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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】可撓性ドレン
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/04 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
E04D13/04 D
E04D13/04 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018186205
(22)【出願日】2018-09-29
(65)【公開番号】P2020056185
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】519280379
【氏名又は名称】株式会社リープループ
(74)【代理人】
【識別番号】100130007
【弁理士】
【氏名又は名称】垣木 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】森 大介
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-102697(JP,A)
【文献】特開2012-202048(JP,A)
【文献】特開2006-169819(JP,A)
【文献】特開2008-138394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に開口を有する平面状の土台部と、前記土台部の前記開口の周囲に設けられ前記土台部に対して略垂直に突出する筒状部と、前記筒状部の外周面に嵌合され固定された可撓性を有するホース部を備え、劣化した既存の配管に差し込んで使用される可撓性ドレンであって、
前記土台部は可撓性を有する樹脂シートに前記開口を形成したものであり、
前記筒状部は、樹脂で形成された筒状部材を前記土台部の前記開口の周囲に固定したものであり、
前記土台部に対する前記筒状部の高さは前記開口の内径の1/2以上であり、
前記土台部は排水溝の表面の凹凸に密着するように変形された状態で固定され、
前記筒状部及び前記ホース部は前記既存の配管に差し込まれ、
前記ホース部は、前記既存の配管の長さと同等の長さを有し、
前記土台部の前記開口のエッジには、前記筒状部側に突出した湾曲部が形成されており、前記筒状部の端部が前記湾曲部と溶着されている、
ことを特徴とする可撓性ドレン。
【請求項2】
前記土台部に対する前記筒状部の高さは前記開口の内径と同じかそれよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の可撓性ドレン。
【請求項3】
前記筒状部は、前記樹脂シートと同じかそれよりも硬度の高い樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可撓性ドレン。
【請求項4】
中央に開口を有する平面状の土台部と、前記土台部の前記開口の周囲に設けられ前記土台部に対して略垂直に突出する筒状部と、前記筒状部の外周面に嵌合され固定されたホース部を備えた可撓性ドレンの製造方法であって、
可撓性を有する樹脂シートに所定の内径を有する開口を形成する工程と、
前記開口を固定型に設けられた塔状部と嵌合させ、前記樹脂シートを前記固定型のテーブル上に載置し、前記固定型の前記塔状部の下端に形成された凹曲面に沿わせて前記開口のエッジに湾曲部を形成する工程と、
前記樹脂シートの前記湾曲部の上から前記塔状部に対して所定の隙間を有する可動型の嵌合孔を嵌合させる工程と、
前記固定型の前記塔状部近傍及び前記可動型の前記嵌合孔の近傍を加熱し、前記固定型の塔状部と前記可動型の前記嵌合孔の隙間に溶融した樹脂を流し込み、前記固定型の塔状部と前記可動型の前記嵌合孔の隙間に前記筒状部を形成する工程と、
前記固定型及び前記可動型を冷却して、前記可撓性ドレンの土台部及び筒状部を一体的に結合させる工程と、
