(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】計時器用可動コンポーネントのための幾何学構成の検査デバイス
(51)【国際特許分類】
G04D 7/00 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
G04D7/00 Z
(21)【出願番号】P 2020570675
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2019085346
(87)【国際公開番号】W WO2020127046
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2020-12-18
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ガンギャン,エム・ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルツ,エーリヒ
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-106188(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04D 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器用可動コンポーネントのため
の検査デバイス(100)であって、
前記デバイス(100)は、第1の回転軸(D1)を定める第1の穴(101)が形成され第1の回転可能なスピンドル(10)を支持するヘッドストック(1)と、及び第2の回転軸(D2)を定める第2のスピンドル(20)を支持するテールストック(2)とを備え、
前記ヘッドストック(1)と前記テールストック(2)は、共通の土台(3)上に配置され、
少なくとも前記ヘッドストック(1)及び/又は前記テールストック(2)は、この土台(3)に対して、前記第1の回転軸(D1)と平行な共通の方向(D)における整列ガイド手段(4)に沿った並進運動を行うように少なくとも1つの自由度にしたがって動くことができ、
前記デバイス(100)は、前記第1の回転軸(D1)に対する前記第2の回転軸(D2)の同軸性を確実にし又は設定するように構成している手段を備え、
前記第2のスピンドル(20)には、前記第1の穴(101)と同じ直径を有する第2の穴(102)が形成されており、
前記デバイス(100)は、複数の取り外し可能かつ交換可能なマイクロセンタリングデバイス(5)を備え、
前記マイクロセンタリングデバイス(5)はそれぞれ、前記第1の穴(101)又は前記第2の穴(102)に区別なく挿入されるように構成しており、
前記マイクロセンタリングデバイス(5)にはそれぞれ、前記第1の穴(101)又は前記第2の穴(102)と密着摺動嵌合を行うように構成している直径を有する周部肩部(590)が
、前記マイクロセンタリングデバイス(5)の挿入方向の端部にあり、
前記マイクロセンタリングデバイス(5)はそれぞれ、前記ヘッドストック(1)及び/又は前記テールストック(2)が備える磁極(41)と連係するように構成してい
る磁性の磁極コア(42)を備え、
この磁極(41)は、前記ヘッドストック(1)と前記テールストック(2)の間の空間(90)において前記第1の回転軸(D1)のまわりの回転磁場を定
める
ことを特徴とするデバイス(100)。
【請求項2】
前記テールストック(2)は、前記テールストック(2)を前記ヘッドストック(10)の方へと押し前記テールストックの反動を減衰させる傾向のある弾性戻し手段(21)を備え、0.2Nにて較正される
ことを特徴とする請求項1に記載のデバイス(100)。
【請求項3】
少なくとも1つの前記マイクロセンタリングデバイス(5)は、管状体(43)を備
え、
前記管状体(43)の外径は、前記第1の穴(101)又は前記第2の穴(102)と密着摺動嵌合を行うように構成しており、
この管状体(43)は
、磁性の磁極コア(42)を収容する
ことを特徴とする請求項1に記載のデバイス(100)。
【請求項4】
少なくとも1つの前記センタリングデバイス(5)は、軸方向の磁場を集中させる手段を備え、
前記磁場は、前記空間(90)とは反対側の第1の軸方向の端部において前記センタリングデバイス(5)に与えられ、かつ/又は前記空間(90)の方を向いている第2の端部において前記共通の方向(D)のまわりに少なくとも1つの前記取り外し可能なセンタリングデバイス(5)によって発生する
ことを特徴とする請求項1に記載のデバイス(100)。
【請求項5】
少なくとも1つの前記マイクロセンタリングデバイス(5)は、管状体(43)を備
え、この管状体(43)の外径は、前記第1の穴(101)又は前記第2の穴(102)と密着摺動嵌合を行うように構成しており、
この管状体(43)は
、磁性の磁極コア(42)を収容し、前記軸方向の磁場を集中させるための手段を形成する
