(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-29
(45)【発行日】2022-09-06
(54)【発明の名称】海水などの供給物を処理するためのプレート熱交換器および熱交換プレート
(51)【国際特許分類】
F28D 9/00 20060101AFI20220830BHJP
B01D 5/00 20060101ALI20220830BHJP
B01D 1/00 20060101ALI20220830BHJP
F28F 3/00 20060101ALI20220830BHJP
F28F 3/04 20060101ALI20220830BHJP
C02F 1/04 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
F28D9/00
B01D5/00 D
B01D1/00 B
F28F3/00 311
F28F3/04 B
C02F1/04 A
(21)【出願番号】P 2021530977
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(86)【国際出願番号】 EP2019081025
(87)【国際公開番号】W WO2020108983
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-07-14
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509005513
【氏名又は名称】アルファ-ラヴァル・コーポレート・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フレードリク・ブロムグレン
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108622966(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106587227(CN,A)
【文献】特表2008-534906(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105481159(CN,A)
【文献】中国実用新案第206720784(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0055776(US,A1)
【文献】特表2011-523025(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3372941(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/00 - 13/00
F28F 3/00 - 3/14
B01D 1/00
B01D 5/00
C02F 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給物を処理するためのプレート熱交換器であって、第1のプレート間隙および第2のプレート間隙をプレートパッケージ内で交互の順序で形成する、連続的順序で配置されている複数の熱交換プレートを含む前記プレートパッケージを具備し、各第1のプレート間隙は、前記供給物を蒸発させる蒸発セクションを画定し、前記蒸発セクションは、前記蒸発セクションを第1の分離セクションに流体接続する上方境界と、対向する熱交換プレートがそこで共に封止される下方境界との間に長手方向に延在し、前記蒸発セクションは、側方境界の対向する熱交換プレートがそこで共に封止される、第1の側方境界と第2の側方境界との間に横方向にさらに延在し、前記蒸発セクションは、
液状の前記供給物を前記蒸発セクション内へ導入するための、前記下方境界に隣接して配置されている供給物入口と、
前記上方境界に隣接する熱交換区域であり、前記対向する熱交換プレートの対向する畝部が互いに当接するように配置されている、前記対向する熱交換プレートの畝部および谷部により形成されている、熱交換区域と、
前記下方境界と前記熱交換区域との間に配置されており、前記供給物入口からの前記供給物を受け入れるために前記供給物入口から前記横方向に延在し、前記熱交換区域に亘る前記供給物の均一な分配を可能にする、通路と、
前記熱交換区域と前記通路とを分離する遷移区域であり、前記遷移区域内の前記対向する熱交換プレート間の最大距離が前記通路内のかつ前記熱交換区域内の前記対向する熱交換プレート間の最大距離より小さい、遷移区域と
を画定する、プレート熱交換器。
【請求項2】
前記遷移区域内の前記対向する熱交換プレート間の前記最大距離は、前記通路内の前記対向する熱交換プレート間の前記最大距離の10%と45%の間である、請求項1に記載のプレート熱交換器。
