(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】気体供給装置、気体供給装置の制御方法、ロードポート及び半導体製造装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
H01L21/68 A
(21)【出願番号】P 2018074003
(22)【出願日】2018-04-06
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2017090618
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】谷山 育志
(72)【発明者】
【氏名】森鼻 俊光
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-166047(JP,A)
【文献】特開2013-258206(JP,A)
【文献】特開2014-036185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象容器の内部に所定の気体を供給すべく当該気体を通過させ得るハウジング構造部と、
前記対象容器の一面に設けられ内部に開閉機構を備えるポート部に接触するノズル部及び前記開閉機構を開放させる押圧部を有するノズル構造部と、
前記ノズル構造部を、前記ポート部を介して前記所定の気体を前記対象容器内へ供給し得る使用姿勢及び前記ポート部を介して前記対象容器内へ前記所定の気体を供給し得ない待機姿勢との間で動作させるべく拡縮する動作調整空間と
、を具備
し、
前記ノズル構造部を、前記ポート部の外縁に密着させた密着姿勢及び前記ポート部から離間させた離間姿勢との間で昇降させることを特徴とする気体供給装置。
【請求項2】
対象容器の内部に所定の気体を供給すべく当該気体を通過させ得るハウジング構造部と、
前記対象容器の一面に設けられ内部に開閉機構を備えるポート部に接触するノズル部及び前記開閉機構を開放させる押圧部を有するノズル構造部と、
前記ノズル構造部を、前記ポート部を介して前記所定の気体を前記対象容器内へ供給し得る使用姿勢及び前記ポート部を介して前記対象容器内へ前記所定の気体を供給し得ない待機姿勢との間で動作させるべく拡縮する動作調整空間と、を具備し、
前記ノズル部は、前記対象容器の一面に設けた前記ポート部の外縁に密着することにより前記対象容器内の気体が外部へ流出することを防止し、
前記押圧部は、前記開閉機構を押圧する押圧面及び前記対象容器内へ向けて前記所定の気体を噴射する噴射
部を有するものである
ことを特徴とする気体供給装置。
【請求項3】
前記動作調整空間が、
前記ハウジング構造部及び前記ノズル部の間に設けられ、前記ノズル部を前記ポート部の外縁に密着させた密着姿勢及び当該密着姿勢から前記ノズル部と前記ポート部とを離間させた離間姿勢との間で前記ノズル部を動作させるべく拡縮する第一の動作調整空間と、
前記ノズル部と前記押圧部との間に設けられ、前記押圧部を前記ポート部から離間することにより前記ポート部を閉止させた閉止姿勢と前記ポート部を押圧することにより当該ポート部を開放させた開放姿勢との間で動作させるべく拡縮する第二の動作調整空間とを有するものである請求項2記載の気体供給装置。
【請求項4】
対象容器の内部を所定の気体に置換すべく当該気体を通過させ得るハウジング構造部と、
前記対象容器の一面に設けたポート部の外縁に密着することにより前記対象容器内の気体が外部へ流出することを防止するためのノズル部と、
前記ポート部を押圧する押圧面及び前記対象容器内へ向けて前記所定の気体を噴射する噴射部を有する押圧部と、
前記ハウジング構造部及び前記ノズル部の間に設けられ、前記ノズル部を前記ポート部の外縁に密着させた密着姿勢及び当該密着姿勢から前記ノズル部と前記ポート部とを離間させた離間姿勢との間で前記ノズル部を動作させるべく拡縮する第一の動作調整空間と、
前記ノズル部と前記押圧部との間に設けられ、前記押圧部を前記ポート部から離間することにより前記ポート部を閉止させた閉止姿勢と前記ポート部を押圧することにより当該ポート部を開放させた開放姿勢との間で動作させるべく拡縮する第二の動作調整空間とを具備する気体供給装置の制御方法であって、
