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特許7132435積層構造体、それを含む軟性銅箔積層フィルム、及び該積層構造体の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】積層構造体、それを含む軟性銅箔積層フィルム、及び該積層構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/16 20060101AFI20220830BHJP
   C23C 18/32 20060101ALI20220830BHJP
   C23C 18/52 20060101ALI20220830BHJP
   C23C 18/38 20060101ALI20220830BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220830BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C23C18/16 A
C23C18/32
C23C18/52 B
C23C18/38
B32B15/08 P
B32B15/20
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021521932
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 KR2020005020
(87)【国際公開番号】W WO2020226292
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-01-06
(31)【優先権主張番号】10-2019-0053902
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】504092127
【氏名又は名称】トーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】300,3gongdan 2-ro,Gumi-si,Gyeongsangbuk-do 39389 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ドク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ホ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウ・ドゥク・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・グク・イ
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-260274(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0090067(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0125176(KR,A)
【文献】特開2004-031370(JP,A)
【文献】特開2002-332592(JP,A)
【文献】特開2009-173999(JP,A)
【文献】特開2004-315945(JP,A)
【文献】特開昭55-046530(JP,A)
【文献】特開平05-205926(JP,A)
【文献】特開2002-050851(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0270113(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0114048(KR,A)
【文献】特開2011-014801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00-20/08
C23C 28/00-28/04
B32B 15/00-15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非伝導性高分子基材と、
前記非伝導性高分子基材の少なくとも一面に配置されたニッケル含有メッキ層と、
前記ニッケル含有メッキ層上に配置された第1銅メッキ層と、を含み、
前記第1銅メッキ層に対し、X線回折(XRD)分析による[111]方位面が示され、
前記非伝導性高分子基材と前記ニッケル含有メッキ層との間において、1cm単位面積当たり剥離発生率が1%以下であり、
前記剥離発生率は、顕微鏡を利用して評価され、
前記第1銅メッキ層に対し、X線回折(XRD)分析による[200]方位面、[220]方位面及び[311]方位面のうち、1または2つの方位面が同時に追加して示され、
前記第1銅メッキ層に対し、下記数式1によるX線回折(XRD)分析による[111]方位面に対する[200]方位面の結晶配向指数が、11%ないし25%未満を満足する、積層構造体
【数1】
【請求項2】
前記第1銅メッキ層に対し、X線回折(XRD)分析による[111]方位面、[200]方位面、[220]方位面及び[311]方位面が同時に示されない、請求項に記載の積層構造体。
【請求項3】
前記第1銅メッキ層に対し、下記数式2によるX線回折(XRD)分析による[111]方位面に対する[220]方位面の結晶配向指数が、0ないし15%未満を満足する、請求項に記載の積層構造体。
【数2】
【請求項4】