【請求項3】
前記対向する熱交換プレートの前記畝部と前記谷部とは前記熱交換区域内にクロス形パターンを形成する、請求項1または2に記載のプレート熱交換器。
【請求項4】
前記対向する熱交換プレート間の前記最大距離は、前記通路内でかつ前記熱交換区域の前記対向する谷部内で実質的に等しい、請求項1から3のいずれか一項に記載のプレート熱交換器。
【請求項5】
前記通路は実質的に前記第1の側方境界と前記第2の側方境界との間に延在する、請求項1から4のいずれか一項に記載のプレート熱交換器。
【請求項6】
前記第1のプレート間隙と前記第2のプレート間隙の少なくとも1つが、前記蒸発供給物の少なくとも一部の凝縮を可能にするようになされている第1の凝縮セクションを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のプレート熱交換器。
【請求項7】
前記通路の最大幅は、前記通路における前記対向する熱交換プレート間の前記最大距離に少なくとも等しい、請求項1から6のいずれか一項に記載のプレート熱交換器。
【請求項8】
前記第1のプレート間隙内の前記蒸発セクションは前記第2のプレート間隙内の第2の凝縮セクションに面している、請求項1から7のいずれか一項に記載のプレート熱交換器。
【請求項9】
前記第2のプレート間隙内の前記第2の凝縮セクションは、前記第1のプレート間隙内の前記蒸発セクションの前記供給物入口の下に配置されている凝縮物出口を画定しており、前記通路は、前記第1のプレート間隙内の前記蒸発セクションと前記第2のプレート間隙内の前記凝縮物出口との間に配置されているクロスフロー区域を画定しており、前記通路内の前記対向する熱交換プレート間の前記最大距離は、前記クロスフロー区域の外側と比較して、前記クロスフロー区域内でより小さい、請求項8に記載のプレート熱交換器。
【請求項10】
前記クロスフロー区域内の前記対向する熱交換プレート間の前記最大距離は、前記クロスフロー区域の外側の前記通路内の前記対向する熱交換プレート間の前記最大距離の50%など、約40%~60%である、請求項9に記載のプレート熱交換器。
【請求項11】
前記クロスフロー区域の外側の前記通路の幅は、前記クロスフロー区域の幅の50%など、約20%から80%までである、請求項9または10に記載のプレート熱交換器。
【請求項12】
前記クロスフロー区域の前記幅は、前記クロスフロー区域の長さの2分の1など、約4分の1から4分の3までである、請求項9から11のいずれか一項に記載のプレート熱交換器。
【請求項13】
前記蒸発セクションの前記下方境界と前記側方境界とはガスケットにより封止される、請求項1から12のいずれか一項に記載のプレート熱交換器。
【請求項14】
前記供給物入口は前記プレートパッケージ内で中心に配置される、請求項1から13のいずれか一項に記載のプレート熱交換器。
【請求項15】
供給物を処理するためのプレート熱交換器用のプレートであって、前記供給物を蒸発させる蒸発セクションを画定しており、前記蒸発セクションは、前記蒸発セクションを第1の分離セクションに流体接続する上方境界と、対向する熱交換プレートが共に封止される下方境界との間に長手方向に延在しており、前記蒸発セクションは、側方境界の対向する熱交換プレートがそこで共に封止される、第1の側方境界と第2の側方境界との間に横方向にさらに延在し、前記蒸発セクションは、
液状の前記供給物を前記蒸発セクション内へ導入するための、前記下方境界に隣接して配置されている供給物入口と、
前記上方境界に隣接する熱交換区域であり、前記対向する熱交換プレートの対向する畝部が互いに当接しかつクロス形パターンを形成するように配置されている、前記熱交換プレート内の畝部および谷部により形成されている、熱交換区域と、
前記下方境界と前記熱交換区域との間に配置されており、前記供給物入口からの前記供給物を受け入れるために前記供給物入口から前記横方向に延在し、前記熱交換区域に亘る前記供給物の均一な分配を可能にする、通路と、
前記熱交換区域と前記通路とを分離する遷移区域であり、前記遷移区域内の前記プレートの最大押込み深さが前記通路内のかつ前記熱交換区域内の前記プレートの最大押込み深さより小さい、遷移区域と