前記第一の動作調整空間及び前記第二の動作調整空間へ制御用気体を出し入れすることにより前記ノズル部及び前記押圧部の動作を制御することを特徴とする気体供給装置の制御方法。
【請求項5】
前記制御用気体が、前記第一の動作調整空間へ直接出し入れされるものであり、前記第一の動作調整空間及び前記第二の動作調整空間を連通する連通路を更に具備することにより、前記第二の動作調整空間をも拡縮させ得るものである請求項4記載の気体供給装置の制御方法。
【請求項6】
前記連通路が、前記ノズル部が前記ポート部の外縁に密着した前記密着姿勢へと動作させた後に前記押圧部を前記開放姿勢へと動作させるように構成したものである請求項5記載の気体供給装置の制御方法。
【請求項7】
請求項1~3の何れかに記載の気体供給装置を複数備え、
前記対象容器の底面に設けた複数の前記ポート部の各々に前記気体供給装置の前記押圧部を連通させた状態で、前記対象容器内の気体雰囲気を窒素又は乾燥空気に置換可能に構成していることを特徴とするロードポート。
【請求項8】
請求項7記載のロードポートと、半導体製造装置本体と、前記ロードポートと前記半導体製造装置本体の間に配置される移送室とを備え、
搬送されてきた対象容器を受け取り、当該対象容器内に格納されているウェーハを当該対象容器の前面に形成した搬出入口を介して出し入れすることを特徴とする半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象空間を有する対象容器に対して所定の気体を供給するための気体供給装置、気体供給装置の制御方法、ロードポート及び半導体製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体の製造工程においては、歩留まりや品質の向上のため、クリーンルーム内でウェーハの処理がなされている。近年では、ウェーハを高清浄な環境で搬送・保管するための対象容器たるFOUP(Front-Opening Unified Pod)と呼ばれる格納用容器と、FOUP内のウェーハを半導体製造装置との間で出し入れするとともに搬送装置との間でFOUPの受け渡しを行うインターフェース部の装置であるロードポート(Load Port)が、ウェーハの周囲の局所的な空間についてのみ清浄度をより向上させるための重要な装置として利用されている。
【0003】
ところで、半導体製造装置内はウェーハの処理または加工に適した所定の気体雰囲気に維持されているが、FOUP内から半導体製造装置内にウェーハを送り出す際にはFOUPの内部空間と半導体製造装置の内部空間とが相互に連通することになる。したがって、FOUP内の環境が半導体製造装置内よりも低清浄度であると、FOUP内の気体が半導体製造装置内に進入して半導体製造装置内の気体雰囲気に悪影響を与え得る。
【0004】
このような問題に対応するための技術として、従来では、ウェーハが収納されているFOUPをロードポートの載置台に載置した状態で所定の気体(例えば窒素や乾燥空気、不活性ガス等)をFOUPの底面側から内部に注入して充満させて、FOUP内を所定の気体雰囲気に置換するパージ装置を備えたロードポートが開示されている。このようなFOUPの底面側から窒素や乾燥空気、不活性ガス等の所定の気体をFOUP内に注入してFOUP内を所定の気体雰囲気に置換する、いわゆるボトムパージ方式は、フロントパージ方式のパージ装置と比較して、所定の気体雰囲気の到達濃度が高いという利点がある。
【0005】
そして特許文献1には、所定の気体(例えば窒素や不活性ガス等)をFOUP内に吹き込むために、対象容器たるFOUPに設けた弁を所定の気体以外の気体(圧縮空気等)により操作するように構成されたパージ装置を備えたロードポートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のパージ装置は、FOUPの開口部を開放するために、所定の気体の圧力を利用することによって対象容器たるFOUPに設けた弁を操作するという構造であった。そのため、所定の気体の圧力如何によっては単位時間当たりの供給量にばらつきが生じてしまい、その結果、所定の作業時間内においてFOUP内を高い所定気体雰囲気濃度に維持することが困難であり、所定の気体雰囲気の到達濃度が低いというデメリットがあった。