前記第1銅メッキ層に対し、下記数式3によるX線回折(XRD)分析による[111]方位面に対する[311]方位面の結晶配向指数が、0ないし14%未満を満足する、請求項に記載の積層構造体。
【数3】
【請求項5】
前記非伝導性高分子基材が、フェノール樹脂、フェノールアルデヒド樹脂、アリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂及びポリイミド樹脂から選択された1種以上を含む、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項6】
前記非伝導性高分子基材の厚みが7μmないし50μmである、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項7】
前記ニッケル含有メッキ層は、無電解メッキ層である、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項8】
前記ニッケル含有メッキ層が、ニッケルまたはニッケル合金を含む、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項9】
前記ニッケル含有メッキ層の厚みが、40nmないし250nmである、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項10】
前記第1銅メッキ層は、無電解メッキ層である、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項11】
前記第1銅メッキ層の厚みが、40nmないし200nmである、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項12】
前記第1銅メッキ層上に、第2銅メッキ層をさらに含む、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項13】
前記第2銅メッキ層は、電解メッキ層である、請求項12に記載の積層構造体。
【請求項14】
前記第2銅メッキ層の厚みが、0.5μmないし5.0μmである、請求項12に記載の積層構造体。
【請求項15】
請求項1ないし14のうちいずれか1項に記載の積層構造体を含む、軟性銅箔積層フィルム。
【請求項16】
非伝導性高分子基材の少なくとも一面に、ニッケル含有メッキ層を形成する段階と、
前記ニッケル含有メッキ層上に、第1銅メッキ層を形成する段階と、
前記第1銅メッキ層に対して熱処理する段階と、
加熱処理した前記第1銅メッキ層上に、第2銅メッキ層を形成し、請求項1による積層構造体を製造する段階と、を含む積層構造体の製造方法。
【請求項17】
前記ニッケル含有メッキ層及び第1銅メッキ層は、それぞれ無電解メッキ法によって形成される、請求項16に記載の積層構造体の製造方法。
【請求項18】
前記熱処理する段階は、100℃ないし180℃の温度で、1分ないし30分間熱処理を行う工程を遂行する、請求項16に記載の積層構造体の製造方法。
【請求項19】
前記第2銅メッキ層は、電解メッキ法によって形成される、請求項16に記載の積層構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層構造体、それを含む軟性銅箔積層フィルム、及び前記積層構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、モバイル市場の成長加速化、及びLCD TVモニタの需要増大により、電子製品及び半導体集積回路のような分野において、薄膜化、小型化、軽量化、耐久性及び高画質の特性を有する素材の開発が促進されている。LCD用ドライバ集積回路(IC)に使用される軟性銅箔積層フィルム(FCCL)分野においても、微細パターン化、薄膜化及び耐久性がだんだんと要求されている。
【0003】
軟性銅箔積層フィルム(FCCL)は、その表面に回路パターンが形成され、前記回路パターン上に、半導体チップのような電子素子が実装される構造によってなる。最近、前記回路パターンのピッチ(pitch)が23μm以下の製品が増加しており、ピッチと線幅とが小さくなることにより、寸法変化の不安定性が問題になっている。
【0004】
そのような問題を解決するために、微細回路パターン形成技術も発展している。しかし、該微細回路パターン化のために、基材と金属層との間に高い接着力が維持されなければならず、それらの間における剥離問題が解決されなければならないが、新規の積層構造体、それを含む軟性銅箔積層フィルム、及び前記積層構造体の製造方法への要求が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ニッケル含有メッキ層内の有機物、添加剤、凝集ガスのような不純物が除去されることにより、非伝導性高分子基材と前記ニッケル含有メッキ層との密着力が向上され、それらの間において、1cm単位面積当たり剥離発生率が低下されうる積層構造体を提供することである。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、また、前記積層構造体を含む軟性銅箔積層フィルムを提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、また、前記積層構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一側面により、
非伝導性高分子基材と、
前記非伝導性高分子基材の少なくとも一面に配置されたニッケル含有メッキ層と、
前記ニッケル含有メッキ層上に配置された第1銅メッキ層と、を含み、
