IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アモーレパシフィックの特許一覧

特許7132326トリメトキシフェニル化合物を含む脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用組成物
<>
  • 特許-トリメトキシフェニル化合物を含む脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用組成物 図1
  • 特許-トリメトキシフェニル化合物を含む脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用組成物 図2
  • 特許-トリメトキシフェニル化合物を含む脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用組成物 図3
  • 特許-トリメトキシフェニル化合物を含む脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用組成物 図4
  • 特許-トリメトキシフェニル化合物を含む脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用組成物 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】トリメトキシフェニル化合物を含む脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/351 20060101AFI20220830BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20220830BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220830BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20220830BHJP
   A61K 31/59 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
A61K31/351
A61P43/00 111
A61P17/00
A61K8/49
A61Q19/00
A23L33/10
A61K31/59
A61K8/67
A61P43/00 121
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020517520
(86)(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 KR2018011124
(87)【国際公開番号】W WO2019066380
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】10-2017-0127407
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】100, Hangang-daero, Yongsan-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク, ピル ジュン
(72)【発明者】
【氏名】イ, テ リョン
(72)【発明者】
【氏名】チョ, ウンギョン
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-502955(JP,A)
【文献】特表2005-503430(JP,A)
【文献】特開平03-101609(JP,A)
【文献】国際公開第2019/059555(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/095098(WO,A1)
【文献】特開平08-012664(JP,A)
【文献】特開2014-159429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 8/00
A23L 33/10
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表されるトリメトキシフェニル化合物、その薬学的に許容可能な塩、その水和物又はその溶媒和物を有効成分として含む、脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用組成物。
【化1】
【請求項2】
前記有効成分の濃度が、組成物の全体積を基準に1~100μMであることを特徴とする請求項1に記載の脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用組成物。
【請求項3】
当該組成物は、薬学組成物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用組成物。
【請求項4】
当該組成物は、化粧料組成物であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用組成物。
【請求項5】
当該組成物は、皮膚外用剤であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用組成物。
【請求項6】
当該組成物は、食品組成物であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用組成物。