【0008】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、主たる目的は、対象容器の内部を所定の気体により高い効率にて置換することができる気体供給装置、その制御方法、及び、該気体供給装置を備えたロードポート並びに半導体製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以上のような問題点を鑑み、次のような手段を講じたものである。
【0010】
すなわち、本発明の気体供給装置は対象容器の内部に所定の気体を供給すべく当該気体を通過させ得るハウジング構造部と、前記対象容器の一面に設けられ内部に開閉機構を備えるポート部に接触するノズル部及び前記開閉機構を開放させる押圧部を有するノズル構造部と、前記ノズル構造部を、前記ポート部を介して前記所定の気体を前記対象容器内へ供給し得る使用姿勢及び前記ポート部を介して前記対象容器内へ前記所定の気体を供給し得ない待機姿勢との間で動作させるべく拡縮する動作調整空間とを具備し、前記ノズル構造部を、前記ポート部の外縁に密着させた密着姿勢及び前記ポート部から離間させた離間姿勢との間で昇降させることを特徴とする。
【0011】
このようなものであれば、対象容器内へ供給する所定の気体の圧力如何に拘泥されることなくノズル構造部が動作されるために対象容器の内部へ所定の気体を好適に導入することができる。またノズル構造部はポート部を開放させるのみならずポート部の近傍に密着することにより所定の気体が外部へ漏洩してしまうことを有効に回避しているので、所定の気体を効率良く対象容器の内部へ導入することができる。その結果本発明によれば、対象容器の内部を所定の気体に、より高い効率にて置換することができる。
【0012】
対象容器の内部を高い効率にて所定の気体に置換し得る具体的な構成として、対象容器の内部に所定の気体を供給すべく当該気体を通過させ得るハウジング構造部と、前記対象容器の一面に設けられ内部に開閉機構を備えるポート部に接触するノズル部及び前記開閉機構を開放させる押圧部を有するノズル構造部と、前記ノズル構造部を、前記ポート部を介して前記所定の気体を前記対象容器内へ供給し得る使用姿勢及び前記ポート部を介して前記対象容器内へ前記所定の気体を供給し得ない待機姿勢との間で動作させるべく拡縮する動作調整空間と、を具備し、ノズル部は、前記対象容器の一面に設けた前記ポート部の外縁に密着することにより対象容器内の気体が外部へ流出することを防止し、押圧部は、前記開閉機構を押圧する押圧面及び前記対象容器内へ向けて所定の気体を供給すべく噴射する噴射部を有するものである構成を挙げることができる。
【0013】
また、対象容器内の気体をより効率良く所定の気体へと置換するための動作調整空間の構成として、動作調整空間が、ハウジング構造部及びノズル部の間に設けられ、ノズル部をポート部の外縁に密着させた密着姿勢及び当該密着姿勢からノズル部とポート部とを離間させた離間姿勢との間でノズル部を動作させるべく拡縮する第一の動作調整空間と、ノズル部と押圧部との間に設けられ、押圧部をポート部から離間することによりポート部を閉止させた閉止姿勢とポート部を押圧することにより当該ポート部を開放させた開放姿勢との間で動作させるべく拡縮する第二の動作調整空間とを有するものである構成を挙げることができる。
【0014】
そして、対象容器内の気体をより効率良く所定の気体へと置換するための具体的な気体供給装置の制御方法としては、対象容器の内部を所定の気体に置換すべく当該気体を通過させ得るハウジング構造部と、前記対象容器の一面に設けたポート部の外縁に密着することにより前記対象容器内の気体が外部へ流出することを防止するためのノズル部と、ポート部を押圧する押圧面及び対象容器内へ向けて所定の気体を噴射する噴射部を有する押圧部と、ハウジング構造部及びノズル部の間に設けられ、ノズル部を前記ポート部の外縁に密着させた密着姿勢及び当該密着姿勢からノズル部とポート部とを離間させた離間姿勢との間で前記ノズル部を動作させるべく拡縮する第一の動作調整空間と、ノズル部と押圧部との間に設けられ、押圧部を前記ポート部から離間することによりポート部を閉止させた閉止姿勢とポート部を押圧することにより当該ポート部を開放させた開放姿勢との間で動作させるべく拡縮する第二の動作調整空間とを具備する気体供給装置の制御方法であって、前記第一の動作調整空間及び前記第二の動作調整空間へ前記制御用気体を出し入れすることによりノズル部及び押圧部の動作を制御することを特徴とする。
