(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】1,1,1-トリクロロジシランの合成
(51)【国際特許分類】
C01B 33/107 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
C01B33/107 Z
C01B33/107 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021092045
(22)【出願日】2021-06-01
(62)【分割の表示】P 2019570832の分割
【原出願日】2018-06-21
【審査請求日】2021-06-16
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521208055
【氏名又は名称】ナタ セミコンダクター マテリアルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ミルウォード、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】レッケン、ブライアン、ディー
(72)【発明者】
【氏名】サンダーランド、トラビス
(72)【発明者】
【氏名】ヤング、ジャネット、ケー.
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、シアオピン
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-515955(JP,A)
【文献】特表2009-539264(JP,A)
【文献】特開昭62-017011(JP,A)
【文献】特開平04-224588(JP,A)
【文献】特表2015-510516(JP,A)
【文献】特表2010-507559(JP,A)
【文献】特表2013-511459(JP,A)
【文献】特開平01-203214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B33/107
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.01%(w/w)以上2%(w/w)未満のアルキルジシランと98%(w/w)超のトリハロジシランとを含有するトリハロジシラン組成物。
【請求項2】
前記組成物がハロゲン化アルキルアルミニウムを更に含有する、請求項1に記載の組成
物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
なし
技術分野
【0002】
本発明は、150℃未満の温度で、水素化アルキルアルミニウムと、ハロジシランと、溶媒とを混合すること、及びハロジシランを還元してトリハロジシランを形成することを含む、トリクロロジシランの合成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
化学気相成長、原子層堆積、並びにプラズマで強化された化学気相成長及び原子層堆積などのプロセスにおいて基板上にケイ素含有膜を堆積するために、シラン及びクロロシランが使用される場合がある。トリクロロジシランは、これらの膜堆積プロセスにおいてケイ素含有膜を堆積するための有望なシラン前駆体である。
【0004】
トリクロロジシランは、様々な方法により製造されてきた。これはヘキサクロロジシラン(HCDS)を水素化トリ(n-ブチル)スズで部分的に還元することにより行われている。また、化学気相成長反応器内でシラン(SiH4)と四塩化ケイ素とをカップリングすることによっても行われている。
【0005】
これらの公知のトリクロロジシランの製造方法は、不十分な選択率、不十分な収率、生成物から分離困難な望ましくない副生成物の生成、及び高価な又は危険な出発物質の使用を含む、工業規模での製造に魅力的ではない欠点を有している。
【0006】
したがって、望ましくない副生成物が最小限に抑えられ、生成物と副生成物が容易に分離され、コスト効率のよい出発物質を使用する、トリクロロジシランを優れた選択率及び収率で製造する新規な方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、還元に有効な量の水素化アルキルアルミニウムと、少なくとも4個のハロゲン原子を含むハロジシランと、溶媒とを、150℃未満の温度で混合すること、ハロジシランを還元してトリハロジシランとハロゲン化アルキルアルミニウムと溶媒とを含有する反応生成物混合物を形成すること、を含むトリハロジシランの製造方法に関する。