冷却された前記可撓性ドレンの前記筒状部の外周面に、前記筒状部の外径とほぼ同じ内径を有し、所定の長さに切断された可撓性を有するホース部を嵌合させ、接着固定する工程とを備えたことを特徴とする可撓性ドレンの製造方法。
【請求項5】
中央に開口を有する平面状の土台部と、前記土台部の前記開口の周囲に設けられ前記土台部に対して略垂直に突出する筒状部と、前記筒状部の外周面に嵌合され固定されたホース部を備えた可撓性ドレンの製造方法であって、
可撓性を有する樹脂シートに所定の内径を有する開口を形成する工程と、
前記開口を固定型に設けられた塔状部と嵌合させ、前記樹脂シートを前記固定型のテーブル上に載置し、前記固定型の前記塔状部の下端に形成された凹曲面に沿わせて前記開口のエッジに湾曲部を形成する工程と、
前記樹脂シートの上から、前記所定の内径を有し、所定の長さに切断された樹脂パイプを前記固定型の前記塔状部に嵌合させる工程と、
前記樹脂シートの前記湾曲部及び前記樹脂パイプの外周面に、下端エッジ部に丸め又は面取りが形成された可動型の嵌合孔を嵌合させる工程と、
前記固定型及び前記可動型のうち前記樹脂シートの前記湾曲部の近傍及び前記樹脂パイプの下端部の近傍を局部的に加熱し、前記樹脂シートの前記湾曲部の近傍及び前記樹脂パイプの下端部の近傍を溶融させる工程と、
前記樹脂シートの前記湾曲部の近傍及び前記樹脂パイプの下端部の近傍がそれらの樹脂材料の融点に達したときに、加熱されていない前記樹脂パイプの上端を下向きに加圧して、前記樹脂シートの前記湾曲部の近傍及び前記樹脂パイプの下端部の前記樹脂材料を混合させ、前記固定型と前記可動型の間の空間を埋めるように変形させる工程と、
前記固定型及び前記可動型のうち前記樹脂シートの前記湾曲部の近傍及び前記樹脂パイプの下端部の近傍を冷却して、前記可撓性ドレンの土台部及び筒状部を一体的に結合させる工程と、
冷却された前記可撓性ドレンの前記筒状部の外周面に、前記筒状部の外径とほぼ同じ内径を有し、所定の長さに切断された可撓性を有するホース部を嵌合させ、接着固定する工程とを備えたことを特徴とする可撓性ドレンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水などを排出するために用いられる樹脂製のドレン(ドレインともいう)、特に、可撓性を有し、既存の配管に差し込んで使用されるドレンに関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅、オフィスビル、商業施設、工場、倉庫などの建造物の屋上、屋外に面した廊下やバルコニー、トイレや厨房の床などには、排水溝及びそれに連通した配水管が設置されている。排水溝や屋上床面には、防水のために塩化ビニルなどの樹脂が塗布されている。また、配水管は、金属や樹脂で製造され、あらかじめ建造物に設置されている。配水管は、垂直方向に設置された垂直管と、水平方向に設置され、排水溝と垂直管とを連通する水平管などで構成され、垂直管と水平管とはエルボで連結されている。可撓性ドレンは、排水溝、水平管、エルボ及び垂直管の補修などのために使用されるものである(非特許文献1参照)。
【0003】
図5は、可撓性ドレンの使用状態の一例を示す。一般的に、排水溝111に連通する水平管112は建造物の側壁などに埋設されており、エルボ113を介して垂直管114に連結されている。水平管112、エルボ113及び垂直管114などは、金属や塩化ビニル樹脂などで製造されているので、経年劣化によって酸化やひび割れなどが生じ、漏水の原因となる。可撓性ドレン100は、これら排水溝111、水平管112、エルボ113及び垂直管114の内側に設置されるものであり、雨水などを可撓性ドレン100を介して排出することによって、雨水などが劣化した水平管112、エルボ113及び垂直管114の内壁を伝わって流れることを防止している。
【0004】
図6は、従来の可撓性ドレン100の構成を示す。可撓性ドレン100は、例えば塩化ビニルなどの樹脂で形成されており、中央に開口105を有する平面状の土台部101と、土台部101に対して略垂直に突出する筒状部102と、筒状部102に嵌合固定されたホース部103で構成されている。土台部101と筒状部102は、例えば塩化ビニルシートをバーリング加工することによって一体的に形成されている。ホース部103は、例えば市販の可撓性ホースを所定の長さに切断したものであって、筒状部102の外周面に嵌合され、熱溶着や接着剤などによって固定されている。
