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特許7132474廃プラスチック熱分解方法及び廃プラスチック熱分解装置並びに廃プラスチック油化システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】廃プラスチック熱分解方法及び廃プラスチック熱分解装置並びに廃プラスチック油化システム
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/10 20060101AFI20220831BHJP
   C10G 1/10 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
C08J11/10
C10G1/10 ZAB
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018193851
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020050853
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】518254230
【氏名又は名称】株式会社RTA
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 和行
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-075294(JP,A)
【文献】特開平08-041464(JP,A)
【文献】実開昭56-017120(JP,U)
【文献】実開昭58-114230(JP,U)
【文献】特開平10-088150(JP,A)
【文献】特開2007-247962(JP,A)
【文献】特開平09-291290(JP,A)
【文献】特開2004-323620(JP,A)
【文献】特開2001-247874(JP,A)
【文献】米国特許第06193780(US,B1)
【文献】米国特許第04038152(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0223268(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/00-11/28
B29B 17/00-17/04
C10G 1/10
B65G 65/30-65/48
B09B 1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項10】
前記アルカリスプレー装置は、中和槽内を、前記分解ガスが下向きに流れる上流室と上向きに流れる下流室とに分け、これら上流室と下流室との両方に噴霧ノズルからアルカリ液を噴霧する構成である請求項9記載の廃プラスチック油化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料である廃プラスチックを熱分解する廃プラスチック熱分解方法及び装置と、熱分解した分解ガスを油化する廃プラスチック油化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、粉砕された廃プラスチックを熱分解する廃プラスチック熱分解装置、及びそれによる分解ガスを油化する廃プラスチック油化システムとして、特許文献1記載のものを提供している。
これに記載の廃プラスチック熱分解装置では、触媒と混合した原料を撹拌しながら分解蒸発槽内の周壁近くで底壁上へと送り込む投入用撹拌機と、これにて投入された原料と触媒とを分解蒸留槽の底部上で撹拌する分解用撹拌機とを備え、この分解用撹拌機による撹拌は、その第1の撹拌部により分解蒸発槽内の周壁に沿って底部上で撹拌し、第2の撹拌部では、中央の残渣排出口へ寄って行くように底部上を撹拌するようにしている。
また、投入用撹拌機の前段で原料を投入する原料投入装置には、定量ずつ連続投入するためにロータリーバルブを使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-75294号公報