ことを特徴とする請求項4に記載のデバイス(100)。
【請求項6】
少なくとも1つの前記マイクロセンタリングデバイス(5)は、前記空間(90)の側にグリッパー(51)を備え、
このグリッパー(51)は、機械的に接触することによって計時器用可動コンポーネントの軸方向の端部と連係して、前記マイクロセンタリングデバイス(5)が前記ヘッドストック(1)又は前記テールストック(2)によって回転したときに前記軸方向の端部を回転させるように構成している
ことを特徴とする請求項1に記載のデバイス(100)。
【請求項7】
前記グリッパー(51)には、オス又はメスのコーン状の出っ張り又は凹みの支持歯列(58)があり、この支持歯列(58)は、計時器用可動コンポーネントの軸方向の端部と連係して前記可動コンポーネントを回転させるように構成している
ことを特徴とする請求項6に記載のデバイス(100)。
【請求項8】
前記グリッパー(51
)の端部において、可動コンポーネントを駆動するように、2μmRa~5μmRaの範囲内の粗さを有する
ことを特徴とする請求項6に記載のデバイス(100)。
【請求項9】
少なくとも1つの前記マイクロセンタリングデバイス(5)は、前記空間(90)の側に
、磁性の磁極材(52)を備え、
この磁極材(52)は、計時器用可動コンポーネントの磁
性の軸方向の端部と連係して、磁気的に引き合い又は反発するように構成しており、
前記磁極材(52)は、前記磁極コア(42)と並置されており又は一体化されていることを特徴とする請求項1に記載のデバイス(100)。
【請求項10】
前記磁極材(9)は、計時器用可動コンポーネントの磁
性の軸方向の端部に回転駆動トルクを伝達するように構成している
ことを特徴とする請求項9に記載のデバイス(100)。
【請求項11】
少なくとも1つの前記マイクロセンタリングデバイス(5)は、前記空間(90)の側に、検査される計時器用可動コンポーネントよりも硬い材料又はルビーによって作られた支持材(53)を備え、
この支持材(53)は、計時器用可動コンポーネントの軸方向の端部の軸方向の
移動を制限するように構成している
ことを特徴とする請求項1に記載のデバイス(100)。
【請求項12】
少なくとも前記ヘッドストック(1)は、前記第1の回転軸(D1)のまわりに前記第1のスピンドル(10)を回転させるように構成している第1の動力化手段(19)を備え、
前記第1の動力化手段(19)と前記第1のスピンドル(10)の間に、前記第1のスピンドル(10)の無制約の回転を確実にするようなカルダンジョイント又は類似のタイプの第1の連結手段(18)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のデバイス(100)。
【請求項13】
少なくとも前記テールストック(2)は、前記第2の回転軸(D2)のまわりに前記第2のスピンドル(20)を回転させるように構成している第2の動力化手段(17)を備え、
この第2の動力化手段(17)は、前記第1の動力化手段と同期させることができ、
少なくとも前記テールストック(2)は、前記第2の動力化手段(17)と前記第2のスピンドル(20)の間に、前記第2のスピンドル(20)の無制約の回転を確実にするようなカルダンジョイント又は類似のタイプの第2の連結手段(16)を備える
ことを特徴とする請求項12に記載のデバイス(100)。
【請求項14】
前記第2のスピンドル(20)は、回転するように緩みがある
ことを特徴とする請求項1に記載のデバイス(100)。
【請求項15】
前記デバイス(100)は、前記ヘッドストック(1)に対する前記共通の方向(D)に沿った前記テールストック(2)の相対的位置についての高精度設定及び/又は測定を行う手段(60)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のデバイス(100)。
【請求項16】
前記デバイス(100)は、前記第1の回転軸(D1)に対する前記第2の回転軸(D2)の位置についての側方の設定を行う側方設定手段(70)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のデバイス(100)。
【請求項17】
前記ヘッドストック(1)、前記第1スピンドル(10)、前記テールストック(2)及び前記第2スピンドル(20)の本体は、前記共通の方向(D)から離すように磁束を散乱させないように非磁性材料によって作られている
ことを特徴とする請求項1に記載のデバイス(100)。
【請求項18】
前記ヘッドストック(1)及び/又は前記テールストック(2)は、前記共通の方向(D)に沿った軸方向の力を測定し、かつ/又は前記軸方向の力の設
定値と比較するための少なくとも1つの応力ゲージを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のデバイス(100)。
【請求項19】
