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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】搭乗型ローラー
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/26 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
E01C19/26
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021074743
(22)【出願日】2021-04-27
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】591037720
【氏名又は名称】関東鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 庸徳
(72)【発明者】
【氏名】平田 修
(72)【発明者】
【氏名】世良 香純
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-079529(JP,A)
【文献】実開平04-084412(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/26
E02F 3/42-3/43
3/84-3/85
9/00-9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体と、
前記車両本体の走行状態を、停止、前進および後進のいずれかに切り替える走行レバーと、
前記走行レバーに連結され、前記走行レバーに連動して回転するシャフトと、
前記シャフトに連結される油圧ポンプを含み、前記車両本体に駆動力を伝達する油圧駆動伝達装置と、
後進または前進する前記車両本体の進路上に位置する障害物を検出する検出装置と、
前記シャフトに取り付けられたカム部材に連結され、前記シャフトを回転可能な駆動装置と、
前記検出装置が前記障害物を検出した際、前記車両本体を緊急停止させるように前記駆動装置を制御する制御装置と、を備え
前記駆動装置は、前記カム部材に連結される連結ピンと、前記連結ピンを支持し、前記カム部材に対して伸び縮みするロッド部と、を含むシリンダー構造を有す
搭乗型ローラー。
【請求項2】
少なくとも前記駆動装置を支持するフレーム部をさらに備え、
前記駆動装置は、前記ロッド部を保持する本体部をさらに含み、
前記本体部における前記ロッド部と反対の端部が、前記フレーム部に対して、前記連結ピンの延びる方向に沿う支持軸周りに回動可能に取り付けられる
請求項に記載の搭乗型ローラー。
【請求項3】
前記制御装置は、前記検出装置が前記障害物を検出した際、前記ロッド部を初期位置から所定位置まで移動させた後、前記ロッド部を再び前記初期位置まで戻すように、前記駆動装置を制御する
請求項または請求項に記載の搭乗型ローラー。
【請求項4】
前記ロッド部における伸び縮み方向の位置を検出するロッド検出部をさらに備え、
前記制御装置は、前記ロッド検出部の検出結果に基づいて、前記ロッド部の伸び縮みを制御する
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の搭乗型ローラー。
【請求項5】
車両本体と、
前記車両本体の走行状態を、停止、前進および後進のいずれかに切り替える走行レバーと、
前記走行レバーに連結され、前記走行レバーに連動して回転するシャフトと、
前記シャフトに連結される油圧ポンプを含み、前記車両本体に駆動力を伝達する油圧駆動伝達装置と、
後進または前進する前記車両本体の進路上に位置する障害物を検出する検出装置と、
前記シャフトに取り付けられたカム部材に連結され、前記シャフトを回転可能な駆動装置と、
前記検出装置が前記障害物を検出した際、前記車両本体を緊急停止させるように前記駆動装置を制御する制御装置と、
前記シャフトの回転角を検出する回転角検出部と、を備え、
前記制御装置は、前記回転角検出部の検出結果に基づいて、少なくとも前記駆動装置を制御する
搭乗型ローラー。
【請求項6】
前記制御装置は、前記車両本体の走行速度に応じて、前記駆動装置を制御する
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の搭乗型ローラー。