【文献】特許第3435399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の廃プラスチック熱分解装置では、分解蒸発槽の底部ばかりでなく、なるべく熱伝導面積を広くしようとの意図から、周壁にも原料及び触媒を接触させるために、分解用撹拌機の第1撹拌部により原料及び触媒を周壁に沿って撹拌するようにしているが、それによる熱伝導面積の拡張は、原料及び触媒が重力によりどうしても落ちてくるので、想定したほどには効果をあげられなかった。
特許文献1の廃プラスチック熱分解装置では、ロータリーバルブは、粉砕された廃プラスチックを一時的に貯溜する原料投入ホッパと、廃プラスチック熱分解装置の分解蒸発槽との間に配管接続して配置されている。
ロータリーバルブは、放射状の羽根板を有するローターがケーシング内を回転することにより、ケーシングの入口から羽根板同士の間のポケットに入り込んだ原料をケーシングの排出口へと回送するので、密閉性構造の輸送手段ではある。
しかし、分解蒸発槽内で廃プラスチックを高温溶解することにより生じた蒸発ガスは、熱風となってロータリーバルブを通り抜け原料投入ホッパまで逆流して来る。そのため、冷えたところで結露して液化し、そこに粉砕されている廃プラスチックが付着し(特に、比重の軽い発泡スチロールは顕著)、これが連続すると配管やロータリーバルブのポケットを閉塞し、定量投入できなくなる恐れがあった。
【0005】
ところで、廃プラスチックには、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチロール(PS)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)などが混在している。そのうち、酸性分を含むもの、特に廃棄量の比率が増える傾向にあるPETはテレフタール酸を含み、PVCは塩素系プラスチックであるため、上記のような廃プラスチック油化システムにおける配管や機器などを腐食ないし閉塞させる問題がある。また、分解ガスに含まれるタール分や熱分解処理過程で混入する触媒成分も同じような問題がある。
【0006】
特許文献2に記載の技術では、廃プラスチックの熱分解で生じるガス中の酸性分(PETの場合は安息香酸、PVCの場合は塩化水素)による腐食を防止するために、粉砕した廃プラスチックに対して熱分解処理以前に消石灰や生石灰などのアルカリ性物質を添加している。しかし、アルカリ性物質添加を事前に行うことから、加熱脱塩素装置内で脱塩素処理をしてから熱分解処理をする必要があり、また廃プラスチック中のPETおよびPVCの含有量に応じてアルカリ性物質の添加量を調整する必要もある。
【0007】
本発明の第1の目的は、分解蒸発槽に投入された原料及び触媒を接触させて加熱するに当たり、その接触による熱伝導面積を分解蒸発槽内の空間を有効利用して広範囲に確保できるとともに、原料及び触媒を、投入から排出するまでの間に可及的長時間にわたり均等な加熱環境で加熱できるようすることで、原料及び触媒に対する熱効率の向上と熱分解反応の均質化が図れるようにすることにある。
第2の目的は、原料投入するに当たり、ロータリーバルブでの原料送りの支障を単純な構造でありながら効果的に防止できるようにすることにある。
第3の目的は、熱分解で生じた分解ガスに含まれるテレフタール酸や塩化水素などの酸性分を簡単に中和できるとともに、分解ガスに含まれるタール分や触媒成分も同時に分離できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の目的を達成のため本発明による廃プラスチック熱分解方法は、原料の廃プラスチックに触媒を混合して加熱することで熱分解する分解蒸発槽を上位撹拌部と中位撹拌部と下位撹拌部とに区画し、上位撹拌部では、分解蒸発槽へ投入された原料を中央へ寄せながら撹拌して中位撹拌部へ落下させ、中位撹拌部では、原料を周縁へ寄せながら撹拌して下位撹拌部へ落下させ、下位撹拌部では、原料を中央へ寄せながら回送して撹拌し、残渣を中央から槽外へ排出することを特徴とする。
これを主要形態とした第2の形態の方法は、前記上位撹拌部の撹拌機と前記中位撹拌部の撹拌機と前記下位撹拌部の撹拌機とを同軸回転させることを特徴とする。
第3の形態の方法は、前記上位撹拌部の撹拌機は、原料をターンテーブル上に載せ、このターンテーブルと固定の撹拌部材との協働により原料を中央へ寄せながら撹拌し、前記中位撹拌部の撹拌機は、原料をターンテーブル上に載せ、このターンテーブルと固定の撹拌部材との協働により原料を周縁へ寄せながら撹拌し、前記下位撹拌部の撹拌機は、前記分解蒸発槽の底部上で原料を中央へ寄せながら回送して撹拌することを特徴とする。