を画定する、プレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水などの供給物を処理するためのプレート熱交換器および熱交換プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換プレートの1つまたはいくつかのプレートパッケージがプロセスにおける主要構成要素を形成する、海水を脱塩するための機器が何年も前から製造されている。脱塩用のそのようなプレート熱交換器の一例は、Alfa Laval Corporate AB(アルファラバル社)に割り当てられている国際公開第2006/104443号において見出すことができる。該熱交換器は、熱交換プレートのプレート間隙内に配置されている、蒸発セクションと、分離セクションと、凝縮セクションとを有する。前述の熱交換器の利点は、海水の全体的な処理がプレートパッケージのプレート間隙内で実施される、すなわち蒸発、分離、および凝縮が同一プレートパッケージ内で起こるので、該熱交換器がいかなるコンテナも必要としないことである。これにより小型設計が可能になる。
【0003】
この種の熱交換器は、蒸発セクション内で供給物、通常は海水、を蒸発させること、分離セクション内で供給物を蒸発供給物と塩水液滴とに分離すること、凝縮セクション内で該蒸発供給物を凝縮供給物に凝縮することにより動作する。蒸発、分離、および凝縮は、連続プロセスにおいて同時に起こり、凝縮供給物は凝縮セクションから、凝縮セクションの下方領域内に配置されている出口を介して継続的に除去される。
【0004】
国際公開第2006/104443号に記載されている技術は、もっぱら単段を使用する。しかし、熱交換器の効率性は、多段を使用することにより改善され得る。脱塩用の多段熱交換器の例は、まだ公開されていない欧州特許出願公開第18176540.5号において見出される。多段熱交換器は、同一プレートパッケージ内の後続段の蒸発セクションの供給物を蒸発させるために第1の段の凝縮セクションから得られるエネルギーを利用する。後述されている技術は、単段脱塩プラントと多段脱塩プラントの両方において使用され得る。
【0005】
熱交換プレートパッケージは、通常は水平方向に沿って対面で連続的に配置される、実質的に等しい大きさの複数の熱交換プレート、少なくとも3つ、を含む。該プレートは波形部、すなわち畝部と谷部とを形成する。該畝部および谷部は対向するプレート上に逆向きに配向されており、共にクロス形パターンを画定して、プレートの表面積の増大によりかつプレート間隙内の流動を乱流にすることにより、プレートによる熱伝達を高めることができる。該波形部は、プレートの前面上の畝部が後面上の谷部を画定することを暗示する。各熱交換プレートが熱交換器パッケージの全高および全幅を実質的に画定し、水平方向は熱交換器パッケージの深さを構成する。熱交換プレートの縁部は相互に封止されて、プレート間に平行プレート間隙を構築する。
【0006】
熱交換プレートは様々なタイプの表面を画定し、互いに対向して組み立てられると、2種類のプレート間隙、すなわち第1のプレート間隙および第2のプレート間隙、が交互の順序で設けられる。すなわち、当然水平方向に沿った第1のプレート間隙および最後のプレート間隙を除いて、第1のプレート間隙は2つの第2のプレート間隙に隣接して配置される。熱交換プレートは、通常、ステンレス鋼、アルミニウム、またはチタンなどの熱伝導耐食材料で作製される。これによりプレートによる熱接触が可能になり、それにより流体混合が防止される。
【0007】
通常は海水を構成する供給物は、そこで供給物の少なくとも一部が蒸発させられる蒸発セクション内へ導入される。供給物の蒸発部分は、非蒸発供給物を構成する残部から蒸発供給物を分離する分離セクションへ導かれる。該分離セクションは、通常、非蒸発供給物がそこで捕捉されかつ分離セクションから外へ導かれるロッド、バー、または波形部等を含む。蒸発供給物は、次いで、蒸発供給物が熱交換プレートの反対面上で冷却流体を使用して凝縮する凝縮セクションへ導かれる。凝縮供給物、通常は真水、は熱交換パッケージから外へ導かれる。冷却流体は、通常、元々冷たい水、好ましくは海水などの液体である。あるいは、他の冷却媒体が使用されてもよい。
【0008】
蒸発セクションは、対向する第1の熱交換プレートと第2の熱交換プレートとが蒸発セクションの底面および側面に沿って共に封止されている、プレート間隙内の領域により画定される。蒸発セクションは、通常、実質的に矩形のまたは四角形の領域を形成する。熱交換プレート間の封止は、通常、ゴムガスケットなどのガスケットにより成され、該ガスケットは、シールを保持してシールが蒸発セクションの内側と外側との間に水密障壁を形成することを可能にする目的で作製されるプレートにあるガスケット溝部内のプレート間に配置される。蒸発セクションの上方向配向部は開いており、蒸発供給物が分離セクションにかつその後に凝縮セクションに進入することを可能にする。本明細書において言及されている方向は、通常使用中のプレート熱交換器の配向に関連している。
【0009】