【請求項7】
前記検出装置は、前記車両本体の横幅方向において、検出エリアを切り替え可能である
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の搭乗型ローラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搭乗型ローラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搭乗型ローラーの前進あるいは後進等の移動時に、作業者や歩行者の巻き込みや障害物との接触等といった事故が発生する恐れがある。下記特許文献1には、搭乗型ローラーの後進時に障害物があると判断した場合に、搭乗型ローラーを緊急停止させることで上記のような事故を未然に回避する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-12394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、搭乗型ローラーでは、運転席周りに設けられたレバーの操作位置に応じて、車両の前進あるいは後進が切り替えられる。上記の搭乗型ローラーでは、緊急停止の際、レバーの操作位置によらずにHST(Hydro Static Transmission)ブレーキを作動させることで、走行用モーターを停止させている。そのため、緊急停止後に再び車両を動かす際、レバーの操作位置をニュートラルに戻し、緊急停止装置を解除する必要があった。そのため、緊急停止後の再動作に手間を要するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、障害物を検知し車両を緊急停止させることができる装置を備え、緊急停止後の再動作を容易に実行できる、搭乗型ローラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第一態様に係る搭乗型ローラーは、車両本体と、前記車両本体の走行状態を、停止、前進および後進のいずれかに切り替える走行レバーと、前記走行レバーに連結されるシャフトと、前記走行レバーに連動して回転された前記シャフトに連結され、前記車両本体に対する駆動力の伝達状態を切り替える油圧伝動装置と、後進または前進する前記車両本体の進路上に位置する障害物を検出する検出装置と、前記シャフトに取り付けられたカム部材に連結され、前記シャフトを回転可能な駆動装置と、前記検出装置の検出結果に基づいて、前記駆動装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記検出装置が前記障害物を検出した際、前記車両本体を停止するように、前記駆動装置を駆動する。
【0007】
上記態様において、前記駆動装置は、前記カム部材に連結される連結ピンと、前記連結ピンを支持し、前記カム部材に対して伸び縮みするロッド部と、を含むシリンダー構造を有する構成としてもよい。
【0008】
上記態様において、少なくとも前記駆動装置を支持するフレーム部をさらに備え、前記駆動装置は、前記ロッド部を保持する本体部をさらに含み、前記本体部における前記ロッド部と反対の端部が、前記フレーム部に対して、前記連結ピンの延びる方向に沿う支持軸周りに回動可能に取り付けられる構成としてもよい。
【0009】
上記態様において、前記制御装置は、前記検出装置が前記障害物を検出した際、前記ロッド部を初期位置から所定位置まで移動させた後、前記ロッド部を再び前記初期位置まで戻すように、前記駆動装置を制御する構成としてもよい。
【0010】
上記態様において、前記ロッド部における伸び縮み方向の位置を検出するロッド検出部をさらに備え、前記制御装置は、前記ロッド検出部の検出結果に基づいて、前記ロッド部の伸び縮みを制御する構成としてもよい。
【0011】
上記態様において、前記シャフトの回転角を検出する回転角検出部をさらに備え、前記制御装置は、前記回転角検出部の検出結果に基づいて、少なくとも前記駆動装置を制御する構成としてもよい。
【0012】
上記態様において、前記制御装置は、前記車両本体の走行速度に応じて、前記駆動装置を制御する構成としてもよい。
【0013】