前記第1銅メッキ層に対し、X線回折(XRD:X-ray diffraction)分析による[111]方位面が示され、
前記非伝導性高分子基材と前記ニッケル含有メッキ層との間において、1cm単位面積当たり剥離発生率が1%以下である積層構造体が提供される。
【0009】
前記第1銅メッキ層に対し、X線回折(XRD)分析による[200]方位面、[220]方位面及び[311]方位面のうち、1または2つの方位面は、同時に追加して示される。
【0010】
前記第1銅メッキ層に対し、X線回折(XRD)分析による[111]方位面、[200]方位面、[220]方位面及び[311]方位面は、同時に示されないのである。
【0011】
前記第1銅メッキ層に対し、下記数式1によるX線回折(XRD)分析による[111]方位面に対する[200]方位面の結晶配向指数は、0ないし25%未満を満足することができる。
【0012】
【数1】
【0013】
前記第1銅メッキ層に対し、下記数式2によるX線回折(XRD)分析による[111]方位面に対する[220]方位面の結晶配向指数は、0ないし15%未満を満足することができる。
【0014】
【数2】
【0015】
前記第1銅メッキ層に対し、下記数式3によるX線回折(XRD)分析による[111]方位面に対する[311]方位面の結晶配向指数は、0ないし14%未満を満足することができる。
【0016】
【数3】
【0017】
前記非伝導性高分子基材は、フェノール樹脂、フェノールアルデヒド樹脂、アリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂及びポリイミド樹脂から選択された1種以上を含んでもよい。
【0018】
前記非伝導性高分子基材の厚みは、7μmないし50μmでもある。
【0019】
前記ニッケル含有メッキ層は、無電解メッキ層でもある。
【0020】
前記ニッケル含有メッキ層は、ニッケルまたはニッケル合金を含んでもよい。
【0021】
前記ニッケル含有メッキ層の厚みは、40nmないし250nmでもある。
【0022】
前記第1銅メッキ層は、無電解メッキ層でもある。
【0023】
前記第1銅メッキ層の厚みは、40nmないし200nmでもある。
【0024】
前記第1銅メッキ層上に第2銅メッキ層をさらに含んでもよい。
【0025】
前記第2銅メッキ層は、電解メッキ層でもある。
【0026】
前記第2銅メッキ層の厚みは、0.5μmないし5.0μmでもある。
【0027】
他の側面により、
前述の積層構造体を含む軟性銅箔積層フィルムが提供される。
【0028】
さらに他の側面により、
非伝導性高分子基材の少なくとも一面に、ニッケル含有メッキ層を形成する段階と、
前記ニッケル含有メッキ層上に、第1銅メッキ層を形成する段階と、
前記第1銅メッキ層に対して熱処理する段階と、
加熱処理した前記第1銅メッキ層上に、第2銅メッキ層を形成し、前述の積層構造体を製造する段階と、を含む積層構造体の製造方法が提供される。
【0029】
前記ニッケル含有メッキ層及び第1銅メッキ層は、それぞれ無電解メッキ法によっても形成される。
【0030】
前記熱処理する段階は、100℃ないし180℃の温度で、1分ないし30分間熱処理を行う工程を含んでもよい。
【0031】
前記第2銅メッキ層は、電解メッキ法によっても形成される。
【発明の効果】
【0032】
一側面による積層構造体は、第1銅メッキ層に対し、X線回折(XRD)分析による[111]方位面が示され、前記非伝導性高分子基材と前記ニッケル含有メッキ層との間において、1cm単位面積当たり剥離発生率が1%以下でもある。
【0033】
他の一側面による積層構造体の製造方法は、第1銅メッキ層に対して熱処理する段階を含み、ニッケル含有メッキ層内の有機物、添加剤、凝集ガスなどの不純物が除去されうる。それにより、前記非伝導性高分子基材と前記ニッケル含有メッキ層との間において、1cm単位面積当たり剥離発生率が低下されうる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】一具現例による積層構造体の断面模式図である。
図2】(a)は、第1銅メッキ層の結晶構造を示す模式図であり、(b)は、第1銅メッキ層の結晶構造において、X線回折(XRD)分析による[111]方位面を示す模式図である。
図3】(a)は、第1銅メッキ層に係わる結晶構造において、X線回折(XRD)分析による[111]方位面を示し、(b)は、(a)の[111]方位面の各コーナーを構成する銅粒子(灰色)の成長を示し、(c)は、図3(b)の成長された銅粒子(灰色)間に発生した引っ張り応力及び弾性エネルギーが増大することを示し、(d)は、(c)の成長された銅粒子(灰色)間に発生した引っ張り応力及び弾性エネルギーの内部ストレスを解消するために、密度が小さくて安定した状態であるX線回折(XRD)分析による[200]方位面に成長する過程を示す模式図である。
図4】実施例1~6によって製造された軟性銅箔積層フィルムの第1銅メッキ層に係わるXRD(X線回折)を分析した結果である。
図5】実施例7~10によって製造された軟性銅箔積層フィルムの第1銅メッキ層に係わるXRDを分析した結果である。
図6】比較例1によって製造された軟性銅箔積層フィルムの第1銅メッキ層に係わるXRDを分析した結果である。
図7A】実施例1によって製造された軟性銅箔積層フィルムの第1銅メッキ層に対し、対流熱による熱風乾燥で、約165℃の温度で、約3分間熱処理した後、ポリイミドフィルムとニッケルメッキ層との間において、1cm単位面積当たり剥離発生率を評価するための写真である。
