(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】八酸化三ウラン粒子及び二酸化プルトニウム粒子を含む粉末を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
C01G 43/00 20060101AFI20220830BHJP
C01G 56/00 20060101ALI20220830BHJP
G21C 3/50 20060101ALI20220830BHJP
G21C 3/62 20060101ALI20220830BHJP
G21C 21/02 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C01G43/00 E
C01G56/00
G21C3/50
G21C3/62 700
G21C3/62 800
G21C21/02 230
(21)【出願番号】P 2020530349
(86)(22)【出願日】2018-12-07
(86)【国際出願番号】 EP2018083998
(87)【国際公開番号】W WO2019115394
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-10-20
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】201810367647.6
(32)【優先日】2018-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522120004
【氏名又は名称】オラノ・リサイクレイジ
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・ポンスレ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ヴィジエ
(72)【発明者】
【氏名】ベネディクト・アラブ-シャプレ
(72)【発明者】
【氏名】オレリー・ゴト
(72)【発明者】
【氏名】エレオノール・ウェルコム
(72)【発明者】
【氏名】マリー-エレーヌ・ノワール
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-510726(JP,A)
【文献】特開2016-000688(JP,A)
【文献】特表2008-500937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00-47/00;49/10-99/00
G21C 3/50
G21C 3/62
G21C 21/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
八酸化三ウラン粒子及び二酸化プルトニウム粒子を含む粉末を調製するための方法であって、
a)シュウ酸沈殿によって、シュウ酸ウラン(IV)粒子の水性懸濁液S
1及びシュウ酸プルトニウム(IV)粒子の水性懸濁液S
2を調製する工程と、
b)水性懸濁液S
1を水性懸濁液S
2と混合して、シュウ酸ウラン(IV)粒子及びシュウ酸プルトニウム(IV)粒子を含む水性懸濁液S
1+2を得る工程と、
c)水性懸濁液S
1+2を、水性相と、シュウ酸ウラン(IV)粒子及びシュウ酸プルトニウム(IV)粒子を含む固相とに分離する工程と、
d)固相を焼成して、(1)シュウ酸ウラン(IV)粒子を八酸化三ウラン粒子へ、及び(2)シュウ酸プルトニウム(IV)粒子を二酸化プルトニウム(IV)粒子へ変換することによって、粉末を得る工程と
を含むこと、並びに工程b)及びc)が、同時に又は逐次的に実施されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
工程a)が、
- 硝酸及び硝酸ウラン(IV)を含む水溶液A
1を、シュウ酸、その塩、及びそのアルキル化誘導体の中から選択される沈殿剤を含む水溶液A
2と接触させ、ウラン(IV)がシュウ酸ウラン(IV)の形態で沈殿する反応媒体を形成することと、
- 硝酸及び硝酸プルトニウム(IV)を含む水溶液A’
1を、シュウ酸、その塩、及びそのアルキル化誘導体の中から選択される沈殿剤を含む水溶液A’
2と接触させ、プルトニウム(IV)がシュウ酸プルトニウム(IV)の形態で沈殿する反応媒体を形成すること
とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水溶液A
1及びA’
1の硝酸の濃度が0.5mol/L~5mol/Lであることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
水溶液A
1の硝酸ウラン(IV)の濃度及び水溶液A’
1の硝酸プルトニウム(IV)の濃度が0.001mol/L~1mol/Lであることを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
水溶液A
2及びA’
2の沈殿剤の濃度が0.05mol/L~1mol/Lであることを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
沈殿剤が、ウラン(IV)及びプルトニウム(IV)のシュウ酸沈殿に対する化学量論的条件に対して過剰に反応媒体に存在することを特徴とする、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
水溶液A’1が硝酸ウラン(VI)を更に含むことを特徴とする、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程c)が、水性懸濁液S