上記態様において、前記検出装置は、前記車両本体の横幅方向において、検出エリアを切り替え可能である構成としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一つの態様によれば、障害物を検知し車両を緊急停止させる装置を備えた搭乗型ローラーにおいて、緊急停止後の再動作を容易に実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一実施形態の搭乗型ローラーの概略構成を示す斜視図である。
図2図2は、操作部の内部構成を示した正面図である。
図3図3は、操作部の内部構成を示した側面図である。
図4図4は、走行レバーを中立位置に位置させた状態を示した図である。
図5図5は、走行レバーを前進位置に位置させた状態を示した図である。
図6図6は、走行レバーを後進位置に位置させた状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の搭乗型ローラーの一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示される本実施形態の搭乗型ローラー100は、舗装道路の仕上げの際に、路面を転圧するローラーを備え、操縦席に搭乗した操縦者によって走行が操作される搭乗型の転圧ローラーである。
【0017】
搭乗型ローラー100は、車両本体10と、操作部20と、制御装置40と、油圧駆動伝達装置50と、検出装置60と、を備えている。車両本体10は、前輪用車体11Aおよび後輪用車体11Bを含む車体11と、前輪用車体11Aおよび後輪用車体11Bを連結する連結部13とを有する。前輪用車体11Aおよび後輪用車体11Bは、連結部13において左右方向あるいは上下方向に回転可能に連結されている。前輪用車体11Aは鉄輪からなる前輪12Aを含む。後輪用車体11Bは、タイヤからなる後輪12Bを含む。本実施形態の搭乗型ローラー100は、コンバインド型のローラーである。
【0018】
操作部20は、車両本体10の操縦者が座る椅子21と、車両本体10の進行方向を操作するためのハンドル部22と、走行レバー23と、車両本体10に関する各種の情報を表示する操作パネル部24と、警音を発する警音器25と、を有する。本実施形態において、警音器25は、例えば、車体11(後輪用車体11B)の筐体部分の裏側に配置されている。
【0019】
本実施形態の搭乗型ローラー100は、車両本体10における前進時あるいは後進時の走行速度を切り替え可能である。搭乗型ローラー100は、例えば、操作パネル部24に設けられた切り替えスイッチによって、走行速度を、低速あるいは高速の2段階で切り替え可能である。
【0020】
図1において、X軸は搭乗型ローラー100の進行方向に沿う軸であり、X軸の矢印が向く+X側は、搭乗型ローラー100の前進時の進行方向に相当し、X軸の矢印と反対の-X側は、搭乗型ローラー100の後進時の進行方向に相当する。
【0021】
本実施形態の搭乗型ローラ-100は、車両本体10を、停止状態、+X側に進む前進状態、および、-X側に進む後進状態、のいずれかに切り替え可能である。搭乗型ローラ-100は、走行レバー23の操作によって、車両本体10の走行状態が切り替わる。
【0022】
図2および図3に示すように、本実施形態の搭乗型ローラー100は、シャフト26と、駆動装置27と、フットブレーキ28と、ケーブル29と、カム部材30と、回転角検出部34と、ロッド検出部35と、を備えている。シャフト26は中心軸26Cに沿って延びる棒状である。本実施形態において、シャフト26の両端に、走行レバー23がそれぞれ連結されている。このようにして、シャフト26は走行レバー23に連結されることで、走行レバー23に連動して中心軸26Cの周りに回転可能とされる。
【0023】
油圧駆動伝達装置50は、油圧ポンプ51および油圧モーター52を含み、油圧ポンプ51および油圧モーター52が直列に接続されて油圧の閉回路を構成している。油圧ポンプ51は、車体11に搭載された不図示のエンジンの駆動力を油圧モーター52に伝達し、油圧モーター52を駆動させることができる。油圧モーター52は、前輪12Aおよび後輪12Bの内部にそれぞれ設けられており、油圧モーター52の出力は前輪12Aおよび後輪12Bにそれぞれ伝達される。このようにして、油圧駆動伝達装置50は、車両本体10に駆動力を伝達させることができる。なお、油圧駆動伝達装置50は、油圧モーター52の出力軸と前輪12Aおよび後輪12Bの入力軸との間に減速機を有していてもよい。
