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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】カーテンエアバッグ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/237 20060101AFI20220830BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20220830BHJP
   B60R 21/213 20110101ALI20220830BHJP
【FI】
B60R21/237
B60R21/2338
B60R21/213
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020561259
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2019047029
(87)【国際公開番号】W WO2020129590
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2018238812
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智也
(72)【発明者】
【氏名】村山 貴士
(72)【発明者】
【氏名】石垣 良太
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0375710(US,A1)
【文献】特開2007-161167(JP,A)
【文献】特開2016-022918(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0007121(US,A1)
【文献】特開2000-296752(JP,A)
【文献】特開2015-039928(JP,A)
【文献】特開2015-085787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/237
B60R 21/2338
B60R 21/213
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられ、インフレータから供給されるガスによって膨張展開し、一面及び他面を有するカーテンエアバッグであって、
下縁に沿った第1領域と、
第1折り線を境界にして、前記第1領域の上方に隣り合う第2領域と、
該第2領域を挟んで前記第1折り線の反対側に形成された第2折り線を境界にして、前記第2領域の上方に隣り合う第3領域と
を備え、
前記第2領域の前記一面側に対向するように、前記第1領域は前記第1折り線にて折り返された状態とされており、
折り返された前記第1領域が前記第2領域と前記第3領域との間に挟まれるように、前記第2領域は前記第2折り線にて折り返された状態とされており、
前記第2折り線を巻始めにして、前記第3領域は前記他面側で上方に向かって巻き上げられた状態とされており、
車体に取り付けられて収納された状態において、前記第1領域及び第2領域は前記第3領域の内側に設けられており、
前記第1領域、第2領域及び第3領域は非膨張部を有し、
前記第2折り線にて折り返された前記第1領域及び第2領域と、前記第3領域とを前記非膨張部にて仮止めする仮縫製部を備え、
前記仮縫製部は、前記車体の前後方向における端部及び中間部に設けられる
カーテンエアバッグ。
【請求項2】
車体に取り付けられ、インフレータから供給されるガスによって膨張展開し、一面及び他面を有するカーテンエアバッグであって、
下縁に沿った第1領域と、
第1折り線を境界にして、前記第1領域の上方に隣り合う第2領域と、
該第2領域を挟んで前記第1折り線の反対側に形成された第2折り線を境界にして、前記第2領域の上方に隣り合う第3領域と
を備え、
前記第2領域の前記一面側に対向するように、前記第1領域は前記第1折り線にて折り返された状態とされており、
折り返された前記第1領域が前記第2領域と前記第3領域との間に挟まれるように、前記第2領域は前記第2折り線にて折り返された状態とされており、
前記第2折り線を巻始めにして、前記第3領域は前記他面側で上方に向かって巻き上げられた状態とされており、
車体に取り付けられて収納された状態において、前記第1領域及び第2領域は前記第3領域の内側に設けられており、