【請求項7】
当該組成物は、ビタミンDを更に含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用組成物。
【請求項8】
当該組成物は、肌のボリューム又は弾力増進用のものである、請求項1~7のいずれか一項に記載の脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、トリメトキシフェニル化合物、その異性体、その薬学的に許容可能な塩、その水和物又はその溶媒和物を含む脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用組成物が開示される。
【背景技術】
【0002】
皮膚の基本的な構造は皮下脂肪組織によって保持され、該皮下脂肪組織は肌のボリュームや弾力を左右する役割をする。したがって、皮膚の外郭層にある真皮や表皮に弾力を与えるという既存の方法よりは脂肪組職の体積を増加させるという方法のほうが、肌のボリュームや弾力を保たせ得る根本的な解決策になると考えられる。
【0003】
具体的に、人体には老化が進むにつれて肌にしわが生成され、同時に肌の弾力もまた低下するようになる。しわの生成や弾力の低下といった皮膚老化は、皮膚の構成要素であるコラーゲン(collagen)、エラスチン(elastin)のような皮膚繊維の分解及び減少とともに脂肪細胞の活性低下、また、これによる脂肪滴(lipid droplet)の減少によって生じる複合現象である。このため、人の脂肪細胞の分化を促進して脂肪滴を生成及び蓄積することができたら、肌のしわ改善や弾力を改善することができるようになる。
【0004】
一方、アディポネクチンは、脂肪細胞から特異的に分泌されるタンパク質ホルモンであるアディポカイン(adipokine)の一種であって、インスリンの機能を増進させ且つインスリン抵抗性を誘導することで、高血糖、高インスリン症、肥満、動脈硬化のような心血管疾患などを調節するうえで重要な役割をする。また、アディポネクチンは、癌細胞の転移と炎症反応を抑制する機能がある。
【0005】
特に、アディポネクチンは、角質細胞の増殖だけではなく、皮膚でフィラグリン(filaggrin)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)と細胞外基質の発現を促進することで、傷治療、線維化抑制、肌しわ改善、保湿などの機能を遂行する。
【0006】
しかしながら、このような脂肪細胞の分化促進又はアディポネクチンの生成促進のための物質が、実際に化粧料組成物などに含まれ人体内で十分な程度の肌ボリュームや弾力度増加効能を示すには、その効果が依然として微々たるものであったため、ユーザに対して化粧料組成物の使用による高い満足感を与えるには至っていない。
そこで、ヒト由来の皮下脂肪に対する実験結果を通じて、より改善した効能の脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進組成物に関する開発が必要な実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国公開特許第10-2011-0000433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記で検討したように、脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進は、肌のボリュームや弾力保持にあたって非常に重要な因子である。これに関して、本発明者らは、新規なトリメトキシフェニル化合物を含む組成物が脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成を促進させることを実験的に確認することで本発明を完成するに至った。
【0009】
したがって、本発明の目的は、一側面において、トリメトキシフェニル化合物、その異性体、その薬学的に許容可能な塩、その水和物又はその溶媒和物を有効成分として含む、脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一側面において、本発明は、トリメトキシフェニル化合物、その異性体、その薬学的に許容可能な塩、その水和物又はその溶媒和物を有効成分として含む、脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
一側面において、本発明に係るトリメトキシフェニル化合物、その異性体、その薬学的に許容可能な塩、その水和物又はその溶媒和物を有効成分として含む、脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用組成物は、脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成を促進させ、このような効果により、肌のボリュームや弾力を増進のための薬学組成物、化粧料組成物又は皮膚外用剤として有効に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の具現例に係るトリメトキシフェニル化合物(以下、PAC-16742と称する)を含む組成物、及び陽性対照群であるコウジ酸(Kogic acid)、ケイ皮酸(Cinammic acid)、及びグリベンクラミド(glibenclamide)をヒト由来皮下脂肪細胞に処理して増殖及び細胞毒性の分析結果を示した図である。