【0024】
シャフト26は油圧ポンプ51に連結されている。本実施形態において、シャフト26は、図2に示したケーブル29を介して油圧ポンプ51の斜板に連結されている。
本実施形態の搭乗型ローラー100では、エンジンがかかっているときに、図3に示すように、走行レバー23を前方(+X側)に傾けて前進位置P1に位置させると、油圧ポンプ51の斜板がケーブル29によって一方側に傾く。このとき、油圧駆動伝達装置50内の閉回路において圧油が一方向側に流れ、油圧モーター52が一方向に回転して車両本体10が前進する。
【0025】
また、エンジンがかかっているときに、図3に示すように、走行レバー23を後方(-X側)に傾けて後進位置P2に位置させると、油圧ポンプ51の斜板がケーブル29によって他方側に傾く。このとき、油圧駆動伝達装置50内の閉回路において圧油が他方向側に流れ、油圧モーター52が他方向に回転して車両本体10が後進する。
【0026】
なお、走行レバー23を前方および後方のいずれにも傾けない中立位置P3に位置させると、油圧ポンプ51の斜板がニュートラル位置に位置する。このとき、油圧駆動伝達装置50では、HST(Hydro Static Transmission)ブレーキが作用し、搭乗型ローラー100はエンジンをかけたままでも停止状態を維持する。
【0027】
図2および図3に示すように、駆動装置27は、シャフト26に取り付けられたカム部材30に連結される。カム部材30は、後述する駆動装置27におけるロッド部の伸び縮み動作をシャフト26の回転動作に変化させる。
【0028】
図3および図4に示すように、カム部材30は、シャフト26の軸方向に沿って配置された2枚の板状部材31で構成される。各板状部材31は、シャフト26に挿入されて固定される固定部31aと、固定部31aからシャフト26の径方向に扇状に張り出した張出部31bと、張出部31bに設けられた円弧状の長孔31cと、を有する。
【0029】
本実施形態の駆動装置27は、カム部材30に連結される連結ピン27aと、連結ピンを支持し、カム部材30に対して伸び縮みするロッド部27bと、ロッド部27bを保持する本体部27cと、を含むシリンダー構造を有する。連結ピン27aは、ロッド部27bの先端部をロッド部27bの伸縮方向に直交する方向に貫通する。連結ピン27aは、一対の張出部31bの長孔31cに挿入されることでカム部材30に連結される。連結ピン27aは、シャフト26と平行に延びている。駆動装置27として、例えば、電動シリンダー、油圧シリンダーあるいはエアシリンダーを用いることができる。
【0030】
本実施形態の搭乗型ローラー100は、少なくとも駆動装置27を支持するフレーム部33を有する。フレーム部33は、操作部20の外装を形成する板金部材の一部でもよい。駆動装置27において、本体部27cにおけるロッド部27bと反対の端部27dが、フレーム部33に対して、支持軸27C周りに回動可能に取り付けられている。支持軸27Cは、連結ピン27aの延びる方向に沿う軸である。
【0031】
本実施形態において、回転角検出部34は、シャフト26の回転角を検出する。回転角検出部34は、検出したシャフト26の回転角を制御装置40に送信する。
図4に示すように、本実施形態の回転角検出部34は、第1センサー34aと、第2センサー34bと、カムプレート36と、を含む。第1センサー34aおよび第2センサー34bは、例えば、コロ方式のリミットスイッチで構成され、シャフト26に取り付けられたカムプレート36に接触する。カムプレート36は、第1センサー34aが位置する第1カム溝36aと、第2センサー34bが位置する第2カム溝36bと、を有している。第1カム溝36aおよび第2カム溝36bは、カムプレート36の外周面における異なる位置に形成されている。
【0032】
走行レバー23が前進位置P1あるいは後進位置P2に倒されると、カムプレート36は、シャフト26とともに中心軸26C周りに回転する。これにより、第1センサー34aおよび第2センサー34bに対する第1カム溝36aおよび第2カム溝36bの位置関係が変化する。
【0033】
具体的に本実施形態において、第1センサー34aは、走行レバー23が後進位置P2に位置された際、カムプレート36の外周面により押圧される。これにより、第1センサー34aは、走行レバー23が後進位置P2に位置するときのシャフト26の回転角を検出可能である。なお、走行レバー23が後進位置P2に位置された際、第2センサー34bは、カムプレート36の第2カム溝36bに位置する。