【0005】
図7(a)~(c)は、可撓性ドレン100の土台部101と筒状部102をバーリング加工によって一体成形する工程の一例を示す。図7(a)に示すように、バーリング加工の金型120は、中央に断面が円形の貫通孔121aが形成された固定型121と、貫通孔121aに対向するように設けられ、垂直方向に上下動する先端が円錐状に形成された可動型(ポンチ)122で構成されている。可撓性ドレン100の土台部101と筒状部102の材料としては、中央に円形の下孔131aが形成された、例えば塩化ビニル等の樹脂シート131を、下孔131aと貫通孔121aの中心が一致するように固定型121上に載置する。次に、固定型121及び可動型122を所定温度に過熱した状態で、図7(b)に示すように、可動型122を徐々に下降させ、樹脂シート131に形成された下孔131aを徐々に押し拡げる。そして、図7(c)に示すように、可動型122を固定型121の貫通孔121aに完全に押し込み、固定型121の貫通孔121aの内周面と可動型122の外周面と間に樹脂シート131を挟み込み、固定型121及び可動型122を冷却させ、樹脂シート131を固化させる。それによって、可撓性ドレン100の土台部101と筒状部102が一体的に形成される。
【0006】
ところで、このようなバーリング加工による可撓性ドレン100の土台部101と筒状部102は、加工が容易であるというメリットを有する反面、バーリング加工の際の割れを防止するために、塩化ビニルシート131として可塑剤を多く含む硬度の低い(軟度の高い)ものを使用する必要がある。ところが、可撓性ドレン100の土台部101の材料として可塑剤を多く含む硬度の低い塩化ビニルシートを使用すると、経年劣化などによって反りが生じ、安定した形状を維持することができない。また、バーリング加工による場合、可撓性ドレン100の土台部101に対する筒上部102の高さHは、筒上部102の内径、すなわち開口105の内径Dと下孔131の内径dとの差の1/2を超えることはできず、筒上部102の高さHは開口105の内径Dの4割程度が限界である。そのため、土台部101の筒状部102とホース部103の接合面積を十分に確保することができず、ホース部103が筒状部102から外れやすいという問題が生じる。具体的には、可撓性ドレン100を設置する際、配水管の水平管112の長さが短く、ホース部103が急角度で曲げられる場合、曲げ応力がホース部103と筒状部102の接合部に加えられるため、ホース部103が筒状部102から外れてしまう虞がある。また、経年劣化により接着剤の接着力が低下した場合にも同様に、大量の雨水などが流れた場合には、ホース部103が筒状部102から外れてしまう虞がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】https://www.raku-drain.com/products/list.php?category_id=35
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来例の問題を解決するためになされたものであり、経年劣化などによる土台部の変形が少なく、ホース部を土台部の筒上部から外れにくくした可撓性ドレン及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る可撓性ドレンは、中央に開口を有する平面状の土台部と、前記土台部の前記開口の周囲に設けられ前記土台部に対して略垂直に突出する筒状部と、前記筒状部の外周面に嵌合され固定された可撓性を有するホース部を備え、劣化した既存の配管に差し込んで使用される可撓性ドレンであって、前記土台部は可撓性を有する樹脂シートに前記開口を形成したものであり、前記筒状部は、樹脂で形成された筒状部材を前記土台部の前記開口の周囲に固定したものであり、前記土台部に対する前記筒状部の高さは前記開口の内径の1/2以上であり、前記土台部は排水溝の表面の凹凸に密着するように変形された状態で固定され、前記筒状部及び前記ホース部は前記既存の配管に差し込まれ、前記ホース部は、前記既存の配管の長さと同等の長さを有し、前記土台部の前記開口のエッジには、前記筒状部側に突出した湾曲部が形成されており、前記筒状部の端部が前記湾曲部と溶着されている、ことを特徴とする。