供給物は、供給物入口を介して、第1のプレート間隙の蒸発セクションに進入する。供給物は液体、通常は海水、である。供給物入口は、蒸発セクションの下部に蒸発セクションの底面角部の1つに配置されており、そこで底面と側面とが接続する。入口は、蒸発セクションの底面に隣接する側面ガスケットにある開口部として形成され得ることが好ましい。
【0010】
蒸発セクションの角部における入口で蒸発セクションに進入する塩分のある海水が、場合によっては、蒸発セクションを含む熱交換プレートの一部の表面に亘ってうまく分配せず、入口に隣接したままである傾向があることが認識されている。これは、熱交換器の効率性を低下させる、蒸発セクション内の乾燥領域の原因になる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2006/104443号
【文献】欧州特許出願公開第18176540.5号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、熱交換プレートの蒸発セクションの全領域に亘って海水を分配する技術を見つけることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様によれば、本発明は、供給物を処理するためのプレート熱交換器であって、第1のプレート間隙および第2のプレート間隙をプレートパッケージ内で交互の順序で形成する連続的順序で配置されている複数の熱交換プレートを含むプレートパッケージを具備し、各第1のプレート間隙は、供給物を蒸発させる蒸発セクションを画定し、該蒸発セクションは、蒸発セクションを第1の分離セクションに流体接続する上方境界と、対向する熱交換プレートが共に封止される下方境界との間に長手方向に延在し、蒸発セクションは、側方境界の対向する熱交換プレートがそこで共に封止される第1の側方境界と第2の側方境界との間に横方向にさらに延在し、蒸発セクションは、
液状の供給物を蒸発セクション内へ導入するための、下方境界に隣接して配置されている供給物入口と、
上方境界に隣接する熱交換区域であり、対向する熱交換プレートの対向する畝部が互いに当接するように配置されている、対向する熱交換プレートの畝部および谷部により形成されている、熱交換区域と、
下方境界と熱交換区域との間に配置されており、供給物入口からの供給物を受け入れるために供給物入口から横方向に延在し、熱交換区域に亘る供給物の均一な分配を可能にする、通路と、
熱交換区域と通路とを分離する遷移区域であり、該遷移区域内の対向する熱交換プレート間の最大距離が通路内のかつ熱交換区域内の対向する熱交換プレート間の最大距離より小さい、遷移区域と
を画定する、プレート熱交換器
に関する。
【0014】
第1の間隙は、一般に、プロセス間隙(process interspace)として知られている。第1のプレート間隙内の対向するプレートの畝部の最上部は、蒸発セクションの熱交換区域を構成する波形領域内のいくつかの接触点で接触する。該接触点は、2つの対向する熱交換プレートの畝部が出会うところである。逆に、2つの谷部が互いに対向するところで、間隔が第1のプレート間隙内の対向する熱交換プレート間に画定される。第2の間隙内で、第1のプレート間隙内で画定されている畝部は谷部を形成する。
【0015】
供給物入口は、液体供給物が蒸発領域内へ流入することおよび熱交換区域内で蒸発されている間に上方向に流動することを可能にするために、下方境界付近に配置されている。下方境界および側方境界は、液体供給物を含有するために封止されており、一方、上向き境界は開いており、蒸発供給物が分離セクションに進入することを可能にする。上向き、下向き等の方向は、動作中のプレートパッケージの配向に関連する。
【0016】
通路は、蒸発セクションの下方境界の所の供給物入口から遮るもののない流路を形成し、横方向に延在している。通路は実質的に真っ直ぐであり、入口からの液体供給物が比較的自由に通過しかつ下方境界に沿って分配することを可能にするために、下方境界に沿って実質的に水平方向に、例えば若干の角度で、延在している。通路内では、対向する熱交換プレートにより画定されているパターンに因り、液体供給物が真っ直ぐに流動することができ、一方、熱交換区域内の液体が湾曲した経路を流動しなければならないので、熱交換区域と比較して、流動抵抗が低減される。したがって、通路は実質的に液体で満ちる。
【0017】
液体は、次いで、下方境界に沿って通路から遷移区域内へかつ該遷移区域から熱交換区域へ流動することができ、したがって、熱交換区域が第1の側方境界と第2の側方境界との間で液体供給物を十分に供給されて、熱交換区域に亘る供給物のおおよそ均一の分配を可能にすることを確実にし、熱交換区域のいくつかの部分が乾燥した未使用のままであることを回避する。