【0034】
第2センサー34bは、走行レバー23が前進位置P1に位置された際、カムプレート36の外周面により押圧される。これにより、第2センサー34bは、走行レバー23が前進位置P1に位置するときのシャフト26の回転角を検出可能である。なお、走行レバー23が前進位置P1に位置された際、第1センサー34aは、カムプレート36の第1カム溝36aに位置する。
【0035】
第1センサー34aおよび第2センサー34bは、走行レバー23が中立位置P3に位置された際、第1カム溝36aおよび第2カム溝36bにそれぞれ位置する。これにより、第1センサー34aおよび第2センサー34bは、走行レバー23が中立位置P3に位置するときのシャフト26の回転角を検出可能である。
【0036】
本実施形態において、ロッド検出部35は、駆動装置27のロッド部27bにおける伸び方向の位置を検出する。ロッド検出部35は、検出したロッド部27bの位置を制御装置40に送信する。本実施形態のロッド検出部35は、例えば、レバー方式のリミットスイッチで構成され、駆動装置27の連結ピン27aに接触する。ロッド検出部35は、連結ピン27aに接触されることで、ロッド部27bにおける伸び縮み方向の位置を検出し、後述のようにロッド部27bの伸びを制御する。
【0037】
本実施形態において、制御装置40は、第2センサー34bにより走行レバー23が前進位置P1に位置されたと判定した際、例えば、駐車ブレーキが作動している場合は、駐車ブレーキを解除することで、車両本体10を前進させる。
制御装置40は、第1センサー34aにより走行レバー23が後進位置P2に位置されたと判定し、検出装置60が車両本体10の後進位置側に障害物がないと判定した際、駐車ブレーキが作動している場合は、駐車ブレーキを解除することで、車両本体10を後進させる。
制御装置40は、第1センサー34aにより走行レバー23が中立位置P3に位置されたと判定した場合、また、走行レバー23が前進位置P1に位置されたと判定した場合は、警音器の作動を停止させる。
【0038】
なお、駐車ブレーキは、例えば、操縦者によって操作部20に設けられた不図示の始動スイッチが始動位置にあり、駐車ブレーキボタンが押された場合に作動する。また、無人状態あるいは始動スイッチのキーの有無にかかわらず、車両本体10が駐車場等に停止された駐車状態にある場合は、駐車ブレーキは常時作動しており、エンジンを始動することにより、駐車ブレーキは解除される。
【0039】
検出装置60は、後進する車両本体10の進路上に位置する障害物を検出するためのセンサーである。検出装置60は、非接触方式により障害物を検知する。本実施形態の検出装置60は、例えば、投射光と反射光との時間差から距離を測定するTOF(Time Of Flight)方式の距離画像センサーを含み、距離画像センサーの測定データに基づいて障害物の有無を検出する。なお、検出装置60は光学式に限られず、ミリ波レーダー方式、3Dカメラ方式、超音波方式等のいずれに置き換えてもよい。
【0040】
検出装置60は、予め定められた検出エリア内に障害物があるか否かを検出する。検出装置60は、検出エリア内に障害物があることを検出した場合、その検出結果を制御装置40に送信する。本実施形態の検出装置60において、検出エリアは、走行中の車両本体10を停止可能な距離に応じて予め設定されている。走行中の車両本体10を停止可能な距離は、車両本体10の走行速度によって異なる。そのため、本実施形態の検出装置60は、車両本体10の走行速度に応じて設定された複数の検出エリアに対応している。検出装置60は、例えば、操作パネル部24に設けられた切り替えスイッチによって後進時の走行速度として「高速」が選択された場合、「低速」が選択された場合に比べて、車両本体10からより離れた検出エリア内における障害物の有無を検出する。
【0041】