1+2の真空又は加圧濾過を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程b)及びc)が同時に実施されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程d)が、少なくとも550℃の温度及び酸化雰囲気における固相の処理を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
粉末が、トリウム及びネプツニウムの中から選択される二酸化アクチニド(IV)粒子を更に含むこと、並びに方法が、
a’)シュウ酸沈殿によって、シュウ酸ウラン(IV)粒子の水性懸濁液S
1、シュウ酸プルトニウム(IV)粒子の水性懸濁液S
2、及びシュウ酸アクチニド(IV)粒子の水性懸濁液S
3を調製する工程と、
b’)水性懸濁液S
1、S
2及びS
3を互いに混合して、シュウ酸ウラン(IV)粒子、シュウ酸プルトニウム(IV)粒子、及びシュウ酸アクチニド(IV)粒子を含む水性懸濁液S
1+2+3を得る工程と、
c’)水性懸濁液S
1+2+3を、水性相と、シュウ酸ウラン(IV)粒子、シュウ酸プルトニウム(IV)粒子、及びシュウ酸アクチニド(IV)粒子によって形成される固相とに分離する工程と、
d’)固相を焼成して、(1)シュウ酸ウラン(IV)粒子を八酸化三ウラン粒子へ、(2)シュウ酸プルトニウム(IV)粒子を二酸化プルトニウム粒子へ、及び(3)シュウ酸アクチニド(IV)粒子を二酸化アクチニド(IV)粒子へ変換することによって、粉末を得る工程と
を含むこと、並びに工程b’)及びc’)が、同時に又は逐次的に実施されること
を特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
粉末が、トリウム及びネプツニウムの中から選択される二酸化アクチニド(IV)粒子を更に含むこと、並びに方法が、
a’’)シュウ酸沈殿によって、ウラン(IV)とアクチニド(IV)の複シュウ酸塩粒子の水性懸濁液S
1、及びシュウ酸プルトニウム(IV)粒子の水性懸濁液S
2を調製する工程と、
b’’)水性懸濁液S
1を水性懸濁液S
2と混合して、ウラン(IV)とアクチニド(IV)の複シュウ酸塩粒子、及びシュウ酸プルトニウム(IV)粒子を含む水性懸濁液S
1+2を得る工程と、
c’’)水性懸濁液S
1+2を、水性相と、ウラン(IV)とアクチニド(IV)の複シュウ酸塩粒子、及びシュウ酸プルトニウム(IV)粒子によって形成される固相とに分離する工程と、
d’’)固相を焼成して、(1)ウラン(IV)とアクチニド(IV)の複シュウ酸塩粒子を八酸化三ウラン粒子及び二酸化アクチニド(IV)粒子へ、並びに(2)シュウ酸プルトニウム(IV)粒子を二酸化プルトニウム粒子へ変換することによって、粉末を得る工程と
を含むこと、並びに工程b’’)及びc’’)が、同時に又は逐次的に実施されること
を特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み核燃料の再利用の分野を対象とする。
【0002】
より詳細には、本発明は、使用済み核燃料の湿式製錬処理から生じる水性流を用いて、八酸化三ウランU3O8粒子と二酸化プルトニウムPuO2粒子の混和混合物を含み、トリウム及びネプツニウムの中から選択される四価の二酸化アクチニド粒子を更に含み得る粉末の調製を可能とする方法に関する。
【0003】
得られる粉末は、例えば、軽水炉(LWR)又は高速中性子炉(FNR)で照射され得るMOXタイプ(Mixed OXide Fuel:混合酸化物燃料)の新鮮な核燃料の製造において、特に用途を見出し得る。
【背景技術】
【0004】
現在のところ、その中に含まれるプルトニウムの再使用のための、及びMOXタイプの燃料の製造のための使用済み核燃料の処理/再利用は、特に以下の工程を含む:
1.使用済み核燃料を硝酸中で溶解して、これらの燃料に存在する様々なアクチニド及び核分裂生成物を可溶化する工程;
2.ウランとプルトニウムを分離/精製して、一方が精製ウラン(VI)を含み、他方が精製プルトニウム(IV)を含む、2つの水性流を得る工程;
3.これらの水性流に存在するウラン及びプルトニウムを、二酸化型UO2及びPuO2の2つの別々の固相に変換する工程;並びに
4. UO2及びPuO2二酸化物を混合する/プレスする/焼結する工程を逐次的に含むプロセスによって、場合によってはシャモット(ペレット製造の不良品)で完成されうる混合物を含む、MOX燃料のペレットを製造する工程。
【0005】
核燃料サイクルの、プルトニウムを不法な目的で悪用するリスクに対する抵抗力を高めるための1つの想定される手段は、国際出願PCT WO2007/13517(以下参考文献[1])に記載される通り、特に硝酸塩形態のウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を含む水性流を二酸化物に変換する工程において、精製プルトニウムのみを使用する工程の数を可能な限り制限することである。
【0006】
ウランとプルトニウムの共管理のための、特に、変換工程の上流においてウラン(VI)とプルトニウム(IV)の安定水溶液を得ることに基づくいくつかの方法が提案されている。この水溶液に存在するウラン(VI)及びプルトニウム(IV)の変換は、最終生成物として混合酸化物粉末(U, Pu)O2、又はより頻繁には、UO2とPuO2の混和粒子から形成される粉末を得ることを意図している。試験又は産業規模で開発された他の変換法との主な違いは、溶液中のアクチニドを固相に変換する工程にある。この工程は、熱脱硝式の方法又は沈殿/焼成式の方法のいずれかに基づく。