図2】ヒト由来皮下脂肪細胞に本発明の具現例に係るトリメトキシフェニル化合物(図中でPAC-16742と表示)を含む組成物、及び陽性対照群であるコウジ酸(Kogic acid)、ケイ皮酸(Cinammic acid)、及びグリベンクラミド(glibenclamide)の処理後、増殖した脂肪細胞量をオイルレッドO(Oil Red O、ORO)染色して確認した結果を示した図である。
図3】ヒト皮下脂肪細胞に本発明の具現例に係るトリメトキシフェニル化合物(図中でPAC-2と表示)を含む組成物、及び陽性対照群であるコウジ酸(Kogic acid)、ケイ皮酸(Cinammic acid)、及びグリベンクラミド(glibenclamide)を処理後、これらのアディポネクチン(図中でAdipoqと表示)mRNA発現程度(mRNA expression of adiponectin)を測定した結果を示した図である。
図4】ヒト皮下脂肪細胞に本発明の具現例に係るトリメトキシフェニル化合物(図中でPAC-2と表示)を含む組成物、及び陽性対照群であるコウジ酸(Kogic acid)、ケイ皮酸(Cinammic acid)、及びグリベンクラミド(glibenclamide)を処理後、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA assay)によって、アディポネクチンの生成量を測定した結果を示した図である。
図5】本発明の具現例に係るトリメトキシフェニル化合物(PAC-16742、以下、PAC-2と称する)のNMR結果を示した図である(Sample Name 742と表示)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
用語の定義
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」としたとき、これは、特に断りのない限り、他の構成要素を除外することではなく、他の構成要素を更に含んでよいことを意味する。
【0014】
例示的な具現例の説明
以下、本発明を詳しく説明する。
【0015】
本発明の例示的な具現例では、本発明は、下記の化学式1で表されるトリメトキシフェニル化合物、その異性体、その薬学的に許容可能な塩、その水和物又はその溶媒和物を有効成分として含む、脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用組成物である。
【0016】
【化1】
【0017】
前記化学式1で表されるトリメトキシフェニル化合物のIUPAC名は、3-(3,4,5-トリメトキシ-フェニル)-アクリル酸 5-ヒドロキシ-4-オキソ-4H-ピラン-2-イルメチルエステル(3-(3,4,5-Trimethoxy-phenyl)-acrylic acid 5-hydroxy-4-oxo-4H-pyran-2-ylmethyl ester)である。
【0018】
本明細書において「異性体」は、特に光学異性体(optical isomers)(例えば、本質的に純粋なエナンチオマー(essentially pure enantiomers)、本質的に純粋なジアステレオマー(essentially pure diastereomers)又はそれらの混合物)だけでなく、配座異性体(conformation isomers)(すなわち、1つ以上の化学結合のその角度のみ異なる異性体)、位置異性体(position isomers)(特に、互変異性体(tautomers))、又は幾何異性体(geometric isomers)(例えば、シス-トランス異性体)を含む。
【0019】
本明細書において「本質的に純粋な(essentially pure)」とは、例えば、エナンチオマー又はジアステレオマーと関連して用いた場合、エナンチオマー又はジアステレオマーを例として挙げることのできる具体的な化合物が約90%以上、好ましくは約95%以上、より好ましくは約97%以上、又は約98%以上、さらに好ましくは約99%以上、最も好ましくは約99.5%以上(w/w)存在することを意味する。
【0020】
本明細書において「薬学的に許容可能」とは、通常の医薬的服用量(Medicinal dosage)で用いる際に相当な毒性効果を避けることにより、動物、より具体的には、ヒトに用いることができるという政府又はこれに準ずる規制機構の承認を受けることができ、又は承認を受け、又は一般的な薬局方に列挙され、又はその他一般的な薬局方に記載されたものと認定されることを意味する。
【0021】
本明細書において「薬学的に許容可能な塩」は、薬学的に許容可能であり、親化合物(parent compound)の好ましい薬理活性を有する本発明の一側面に係る塩を意味する。前記塩は、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などといった無機酸から形成されるか;又は、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンテンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ[2,2,2]-oct-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert-ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸といった有機酸から形成される酸付加塩(acid addition salt);又は、(2)親化合物に存在する酸性プロトンが置換されるときに形成される塩を含んでよい。