巻き装置に係止する為の係止孔が前記第2領域の上側に配されている
カーテンエアバッグ。
【請求項3】
車体に取り付けられ、インフレータから供給されるガスによって膨張展開し、一面及び他面を有するカーテンエアバッグであって、
下縁に沿った第1領域と、
第1折り線を境界にして、前記第1領域の上方に隣り合う第2領域と、
該第2領域を挟んで前記第1折り線の反対側に形成された第2折り線を境界にして、前記第2領域の上方に隣り合う第3領域と
を備え、
前記第2領域の前記一面側に対向するように、前記第1領域は前記第1折り線にて折り返された状態とされており、
折り返された前記第1領域が前記第2領域と前記第3領域との間に挟まれるように、前記第2領域は前記第2折り線にて折り返された状態とされており、
前記第2折り線を巻始めにして、前記第3領域は前記他面側で上方に向かって巻き上げられた状態とされており、
車体に取り付けられて収納された状態において、前記第1領域及び第2領域は前記第3領域の内側に設けられており、
前記第1領域、第2領域及び第3領域は非膨張部を有し、
前記第2折り線にて折り返された前記第1領域及び第2領域と、前記第3領域とを前記非膨張部にて仮止めする仮縫製部を備え、
シームによって区切られた膨張部を備え、
前記非膨張部は前記シームの間に配されている
カーテンエアバッグ。
【請求項4】
展開時において、前記車体のドアトリムの上縁部に配置されるように、前記第1折り線は形成されている
請求項1から3のいずれか一つに記載のカーテンエアバッグ。
【請求項5】
前記第1領域は、展開時において前記車体の前側に配置され、前記車体のドアトリムの上縁部よりも下方に延びる下方膨張部を含む
請求項に記載のカーテンエアバッグ。
【請求項6】
前記車体の前後方向に引っ張るために、一端部が前記車体に固定され、他端部が前後方向端部に取り付けられたストラップを備え、
前記ストラップは、前記車体の上下方向における前記第2折り線の上方且つ折り返された前記第2領域の上下幅の範囲内に配置されている
請求項1からのいずれか一つに記載のカーテンエアバッグ。
【請求項7】
前記第1領域、第2領域及び第3領域は非膨張部を有し、
前記第2折り線にて折り返された前記第1領域及び第2領域と、前記第3領域とを前記非膨張部にて仮止めする仮縫製部を備える
請求項に記載のカーテンエアバッグ。
【請求項8】
前記仮縫製部は、前記車体の前後方向における端部及び中間部に設けられる
請求項3又は7に記載のカーテンエアバッグ。
【請求項9】
シームによって区切られた膨張部を備え、
前記非膨張部は前記シームの間に配されている
請求項1又は7に記載のカーテンエアバッグ。
【請求項10】
前記車体の上下方向における前記第1領域及び第2領域の幅は同じである
請求項1からのいずれか一つに記載のカーテンエアバッグ。
【請求項11】
巻き装置に係止する為の係止孔が前記第2領域の上側に配されている
請求項1又は3に記載のカーテンエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、カーテンエアバッグ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの車両は、衝突時に乗員を保護することを目的としてエアバッグ装置を装備している。車種によっては、カーテンエアバッグ装置を装備している。カーテンエアバッグ装置は、車両のドアの上側に折り畳んで収納されたカーテンエアバッグと、車両の衝突時に動作し、カーテンエアバッグの内部にガスを噴射するインフレータとを備える。カーテンエアバッグは、インフレータの噴射ガスの作用により車室内で膨張展開し、乗員は、膨張展開したエアバッグに受け止められ、車室内の各部への側面衝突から保護される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-22918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