【0009】
このような方法を実施する本発明による廃プラスチック熱分解装置は、原料の廃プラスチックに触媒を混合して加熱することで熱分解する分解蒸発槽を上位撹拌部と中位撹拌部と下位撹拌部とに区画し、上位撹拌部には、投入された原料をターンテーブル上に載せ、このターンテーブルと固定の撹拌部材との協働により原料を中央へ寄せながら撹拌して前記中位撹拌部へ落下させる撹拌機を設け、中位撹拌部には、落下してきた原料をターンテーブル上に載せ、このターンテーブルと固定の撹拌部材との協働により原料を周縁へ寄せながら撹拌して前記下位撹拌部へ落下させる撹拌機を設け、下位撹拌部には、落下してきた原料を前記分解蒸発槽の底部上で中央へ寄せながら回送して撹拌する撹拌機を設け、これら三段の撹拌機を同軸回転させることを特徴とする。
これを主要構成とする第2の形態の廃プラスチック熱分解装置は、前記分解蒸発槽内に投入された原料が前記上位撹拌部の前記撹拌部材付近に堆積するのを防止するため、上位撹拌部の前記ターンテーブルと同時回転するスクレーパーを設けたことを特徴とする。
第3の形態の廃プラスチック熱分解装置は、前記下位撹拌部の撹拌機で前記分解蒸発槽の底部中央に収斂されてくる残渣を槽外へ排出する残渣排出スクリュウを備えたことを特徴とする。
【0010】
第2の目的達成を意図した本発明による廃プラスチック熱分解装置は、前記分解蒸発槽へ原料の廃プラスチックをロータリーバルブにて投入する廃プラスチック投入装置と、前記ロータリーバルブの排出口の下方であって、そのローターの回転方向の下流側から、ローターの羽根板の間のポケットに気体噴入する気体噴入手段とを設ける。
これを主要構成とした第2の形態の廃プラスチック熱分解装置は、前記ロータリーバルブからの原料に触媒を混入させる触媒供給装置を備える。
【0011】
第3の目的達成を意図した本発明による廃プラスチック油化システムは、前記廃プラスチック熱分解装置の他に、その分解蒸発槽から蒸発して来た分解ガスにアルカリ液を噴霧するアルカリスプレー装置を備えたことを特徴とする。
これを主要構成とした第2の形態の油化システムは、前記アルカリスプレー装置の構成を特定し、その中和槽内を、前記分解ガスが下向きに流れる上流室と上向きに流れる下流室とに分け、これら上流室と下流室との両方に噴霧ノズルからアルカリ液を噴霧する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の廃プラスチック熱分解方法及び装置では、原料及び触媒は分解蒸発槽内に投入されてから排出するまでの間に、上位撹拌部では中央へ向かう求心方向へ、中位撹拌部では逆に遠心方向へとそれぞれ寄せる向きを変えて撹拌してから、下位撹拌部では再び中央へ向かう求心方向へ寄せながら、回送して撹拌する。つまり撹拌しながらの求心方向への移送と、撹拌しながらの遠心方向の移送とを交互に行うので、接触させて加熱する熱伝導面積が従来に比べて格段に増えるとともに、その熱伝導時間も格段に延び、またこのような移送方向の反転により撹拌ムラも少なくなるので、従来に比べて原料及び触媒に対する熱効率の飛躍的向上と熱分解反応の均質化が図れる。
上・中・下の撹拌機を同時回転することにより、一つの動力源で三様の撹拌を効率的に行える。
分解蒸発槽内に投入された原料は、上位撹拌部の撹拌部材付近に止まって堆積する傾向となるが、そのターンテーブルと同時回転するスクレーパーで除去することができる。
下位撹拌部の中央部へ収斂されて来る残渣は、残渣排出スクリュウにて自動的に排出して槽外で回収できる。
【0013】
ローターのポケットに入り込んだ原料の廃プラスチックは、ローターの回転に伴い、ロータリーバルブの排出口に臨んだポケットから次々に落ちて行くが、本発明の装置によると、それと同時に、ローターの回転方向の下流側のポケットには排出口の下方から気体が噴入されるため、そのポケット内に残っている廃プラスチックは排出口へと強制的に吹き飛ばれるとともに、廃プラスチック分解装置からの蒸発ガスの熱風が押し戻され、さらにローターを冷却することもできる。それにより、蒸発ガスの熱風がロータリーバルブ内に入らないように遮断できるとともに、ローターの羽根板への廃プラスチックの付着とポケット内の残留を抑制できるので、配管やロータリーバルブのポケットの閉塞を効果的に防止し、廃プラスチックの定量投入を確実に維持することが可能となる。
