(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテルを製造する方法、固液不均一組成物及び1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル製品
(51)【国際特許分類】
C07C 41/36 20060101AFI20220831BHJP
C07C 43/12 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
C07C41/36
C07C43/12
(21)【出願番号】P 2018055405
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2020-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】長舩 夏奈子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 峰男
(72)【発明者】
【氏名】井村 英明
(72)【発明者】
【氏名】岡本 正宗
(72)【発明者】
【氏名】岡本 覚
(72)【発明者】
【氏名】佐久 冬彦
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0312019(US,A1)
【文献】特表2004-520309(JP,A)
【文献】特開平09-194416(JP,A)
【文献】特開2010-095494(JP,A)
【文献】特開昭62-215539(JP,A)
【文献】国際公開第2017/050686(WO,A1)
【文献】特開2013-241390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテルと、
(B)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールと、
(C)ジメチルエーテル
と、
(D)パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸塩、C
4
H
3
F
5
Oで表される化合物および2,2,2-トリフルオロエチルメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物と、を含む組成物を、吸着剤と接触させて1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテルを精製する工程を含み、
前記吸着剤が、
プロトン、Naイオン、KイオンもしくはCaイオンを含むX型ゼオライト、プロトン、Naイオン、KイオンもしくはCaイオンを含むZSM-5型ゼオライト、プロトン、Naイオン、KイオンもしくはCaイオンを含むL型ゼオライト、または、アロフェンである、
1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテルを製造する方法。
【請求項2】
前記吸着剤が、プロトン、Naイオン、KイオンもしくはCaイオンを含むX型ゼオライト、プロトン、Naイオン、KイオンもしくはCaイオンを含むZSM-5型ゼオライト、または、アロフェンである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテルと、
(B)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールと、
(C)ハロメタンと、
を含む組成物を、吸着剤と接触させて1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテルを精製する工程を含み、
前記吸着剤が、プロトン、Naイオン、KイオンもしくはCaイオンを含むZSM-5型ゼオライトである、
1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテルを製造する方法。
【請求項4】
前記組成物が、
(D)パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸塩、C
4
H
3
F
5
Oで表される化合物および2,2,2-トリフルオロエチルメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテルと、
(B)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールと、
(C)ジメチルエーテル、ハロメタンおよびパラトルエンスルホン酸メチルからなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物と、
を含む組成物を、吸着剤と接触させて1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテルを精製する工程を含み、
前記吸着剤が、プロトン、Naイオン、KイオンもしくはCaイオンを含むZSM-5型ゼオライトである、
1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテルを製造する方法。
【請求項6】
前記組成物が、
(D)パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸塩、C
4
H
3
F
5
Oで表される化合物および2,2,2-トリフルオロエチルメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテルと、
(B)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール
と、
(C)ジメチルエーテルと、
(D)パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸塩、C
4
H
3
F
5
Oで表される化合物および2,2,2-トリフルオロエチルメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物と、を含む組成物と、