展開時において、カーテンエアバッグ前部の下端部分は他の部分よりも下側に突出する。収納時において、突出する部分が中心に配されるように、カーテンエアバッグは巻回される。斜め方向からの衝突が発生した場合、車外に向けた慣性力がカーテンエアバッグに作用し、突出した部分が窓から車外に出ることがあり、乗員保護性能が低下するおそれがある。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、斜め方向からの衝突が発生しても、乗員保護性能の低下を抑制することができるカーテンエアバッグ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るカーテンエアバッグは、車体に取り付けられ、インフレータから供給されるガスによって膨張展開し、一面及び他面を有するカーテンエアバッグであって、下縁に沿った第1領域と、第1折り線を境界にして、前記第1領域の上方に隣り合う第2領域と、該第2領域を挟んで前記第1折り線の反対側に形成された第2折り線を境界にして、前記第2領域の上方に隣り合う第3領域とを備え、前記第2領域の前記一面側に対向するように、前記第1領域は前記第1折り線にて折り返された状態とされており、折り返された前記第1領域が前記第2領域と前記第3領域との間に挟まれるように、前記第2領域は前記第2折り線にて折り返された状態とされており、前記第2折り線を巻始めにして、前記第3領域は前記他面側で上方に向かって巻き上げられた状態とされており、車体に取り付けられて収納された状態において、前記第1領域及び第2領域は前記第3領域の内側に設けられている。
【0007】
本開示においては、縁に沿った第1領域、例えば展開時における下縁部分が第1折り線にて折り返され、第1領域が折り返された状態で第2領域は第2折り線にて折り返され、カーテンエアバッグの一面側に第1領域及び第2領域は配置されている。第3領域はカーテンエアバッグの他面側、即ち第1領域及び第2領域の逆側に巻かれている。そのため、カーテンエアバッグの他面を外側に向けて、カーテンエアバッグを配置した場合、展開するカーテンエアバッグに車外に向けた慣性力が作用した場合でも、第1領域及び第2領域は車内に向けて開くので、車外に出ない。
【0008】
本開示に係るカーテンエアバッグは、展開時において、前記車体のドアトリムの上縁部に配置されるように、前記第1折り線は形成されている。
【0009】
本開示においては、展開時に第1折り線はドアトリムの上縁部に配置されるので、第1領域はドアの内側に展開されやすくなる。
【0010】
本開示に係るカーテンエアバッグは、前記第1領域は、展開時において前記車体の前側に配置され、前記車体のドアトリムの上縁部よりも下方に延びる下方膨張部を含む。
【0011】
本開示においては、下方膨張部はドアの内側にて膨張し、乗員のドアへの衝突を防止することができる。
【0012】
本開示に係るカーテンエアバッグは、前記車体の前後方向に引っ張るために、一端部が前記車体に固定され、他端部が前後方向端部に取り付けられたストラップを備え、前記ストラップは、前記車体の上下方向における前記第2折り線の上方且つ折り返された前記第2領域の上下幅の範囲内に配置されている。
【0013】
本開示においては、引っ張りが付与されるストラップよりも、下側に第2領域が配置されているので、第1領域及び第2領域は高速に展開される。
【0014】
本開示に係るカーテンエアバッグは、前記第1領域、第2領域及び第3領域は非膨張部を有し、前記第2折り線にて折り返された前記第1領域及び第2領域と、前記第3領域とを前記非膨張部にて仮止めする仮縫製部を備える。
【0015】
本開示においては、仮縫製部を設けることによって、第3領域を巻く場合に、第1領域及び第2領域の展開を防止することができる。また非膨張部に仮縫製部を設けているので、仮縫製部はカーテンエアバッグの膨張を妨げない。
【0016】
本開示に係るカーテンエアバッグは、前記仮縫製部は、前記車体の前後方向における端部及び中間部に設けられる。
【0017】
本開示においては、前後方向の端部及び中間部を仮止めすることによって、巻き装置を使用してエアバッグを巻く場合に、巻き装置に対して第1領域及び第2領域の位置がずれることを防止することができる。
【0018】
本開示に係るカーテンエアバッグは、シームによって区切られた膨張部を備え、前記非膨張部は前記シームの間に配されている。
【0019】
本開示においては、シームの間に縫製部は設けられているので、縫製部はカーテンエアバッグの膨張に影響しない。
【0020】
本開示に係るカーテンエアバッグは、前記車体の上下方向における前記第1領域及び第2領域の幅は同じである。
【0021】
本開示においては、折り返す領域は最小になり、また第1折り線の上下位置が設定された場合、第2折り線の位置も自ずと設定され、第1折り線及び第2折り線の設定が容易である。
【0022】
本開示に係るカーテンエアバッグは、巻き装置に係止する為の係止孔が前記第2領域の上側に配されている。