【0007】
ウラン/プルトニウム共管理のための熱脱硝方法に関して、Numaoら(GLOBAL 2007: Advanced Nuclear Fuel Cycles and Systems、Boise、米国、2007年9月9~13日、以下参考文献[2])及びFelkerら(ATALANTE 2008: Nuclear Fuel Cycles for a Sustainable Future、Montpellier、フランス、2008年5月19~23日、以下参考文献[3])によって記載された方法に言及することができる。
【0008】
これらの方法は一般的に比較的簡潔であるが、上流において強い濃度のアクチニド水溶液を必要とする。更に、製造される酸化物粉末の特性は、直接適用するための調節が困難であり、燃料の成形前に複数の加工(粉砕、造粒など)を用いる必要がある。
【0009】
ウラン/プルトニウム共管理のための、沈殿/焼成を使用する方法に関しては、3種類が挙げられる:
- アンモニウムの複炭酸塩の形態での、ウランとプルトニウムの共沈を用いる方法;
- アンモニア共沈を用いる方法;
- シュウ酸共沈を用いる方法。
【0010】
アンモニウムの複炭酸塩の形態での、ウランとプルトニウムの共沈は、六価アクチニドのみに適用可能である。このため、プルトニウム(IV)をプルトニウム(VI)に原子価調整する困難な工程が必要とされる。更に、アンモニウムの複炭酸塩の、水性媒体への無視できない溶解度に起因して、共沈反応は定量的ではないため、収率が低い。
【0011】
アンモニア共沈は、硝酸アンモニア排出物の管理に問題があるという点で重大な不利点を有する。
【0012】
シュウ酸共沈は、国際出願PCT WO02/28778(以下参考文献[4])に記載される、酸化状態IVのみへのアクチニドの共沈、又は国際出願PCT WO2005/119699(以下参考文献[5])に記載される、酸化状態III及びIVへのアクチニドの共沈のいずれかに基づく。
【0013】
酸化状態IVのみへのアクチニドのシュウ酸共沈については、課題は、ウランIVが水性媒体中でプルトニウム(IV)の強力な還元剤であるにもかかわらず、ウランとプルトニウムを酸化状態IVで一緒に保持することである。したがって、これら2つの金属カチオンが、酸化状態IVにおいてシュウ酸共沈まで安定化できるように、1種又は複数の強力な錯化剤を添加する必要がある。この安定化は効率的であるが、特にpH調節に関して方法の操作マージンを制限する。更に、この方法は、塩基、例えば水酸化ナトリウム又はアンモニアの添加とともに、大量の錯化剤を水溶液に添加することを伴う。これにより、生成される排出物の管理が複雑になる。
【0014】
酸化状態III及びIVへのアクチニドのシュウ酸共沈に関しては、これらのアクチニドの定量的沈殿が可能であるため、固溶体型の混合酸化物が得られる(参考文献[5])。しかし、この方法は、潜在的に問題がある、プルトニウム(IV)をプルトニウム(III)に還元し、後者を安定化させる工程を用いる。更に、得られる混合シュウ酸塩の状態図が六角形であることに起因して、達成可能なPu/(U+Pu)の最大比は、約50原子%に制限される。
【0015】
他の応用枠組みでは、プルトニウム(IV)の低い水溶解度と比較してシュウ酸ウラン(VI)の水溶解度が高いことを利用することによりウランをプルトニウムから分離する、ウラン(VI)及びプルトニウム(IV)の水溶液中でのシュウ酸沈殿がDelegardら(PNNL-13934、2002年、以下参考文献[6])によって記載されている。
【0016】
最後に、ウラン(IV)とトリウム(IV)をシュウ酸共沈させ、混合酸化物(U, Th)O2粉末を調製することに基づく使用法が挙げられ得る(Atlasら、Journal of Nuclear Materials、2001年、294、344~348頁、以下参考文献[7])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】国際出願PCT WO2007/13517
【文献】国際出願PCT WO02/28778
【文献】国際出願PCT WO2005/119699
【文献】国際出願PCT WO2010/070064
【非特許文献】
【0018】
【文献】Numaoら(GLOBAL 2007: Advanced Nuclear Fuel Cycles and Systems、Boise、米国、2007年9月9~13日)
【文献】Felkerら(ATALANTE 2008: Nuclear Fuel Cycles for a Sustainable Future、Montpellier、フランス、2008年5月19~23日)
【文献】Delegardら(PNNL-13934、2002年)
【文献】Atlasら、Journal of Nuclear Materials、2001年、294、344~348頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、前述のことを考慮して本発明者らは、ウラン及びプルトニウムを変換する方法であって、この変換のための操作マージンの拡大及び実施の簡略化の両方を可能にする方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、研究の一環として、あらゆる予想に反して、シュウ酸ウラン(IV)とシュウ酸プルトニウム(IV)の両方の粒子を含むにもかかわらず安定で均質であり、それによって、ウランとプルトニウムの共変換でこれまでに生じた一定数の操作上の制限を克服する水性懸濁液を得ることが可能であることを突き止めた。
