(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】ミリ波及び超音波センサ
(51)【国際特許分類】
G01N 29/024 20060101AFI20220830BHJP
G01N 22/00 20060101ALI20220830BHJP
G01N 22/04 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
G01N29/024
G01N22/00 A
G01N22/04 A
(21)【出願番号】P 2021081284
(22)【出願日】2021-05-12
【審査請求日】2021-05-12
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】ビン・サイ
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-184825(JP,A)
【文献】特開2000-338093(JP,A)
【文献】特開平03-223669(JP,A)
【文献】特表2011-508146(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0305881(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - 29/52
G01N 22/00 - 22/04
G01N 24/00 - 24/14
A61B 8/00 - 8/15
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動中に流体混合物を分析するための流体混合パラメータ決定(FMPD)システム(100)であって、
プロセッサ(121)及び関連するメモリ(132)を含むコンピューティングシステム(120)と、前記メモリに格納された複数の材料組成物のための2つ以上のモデルパラメータを含む少なくとも1つの材料モデル(125)
と、
それぞれが前記流体混合物を検知するために連結され、それぞれが前記コンピューティングシステムに連結されている、超音波センサ(130)及びミリ波(MMW)センサ(145)と、を含み、
前記超音波センサは、
前記コンピューティングシステムに、前記流体混合物の少なくとも速度又は体積流量、及び前記流体混合物を通る音速(VoS)を含
む超音波データを提供し、
前記MMWセンサは、MMW速度データを前記コンピューティングシステムに提供し、
前記コンピューティングシステムは、前記流体混合物中の複数の成分及び前記複数の成分の濃度を含むパラメータを識別するための、前記超音波データ及び前記MMW速度データと共に前記材料モデルを利用するためのものである、流体混合パラメータ決定(FMPD)システム(100)。
【請求項2】
前記超音波データが、前記コンピューティングシステムが、形状、振幅、及び位相を決定するために使用する生データを含む、請求項1に記載のFMPDシステム。
【請求項3】
方法であって、
プロセッサ(121)及び関連するメモリ(122)を含むコンピューティングシステム(120)と、前記メモリに格納された複数の材料組成物のための2つ以上のモデルパラメータを含む少なくとも1つの材料モデル(125)と、前記コンピューティングシステムにそれぞれ連結され、前記流体混合物が移動している間に流体混合物を検知するようにそれぞれ連結された、超音波センサ(130)及びミリ波(MMW)センサ(145)と、を含む、流体混合パラメータ決定(FMPD)システム(100)を提供することであって、
超音波センサは、前記コンピューティングシステムに少なくとも前記流体混合物の速度、又は前記流体混合物の体積流量、及び前記流体混合物を通る
音の速度
(VoS)を含む超音波データを提供し、
前記MMWセンサがMMW速度データを検知し、前記MMW速度データを
前記コンピューティングシステムに提供し、
前記コンピューティングシステムは、前記流体混合物中の複数の成分と、前記複数の成分の濃度とを含むパラメータを識別するため、前記材料モデルを、
前記超音波データ及び
前記MMW速度データと共に使用する、こと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2020年5月14日に出願された「ミリ波及び超音波センサを使用する流体パラメータ決定」と題された米国特許仮出願第63/024,690号の利益を主張する。
(発明の分野)