【0022】
本明細書において「水和物(hydrate)」は、水が結合している化合物を意味し、水と混合物との間に化学的な結合力のない内包化合物を含む広範囲な概念である。
【0023】
本明細書において「溶媒和物」は、溶質の分子やイオンと溶媒の分子やイオンとの間に生じた高次の化合物を意味する。
【0024】
前記化学式1で表される化合物は、常温で微色の固体化合物である。
【0025】
前記化学式1で表される化合物は、下記の反応式1で表されるように、下記化学式2で表されるピラノン誘導体化合物と化学式3で表されるトリメトキシフェニルエステル化合物とを反応させて製造する:
【0026】
【化2】
【0027】
(前記反応式1中、Xはハロゲン元素であり、MはLi、Na又はKである)
前記反応式1を見ると、化学式1で表される化合物は、ピラノン化合物のハロゲン元素とトリメトキシフェニルエステル化合物の金属との間の結合反応によって製造される。
【0028】
このとき、化学式2で表されるピラノン化合物においてXはハロゲン元素であり、このとき、ハロゲン元素は、F、Cl、Br、又はIであってよく、好ましくは、Clである。このような化学式2で表される化合物は、市販品を購入して用い、又は直接製造して用いてよい。
【0029】
本発明の一実施例においてXがClである5-ヒドロキシ-2-(クロロメチル)-4H-ピラン-4-オンであってよく、これは、5-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-4H-ピラン-4-オンを塩化チオニル(SOCl)と反応させて製造することができる。
【0030】
また、化学式3で表されるトリメトキシフェニルエステル化合物は、3-(3,4,5-トリメトキシ-フェニル)-アクリル酸(3-(3,4,5-Trimethoxy-phenyl)-acrylic acid)のイオン化塩の形態であって、3-(3,4,5-トリメトキシ-フェニル)-アクリル酸(3-(3,4,5-Trimethoxy-phenyl)-acrylic acid)のカルボキシ基に陽イオン(M)が結合した形態で存在してよい。
【0031】
前記陽イオン(M)は、Li、Na、Kからなる群より選択される1種である。好ましくは、3-(3,4,5-トリメトキシ-フェニル)-アクリル酸(3-(3,4,5-Trimethoxy-phenyl)-acrylic acid)とNaのイオン結合物であってよく、これを製造するために、一例として、3-(3,4,5-トリメトキシ-フェニル)-アクリル酸(3-(3,4,5-Trimethoxy-phenyl)-acrylic acid)と水酸化ナトリウムを共にメタノールに溶かしてイオン化した後にメタノールを蒸留することで得ることができる。
【0032】
本発明の好ましい一実施例において、化学式2で表される化合物は、5-ヒドロキシ-2-(クロロメチル)-4H-ピラン-4-オンであってよく、化学式3で表される化合物は、3-(3,4,5-トリメトキシ-フェニル)-アクリル酸ナトリウム(Sodium 3-(3,4,5-Trimethoxy-phenyl)-acrylic acid)であってよい。また、これらのエステル結合によって化学式1で表されるトリメトキシフェニル化合物を製造することができる。
【0033】
このとき、反応は本発明において特に限定されず、前記ハロゲン-金属結合反応が十分になされ得る条件下で行なわれればよい。
【0034】
反応温度は、溶媒の還流温度、一例として、50~250℃で0.5~5時間、好ましくは、1~3時間行なわれてよい。
【0035】
このとき、溶媒は、化学式2及び3で表される化合物を十分に溶解させ得るものであればいずれでも可能であり、一例として、N,N-ジメチルホルムアミド(N,N-dimethylformamide、DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、エーテル、メタノール、ヘキサン、シクロヘキサン、ピリジン、N-メチルピロリドン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択された1種であってよく、好ましくは、DMFを用いてよい。
【0036】
反応後、前記溶媒を蒸留してから、通常の洗浄、乾燥、精製などの後処理過程を経て高純度の化合物を得ることができる。
【0037】
本発明に係る化学式1で表されるトリメトキシフェニル化合物は、多様な分野への適用が可能であり、好ましくは、化粧料組成物の有効成分として用いることができる。具体的には、前記トリメトキシフェニル化合物を有効成分として含む場合、脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成を促進させ、肌のボリュームや弾力を増進のための薬学組成物、化粧料組成物又は皮膚外用剤として有効に用いられ得る。
【0038】
本明細書では、特に、後述する試験例において、前記組成物の効果をラットなどの動物ではない、ヒト由来皮下脂肪細胞を対象に実験を行い、前記組成物を実際に人体に化粧料又は薬学組成物などとして適用した場合に脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進効果があることが明らかに分かる。