【0011】
また、前記土台部に対する前記筒状部の高さは前記開口の内径と同じかそれよりも大きくしても良い。
【0012】
前記筒状部は、前記樹脂シートと同じかそれよりも硬度の高い樹脂で形成されていてもよい。
【0013】
また、本発明に係る可撓性ドレンの第1の製造方法は、
可撓性を有する樹脂シートに所定の内径を有する開口を形成する工程と、
前記開口を固定型に設けられた塔状部と嵌合させ、前記樹脂シートを前記固定型のテーブル上に載置し、前記固定型の前記塔状部の下端に形成された凹曲面に沿わせて前記開口のエッジに湾曲部を形成する工程と、
前記樹脂シートの前記湾曲部の上から前記塔状部に対して所定の隙間を有する可動型の嵌合孔を嵌合させる工程と、
前記固定型の前記塔状部近傍及び前記可動型の前記嵌合孔の近傍を加熱し、前記固定型の塔状部と前記可動型の前記嵌合孔の隙間に溶融した樹脂を流し込み、前記固定型の塔状部と前記可動型の前記嵌合孔の隙間に前記筒状部を形成する工程と、
前記固定型及び前記可動型を冷却して、前記可撓性ドレンの土台部及び筒状部を一体的に結合させる工程と、
冷却された前記可撓性ドレンの前記筒状部の外周面に、前記筒状部の外径とほぼ同じ内径を有し、所定の長さに切断された可撓性を有するホース部を嵌合させ、接着固定する工程とを備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る可撓性ドレンの第2の製造方法は、
可撓性を有する樹脂シートに所定の内径を有する開口を形成する工程と、
前記開口を固定型に設けられた塔状部と嵌合させ、前記樹脂シートを前記固定型のテーブル上に載置し、前記固定型の前記塔状部の下端に形成された凹曲面に沿わせて前記開口のエッジに湾曲部を形成する工程と、
前記樹脂シートの上から、前記所定の内径を有し、所定の長さに切断された樹脂パイプを前記固定型の前記塔状部に嵌合させる工程と、
前記樹脂シートの前記湾曲部及び前記樹脂パイプの外周面に、下端エッジ部に丸め又は面取りが形成された可動型の嵌合孔を嵌合させる工程と、
前記固定型及び前記可動型のうち前記樹脂シートの前記湾曲部の近傍及び前記樹脂パイプの下端部の近傍を局部的に加熱し、前記樹脂シートの前記湾曲部の近傍及び前記樹脂パイプの下端部の近傍を溶融させる工程と、
前記樹脂シートの前記湾曲部の近傍及び前記樹脂パイプの下端部の近傍がそれらの樹脂材料の融点に達したときに、加熱されていない前記樹脂パイプの上端を下向きに加圧して、前記樹脂シートの前記湾曲部の近傍及び前記樹脂パイプの下端部の前記樹脂材料を混合させ、前記固定型と前記可動型の間の空間を埋めるように変形させる工程と、
前記固定型及び前記可動型のうち前記樹脂シートの前記湾曲部の近傍及び前記樹脂パイプの下端部の近傍を冷却して、前記可撓性ドレンの土台部及び筒状部を一体的に結合させる工程と、
冷却された前記可撓性ドレンの前記筒状部の外周面に、前記筒状部の外径とほぼ同じ内径を有し、所定の長さに切断された可撓性を有するホース部を嵌合させ、接着固定する工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記構成によれば、可撓性ドレンの土台部と筒状部がそれぞれ別の部材で構成されているので、従来のバーリング加工によりこれら土台部と筒状部を一体的に形成する場合と比較して、土台部に対する筒状部の高さの制約がなくなる。そのため、可撓性ドレンが使用される状況に応じて筒状部の長さを選択することができ、筒状部とホース部との接合面積を大きくすることができ、結合強度を向上させることができる。また、バーリング加工を施す必要がなくなるので、従来の可撓性ドレンの土台部及び筒状部の材料と比較して、土台部及び筒状部の材料として、より硬度の高い材料を用いることができる。可撓性ドレンの土台部及び筒状部の材料として塩化ビニルを用いる場合、添加する可塑剤の量を少なくすることができ、経年劣化などによる反りが生じにくくなり、安定した形状を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る可撓性ドレンの構成を示す断面図。