【0018】
遷移区域は、通路と熱交換区域との間の流量制限または流量絞りを定める。このようにして、通路がその全長に沿って液体供給物で満たされたままであり、供給物の均一な分配を確実することが確実にされ得る。
【0019】
第1の態様のさらなる実施形態によれば、遷移区域内の対向する熱交換プレート間の最大距離は通路内の対向する熱交換プレート間の最大距離の10%から45%までの間である。
【0020】
このようにして、通路と熱交換区域との間の流動の均一な分配を可能にするために、適切な流量制限が達成される。
【0021】
第1の態様のさらなる実施形態によれば、対向する熱交換プレートの畝部と谷部とは熱交換区域内にクロス形パターンを形成する。
【0022】
クロス形パターンが、乱流を増加させるために有益である可能性がある。
【0023】
第1の態様のさらなる実施形態によれば、対向する熱交換プレート間の最大距離は、通路内でかつ熱交換区域の対向する谷部内で実質的に等しい。
【0024】
通路の深さ/高さを最大にすることにより、通路内の供給物流は最大になり、それは熱伝導領域内での供給物の均一な分配の一助となる。
【0025】
第1の態様のさらなる実施形態によれば、通路は実質的に第1の側方境界と第2の側方境界との間に延在する。
【0026】
熱交換区域の全幅に沿った流動の均一な分配を確実するために、通路は熱交換区域の全幅に亘って延在する、すなわち通路を第1の側方境界と第2の側方境界との間の全長に延在させることが好ましい。
【0027】
第1の態様のさらなる実施形態によれば、第1のプレート間隙および第2のプレート間隙の少なくとも1つが、蒸発供給物の少なくとも一部の凝縮を可能にするようになされている第1の凝縮セクションを含む。
【0028】
同一プレートパッケージにおいて蒸発と凝縮の両方を達成するために、凝縮セクションは使用され得る。凝縮セクションは分離セクションと連通している。このようにして、同一プレートパッケージ内で蒸発、分離、および凝縮が達成されるスリーインワンプレートパッケージが達成され得る。
【0029】
第1の態様のさらなる実施形態によれば、通路の最大幅は、通路における対向する熱交換プレート間の最大距離に少なくとも等しい。
【0030】
したがって、通路の流動領域は流動を最大にするために適切な形状を有する。
【0031】
第1の態様のさらなる実施形態によれば、第1のプレート間隙内の蒸発セクションは第2のプレート間隙内の第2の凝縮セクションに対向している。
【0032】
このようにして、多段熱交換器が実現され得る。第2の凝縮セクションは別のプロセス段の一部を形成する。多段熱交換器は別のプロセス段の凝縮の熱を使用して、現在のプロセス段において供給物を蒸発させる。蒸発セクションと第2の凝縮セクションとは、したがって、熱交換プレートにより分離される。他の段の蒸発セクションは加熱流体により加熱され得る。
【0033】
第1の態様のさらなる実施形態によれば、第2のプレート間隙内の第2の凝縮セクションは、第1のプレート間隙内の蒸発セクションの供給物入口の下に配置されている凝縮物出口を画定し、通路は、第1のプレート間隙内の蒸発セクションと第2のプレート間隙内の凝縮物出口との間に配置されているクロスフロー区域を画定し、通路内の対向する熱交換プレート間の最大距離は、クロスフロー区域の外側と比較して、クロスフロー区域内でより小さい。
【0034】
凝縮物出口が凝縮セクション内の最下点に配置されるべきであるので、それは、通常、第2のプレート間隙内の第2の凝縮セクションの反対側の、第1のプレート間隙内の蒸発セクションの供給物入口の下に置かれる。第1のプレート間隙内の供給物入口から横方向に延在する通路は、凝縮セクションから出口への真水流を妨げる。これは出口への真水の完全な妨害物を形成すると考えられるので、このため、通路における第2のプレート間隙内の熱交換プレートは当接してはならない。したがって、通路は、熱交換区域と出口との間にクロスフロー区域を形成しなければならず、そこでは液体供給物が第1のプレート間隙内で通過することと真水流が第2のプレート間隙内で通過することの両方を可能にするために、プレートが両プレート間隙内で離間されている。クロスフロー区域の幅は通路の幅より大きい可能性があり、流動面積が実質的に変更されないことを可能にする。
【0035】
第1の態様のさらなる実施形態によれば、クロスフロー区域内の対向する熱交換プレート間の最大距離はクロスフロー区域の外側の通路内の対向する熱交換プレート間の最大距離の50%など、約40%から60%までである。
【0036】
このようにして、供給物と真水とのクロスフローは可能にされる。
【0037】