【0039】
一具現例において、前記有効成分の濃度が組成物の全体積を基準に1~100μMであってよく、例えば、10μM以上、15μM以上、20μM以上、25μM以上、30μM以上、35μM以上、又は40μM以上であってよく、且つ90μM以下、80μM以下、70μM以下、又は60μM以下であってよい。本明細書の一具現例において、好ましくは、前記有効成分の濃度は50μMであってよい。
【0040】
前記濃度が1μM未満であると、脂肪細胞の分化促進効果が微々たるものとなり、また100μMを超えると、細胞毒性が現われることがある。
【0041】
一具現例において、当該組成物は、薬学組成物、化粧料組成物、又は皮膚外用剤であってよい。
【0042】
本発明の一実施例に係る前記脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用薬学組成物は、防腐剤、安定化剤、水和剤又は乳化促進剤、浸透圧調節のための塩及び/又は緩衝剤などの薬剤学的補助剤、並びにその他治療的に有用な物質をさらに含有してよく、通常的な方法によって種々の経口投与剤又は非経口投与剤の形で剤形化してよい。
【0043】
前記経口投与剤は、例えば、錠剤、丸剤、硬質及び軟質カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳化剤、シロップ剤、粉剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、ペレット剤などがあり、これらの剤形は、有効成分の他、界面活性剤、希釈剤(例:ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース及びグリシン)、滑沢剤(例:シリカ、タルク、ステアリン酸及びそのマグネシウム又はカルシウム塩、並びにポリエチレングリコール)を含有してよい。錠剤は、さらに、マグネシウムアルミニウムシリケート、澱粉ペースト、ゼラチン、トラガカンス、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及びポリビニルピロリジンといった結合剤を含有してよく、場合に応じて、澱粉、寒天、アルギン酸又はそのナトリウム塩といった崩解剤、吸収剤、着色剤、香味剤、及び甘味剤などの薬学的添加剤を含有してよい。前記錠剤は、通常の混合、顆粒化又はコーティング方法によって製造されてよい。また、前記非経口投与形態のものは径皮投与型剤形であってよく、例えば、注射剤、点滴剤、軟膏、ローション、ゲル、クリーム、スプレー、懸濁剤、乳剤、坐剤、パッチなどの剤形であってよいが、これらに制限されるものではない。
【0044】
本発明の一実施例に係る前記薬学組成物は、非経口、直腸、局所、経皮、皮下などに投与されてよい。
【0045】
前記薬学組成物は、脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成を促進させることができる。
【0046】
前記有効成分の投与量の決定は、当業者の水準内にあり、薬物の1日投与用量は投与対象の肥満進行程度、発病時期、年齢、健康状態、合併症などの様々な要因によって変わるが、成人を基準にするとき、一般的には、前記組成物1μg/kg~100mg/kgであってよく、例えば、0.1mg/Kg~20mg/Kg、0.5mg/Kg~20mg/Kg、又は1mg/kg~20mg/kg、好ましくは、5mg/kg~10mg/kgを1日1~3回分割して投与してよく、前記投与量は如何なる方法であっても本発明の範囲を限定するものではない。
【0047】
本発明の一実施例に係る前記脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用組成物は、化粧料組成物であってよく、化粧料組成物の外形は、化粧品学又は皮膚科学的に許容可能な媒質又は基剤を含有する。これは、局所適用に適したあらゆる剤形として、例えば、溶液、ゲル、固体、無水ペースト、水相に油相を分散させて得たエマルジョン、懸濁液、マイクロエマルジョン、マイクロカプセル、微細顆粒球又はイオン型(リポーソム)及び非イオン型の小嚢分散剤の形態で、又はクリーム、スキン、ローション、パウダー、軟膏、スプレー又はコンシーラースティックの形態で提供されてよい。これらの組成物は、当該分野における通常の方法に従い製造されてよい。また、本発明に係る組成物は、泡沫(foam)の形態で又は圧縮された推進剤をさらに含有したエアロゾル組成物の形態で用いられてもよい。
【0048】
本発明の一実施例に係る前記化粧料組成物は、その剤形において特に限定されるものではなく、例えば、柔軟化粧水、収れん化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、アイエッセンス、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、パウダー、ボディーローション、ボディークリーム、ボディーオイル、及びボディーエッセンスなどの化粧品に剤形化されてよい。
【0049】
本発明の剤形がペースト、クリーム又はゲルの場合は、担体成分として、動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、澱粉、トラガカンド、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルク、又は酸化亜鉛などが用いられてよい。