プロトン、Naイオン、KイオンもしくはCaイオンを含むX型ゼオライト、プロトン、Naイオン、KイオンもしくはCaイオンを含むZSM-5型ゼオライト、プロトン、Naイオン、KイオンもしくはCaイオンを含むL型ゼオライト、または、アロフェンとを含む、固液不均一組成物。
【請求項8】
(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテルと、
(B)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールと、
(C)ハロメタンと、を含む組成物と、
プロトン、Naイオン、KイオンもしくはCaイオンを含むZSM-5型ゼオライトとを含む、固液不均一組成物。
【請求項9】
前記組成物が、
(D)パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸塩、C
4
H
3
F
5
Oで表される化合物および2,2,2-トリフルオロエチルメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物をさらに含む、請求項8に記載の固液不均一組成物。
【請求項10】
(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテルと、
(B)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールと、
(C)ジメチルエーテル、ハロメタンおよびパラトルエンスルホン酸メチルからなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物と、を含む組成物と、
プロトン、Naイオン、KイオンもしくはCaイオンを含むZSM-5型ゼオライトとを含む、固液不均一組成物。
【請求項11】
前記組成物が、
(D)パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸塩、C
4
H
3
F
5
O表される化合物および2,2,2-トリフルオロエチルメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物をさらに含む、請求項10に記載の固液不均一組成物。
【請求項12】
請求項
7~11のいずれか一項に記載の固液不均一組成物と、
該固液不均一組成物と直接接触し、少なくとも接触部の材質は、ステンレス鋼、ガラスまたはフッ素樹脂である容器と、を少なくとも備える、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(以下、HFE-356mmzともいう)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HFE-356mmzは、熱伝達媒体や、発泡剤、洗浄剤等に用いることができる有用な化合物として知られている。
【0003】
HFE-356mmzの製造方法は、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(以下、HFIPともいう)とメチル化剤とアルカリ性化合物とを用いる方法が一般的である(例えば、特許文献1~2)。
【0004】
上述のようなHFE-356mmzの一般的な製造方法においては、HFE-356mmzは、HFIPやメチル化剤等の原料や、副生物との混合物として得られることがある。HFE-356mmzは、その用途によっては高い純度が要求されるため、精製を行う必要がある。
【0005】
この精製方法の一例として、特許文献3には、HFE-356mmzとHFIPの共沸性組成物を、pHを5~9とする水、アルカリ炭酸塩水溶液あるいは酸と混合し、二層分離させることの反復ステップによるHFE-356mmzの精製方法が開示されている。
【0006】
また、工業的に簡便な精製方法として蒸留の採用が一般的に考えられるが、特許文献4に開示されているように、HFE-356mmzとHFIPとは共沸混合物様組成物を形成することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第3346448号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0312019明細書
【文献】中国特許出願公開第105566074号明細書
【文献】特開2015-143359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のHFE-356mmzの精製方法によれば、HFE-356mmzに含まれる原料や副生物などの不純物を一定程度低減させることができるものの、HFE-356mmzが水層に溶解することでロス量が増大すること等により、必ずしも好適な精製方法とは言えない。
【0009】
本発明は、このような背景にあってなされたものであり、HFE-356mmzの精製工程を含む、高純度HFE-356mmzの効率的な製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、HFE-356mmzと所定の不純物とを含む組成物を、所定の吸着剤と接触させることにより、不純物の含有量を低減させて、高純度のHFE-356mmzを得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は以下の各発明を含む。
[発明1]
(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテルと、
(B)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールと、
(C)ジメチルエーテル、ハロメタンおよびパラトルエンスルホン酸メチルからなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物と、を含む組成物を、吸着剤と接触させて1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテルを精製する工程を含み、