【0021】
本発明は、この驚くべき実験的発見に基づくものである。
【0022】
したがって、本発明の主題は、八酸化三ウランU3O8粒子及び二酸化プルトニウムPuO2粒子を含む粉末を調製するための方法であって、
a)シュウ酸沈殿によって、シュウ酸ウラン(IV)粒子の水性懸濁液S1及びシュウ酸プルトニウム(IV)粒子の水性懸濁液S2を調製する工程と、
b)水性懸濁液S1を水性懸濁液S2と混合して、シュウ酸ウラン(IV)粒子及びシュウ酸プルトニウム(IV)粒子を含む水性懸濁液S1+2を得る工程と、
c)水性懸濁液S1+2を、水性相と、シュウ酸ウラン(IV)粒子及びシュウ酸プルトニウム(IV)粒子を含む固相とに分離する工程と、
d)固相を焼成して、(1)シュウ酸ウラン(IV)粒子を八酸化三ウラン粒子へ、及び(2)シュウ酸プルトニウム(IV)粒子を二酸化プルトニウム粒子へ変換することによって、粉末を得る工程と
を含み、工程b)及びc)が、同時に又は逐次的に実施される、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】後述の、本発明の方法の実施形態の実施例において、シュウ酸ウラン(IV)粒子の水性懸濁液S
1及びシュウ酸プルトニウム(IV)粒子の水性懸濁液S
2を調製するために使用される、アセンブリの流れ図である。
【
図2】後述の、本発明の方法の実施形態の実施例において、シュウ酸ウラン(IV)粒子の水性懸濁液S
1をシュウ酸プルトニウム(IV)粒子の水性懸濁液S
2と混合するため、及びこの混合物から得られる懸濁液S
1+2をほぼ同時に濾過するために使用されるアセンブリの流れ図である。
【
図3】後述の、本発明の方法の実施形態の実施例で得られる水性懸濁液S
1+2の、シュウ酸ウラン(IV)粒子及びシュウ酸プルトニウム(IV)粒子のレーザー粒径分布を示す図である。粒子の直径(Dと表記しμm単位で表す)をX軸に示し、粒子の体積頻度(Fvと表記し%単位で表す)を右Y軸に示し、粒子の累積体積(Vcと表記し%単位で表す)を左Y軸に示す。
【
図4A】後述の、本発明の方法の実施形態の実施例で得られる水性懸濁液S
1、S
2及びS
1+2の、これらの懸濁液を濾過及び脱水した後の、シュウ酸塩粒子のX線回折図を示す図である。
図4A及び
図4Bのそれぞれにおいて、1と表記する回折図は、水性懸濁液S
1のシュウ酸ウラン(IV)粒子に対応し、2と表記する回折図は、水性懸濁液S
2のシュウ酸プルトニウム(IV)粒子に対応し、3と表記する回折図は、水性懸濁液S
1+2のシュウ酸ウラン(IV)粒子及びシュウ酸プルトニウム(IV)粒子に対応する。
【
図4B】後述の、本発明の方法の実施形態の実施例で得られる水性懸濁液S
1、S
2及びS
1+2の、これらの懸濁液を濾過及び脱水した後の、シュウ酸塩粒子のX線回折図を示す図である。
図4Bは、
図4Aの2θ=14°に位置するピークにおける、
図4Aの拡大図を示す図である。
図4A及び
図4Bのそれぞれにおいて、1と表記する回折図は、水性懸濁液S
1のシュウ酸ウラン(IV)粒子に対応し、2と表記する回折図は、水性懸濁液S
2のシュウ酸プルトニウム(IV)粒子に対応し、3と表記する回折図は、水性懸濁液S
1+2のシュウ酸ウラン(IV)粒子及びシュウ酸プルトニウム(IV)粒子に対応する。
【
図5】15時間放置され熟成された、後述の、本発明の方法の実施形態の実施例で得られる水性懸濁液S
1+2の試料の、ウラン(IV)及びプルトニウム(IV)の濃度([C]と表記しmg/L単位で表す)の、時間変化(tと表記し対数目盛で分単位で表す)を示す図である。
【
図6】後述の、本発明の方法の実施形態の実施例で得られる水性懸濁液S
1+2の、この懸濁液の濾過及び脱水後に走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影された写真を示す図である。
【
図7】後述の、本発明の方法の実施形態の実施例で得られる八酸化三ウランと二酸化プルトニウムの粉末の、X線回折図(1と表記)を示す図である。比較として、この図はまた、2と表記する八酸化三ウラン粒子の計算された回折図、及び3と表記する二酸化プルトニウム粒子の計算された回折図を示す。
【
図8】SEMを用いて撮影された、後述の実、本発明の方法の実施形態の実施例で得られる八酸化三ウランと二酸化プルトニウムの粉末の写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明によると、工程a)は、好ましくは、
- 硝酸及び硝酸ウラン(IV)又は硝酸ウラナスを含む水溶液A1を、シュウ酸、その塩(例えば、シュウ酸アンモニウム)、及びそのアルキル化誘導体(例えば、シュウ酸ジメチル)の中から選択される沈殿剤を含む水溶液A2と接触させ、ウラン(IV)がシュウ酸ウラン(IV)の形態で沈殿する反応媒体を形成することと、
- 硝酸及び硝酸プルトニウム(IV)を含む水溶液A’1を、シュウ酸、その塩、及びそのアルキル化誘導体の中から選択される沈殿剤を含む水溶液A’2と接触させ、プルトニウム(IV)がシュウ酸プルトニウム(IV)の形態で沈殿する反応媒体を形成することと
を含む。
【0025】
水溶液A1及びA’1は、好ましくは0.5mol/L~5mol/Lの硝酸を含む。
【0026】
本発明では、水溶液A1のウラン(IV)の濃度及び水溶液A’1のプルトニウム(IV)の濃度は広範囲で変動してもよいが、好ましくは、これらの濃度は0.001mol/L~1mol/Lである。
【0027】
水溶液A2及びA’2の沈殿剤の濃度は、典型的には0.05mol/L~1mol/Lである。
【0028】