本開示は、流体混合物のパラメータ決定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスは、主にメタン(CH4)を含む気体と、より多くの炭素原子を有するガス分子との混合物であり、一般に、エタン、プロパン、及びブタンなどの2~8個の炭素を含む。窒素、二酸化炭素、硫化水素、及びヘリウムなどの他のガスも、一般に、天然ガスに含まれる。天然ガスはまた、砂、水、及び油などの様々な汚染物質を含むことができる。この初期の未精製段階では、天然ガスは一般に、「坑井ヘッド品質」又は「原料」天然ガスと呼ばれる。
【0003】
パイプライン中を流れる天然ガスなどの流体が流動している間の流体混合物のためのインラインリアルタイム品質検査及び監視のための中央マーケットセグメントへの関心とニーズが高まっている。パイプライン又は船舶に貯蔵された液化天然ガス(LNG)によって輸送されたガスの組成は、ガスクロマトグラフィー(GC)によって従来から決定されている。
【0004】
GCは、天然ガスの場合など、2つ以上の組成成分を含む材料の組成を決定するために使用される分析技術であり、そのエネルギー含有量を計算することを可能にする。従来のGCは、試料を処理するために、器具内のヒータ及び圧力調整器を必要とする。北米では、エネルギー含有量は、一般に、英国熱量単位(BTU)として報告される。BTU評価が高いほど、燃料がより貴重であり、したがって、燃料コマンドの価格が高くなる。したがって、天然ガスの組成物の分析は、天然ガス製造業者、販売業者、ユーティリティ、ガスエンジン及び家電製造業者、並びに消費者に必要とされる。
【発明の概要】
【0005】
本概要は、提示される図面を含む以下の「発明を実施するための形態」で更に詳述される、簡潔に選定された開示の概念を単純な形態で紹介するために提供される。本概要は、特許請求される主題の範囲を限定することを意図するものではない。
【0006】
開示された態様は、天然ガスなどの流体混合物の組成物を分析するための従来のガスクロマトグラフが、低ガスゲートステーション及び分配顧客が購入及び実装するために過度に高価で複雑であり得ることを認識する。開示された態様は、インライン(リアルタイム)測定用に構成された比較的低コストの流体混合パラメータ決定(FMPD)システムを含み、FMPDシステムは、少なくともミリ波(MMW)センサと、少なくとも1つの材料モデルを含むコンピューティングシステムにセンサデータをそれぞれ提供する超音波センサと、を含む。コンピューティングシステムは、それぞれのセンサデータを材料モデルと共に使用して、流体混合物が移動している間に流体混合物の複数のパラメータを決定する。決定されるパラメータとしては、流体混合物中に存在する様々な組成物、並びにそれらのそれぞれの濃度、体積流量、及び音速(VoS)、並びに任意選択的に、流体密度、湿度、質量流量、温度、及び圧力などの他のパラメータが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】例示的な態様による、例示的なFMPDシステムの簡略化された描写を示す。
【
図1B】ここで共通のハウジング内にある
図1Aに示されるFMPDシステムを、その端部の取り付けフランジ、機能セレクタスイッチ、及び表示画面と共に示す。
【
図2】開示されたFMPDシステムを使用して流動流体混合物の複数の流体パラメータを決定するための例示的なデータ処理フローチャートを示す。
【
図3】NGとして示される天然ガスに一般に含まれるものを含む複数の成分材料の材料組成特性を示す例示的な表である。
【
図4】開示されたデータ融合構成の例を示し、ここで、MMWセンサ、超音波センサ、及びFBGセンサからのデータが全て、ベイシアン分類ブロック、人工ニューラルネットワーク(ANN)エンジン、及び数学的モデルを実装するコンピューティングシステムによって処理される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
開示される実施形態は、添付の図面を参照して説明され、同様の参照番号は、類似又は同等の要素を示すために図面全体にわたって使用される。図面は、縮尺どおりに描かれておらず、それらは、本明細書に開示される態様を単に例示するために提供される。いくつかの開示される態様は、例証のための例示的な用途に言及しながら以下に記載される。本明細書に開示される実施形態の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細、関係、及び方法が記載されることを理解されたい。
【0009】
また、本明細書で更なる修飾を伴わずに使用される「に連結された」又は「と連結する」(及び同様の)用語は、間接的又は直接的な電気的接続のいずれかを説明することを意図する。したがって、第1の装置が第2の装置に「連結する」場合、その接続は、経路内に寄生体のみが存在する直接的な電気的接続を通じているか、又は他の装置及び接続を含む介在物を介した間接的な電気的接続を通じてもよい。間接的な連結のために、介在物は、一般に信号の情報を修正しないが、その電流レベル、電圧レベル、及び/又は電力レベルを調整してもよい。