【0008】
この方法は、優れた選択率及び収率で、少量の副生成物で、コスト効率よくトリハロジシランを製造し、副生成物からトリハロジシラン生成物を効率的に分離する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
還元に有効な量の水素化アルキルアルミニウムと、少なくとも4個のハロゲン原子を含むハロジシランと、溶媒とを、150℃未満の温度で混合すること、ハロジシランを還元してトリハロジシランとハロゲン化アルキルアルミニウムと溶媒とを含有する反応生成物混合物を形成すること、を含むトリハロジシランの製造方法。
【0010】
水素化アルキルアルミニウムは、1~2個、あるいは1個、あるいは2個のアルキル基を含む。アルキル基は、3個以上、あるいは4~20個、あるいは4~10個の炭素原子を有する。水素化アルキルアルミニウムのアルキル基の例としては、限定するものではないが、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、ヘプチル、ノニル、デシル、及びこれらの異性体が挙げられる。一実施形態では、アルキル基はイソブチルである。
【0011】
水素化アルキルアルミニウムの例としては、限定するものではないが、水素化ジイソブチルアルミニウムが挙げられる。水素化ジイソブチルアルミニウムなどの水素化アルキルアルミニウムは市販されている。
【0012】
ハロジシランは、少なくとも4個、あるいは4~6個、あるいは5個、あるいは6個のハロゲン原子を含む。ハロジシランのハロゲン原子は、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード、あるいはフルオロ、ブロモ、又はクロロ、あるいはクロロである。
【0013】
ハロジシランの例としては、限定するものではないが、ヘキサクロロジシラン、ペンタクロロジシラン、及びテトラクロロジシランが挙げられる。少なくとも4個のハロゲン原子を含むハロジシランは、市販されており、あるいは公知の方法で製造することができる。例えば、ヘキサクロロジシランは、金属ケイ素が塩化水素と直接反応する直接法で製造することができる。
【0014】
溶媒は、少なくとも4個のハロゲン原子を有するハロジシランを可溶化し、少なくとも4個のハロゲン原子を含むハロジシラン、水素化アルキルアルミニウム、又はトリハロジシランと反応しない任意の溶媒である。一実施形態では、溶媒は、標準温度及び圧力で、あるいは0℃及び1atm(101.33kPa)で、トリハロジシランより高い沸点、あるいは90℃超、あるいは120℃超、あるいは200℃超、あるいは150~350℃、あるいは200~300℃の沸点を有する。溶媒は、少なくとも4個のハロゲン原子を含むハロジシラン又は水素化アルキルアルミニウムとは異なる。
【0015】
溶媒の例としては、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、ヘプタン、アルカンを含む芳香族又は非芳香族の環式又は非環式炭化水素、及びモノグリムなどの非環式エーテルを含む極性非プロトン性溶媒、あるいは芳香族炭化水素、直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素、及び非環式エーテルが挙げられる。
【0016】
溶媒は、少なくとも4個のハロゲン原子を有するハロジシラン、水素化アルキルアルミニウム、及び生成物混合物と相溶性を有する(すなわち混和性かつ非反応性)様々な溶媒の混合物であってもよく、あるいは溶媒は少なくとも4個のハロゲン原子を有するハロジシラン、水素化アルキルアルミニウム、及び生成物混合物と相溶性であり、溶媒について上述した沸点を有する溶媒混合物の一部を有する溶媒の混合物であってもよい。溶媒の混合物の例としてはミネラルスピリットが挙げられる。これらの溶媒の多くは市販されている。
【0017】
アルキルアルミニウム水素化物、少なくとも4個のハロゲン原子を含むハロジシラン、及び溶媒は、当該技術分野で公知の方法によって混合することができる。一実施形態では、水素化アルキルアルミニウム、少なくとも4個のハロゲン原子を含むハロジシラン、及び溶媒は、溶媒と少なくとも4個のハロゲン原子を含むハロジシランとを混合してハロジシラン-溶媒混合物を形成し、その後ハロジシラン-溶媒混合物を水素化アルキルアルミニウムと混合することにより混合される。あるいは、水素化アルキルアルミニウム、ハロジシラン、及び溶媒は、溶媒とハロジシランを混合してハロジシラン-溶媒混合物を形成し、次に水素化アルキルアルミニウムを第2の溶媒と混合して水素化アルキルアルミニウム-溶媒混合物を形成し、その後ハロジシラン-溶媒混合物と水素化アルキルアルミニウム-溶媒混合物を混合することにより混合される。