【0023】
本開示においては、厚みが大きい折り返された領域を避けて、厚みの薄い第3領域に係止孔を形成し、係止孔の形成を容易にする。
【0024】
本開示に係るカーテンエアバッグの製造方法は、車体に取り付けられ、インフレータから供給されるガスによって膨張展開し、一面及び他面を有するカーテンエアバッグの製造方法であって、展開されたカーテンエアバッグの下縁に沿った第1領域を、第1折り線を境界にして前記第1領域の上方に隣り合う第2領域の前記一面側に前記第1領域が対向するように、前記第1折り線にて折り返し、前記第2領域と、第2折り線を境界にして前記第2領域の上方に隣り合う第3領域との間に、折り返された前記第1領域が挟まれるように、前記第2折り線にて前記第2領域を折り返し、折り返された前記第1領域及び第2領域と、前記第3領域とを仮止めし、前記第2折り線を巻始めにして、前記第3領域を他面側で上方に向かって巻き上げる。
【0025】
本開示においては、縁に沿った第1領域、例えば展開時における下縁部分が第1折り線にて折り返され、第1領域が折り返された状態で第2領域は第2折り線にて折り返され、カーテンエアバッグの一面側に第1領域及び第2領域は配置されている。第3領域はカーテンエアバッグの他面側、即ち第1領域及び第2領域の逆側に巻かれている。そのため、カーテンエアバッグの他面を外側に向けて、カーテンエアバッグを配置した場合、展開するカーテンエアバッグに車外に向けた慣性力が作用した場合でも、第1領域及び第2領域は車内に向けて開くので、車外に出ない。
【発明の効果】
【0026】
本開示に係るカーテンエアバッグ及びその製造方法にあっては、縁に沿った第1領域、例えば展開時における下縁部分が第1折り線にて折り返され、第1領域が折り返された状態で第2領域は第2折り線にて折り返され、カーテンエアバッグの一面側に第1領域及び第2領域は配置されている。第3領域はカーテンエアバッグの他面側、即ち第1領域及び第2領域の逆側に巻かれている。そのため、カーテンエアバッグの他面を外側に向けて、カーテンエアバッグを配置した場合、展開するカーテンエアバッグに車外に向けた慣性力が作用した場合でも、第1領域及び第2領域は車内に向けて開くので、車外に出ず、乗員保護性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】カーテンエアバッグの取り付け状態を示す模式的側面図である。
図2】展開されたエアバッグを示す模式的右側面図である。
図3】タブ及び固定具を示す部分拡大右側面図である。
図4図3に示すIV-IV線を切断線とした断面図である。
図5】エアバッグの製造方法を説明するエアバッグの側面図である。
図6】エアバッグの製造方法を説明するエアバッグの側面図である。
図7】エアバッグの製造方法を説明するエアバッグの側面図である。
図8】エアバッグの製造方法を説明するエアバッグの側面図である。
図9】エアバッグの製造方法を説明するエアバッグの側面図である。
図10】エアバッグの製造方法を説明するエアバッグの側面図である。
図11A】エアバッグの製造方法を説明するエアバッグの模式的前面図である。
図11B】エアバッグの製造方法を説明するエアバッグの模式的前面図である。
図11C】エアバッグの製造方法を説明するエアバッグの模式的前面図である。
図11D】エアバッグの製造方法を説明するエアバッグの模式的後面図である。
図11E】エアバッグの製造方法を説明するエアバッグの模式的後面図である。
図11F】エアバッグの製造方法を説明するエアバッグの模式的後面図である。
図11G】エアバッグの製造方法を説明するエアバッグの模式的前面図である。
図11H】エアバッグの製造方法を説明するエアバッグの模式的前面図である。
図12A】エアバッグの膨張展開を説明する模式的断面図である。
図12B】エアバッグの膨張展開を説明する模式的断面図である。
図12C】エアバッグの膨張展開を説明する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下本発明を実施の形態に係るカーテンエアバッグ1を示す図面に基づいて説明する。図1は、カーテンエアバッグの取り付け状態を示す模式的側面図である。カーテンエアバッグ(以下、エアバッグ)1は車体50のルーフサイドレール部51に設けられており、ヘッドライニング(図示せず)によりカバーされる。インフレータ2はルーフサイドレール部51に設けられている。ルーフサイドレール部51の下方にドアトリム52が設けられており、窓ガラス53はルーフサイドレール部51とドアトリム52との間に配置される。インフレータ2はエアバッグ1内へガスを供給する。