【0010】
本開示の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるが、特定の例で示された数値はできる限り正確に報告されている。しかしながら、任意の数値は、それぞれの試験測定値に見出される標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。更に、本明細書に開示される全ての範囲は、その中に包含される任意の及び全てのサブ範囲を包含すると理解されるべきである。例えば、「10未満」の範囲は、ゼロの最小値と10の最大値との間の任意の及び全てのサブ範囲、すなわち、ゼロ以上の最小値及び10以下の最大値、例えば、1~5の任意の及び全てのサブ範囲を含むことができる。
【0011】
図1Aは、例示的な態様による、パイプライン180を通って移動している間に流体混合物の複数のパラメータを決定するための、パイプライン180上に実装された例示的なFMPDシステム100の簡略化された描写を示す。パイプライン180は、Vとして示される速度で左から右に流れるように示される、その中に流体混合物を有する直径d(その断面積を画定する)を有するように示されている。FMPDシステム100は、流体混合物が移動している間に流体混合物の複数のパラメータのインライン(リアルタイム)モニタリングのために適合されている。FMPDシステム100は、
図1Aに全て列挙されている7つの異なるメータの機能を実装するため、「スーパー計」と見なすことができ、一般に、これらの機能及び特徴のいずれかがFMPDシステム100のオペレータによって有効化又は無効化されることを可能にするファームウェアも有する。
【0012】
これらのメータは、体積流量計101、質量流量計102、エネルギー(熱量)メータ103、インラインクロマトグラフ及び流体品質分析器104、密度計105、含水率計106(湿度測定を提供する)、並びに流体圧力及び温度計107を示す。FMPDシステム100のコンピューティングシステム120はまた、組成濃度分析器108及び流体複合誘電率分析器109を含む分析器を提供することも示されている。
【0013】
FMPDシステム100は、MMWセンサ145及び一対のトランスデューサT1及びT2を有して示される超音波センサ130を備える。単一対のトランスデューサを有する超音波センサ130が示されているが、一対を超えるトランスデューサが存在し得る。また、互いに交差するパイプライン180の内側表面上に配置されて示される矩形によって表される任意の繊維ブラググレーティング(FBG)センサ135も示されている。FBGセンサ135は、様々な方法で実装することができ、センサ素子のFBGセンサの135アレイは、典型的には、パイプライン180の内周に沿って実装することができる光ファイバストライプ上に実装される。これらのセンサ145,135,130の全ては、送信、受信、及び検知機能を有するように示され、それぞれの検知機能を実行するためにパイプライン180に各々取り付けられている。それぞれの検知機能を実行するために、パイプライン180に取り付けられた圧力センサ170及び温度センサ175も示されている。
【0014】
コンピューティングシステム120は、プロセッサ121と、少なくとも1つの関連するメモリ122とを備える。コンピューティングシステム120は、シグネチャ抽出ブロック123、センサデータ診断、較正、及び融合ブロック124、材料モデル及びパラメータブロック125、並びに材料パラメータ分類及び識別ブロック126を実装することが示されている。コンピューティングシステム120はまた、ANエンジン又は人工知能(AI)エンジンを実装し、ANN/AI学習ブロック127として示され、材料パラメータ分類及び識別ブロック126に連結されて示されている。
【0015】
それぞれのセンサ145,135,130は、前処理ブロック155、次いでアナログ-デジタル変換器(ADC)150によってコンピューティングシステム120に連結されて示されている。前処理ブロック155は、データフィルタリング、データスケーリング、及び時間同期の機能を提供する。時間同期は、測定及び制御の間に一般的に必要とされる。前処理ブロック155における時間同期は、主に、時間軸及び空間軸に対して位置合わせされるようにそれぞれのセンサによって提供されるデータに使用され、これは、極座標又はデカルト座標に基づくなど、共通座標に変換される。
【0016】
図1Aに示されるそれぞれのセンサ145,135,130を含むFMPDシステム100は、全て、単一の多用途センサシステムとして一緒になって提供され得る(下記の