【0050】
本発明の剤形がパウダー又はスプレーの場合は、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケート、又はポリアミドパウダーが用いられてよく、特にスプレーの場合は、更に、クロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタン、又はジメチルエーテルのような推進剤を含んでよい。
【0051】
本発明の剤形が溶液又は乳濁液の場合は、担体成分として、溶媒、溶媒和剤、又は乳濁化剤が用いられ、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコール、又はソルビタンの脂肪酸エステルが挙げられる。
【0052】
本発明の剤形が懸濁液の場合は、担体成分として、水、エタノール、又はプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル、及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微小結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天又はトラガカントなどが用いられてよい。
【0053】
本発明の剤形が界面活性剤含有クレンジングの場合は、担体成分として、脂肪族アルコールサルフェート、脂肪族アルコールエーテルサルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イセチオネート、イミダゾリニウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体、又はエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどが用いられてよい。
【0054】
本発明の一実施例に係る化粧料組成物には、前記有効成分の他、機能性添加物及び一般的な化粧料組成物に含まれる成分が更に含まれてよい。前記機能性添加物としては、水溶性ビタミン、油溶性ビタミン、高分子ペプチド、高分子多糖、スフィンゴ脂質、及び海草エキスからなる群より選択された成分を含んでよい。
【0055】
本発明の化粧料組成物には、更に、前記機能性添加物と共に必要に応じて一般的な化粧料組成物に含まれる成分を配合してもよい。その他含まれる配合成分としては、油脂成分、保湿剤、エモリエント剤、界面活性剤、有機及び無機顔料、有機粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、植物抽出物、pH調整剤、アルコール、色素、香料、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、精製水などが挙げられる。
【0056】
さらに、前記本発明の一実施例に係る脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用組成物は、皮膚外用剤であり、前記皮膚外用剤は、外皮に塗布されるものであればいずれも含み得る組成物の総称であって、多様な剤形の化粧品、医薬品がこれに含まれ得る。
【0057】
また、前記本発明の一実施例に係る脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用組成物は、食品組成物であってよく、前記食品組成物は、液状又は固体状態の剤形であってよく、錠剤、カプセル剤、軟質カプセル剤、丸剤、顆粒剤、飲料(ドリンク剤)、ダイエットバー、チョコレート、キャラメル剤形、又はお菓子類の剤形であってよく、その剤形が特に限定されるものではない。本発明の食品組成物は、前記有効成分の他、必要に応じて賦形剤、糖類、香料、色素、油脂類、タンパク質などを適宜含んでよい。
【0058】
一具現例において、前記組成物は、ビタミンDを更に含んでよい。前記組成物は、ビタミンDを更に含むことで、毛嚢に栄養素を供給することができる。これらの量は、全組成物の0.0001~10重量%、特に、0.01~1重量%が好ましい。
【0059】
本発明のもう一つの例示的な具現例において、本発明は、下記の化学式1で表されるトリメトキシフェニル化合物を、これを必要とする対象に有効量で投与して脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成を促進する方法である。
【0060】
【化3】
【0061】
本発明のもう一つの例示的な具現例において、本発明は、脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成促進用組成物を製造するための、下記の化学式1で表されるトリメトキシフェニル化合物の用途である。
【0062】
【化4】
【0063】
本発明のもう一つの例示的な具現例において、本発明は、脂肪細胞の分化又はアディポネクチンの生成を促進するための、下記の化学式1で表されるトリメトキシフェニル化合物である。
【0064】
【化5】
【0065】
以下、下記の実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。なお、下記の実施例は本発明についての理解を助けるための目的から例示したものに過ぎず、本発明の範疇及び範囲がこれらに限定されるものではない。
【0066】