前記デバイス(100)は、前記共通の土台(3)を直接的又は間接的に支持し観察手段(80)を支持するように構成している主フレーム(50)を備え、
この観察手段(80)は、前記空間(90)において、2つの前記センタリングデバイス(5)によって保持される計時器用可動コンポーネントを観察かつ/又は測定するように構成しており、
前記デバイス(100)は、前記観察手段(80)の位置を設定する位置設定手段(81)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のデバイス(100)。
【請求項20】
前記主フレーム(50)は、重力
が作用する場における異なる姿勢位置にて前記計時器用可動コンポーネントを
示すように構成している少なくとも1つの回転プレート(500)を介して前記共通の土台(3)を間接的に支持するように構成している
ことを特徴とする請求項19に記載のデバイス(100)。
【請求項21】
前記デバイス(100)は、偏差に応じた生産手段の設定を変えるために、前記観察手段(80)によって得られた画像及び/測定を設定値に対して分析する手段(1010)と、偏差を計算する手段(1020)と、及び統合された製品の品質管理システム(1040)及び/又は生産管理システム(1050)とのリンク手段(1030)を備える
ことを特徴とする請求項19に記載のデバイス(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器用可動コンポーネントのための幾何学的構成の検査デバイスに関する。このデバイスは、第1の回転軸を定め第1の緩い又は動力化されたスピンドルを支持するヘッドストックと、及び第2の回転軸を定め第2の緩い又は動力化されたスピンドルを支持するテールストックとを備える。前記ヘッドストックと前記テールストックは、共通の土台上に配置され、少なくとも前記ヘッドストック及び/又は前記テールストックは、この土台に対して、前記第1の回転軸と平行な共通の方向における整列ガイド手段に沿った並進運動を行うように少なくとも1つの自由度にしたがって動くことができる。前記デバイスは、前記第1の回転軸に対する前記第2の回転軸の同軸性を確実にし又は設定するように構成している手段を備える。
【0002】
本発明は、計測ツールの分野に関し、特に、計時器用可動コンポーネントの寸法構成及び幾何学的構成の検査を行う特定の場合のための製造段階の検査ツールの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
計時器用コンポーネントの寸法構成及び幾何学的構成の検査を行うことは難しい。なぜなら、コンポーネントの大きさが非常に小さく、許容誤差が極めて小さく、そして、三次元測定センターのような通常の多目的測定手段の分解能よりも振幅が著しく小さいことが頻繁にあるためである。このために、製造段階の検査においては、検査室や実験室内におけるサンプリングや移動を必要とすることが多く、したがって、検証に時間がかかり高コストであったり、実際に汎用には使えない専用の非常に高価なツールが必要であったりする。
【0004】
可動コンポーネントの把持は特にデリケートである。なぜなら、アーバーセットの部品は、その径が小さいために、一般的な機械工学と同様に、点の間のベンチ検査のための内側センターを設けることができず、外側肩部が十分な回転ガイドを提供するには短すぎることが多いからである。このために、このような可動コンポーネントの検査は、Vブロック上で行われることが多く、このために、検査が空間的に水平な姿勢位置に制限され、このような姿勢位置は、動作における姿勢位置を一般的に表すものではない。また、Vブロックの高さ設定を適切に行うことが難しいことが多い。検査を適切に行うことは静的モードにおいても難しいが、動的検査を行うために可動コンポーネントを回転させる必要がある場合、又は極めて単純に、歪み、平坦ではない領域などを測定する必要がある場合には、検査がさらに複雑になる。すべての可動コンポーネントの幾何学的構成に気流駆動が適合せず、既知の弓及び支持ワイヤ駆動機構は、使用するのが便利ではない。なぜなら、主な欠点について言及するだけで、ワイヤの張りの再現性の欠如、傾き、ねじれの止めを用いることによる経年劣化、破断に発展する摩耗、ワイヤに起因する汚染の問題が挙げられるためである。
【0005】
既知の装置は、多目的ではなく、したがって、多くの基準に基づく様々な生産状況における製造には適さない。
【0006】
したがって、アーバセットの部品の直径が0.1mmに近いような長さが4mm未満の計時器用可動コンポーネントを保持し回転させる際のツーフォールド問題は、依然として解決されておらず、その検査は依然として困難であり高コストな行為となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このツーフォールド問題に対する産業上利用可能な手法を提供し、材料コストと検査時間の両面において経済的でありつつ、使いやすく、交換可能であり、製造における変化に適応して、新製品の検査を容易にし、測定における必要な精度と再現性を確実にするような機構を定めることを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために、本発明は、請求項1に記載の計時器用可動コンポーネントのための幾何学的構成の検査デバイスに関する。