例えば、通常作業を行う場合の検出エリアに設定した状態で壁際を走行すると、検出装置60により壁が検知されることで車両本体10の走行が停止するおそれがある。これに対して本実施形態の検出装置60は、車両本体10の横幅方向においても複数の検出エリアに対応している。すなわち、検出装置60は、車両本体10の横幅方向において、検出エリアを切り替え可能である。検出装置60は、例えば、操作パネル部24に設けられた切り替えスイッチによって「壁際走行モード」が選択された場合、車両本体10の車幅に相当する検出エリア内における障害物の有無を検出する。これにより、車両本体10が壁際を走行する場合でも、検出装置60により壁が検知されることで車両本体10の走行が停止することが防止される。
なお、検出装置60は、例えば、操作パネル部24に設けられた切り替えスイッチによって「通常走行モード」が選択された場合、車両本体10の車幅よりも大きい幅に対応した検出エリア内における障害物の有無を検出する。
【0042】
制御装置40は、検出装置60が走行速度に応じた検出エリア内において障害物を検出した際、車両本体10を緊急停止させるように制御する。なお、本実施形態の制御装置40は、搭乗型ローラー100全般に関する動作も制御する。
【0043】
本実施形態の搭乗型ローラー100では、フットブレーキ28を踏んだ際、シャフト26が中立位置P3に戻される方向に移動するので、走行レバー23とフットブレーキ28とを組み合わせて用いることで車両本体10の走行状態を任意に制御することができる。
【0044】
本実施形態の搭乗型ローラー100では、例えば、後進する際、検出装置60による障害物の検出を行う。つまり、本実施形態の搭乗型ローラー100は、前進する際、検出装置60による障害物の検出を行わないため、駆動装置27は動作しない。制御装置40は、検出装置60が障害物を検出した際、車両本体10を緊急停止させるように駆動装置27(ロッド部27b)を制御する。
【0045】
ここで、走行レバー23が中立位置P3に位置する場合、つまり、車両本体10を停止状態とする場合、検出装置60および駆動装置27は動作しない。このように走行レバー23が中立位置P3に位置した状態において、駆動装置27は、ロッド部27bが伸びた状態とされている。このとき、ロッド部27bに設けられた連結ピン27aは、図4に示されるように、カム部材30(張出部31b)の長孔31cの周方向の中央に位置する。以下、伸びた状態のロッド部27bの位置を初期位置と呼ぶ。
本実施形態の場合、ロッド部27bが初期位置にある場合、連結ピン27aはロッド検出部35に接触している。すなわち、ロッド検出部35は、ロッド部27bが初期位置にある状態を検出可能である。
【0046】
また、本実施形態の場合、上述のように走行レバー23を前進位置P1に倒す場合も検出装置60が作動しないことから、検出装置60および駆動装置27は動作しない。そのため、駆動装置27はロッド部27bが伸びた状態とされている。
【0047】
走行レバー23が前進位置P1に倒されると、シャフト26とともにカム部材30が中心軸26C周り一方側(例えば、図3においては反時計回り)に回転する。本実施形態の場合、駆動装置27における本体部27cの端部27dが支持軸27C周りに回動することで連結ピン27aが長孔31cに沿って滑らかに移動する。そのため、カム部材30に連結された駆動装置27によって、走行レバー23の操作が妨げられない。
【0048】
このようにして走行レバー23が前進位置P1に位置されると、図5に示されるように、ロッド部27bに設けられた連結ピン27aは、カム部材30(張出部31b)の長孔31cの周方向の上端31c1に位置した状態となる。なお、図5では、走行レバー23を前進位置P1側に全開で倒した状態を図示したが、前進時に要求される車両速度に応じて、走行レバー23を倒す量を調整してもよい。この場合、連結ピン27aと長孔31cの周方向の上端31c1との間には隙間が生じる。
【0049】
続いて、走行レバー23を後進位置P2に倒す場合について説明する。走行レバー23を後進位置P2に倒す際、ロッド部27bは初期位置のままであり、ロッド部27bは伸びた状態とされる。
【0050】
走行レバー23が後進位置P2に倒れると、シャフト26とともにカム部材30が中心軸26C周り他方側(例えば、図3においては時計回り)に回転する。このとき、本体部27cの端部27dが支持軸27C周りに回動することで連結ピン27aが長孔31cに沿って滑らかに移動するので、駆動装置27によって走行レバー23の操作が妨げられない。
【0051】