図2】上記可撓性ドレンの土台部及び筒状部を熱溶着するための金型の構成を示す断面図。
図3】上記金型を用いて土台部及び筒状部を熱溶着する第1の方法の工程図。
図4】上記金型を用いて土台部及び筒状部を熱溶着する第2の方法の工程図。
図5】可撓性ドレンの使用状況を示す図。
図6】従来の可撓性ドレンの構成を示す断面図。
図7】従来の可撓性ドレンの土台部及び筒状部を一体成形する工程図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る可撓性ドレンについて説明する。図1に示すように、本実施形態に係る可撓性ドレン1は、従来の可撓性ドレン100と同様に、中央に円形の開口15を有する平面状の土台部11と、土台部11の開口15の周囲に設けられ、土台部11に対して略垂直に突出する筒状部12と、筒状部12の外周面に嵌合固定されたホース部13を備えている。しかしながら、土台部11と筒状部12は、それぞれ別部材で構成され、土台部11と筒状部12を熱溶着して結合固定されている。図1中、符号14は土台部11と筒状部12の接合面を示し、符号11bは後述する土台部11の湾曲部11aの上端を示す。
【0018】
土台部11は、例えば塩化ビニルシートなどの可撓性を有する樹脂シート2(図3参照)に円形の開口15を形成したものであり、開口15は、例えばプレス加工などによって形成されている。筒状部12は、開口15の内径とほぼ同じ内径を有する、例えば塩化ビニルなどの樹脂で形成された筒状部材4を、土台部11の開口15の周囲に固定したものである。筒状部材4として、例えば、金型に溶融した樹脂を流し込んで製造することができるし、あるいは、市販の塩化ビニルパイプを所定の長さに切断して製造することができる。
【0019】
図5に示すように、土台部11は、排水溝111の表面の凹凸に密着するように変形された状態で固定(接着)される。そのため、土台部11の材料としては、ある程度の軟性を有していることが好ましいが、バーリング加工されないので、従来の可撓性ドレン100の土台部101の材料よりも硬度の高いものを用いることができる。それによって、この可撓性ドレン1が排水溝111に設置され、土台部11が変形された状態でも、経年劣化などによって反りが生じたりすることが少なくなり、安定した形状を維持することができる。塩化ビニルの硬度(又は軟度)は、可塑剤の種類や量を適宜選択することによって、任意に設定することができる。この場合、従来の可撓性ドレン100の土台部101の材料よりも可塑剤の添加量を少なくすればよい。また、土台部11を変形させる場合、温風ヒータや赤外線ヒータなどを用いて軟化させるようにしてもよい。
【0020】
一方、筒状部12は、土台部11と異なり、ほとんど変形されることはなく、むしろホース部13との結合強度を考慮すると、硬度の高い樹脂材料を用いることが好ましい。筒状部12は土台部11に熱溶着されるので、土台部11と同じ塩化ビニルを用いてもよいし、塩化ビニルの添加する可塑剤の量を土台部11の材料よりも少なくして、硬度の高い材料を用いてもよい。筒状部12は、上記のように、射出成形のように金型に溶融した樹脂を流し込んで製造したり、市販の塩化ビニルパイプを切断して製造したりすることができ、バーリング加工によって製造される従来の可撓性ドレン100の筒状部102のように高さの制限を受けることはない。そのため、筒状部12の高さHを、開口15の内径Dの1/2以上、より好ましくは開口15の内径Dと同等かそれ以上とすることができる。土台部11の開口の内径(又は筒状部12の内径)Dは、可撓性ドレン1が設置される排水溝111の深さや配管の内径などに応じて複数種類用意することが好ましい。例えば、JIS規格などで規定されている市販の塩化ビニルパイプの規格に応じて、開口15の内径をそれらよりも一回り小さい内径とすればよい。
【0021】