図1Bを参照。全て、190として示される共通のハウジング内に収容されている)。あるいは、それぞれのセンサ145,135,130は、別個に提供されてもよい。
【0017】
MMWセンサ145は、高周波(短波長)放射を放射するためのものであり、材料組成物に敏感である。高周波/短波長は、比較的小さいサイズのアンテナを可能にする。MMWセンサ145の動作周波数は、一般に24GHz~300GHzであり、24GHzは、MMW又は準MMWとも時折呼ばれる。MMWセンサ145の帯域幅は、300GHzの中心周波数の特定の事例における>30GHzなど、一般に、その中心周波数の>10%である。MMWセンサ145は、組成物濃度分析器108として
図1Aに示される流体混合物の様々な成分材料の濃度を測定するために、コンピューティングシステム120が含む流体混合物中のそれぞれの材料を特徴付けるために使用されるMMW速度データを提供する。
【0018】
コンピューティングシステム120はまた、流体混合物について、その複合誘電率、密度、含水量、流体圧力、流体温度、体積流量、質量流量、総エネルギーの測定値、並びにインラインクロマトグラフ及び流体品質分析器104を提供することも示されている。
【0019】
図1Aに示されるMMWセンサ145の矩形ボックス部分は、一般に、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、送信機、及び受信機などのコントローラを備える。MMWセンサ145はまた、アンテナ対として構成された
図1AのA
1及びA
2として識別される第1及び第2の三角形として示される少なくとも1つのアンテナも含む。MMWセンサに関して知られているように、送信機は、位相ロックループ(PLL)と、周波数掃引コントローラと、電力増幅器とを含み、受信機は、ミキサ及び低雑音増幅器(LNA)を含む。
【0020】
高周波半導体技術の進歩により、小型化システムオンチップ(SoC)は、Texas Instruments Incorporatedによって提供されるようなMMWセンサ145のために市販されている場合がある。上述したMMWセンサ145は、30 GHz~300 GHzの帯域幅を提供することができ、散乱行列、偏光、周波数、位相及び気体の振幅シグニチャ、また液体及び固体を使用して、比較的高度な特性評価を実行することが可能になる。MMWセンサ145によって利用されるマイクロ波は、材料水分検知及び流体濃度測定のための信頼性のある非破壊試験(NDT)技術であると認識される。
【0021】
MMWセンサ145によって提供されるMMW速度データは、下記の
図3に示される材料組成特性の表中の例示的な材料モデルデータを有する材料モデル及びパラメータブロック125として示されるデータベースを有するコンピューティングシステム120によって使用され、流体混合物中にあることが知られているそれぞれの成分を検出することを可能にする。別の材料識別方法は、流体混合物中にあることが知られていない探される特性及び成分の較正を使用し、次いで、以前に知られていない成分に対する分類及び材料識別を実行することである。流体混合物が天然ガスである場合、それぞれの材料は、水分及び主炭化水素ガス組成成分(例えば、全て下記の
図3に示されている主にメタン(C
1)、C
2、C
3、及びC
4)を含む天然ガス中にある既知の材料を含むことができる。
【0022】
MMWセンサ145の動作中、受信アンテナとして機能するA2などの他のアンテナに到達する前に、送信アンテナとして機能するA1などのアンテナのうちの1つによって放出されたMMWが、流体混合物を通過する。MMWの速度は、A1~A2の移動時間から決定することができ、ここでは、MMWの信号形状、信号幅、及び周波数は、流体混合物の存在によって変化する。異なる流体混合組成物は、異なる影響をもたらし、流体媒体の比誘電率及び/又は透過性が上昇すればするほど、それを通って移動するMMW波の速度が低下する。
【0023】
超音波センサ130は、流体混合物の速度、及び流体(SoS)内の音の速度としても知られるVoSとを含む流体パラメータを測定する。VoSは、主に、流体混合物中のそれぞれの材料によって、温度によって、及び圧力によって影響を受ける。超音波センサ130はまた、コンピューティングシステム120に生データを提供し、コンピューティングシステム120は、一般的に、専用のアルゴリズムを使用し、受信された生データ信号の形状、振幅、及び位相を含む信号シグネチャを生成する。
【0024】