ロータリーバルブからの廃プラスチックと触媒供給装置からの触媒を、混合させながら分解蒸発槽内へ投入できる。
【0014】
本発明による廃プラスチック油化システムによると、分解蒸発槽から蒸発して来た分解ガスにアルカリ液を噴霧するので、分解ガス中の酸性分は均質に中和されるとともに、分解ガスに混入しているタール分や触媒成分も除去されるため、後段の配管や機器の腐食および閉塞を有効に防止できる。
その第2の形態によると、アルカリスプレー装置の中和槽に入った分解ガスは、上流室を下向きに流れながら、その流速を増すようにアルカリ液を噴霧され、下流室では方向を変えて上向きに流れながら、その流れに逆らうようにアルカリ液を噴霧されるので、中和処理を満遍なく均等に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の廃プラスチック熱分解装置の簡略断面図である。
図2】その廃プラスチック投入装置と触媒供給装置の正面図である
図3】同廃プラスチック投入装置の側面図である。
図4】同廃プラスチック投入装置におけるロータリーバルブの機構図である。
図5】廃プラスチック熱分解装置の上位撹拌部の平面図である。
図6】同じく中位撹拌部の平面図である
図7】同じく下位撹拌部の平面図である
図8】下位撹拌部の撹拌機の部分断面図である。
図9】本発明の廃プラスチック油化システムにおけるアルカリスプレー装置の正面図である。
図10】同じく側面図である。
図11】その機能説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照すると、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチロール(PS)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、発泡スチロールなどが混在した廃プラスチックは、破砕、減容、冷却などの前処理をされてから、粉砕した廃プラスチックとして廃プラスチック投入装置1の原料投入ホッパ(同図では省略)へエアー輸送され、ここに一時貯溜される。以下、これを「原料」と称する。
【0017】
図2図3及び図4に廃プラスチック投入装置1の一実施例を示す。原料投入ホッパ2内の原料は、その下側に設置したパドルスクリューコンベア3から送り出されてロータリーバルブ4内に入り、これによって廃プラスチック分解装置5の分解蒸発槽6へ後記のように定量ずつ投入される。
【0018】
ロータリーバルブ4は、パドルスクリューコンベア3の横長ケーシング3aの先端部の下側に接続管7により接続されている。ロータリーバルブ4の下側には手動式ストップバルブ8が接続され、このストップバルブ8の下側に投入管9が接続されて分解蒸発槽6の投入口へ続いている。これらの接続経路への外気浸入を防止するため、接続管7の途中に接続した不燃性ガス送入配管10から窒素ガス等の不燃性ガスが送入される。また、分解蒸発槽6からの熱を遮断するため、投入管9の外周に、水を循環する水冷式熱遮断器11が設置されている。
【0019】
図4にロータリーバルブ4を簡略化して示すように、ロータリーバルブ4は、複数枚の羽根板29を放射状に設けたローター30が、図示しないモータにてケーシング31内を回転することで、羽根板29同士の間のポケット32が、ケーシング31の上向きの入口33と下向きの排出口34とに順次切り替わって対向して行く構成となっている。この例では、羽根板29が8枚、ローター30の回転方向が時計回り、ポケット32が時計回りにA、B、C、D、E、F、G、Hの8室で、上向きとなった2つのポケット32が入口33に対向したとき、下向きとなった2つのポケット32が排出口34に対向する。
【0020】
ケーシング31には、その排出口34からポケット32内に上向きに気体噴射する噴射ノズル35が設置され、これに気体供給管36が接続されており、この気体供給管36を通じて空気または窒素ガス等の不燃性ガスが外部から圧力供給される。排出口34には上記のように下向きとなった2つのポケット32が対向するが、噴射ノズル35の設置位置と噴射方向は、その2つのポケット32のうちの回転方向下流側の一つのみ(図4ではFとしたポケット)に気体噴射するように設定されている。
【0021】