【0009】
添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特徴や利点を理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】コンパクトな代替的実施形態における本発明に係るデバイスについての概略的な斜視図である。このデバイスは、標準的な支持体を形成し、これは、実施形態の1つにおいて、土台に固定的に取り付けられたヘッドストックを備え、交換可能な取り外し可能なセンタリングデバイスが挿入されたスピンドルを支持する。同じ土台上で、カラムガイドは、ヘッドストックと整列している状態でテールストックをガイドし、これらのヘッドストックとテールストックは一緒に空隙の境界を形成し、この空隙に、検査される可動コンポーネントが挿入される。このテールストックは、ヘッドストックと同じように、スピンドルを備え、さらに、このスピンドルに、交換可能な取り外し可能なセンタリングデバイスが挿入される。マイクロメーターは、ヘッドストックに対するテールストックの軸方向の位置の高精度設定を可能にする。この代替的実施形態は、動力化されており、ヘッドストックのスピンドルを回転させるための駆動手段を備える。
【
図2】
図1の駆動手段がない動力化されていない代替的実施形態についての
図1と同様の形態の図である。
【
図3】
図2のデバイスを、模式的に、かつ、それらが適切に整列されるときに、ヘッドストックとテールストックの共通軸を通る断面において、検査される可動コンポーネントの提示及び挿入のために、ヘッドストックとテールストックがより近い位置にある位置で、その分離の前に示している。
【
図4】
図3の中心部分の詳細図であり、特定の代替的実施形態における各交換可能な取り外し可能なセンタリングデバイスの配置を示している。外側の管状部分には、対応するスピンドルに形成されている穴と可能な限り密着するように連係する円筒状の外面がある。この管状部分は、強磁性又は磁性の磁極コアを囲んでおり、この磁極コアは、空隙の反対側にて、ヘッドストック又はテールストックによって支持される磁石に支持されており、又は実際にこのような磁石のすぐ近くにあり、この磁極コアは、共通軸の近傍において磁力線をチャネリングするように構成している。ここで、管状部分は、空隙側にて、グリッパーを支持している。駆動用動力源は、カルダンジョイントアセンブリー、キャリア、又はいずれの同様なワークドライバーを介して、間接的にヘッドストックのスピンドルを駆動する。
【
図5】
図5~9は、本発明に係る取り外し可能なセンタリングデバイスの様々な有利な組み合わせを示している。
図5は、ヘッドストックとテールストックの両側の空隙側にて、平坦なルビー製の支持材を備え、この支持材の後ろにおいて、強磁性又は磁性の磁極材が、磁気浮上しているように可動コンポーネントを完全に軸に沿うように保持する。
【
図6】
図5の次の図であり、ヘッドストック側にて、センタリングしているメスのコーン状の凹みが形成されているルビーを備え、また、テールストックのマイクロセンタリングデバイスは、平坦なルビーである。
【
図7】ヘッドストックとテールストックの両側の空隙側にて、メスのコーン状の凹みの歯列が形成されている支持用のメスのコーン状の凹みが形成されているグリッパーを備え、これによって、可動コンポーネントの両端を機械的に把持する。ここで、これらのマイクロセンタリングデバイスは、強磁性又は磁性の磁極材を用いて示されており、これは、単独で、磁気浮上しているように可動コンポーネントを完全に軸に沿うように保持することができる。
【
図8】
図7の逆であり、ここでは2つのグリッパーは、オスのコーン状の出っ張りの歯列が形成されている。
【
図9】測定される可動コンポーネントの特定の形状に適合する構成を示しており、ヘッドストックとテールストック側の直径が異なっている。
【
図10】
図7に示しているメスのコーン状の凹みの歯列の詳細図である。
【
図11】
図8に示しているオスのコーン状の出っ張りの歯列の詳細図である。
【
図12】センタリングデバイスの2つの代替的実施形態における二重断面図である。一方のセンタリングデバイスから他方のセンタリングデバイスにわたって較正直径が一定であるような外側の管状シェルは、ヘッドストックとテールストックとで交換可能であることを確実にし、スピンドルには同じ穴が形成されている。
図12の上側の断面は、内側磁極材に支持されるグリッパーを備えるセンタリングデバイスを表しており、この内側磁極材は、次に、ヘッドストック又はテールストックの磁石に支持される。