図7B】実施例1によって製造された軟性銅箔積層フィルムの第1銅メッキ層に対し、対流熱による熱風乾燥で、約165℃の温度で、約3分間熱処理した後、ポリイミドフィルムとニッケルメッキ層との間において、1cm単位面積当たり剥離発生率を評価するための光学顕微鏡イメージである。
図7C】比較例1によって製造された軟性銅箔積層フィルムの第1銅メッキ層に対して熱処理を行わず、ポリイミドフィルムとニッケルメッキ層との間において、1cm単位面積当たり剥離発生率を評価するための写真である。
図7D】比較例1によって製造された軟性銅箔積層フィルムの第1銅メッキ層に対して熱処理を行わず、ポリイミドフィルムとニッケルメッキ層との間において、1cm単位面積当たり剥離発生率を評価するための光学顕微鏡イメージである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施例と図面とを参照し、積層構造体、それを含む軟性銅箔積層フィルム、及び前記積層構造体の製造方法について詳細に説明する。それら実施例は、ただ本発明について、さらに具体的に説明するために、例示的に提示したものであるのみ、本発明の範囲は、それら実施例によって制限されるものではないということは、当業界で当業者において、自明であろう。
【0036】
取り立てて定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的な用語は、本発明が属する技術分野の当業者により、一般的に理解されるところと同一意味を有する。相衝する場合、定義を含む本明細書が優先される。
【0037】
本明細書で説明されるところと類似しているか、あるいは同等な方法及び材料が、本発明の実施または試験にも使用されるが、適する方法及び材料が本明細書に記載される。
【0038】
本明細書において、「上(または、上部)」という用語は、他部分の「直接上(または、直接上部)」に位置している場合だけではなく、その中間に他の部分が介在されている場合も含む。反対に、「直接上(または、直接上部)」という用語は、中間に他の部分が介在されていないことを意味する。
【0039】
一般的に、銅箔積層フィルム(CCL)分野においては、金属層の特性変化により、粒子が空隙及び内部応力が発生しうる。また、後メッキ工程を経る場合、金属層内部の有機物、添加剤、凝集ガスのような不純物が噴出することにより、銅箔積層フィルム表面に品質異常上が発生しうる。さらには、前記銅箔積層フィルムに対するエッチング工程時及び回路パターン形成時、基材と金属層との接着力不足により、パターン剥離現象が発生しうる。
【0040】
本発明の発明者らは、前記問題点を改善するために、次のような積層構造体を提案する。
【0041】
一具現例による積層構造体は、非伝導性高分子基材と、前記非伝導性高分子基材の少なくとも一面に配置されたニッケル含有メッキ層と、前記ニッケル含有メッキ層上に配置された第1銅メッキ層と、を含み、前記第1銅メッキ層に対し、X線回折(XRD:X-ray diffraction)分析による[111]方位面が示され、前記非伝導性高分子基材と前記ニッケル含有メッキ層との間において、1cm単位面積当たり剥離発生率が1%以下でもある。
【0042】
一具現例による積層構造体は、非伝導性高分子基材と、前記非伝導性高分子基材の一面または両面に配置されたニッケル含有メッキ層と、前記ニッケル含有メッキ層上に配置された第1銅メッキ層と、を含んでもよい。
【0043】
図1は、一具現例による積層構造体の断面模式図である。
【0044】
図1を参照すれば、一具現例による積層構造体は、例えば、非伝導性高分子基材1の両面に配置されたニッケル含有メッキ層2,2’と、前記ニッケル含有メッキ層2,2’上にそれぞれ配置された第1銅メッキ層3,3’と、を含み、非伝導性高分子基材1を基準に、上方向に第1面5と、下方向に第2面6と、を有する積層構造体10でもある。
【0045】
図2(a)は、第1銅メッキ層の結晶構造を示す模式図である。図2(b)は、第1銅メッキ層の結晶構造において、[111]方位面を示す模式図である。
【0046】
図2(a)を参照すれば、第1銅メッキ層3,3’の結晶構造は、面心立方構造を示している。図2(b)を参照すれば、第1銅メッキ層3,3’の結晶構造において、最も安定した方位面である[111]方位面を示している。前記[111]方位面は、X線回折(XRD)分析によって確認することができる。
【0047】
前記非伝導性高分子基材1と前記ニッケル含有メッキ層2,2’との間において、1cm単位面積当たり剥離発生率は1%以下でもある。そのような剥離発生率を有する積層構造体10は、前記積層構造体10上に微細パターンを形成するとしても、前記非伝導性高分子基材1と前記ニッケル含有メッキ層2,2’との間に優秀な接着力が維持されうる。
【0048】
前記第1銅メッキ層3,3’に対するX線回折(XRD)分析による[200]方位面、[220]方位面及び[311]方位面のうち、1または2つの方位面は、同時に追加して示される。
【0049】
図3(a)は、第1銅メッキ層に係わる結晶構造において、X線回折(XRD)分析による[111]方位面を示し、図3(b)は、図3(a)の[111]方位面の各コーナーを構成する銅粒子(灰色)の成長を示し、図3(c)は、図3(b)の成長された銅粒子(灰色)間に発生した引っ張り応力及び弾性エネルギーが増大することを示し、図3(d)は、図3(c)の成長された銅粒子(灰色)間に発生した引っ張り応力及び弾性エネルギーの内部ストレスを解消するために、密度が小さくて安定した状態であるX線回折(XRD)分析による[200]方位面に成長する過程を示す模式図である。
【0050】