【0015】
更に、より簡素な構成にてノズル部及び押圧部の動作を制御するためには、制御用気体が、第一の動作調整空間へ直接出し入れされるものであり、第一の動作調整空間及び第二の動作調整空間を連通する連通路を更に具備することにより、第二の動作調整空間をも拡縮させ得るものであることが望ましい。
【0016】
そして、ノズル部及び押圧部の動作をより有効に制御するためには、連通路が、ノズル部が前記ポート部の外縁に密着した前記密着姿勢へと動作させた後に押圧部を開放姿勢へと動作させるように構成したものであることが望ましい。
【0017】
また、上述した気体供給装置を有効に利用し得る一例として、上記の気体供給装置を複数備え、対象容器の底面に設けた複数のポート部の各々に前記気体供給装置の押圧部を連通させた状態で、対象容器内の気体雰囲気を窒素又は乾燥空気に置換可能に構成していることを特徴とするロードポートを挙げることができる。
【0018】
更に、上述したロードポートを備え、搬送されてきた対象容器を受け取り、当該対象容器内に格納されているウェーハを当該対象容器の前面に形成した搬出入口を介して出し入れすることを特徴とする半導体製造装置においても、上述した効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上、説明した本発明によれば、対象容器の内部を所定の気体により高い効率にて置換することができる気体供給装置、その制御方法、及び、該気体供給装置を備えたロードポート並びに半導体製造装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図10】同実施形態の変形例に係る
図8に対応した外観図。
【
図11】実施形態に係る半導体製造装置の模式的な平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0022】
本実施形態に係る気体供給装置たるパージノズルユニット1は、例えば
図1及び
図2に示すロードポートXに適用されるパージ装置Pに取付可能なものである。ロードポートXは、半導体の製造工程において用いられる半導体製造装置に搭載される。
図11には、半導体製造装置Mの構成が模式的に例示されている。半導体製造装置Mは、クリーンルーム内に配置されて用いられるものであり、半導体製造装置本体71と、半導体製造装置本体71に隣接して配置される移送室72と、移送室72に隣接して配置される1個以上(図の例では3個)のロードポートXとを含む。半導体製造装置Mにおいては、本発明のパージ対象容器の一例である
図2に示すFOUP100がロードポートXに載置される。そして、FOUP100の扉112に、ロードポートXのドア部Dを密着させて扉112とドア部Dを一体的に移動させてこれらを開閉することにより、FOUP100内に収容された被収容体である模式的に図示しているウェーハWを半導体製造装置Mに対して出し入れするものである。
【0023】
本実施形態で適用するFOUP100は、
図2に示すように、内部に複数枚のウェーハWを収容し、前面に形成した搬出入口111を介してこれらウェーハWを出し入れ可能に構成され、搬出入口111を開閉可能な扉112を備えた既知のものであるため、詳細な説明は省略する。なお、本実施形態においてFOUP100の前面とは、ロードポートXに載置した際にロードポートXのドア部Dと対面する側の面を意味する。FOUP100の底面には、後述する
図5、7、9に想像線にて示すように、パージ用のポート101が所定箇所に設けられている。ポート101は、例えば、FOUP100の底面に形成した開口部に嵌め込まれた中空筒状のグロメットシールを主体としてなる。
【0024】
半導体製造装置Mは、例えば、