図12の下側の断面では、典型的にルビー又は類似の材料で作られる、非磁性の支持材が、強磁性又は磁性の中間磁極材の先にあり、これは磁極コアに支持され、この中間磁極材が磁性の場合には、磁場をチャネルリングし、又は軸方向の磁場を強化する。
【
図13】半静的に、切断部の長さ、異なる肩部の直径のような寸法構成の検査が行われる可動コンポーネントについての概略正面図である。切断部が一方の端部と近いために伝統的な手段では把持が難しいことがわかる。
【
図14】幾何学的構成の検査が行われる別の可動コンポーネントについての概略正面図である。この場合、この検査は、動的バックラッシ検査であり、例えば、歯車の両側にある2つの端部の肩部に対する歯車の外径の単純なバックラッシ、そして、これらの2つの同じ肩部に対する歯車の一方の面の単純なバックラッシの検査である。ここでも大きい車が一方の端部と近いために、伝統的な手段では把持が難しくなっている。
【
図15】本発明に係るデバイスを用いた
図14の可動コンポーネントの把持を示しており、ここで、センタリングデバイスが可動コンポーネントの前でなくなっており、これによって、可動コンポーネントの軸の方へと磁束を良好にガイドして、ヘッドストックを回転させて検査する。
【
図16】本発明に係るデバイスに備えられる、観察手段、特に、カメラ、に対向する、高精度の点を用いて保持された別の可動コンポーネントの把持を示している。下で説明する
図17と同様に、大きな直径に近い長方形は、カメラによる観察領域の例を示している。下で説明する
図17及び18と同様に、軸に垂直な細長い長方形は、特にランアウトがないことを検査するための、光学的モニタリング領域の別の例を示している。
【
図17】センタリング用ルビーとその反対側の平坦なルビーの間にある別の可動コンポーネントの把持を示しており、この可動コンポーネントは、カメラに対向しており、これによって、ヘッドストックを回転させて検査する。
【
図18】コーン状の内側歯列によって保持された別の可動コンポーネントの把持を示しており、この可動コンポーネントは、カメラに対向しており、これによって、ヘッドストックを回転させて検査する。
【
図19】特に困難なケースである、2つのコーン状の内側歯列によって保持される平均的なピニオンの把持を示しており、このピニオンは、カメラに対向しており、これによって、ヘッドストックを回転させて検査する。
【
図20】回転プレートを支持するフレームを備える本発明に係るデバイスについての概略斜視図であり、この回転プレートは、
図1又は2の機構を受け、又はその支持基材を形成するように構成しており、カメラ及びその設定手段を支持する別の構造要素が対向するように構成している。
【
図21】
図20におけるデバイスを反対側の角度から見た別の図である。
【
図22】測定される可動コンポーネントの重力場における4つの異なる姿勢位置に対応している4つの異なる角位置にある
図20の回転プレートに取り付けられた
図1の機構のヘッドストックとテールストックの共通の土台を備える完全なデバイスについての概略的な部分斜視図である。
【
図23】このようなデバイスを示しているブロック図であり、観察手段によって得られた画像及び/又は測定結果を設定点値に対して分析する手段と、偏差計算手段と、及び統合された製品品質管理システム及び/又は生産管理システムを備え偏差に応じて生産手段の設定を修正するリンク手段とを備える。
【
図24】
図4と同様の形態で、本発明の別の代替的実施形態を示している。
【発明を行うための形態】
【0011】
本発明は、材料のコストと検査時間の両面で経済的であり、必要な精度が確実にあり、測定の再現性がありつつ、容易に用いることができ、交換可能性が高く、製造上の変化に適応することができて新製品の検査を容易にするような、検査機構を定めることを提案するものである。
【0012】
このために、本発明は、計時器用可動コンポーネントのための幾何学的構成の検査デバイス100に関する。特に
図1及び2に示しているように、このデバイス100は、ヘッドストック1とテールストック2を備え、このヘッドストック1は、第1の緩い又は動力化される回転可能なスピンドル10を支持し、第1の穴101を形成しており、第1の回転軸D1を定め、テールストック2は、第2の緩い又は動力化されるスピンドル20を支持し、第2の回転軸D2を定める。これらのヘッドストック1とテールストック2は、共通の土台3上に配置されており、この土台3に対して、少なくともヘッドストック1及び/又はテールストック2が、第1の回転軸D1に平行な共通の方向Dに沿って整列ガイド手段4に沿って並進運動をするように少なくとも1つの自由度にしたがって動くことができる。例えば、図示しているように、ヘッドストック1は固定され、テールストック2は、これらの整列ガイド手段4を形成するガイドカラムに沿って動くことができる。
【0013】