図3(a)を参照すれば、第1銅メッキ層3,3’は、銅粒子(灰色)が各コーナーの頂点に配置されている面心立方構造をなしており、粒界(grain boundary)を減らすために、主成長面であり、X線回折(XRD)分析による[111]方位面を示している。図3(b)を参照すれば、第1銅メッキ層3,3’は、図3(a)の前記[111]方位面の各コーナーを構成する銅粒子(灰色)が成長し、粒界面積が小さくなりながら、それの間に引っ張り応力が発生することを示している。図3(c)を参照すれば、第1銅メッキ層3,3’は、図3(b)の成長された銅粒子(灰色)間において引っ張り応力が増大し、それにより、弾性エネルギーが増大することを示している。図3(d)を参照すれば、第1銅メッキ層3,3’は、図3(c)の成長された銅粒子(灰色)間に発生した引っ張り応力及び弾性エネルギーの内部ストレスを解消するために、密度が小さくて安定した状態であるX線回折(XRD)分析による[200]方位面に成長する過程を示している。
【0051】
前記第1銅メッキ層3,3’につき、X線回折(XRD)分析による[111]方位面、[200]方位面、[220]方位面及び[311]方位面は、同時に示されないのである。そのような第1銅メッキ層3,3’は、熱的損傷が遮断され、均一なメッキ層が形成されうる。
【0052】
前記第1銅メッキ層3,3’につき、下記数式1によるX線回折(XRD)分析による[111]方位面に対する[200]方位面の結晶配向指数は、0ないし25%未満を満足することができる。
【0053】
【数4】
【0054】
例えば、第1銅メッキ層3,3’につき、前記数式1によるX線回折(XRD)分析による[111]方位面に対する[200]方位面の結晶配向指数は、0.01ないし25%未満を満足することができる。
【0055】
前記第1銅メッキ層3,3’につき、下記数式2によるX線回折(XRD)分析による[111]方位面に対する[220]方位面の結晶配向指数は、0ないし15%未満を満足することができる。
【0056】
【数5】
【0057】
例えば、前記第1銅メッキ層3,3’につき、下記数式2によるX線回折(XRD)分析による[111]方位面に対する[220]方位面の結晶配向指数は、0.01ないし15%未満を満足することができる。
【0058】
前記第1銅メッキ層3,3’につき、下記数式3によるX線回折(XRD)分析による[111]方位面に対する[311]方位面の結晶配向指数は、0ないし14%未満を満足することができる。
【0059】
【数6】
【0060】
例えば、前記第1銅メッキ層3,3’につき、下記数式3によるX線回折(XRD)分析による[111]方位面に対する[311]方位面の結晶配向指数は、0.01ないし14%未満を満足することができる。
【0061】
前記第1銅メッキ層3,3’につき、前記数式1、前記数式2または/及び前記数式3によるX線回折(XRD)分析による[111]方位面に対する、[200]方位面、[220]方位面または/及び[311]方位面の結晶配向指数を満足するならば、前記非伝導性高分子基材と前記ニッケル含有メッキ層との間において、1cm単位面積当たり剥離発生率が非常に低下されうる。
【0062】
前記非伝導性高分子基材1は、フェノール樹脂、フェノールアルデヒド樹脂、アリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂及びポリイミド樹脂から選択された1種以上を含んでもよい。例えば、前記非伝導性高分子基材1は、ポリエステル樹脂及びポリイミド樹脂から選択された1種以上を含んでもよい。例えば、前記非伝導性高分子基材1は、ポリイミド樹脂でもある。
【0063】
前記非伝導性高分子基材1の厚みは、7μmないし50μmでもある。例えば、前記非伝導性高分子基材1の厚みは、7μmないし40μmでもある。例えば、前記非伝導性高分子基材1の厚みは、7μmないし30μmでもある。例えば、前記非伝導性高分子基材1の厚みは、7μmないし25μmでもある。前記非伝導性高分子基材1の厚みが7μm未満であるならば、積層フィルムの製造時、生産性が低下してしまい、50μmを超えれば、薄膜化がなされないのである。
【0064】
また、前記非伝導性高分子基材1は、前記非伝導性高分子基材1上に、プラズマ処理などの表面処理を行うことができる。前記表面処理は、前記非伝導性高分子基材1表面の化学的活性と粗度とを向上させ、金属層との優秀な接着力を容易に確保することができる。
【0065】
前記ニッケル含有メッキ層2,2’は、無電解メッキ層でもある。前記ニッケル含有メッキ層2,2’に対する一般的なスパッタリング方式のプラズマ表面処理は、前記非伝導性高分子基材との接着力を確保することができるが、25μm以下厚の薄膜非伝導性高分子基材1の加工時、熱的損傷が発生しうる。そのような熱的損傷を克服するために、前記ニッケル含有メッキ層2,2’は、水溶液状態で金属を蒸着させる無電解メッキ法を利用した無電解ニッケル含有メッキ層を形成することにより、前記非伝導性高分子基材1との接着力を向上させ、熱的損傷を防止することができる。
【0066】
前記ニッケル含有メッキ層2,2’は、ニッケルまたはニッケル合金を含んでもよい。前記ニッケル合金は、Niと、Cr、Mo及びNbから選択された1種以上を含んでもよい。
【0067】