このようにして走行レバー23を後進位置P2に位置させると、図6に示されるように、ロッド部27bに設けられた連結ピン27aは、カム部材30(張出部31b)の長孔31cの周方向の下端31c2に位置した状態となる。なお、図6では、走行レバー23を後進位置P2側に全開で倒した状態を図示したが、後進時に要求される車両速度に応じて、走行レバー23を倒す量を調整してもよい。この場合、連結ピン27aと長孔31cの周方向の下端31c2との間には隙間が生じる。
【0052】
本実施形態の搭乗型ローラー100では、走行レバー23が後進位置P2に倒され、車両本体10が後進する場合に、検出装置60による検出動作を開始する。制御装置40は、検出装置60が障害物を検出した際、車両本体10を緊急停止させるように駆動装置27を制御する。本実施形態の搭乗型ローラー100において、制御装置40は、検出装置60が障害物を検出した際、あるいは、緊急停止する際、警音器25から警音を発することで操縦者や周囲の人に危険を通知することができる。
【0053】
以下、緊急停止時における駆動装置27の動作について説明する。
制御装置40は、ロッド部27bを初期位置から縮めるように駆動装置27を制御する。
【0054】
図6に示したように、走行レバー23が後進位置P2に位置している場合、連結ピン27aがカム部材30の長孔31cの周方向の下端31c2に位置している。そのため、ロッド部27bが初期位置よりも縮んでいくと、ロッド部27bとともに下方に移動する連結ピン27aにカム部材30が引っ張られて下方に移動しようとする。このとき、カム部材30とともにシャフト26が回転することで、走行レバー23が中立位置P3に戻される。
【0055】
このように走行レバー23が中立位置P3に戻されたことで、油圧ポンプ51の斜板がニュートラル位置に位置することとなり、HSTブレーキが作用し、搭乗型ローラー100が緊急停止される。本実施形態の搭乗型ローラー100によれば、検出装置60が障害物を検出した際、駆動装置27を制御することで走行レバー23を中立位置P3に強制的に戻すことで、車両本体10を緊急停止させることができる。
【0056】
ここで、走行レバー23を中立位置P3に戻した直後の状態では、縮んだロッド部27bが長孔31cの周方向の下端31c2に接触した状態となってしまう。このように、ロッド部27bが縮んだ状態のままでは、車両走行を再開する際、走行レバー23を動かすことができなくなってしまう。
【0057】
これに対して本実施形態では、制御装置40が、ロッド部27bを初期位置から所定位置まで移動させた後、ロッド部27bを初期位置まで再び伸ばすように、駆動装置27を制御している。ここで、ロッド部27bが所定位置まで移動した状態とは、後述のように走行レバー23を中立位置P3に戻す位置までロッド部27bが移動した状態を意味する。
【0058】
具体的に制御装置40は、ロッド部27bを初期位置から移動させたことで、第1センサー34aおよびロッド検出部35により走行レバー23が中立位置P3に戻ったと判定した場合、ロッド部27bを縮み状態から伸ばし状態に切り替える。そして、連結ピン27aがロッド検出部35に接触する初期位置までロッド部27bを伸ばすように、駆動装置27を制御する。このように、制御装置40は、回転角検出部34およびロッド検出部35の検出結果に基づいて、駆動装置27を制御する。
これにより、図4に示したように、中立位置P3に位置するカム部材30の長孔31cに対して、ロッド部27bを適切な位置まで伸ばすことができる。本実施形態の場合、制御装置40は、ロッド検出部35によってロッド部27bの位置を検出しているため、ロッド部27bが初期位置よりも伸びて走行レバー23が前進位置P1側に倒れることがない。
【0059】
本実施形態によれば、緊急停止によって走行レバー23を中立位置P3に強制的に戻した場合において、ロッド部27bを初期位置に戻すことで、緊急停止後においても走行レバー23を操作することで車両を容易に再動作させることができる。
【0060】
また、本実施形態の搭乗型ローラー100では、車両本体10における後進時の走行速度に応じて、駆動装置27を制御している。ここで、後進時の走行速度が高くなるほど、緊急停止を行う際の車両の制動距離が長くなる。
本実施形態において、制御装置40は、例えば、操作パネル部24に設けられた切り替えスイッチによって後進時の走行速度として「高速」が選択された場合、「低速」が選択された場合に比べて、駆動装置27のロッド部27bを動作させるタイミングを早めるようにしている。これにより、後進時の走行速度に応じて、走行レバー23を戻すタイミングを最適化することで、緊急停止時の動作を走行速度によらず安定させて制動距離を一定に保つことができる。