デバイス100は、第1の回転軸D1に対する第2の回転軸D2の同軸性を確実にし又は設定するように構成している手段を備える。図面の場合、整列ガイド手段4は、この同軸性を確実にし、テールストック2の側方の位置は調整可能ではない。図示していない別の実施形態において、テールストック2は、第1の回転軸D1に対する直交方向に沿って横断方向のキャリッジ上に載せることができ、高精度側方調整手段を備える。
【0014】
本発明によると、デバイス100は、複数の交換可能であり取り外し可能なセンタリングデバイス5を備え、少なくとも第1のスピンドル10及び/又は第2のスピンドル20は、このような取り外し可能なセンタリングデバイス5を同軸的に収容するように構成している受け手段30を備える。
【0015】
そして、少なくともヘッドストック1及び/又はテールストック2は、引き手段40を備え、この引き手段40は、このような取り外し可能なセンタリングデバイス5を、ヘッドストック1とテールストック2の間にある空隙90とは反対方向に、共通の方向Dに沿って、非接触で引くように構成している。特に、図示しているように、第1のスピンドル10と第2のスピンドル20の両方は、このような受け手段30を備え、ヘッドストック1とテールストック2の両方は、引き手段40を備える。
【0016】
単純であり正確であり経済的な代替的実施形態において、受け手段30には穴があり、軸方向の当接支持面があることができる。
【0017】
特に、第2のスピンドル20には、第1の穴101と同じ直径を有する第2の穴102があり、デバイス100は、複数の取り外し可能な交換可能なマイクロセンタリングデバイス5を備え、各マイクロセンタリングデバイス5は、第1の穴101又は第2の穴102に区別なく挿入されるように構成しており、各マイクロセンタリングデバイス5には、第1の穴101又は第2の穴102との密着摺動嵌合を行うように構成する径を有する周部肩部590がある。各マイクロセンタリングデバイス5は、強磁性又は磁性の磁極コア42を備え、この磁極コア42は、ヘッドストック1及び/又はテールストック2に含まれる磁極41と引き合うように連係するように構成しており、この磁極41は、ヘッドストック1とテールストック2の間の空間90において第1の回転軸D1を中心とする回転磁場を形成し、又は磁極コア42によって形成される。
【0018】
なお、単一のヘッドストック1及び単一のテールストック2を備える最も単純なものを用いて本発明をここで説明しているが、本デバイスは、同じヘッドストック1と連係するように構成しているテールストックをより多く備えることができることを理解することができる。しかし、このような交換可能な取り外し可能なセンタリングデバイス5を備える本発明の設計は、非常に単純であり使いやすく、検査デバイス100の装置の変更を非常に迅速に行うことができ、図示している構成は十分である。
【0019】
特に、引き手段40は、少なくとも1つの磁極41、特に、少なくとも1つの磁石、を備え、これは、各取り外し可能なセンタリングデバイス5に含まれる強磁性又は磁性の磁極コア42を引きつけて、当接支持面上の後方当接位置にし、この当接支持面は、磁極41の面であることができ、又は実際にこの当接支持面を通してこの磁極41によって発生する磁場を実質的に軸方向に循環させることができる仕切りの面であることができる。本発明は、永久磁石を用いるように図に示しているが、前記磁極41は、当然、少なくとも1つの電磁石を備えることもできる。
【0020】
図3及び4は、これらの磁石41の軸方向の構成を示しており、これらの磁石41は、ヘッドストック1上にて示しているように、二次磁石430で強化することができ、これによって、磁場を強化する。
【0021】
重要な観点は、磁場を共通軸Dの近傍へとチャネリングすることである。このために、取り外し可能なセンタリングデバイス5は、少なくとも磁束をこの方向に沿ってガイドし、又は
図15に示しているように磁束を幾何学的軸Dに近づけ、又は以下において説明するように強磁性又は磁性の磁極材52の直列構成によって磁場を強化するように構成している。
【0022】
したがって、特に、少なくとも1つの取り外し可能なセンタリングデバイス5は、軸方向の磁場を集中させる手段を備え、この磁場が、空間90とは反対側の第1の軸方向の端部にて与えられ、かつ/又は空間90の方を向く第2の端部にて共通の方向Dのまわりにこの少なくとも1つの取り外し可能なセンタリングデバイス5によって発生する。したがって、
図15は、可動コンポーネントの把持を示しており、センタリングデバイス5が可動コンポーネントの前でなくなっており、これによって、可動コンポーネントの軸Dの方へと磁束を良好にガイドして、ヘッドストック1を回転させて検査する。MONTRES BREGUET SAによる欧州特許文献EP288807007B1は、このようなフローコンセントレーターを備える支持体について記載している。
【0023】