圧力センサ及び温度センサは、従来の超音波センサによって提供される標準的な機能である。流体圧力及び温度計107からの圧力及び温度の読み取り値は、超音波センサ130によって使用されて、測定されたリアルタイム体積を標準体積に変換し、この変換は通常、超音波センサ130の一部として電子体積補正器(EVC)によって実行される。超音波流量計130は、一般に、統合されたEVCを有するが、他のタービンタイプの流量計、及び回転流量計は、一般に別個のEVCを使用する。
【0025】
超音波流量計130のT
1及びT
2は、パイプライン180の両側にある
図1Aに示されており、それぞれは、流体混合物を通過する高周波超音波パルスを送信又は受信するように概ね構成されている。
図1Aに超音波センサ130として示される矩形ボックスは、コントローラ並びに送信機及び受信機を含み、一般に、Tx及びRxを接続するマルチプレクサも含み、そのため、任意の所与の時点で1つのトランスデューサが送信し、他方のトランスデューサが受信し、逆もまた同様である。励起パルスは、送信機チェーンで生成され、一般に、送信機チェーン内に自動利得制御(AGC)も存在する。
【0026】
超音波検知の技術分野で知られているように、第1及び第2のトランスデューサT1及びT2が両方ともパイプライン180の同じ側に配置されるなどの他のトランスデューサ構成、並びに3つ以上のトランスデューサ超音波感知構成も可能である。第1及び第2のトランスデューサT1及びT2がパイプライン180の同じ側にある反射経路構成も存在し得る。
【0027】
超音波センサ130のセンサ及びそれぞれの検知技術に関しては、一般に数百kHzの比較的低い周波数で動作する間に、超音波を流速測定で使用することができ、SoSは材料組成物によって大きく影響されるため、材料や流体混合物が異なるとSoSも異なる。1つの構成での超音波センサ130は、100kHz~2MHzの周波数で動作する。超音波センサ130の動作周波数範囲は、例えば、気体流体に対して100kHz~400kHzであってもよく、液体流体に対して400kHz~2MHzであってもよい。
【0028】
FBGセンサ135は、光を光ファイバに送ることによって動作する光ファイバベースの分光計を提供し、光は、FBG(複数可)から反射する。理論的には、同じ公称中心波長で同じ繊維上に100個以上のFBGが存在し得る。少なくとも波長分割多重化(WDM)ベースのFBGセンサの場合には、一般的にFBGセンサ135のための複数のFBGが存在する。反射光は、FBGのセンサ135の光検出器に戻り、FBGセンサ135がFBGの中心波長の位置を判定することができるように、波長基準アーチファクトと比較される。波長情報は、工学単位に変換され、例えば、1.3ピコメートルの波長シフトは、1単位の微小ひずみに対応することができる。実際の並進は、一般に、FBGセンサ135によって供給される。
【0029】
WDMは、光ファイバ内に異なる波長(すなわち、色)を組み合わせることによって、単一の光ファイバ上に送り出された複数の光信号を使用する、テレコミュニケーション産業に由来する技術である。光ファイバ検知のこの場合、1つの光ファイバにおける異なる反射波長(ブラッグ波長)を有するFBGの使用について記載する。FBGセンサ135はまた、ファイバ内の既知の光速度を使用して、どの信号がファイバ経路に沿ってどのFBGから反射されるかを判定する時分割多重化(TDM)を利用することができる。TDMは、WDMとTDMとの組み合わせも使用することができるように、時間遅延と同じ波長の問い合わせを単純化することができる。
【0030】
FBGセンサ135は、FBGセンサ135にWDM(又はTDMと共にWDM)を使用することによって、高精度を提供することができ、湿度、温度、又は歪み/圧力変化から生じるそのFBGの変形から特定の波長反射を検知することができる。FBGセンサ135は、中赤外線及び近赤外の周波数で動作してもよい。例えば、1530nm~1562nmの波長に対応する、20~24 dBの電力レベル(屈折力の増幅値を表す)、192THz~196THzの周波数で動作し得る、Erbi-Doped Fiber Amplifier(EDFA)ベースのFBGセンサ135については、37THz~400THzである。
【0031】
少なくとも2つの異なる測定原理及び波形(例えば、MMWセンサ145によって提供される電磁波及び超音波センサ130によって提供される機械波)の組み合わせによって、開示される態様は、ANN/AIブロック127によって実装されるANN/AI学習を利用することによって実現され得ることを認識している。加えて、FBGセンサ135は、上記の結果を精緻化する(及び追加のパラメータ情報を提供するために、材料特性に関連する異なる波長で反射特性及び屈折特性を収集し、このデータを処理して分光範囲として作用させることによって、光学的シグネチャの繊維光学に基づく検知を実行することができる。
【0032】