第1の態様のさらなる実施形態によれば、クロスフロー区域の幅は該クロスフロー区域の長さの2分の1など、約4分の1から4分の3までである。
【0038】
このようにして、真水流は実質的に妨げられない。クロスフロー区域および通路の幅は、これにより、プレートの長手方向に延在すると理解され、一方、長さはプレートの横方向に延在すると理解される。
【0039】
第1の態様のさらなる実施形態によれば、クロスフロー区域の外側の通路の幅はクロスフロー区域の幅の50%など、約20%から80%までである。
【0040】
クロスフロー区域の幅は通路の幅より大きい可能性があり、実質的に変更されない流動面積を可能にする。
【0041】
第1の態様のさらなる実施形態によれば、蒸発セクションの下方境界および側方境界はガスケットにより封止される。
【0042】
ガスケットを使用することにより、メンテナンス目的でプレートを分離することが依然として可能であると同時に、確実な封止が達成される。
【0043】
第1の態様のさらなる実施形態によれば、入口はプレートパッケージ内で中心に配置される。
【0044】
このようにして、蒸発セクションは入口の両側に延在し得る。
【0045】
第2の態様によれば、本発明は、供給物を処理するためのプレート熱交換器用のプレートであって、該供給物を蒸発させる蒸発セクションを画定しており、該蒸発セクションは、蒸発セクションを第1の分離セクションに流体接続する上方境界と、対向する熱交換プレートが共に封止される下方境界との間に長手方向に延在しており、蒸発セクションは、側方境界の対向する熱交換プレートがそこで共に封止される、第1の側方境界と第2の側方境界との間に横方向にさらに延在し、蒸発セクションは、
液状の供給物を蒸発セクション内へ導入するための、下方境界に隣接して配置されている供給物入口と、
上方境界に隣接する熱交換区域であり、対向する熱交換プレートの対向する畝部が互いに当接しかつクロス形パターンを形成するように配置されている、熱交換プレート内の畝部および谷部により形成されている、熱交換区域と、
下方境界と熱交換区域との間に配置されており、供給物入口からの供給物を受け入れるために供給物入口から横方向に延在し、熱交換区域に亘る供給物の均一な分配を可能にする、通路と、
熱交換区域と通路とを分離する遷移区域であり、遷移区域内のプレートの最大押込み深さが通路内のかつ熱交換区域内のプレートの最大押込み深さより小さい、遷移区域と
を画定する、プレートに関する。
【0046】
第2の態様によるプレートは、第1の態様によるプレート熱交換器と共に使用されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】脱塩用の多段プレート熱交換器のプレートの図である。
【
図2】プレートの蒸発セクションのクローズアップの図である。
【
図5】通路および2つのガスケットの斜視図である。
【
図6】プレートのクロスフロー区域の斜視図である。
【
図7】通路における、2つのプレートの間の通路の断面図である。
【
図8】4つのプレートを含むプレートパッケージの斜視図である。
【
図9】4つのプレートを含むプレートパッケージの斜視図である。
【
図10】4つのプレートを含むプレートパッケージの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、海水を脱塩するための多段プレート熱交換器用のプレート10の後面図を示す。該プレート10は、別の同様の熱交換プレートに対向しかつプレートパッケージの一部を形成することが意図されている。本図は、第2のプレート間隙の一部を形成することが意図されているプレートの後面のものである。プレート10は、プレート10の底部に配置されている熱媒体セクション12を画定する。該熱媒体セクション12は、熱媒体を熱媒体セクション12内へ導入するための熱媒体入口14と、熱媒体が熱を、(ここでは図示せず)第1のプレート間隙内の熱媒体セクション12の反対側に配置されている第1の段の蒸発セクションへ解放した場合、それが熱媒体セクション12から外へ出ることを可能にする熱媒体出口16とを有する。熱媒体はエンジンからのジャケット水であり得る。
【0049】
(熱媒体セクション12の反対側に配置されているので見えない)第1の段の蒸発セクションからの蒸発海水は、(液滴などの)供給物の非蒸発部分が分離されかつプレートパッケージから外へ導かれる分離セクション18に進入する。供給物の蒸発部分は、開口部20aおよび20bを使用して、プレートを通って第1のプレート間隙へ流動することができ、その後、第1の段の凝縮セクション22に進入する。該凝縮セクション22は第2の段の蒸発セクションの反対側に配置されている。凝縮セクション22に進入する蒸発供給物は、熱エネルギーが反対側の蒸発セクション(図示せず)内で該供給物により吸収されるので、凝縮する。凝縮供給物は真水出口24を介して流出している。