特に、少なくとも1つのマイクロセンタリングデバイス5は、管状体43を備えるカルトゥーシュを形成し、この管状体43の外径は、第1の穴101又は第2の穴102と密着摺動嵌合を行うように構成しており、この管状体43は、強磁性又は磁性の磁極コア42を収容する。
【0024】
当然、本発明に係るデバイス100が好ましいことに強磁性又は類似のコンポーネントを把持するように設計されている場合には、非磁性材料のものも扱うことが可能である。また、特に、少なくとも1つの取り外し可能なセンタリングデバイス5は、空間90の側にグリッパー51を備え、このグリッパー51は、機械的に接触することによって計時器用可動コンポーネントの軸方向の端部と連係するように構成している。この機械的接触は、磁気的相互作用を置き換え、又は磁気的相互作用を補うことができる。特に、このようなグリッパー51は、取り外し可能なセンタリングデバイス5がヘッドストック1又はテールストック2によってもたらされる回転を行うときに、計時器用可動コンポーネントの軸方向の端部を回転させるように構成している。
【0025】
特に、
図7、8、10、12、19に示しているように、グリッパー51には、オス又はメスのコーン状の出っ張り又は凹みの支持歯列58があり、これは、計時器用可動コンポーネントの軸方向の端部と連係してこの可動コンポーネントを回転させるように構成している。したがって、検査される可動コンポーネントが非磁性である場合、このコーン状の歯列58は、この可動コンポーネントを保持し、センタリングし、駆動する。
【0026】
グリッパー51は、異なる材料によって作ることができ、特に、硬化鋼、ステンレス鋼、炭化タングステンのような焼結材料などによって作ることができる。なお、これらに限定されない。好ましいことに、このグリッパー51には、その可動コンポーネントを駆動するための面のレベルにて、この可動コンポーネントを満足に摩擦駆動するために、2μmRa~5μmRaの範囲内の一定の粗さがある。
【0027】
一部のアプリケーションにおいては、グリッパー51には、さらに、単純なオス又はメスの滑らかなコーン状の出っ張り又は凹みがあることができる。
【0028】
特定の実施形態において、少なくとも1つの取り外し可能なセンタリングデバイス5は、空間90の側に、強磁性又は磁性の磁極材52を備え、これは、計時器用可動コンポーネントの磁性又は強磁性の軸方向の端部と磁気的に引き合い又は反発するように連係するように構成している。特に、この磁極材52は、計時器用可動コンポーネントの磁性又は強磁性の軸方向の端部に対して回転駆動トルクを与え又は伝達するように構成している。
【0029】
別の特定の実施形態において、前記のような強磁性又は磁性の磁極材52を備える少なくとも1つの取り外し可能なセンタリングデバイス5は、空間90の側に、さらに、計時器用可動コンポーネントの軸方向のトラベルを制限するように構成している支持材53を備える。
図5は、ヘッドストック1とテールストック2の両側の空隙90側に、このような平坦なルビー製の支持材53を備え、この後ろ側において、強磁性又は磁性の磁極材52が、磁気浮上するように可動コンポーネントを完全に軸に沿って保持する。可動コンポーネントの磁気的回転は、MONTRES BREGUET SAによる欧州特許文献EP2450758B1に開示されている。特に、支持材53は、ルビー又は類似の材料によって作られている。
【0030】
特定の実施形態において、テールストック2は、空間90の方へと第2のスピンドル20を押し戻すように構成している弾性戻し手段21を備え、又は第2のスピンドル20によって支持される取り外し可能なセンタリングデバイス5を備える。特に、テールストック20をヘッドストック10の方へと押しテールストックの反動を減衰させる傾向があるこの弾性戻し手段21は、ばね又は類似のものであり、これは、特に0.2Nにて較正されるが、これに限定されない。
【0031】
特に、少なくともヘッドストック1は、第1の回転軸D1のまわりに第1のスピンドル10を回転させるように構成している第1の動力化手段19を備え、第1の動力化手段19と第1のスピンドル10の間に、カルダンジョイント又は類似のタイプの第1の連結手段18を備え、これによって、第1のスピンドル10の無制約の回転を確実にし、いずれの動力整列の不備をも避ける。
図4に示しているように、ヘッドストック1の第1のスピンドル10は、その磁石41を用いて駆動され、したがって、その駆動は間接的であり、これには、バックラッシ又は動力整列の誤りがあってもスピンドルの回転には大きな影響を与えないという利点がある。
【0032】
図示していない特定の実施形態において、少なくともテールストック2は、第2の回転軸D2のまわりに第2のスピンドル20を回転させるように構成している第2の動力化手段17を備え、第2の動力化手段17と第2のスピンドル20の間に、カルダンジョイント又は類似のタイプの第2の連結手段16を備え、これによって、第2のスピンドル20の無制約の回転を確実にする。
【0033】
特に、