【0018】
一実施形態では、水素化アルキルアルミニウム又は水素化アルキルアルミニウム-溶媒混合物は、ハロジシラン-溶媒混合物に添加される。例えば、水素化アルキルアルミニウム-第2の溶媒混合物は、添加漏斗を介して、ハロジシラン-溶媒混合物が入っている丸底フラスコ又は反応器に添加されてもよい。当業者であれば、水素化アルキルアルミニウム又は水素化アルキルアルミニウム-第2の溶媒混合物をハロジシラン-溶媒混合物に添加する方法を知っているであろう。
【0019】
第2の溶媒は、少なくとも4個のハロゲン原子を含む上述したハロジシランと混合される溶媒と同じであっても異なっていてもよく、あるいは、第2の溶媒は、少なくとも4個のハロゲン原子を有する上述したハロジシランと混合される溶媒と同じである。第2の溶媒は、溶媒について上述したような沸点を有する。第2の溶媒の例は、少なくとも4個のハロゲン原子を含むハロジシランと混合される溶媒について上述した通りである。第2の溶媒として使用できる溶媒の多くは市販されている。
【0020】
ハロジシランは、水素化アルキルアルミニウムによって還元され、トリハロジシランと、ハロゲン化アルキルアルミニウムと、溶媒とを含有する反応生成物混合物を形成する。
【0021】
トリハロジシランは、1,1,1-トリハロジシラン、あるいは1,1,1-トリクロロジシランである。
【0022】
ハロゲン化アルキルアルミニウムのアルキル基は、水素化アルキル金属について上述した通りである。ハライドは、上述した少なくとも4個のハロゲン原子を含むハロジシランに含まれるものと同じハロゲン原子である。ハロゲン化アルキルアルミニウムの例としては、限定するものではないが、塩化ジイソブチルアルミニウムが挙げられる。
【0023】
溶媒対少なくとも4個のハロゲン原子を含むハロジシランの重量比は、20:1~1:20、あるいは10:1~1:10、あるいは6:1~1:6、あるいは2:1~1:2、あるいは1.5:1~1:1.5、あるいは1.25:1~1:1.25、あるいは約1:1である。
【0024】
第2の溶媒対水素化アルキルアルミニウムの重量比は、50:1~1:50、あるいは10:1~1:10、あるいは5:1~1:5、あるいは2:1~1:2、あるいは1.5:1~1:1.5、あるいは1.25:1~1:1.25、あるいは約1:1である。
【0025】
少なくとも4個のハロゲン原子を含むハロジシランと、溶媒と、水素化アルキルアルミニウムは、-30~150℃、あるいは-30~50℃、あるいは-30~25℃、あるいは-30~20℃、あるいは-10~10℃の温度で混合される。少なくとも4つのハロゲン原子を含むハロジシランと溶媒との混合、及びハロゲン化アルキルアルミニウムと第2の溶媒との混合を最初に含む実施形態では、ハロジシランと溶媒、及び水素化アルキルアルミニウムと第2の溶媒が混合される温度は様々であってもよいが、これらの混合物は、-30~150℃、あるいは-30~50℃、あるいは-30~25℃、あるいは-30~20℃、あるいは-10~10℃の温度で互いに混合される。
【0026】
少なくとも4個のハロゲン原子を含むハロジシランと、溶媒と、水素化アルキルアルミニウムは、大気圧未満から大気圧よりも上まで、あるいは大気圧、あるいは90kPa~110kPaの圧力で混合される。
【0027】
少なくとも4個のハロゲン原子を含むハロジシランと、溶媒と、水素化アルキルアルミニウムは、少なくとも4個のハロゲン原子を含むハロジシランがトリハロジシランへと還元されるまで、あるいは3分~8時間、あるいは30分~5時間、あるいは45分~2時間、又はトリハロジシランの生成が終了するまで混合される。あるいは、ある量のトリハロジシランが製造されるか、少なくとも4個のハロゲン原子を含むある量のハロジシランがプロセスによって消費されるまで、反応が継続されてもよい。トリハロジシランの生成又は少なくとも4個のハロゲン原子を含むハロジシランの消費は、例えば、熱伝導率検出器を備えたガスクロマトグラフィーによって決定することができる。当業者であれば、トリハロジシランの生成を追跡するための適切なガスクロマトグラフィーカラム及び条件を知っているであろう。例えば、ガスクロマトグラフィー-熱伝導率検出器(GC-TCD)の装置及び条件は以下の通りである:長さ30メートル、内径0.32mmであり、キャピラリーカラムの内表面にコーティングの形態で厚さ0.25μmの固定相を含み、固定相がフェニルメチルシロキサンから構成されるキャピラリーカラム。キャリアガスは、毎分105mmの流量で使用されるヘリウムガスである。GC装置は、Agilent 7890A型ガスクロマトグラフであってもよい。注入口温度は200℃である。GC実験温度プロファイルは、50℃で2分間浸漬(保持)し、15℃/分の速度で250℃まで昇温し、その後250℃で10分間浸漬(保持)することから構成される。