このようにしたロータリーバルブ4によると、入口33に対向したAとBの2つのポケット32には、接続管25からの粉砕原料が落ち入り、排出口34に対向したEとFの2つのポケット32のうちの回転方向上流側のEでは、それまで収容していた原料が排出口34から落ちて行き、回転方向下流側のFには、噴射ノズル35から空気または窒素ガス等の不燃性ガスが噴射されることになる。そして、このような動作がローター30の回転に伴い順次切り替わる。
【0022】
Fのポケット32では、収容していた原料が落ちた直後に空気または窒素ガス等の不燃性ガスが噴射されるので、原料が残っていても排出口34へと強制的に吹き飛ばされるとともに、分解蒸発槽6からの蒸発ガスの熱風が押し戻され、さらにローター30を冷却することもできる。それにより、蒸発ガスの熱風がロータリーバルブ4内に入らないように遮断できるとともに、羽根板29への原料の付着とポケット32内の残留を、発泡スチロールが含まれていても抑制できるので、配管(接続管7等)やポケット32の閉塞を効果的に防止し、原料の定量投入を確実に維持することができる。
【0023】
ロータリーバルブ4の下側にストップバルブ8を接続してあるので、廃プラスチック熱分解装置5を稼働する際に、分解蒸発槽6内が分解可能条件になるまでは、ストップバルブ8閉じておくことにより、分解蒸発槽6からの熱風をここで確実に遮断することができる。
【0024】
一方、エアー輸送されて来た触媒投入ホッパ12内の触媒も、触媒搬送スクリュウ13にて投入管7の途中からその中へ送り込まれ、ロータリーバルブ4からの原料と共に分解蒸発槽6へ投入される。その投入位置は分解蒸発槽6の周縁に近いところにしてある。
【0025】
次に、廃プラスチック熱分解装置5について説明する。
その分解蒸発槽6は、天井部6aと円筒形の周壁部6bと底部6cとで密閉されたドラム形で、周壁部6bの外周に巻き付け配線された電気ヒータ14と、底部6cの下面に円状に配線された電気ヒータ15により外側から加熱される。
分解蒸発槽6内は、上位撹拌部16Aと中位撹拌部16Bと下位撹拌部16Cとに区画した上・中・下の3部構造になっており、これらに共通の撹拌軸17が、分解蒸発槽6の中心線に沿って貫通するように軸受けされている。そして、これを回転させる撹拌モータ18が、モータ台19を使用して天井部6a上に設置されている。
【0026】
上位撹拌部16Aは、撹拌軸17を回転軸とするターンテーブル19と、分解蒸発槽6の周壁部6bに固定した上位撹拌部材20とで上位撹拌機21が構成されている。
図5に示すように、ターンテーブル19は中央部を円形に欠如した円環状で、上記のように混合して分解蒸発槽6内に投入された原料及び触媒を載せて回転するため、撹拌軸17からの放射状アーム22にてこれに水平に支持されている。
上位撹拌部材20は、周壁部6bの内周面に求心方向へ延ばして固定支持したブラケット24と、これに間隔をおいて垂設した複数枚の板状ブレード25とで構成されている。ブラケット24の長さ方向に並列するこれらのブレード25は、その基端と撹拌軸17とを結ぶ線を求心線とすると、この求心線に対して角度をもつように傾けて垂設されている。すなわち、ターンテーブル19の回転によりその上の原料及び触媒が衝突したとき、これらが徐々に求心方向へ寄って行くように傾けてある。
その働きにより上位撹拌部材20の周辺に原料及び触媒が堆積して行くので、これを防止するため、ターンテーブル19と一体的に旋回するスクレーパー26が撹拌軸17に水平に支持されている。この支持は、撹拌軸17に固定した水平材27と、これに固定した垂直材28にて行ってある。
回転するターンテーブル19上の原料及び触媒は、上位撹拌部材20により撹拌されながら徐々に求心方向へ寄せられるが、中央部まで寄せられて来たものを中位撹拌部16Bへ落下させるため、上位ターンテーブル19の欠如した中央部は円形の落下口37となっている。
【0027】
中位撹拌部16Bは、撹拌軸17を回転軸とするターンテーブル38と、分解蒸発槽6の周壁部6bに固定した中位撹拌部材39とで中位撹拌機40が構成されている。
図6に示すように、ターンテーブル38は、周壁部6bとの間に環状の隙間を形成する円板状で、上位撹拌部16Aから落下して来た原料及び触媒を載せて回転するため、撹拌軸17からの放射状アーム41にてこれに水平に支持されている。