この濃度は、好ましくは、これらの溶液を接触させるために使用される、それぞれ水溶液A1及びA’1の、それぞれ水溶液A2及びA’2に対する体積比を考慮して、沈殿剤が、ウラン(IV)及びプルトニウム(IV)のシュウ酸沈殿に対する化学量論的条件に対して過剰に反応媒体に存在するように選択される。
【0029】
典型的には、この過剰量は、シュウ酸沈殿の終わりに、反応媒体中に0.01mol/L~0.5mol/Lの範囲のシュウ酸イオンの残存濃度が得られるように決定される。
【0030】
工程a)において、反応媒体は、好ましくはシュウ酸沈殿中全体を通じて10℃~60℃の範囲の温度に保持される。
【0031】
本発明では、水溶液A1は、ウランをその酸化状態IVに安定化させることができ、そのため、反応媒体に存在するいくつかの化合物(硝酸、亜硝酸など)によって、又は周囲雰囲気(例えば、周辺空気の二原子酸素)によって、ウランがウラン(VI)へと酸化するのを阻止する化合物を更に含んでもよい。
【0032】
この安定化化合物は、好ましくは、炭素原子、水素原子、酸素原子、及び/又は窒素原子(CHONカチオン)のみを含む単一荷電カチオンを水溶液に放出する化合物である。例えば、前記化合物は、好ましくは0.05mol/L~0.2mol/Lの濃度で使用される、ヒドラジニウム塩又はアルキルヒドラジニウム塩等の抗亜硝酸剤である。
【0033】
また、水溶液A’1は硝酸ウラン(VI)又は硝酸ウラニルを更に含んでもよく、この場合、溶液A’1中のこの硝酸塩の濃度は、典型的には0.001mol/L~0.05mol/Lである。
【0034】
遊離硝酸濃度及びシュウ酸過剰の点での化学的沈殿条件の安定性を確実にし、それによりシュウ酸ウラン(IV)及びシュウ酸プルトニウム(IV)粒子の安定な均質粒径分布を確実にするために、工程a)は、好ましくは、
- 水溶液A1及びA2を、硝酸、及び水溶液A2の沈殿剤と同一の沈殿剤を含む第三の水溶液に添加することと、
- 水溶液A’1及びA’2を、硝酸、及び水溶液A’2の沈殿剤と同一の沈殿剤を含む第四の水溶液に添加することと
を含む。
【0035】
この場合、ウラン(IV)安定化剤が溶液A1に存在する場合、この安定化剤は好ましくは第三の水溶液にも存在する。同様に、硝酸ウラン(VI)が水溶液A’1に存在する場合、硝酸ウラン(VI)は好ましくは第四の水溶液にも存在する。
【0036】
水性懸濁液S1及びS2の調製は、アクチニドの沈殿に適する任意の種類の反応器、例えば、原子力産業で使用される種類のボルテックス効果原子炉、又は国際出願PCT WO2010/070064(以下参考文献[8])に記載されるもの等の流動床原子炉において行われてもよい。
【0037】
本発明によると、水性懸濁液S1と水性懸濁液S2を混合することに対応する工程b)は、これらの水性懸濁液の密接な接触、それゆえその中に含まれるシュウ酸塩粒子の密接な接触を可能とする任意の技法を使用して実施されてもよく、同様に、工程b)で得られた水性懸濁液S1+2を、水性相と固相とに分離させることに対応する工程c)は、任意の固液分離技法を使用して、例えば、特定の真空度下の濾過若しくは加圧濾過によって、又は遠心分離によって実施されてもよい。
【0038】
工程b)及びc)は好ましくは同時に実施され、そうでなければ、工程c)が、好ましくは工程b)から最大で10時間以内に実施される。
【0039】
いずれにせよ、シュウ酸ウラン(IV)及びシュウ酸プルトニウム(IV)の形態的及び構造的特性の類似性を考慮すると、これらのシュウ酸塩粒子の混合は、容易且つ均質に行われる。この均質性は、工程c)の終わりに得られる固相中のシュウ酸ウラン(IV)粒子及びシュウ酸プルトニウム(IV)粒子の分布にも引き続き見出される。その結果、ウランとプルトニウムの固形物が後に凝離する可能性はほぼない。
【0040】
工程c)の終わりに得られる固相の焼成は、好ましくは少なくとも550℃、有利には1250℃以下の温度において、酸化雰囲気下、例えば、空気中又は二原子酸素と二原子窒素の混合物中で実行される。
【0041】
これにより、八酸化三ウラン粒子と二酸化プルトニウム粒子の混和均質ミックスを含む粉末が得られ、工程b)及びc)で得られる均質性は、工程d)で製造されるウラン及びプルトニウム酸化物のミックス中で維持される。
【0042】
上に示された通り、本発明の方法は、八酸化三ウラン粒子及び二酸化プルトニウム粒子に加え、トリウム及びネプツニウムの中から選択される二酸化アクチニド(IV)粒子を含む粉末の調製も可能とする。
【0043】
これを行うために、以下の通り進行する2つの方法が存在する:
- アクチニド(IV)粒子の水性懸濁液S3を調製し、これを水性懸濁液S1及びS2と混合する、
- 又は、硝酸アクチニド(IV)を、硝酸ウラン(IV)を含む水溶液A1に添加し、この場合、ウラン(IV)とアクチニド(IV)の複シュウ酸塩を含む水性懸濁液S1が得られ、これを水性懸濁液S2と混合する
のいずれか。
【0044】
したがって、第一の様態の手順では、方法は、
a’)シュウ酸沈殿によって、シュウ酸ウラン(IV)粒子の水性懸濁液S1、シュウ酸プルトニウム(IV)粒子の水性懸濁液S2、及びシュウ酸アクチニド(IV)粒子の水性懸濁液S3を調製する工程と、
b’)水性懸濁液S1、S2及びS3を互いに混合して、シュウ酸ウラン(IV)粒子、シュウ酸プルトニウム(IV)粒子、及びシュウ酸アクチニド(IV)粒子を含む水性懸濁液S1+2+3を得る工程と、
c’)水性懸濁液S1+2+3を、水性相と、シュウ酸ウラン(IV)粒子、シュウ酸プルトニウム(IV)粒子、及びシュウ酸アクチニド(IV)粒子を含む固相とに分離する工程と、