【0028】
混合及び還元のための反応器は、そのような反応に典型的に使用される任意の反応器であってもよい。反応器の例としては、丸底フラスコ、Parr反応器、及び圧力管が挙げられる。当業者であれば、本発明の方法に適切な反応器を選択する方法を知っているであろう。
【0029】
水素化アルキルアルミニウム対少なくとも4個のハロゲン原子を含むハロジシランのモル比は、10:1~1:10、あるいは5:1~2:1、あるいは3:1~3.5:1である。モル比は、水素化アルキルアルミニウムとハロジシランの量を指し、溶媒又はその他の全ての材料は含まれない。
【0030】
方法は、トリハロジシランを回収することを更に含んでいてもよい。トリハロジシランは、当該技術分野で公知の方法によって回収することができる。一実施形態では、トリハロジシランは真空蒸留により回収される。例えば、反応生成物が約80℃の温度にされ、生成物であるトリハロジシランが、冷却されている回収容器の中へ生成物混合物から真空下でストリッピングされてもよい。トリハロジシランを更に精製するために、トリハロジシランが更に1回以上蒸留されてもよい。当業者であれば、蒸留によりトリハロジシランを回収する方法を知っているであろう。トリハロジシランよりも沸点が高い溶媒を使用すると、トリハロジシランを効率的に回収し、高純度のトリハロジシラン組成物を生成することができる。
【0031】
トリハロジシラン組成物は、2%(w/w)未満、あるいは1%(w/w)未満、あるいは0.5%(w/w)未満、あるいは0.01~0.5%(w/w)のアルキルシランと、98%(w/w)超、あるいは99%(w/w)超、あるいは>99.5%(w/w)超、あるいは99.99%(w/w)のトリハロジシランを含む。アルキルシランのアルキルは、水素化アルキルアルミニウムのアルキルと同じである。トリハロジシラン組成物は、モノクロロシラン、トリクロロシラン、ジクロロジシランなどの少量の他の不純物を含んでいてもよい。
【0032】
トリハロジシランは、本発明の方法について上述した通りである。一実施形態では、アルキルシランは、本発明の方法の副生成物であり、水素化アルキルアルミニウムについて記載したアルキル基を有するシランを含む。アルキルシランの例としては、ケイ素原子に結合している1つ以上のイソブチル基を有するシラン又はジシラン、あるいはイソブチルシラン、あるいはイソブチルジシランが挙げられる。
【0033】
トリハロジシラン組成物は、ハロゲン化アルキルアルミニウムを更に含有していてもよい。ハロゲン化アルキルアルミニウムは、本発明の方法について上述した通りである。トリハロジシラン組成物は、2%(w/w)未満、あるいは1%(w/w)未満、あるいは0.5%(w/w)未満のハロゲン化アルキルアルミニウムを含有する。
【0034】
本発明の方法は、高純度の1,1,1-トリクロロジシランの製造を可能にする。
【0035】
基板上へのケイ素含有膜の堆積方法であって、還元に有効な量の水素化アルキルアルミニウムと、少なくとも4個のハロゲン原子を含むハロジシランと、トリハロジシランの沸点よりも高い沸点を有する溶媒とを、150℃未満の温度で混合すること、並びに基板上にケイ素含有膜を形成するのに十分な堆積条件下で、基板及び任意選択的な追加的な反応物が入っている反応器の中に、ハロジシランを還元することでトリハロジシランとハロゲン化アルキルアルミニウムとを含有する反応生成物混合物を形成すること、を含む方法。
【0036】
トリハロジシラン及びトリハロジシランの製造方法、水素化アルキルアルミニウム、少なくとも4個のハロゲン原子を含むハロジシラン、溶媒、トリハロジシラン、及びハロゲン化アルキルアルミニウムは上述した通りである。水素化アルキルアルミニウムは、上述したハロジシラン-溶媒混合物と混合する前に、上述した第2の溶媒と混合されてもよい。
【0037】
反応器は、基板上にケイ素含有膜を堆積させるための当該技術分野で公知の任意の反応器である。当業者であれば、ケイ素含有膜を堆積するために使用する反応器を知っているであろう。反応器の例としては、限定するものではないが、原子層堆積(ALD)、プラズマ強化原子層堆積(PEALD)、サイクリック化学気相成長(サイクリックCVD)、化学気相成長(CVD)、及びプラズマ強化化学気相成長(PECVD)に使用される反応器が挙げられる。