図11に示されるように、ロードポートXと、相対的にロードポートXから遠い位置に配置される半導体製造装置本体71と、半導体製造装置本体71とロードポートXとの間に配置される移送室72とを備えたものであり、移送室72内に、例えば、各ロードポートXに載置されたFOUP100内のウェーハWを、1枚ずつ、FOUP100内と移送室72内との間、及び移送室72内と半導体製造装置本体71内との間で移送する移送機721を設けている。なお、FOUP100と移送室72との間、及び、移送室72と導体製造装置本体71との間で、ウェーハWを複数枚格納したカセットごと移送することも可能である。このような構成により、クリーンルームにおいて、半導体製造装置本体71内、移送室72内、及びFOUP100内は高清浄度に維持される。
【0025】
ロードポートXは、
図1に示すように、起立姿勢で配置されてFOUP100の搬出入口111に連通し得る開口部を開閉可能なドア部Dを有するフレームFと、フレームFのうち半導体製造装置本体71から遠ざかる方向に略水平姿勢で延伸する載置台Bと、FOUP100内にパージ用気体を注入し、FOUP100内の気体雰囲気を窒素ガスなどのパージ用気体に置換可能なパージ装置Pとを備えたものである。
【0026】
フレームFに設けたドア部Dは、FOUP100を載置台Bに載置した状態においてFOUP100の前面に設けた扉112に密着した状態でその扉112を開けて搬出入口111を開放する開放位置と、搬出入口111を閉止する閉止位置との間で作動可能なものである。ドア部Dを開放位置と閉止位置との間で少なくとも昇降移動させるドア昇降機構(図示省略)としては既知のものを適用することができる。
【0027】
載置台Bは、フレームFのうち高さ方向中央部からやや上方寄りの位置に略水平姿勢で配置されたものであり、上向きに突出させた複数の位置決め用突起(キネマティックピン)81を有する。そして、これらの位置決め用突起81をFOUP100底面に形成された位置決め用凹部(図示省略)に係合させることで、載置台B上におけるFOUP100の位置決めを図っている。また、載置台Bには、FOUP100が載置台B上に所定の位置に載置されているか否かを検出する図示しない着座センサ82を設けている。位置決め用突起81及び着座センサ82の構造や配置箇所は規格などに応じて適宜設定・変更することができる。
【0028】
パージ装置Pは、載置台B上に上端部を露出させた状態で所定箇所に配置される複数のパージノズルユニット1を備えている。
【0029】
これら複数のパージノズルユニット1は、FOUP100の底面に設けたポート101の位置に応じて載置台B上の適宜位置に取り付けられ、FOUP100の底部に設けたポート101に接触可能なものである。なお本実施形態では各パージノズルユニット1の他、ポート101に対応する何れかの箇所にはFOUP100内の圧力が高くなるとFOUP100内のガスを排出し得るように構成された排気弁を適宜配置している。当該排気弁の構成は既存の構成の準じたものであるため、具体的な説明を省略する。
【0030】
またここで、FOUP100に設けられたポート101の構成について具体的に説明しておく。当該ポート101は、上述の通りパージノズルユニット1と対応して配置されるものであり、例えば
図2におけるA部に拡大して示すように、基台103と、基台103に設けられ、所定の気体が流入されるガス流入口104と、チェック弁105と、チェック弁105を可動できるように収納する弁室106と、チェック弁105をガス流入口104側に付勢する圧縮バネ107と、連通口108と、圧縮バネ107を支持する支持板109と、フィルター110等とを備えている。このような構成のポート101は、既存のものであるため、更なる詳細な説明は省略する。このような既存のポート101を介してFOUP100の内部にパージガスを導入する従来の一般的な態様は次の通りである。すなわち、所定の気体であるパージガスをガス流入口104に流入させ、該パージガスの流量に伴う圧力によって圧縮バネ107を圧縮させて、チェック弁105と基台103との間に隙間を生じさせる。これにより、パージガスが、この隙間から弁室106と連通口108とを経て、フィルター110を通過して、FOUP100の内部に導入される。
【0031】
そして上記ポート101を構成するガス流入口104、チェック弁105及び圧縮バネ107により、本発明に係る開閉機構が構成されている。
【0032】
各パージノズルユニット1は、
図3~
図9に示すように、ノズル構造部たるノズル2と、ノズル2を昇降可能な状態で保持するハウジング構造部たるハウジング3と、このハウジング3に対しノズル2を動作させるべく圧縮空気を出し入れする気体導入部4とを備えたものである。なお本明細書では、当該気体導入部4の図示を模式的なものとする。