【0029】
図2は、展開されたエアバッグ1を示す模式的右側面図、図3は、タブ3及び固定具4を示す部分拡大右側面図、図4は、図3に示すIV-IV線を切断線とした断面図である。エアバッグ1は対称形状をもつシート材料が重ね合わされて一体となった袋状物である。なお、本実施の形態においてはエアバッグ1を袋状に縫合された織物等の2枚の生地から構成した例につき説明するが、最初から袋状に織った一枚の織物から製造しても良い。
【0030】
矩形状をなすエアバッグ1の長手方向(前後方向)上側には、複数のタブ3が所定の距離を隔てて突設されている。またタブ3に対応した複数の固定具4がタブ3の下側にて、エアバッグ1に設けられている。固定具4の上部には開口4aが形成されており、固定具4の下部には、タブ3を掛止するためのタブ掛止部4cが形成されている。開口4aにはループ状基布4bが挿入されており、該ループ状基布4bを介して、固定具4はエアバック1の基布1aに取り付けられている。固定具4はループ状基布4bによって、基布1aに対し、前後方向に平行な軸回りに回転可能である。タブ3及びループ状基布4bは、エアバック1の基布1aに縫製によって一体的に設けられている。タブ3及び固定具4は、例えばエアバッグ1の右面に配置される。
【0031】
タブ3は、エアバッグ1が巻回された状態又は折り畳まれた状態を保持するために、巻回された又は折り畳まれたエアバッグ1を周方向に少なくとも一周し、固定具4のタブ掛止部4cに掛止される。例えば、タブ掛止部4cは突部であり、タブ3は、貫通孔を有し、伸縮性を有する布によって構成される。タブ3の貫通孔にタブ掛止部4cを挿入させることによって、タブ3はタブ掛止部4cに掛止される。エアバッグ1は車体50のルーフサイドレール部51に固定具4によって取り付けられる。またエアバッグ1の上縁部における前後方向中央部にインフレータ2に接続するための接続部5が設けられている。接続部5はエアバッグ1の上縁部から上方に突出している。
【0032】
エアバッグ1の前部における下側部分は下方に突出し、第1領域11を構成する。第1領域11と、エアバッグ1の第1領域11以外の部分との境界に、前後方向に延びる第1折り線11aが形成される。第1折り線11aはエアバッグ1の下縁と略平行である。第1領域11の上側に隣接する領域は第2領域12を構成する。第2領域12は前後方向に延びた矩形状をなし、第2領域12の上下幅は第1領域11と略同じ幅である。第2領域12の上側に隣接する領域は第3領域13を構成する。第2領域12と第3領域13との境界に第2折り線12aが形成される。
【0033】
エアバッグ1にはシーム6が設けられており、該シーム6によって、膨張部7と非膨張部8とが区切られている。膨張部7及び非膨張部8は第1領域11、第2領域12及び第3領域13に亘って形成されている。非膨張部8は、エアバッグ1の周囲に形成された部分と、該部分から中央部に延びた部分とを含む。膨張部7は主にエアバッグ1の中央部に形成されており、第1領域11に形成された下方膨張部7aを含む。展開時において、下方膨張部7aはドアトリム52の上縁部よりも下方に延びる。
【0034】
エアバッグ1における第2折り線12aの上側にストラップ9が設けられている。ストラップ9は細長く、前後方向に延びる。ストラップ9の後端部が、エアバッグ1の前縁部における非膨張部8に取り付けられている。ストラップ9の前端部を車体50に固定することによって、エアバッグ1は前後方向に引っ張られ、エアバッグ1にテンションが付与される。後述するように、第2領域12を第2折り線12aにて上側に折り返した場合、ストラップ9は折り返された第2領域12の上下幅の範囲内に配置される。
【0035】
エアバッグ1を巻く巻き装置(図示略)に係止する為の係止孔10がストラップ9の上側に設けられている。係止孔10は非膨張部8に形成されている。後述するように、第2領域12を第2折り線12aにて上側に折り返した場合、係止孔10は、折り返された第2領域12よりも上側に配置される。
【0036】