図1、2、3及び22に示しているように、デバイス100は、ヘッドストック1に対するテールストック2の共通の方向Dに沿った相対的位置についての高精度設定及び/又は測定を行う手段60を備える。
【0034】
図示していない特定の実施形態において、デバイス100は、第1の回転軸D1に対する第2の回転軸D2の位置についての側方設定手段70を備える。
【0035】
特に、ヘッドストック1、第1のスピンドル10、テールストック2、及び第2のスピンドル20の本体は、共通の方向Dから離れるように磁束を散乱させないように、黄銅、特に、ロジウムめっきされた黄銅のような非磁性材料によって作られている。
【0036】
図示していない特定の実施形態において、ヘッドストック1及び/又はテールストック2は、共通の方向Dに沿った軸方向の力を測定する又は設定点値と比較するために、少なくとも1つの応力ゲージを備える。
【0037】
図24は、ヘッドストック1が2つのガイドベアリング61及び62を備え、これらのベアリングの間に、これらのベアリングの軸方向及び半径方向の遊びを補償するように構成しているばね63が配置されるような代替的実施形態を示している。テールストック2は、第2の磁極材42の後ろ側に配置されるばね21を備え、これによって、このテールストックのレベルにおいて減衰させることが可能になる。
【0038】
特に、
図20及び21に示しているように、デバイス100は、主フレーム50を備え、この主フレーム50は、共通の土台3を直接的又は間接的に支持し、空間90において2つの交換可能な取り外し可能なセンタリングデバイス5によって保持される計時器用可動コンポーネントを観察及び/又は測定するように構成している観察手段80を支持するように構成しており、デバイス100は、ねじ山のような、観察手段80の位置設定手段81を備える。
【0039】
好ましいことに、主フレーム50は、随意的に動力化されることができる、少なくとも1つの回転プレート500を介して、共通の土台3を間接的に支持するように構成しており、この回転プレート500は、重力場における異なる姿勢位置にて計時器用可動コンポーネントを提示するように構成している。
【0040】
特に、デバイス100は、観察手段80によって得られた画像及び/測定値を設定点値に対して分析する手段1010と、偏差を計算する手段1020と、統合された製品の品質管理システム1040及び/又は生産管理システム1050とリンクするためのリンク手段1030とを備え、これによって、偏差に応じて生産手段の設定を修正する。
【0041】
短く書くと、本発明に係る取り外し可能なセンタリングデバイス5は、実際には、検査される可動コンポーネントのレベルにおける端部の寸法構成が小さいためにマイクロセンタリングデバイスであり、これは、単純であり、低コストであり、容易に交換可能であり、様々なニーズに適しており、特に光学的な測定手段である、様々な測定手段に用いるために適している。なお、これに限定されない。ヘッドストックとテールストックが備える磁石は、以下の2つの機能を実行する。
- 各マイクロセンタリングデバイスを対応するスピンドル内に磁気的に引きつける機能
- 検査される可動コンポーネントの軸のすぐ近くに磁束を集中させることも行うマイクロセンタリングデバイス内に磁場を誘導する機能
【0042】
このように、本発明によって、スピンドルと対向スピンドルによって構成しているシステムの間でマイクロコンポーネントを保持し回転させるためのマイクロテクニカルデバイスが構成される。各スピンドルは、引き合う磁気的効果によってマイクロセンタリングデバイスを中に挿入して容易かつ迅速に固定することができるように構成している。コンポーネントが強磁性である場合、同じ磁場によって保持される。コンポーネントは、非磁性である場合、機械的なセンタリングによって、スピンドルのマイクロセンタリングデバイスと対向スピンドルのマイクロセンタリングデバイスの間に保持されることができる。いわゆる駆動スピンドルは、コンポーネントに対して完全に円形の回転をさせつつ、二重の磁気的効果を発揮する。対向スピンドルは、その部品について、その実行モードにしたがって、回転せずに固定されているか、回転するように緩みがあるか、又は動力化されており主スピンドルと同期しているかのいずれかである。強磁性であり、かつ/又はピボットによって構成していないコンポーネントの場合、特定のマイクロセンタリングデバイスは、関心事のコンポーネントの保持、整列及び回転を確実にしやすい。
【0043】
このデバイスは、バックラッシ、位置決め又は寸法構成の測定に関係するあらゆるタイプ及びあらゆる材料のマイクロコンポーネントを保持し回転させる唯一のシステムのものであるような腕時計製造の分野において、革新をもたらすものである。
【0044】
最後に、
図20及び21に示しているように、完全なデバイスは、非常にコンパクトであり(約200mm
3)、したがって、製造ラインに対応させることが非常に容易である。また、ロボット操作マニピュレーターからのアクセス性も優れている。