製造例:3-(3,4,5-トリメトキシ-フェニル)-アクリル酸 5-ヒドロキシ-4-オキソ-4H-ピラン-2-イルメチルエステル(3-(3,4,5-Trimethoxy-phenyl)-acrylic acid 5-hydroxy-4-oxo-4H-pyran-2-ylmethyl ester)の製造
下記の反応式2に従い、本発明の化学式1で表されるトリメトキシフェニル化合物である3-(3,4,5-トリメトキシ-フェニル)-アクリル酸 5-ヒドロキシ-4-オキソ-4H-ピラン-2-イルメチルエステル(3-(3,4,5-Trimethoxy-phenyl)-acrylic acid 5-hydroxy-4-oxo-4H-pyran-2-ylmethyl ester)を製造した。
【0067】
【化6】
【0068】
前記反応式2を行なった詳細な過程は下記のとおりである。
【0069】
50gの5-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-4H-ピラン-4-オン(0.35mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド250mlに溶かし、10℃の氷水浴で冷却し塩化チオニル50g(0.42mol)を30分間滴下した。常温で2時間撹拌した後に氷水2000mlに反応液を加えた。生成された固体をろ過し、酢酸エチル1000mlに固体(ろ過物)を溶かした。硫酸マグネシウムと活性炭を加えて乾燥、脱色を行い、ろ過した後、ろ液を濃縮しヘキサンを加えて結晶を得た。真空乾燥して反応生成物である黄色い固体の化学式2-1で表される5-ヒドロキシ-2-(クロロメチル)-4H-ピラン-4-オン 39.5g(70%)を得た。
【0070】
次いで、3-(3,4,5-トリメトキシ-フェニル)-アクリル酸(3-(3,4,5-Trimethoxy-phenyl)-acrylic acid)5g(0.026mol)と水酸化ナトリウム1.3g(0.031mol)をメタノール40mlに溶かしメタノールを蒸留した後に残った残渣をN,N-ジメチルホルムアミド70mlに溶かして、化学式3-1で表される化合物を製造した。
【0071】
前記製造された化学式3-1で表される化合物に、前記製造した化学式2-1で表される5-ヒドロキシ-2-(クロロメチル)-4H-ピラン-4-オン 4.2g(0.026mol)を加え、110℃、オイル槽で2時間加熱撹拌した。溶媒を蒸留し残渣を酢酸エチル300mlに溶かした後、酢酸エチル溶液を5%塩酸と蒸留水で洗浄し、硫酸マグネシウムと活性炭を加えて乾燥、脱色を施した。次いで、不溶物をろ過し、そのろ液を減圧下で蒸発させて、微色固体の反応生成物5.9g(69%収率)を得た。
【0072】
前記微色固体のNMR結果を図5に示した。
【0073】
実施例
実施例1:脂肪細胞の増殖及び細胞毒性分析
細胞培養及び分化
ヒト皮下脂肪細胞(human Subcutaneous Fat cells、以下、hSCFs)と皮下脂肪前駆細胞分化培地をZenBio Inc.(NC、USA)から購入し、湿度5%のCO培養器で7日間培養した。
【0074】
分化を誘導するために培養7日後から、hSCFsは10%ウシ胎児血清(FBS、PAA、Pasching、オーストリア)、10μg/mlインスリン(Sigma-Aldrich、MO、USA)、0.5mM 3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX;Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)1μMデキサメタゾン(DEX、Sigma-Aldric、MO、USA)、St.Louis、MO、USA)及び1μMトログリタゾン(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)を含有したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Lonza、Md、USA)を隔日に取り替えつつ、14日を更に培養した。
【0075】
細胞増殖及び細胞毒性分析
hSCFs生存力は、EZ-Cytox細胞生存能分析キット(MTT assay、Daeil lab Service、South Korea)を用いてメーカの指示に従って測定した。要約すると、hSCFsを未分化状態で7日間培養し、陽性対照群であるコウジ酸(Kogic acid、以下、KA)400μM、ケイ皮酸(Cinammic acid、以下、CA)60μM、及びグリベンクラミド(glibenclamide、以下、GC)30μM及び化学物質PAC-2を種々の濃度(μM)にてそれぞれ24時間及び72時間にかけてhSCFsに処理した。その後、EZ-Cytox溶液(10μl)を各ウェルに添加し、37℃で2時間培養した。分光光度計(Synergy H2、BioTek.、VT、USA)を用いて450nmにおける吸光度を測定した。全ての実験を3回行い、データを吸光度にて示した。
【0076】
実験の結果、本発明に係る化合物の陽性対照群であるコウジ酸(Kogic acid)、ケイ皮酸(Cinammic acid)、及びグリベンクラミド(glibenclamide))と類似し又はそれより優れた水準でhSCFs細胞増殖効果を示すことから、脂肪細胞の分化が促進し、このことから、肌ボリュームや弾力増加などの効果を奏し得ることを推定することができる。