d’)固相を焼成して、シュウ酸ウラン(IV)粒子を八酸化三ウラン粒子へ、シュウ酸プルトニウム(IV)粒子を二酸化プルトニウム粒子へ、及びシュウ酸アクチニド(IV)粒子を二酸化アクチニド(IV)粒子へ変換する工程と
を含み、工程b’)及びc’)は、同時に又は逐次的に実施される。
【0045】
この場合、シュウ酸アクチニド(IV)粒子の水性懸濁液は、水性懸濁液S1及びS2の調製について先に記載されたものと同じモダリティーに従って、ただし水溶液A1及びA’1の代わりに、それらではなく、このアクチニド(IV)の硝酸塩の水溶液を使用して調製される。
【0046】
また、工程b’)、c’)及びd’)は、工程b)、c)及びd)を実行するために先に記載されたものと同じモダリティーに従って実施される。
【0047】
第二の様態の手順では、方法は、
a’’)シュウ酸沈殿によって、ウラン(IV)とアクチニド(IV)の複シュウ酸塩粒子の水性懸濁液S1、及びシュウ酸プルトニウム(IV)粒子の水性懸濁液S2を調製する工程と、
b’’)水性懸濁液S1を水性懸濁液S2と混合して、ウラン(IV)とアクチニド(IV)の複シュウ酸塩粒子、及びシュウ酸プルトニウム(IV)粒子を含む水性懸濁液S1+2を得る工程と、
c’’)水性懸濁液S1+2を、水性相と、ウラン(IV)とアクチニド(IV)の複シュウ酸塩粒子、及びシュウ酸プルトニウム(IV)粒子によって形成される固相とに分離する工程と、
d’’)固相を焼成して、(1)ウラン(IV)とアクチニド(IV)の複シュウ酸塩粒子を八酸化三ウラン粒子及び二酸化アクチニド(IV)粒子へ、並びに(2)シュウ酸プルトニウム(IV)粒子を二酸化プルトニウム粒子へ変換することによって、粉末を得る工程と
を含み、工程b’’)及びc’’)は、同時に又は逐次的に実施される。
【0048】
この場合、水性懸濁液S1は、水性懸濁液S1を調製するために先に記載されたものと同じモダリティーに従って、ただし硝酸ウラン(IV)部分を硝酸アクチニド(IV)で置き換えた水溶液を使用して調製される。
【0049】
更に、工程b’’)、c’’)及びd’’)も、工程b)、c)及びd)を実施するために先に記載されたものと同じモダリティーに従って実施される。
【0050】
既に述べられた利点に加え、本発明の方法は、以下の利点をもたらす。
【0051】
ウラン(IV)及びプルトニウム(IV)は、水性懸濁液S1とS2を混合するときのみ互いに接触するため、ウランとプルトニウムの間に酸化還元反応が起こるリスクが回避される。これにより、これらのカチオンの酸化状態が変化する、すなわち、ウランが定量的に沈殿するのを妨げる可能性がある、プルトニウム(IV)からプルトニウム(III)への還元、及びウラン(IV)からウラン(VI)への酸化が起こるリスクが防止される。
【0052】
また、本発明の方法により、プルトニウム含有量が10原子%超~50原子%超の広い範囲で変動し得る、ウラン及びプルトニウム酸化物の粉末を製造することができる。
【0053】
また、シュウ酸沈殿に使用される溶液A1及びA’1にそれぞれ含まれるウラン(IV)及びプルトニウム(IV)の濃度、又は水性懸濁液S1及びS2が互いに混合される比率のいずれかに影響を及ぼすことによって、製造されるウラン及びプルトニウム酸化物の粉末のPu/(U+Pu)比を望ましい比に調整することができる。シュウ酸アクチニド(IV)の、より詳細にはシュウ酸ウラン(IV)及びシュウ酸プルトニウム(IV)の水性媒体への溶解度は類似しており、且つ本発明の方法の操作条件下で非常に低いため、シュウ酸沈殿はすべてのアクチニド(IV)に対して定量的(99%より高い収率で)である。したがって、それぞれ水溶液A1及びA’1に存在するウラン(IV)及びプルトニウム(IV)のシュウ酸塩への変換は、製造されるウラン及びプルトニウム酸化物の粉末中の、これらの元素の含有量に影響を及ぼさない。
【0054】
したがって、本発明の方法を用いて、核燃料の製作のための目標のプルトニウム含有量、例えば、MOX燃料に対して10~30原子%を初めから有する酸化物粉末を調製すること、及び、後にウラン酸化物粉末で希釈されて核燃料の製作に望ましい値に調整される、50原子%より高いプルトニウム含有量を有する親酸化物粉末を調製することができる。
【0055】
本発明の方法により、製造されるウラン及びプルトニウム酸化物の粉末に、トリウム又はネプツニウム酸化物を容易に組み込むこともでき、ここでもまた、これらの粉末中のこの酸化物の含有量を調整することが可能である。そのため、再利用可能な使用済み核燃料の元素量が増加することによって、使用済み核燃料の処理から生じる最終廃棄物の放射性毒性が低減し得る。
【0056】
更に、使用済み核燃料を処理するための方法であって、ウランの精製とプルトニウムの精製を別々に管理することを目的とし、このため結果として、PUREX法の場合のように、一方が精製ウランを含み他方が精製プルトニウムを含む2つの水性流が得られる方法の下流、及び、使用済み核燃料を処理するための方法であって、精製工程においてウランとプルトニウムが確実に共管理される方法の下流の両方で実現可能である利点が提供される。
【0057】
最後に、本発明の方法は、管理及び最終状態調整が複雑になるという点で不利となり得るpH調節剤及び/又は錯化剤のあらゆる他の添加を伴わずに、主に硝酸から形成され、適度の量の沈殿剤を含む残存水性排出物の管理を著しく簡単にするという利点を有する。
【0058】
本発明の他の特性及び利点は、本発明の実施形態の一例に関する、以降の残りの説明を読むことによって、及び添付の図面を参照することによって明らかになる。
【0059】