ホース部13は、筒状部12よりも硬度の低い樹脂材料、例えばPVA(ポリビニルアルコール)などで形成することができる。具体的には、リング状の芯を硬質のPVAで形成し、一定間隔に配列された芯に軟質のPVAシートを被覆することによって、蛇腹状に形成されている。ホース部13の長さは、可撓性ドレン1の用途に応じて任意に選択することができるが、市販のホースを用いて、例えば300mm~1500mmの間で一定長さごとに複数種類提供し、ユーザーにおいて任意の長さに切断するようにしてもよい。また、劣化した既存の配水管を補修する場合、ホース部13の長さを配水管の長さと同等(例えば3m以上)としてもよい。
【0022】
次に、上記可撓性ドレン1の土台部11と筒状部12を熱溶着するための金型を図2に、熱溶着の行程を図3及び4に示す。金型20は、固定型21と可動型22で構成されている。固定型21のテーブル21aの中央部には、土台部11の開口15の内径に対応した外径を有する円柱状の塔状部21bが設けられている。塔状部21の下端、すなわち、テーブル21aと塔状部21bの境界部には、徐々に外径が大きくなるように形成された凹曲面21cが形成されている。一方、可動型22の中央部には、可撓性ドレン1の筒状部12の外径とほぼ同じで所定の公差分だけ大きい内径を有する嵌合孔22aが形成されている。また、嵌合孔22aの下端エッジ部には、丸め又は面取り22bが形成されている。図2には描かれていないが、可動型22の嵌合孔22aの上面は、後述する筒状部材4の上端に当接し、筒状部材4を下向きに加圧するように構成されている。また、固定型21及び可動型22の内部にはヒータや冷却パイプなどが設けられており、固定型21の凹曲面21cの近傍及び可動型22のうち凹曲面21cに対向する部分の近傍を局部的に加熱及び冷却するように構成されている。
【0023】
図3(a)~(c)は、可撓性ドレン1の土台部11と筒状部12を熱溶着するための第1の方法を示す。図3(a)に示すように、あらかじめプレス加工などによって樹脂シート2に形成された開口15を固定型21の塔状部21bに嵌合させる。樹脂シート2が固定型21のテーブル21a上に載置されると、樹脂シート2の可撓性によって開口15の周囲が凹曲面21cに沿って上向きに湾曲される(湾曲部を符号11aで示す)。続けて、図3(b)に示すように、可動型22を下降させ、可動型22の嵌合孔22aを固定型21の塔状部21bの外周面に嵌合させる。このとき、固定型21の塔状部21bの外周面と可動型22の嵌合孔22aの内周面との間には、筒状部12の厚みに相当する隙間が形成されている。そして、固定型21の塔状部21b近傍及び可動型22の嵌合孔22aの近傍を加熱し、固定型21の塔状部21aと可動型22の嵌合孔22aの隙間に溶融した樹脂3を流し込む。そして、図3(c)に示すように、固定型21の塔状部21aの頂上部まで溶融した樹脂3を注入した後、固定型21及び可動型22を冷却して、可動型22の嵌合孔22aの隙間に筒状部12を形成する。溶融した樹脂3が冷却され、固化されると、可撓性ドレン1の土台部11と筒状部12が一体的に結合される。
【0024】
この第1の方法は、射出成形におけるインサート成形に準じており、一体的に結合された土台部11と筒状部12が外れにくくするために、筒状部12を形成するための溶融した樹脂3が樹脂シート2の内部に割り込むように、樹脂シート2に開口15を形成する際に開口15の周囲に微小な孔や凹凸を形成してもよい。
【0025】
図4(a)~(c)は、可撓性ドレン1の土台部11と筒状部12を熱溶着するための第2の方法を示す。図4(a)に示すように、樹脂シート2に形成された開口15を固定型21の塔状部21bに嵌合させる。続けて、所定長さに切断された筒状部材4を塔状部21bに嵌合させる。さらに、図4(b)に示すように、筒状部材4の下端を樹脂シート2の湾曲部の端面に当接させた後、可動型22を下降させ、可動型22の嵌合孔22aを筒状部材4の外周面に嵌合させる。そして、図4(c)に示すように、可動型22の下端が固定型21のテーブル21a上に載置された樹脂シート2に当接するまで下降させ、その状態で、固定型21の凹曲面21cの近傍及び可動型22のそれに対向する部分の近傍を局部的に加熱する。