【0033】
ここで、本実施形態に係る気体供給装置たるパージノズルユニット1は、FOUP100の内部を所定の気体を供給すべく当該気体を通過させ得るハウジング3と、FOUP100の一面に設けられ内部に開閉機構を備えるポート部たるポート101の近傍に接触するノズル部たる第一のノズル21及び開閉機構を開閉させる押圧部たる第二のノズル22を有するノズル2と、ハウジング3及びノズル2に亘って設けられノズル2をポート101を介して所定の気体を対象容器内へ供給し得る使用姿勢及びポート101を介して対象容器内へ所定の気体を供給し得ない待機姿勢との間で動作させるべく拡縮する動作調整空間5とを具備することを特徴とする。また本実施形態に係るパージノズルユニット1では、動作調整空間5へ制御用気体である圧縮空気を出し入れすることによりノズル2の動作を制御する気体導入部4を更に有している。
【0034】
以下、気体供給装置たるパージノズルユニット1の各構成要素について説明する。
【0035】
ハウジング3は、対象容器たるFOUP100の内部を所定の気体に置換すべく当該気体を通過させ得るものである。このハウジング3は、概略直方体形状をなすハウジング本体31と、このハウジング本体31の内壁35に設けられノズル2の外周面が添接する対をなす外リング32と、ハウジング本体31の外壁34からノズル2へ向けて連通し圧縮空気をノズル2側へ向けて導入するための導入口33とを有している。具体的に説明すると、当該導入口33は、ハウジング本体31の外壁34から内壁35へ向けて貫通するものであり、ハウジング3とノズル2との間に形成されている動作調整空間5へと連通している。
【0036】
ノズル2は、対象容器の一面に設けたポート101の外縁102に密着することによりFOUP100内の気体が外部へ流出することを防止するための第一のノズル21と、ポート101を押圧する押圧面及び対象容器内へ向けて所定の気体を噴射する噴射部を有する第二のノズル22とを有している。第一のノズル21は、ポート101の外縁102に密着し得る接触面23と、第二のノズル22に対し隙間無く支持するためのパッキンである内リング24とを有している。第二のノズル22は、所定の気体を導入するための気体導入口25と、軸心部分にはこの気体導入口25から導入された所定の気体すなわち窒素ガスを上方へ案内すべく高さ方向に貫通するガス案内路26と、先端において対象容器のポート101に当接、押圧し当該ポート101の内部のチェック弁105(
図2)を開放得る押圧面27と、この押圧面27から基端側へスリット状に形成され窒素ガスをFOUP100内へ導入するためのガス噴射口28とを有している。そして本実施形態では、気体導入口25から水平方向に所定の気体たるパージ用気体を案内する第二流路25aと、この第二流路25aに連続し垂直方向にパージ用気体を案内する第一流路26aとを、相対位置を固定した状態で一体的に構成している。しかしながら本発明は、上記第一、第二流路26a、25aの相対位置を変更可能に構成する態様を妨げるものではない。
【0037】
動作調整空間5は、ハウジング3及び第一のノズル21の間に設けられ、第一のノズル21を、ポート101の外縁102に密着させた密着姿勢(P1)及び当該密着姿勢(P1)から第一のノズル21とポート101とを離間させた離間姿勢(P2)との間で第一のノズル21を動作させるべく拡縮する第一の動作調整空間51と、第一のノズル21と第二のノズル22との間に設けられ、第二のノズル22を、ポート101(具体的には、チェック弁105)から離間することによりポート101を閉止させた閉止姿勢(Q2)とポート101(具体的には、チェック弁105)を押圧することにより当該ポート101を開放させた開放姿勢(Q1)との間で動作させるべく拡縮する第二の動作調整空間52と、これら第一の動作調整空間51及び第二の動作調整空間52を連通する連通路53とを有している。
【0038】
第一の動作調整空間51は、上記ハウジング3の導入口33から導入気体すなわち圧縮空気が導入されたときに第一のノズル21の接触面23がポート101の外縁102から離間した離間姿勢(P2)からポート101の外縁102に密着する密着姿勢(P1)へと姿勢変更され得るものである。