上述のように、コンピューティングシステム120は、複数の流体パラメータを生成する。これらの流体パラメータのそれぞれは、機能を有効化/無効化するように構成されたファームウェアを使用して、オペレータによって有効/無効にすることができる。組成物濃度に関しては、これは、流体混合物中に存在することが知られている組成物の濃度、並びに複雑な比誘電率及び密度データを利用するなど、既知のデータベースを使用することによって、予想外に検出された物質の濃度も含む。
図1Aに示される密度パラメータは、モル質量をモル体積で除算したものを使用して、計算システム120によって実装することができ、モル体積の理想的なガスは、理想的なガス式に従って、0°C及び100kPaで0.0227m
3/mol、25°C及び100kPaで0.02479m
3/molであることが知られている。
【0033】
図1Aに示す水分含量は、コーティングされたFBGセンサからのデータを使用することによって実装することができ、コーティングは、湿度に敏感なFBGセンサを作製するように選択される。流体圧力及び温度は、超音波センサ130によって提供され得る。体積流量はまた、経路VoGを測定する超音波センサ130からのデータを使用して実装されてもよく、パイプライン180の断面積にわたる平均速度を更に計算し、次いで、その流速の測定を通じて超音波センサ130をパイプライン180の断面積で乗算して、流体混合物の流量、質量流量(流量密度に流量を乗じて計算される)、及び熱量(エネルギー)値を計算するために使用できる天然ガスのC
1からC
4(ブタン)を含む濃度として測定された組成物及びそれらのモル百分率を考慮に入れることによってコンピューティングシステム120によって実装されるエネルギー含有量を得ることができる。
【0034】
熱量(エネルギー)計算は、従来のガスクロマトグラフを使用する場合の標準計算である。
図1Aに示すインラインクロマトグラフ及び流体品質分析器は、流体品質検査又は主要な有用な組成検査のいずれかに関する情報を知ることによって、コンピューティングシステム120によって実装される。例えば、天然ガス中の水又は湿度レベルは、可能な限り低いべきである。同様に、H
2Sなどの有毒ガスの濃度は、流体混合物中に存在する成分を特定して熱量を確認し、並びに環境規制の遵守によって、異なる国の規制、並びに二酸化炭素、メタンなどの規制に従って、数十ppm未満であるべきである。
【0035】
センサデータ診断、較正及び融合ブロック124は、それぞれのセンサからそれぞれのデータを一緒に配置するためのものであり、パターン認識のモデルを決定するために使用することができる。ANN/AI学習ブロック127を使用して、MMWセンサ145、超音波センサ130、及び任意選択的に、FBGセンサ135によって提供されたデータから、シグネチャ抽出ブロック123によって生成された検知されたシグネチャを使用して、ベクトル空間内でマルチセンサ融合モデルを確立することができる。
【0036】
図1Bは、
図1Aに示されているMPDシステム100を示し、ここではFMPDシステム100’として示され、共通のハウジング190内にあり、それぞれの端部の取り付けフランジ195と共にパイプラインに取り付けられている。FMPDシステム100’は、機能セレクタスイッチ185及び表示画面196を更に備えて示されている。フランジ195は、従来の流量計と同様に、パイプラインの隣接するセクション上にボルト止めすることを可能にするように示される穴を含み、スプールの一部は、フランジ195を用いてパイプの間に挿入され、ボルト止めされ得る。超音波センサ130、MMWセンサ145及びFBGセンサ135の配向を制御するための例示的な位置が示される。FMPDシステム100’はまた、他のセンサを含んでもよい。
【0037】
図2は、流動流体混合物の複数の流体パラメータを決定するための例示的なデータ処理フローチャート200を示し、上記のように、FBGセンサは任意選択的であり、これは、WDMを実装することができるコーティングされたFBGセンサ135’としてここで示されている。コーティングされたFBGセンサ135、超音波センサ130及びMMWセンサ145によって提供されるセンサデータは全て、ANN/AIエンジン127aと共にベイシアン分類分析を実装する120’として示されるコンピューティングシステムに連結(ADC150によって、次いで、
図1に示す前処理ブロック155)される。
【0038】
コンピューティングシステム120’のシグネチャ抽出ブロック123は、示される3つのセンサ型から受信されたそれぞれのセンサデータを使用してシグネチャ抽出を実行し、次いで、ベクトル空間データ129に処理される。次いで、材料分類ブロック126a及び上述の