【0038】
ケイ素含有膜は、限定するものではないが、原子層堆積、プラズマ強化原子層堆積、サイクリック化学気相成長、化学気相成長、及びプラズマ強化化学気相成長などのケイ素含有膜を堆積するための公知の方法によって堆積することができる。
【0039】
ケイ素含有膜を堆積するための反応器に追加の反応物が入れられてもよく、それらとしては、限定するものではないが、酸素及び酸素含有化合物(オゾンなど)、窒素及び窒素含有化合物(アンモニアなど)、並びにプラズマが挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施において十分に機能するために発明者によって発見された技術を表し、従って、その実施のための好ましい態様を構成すると考えられ得ることが当業者には理解される。しかしながら、当業者であれば、本開示に照らして、開示された特定の実施形態に多くの変更を加えることができ、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく同様又は類似の結果を依然として得ることを理解する。別段の記載がない限り、全てのパーセンテージは重量%である。室温は25℃である。
【0041】
【0042】
GC-TCD試験方法/条件
ガスクロマトグラフィー-熱伝導率検出器(GC-TCD)の装置及び条件:長さ30メートル、内径0.32mmであり、キャピラリーカラムの内表面にコーティングの形態で厚さ0.25μmの固定相を含み、固定相がフェニルメチルシロキサンから構成されるキャピラリーカラム。キャリアガスは、毎分105mmの流量で使用されるヘリウムガスであった。GC装置は、Agilent 7890A型ガスクロマトグラフであった。注入口温度は200℃であった。GC実験温度プロファイルは、50℃で2分間浸漬(保持)し、15℃/分の速度で250℃まで昇温し、その後250℃で10分間浸漬(保持)することから構成された。
【0043】
実施例1:
グローブボックス内で、ヘキサクロロジシラン(HCDS、10.06g)及び1,3-ジイソプロピルベンゼン(DiPB、10.00g)を、添加漏斗と、ガラス製サーモウェルと、蒸留ブリッジ及び100mLのジャケット付き丸底回収フラスコに取り付けられた蒸留カラムと、を備えた250mLの三口丸底フラスコに入れた。添加漏斗に、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH、17.47g、3.3当量)とDiPB(17.44g)との混合物を入れた。ポットを80℃に加熱し、電源を切った。DIBAH/DiPBの添加速度を制御して、ポット温度を75~80℃に維持し、添加を10分後に完了した。添加後、ポットを80℃で更に10分間加熱し、続いて冷却されている回収フラスコの中に完全な真空下で80℃でストリップ蒸留した。単離した材料は1.77gであり、サンプルをGCで分析した。ストリッピングした材料には、50.0%(w/w)の1,1,1-トリクロロジシラン(3CDS)、合計35.9%の全ての他の混合ジシラン、及び2.0%のイソブチルジシラン(1,1,1-トリクロロジシランに対して4.0%)が含まれていた。
【0044】
実施例2
グローブボックス内で、ヘキサクロロジシラン(HCDS、10.02g)を、添加漏斗と、ガラス製サーモウェルと、蒸留ブリッジ及び100mLのジャケット式丸底回収フラスコに取り付けられた蒸留カラムと、を備えた250mLの三口ハーフジャケット式丸底フラスコに入れた。添加漏斗に水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH、17.45g、3.3当量)を入れた。ポットを3.2℃に冷却し、55分間かけてDIBAHをHCDSに滴下したところ、5.5℃の最大ポット温度になった。添加後、ポットを15分間撹拌し、10℃ずつ室温(25℃)まで温めた。室温になった後、混合物を250mLの三口丸底フラスコに移し、80℃に加熱し、-26インチHgの静的真空下、80℃のポット温度で、冷却されている回収フラスコの中へストリップ蒸留した。単離した材料は3.64gであり、サンプルをGCで分析した。ストリッピングした材料には、74.9%の1,1,1-トリクロロジシラン、合計22.4%の全ての他の混合ジシラン、及び0.8%のイソブチルジシラン(1,1,1-トリクロロジシランに対して1.1%)が含まれていた。
【0045】
実施例3