次にエアバッグ1の製造方法について説明する。図5図10は、エアバッグ1の製造方法を説明するエアバッグ1の側面図、図11A図11C図11G及び図11Hは、エアバッグ1の製造方法を説明するエアバッグ1の模式的前面図、図11D図11Fは、エアバッグ1の製造方法を説明するエアバッグ1の模式的後面図である。図2及び図11Aに示すように、初期状態において、エアバッグ1は展開されている。なお、ここでの前面及び後面は車両の前後方向に対応し、側面は車両の左右方向に対応する。図11Aは、図2に対応し、図11B図11Dは、それぞれ図5図7に対応する。図11E及び図11F図8に対応する。図11G及び図11Hは、それぞれ図9及び図10に対応する。図11A図11C図11G及び図11Hはエアバッグ1を前方から視認した図であり、図11D図11Fはエアバッグを後方から視認した図である。
【0037】
図5及び図11Bに示すように、第1領域11が第2領域12の右側面に対向するように、第1折り線11aにて第1領域11を上側に折り返す。前述したように、第1領域11及び第2領域12の上下幅は略同じなので、第1領域11及び第2領域12は、エアバッグ1の右側において、全体的に重なる。ここで「右」は、車両の後部から前方を視認したときの右方向を示す。「左」は、車両の後部から前方を視認したときの左方向を示す。
【0038】
そして、図6及び図11Cに示すように、折り返された第1領域11が第2領域12及び第3領域13の間に挟まれるように、第2折り線12aにて第2領域12を右側面の上側に向けて折り返す。そして、第1領域11及び第2領域12を仮縫製部20によって第3領域13に仮止めさせる。仮縫製部20は、第1領域11及び第2領域12を第3領域13に連結させる。仮縫製部20は、エアバッグ1の前後両端部及び前後方向中央部の三箇所に形成され、巻き装置を使用してエアバッグ1を巻く場合に、巻き装置に対する第1領域11及び第2領域12の位置ずれを防止する。仮縫製部20は、シーム6間の非膨張部8に形成され、またエアバッグ1の膨張時に仮縫製部20は切断されるので、仮縫製部20はエアバッグ1の膨張展開に影響しない。
【0039】
次に図7及び図11Dに示すように、右面及び左面を入れ替えるように、エアバッグ1をひっくり返す。ひっくり返したことによって、前後及び左右方向は逆になる。そのため、図7図8において、前後を示す矢印は図5図6とは逆にし、図11D図11Fにおいて、左右を示す矢印は図11A図11Cとは逆にした。図7において、第2領域12は第3領域13の裏側に配置されている。
【0040】
そして、図8及び図11Eの矢印に示すように、折り返された第1領域11及び第2領域12と共に、第2折り線12aを巻き始めにして、第3領域13を、エアバッグ1の左面側に巻き上げる。即ち、第1領域11及び第2領域12を折り返した方向とは逆方向に第3領域13を巻く。図8において、一点鎖線は巻き始め時におけるエアバッグ1の輪郭を示す。図8の実線及び図11Fに示すように、エアバッグ1の上端付近まで、第3領域13は巻かれる。
【0041】
そして、図9及び図11Gに示すように、左右方向を軸方向としてエアバッグ1を180度回転させて、エアバッグ1の上下を逆転させる。なお図9において、上下を示す矢印は図5図8とは逆にし、図11Gにおいて、上下を示す矢印は図11A図11Fとは逆にした。また図9の前後を示す矢印は、図7及び図8とは逆にした。
【0042】
次に図10及び図11Hに示すように、タブ3をロール状の第3領域13の外周面に巻き付けて、固定具4のタブ掛止部4cに取り付けることによって、エアバッグ1は製造される。
【0043】
エアバッグ1を車体50に取り付ける場合、固定具4によって、ルーフサイドレール部51に棒状となったエアバッグ1を固定させる。またストラップ9の前端部を車体50に固定する。
【0044】
図12A図12Cは、エアバッグ1の膨張展開を説明する模式的断面図である。図12Aに示すように、展開前のエアバッグ1は、車両の後方から視認したとき、車内の左側面(図12A図12Cでは、前方から視認しているので右側に配置されている。)において、窓ガラス53の上側に配置されている。このとき、なおエアバッグ1は図11Hに示す姿勢、即ち上下逆の姿勢であり、図11Hの右側に位置する固定具4が車内の左側面に固定されている。インフレータ2からガスが供給された場合、第3領域13がまず膨張を始め、膨張によってタブ3は固定具4から外れ、図12Bの矢印にて示すように、エアバッグ1は下方に伸びる。そして、第1領域11及び第2領域12を残して、第3領域13が完全にほどけて展開する。その後、図12Cの矢印にて示すように、折り畳まれた第1領域11及び第2領域12は膨張して、右方に、即ち車内に向けて展開する。展開したエアバッグ1の第1折り線11aはドアトリム52の上縁部に配置され、第1領域11はドアトリム52の上縁部よりも下方に延びる。