【0061】
さらに本実施形態において、例えば、検出装置60が車両本体10から1m以内となる検出エリア内に障害物を検出した場合、制御装置40は、HSTブレーキとともに駐車ブレーキを作動させるように制御する。このように障害物と車両本体10との距離が1m以内に近づいた場合に、HSTブレーキと駐車ブレーキとを併用することで、車両本体10を確実に緊急停止させることができる。また、HSTブレーキおよび駐車ブレーキを併用した場合、例えば、車両本体10の1m以内に急に障害物が入り込んだ際に緊急停止するようなケースで特に顕著な効果を奏することができる。
【0062】
なお、制御装置40は、障害物と車両本体10との距離が1m以上ある場合は、駐車ブレーキは作動させない。これは、車両本体10の走行速度が速い場合に駐車ブレーキを掛けてしまうと、駐車ブレーキを引きずることで破損させる恐れがあるためである。具体的に駐車ブレーキは、多板のディスクブレーキからなるため、上述のようにブレーキの引きずりを多く生じさせるとライニングが早期に摩耗することで破損するリスクが高まるからである。
【0063】
以上、本発明の搭乗型ローラーの一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、搭乗型ローラーとしてコンバインド型ローラーを例に挙げたが、本発明は前輪部および後輪部として鉄輪を有するタンデム型ローラーにも適用可能である。
【0064】
また、上記実施形態では、搭乗型ローラー100として、後進する車両本体10の進路上に障害物を検知した際に緊急停止を行う場合を例に挙げたが、本発明はこれに限られない。すなわち、本発明は、前進する車両本体の進路上に障害物を検知した際に緊急停止を行う搭乗型ローラーにも適用可能である。
例えば、車両本体10の前方側に検出装置60を設け、前進する車両本体10の進路上に障害物を検知した際に緊急停止を行ってもよい。緊急停止時において、制御装置40は、ロッド部27bを初期位置から延ばすことで走行レバー23を前進位置P1から中立位置P3へと戻すように制御すればよい。なお、前進時に緊急停止を行う場合において、ロッド検出部としては、初期位置からのロッド部27bの伸びを妨げない構成に適宜変更される。
【0065】
また、上記実施形態において、検出装置60は、車両本体10における走行速度に応じて、障害物の検出距離を変更可能な構成を採用してもよい。この構成によれば、走行速度によらず障害物を高精度に検出することで、緊急停止時の信頼性が向上する。
【0066】
また、上記実施形態では、搭乗型ローラー100における走行速度を2段階で切り替え可能とする場合を例に挙げたが、3段階以上で切り替え可能であってもよい。また、速度切り替えを省略した構成を採用してもよい。
【0067】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0068】
10…車両本体、23…走行レバー、26…シャフト、27…駆動装置、27a…連結ピン、27b…ロッド部、27c…本体部、27C…支持軸、30…カム部材、33…フレーム部、34…回転角検出部、35…ロッド検出部、40…制御装置、50…油圧駆動伝達装置、51…油圧ポンプ、60…検出装置、100…搭乗型ローラー、27d…端部。
【要約】
【課題】障害物を検知し車両を緊急停止させることができる装置を備え、緊急停止後の再動作を容易に実行することができる、搭乗型ローラーを提供する。
【解決手段】車両本体と、車両本体の走行状態を、停止、前進および後進のいずれかに切り替える走行レバーと、走行レバーに連結され、走行レバーに連動して回転するシャフトと、シャフトに連結される油圧ポンプを含み、車両本体に駆動力を伝達する油圧駆動伝達装置と、後進または前進する車両本体の進路上に位置する障害物を検出する検出装置と、シャフトに取り付けられたカム部材に連結され、シャフトを回転可能な駆動装置と、検出装置が障害物を検出した際、車両本体を緊急停止させるように駆動装置を制御する制御装置と、を備える搭乗型ローラーである。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6