【0077】
さらに、細胞毒性もまた、正常対照群と同等か、陽性対照群の数値を超えない水準であることから、人体に有害ではないことを確認した。
【0078】
実施例2:脂肪細胞の分化量分析
オイルレッドO(Oil Red O、ORO)染色
前記実施例1で培養したhSCFsに種々の濃度(μM)のPAC-2を含む組成物、及び陽性対照群であるKA(400μM)、CA(60μM)、及びGC(30μM)を処理し、計14日間分化を進め、次いで、冷たいPBS(phosphate buffered saline)で2回洗浄し、3.7%ホルムアルデヒド(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)で1時間固定させた。固定されたhSCFsをPBS中の60%プロピレングリコール(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)で洗浄し、オイルレッドO(60%プロピレングリコール中の0.3%オイルレッド;OSigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)で30分間処理した。細胞を85%プロピレングリコールで3回洗浄し水道水で洗い流した。Oil Red O染料で染色された脂質液滴はIX71顕微鏡(Olympus、Tokyo、Japan)で視覚化した。
【0079】
図2を参照すると、PAC-2を含む組成物(図中ではPAC-16742と表示)の場合、陽性対照群であるKA(400μM)、CA(60μM)、及びGC(30μM)に比べて、濃度が10μMの場合は、陽性対照群と類似の水準であるが、25μM、50μMの場合は、染色された細胞が顕著に増加したことを確認し、濃度が高くなるほど染色された細胞が増加するという有意な結果を示した。また、既存の脂肪細胞の分化を促進させると知られているセルレチノイドG(seletinoid G)に比べても有意性があることを確認した。したがって、本発明に係るトリメトキシフェニル化合物を含む組成物の場合、脂肪細胞の分化を効果的に促進させるという事実を確認した。
【0080】
実施例3:アディポネクチンmRNA発現(mRNA expression of adiponectin)分析
リアルタイム定量PCR(Real-time quantitative PCR(RT-qPCR))
TRIzol試薬(Life Technologies、Carlsbad、CA、USA)を用いてメーカの指針に従い、前記実施例1で培養したhSCFsに種々の濃度(μM)のPAC-2を含む組成物、及び陽性対照群であるKA(400μM)、CA(60μM)、及びGC(30μM)を種々の濃度にて処理し、総RNAを抽出し、RevertAid第1鎖cDNA合成キット(Thermo Scientific、Pittsburgh、PA、USA)を用いて相補的なDNA(cDNAs)を合成するために、1μgの総RNAを用いた。約1μgのcDNAサンプル及び各TaqMan(登録商標)プローブ(Life Technologies、Carlsbad、CA、USA)をQuantitect Probe PCRキット(Qiagen、Valencia、CA、USA)の反応混合物に希釈し、PCRを7500高速リアルタイムPCRシステム(Fast real-time PCR system)(Life Technologies、Carlsbad、CA、USA)によって行なった。各TaqMan(登録商標)プローブは次のとおりである:
【0081】
glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase(GAPDH;Part # 4352339E)である。すべてのデータはGAPDH対照群に比べて倍数変化で示し、3回の独立した実験で得たものである。
【0082】
アディポネクチンmRNA発現程度を示した図3を参照すると、PAC-2を含む組成物の場合、陽性対照群であるKA(400μM)、CA(60μM)、及びGC(30μM)に比べて、濃度が10μMの場合は、アディポネクチンmRNAの発現が陽性対照群と類似の水準であるが、濃度が25μMの場合は、3倍以上、50μMの場合は、5倍以上の差があることを確認し、濃度が高くなるほど発現程度が高くなるという有意な結果を示した。
【0083】
実施例4:アディポネクチンの生成量分析
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA assay)
前記実施例1で培養したhSCFsに陽性対照群であるKA(400μM)、CA(60μM)、及びGC(30μM)、並びにPAC-2を含む組成物を種々の濃度にて処理した。培養培地を回収し、13,000rpmで15分間遠心分離を行なって破片を除去した。分泌されたアディポネクチンはメーカの指示に従い測定した(Enzo Life Sciences、Farmingdale、NY、USA)。
【0084】
図4を参照すると、PAC-2を含む組成物の場合、陽性対照群であるKA(400μM)、CA(60μM)、及びGC(30μM)に比べて、濃度が10μMの場合は、アディポネクチンの溶出量が陽性対照群と類似の水準である、25μMの場合は、3倍以上、50μMの場合は、7倍以上の差があることを確認し、濃度が高くなるほど培地内溶出したアディポネクチンの定量結果が高くなるという有意な結果を示した。
図1
図2
図3
図4
図5