【0045】
なお図12Aに示すように、棒状となったエアバッグ1を車内に固定させた場合、第3領域13の右側面は、ロール状のエアバッグ1の径方向外側に向いており、左側面は径方向内側に向いているので、エアバッグ1と車体の左右方向は一致しない。図12B及び図12Cに示すように、エアバッグ1が下方に展開した場合、第3領域13の右側面は車体の右側を向き、左側面は車体の左側を向き、エアバッグ1と車体の左右方向は一致する。
【0046】
図2において、固定具4はタブ3の下側に配置されている。前述したように、固定具4は前後方向に平行な軸回りに回転可能である。そのため、固定具4の上下位置は変更可能であり、上下方向において、エアバッグ1の製造時における固定具4の向きと、車体に取り付けられたエアバッグ1の展開時における固定具4の向きは一致しないことがある。
【0047】
実施の形態に係るエアバッグ1及びその製造方法にあっては、展開したエアバッグ1の下縁に沿った第1領域11が第1折り線11aにて折り返され、第1領域11が折り返された状態で第2領域12は第2折り線12aにて折り返され、エアバッグ1の右側に第1領域11及び第2領域12は配置されている。第3領域13はエアバッグ1の左側、即ち第1領域11及び第2領域12の逆側に巻かれている。そのため、エアバッグ1の左面を車外に向けて、カーテンエアバッグ1を配置した場合、車外に向けた慣性力がエアバッグ1に作用した場合でも、第1領域11及び第2領域12は右方に、即ち車内に向けて展開し、車外に向けて展開しない。車外に向けて展開した場合、閉じた窓ガラス53が割れるおそれがあり、または開いた窓ガラス53から容易に車外に出るおそれがあるところ、実施の形態に係るエアバッグ1は車内に向けて展開するので、乗員保護性能の低下を抑制することができる。
【0048】
また展開時に第1折り線11aはドアトリム52の上縁部に配置されるので、第1領域11はドアの内側に展開されやすくなる。また下方膨張部7aはドアの内側にて膨張し、乗員のドアへの衝突を防止することができる。
【0049】
また引っ張りが付与されるストラップ9よりも、下側に第2領域12が配置されているので、第1領域11及び第2領域12は高速に展開される。
【0050】
また仮縫製部20を設けることによって、第3領域13を巻く場合に、第1領域11及び第2領域12の展開を防止することができる。また非膨張部8に仮縫製部20を設けているので、仮縫製部20は膨張部7の膨張を妨げない。
【0051】
またエアバッグ1の前後方向両端部及び中間部を仮止めすることによって、巻き装置を使用してエアバッグ1を巻く場合に、巻き装置に対して第1領域11及び第2領域12の位置がずれることを防止することができる。
【0052】
シーム6の間に仮縫製部20は設けられているので、仮縫製部20はエアバッグ1の膨張に影響しない。また第1領域11及び第2領域12の上下幅は同じなので、折り返す領域は最小になる。また第1折り線11aの上下位置が設定された場合、第2折り線12aの位置も自ずと設定され、第1折り線11a及び第2折り線12aの設定が容易である。
【0053】
また厚みが大きい折り返された第1領域11及び第2領域12を避けて、厚みの薄い第3領域13に係止孔10を形成し、係止孔10の形成を容易にする。
【0054】
上述した実施の形態において、第1折り線11aはエアバッグ1の下縁と略平行であるが、エアバッグ1の下縁に対して交差するように、斜めに形成されていてもよい。第1折り線11aが斜めであっても、第1領域11及び第2領域12は膨張展開時に車体50の内側に展開することができる。
【0055】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、請求の範囲内での全ての変更及び請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0056】
1 カーテンエアバッグ
2 インフレータ
6 シーム
7 膨張部
7a 下方膨張部
8 非膨張部
9 ストラップ
10 係止孔
11 第1領域
11a 第1折り線
12 第2領域
12a 第2折り線
13 第3領域
20 仮縫製部
50 車体
52 ドアトリム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図11G
図11H
図12A
図12B
図12C