明らかに、この例は本発明を例示する目的のみで示し、本発明を決して制限するものではない。
【0060】
[本発明の方法の実施形態の例]
この実施例は、硝酸ウラン(IV)の水溶液A1、及び硝酸プルトニウム(IV)と硝酸ウラン(VI)の水溶液A’1からの、U3O8粒子とPuO粒子の混合物からなる粉末の調製に関する。
【0061】
水溶液A1は、0.15mol/Lの硝酸ウラン(IV)又は式U(NO3)4の硝酸ウラナス、2.5mol/Lの硝酸、及び0.06mol/LのヒドラジニウムイオンN2H5
+(硝酸ヒドラジンN2H5NO3の形態で供給された)を含み、水溶液A’1は、0.15mol/Lの、式Pu(NO3)4の硝酸プルトニウム(IV)、0.038mol/Lの硝酸ウラン(VI)又は式UO2(NO3)2の硝酸ウラニル、及び2.5mol/Lの硝酸を含む。
【0062】
水溶液A1の硝酸ウラン(IV)の濃度及び水溶液A’1の硝酸プルトニウム(IV)の濃度は、関与する水溶液の体積を考慮して、Pu(IV)/U(IV)+Pu(IV)の初期モル比が0.45となるように選択される。
【0063】
1.粉末の調製:
本発明では、U3O8とPuO2の粉末の調製は、逐次的に以下を含む:
- シュウ酸沈殿によって、式U(C2O4)2・6H2Oのシュウ酸ウラン(IV)粒子の水性懸濁液S1、及び式Pu(C2O4)2・6H2Oのシュウ酸プルトニウム(IV)粒子の水性懸濁液S2を調製する工程と、
- 水性懸濁液S1及びS2を混合して、シュウ酸ウラン(IV)粒子及びシュウ酸プルトニウム(IV)粒子の両方を含む水性懸濁液S1+2を得る工程と、
- 上述のように得られた懸濁液S1+2を、水性相と、シュウ酸ウラン(IV)粒子及びシュウ酸プルトニウム(IV)粒子から形成される固相とに分離する工程と、
- 上述のように得られた固相を焼成して、一方でシュウ酸ウラン(IV)粒子をU3O8粒子へ、他方でシュウ酸プルトニウム(IV)粒子をPuO2粒子へ変換する工程。
【0064】
*水性懸濁液S
1及びS
2の調製:
図1に示されるように、シュウ酸ウラン(IV)粒子の水性懸濁液S
1を、撹拌システム11、12及びオーバーフロー13を備え、最初に0.05mol/Lのシュウ酸、0.039mol/Lのヒドラジニウムイオン(同様に、硝酸ヒドラジンの形態で提供された)、及び2mol/Lの硝酸を含む水溶液14が入った反応器10で調製する。
【0065】
反応器10に、それぞれ入口15及び16を介して、水溶液A
1(
図1で参照番号17)及び0.7mol/Lのシュウ酸を含む水溶液A
2(
図1で参照番号18)を投入する。
【0066】
反応器10への水溶液A1及びA2の添加速度を、各々が流量計を備えたポンプ19及び20を用いてそれぞれ制御し、水溶液A1は21.7mL/分、水溶液A2は11.7mL/分であることから、ウラン(IV)のシュウ酸沈殿の化学量論的条件に対してシュウ酸が過剰になる。
【0067】
水溶液A1及びA2を反応器10に添加すると、ウラン(IV)がシュウ酸ウラン(IV)粒子の形態で沈殿する反応媒体が形成され、粒子はオーバーフロー13を介して、このオーバーフローの自由端の下に位置する容器に放出される。次に、このようにして形成された水性懸濁液S1は、ポンプ23を備えたライン22を介して容器から排出される。
【0068】
シュウ酸プルトニウム(IV)粒子の水性懸濁液S
2を調製するために、先に使用した水溶液A
2のものと同一の組成を有する水溶液A’
2、及び以下を除いて
図1に示されるものと同様のアセンブリを使用する。
- 第一に、当初反応器10に入っていた水溶液14を、0.05mol/Lのシュウ酸、0.02mol/Lのウラン(VI)及び2mol/Lの硝酸を含む水溶液で置き換える;及び
- 第二に、水溶液A
1を水溶液A’
1で置き換える。
【0069】
流速条件は、シュウ酸ウラン(IV)粒子の水性懸濁液S1の調製に関して先に記載されたものと同じである。
【0070】
*水性懸濁液S
1及びS
2の混合並びに懸濁液S
1+2の2相への分離:
これらの工程は、
図2に示されるアセンブリを使用して実施する。
【0071】
この図で見ることができるように、水性懸濁液S1及びS2のそれぞれは、Y字連結部27の分岐の1つにあるライン、それぞれ25及び26によって運搬され、Y字連結部27の第三の分岐(ここで、これらの水性懸濁液が合わされて一緒に混和され、水性懸濁液S1+2が形成される)は、その端部が濾過システムの真上に位置するため、この懸濁液を水性相(又は濾液)と固相(又はケーキ)とに分離することを可能とする。
【0072】
この濾過システムは、シュウ酸塩粒子をその上に保持するフィルター(例えば、Whatman(商標)GF/Bフィルタータイプのガラスマイクロファイバーフィルター)を底部に備えるブフナー漏斗28と、漏斗の下に配置され、懸濁液S1+2の水性相が収集される真空フラスコ29からなる。
【0073】
連結部27の水性懸濁液S1及びS2の入口流速を、各々流量計を備えたポンプ、それぞれ30及び31によって制御し、これらの流速は、水性懸濁液S1は48.1mL/分、及び水性懸濁液S2は39.9mL/分である。
【0074】
水性懸濁液S1+2の濾過は、フラスコ29が真空下に置かれることなく実施されるため、シュウ酸塩粒子はフィルター上で均質に分布する。ブフナー漏斗28の容積が最大容量に達すると、真空ポンプ32によってフラスコ29を真空下に置き、シュウ酸塩粒子から形成されるケーキを脱水する。
【0075】
*固相の焼成:
先に得られたシュウ酸塩粒子のケーキを、空気でフラッシしながら焼成する。
【0076】