前記吸着剤が、シリカ-アルミナ系の固体吸着剤である、
1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテルを製造する方法。
[発明2]
前記組成物が、
(D)パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸塩、C4H3F5Oで表される化合物および2,2,2-トリフルオロエチルメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物をさらに含む、発明1に記載の方法。
[発明3]
前記吸着剤が、X型ゼオライト、ZSM-5型ゼオライト、アロフェン、L型ゼオライト、ベータ型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、Y型ゼオライトおよびA型ゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明1または2に記載の方法。
[発明4]
前記吸着剤が、X型ゼオライト、ZSM-5型ゼオライト、アロフェン、L型ゼオライト、ベータ型ゼオライトおよびモルデナイト型ゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明1~3のいずれかに記載の方法。
[発明5]
前記吸着剤が、プロトン、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンをカチオンとして含む、発明1~4のいずれかに記載の方法。
[発明6]
前記吸着剤が、プロトン、Naイオン、KイオンもしくはCaイオンを含むX型ゼオライト、プロトン、Naイオン、KイオンもしくはCaイオンを含むZSM-5型ゼオライト、プロトン、Naイオン、KイオンもしくはCaイオンを含むL型ゼオライト、または、アロフェンである、発明1または2に記載の方法。
[発明7]
(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテルと、
(B)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールと、
(C)ジメチルエーテル、ハロメタンおよびパラトルエンスルホン酸メチルからなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物と、を含む組成物と、シリカ-アルミナ系の固体吸着剤とを含む、固液不均一組成物。
[発明8]
前記組成物が、
(D)パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸塩、C4H3F5Oで表される化合物および2,2,2-トリフルオロエチルメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物をさらに含む、発明7に記載の組成物。
[発明9]
前記シリカ-アルミナ系の固体吸着剤が、X型ゼオライト、ZSM-5型ゼオライト、アロフェン、L型ゼオライト、ベータ型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、Y型ゼオライトおよびA型ゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明7または8に記載の組成物。
[発明10]
前記シリカ-アルミナ系の固体吸着剤が、X型ゼオライト、ZSM-5型ゼオライト、アロフェン、L型ゼオライト、ベータ型ゼオライトおよびモルデナイト型ゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明7~9のいずれかに記載の組成物。
[発明11]
前記シリカ-アルミナ系の固体吸着剤が、プロトン、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンをカチオンとして含む、発明7~10のいずれかに記載の組成物。
[発明12]
前記シリカ-アルミナ系の固体吸着剤が、プロトン、Naイオン、KイオンもしくはCaイオンを含むX型ゼオライト、プロトン、Naイオン、KイオンもしくはCaイオンを含むZSM-5型ゼオライト、プロトン、Naイオン、KイオンもしくはCaイオンを含むL型ゼオライト、または、アロフェンである、発明7または8に記載の組成物。
[発明13]
発明7~12に記載の固液不均一組成物と、
該固液不均一組成物と直接接触し、少なくとも接触部の材質は、ステンレス鋼、ガラスまたはフッ素樹脂である容器と、を少なくとも備える、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル製品。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、HFE-356mmzと所定の不純物とを含む組成物から不純物の含有量を低減させ、これにより、高純度HFE-356mmzの効率的な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明は、以下に示す実施の形態や、実施例の記載内容に限定して解釈されるべきではない。
【0014】
本発明のHFE-356mmzを製造する方法は(以下、本発明の方法と呼ぶことがある。)、所定のHFE-356mmzの精製工程を含む。
【0015】
(HFE-356mmzの精製工程)
HFE-356mmzの精製工程においては、所定の組成物からHFE-356mmzを精製する。この組成物(以下、粗HFE-356mmzともいう)には、以下の(A)成分と(B)成分と(C)成分とが少なくとも含まれる:
(A)HFE-356mmz;
(B)HFIP;
(C)ジメチルエーテル、ハロメタンおよびパラトルエンスルホン酸メチルからなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物。
【0016】