グローブボックス内で、ヘキサクロロジシラン(HCDS、9.23g)及び1,3-ジイソプロピルベンゼン(DiPB、9.24g)を、添加漏斗と、ガラス製サーモウェルと、蒸留ブリッジ及び100mLのジャケット式丸底回収フラスコに取り付けられた蒸留カラムと、を備えた250mLの三口ハーフジャケット式丸底フラスコに入れた。添加漏斗に、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH、16.12g、3.3当量)及びDiPB(16.12g)を入れた。ポットを-9.3℃に冷却し、55分間かけてDIBAH/DiPB混合物をHCDSに滴下したところ、-6.6℃の最大ポット温度になった。添加後、ポットを20分間撹拌し、その後10℃ずつ室温まで温めた。室温になった後、混合物を250mLの三口丸底フラスコに移し、80℃に加熱し、冷却されている回収フラスコの中に完全な真空下で80℃のポット温度でストリップ蒸留した。単離した材料は2.16gであり、サンプルをGCで分析した。ストリッピングした材料には、90.5%の1,1,1-トリクロロジシラン、合計8.4%の全ての他の混合ジシラン、及び0.07%のイソブチルジシラン(1,1,1-トリクロロジシランに対して0.08%)が含まれていた。
【0046】
実施例4
グローブボックス内で、ヘキサクロロジシラン(HCDS、10.01g)及び1,3-ジイソプロピルベンゼン(DiPB、10.00g)を、添加漏斗と、ガラス製サーモウェルと、蒸留ブリッジ及び100mLのジャケット式丸底回収フラスコに取り付けられた蒸留カラムと、を備えた250mLの三口ハーフジャケット式丸底フラスコ入れた。添加漏斗に、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH、17.45g、3.3当量)を入れた。ポットを-9.3℃に冷却し、55分間かけてDIBAHをHCDSに滴下したところ、-6.4℃の最大ポット温度になった。添加後、ポットを25分間撹拌し、その後10℃ずつ室温まで温めた。室温になった後、混合物を250mLの三口丸底フラスコに移し、80℃に加熱し、完全な真空下で80℃のポット温度でストリップ蒸留した。単離した材料は3.72gであり、サンプルをGCで分析した。ストリッピングした材料には、90.7%の1,1,1-トリクロロジシラン、合計8.1%の全ての他の混合ジシラン、及び0.05%のイソブチルジシラン(1,1,1-トリクロロジシランに対して0.06%)が含まれていた。
【0047】
実施例5
グローブボックス内で、ヘキサクロロジシラン(HCDS、9.99g)及び1,3-ジイソプロピルベンゼン(DiPB、10.00g)を、添加漏斗と、ガラス製サーモウェルと、蒸留ブリッジ及び100mLのジャケット式丸底回収フラスコに取り付けられた蒸留カラムと、を備えた250mLの三口ハーフジャケット式丸底フラスコに入れた。添加漏斗に、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH、15.87g、3.0当量)を入れた。ポットを-1.6℃に冷却し、50分間かけてDIBAHをHCDSに滴下したところ、1.8℃の最大ポット温度になった。添加後、ポットを20分間撹拌し、その後10℃ずつ室温まで温めた。室温になった後、混合物を250mLの三口丸底フラスコに移し、80℃に加熱し、-26インチHgの静的真空下、80℃のポット温度でストリップ蒸留した。単離した材料は4.03gであり、サンプルをGCで分析した。ストリッピングした材料には、86.2%の1,1,1-トリクロロジシラン、合計13.0%の全ての他の混合ジシラン、及び0.05%のイソブチルジシラン(1,1,1-トリクロロジシランに対して0.06%)が含まれていた。
【0048】
【0049】
実施例6
12Lの反応器の中に、1,440gのHCDS(純度99%)及び1,680gのDIPBを入れ、次いで反応器と内容物を撹拌し、-8℃まで一晩冷却した。冷却することで反応器の内容物を-2℃±1℃に維持しつつ、250rpmで撹拌しながらDIBAHを約135g/hrで反応器の中にポンプで入れた。添加後、14torrまで下げた真空下で、5トレイのカラム及びコンデンサーを通してストリッピングしながら透明な反応混合物を90℃に加熱した。ストリッピングされた粗生成物(421g)を冷却されている受器に集めたところ、これはGC-TCDによれば82%の3CDSを含んでいた。3CDSの収率は、HCDSを基準として39%であると推定された。この粗生成物から、周囲圧力の蒸留装置内の20トレイのカラムを通して99.5%の3CDSを含む生成物が蒸留された。
【0050】
この結果は、溶媒を含ませ、低温で混合及び還元を行うことで改善された結果を示している。