これを行うために、粒子のケーキを、20℃/分で昇温させながら温度が700℃に達するまで加熱したオーブンに置く。この温度を1時間維持する。そして加熱を停止し、オーブンの温度が室温に戻るまで、粒子のケーキをオーブンに放置する。フラッシングガスの流速は、オーブンの容量が、焼成時間を通してこのガスで10回入れ替わるようなものである。
【0077】
この焼成の終わりに、U3O8粒子とPuO2粒子の混合物からなる粉末が得られる。
【0078】
2.分析:
*濾液の分析:
濾過工程の終わりに得られた濾液を分析して、その金属カチオン組成を判定した。分析により、この濾液は1mg/L~10mg/Lのウラン(IV)、20mg/L~25mg/Lのプルトニウム(IV)、及び3g/L~4g/Lのウラン(VI)を含むことが示された。
【0079】
これにより、水性懸濁液S1及びS2を調製するために上記で適用された沈殿の化学的条件は、ウラン(IV)及びプルトニウム(IV)のほぼ定量的な沈殿を可能とすることが確認される。したがって、これらの懸濁液の混合工程で流速を調節することによって、Pu(IV)/U(IV)+Pu(IV)の初期モル比と同様のPu(IV)/U(IV)+Pu(IV)モル比を、シュウ酸塩粒子のケーキで見出すことができる。
【0080】
また、水溶液A’1のウラン(VI)の初期濃度により、このウランの全体が濾液に含まれることが見出される。
【0081】
*シュウ酸塩粒子の分析:
水性懸濁液S1及びS2並びに水性懸濁液S1+2を、レーザー粒径分析(MALVERN Instruments社製粒径分析器)に供した。
【0082】
下のTable(表1)は、これらの懸濁液のシュウ酸塩粒子について得られた、体積平均直径値(D[4,3]と表記しμm単位で表す)を示す。
【0083】
【0084】
互いに近接して45μm周辺であるこれらの粒径値は、プルトニウム(IV)をシュウ酸塩へ変換する産業用装置で従来的に得られるシュウ酸プルトニウム(IV)粒子のものと同等である。
【0085】
また、
図3は、ここでもレーザー粒径分析器によって、水性懸濁液S
1+2について得られた粒径分布を示す。
【0086】
水性懸濁液S1及びS2並びに水性懸濁液S1+2を同様に、ただし濾過及び脱水後に、X線回折分析に供した(波長λにおけるKα線が1.5418Åである銅対陰極、及びBRUKER AXS社製の直線型検出器を備えた、θ~2θ構成のBRUKER AXS社製X線回折計)。
【0087】
このように得られたX線回折図を、
図4A、及び
図4Aの2θ=14°に位置するピークにおける、
図4Aの拡大図に対応する
図4Bに示す。
【0088】
回折
図1が水性懸濁液S
1に対応し、回折
図2が水性懸濁液S
2に対応し、回折
図3が水性懸濁液S
1+2に対応するこれらの図に示されるように、水性懸濁液S
1+2の2つのシュウ酸塩相は、単斜晶型An(C
2O
4)
2・6H
2Oの同一の構造で結晶化する。
【0089】
この結晶化形態は、濾過ケーキ中に15%のオーダーの重量分率の水しか保持しないため、このケーキを形成するシュウ酸ウラン(IV)粒子とシュウ酸プルトニウム(IV)粒子の混合物に粘着性をほとんど付与しないという利点を有する。
【0090】
回折
図2及び回折
図3において、シュウ酸ウラン(VI)に対応し得るピークが存在しないことが留意される。
【0091】
前述に示した通り、ウラン(IV)はプルトニウム(IV)の強力な還元剤である。シュウ酸ウラン(IV)粒子の水性懸濁液とシュウ酸プルトニウム(IV)粒子の水性懸濁液を別々に調製することによって、これらのシュウ酸塩粒子が後に互いに混合されるときに、水性相の酸化還元効果を無効にすることができる。これは
図5に実証され、
図5では、15時間放置され熟成された、懸濁液S
1+2の試料のウラン(IV)及びプルトニウム(IV)の濃度の測定では、これらの粒子の化学的安定性が疑われるような現象は何ら検出され得ないことが示される。
【0092】
更に、二次電子モードのSEM(EDS検出器及びWDS検出器を伴うZEISS社製電界効果電子顕微鏡)を用いて撮影された、水性懸濁液S
1+2の濾過ケーキの写真に対応する
図6に示されるように、このケーキのシュウ酸ウラン(IV)粒子とシュウ酸プルトニウム(IV)粒子の分布は均質である。
【0093】
*酸化物粒子の分析:
焼成工程の終わりに得られた粉末を分析に供して、そのBET比表面積、その粒径分布(レーザー粒径分析によって)、その組成(X線回折によって)、及びその均質性(SEMによって)を評価した。
【0094】
レーザー粒径、X線回折及びSEM分析は、先に示されるものと同じ機器を使用して実行した。
【0095】
これらの分析によって、粉末は、
- 約3m
2/gの比表面積を有し、
- 約15μmの体積平均直径D[4,3]を有し、
- 前記粉末のX線回折図(1と表記)と、八酸化三ウラン粒子及び二酸化プルトニウム粒子(それぞれ2及び3と表記)の計算された回折図の両方を示す
図7に示されるように、U
3O
8及びPuO
2のみからなり、且つ
-
図8のSEM写真によって示される、水性懸濁液S
1+2の濾過ケーキのシュウ酸ウラン(IV)相及びシュウ酸プルトニウム(IV)相について焼成前に得られたものと一致する、U
3O
8相とPuO
2相間の均質性を示す
ことが示された。
【符号の説明】
【0096】
10 反応器
11 撹拌システム
12 撹拌システム
13 オーバーフロー
14 水溶液
15 入口
16 入口
17 水溶液A1
18 水溶液A2
19 ポンプ
20 ポンプ
22 ライン
23 ポンプ
25 ライン
26 ライン
27 Y字連結部
28 ブフナー漏斗
29 真空フラスコ
30 ポンプ
31 ポンプ
32 真空ポンプ