【0050】
(それが反対側プレート間隙内の凝縮セクション22の反対側に配置されているので、ここでは見えない)第2の段の蒸発セクションからの蒸発供給物は、開口部20a'および20b'を介して第1のプレート間隙と第2のプレート間隙との間で流動し得る。蒸発供給物は、反対側プレート間隙内に配置されている第2の段の凝縮セクションにより受け入れられる。第2の段の凝縮セクションからの凝縮真水が真水出口24'を介して収集される。
【0051】
プレート10は、冷却媒体を冷却媒体セクション26内へ導入するための冷却媒体入口28と、冷却媒体が、冷却媒体セクション26の反対側に配置されている第1のプレート間隙内の第2の段の凝縮セクションからの熱を吸収した場合、それが冷却媒体セクション26から外へ出ることを可能にする冷却媒体出口30とを有する冷却媒体セクション26をさらに画定する。冷却媒体は海水であり得る。
【0052】
対向する熱交換器プレートが、やはりセクションを画定しかつ段を分離するガスケット32により共に封止される。分離セクションからの過剰な非蒸発水が塩水出口34を介して外へ導かれる。開口部36、36'、36''は、凝縮セクション22およびさらに下に詳述される加熱セクション12の反対側に配置されている蒸発セクションのための供給物入口を構成する。熱媒体入口14、熱媒体出口16、真水出口24、24'、冷却媒体入口28、冷却媒体出口30、および供給物入口36は熱交換プレート10の中心軸上に形成されている。本実施形態における中心軸は、本質的に、熱交換プレート10を機能的に同一な左部分と右部分とに分割する。
【0053】
図2は、第1の段の凝縮セクションの反対側の第2のプレート間隙内のプレート10上に配置されている第2の段の蒸発セクション38を示す、熱交換プレート10の一部の正面図を示す。該蒸発セクション38は、機能的に同一な左部分と右部分とに分割されている。下記の説明は、簡単にするために、左部分に注目する。蒸発セクション38は、プレート10が畝部40と谷部42とを含む熱交換区域を画定する。対向する畝部と谷部とが互いに対してクロス形パターンを形成するように、第1のプレート間隙内の2つの対向する熱交換プレートは互いに対してひっくり返されている。対向する畝部が互いに当接し、対向する谷部がそれら自体で流動空間を画定する。このパターンは乱流を発生させ、プレート10による熱伝導を高める。したがって、蒸発セクションのこの部分は、反対側の凝縮セクションと共に、熱交換区域としての機能を果たす。
【0054】
蒸発セクション38は第1の側方境界44と、プレート10の中心軸に隣接して配置されている反対側の第2の側方境界46と、下方境界48とを画定している。対向する熱交換プレートは、ガスケット32により、第1の側方境界44、第2の側方境界46、および下方境界48において、共に封止される。蒸発セクション38は、液体供給物を蒸発セクション38内へ導入するために、蒸発セクションの下方境界48に隣接する第2の側方境界46に配置されている供給物入口36をさらに画定している。液体供給物、通常は海水、は、プレート(図示せず)にある小開口部を介して第1のプレート間隙に進入し、ガスケット32にある開口部を介して蒸発セクション38に進入する。蒸発セクション38の上方境界50は開いており、蒸発供給物が分離セクションに進入することを可能にする。動作中の場合、分離セクションは対応する蒸発セクションの上方に配置されなければならず、凝縮セクションは対応する分離セクションの上方に配置されなければならない。
【0055】
供給物入口36において蒸発セクション38に進入する液体供給物は、下方境界と熱交換区域との間で、蒸発セクション38の第1の側方境界44に向かって、通路52経由で導かれる。該通路52は側面44と46との間に延在する。通路52は、熱交換区域内の谷部の深さに実質的に等しい押込み深さを画定する。したがって、通路52は、押込み深さに因る大流動面積と、それが実質的に真っ直ぐなので減少した乱流とを画定している。
【0056】
通路52は実質的に真っ直ぐであり、下方境界に沿って延在するので、流入液体供給物は、熱交換区域を通って流動することと比較して、通路52を通って流動することにより、低い流動抵抗に遭遇する。したがって、通路52が設けられると、増大した量の液体供給物が第1の側方境界44に向かって流動する。
【0057】