粗HFE-356mmzは、どのような経緯で得られた組成物であってもよく、一般的には、HFIPとメチル化剤との反応により得られるが、この限りではない。メチル化剤としては、硫酸ジメチル、ハロメタン、p-トルエンスルホン酸メチル(以下、PTSMともいう)等が挙げられるが、この限りではない。ここで、ハロメタンとは、具体的には、フルオロメタン、クロロメタン、ブロモメタン、ヨードメタンをいい、より具体的には、クロロメタン、ヨードメタンをいう。
【0017】
本明細書において、粗HFE-356mmzに含まれる(B)成分および(C)成分を総称して不純物と呼ぶことがある。
【0018】
HFE-356mmzの一般的な製造方法においては、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分の他に、(D)パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸塩、組成式C4H3F5Oで表される化合物、2,2,2-トリフルオロエチルメチルエーテル(CF3CH2OCH3)等が反応生成物中に含まれることがある。本発明において、粗HFE-356mmzには、このような(D)成分等のその他の成分が含まれていてもよい。
【0019】
粗HFE-356mmzには、その他の成分として水分が含まれていてもよい。いくつかの実施態様において、粗HFE-356mmzに含まれる水分量は少ないことが好ましく、例えば、粗HFE-356mmz中の水分量は5質量%以下、3質量%以下あるいは1質量%以下が好ましい。
【0020】
粗HFE-356mmzにおいて、HFE-356mmzと不純物の含有量は特に制限されない。通常、HFE-356mmzは80質量%以上、99.9999質量%以下、不純物とその他の成分の合計が0.0001質量%以上、20質量%以下である。不純物やその他の成分の総量は少なければ少ないほど好ましく、例えば0.0001質量%以上、10質量%以下が好ましい。
【0021】
HFE-356mmzの精製工程において、吸着剤としては、シリカ-アルミナ系の固体吸着剤を用いる。シリカ-アルミナ系の固体吸着剤としては、ゼオライトや粘土(例えば、アロフェン)が挙げられ、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0022】
用いる吸着剤の形状には特に制限はなく、例えば、粉末、顆粒、造粒品等の何れの形状のものであってもよく、当業者は粗HFE-356mmzとの接触の態様に応じて適宜選択可能である。
【0023】
用いる吸着剤のシリカ/アルミナ(SiO2/Al2O3)比は、特に制限はない。例えば、1~3000が好ましく、1.5~2000がより好ましい。
通常は吸着剤の種類によりシリカ/アルミナ比の値が決定されるが、当業者の所望により、処方を変えることによって、細孔分布やシリカ/アルミナ比やその他の金属の含有量を変化させることも可能であり、このような吸着剤を用いてもよい。このような処方は公知である。
【0024】
使用可能なゼオライトとしては、公知の天然ゼオライト、合成ゼオライト、人工ゼオライトを適用することができる。具体的には以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:
3A、4A、5A等のA型;フェリエライト;MCM-22;ZSM-5;ZSM-11;SAPO-11;モルデナイト;ベータ型;10X、13X等のX型;Y型;L型;R型;S型;T型;チャバザイト;オフレタイト;クリノプチロライト(斜プチロル沸石);モルデナイト(モルデン沸石);菱沸石;ナトロライト;ゴンナルダイト;エディングトナイト;アナルシム;リューサイト;ユガワラライト;ギスモンダイン;ポーリンジャイト;フィリップサイト;エリオナイト;フォージャサイト;ミューティナアイト;チェルニヒアイト;ヒューランダイト;スティルバイト;コウレサイト;アルミノケイ酸塩;ベリロケイ酸塩(ロギアナイト、シャンハライト等);ジンコケイ酸塩(ガウルタイト)。
【0025】
使用可能なゼオライトとしては、該ゼオライト中に、プロトン、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンをカチオンとして含むものが好ましく、プロトン、Naイオン、KイオンまたはCaイオンを含むものが特に好ましい。
【0026】
本発明の一態様において、HFE-356mmzの精製工程において使用する吸着剤としては、X型ゼオライト、ZSM-5型ゼオライト、アロフェン(セカード)、L型ゼオライト、ベータ型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、Y型ゼオライト、A型ゼオライトが挙げられ、これらを組み合わせてもよい。中でも、(B)成分と(C)成分の両方をより顕著に低減できることから、X型ゼオライト、ZSM-5型ゼオライト、アロフェン(セカード)、L型ゼオライト、ベータ型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライトが好ましく、プロトン、Naイオン、KイオンまたはCaイオンを含むX型ゼオライト、プロトン、Naイオン、KイオンまたはCaイオンを含むZSM-5型ゼオライト、プロトン、Naイオン、KイオンまたはCaイオンを含むL型ゼオライト、アロフェン(セカード)が特に好ましい。
【0027】
吸着剤は種々市販されており、例えば、東ソー株式会社製のHSZシリーズ、同社製のゼオラム(登録商標)シリーズ、和光純薬株式会社製のMSシリーズ、品川化成株式会社製のセカードシリーズ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
用いる吸着剤には水分が含まれていてもよいが、少ないことが好ましい。いくつかの実施態様において、吸着剤は、例えば乾燥などの方法により水分を低減させたものを用いる。
粗HFE-356mmzを吸着剤と接触させる方法は、HFE-356mmzが精製されれば、特に制限されない。例えば、容器中に粗HFE-356mmzと吸着剤を投入し、一定時間接触させて粗HFE-356mmz中の不純物を吸着剤に吸着させるバッチ方式、吸着剤を充填した充填塔に粗HFE-356mmzを流通させる流通方式等が挙げられるが、この限りではない。