【0026】
固定型21及び可動型22に囲まれた樹脂シート2及び筒状部材4が局部的に加熱され、融点に達すると、加熱されていない筒状部材4の上端を下向きに加圧する。それによって、樹脂シート2及び筒状部材4のうち溶融した部分が圧縮され、互いに混ざり合い、固定型21と可動型22の間の空間を埋めるように変形される。上記のように、可動型22の嵌合孔22aの下端エッジ部には丸め又は面取り22bが形成されているので、樹脂シート2及び筒状部材4ののうち溶融した部分が比較的大きな空間で混ざり合い、樹脂シート2及び筒状部材4の接合部14の接合面積を広く、且つ接合部14を厚くすることができる。
【0027】
筒状部材4の上端4aを下向きに加圧した後、固定型21及び可動型22のヒータによる加熱を停止し、冷却パイプに冷却水を流して樹脂シート2及び筒状部材4の接合部14を冷却する。そして、可動型22を上昇させ、結合された樹脂シート2と筒状部材4、すなわち一体的に結合された土台部11と筒状部12を金型20から取り外す。そして、筒状部12の外周面に接着剤を塗布し、所定の長さに切断されたホース部13の一端を筒状部12の外周面に嵌合させる。接着剤が乾燥し、ホース部13が筒状部12に嵌合固定されることによって、可撓性ドレン1が完成される。
【0028】
実際に、土台部11の開口15の内径(又は筒状部12の内径)を60mmとし、筒状部12の高さを45mmとし、樹脂シート2の厚み及び筒状部材4の厚みを2mmとして、土台部11と筒状部12を熱溶着して、可撓性ドレン1を試作し、接合部14を切断して断面を観察したところ、土台部11に対する筒状部12の高さ方向における接合部14の寸法hは10~12mm、接合部14の厚みは2mmであった。従来のバーリング加工によって土台部111と筒状部112を一体的に成形する場合、土台部11の開口15の内径(又は筒状部12の内径)を60mm、下孔131aの内径を10mmとすると、土台部111に対する筒状部112の高さHはせいぜい15~20mm程度である。従って、単純に比較しても、本発明に係る可撓性ドレン1の構成によれば、筒状部12とホース部13の接合面積として、従来の可撓性ドレンに対して約3倍の接合面積を得ることができる。
【0029】
このように本発明に係る可撓性ドレン1の構成によれば、可撓性ドレン1の土台部11と筒状部12がそれぞれ別の部材で構成されているので、従来のバーリング加工によりこれら土台部111と筒状部112を一体的に形成する場合と比較して、土台部11に対する筒状部12の高さの制約がなくなる。そのため、可撓性ドレン1が使用される状況に応じて筒状部12の長さを選択することができ、筒状部12ホース部13との接合面積を大きくすることができ、結合強度を向上させることができる。また、バーリング加工を施す必要がなくなるので、従来の可撓性ドレン100の土台部111及び筒状部112の材料と比較して、土台部11及び筒状部12の材料として、より硬度の高い材料を用いることができる。可撓性ドレン1の土台部11及び筒状部12の材料として塩化ビニルを用いる場合、添加する可塑剤の量を少なくすることができ、経年劣化などによる反りが生じにくくなり、安定した形状を維持することができる。また、可撓性ドレン1の土台部11及び筒状部12の材料として、それぞれ添加された可塑剤の量が異なる材料を使用することができる。特に、筒状部12の材料として、可塑剤の少ない硬質の材料を用いることにより、筒状部12がほとんど変形されなくなり、筒状部12とホース部13の接合部が強固に固定され、接着剤が経年劣化したとしても、ホース部13が筒状部12から外れにくくなる。
【符号の説明】
【0030】
1 可撓性ドレン
2 樹脂シート
3 (溶融した)樹脂
4 筒状部材
11 土台部
11a 湾曲部
12 筒状部
13 ホース部
14 接合面
15 開口
20 金型
21 固定型
21a テーブル
21b 塔状部
21c 凹曲面
22 可動型
22a 嵌合孔
22b 丸めまたは面取り
D 開口又は筒状部の内径
H 土台部に対する筒状部の高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7