前記ニッケル含有メッキ層2,2’の厚みは、40nmないし250nmでもある。例えば、前記ニッケル含有メッキ層2,2’の厚みは、50nmないし250nmでもある。例えば、前記ニッケル含有メッキ層2,2’の厚みは、60nmないし250nmでもある。例えば、前記ニッケル含有メッキ層2,2’の厚みは、70nmないし250nmでもある。例えば、前記ニッケル含有メッキ層2,2’の厚みは、80nmないし250nmでもある。例えば、前記ニッケル含有メッキ層2,2’の厚みは、90nmないし250nmでもある。例えば、前記ニッケル含有メッキ層2,2’の厚みは、100nmないし250nmでもある。前記ニッケル含有メッキ層2,2’が前記範囲の厚みを有する場合、有機物、添加剤、凝集ガスなどの不純物が低減されることにより、ニッケル含有メッキ層2,2’特性が向上しうる。
【0068】
前記第1銅メッキ層3,3’は、無電解メッキ層でもある。前記無電解メッキ層の形成時、使用される水溶液は、当該技術分野で使用されうる全ての無電解メッキ層形成用水溶液が使用されうる。
【0069】
前記第1銅メッキ層3,3’の厚みは、40nmないし200nmでもある。例えば、前記第1銅メッキ層3,3’の厚みは、50nmないし250nmでもある。例えば、前記第1銅メッキ層3,3’の厚みは、60nmないし250nmでもある。例えば、前記第1銅メッキ層3,3’の厚みは、70nmないし250nmでもある。例えば、前記第1銅メッキ層3,3’の厚みは、80nmないし250nmでもある。例えば、前記第1銅メッキ層3,3’の厚みは、90nmないし250nmでもある。例えば、前記第1銅メッキ層3,3’の厚みは、100nmないし250nmでもある。
【0070】
図1から分かるように、前記第1銅メッキ層3,3’上に、第2銅メッキ層4,4’をさらに含んでもよい。
【0071】
前記第2銅メッキ層4,4’は、電解メッキ層でもある。前記電解メッキ層の形成方法は、当該技術分野で使用可能な全ての方法を使用することができる。例えば、硫酸銅及び硫酸を基本物質にし、電解メッキを実施し、第1銅メッキ層3,3’上に電解メッキ層を形成することができる。
【0072】
前記第2銅メッキ層4,4’の厚みは、0.5μmないし5、0μmでもある。例えば、前記第2銅メッキ層4,4’の厚みは、0.5μmないし4.5μmでもある。例えば、前記第2銅メッキ層4,4’の厚みは、0.5μmないし4.0μmでもある。例えば、前記第2銅メッキ層4,4’の厚みは、0.5μmないし3.5μmでもある。例えば、前記第2銅メッキ層4,4’の厚みは、0.5μmないし3.0μmでもある。例えば、前記第2銅メッキ層4,4’の厚みは、0.5μmないし2.5μmでもある。例えば、前記第2銅メッキ層4,4’の厚みは、0.5μmないし2.0μmでもある。
【0073】
他の一具現例による軟性銅箔積層フィルム10は、前述の積層構造体を含んでもよい。前記軟性銅箔積層フィルム10は、ニッケル含有メッキ層内の有機物、添加剤、凝集ガスのような不純物が除去されうる。それにより、前記非伝導性高分子基材1と前記ニッケル含有メッキ層2,2’との間において、1cm単位面積当たり剥離発生率が低下しうる。
【0074】
さらに他の一具現例による積層構造体の製造方法は、非伝導性高分子基材の少なくとも一面に、ニッケル含有メッキ層を形成する段階と、前記ニッケル含有メッキ層上に、第1銅メッキ層を形成する段階と、前記第1銅メッキ層に対して熱処理する段階と、加熱処理した前記第1銅メッキ層上に、第2銅メッキ層を形成し、前述の積層構造体を製造する段階と、を含んでもよい。
【0075】
前記積層構造体の製造方法は、第1銅メッキ層に対して熱処理する段階を含み、ニッケル含有メッキ層内の有機物、添加剤、凝集ガスのような不純物が除去されうる。それにより、前記非伝導性高分子基材と前記ニッケル含有メッキ層との間において、1cm単位面積当たり剥離発生率が低下しうる。
【0076】
前記ニッケル含有メッキ層及び第1銅メッキ層は、それぞれ無電解メッキ法によっても形成される。前記無電解メッキ層の形成時、使用される水溶液は、当該技術分野で使用されうる全ての無電解メッキ層形成用水溶液が使用されうる。例えば、前記ニッケル含有メッキ層に使用される無電解ニッケル含有メッキ層用水溶液は、水溶性ニッケル塩、還元剤及び錯化剤(complex agent)を含んでもよい。
【0077】
前記熱処理する段階は、100℃ないし180℃の温度で、1分ないし30分間熱処理を行う工程を含んでもよい。前記熱処理を行う工程は、対流熱による熱風乾燥方式、IRヒータ熱による放射熱方式、またはそれら混合方式を利用することができる。前記熱処理する段階の温度及び時間の範囲内において、前記ニッケル含有メッキ層内の有機物、添加剤、凝集ガスのような不純物が完全に除去され、前記非伝導性高分子基材と前記ニッケル含有メッキ層との間に接着力不足による励起現象を防止することができ、それらの間において、1cm単位面積当たり剥離発生率が低下しうる。
【0078】
前記第2銅メッキ層は、電解メッキ法によっても形成される。前記電解メッキ法に使用されるメッキ液は、銅が15ないし40g/L、例えば、15ないし38g/L、例えば17ないし36g/L濃度で含まれたメッキ液を使用することができる。前記メッキ液の温度は、22ないし37℃、例えば、25ないし35℃、例えば、27ないし34℃にも維持される。前記範囲内の温度を維持するならば、前記第2銅メッキ層形成が容易であり、生産性にすぐれる。また、前記メッキ液に、生産性及び表面均一性のために、光沢剤、レベラ、補正剤または緩和剤のような添加剤が添加されうる。
【0079】
以下、実施例と比較例とを介し、本発明の構成、及びそれによる効果について、さらに詳細に説明する。しかし、本実施例は、本発明について、さらに具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではないということは、自明な事実である。