中位撹拌部材39は、周壁部6bの内周面に求心方向へ延ばして固定支持したブラケット42と、これに間隔をおいて垂設した複数枚の板状ブレード43とで構成されている。ブラケット42の長さ方向に並列するこれらのブレード43は、その基端と撹拌軸17とを結ぶ線を求心線とすると、上位撹拌部材20とは逆に、この求心線に対して逆向きの角度をもつように傾けて垂設されている。すなわち、中位ターンテーブル39の回転によりその上の原料及び触媒が衝突したとき、これらが徐々に遠心方向へ寄って行くように傾けてある。
回転するターンテーブル38上の原料及び触媒は、中位撹拌部材39により撹拌されながら徐々に遠心方向へ寄せられるが、周縁まで寄せられて来たものを下位撹拌部16Cへ落下させるため、ターンテーブ38と周壁部6bの間の隙間は環状の落下口44となっている。
【0028】
下位撹拌部16Cは、中位撹拌部16Bからの原料及び触媒が分解蒸発槽6の底部6c上に落ちるため、下位撹拌機45がこの底部6c上で次のように最後の撹拌をする構成となっている。
下位撹拌機45は、図7に示すように、撹拌軸17に基端を固定して放射状となっている水平なアーム46のそれぞれに、下端にブレード47を有する複数本のパドル48を間隔をおいて垂直に垂設し、隣り合うパドル48の中途を水平な連結材49で連結補強して構成されている。図8に示すように、各パドル48の下端のブレード47は側面ほぼ三角形状の板片で、アーム46に対する回転方向側へ少し寄った位置関係となっている。すなわち、アーム46が延びる中心線(撹拌軸45を通る直径線C-C)よりも、下位撹拌機45の回転方向の前方へずれた位置関係になっている。これにより、パドル群48は原料及び触媒を徐々に求心方向へ寄せながら、底部6c上を回送させて撹拌するようになっている。このような撹拌機45による撹拌により残渣となったものが底部6cの中央部に収斂する。
【0029】
底部6cの中央には、その内外を貫通する残渣排出スクリュウ49が組み込まれており、収斂して来た残渣はこれにて槽外へ排出される。
分解蒸発槽6内の温度は天井部6aに設置した温度センサー50で検出され、電気ヒータ14・15が制御される。
【0030】
分解蒸発槽6内に投入された原料及び触媒は、上位撹拌部6Aでは、そのターンテーブル19の上面面積分の広さの接触面積をもって、上位撹拌機21で求心方向へ徐々に寄せながら撹拌して加熱される。次に、中位撹拌部6Bでは、ターンテーブル38の上面面積分の広さの接触面積をもって、中位撹拌機39で逆方向、つまり遠心方向へ徐々に寄せながら撹拌して加熱される。最後に、底部6cの上面面積分の広さの接触面積をもって、下位撹拌機45により底部6c上を回送させるとともに、逆方向、つまり徐々に求心方向へ寄せながら撹拌して加熱される。
【0031】
従って、接触加熱面積は、上位のターンテーブル19と中位のターンテーブル38と底部6cのそれぞれの上面面積分を加えた広さとなるとともに、原料及び触媒が徐々に寄って行く方向が上・中・下で交互に反転するので、接触させて加熱する熱伝導面積が従来に比べて格段に増大する。また、投入から排出までの熱伝導時間も格段に延びるとともに、移送方向が交互に反転する撹拌により撹拌ムラも少なくなるので、従来に比べて原料及び触媒に対する熱効率の飛躍的向上と熱分解反応の均質化が図れる。
【0032】
このような分解蒸発槽6内での加熱処理で発生した分解ガスは、天井部6aからの接続管54を通じてアルカリスプレー装置51へ送られ、ここで分解ガス中のテレフタール酸などの酸性分がアルカリ液の噴霧によって中和される。従って、ここでのアルカリ液噴霧による中和処理によって、原料のPETに含まれていたテレフタール酸やタール分や触媒成分などによる配管の閉塞を防止できるとともに、油化処理製品のpH調整を行うことができる。
その実施例を図9図10及び図11を参照して説明する。
【0033】
アルカリスプレー装置51の中和槽52は水平な支持管53に垂設され、この支持管53を、分解蒸発槽6の天井部6aから立ち上がる接続管54の先端にエルボ55にて接続することにより、中和槽52は天井部6a上で垂直に架設された状態となっている。従って、分解蒸発槽6で蒸発した分解ガスは、接続管54とエルボ55と支持管53とを通じて中和槽52内に流れ込むことができる。
【0034】
中和槽52は、その上端部52aが支持管53に沿った長方形の角筒形、そこから次第に変形して下端部52bが円筒形となるように曲げ加工され、上端部52aを支持管53内に突入させてこれに支持されている。