図1Aに示されるものなどの複数の流体パラメータの識別を提供するパラメータ識別ブロック126bとして別個に示される材料パラメトリック分類及び識別ブロック126によって分類される。
【0039】
データ処理フローチャート200はまた、サンプルを訓練するため、又はデータベースをロードするための、
図1Aにも示される材料モデル及びパラメータブロック125を含むことが示されている。タイミング制御論理220は、それぞれの測定値のタイミング、取得された測定データ及び計算、並びに任意の必要な制御時間シーケンスを調整するためのものである。測定値は、一般に、超音波センサ130(超音波経路測定)から、MMWセンサ145(MMW速度測定)から、及びコーティングされたFBGセンサ135’からの測定値である。
【0040】
ガス混合物の場合の流体混合物中に存在する組成物の決定に関しては、当業者は、液体混合物中の成分の決定のためにも本開示を使用することによって開発された異なる関連式を利用することができ、ガス中のVoSはガス組成物によって影響を受ける。VoSの関係は、以下のように表すことができる。
【数1】
【0041】
式中、M
R=組成物密度(g/mol)、Z=ガス圧縮率係数、ρ=モル密度、∂は、部分導関数を表し、C
p/C
vは、ガスの一定体積及び一定圧力熱容量の比である。R=ユニバーサルガス定数=8.31446261815324JK
-1モル
-1。Tはケルビンで表される温度である。モル密度(Mr)は、以下のように表すことができる。
【数2】
【0042】
天然ガス中の主ガス組成物は異なるモル質量(分子量)とVoSを有し、超音波センサ130からのシグネチャは、モル質量に関してカラムに示される
図3の表に示されるように、ガス混合物中のそれぞれの成分の識別及び分類に使用することができる。材料の誘電率も決定することができる。MMWの速度(以下の式でVoEとして示される)は、MMWの進行中の培地の誘電率及び透過率によって影響を受ける。
【数3】
【0043】
式中、C
0は、VoE(光の速度と同じ速度)であり、真空=3x10
8m/s、ε
r=材料比誘電率(RP)、及びμ
r=その相対透過率である。
【数4】
【0044】
同様に、天然ガス中の主ガス組成物は、MMWの速度を変化させる異なる比誘電率(RP)を有する。周波数シグネチャは、
図3に示すように、流体混合物中のそれぞれの組成物のモル質量、したがってそれらの同一性を識別するために使用することができ、これは、天然ガスの既知の成分のRP値を有するカラムRPを有する表を提供する。供給チェーン内の異なるガス/液体供給源は、これらの成分の異なる割合を有することができ、そのため、RPカラム内の数字は、公衆源から直接取られず、むしろいくつかの要因に基づいて生成された推定値よりも大きい。例えば、メタン濃度は一般的に、天然ガスに対して70%~90%で変動する。
【実施例】
【0045】
開示される態様は、以下の特定の実施例によって更に例証され、これは、任意の方法で本開示の範囲又は内容を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0046】
図4は、開示されたデータ融合構成の一例を示しており、MMWセンサ145及び超音波センサ130及びFBGセンサ135からのデータは全て、プロセッサ121と、ベイシアン分類ブロック421、ANNエンジン422及び提供される等式で上述したような数学的モデルブロック423、並びに確率分布、及び周波数スペクトル構成要素分布などの統計モデルを実装するメモリ122とを含む420として示されるコンピューティングシステムによって全て処理される。センサ145,130及び135のそれぞれからのデータは、ベイシアン分類ブロック421、ANNエンジン422及び数学モデルブロック423のそれぞれに連結されて示されている。ベイシアン分類ブロック421からのそれぞれの出力は、生データから抽出された特徴のベクトルを出力し、ANNエンジン422は抽象モデルを出力し、数学モデル423は、係数を含む更新された数学的モデルであり、これらはそれぞれ、435として示されるデータベースに記憶されて示される。
【0047】
様々な開示された実施形態について上述してきたが、それらは単なる例として提示されており、限定するものではないことを理解されたい。開示された実施形態に対する多数の変更は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、本開示に従ってなされ得る。したがって、本開示の広さ及び範囲は、上述した実施形態のいずれにも限定されるべきではない。むしろ、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物に従って定義されるべきである。