【実施例
【0080】
実施例1:軟性銅箔積層フィルム
【0081】
非伝導性高分子基材として、25μm厚のポリイミドフィルム(Kapton 100ENC、TDC製)を準備した。前記ポリイミドフィルムの両面に、下記無電解ニッケルメッキ液を利用し、垂直方向または水平方向に進められる無電解ニッケルメッキ法により、約100nm厚のニッケルメッキ層をそれぞれ形成した。前記ニッケルメッキ層上に、下記無電解銅メッキ液を利用し、無電解銅メッキ法により、約100nm厚の第1銅メッキ層をそれぞれ形成した。前記第1銅メッキ層それぞれに対し、対流熱による熱風乾燥で、約165℃の温度で、約3分間熱処理を行った。前記熱処理が行われた第1銅メッキ層上に、電解メッキ法を利用し、約2μm厚の第2銅メッキ層をそれぞれ形成することにより、図1から分かるように、ポリイミドフィルムを基準にするとき、上方向に第1面と、下方向に第2面とによって構成された軟性銅箔積層フィルムを作製した。
【0082】
前記無電解ニッケルメッキ法及び無電解銅メッキ法に使用された無電解ニッケルメッキ液及び無電解銅メッキ液と、電解銅メッキ法に使用された銅メッキ液との組成及び条件は、それぞれ次の通りである。
【0083】
(無電解ニッケルメッキ液)
【0084】
・メッキ液:ニッケル塩水和物NiSO・6HOのニッケルイオンの濃度が5g/Lになるようにする
・バス温度:約60℃
・ニッケル析出時間:約1分
・pH濃度:約7.3
(無電解銅メッキ液)
・メッキ液:錯化剤として、硫酸銅水和物CuSO・6HO 16mol/L、硫酸3.25mL/L
・バス温度:約34℃
・銅析出時間:約2分30秒
・撹拌:空気撹拌(air agitation)
(電解銅メッキ液)
・メッキ液:硫酸銅24g/L、硫酸188g/L、塩酸60ppm
・バス温度:32℃
・電流密度:3.2A/dm
・銅析出時間:約31分
【0085】
実施例2:軟性銅箔積層フィルム
【0086】
前記第1銅メッキ層それぞれに対し、対流熱による熱風乾燥で、約165℃の温度で、約3分間の代わりに、約4分間熱処理を行ったことを除いては、実施例1と同一方法で軟性銅箔積層フィルムを作製した。
【0087】
実施例3:軟性銅箔積層フィルム
【0088】
前記第1銅メッキ層それぞれに対し、対流熱による熱風乾燥で、約165℃の温度で、約3分間の代わりに、約5分間熱処理を行ったことを除いては、実施例1と同一方法で軟性銅箔積層フィルムを作製した。
【0089】
実施例4:軟性銅箔積層フィルム
【0090】
前記第1銅メッキ層それぞれに対し、対流熱による熱風乾燥で、約165℃の温度で、約3分間の代わりに、約10分間熱処理を行ったことを除いては、実施例1と同一方法で軟性銅箔積層フィルムを作製した。
【0091】
実施例5:軟性銅箔積層フィルム
【0092】
前記第1銅メッキ層それぞれに対し、対流熱による熱風乾燥で、約165℃の温度で、約3分間の代わりに、約15分間熱処理を行ったことを除いては、実施例1と同一方法で軟性銅箔積層フィルムを作製した。
【0093】
実施例6:軟性銅箔積層フィルム
【0094】
前記第1銅メッキ層それぞれに対し、対流熱による熱風乾燥で、約165℃の温度で、約3分間の代わりに、約20分間熱処理を行ったことを除いては、実施例1と同一方法で軟性銅箔積層フィルムを作製した。
【0095】
実施例7:軟性銅箔積層フィルム
【0096】
前記ポリイミドフィルムの両面に、無電解ニッケルメッキ法を利用し、約100nm厚の代わりに、約200nmニッケルメッキ層をそれぞれ形成し、無電解ニッケルメッキ液で、ニッケル析出時間を約3分行う代わりに、約4分遂行されたことを除いては、実施例1と同一方法で軟性銅箔積層フィルムを作製した。
【0097】
実施例8:軟性銅箔積層フィルム
【0098】
前記ポリイミドフィルムの両面に、無電解ニッケルメッキ法を利用し、約100nm厚の代わりに、約250nmニッケルメッキ層をそれぞれ形成し、無電解ニッケルメッキ液で、ニッケル析出時間を約3分行う代わりに、約5分行ったことを除いては、実施例1と同一方法で軟性銅箔積層フィルムを作製した。
【0099】
実施例9:軟性銅箔積層フィルム
【0100】
前記ポリイミドフィルムの両面に、無電解ニッケルメッキ法を利用し、約100nm厚の代わりに、約200nmニッケルメッキ層をそれぞれ形成したことを除いては、実施例1と同一方法で軟性銅箔積層フィルムを作製した。
【0101】
実施例10:軟性銅箔積層フィルム
【0102】
前記ポリイミドフィルムの両面に、無電解ニッケルメッキ法を利用し、約100nm厚の代わりに、約250nmニッケルメッキ層をそれぞれ形成したことを除いては、実施例1と同一方法で軟性銅箔積層フィルムを作製した
【0103】
比較例1:軟性銅箔積層フィルム
無電解ニッケルメッキ液において、バス温度約60℃の代わりに、65℃にし、pH濃度約7.3の代わりに、約8.0にし、第1銅メッキ層それぞれに対し、熱処理を行わないことを除いては、実施例1と同一方法で軟性銅箔積層フィルムを作製した。
【0104】
分析例1:結晶配向指数:XRD測定
【0105】
実施例1~10及び比較例1によって作製された軟性銅箔積層フィルムの第1銅メッキ層に対し、XRD(X線回折)分析を実施した。該XRD分析は、Cu Kα radiation(1.540598Å)を利用したRigaku RINT2200HF+回折計(diffractometer)を利用して実施した。その結果を、図4ないし図6にそれぞれ示した。
【0106】