中和槽52内には、その中心線に沿って仕切り板が垂設されている。この仕切り板56の上端は支持管53の内周面まで達しているが、下端は中和槽52内の途中までで、これにより中和槽52内は、分解ガスの流れから見て上流室57aと下流室57bとに仕切られてはいるが、これら両室57a・57bは仕切り板56の下側空間57cでは合流している。
これら上流室57aと下流室57bとにアルカリ液を同時に下向きに噴霧するため、分岐配管した2つの噴霧ノズル58a・58bが支持管53に取り付けられている。
【0035】
一方、中和槽52の円筒形の下端には手動開閉弁59が接続され、またこれより少し上の円筒形部分に噴霧回収液取り出し口部60が突設されている。この噴霧回収液取り出し口部60には、下方に設置した沈殿分離槽61へ至る回収管62が接続されている。
【0036】
沈殿分離槽61内は、沈殿部と撹拌部とに二分、すなわち仕切り壁63により沈殿室67aと撹拌室67bとに仕切られている。沈殿室67a内の液は、仕切り壁63の途中に設けられた越流管68から撹拌室67bへ流れると、この撹拌室67b内で撹拌機69により撹拌されるようになっている。撹拌室67bには新たなアルカリ液が随時補充される。
撹拌室67b内の液は、循環経路となる還流管70に設けられたフィルタ71による濾過を経てポンプ72にて吸い上げられ、それから2つの分岐配管73に分かれて2つの噴霧ノズル58a・58bへ同時に還流される。2つの分岐配管73のそれぞれにはストップバルブ74a・74bが配置されている。
【0037】
このように構成されたアルカリスプレー装置51の機能について図11を参照して説明する。
中和槽52の上流室57aと下流室57bには、それぞれの噴霧ノズル58a・58bから苛性ソーダ水等のアルカリ液が下向きに噴霧されている。分解蒸発槽6より蒸発して来た分解ガスは、支持管53に入ると仕切り板56によって上流室57a中で下降流となり、上流側の噴霧ノズル58aより噴霧されているアルカリ液を浴びることで、下降する流れを強めながら酸性分を中和される。そして、中和槽52の下側空間57cで方向を変え、下流室57b中で上昇流となり、それに逆らうようにして下流側の噴霧ノズル58bより噴霧されているアルカリ液を浴びることで、上昇する流れを弱めながら酸性分を中和される。
このような分解ガスの流れ方向を変えてのアルカリ液噴霧により、中和処理が満遍なく均等に行われるとともに、分解ガス中のタール分や触媒成分なども噴霧されたアルカリ液によって効果的に捕集される。
【0038】
中和槽52の下部に溜まって来る噴霧回収液は、沈殿分離槽61の沈殿室67aに流れ落ち、ここで比重の重いタール分や触媒成分などは沈殿物75として沈殿し、中和された比重の軽い液やピッチ76は浮上する。これらの中間のところの液はほとんどがアルカリ液で、それは越流管68から撹拌室67bへ流れ、ここに随時補充される新たなアルカリ液と撹拌機69にて撹拌されながら、フィルタ71による濾過を経てポンプ72にて噴霧ノズル58a・58bへ還流され、再び噴霧される。アルカリ液の補充量を調整することにより、分解ガスのpHを任意に調整することができる。沈殿室67aに沈殿した沈殿物75は取り出されて汚泥処理される。
【0039】
アルカリ中和された分解ガスは、図示していないが特許文献1に記載してあるようなコンデンサによる冷却により分解油として取り出され、さらに蒸留処理などを経ることで、意図する品質の再生油として回収される。
【符号の説明】
【0040】
1 廃プラスチック投入装置
4 ロータリーバルブ
29 ロータリーバルブの羽根板
30 ロータリーバルブのローター
31 ロータリーバルブのケーシング
32 ロータリーバルブのポケット
33 ロータリーバルブの入口
34 ロータリーバルブの排出口
35・36 ロータリーバルブへ気体噴入する噴射ノズルと気体供給管
5 廃プラスチック分解装置
6 分解蒸発槽
6A 上位撹拌部
6B 中位撹拌部
6C 下位撹拌部
6a 分解蒸発槽の天井部
6b 分解蒸発槽の周壁部
6c 分解蒸発槽の底部
13 触媒搬送スクリュウ
19 ターンテーブル
20 上位撹拌部材
21 上位撹拌機
26 スクレーパー
38 ターンテーブル
39 中位撹拌部材
40 中位撹拌機
49 残渣排出スクリュウ
51 アルカリスプレー装置
52 中和槽
56 仕切り板
57a 上流室
57b 下流室
58a・58b 噴霧ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11