ又は複数のネガ型平版印刷版前駆体から1つ又は複数の平版印刷版を調製するための方法であって、
画像化手段と、画像化手段を完全に取り囲む包囲体とを備える画像化装置を提供する工程であり、その包囲体が、包囲体内への制御された空気流を供給するための空気取入ユニットを備える、工程、
包囲体内への制御された空気流から又は包囲体内の周囲空気からオゾンを除去するための手段を使用する工程、
1つ又は複数のネガ型平版印刷版前駆体を画像化手段に供給する工程であり、各ネガ型平版印刷版前駆体が、ネガ型画像形成可能層をその上に有する基板を含む、工程、
ネガ型画像形成可能層内に露光領域及び非露光領域を含む1つ又は複数の画像化された前駆体を提供するために1つ又は複数のネガ型平版印刷版前駆体を画像様露光させる工程、並びに
1つ又は複数の平版印刷版を形成するためにネガ型画像形成可能層内の非露光領域を除去するために1つ又は複数の画像化された前駆体を加工する工程
を含む、方法。
【0100】
2.画像化装置が、複数のネガ型平版印刷版前駆体の積層体と、自動ローディング装置とをさらに含み、
1つ又は複数のネガ型平版印刷版前駆体を画像化手段に供給する工程が、1つ又は複数のネガ型平版印刷版前駆体を積層体から画像化手段の上にロードするように自動ローディング装置を操作することにより実施される、実施形態1に記載の方法。
【0101】
3.複数のネガ型平版印刷版前駆体が、合紙なしで積層体内に配列されている、実施形態2に記載の方法。
【0102】
4.オゾンを除去するための手段が、1つ又は複数のオゾン除去フィルターを備える、実施形態1から3のいずれか1つに記載の方法。
【0103】
5.画像化装置が、包囲体としてハウジングを備え、オゾンを除去するための手段がハウジング内にある、実施形態1から4のいずれか1つに記載の方法。
【0104】
6.包囲体内の周囲空気から少なくとも50mol%のオゾンを除去する工程を含む、実施形態1から5のいずれか1つに記載の方法。
【0105】
7.包囲体内への制御された空気流から少なくとも50mol%のオゾンを除去する工程を含む、実施形態1から6のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
8.1つ又は複数のネガ型平版印刷版前駆体が、最外層であるネガ型画像形成可能層を含む、実施形態1から7のいずれか1つに記載の方法。
【0107】
9.1つ又は複数のネガ型平版印刷版前駆体が赤外放射感受性である、実施形態1から8のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
10.ネガ型画像形成可能層が、
(a)1つ又は複数のフリーラジカル重合性成分、
(b)放射へのネガ型画像形成可能層の露光時にフリーラジカルを与える開始剤組成物、
(c)1つ又は複数の放射吸収剤、並びに任意選択で、
(d)(a)、(b)及び(c)のすべてと異なるポリマーバインダー
を含む、実施形態1から9のいずれか1つに記載の方法。
【0109】
11.ネガ型画像形成可能層が赤外放射感受性であり、1つ又は複数の放射吸収剤が、少なくとも1つの赤外放射吸収剤を含む、実施形態10に記載の方法。
【0110】
12.前記1つ又は複数の画像化された前駆体を加工する前記工程がオンプレスであり、湿し水、平版印刷インキ、又は湿し水及び平版印刷インキの両方を使用する実施形態1から11のいずれか1つに記載の方法。
【0111】
13.加工中及び加工後に前記1つ又は複数の平版印刷版を平版印刷に使用する工程をさらに含む、実施形態1から12のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
14.前記 1つ又は複数の平版印刷版を新聞印刷用紙の平版印刷に使用する工程を含む、実施形態13に記載の方法。
【0113】
15.前記1つ又は複数の画像化された前駆体をオフプレスで加工する工程、及び
前記1つ又は複数の平版印刷版を新聞印刷用紙の平版印刷に使用する工程
を含む、実施形態1から11のいずれか1つに記載の方法。
【0114】
以下の実施例は、本発明の実施を示すために提示されており、いかなる意味においても限定することを意図しない。
【0115】
印刷版前駆体の調製:
電気化学的に粗面化された基板を調製し、ネガ型平版印刷版前駆体を調製するための典型的な製造条件下、陽極酸化リン酸で1つの平面をさらに処理した。陽極層の厚さは、各基板について500nmであった。次いで、各基板をポリ(アクリル酸)水性溶液でコーティングしてその陽極酸化表面を覆い、次いで乾燥して、被覆率0.03g/m2の親水性層を形成した。次いで、以下の表Iに示したネガ型画像形成可能層配合物を各基板の親水性層上でコーティングし、110℃で40秒間乾燥して、乾燥被覆量0.9g/m2のネガ型画像形成可能層を形成した。
【0116】
【0117】
【0118】
本発明の実施例1:
ネガ型平版印刷版前駆体500枚のパレットを調製し、
図1に示す通り画像化手段としてプレートセッター(Panasonic製Plateliner GX-9700)を含む画像化装置のハウジング(包囲体)の内部に置いた。活性炭フィルター(Iris Oyama製PMAC-100)を含むオゾン除去手段(又は空気清浄化ユニット)を設置し、ハウジングの内部で動作させた。一番上の前駆体ネガ型画像形成可能層をハウジング内の周囲空気に曝して、ネガ型平版印刷版前駆体500枚のパレットを所定の位置に36時間放置した。
【0119】
このように保管したネガ型平版印刷版前駆体を以下で説明する通りプレートセッター内で画像様露光させた。結果を以下の表IIに示す。
【0120】
本発明の実施例2:
本発明の実施例1を繰り返した。ただし、
図2に示す通りオゾン除去手段(空気清浄化ユニット)を設置し、画像化装置のハウジング(包囲体)の外部で動作させ、オゾンが除去された得られた浄化空気を可撓空気管を通じて画像化手段の空気取入ユニットに送ったことを除く。
【0121】
このように保管したネガ型平版印刷版前駆体を以下で説明する通りプレートセッター内で画像様露光させた。結果を以下の表IIに示す。
【0122】
本発明の実施例3:
本発明の実施例1を繰り返した。ただし、
図3に示す通り、オゾン除去手段(空気清浄化ユニット)が、空気取入ユニットの経路内に置かれた活性炭フィルターであったことを除く。
【0123】
このように保管したネガ型平版印刷版前駆体を以下で説明する通りプレートセッター内で画像様露光させた。結果を以下の表IIに示す。
【0124】
本発明の実施例4:
本発明の実施例2を繰り返した。ただし、
図4に示す通り、可撓空気管を取り外し、同じ部屋内の画像化装置の近くにオゾン除去手段(空気清浄化ユニット)を設置し、動作させたことを除く。
【0125】
このように保管したネガ型平版印刷版前駆体を以下で説明する通りプレートセッター内で画像様露光させた。結果を以下の表IIに示す。
【0126】
比較例1:
本発明の実施例1を繰り返した。ただし、オゾン除去手段(空気清浄化ユニット)を設置しなかった、又は動作させなかったことを除く。一番上の前駆体ネガ型画像形成可能層を周囲空気に曝して、ネガ型平版印刷版前駆体のパレットを所定の位置に36時間放置した。
【0127】
このように保管したネガ型平版印刷版前駆体を以下で説明する通りプレートセッター内で画像様露光させた。結果を以下の表IIに示す。
【0128】
IR感受性の評価:
Magnus800プレートセッター(Kodak Japan Ltd.)を使用して本発明の実施例1~4及び比較例1において使用した複数の前駆体の各パレットから一番上及び上から二番目のネガ型平版印刷版前駆体を赤外放射に画像様露光させ、26mJ/cm2から124mJ/cm2までの6ステップの赤外放射エネルギーを使用して、前駆体のそれぞれの上の露光させた6つのパッチを得た。各前駆体上のネガ型画像形成可能層の非露光領域を保持するのに必要な最低のエネルギーを示すために、水道水の存在下で画像様露光前駆体にインキを手塗りした。この最低のエネルギーをIR感受性として記録し、以下の表IIに示した。
【0129】
【0130】
表IIのデータは、本発明の実施例1~3では、
図1~
図3に示した画像化装置の配列において、IR感受性に対する周囲のオゾンの影響から一番上の前駆体が十分に保護されたことを示す。本発明の実施例4では、
図4に示した画像化装置の配列において、脱オゾン処理された空気が周囲の部屋の空気で希釈されたため、IR感受性に対する周囲のオゾンの影響からの一番上の前駆体の保護が同程度には高くなかった。比較例1において保管及び試験したネガ型平版印刷版前駆体は、前駆体の周りの高濃度のオゾンのために、赤外放射に対する感受性がなかった。
【符号の説明】
【0131】
10 画像化装置
15 画像化手段(プレートセッター)
20 包囲体
25 空気取入ユニット
30 空気流の方向
35 オゾン除去手段
40 複数のネガ型平版印刷版前駆体のパレット
45 現像のために移動する画像化された前駆体の方向
50 可撓空気管