また、図4ないし図6によるX線回折(XRD)分析を基に、[111]方位面に対する[200]方位面、[220]方位面及び[311]方位面の結晶配向指数を、数式1ないし数式3にそれぞれ代入して求めた結果を、下記表1ないし表3に示した。
【0107】
【数7】
【0108】
【数8】
【0109】
【数9】
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
【表3】
【0113】
図4及び図5を参照すれば、実施例1~10によって作製された軟性銅箔積層フィルムの第1銅メッキ層に対し、[111]方位面以外に、[200]方位面、[220]方位面及び[311]方位面のうち、1または2つの方位面が同時に追加して示されることを確認することができ、[111]方位面、[200]方位面、[220]方位面及び[311]方位面が同時に示されないことを確認することができる。表1及び表2を参照すれば、実施例1~10によって作製された軟性銅箔積層フィルムの第1銅メッキ層に対し、前記数式1によるX線回折(XRD)分析による[111]方位面に対する[200]方位面の結晶配向指数が、0ないし25%未満を満足し、前記式2によるX線回折(XRD)分析による[111]方位面に対する[220]方位面の結晶配向指数が、0ないし15%未満を満足し、前記式3によるX線回折(XRD)分析による[111]方位面に対する[311]方位面の結晶配向指数が、0ないし14%未満を満足することを確認することができる。
【0114】
それと比較し、図6を参照すれば、比較例1によって作製された軟性銅箔積層フィルムの第1銅メッキ層に対し、[111]方位面、[200]方位面、[220]方位面及び[311]方位面が同時に示されることを確認することができる。
【0115】
表3を参照すれば、比較例1によって作製された軟性銅箔積層フィルムの第1銅メッキ層に対し、前記数式1によるX線回折(XRD)分析による[111]方位面に対する[200]方位面の結晶配向指数が、27%以上であり、前記数式2によるX線回折(XRD)分析による[111]方位面に対する[220]方位面の結晶配向指数が、15%以上であり、前記数式3によるX線回折(XRD)分析による[111]方位面に対する[311]方位面の結晶配向指数が、14%以上であることを確認することができる。
【0116】
評価例1:ポリイミドフィルムとニッケルメッキ層との間における、単位面積当たり剥離発生率評価
【0117】
実施例1によって作製された軟性銅箔積層フィルムのポリイミドフィルムとニッケルメッキ層との間において、1cm単位面積当たり剥離発生率を評価した。前記ポリイミドフィルムとニッケルメッキ層との間において、1cm単位面積当たり剥離発生率を、写真、及び200倍倍率の光学顕微鏡を利用して評価した。その結果を、それぞれ表4、図7A及び図7Bに示した。
【0118】
【表4】
【0119】
また、実施例1によって作製された軟性銅箔積層フィルムの第2銅メッキ層のそれぞれの面(第1面、第2面)に対し、150℃において0.5分間熱処理、150℃において1.0分間熱処理、150℃において2.0分間熱処理、180℃において0.5分間熱処理、180℃において1.0分間熱処理、180℃において2.0分間熱処理、220℃において0.5分間熱処理、220℃において1.0分間熱処理、220℃において2.0分間熱処理をした後、ポリイミドフィルムとニッケルメッキ層との間における、1cm単位面積当たり剥離発生率を写真を撮って評価した。その結果を下記表5に示した。
【0120】
【表5】
【0121】
表4、図7A及び図7Bを参照すれば、実施例1によって作製された軟性銅箔積層フィルムのポリイミドフィルムとニッケルメッキ層との間において、1cm単位面積当たり剥離発生率は0%であった。表5を参照すれば、実施例1によって作製された軟性銅箔積層フィルムの第2銅メッキ層のそれぞれの面(第1面、第2面)に対する高温での熱処理を行った後にも、ポリイミドフィルムとニッケルメッキ層との間において、1cm単位面積当たり剥離発生率は0%であった。
【0122】
一方、比較例1によって作製された軟性銅箔積層フィルムのポリイミドフィルムとニッケルメッキ層との間において、1cm単位面積当たり剥離発生率を評価した。前記ポリイミドフィルムとニッケルメッキ層との間において、1cm単位面積当たり剥離発生率を評価するために、写真、及び200倍の倍率の光学顕微鏡を利用して評価した。その結果を、それぞれ図7C及び図7Dに示した。
【0123】
図7C及び図7Dを参照すれば、比較例1によって作製された軟性銅箔積層フィルムのポリイミドフィルムとニッケルメッキ層との間において、1cm単位面積当たり剥離発生率は、約40~50%と、広い面積にかけて発生したことを確認することができる。
【0124】
従って、実施例1によって作製された軟性銅箔積層フィルムが、比較例1によって作製された軟性銅箔積層フィルムと比較し、ポ リイミドフィルムとニッケルメッキ層との間において、1cm単位面積当たり剥離発生率が顕著に低下したことを確認することができる。
【0125】
それにより、実施例1によって作製された軟性銅箔積層フィルムは、ニッケル含有メッキ層内の有機物、添加剤、凝集ガスのような不純物がほとんど除去されたことが分かる。
【符号の説明】
【0126】
1 非伝導性高分子基材
2 ニッケル含有メッキ層
2’ ニッケル含有メッキ層
3 第1銅メッキ層
3’ 第1銅メッキ層
4 第2銅メッキ層
4’ 第2銅メッキ層
5 第1面
6 第2面
10 積層構造体
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図7d