流入液体供給物の大部分が、第2の側方境界46付近の熱交換区域に進入することの代わりに、第1の側方境界44に向かって通路内で流動することを確実にするために、遷移区域54が通路52と熱交換区域との間に配置される。該遷移区域内では、対向するプレート間の距離は通路と比較して減少する。遷移区域は、通路52と熱交換区域との間に減少した流動面積を画定しており、それにより、流動のより大きい部分が第1の側方境界44に向かって前進することが可能になる。
【0058】
通路52は、第2のプレート間隙内の反対側凝縮セクション上の真水流が真水出口24に進入しかつ通路により妨げられないことを可能にするために、熱交換区域と第2のプレート間隙内の凝縮セクションの出口24との間に、クロスフロー区域56を画定している。第2のプレート間隙内の対向するプレート間に最大間隔を有する通路52が供給物入口36と第1の側方境界44との間に完全な距離で延在する場合、それは、第2のプレート間隙内で、凝縮セクションと真水出口24との間に妨害物があることを意味すると考えられる。代わりに、クロスフロー区域56は第1のプレート間隙内と第2のプレート間隙内の両方で対向するプレート間に距離を与え、したがって第1のプレート間隙内の通路52を通る、供給物入口36からの液体供給物の横方向流を可能にし、同時に、第2のプレート間隙内の凝縮セクション内の熱交換区域から第2のプレート間隙内の真水出口24まで長手方向に、真水クロスフローを可能にする。
【0059】
図3はプレート10上の通路52の斜視図を示す。ガスケット32は波形部58により所定の位置に保持されている。通路52は波形部58に隣接して延在する。遷移区域54は、通路52と、畝部40および谷部42により形成されている蒸発セクションの熱交換区域との間に配置されている。
【0060】
図4は、2つのプレート10、10'の間の通路52の斜視図を示す。該2つのプレート10、10'は、それら自体の間の第1のプレート間隙60と、第1のプレート間隙60内の蒸発セクションとを画定している。対向する畝部40、40'において、プレート10、10'は接触点で当接し、一方、対向する谷部42、42'において、プレート10、10'間の最大距離が達成される。相応に、通路52、52'において、プレート10、10'間の最大距離は同様に達成される。
【0061】
図5は、2つのプレート10、10'の間の通路52の斜視図を示す。この図は、それが、第2のプレート10'と第3のプレートとの間で封止することが意図されている追加ガスケット32'も示すことを除いて、
図4と同一である。
【0062】
図6はプレート10のクロスフロー区域56の斜視図を示す。本実施形態において、クロスフロー区域56よりも、対向するプレート間により小さい間隔を画定している遷移区域54も示されている。クロスフロー区域56の外側の通路52の一部も可視である。クロスフロー区域56は、通路と比較して減少した押込み深さを画定している。
【0063】
図7は、クロスフロー区域の外側の通路52の位置における、2つのプレート10、10'の間の通路52の断面図を示す。遷移区域54も示されている。
【0064】
図8は、4つのプレート10、10'、10''、10'''を含むプレートパッケージの斜視図を示す。図に示す通り、ガスケット32および32''は全距離に延在し、底部に蒸発セクションの下方境界をもたらし、一方、ガスケット32'および32'''は真水出口への真水クロスフローを可能にする。クロスフロー区域56は、第1のプレート間隙内および第2のプレート間隙内の両方で液体流を可能にするために、対向するプレートが前面と後面の両方において離間されることを可能にする。
【0065】
図9は、4つのプレート10、10'、10''、10'''を含むプレートパッケージの別の斜視図を示す。
【0066】
図10は、クロスフロー区域56の位置における、4つのプレート10、10'、10''、10'''を含むプレートパッケージの断面図を示す。遷移区域54も示されている。
【符号の説明】
【0067】
10、10''、10''' (多段プレート熱交換器用の)プレート
10' (多段プレート熱交換器用の)プレート、第2のプレート
12 熱媒体セクション
14 熱媒体入口
16 熱媒体出口
18 分離セクション
20a、20b、20a'、20b'、36'、36'' 開口部
22 凝縮セクション
24、24' 真水出口
26 冷却媒体セクション
28 冷却媒体入口
30 冷却媒体出口
32、32''、32''' ガスケット
32' 追加ガスケット、ガスケット
34 塩水出口
36 開口部、供給物入口
38 蒸発セクション
40、40' 畝部
42、42' 谷部
44 第1の側方境界
46 第2の側方境界
48 下方境界
50 上方境界
52、52' 通路
54 遷移区域
56 クロスフロー区域
58 波形部
60 第1のプレート間隙