【0029】
用意する粗HFE-356mmzは、吸着剤との接触の際に、液体であってもよいし、気体であってもよい。
【0030】
吸着剤との接触の際に、当該吸着剤とともに、その他の吸着剤も用いてもよい。そのようなその他の吸着剤としては、前述のゼオライト以外のゼオライト、粘土、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、活性炭、これらの複合材や混合物等が挙げられる。
【0031】
ここで、粗HFE-356mmzと吸着剤との接触操作の一例を示すが、この限りではない。温度や圧力は、特に限定されないが、通常、粗HFE-356mmzが液体状態あるいは気体状態で接触を行う。圧力は常圧近傍での操作が簡便であるが、減圧下や加圧下でもよい。
【0032】
本発明の方法においては、HFE-356mmzの精製工程の他に、その他の工程を含んでもよい。例えば、所望により、HFE-356mmzの精製工程の前、後あるいは両方において、洗浄操作や蒸留操作を行ってもよいし、前述のその他の吸着剤と接触させる操作を行ってもよい。
【0033】
吸着剤は使用前のフレッシュな状態では、吸着できる量、吸着速度ともに大きいが、多くの不純物を吸着した後の状態では低下する。この場合は、脱着操作と呼ばれる手法で吸着剤を再生することができる。具体的には、吸着剤を減圧することによって、吸着剤を再生することができる。この際、減圧後に吸着剤を加熱してもよい。加熱する場合の温度は、特に制限はないが、30℃以上、300℃以下が好ましい。また、脱着操作時に生成したガス分を冷却捕集することによって、吸着剤が吸着していた不純物の濃縮物を得ることができる。
【0034】
[固液不均一組成物]
当業者の所望により、容器に、粗HFE-356mmzと吸着剤を導入し、粗HFE-356mmzと吸着剤との固液不均一組成物(以下、固液不均一組成物ともいう)として保管・輸送することもできる。これにより、粗HFE-356mmzに含まれる不純物が低減された、HFE-356mmz製品を提供することが可能となる。
【0035】
このような容器としては、固液不均一組成物の保管・輸送に適しているものであれば特に限定されない。例えば、固液不均一組成物との接触部の材質が、ステンレス鋼、ガラス、フッ素樹脂等が挙げられるが、この限りではない。
【0036】
容器内に導入される固液不均一組成物の量は、特に限定されない。吸着剤の嵩比重にも依存するが、通常は、粗HFE-356mmz/吸着剤の質量比が0.1以上、200以下であればよく、好ましくは1以上、100以下である。
【0037】
容器内に固液不均一組成物を保管・輸送を行う場合は、低温度の環境が望ましい。具体的には-30℃以上、50℃以下であり、好ましくは-20℃以上、30℃以下である。また、固液不均一組成物の保管・輸送環境が、高湿度の場合には、容器が金属製の場合には湿気によって腐食したり、容器の開閉時に水分が容器内に入ることが懸念されるので、低湿度が好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明の方法を詳細に説明するが、本発明の方法はこれに限定されるものではない。
【0039】
HFE-356mmzと不純物の組成比は、FID検出器によるガスクロマトグラフィーにより測定した。
【0040】
[実施例1~10]
表2に示す接触処理前の粗HFE-356mmz(50g)に、表2に示す吸着剤(5g)を添加し、室温(23℃)大気圧下で6時間攪拌した。攪拌終了後、濾過してHFE-356mmzを得た。
【0041】
上記のようにして処理したHFE-356mmzをガスクロマトグラフィーにより分析し、ジメチルエーテル(Me2O)、HFIP、2,2,2-トリフルオロエチルメチルエーテル(CF3CH2OCH3)およびHFE-356mmzのGC面積%が処理前後でどのように変化したかを表2にまとめた。表2中のMe2O除去率、HFIP除去率、CF3CH2OCH3除去率およびHFE-356mmz保持率は、それぞれ以下の式により求めたものである。
Me2O除去率=100×[1-(処理後Me2OのGC%/処理前Me2OのGC%)]
HFIP除去率=100×[1-(処理後HFIPのGC%/処理前HFIPのGC%]
CF3CH2OCH3除去率=100×[1-(処理後CF3CH2OCH3のGC%/処理前CF3CH2OCH3のGC%]
HFE-356mmz保持率=100×(処理後HFE-356mmzのGC%/処理前HFE-356mmzのGC%)
【0042】
【0043】
【0044】
[実施例11~13]
表3に示す接触処理前の粗HFE-356mmz(50g)に、表3に示す吸着剤(5g)を添加した以外は、実施例1~10と同様の処理を行った。その結果を表3にまとめた。
【0045】
【0046】
[実施例14~26]
表4に示す接触処理前の粗HFE-356mmz(50g)に、表4に示す吸着剤(5g)を添加し、室温(23℃)大気圧下で6時間攪拌した。攪拌終了後、濾過してHFE-356mmzを得た。
【0047】
上記のようにして処理したHFE-356mmzをガスクロマトグラフィーにより分析し、クロロメタン(CH3Cl)、HFIP、2,2,2-トリフルオロエチルメチルエーテル(CF3CH2OCH3)およびHFE-356mmzのGC面積%が処理前後でどのように変化したかを表4にまとめた。表4中のCH3Cl除去率、HFIP除去率およびHFE-356mmz保持率は、それぞれ以下の式により求めたものである。
CH3Cl除去率=100×[1-(処理後CH3ClのGC%/処理前CH3ClのGC%)]
(ただし、CH3Cl除去率が負の値となる場合については、CH3Cl除去率を0.0%とする。)
HFIP除去率=100×[1-(処理後HFIPのGC%/処理前HFIPのGC%]
HFE-356mmz保持率=100×(処理後HFE-356mmzのGC%/処理前HFE-356mmzのGC%)
【0048】