【0039】
第二の動作調整空間52は、第一の動作調整空間51に気体が導入され第一のノズル21が密着姿勢(P1)となった後、連通路53を通して圧縮空気が導入されることにより、第二のノズル22をポート101(具体的には、チェック弁105)から離間することでポート101を閉止させた閉止姿勢(Q2)から、当該ポート101(具体的には、チェック弁105)を押圧することにより当該ポート101を開放させた開放姿勢(Q1)へと姿勢変更させるためのものである。
【0040】
連通路53は、第一の動作調整空間51に制御用気体を供給して第一、第二の動作調整空間51、52へ気体すなわち圧縮空気を導入することで第一のノズル21を密着姿勢(P1)とし且つ第二のノズル22を開放姿勢(Q1)へと動作させるとともに、第一、第二の動作調整空間51、52内の制御用気体である圧縮空気を吸引して第二のノズル22を閉止姿勢(Q2)とし且つ第一のノズル21を離間姿勢(P2)とするように構成したものである。当該連通路53は、
図4、
図5、
図7及び
図9において破線にて示しているが、上記第一、第二のノズル22の周方向に一又は複数設けられている。そしてこの連通路53は、その径並びに位置、数を調整することにより、圧縮空気が導入されたときには上記第一の動作調整空間51が第一のノズル21を密着姿勢(P1)へ姿勢変更させた後、第二の動作調整空間52へ圧縮空気が導入され第二のノズル22を開放姿勢(Q1)へと姿勢変更させ得るように設定してある。
【0041】
気体導入部4は、第一の動作調整空間51及び第二の動作調整空間52へ窒素ガスとは異なる気体である一例として圧縮空気を出し入れすることにより第一のノズル21及び第二のノズル22の動作を制御するためのものである。この気体導入部4は、第一の動作調整空間51へ制御用気体を出し入れするものであり、第一の動作調整空間51及び第二の動作調整空間52を連通する連通路53を介することにより、第二の動作調整空間52をも拡縮させ得るものである。
【0042】
本実施形態では、動作調整空間5内へ圧縮空気を導入することによって、
図3~
図5に示す待機位置、すなわち第一のノズル21が離間姿勢(P2)にあり且つ第二のノズル22が閉止姿勢(Q2)にある状態から、
図6及び
図7に示すように第一のノズル21が密着姿勢(P1)となりポート101の外縁102に密着しつつ第二のノズル22が閉止姿勢(Q2)にありポート101の外縁102に密着しつつもポート101を開成させていない状態とし、更には
図8及び
図9に示す使用位置のように、第二のノズル22がさらに上方に突出し押圧面27がポート101(具体的には、チェック弁105)を押し上げることによりポート101を開放させる開放姿勢(Q1)とする状態へと、段階的に制御することができる。
【0043】
また勿論、
図8及び
図9に示す状態(P1、Q1)から気体導入部4を制御することにより圧縮空気を吸引すれば、上記
図6及び
図7に示す状態(P1、Q2)を経て、
図3~
図5に示す状態(P2、Q2)へと戻ることはいうまでもない。すなわち、本実施形態によれば、所定の気体たる窒素ガスとは異なる圧縮空気を気体導入部4より出し入れすることにより、ノズル2を構成する第一のノズル21及び第二のノズル22それぞれの昇降移動をスムーズ且つ適切に行えるようにしている。
【0044】
以上に詳述した本実施形態に係るパージノズルユニット1は、ユニット化した状態でロードポートXの載置台Bにおける複数の所定箇所(本実施形態では載置台Bの四隅近傍)に取り付けることで、載置台B上に載置されるFOUP100内の気体雰囲気をパージ用気体に置換可能なパージ装置Pとして機能することが実現されている。
【0045】
また、本実施形態の変形例として、
図10に示す気体供給装置たるパージノズルユニット1を挙げることができる。当該変形例について上記実施形態の構成要素に相当するものに対しては同じ符号を付すとともに詳細な説明を省略する。
【0046】
具体的に説明すると、本変形例に係るパージノズルユニット1は、上記第二のノズル22の形状が異なる。第二のノズル22が、押圧面27とは離間した位置に開口29を設け、当該開口29をガス噴射口28に相当するようにしたものである。このようなものであっても、上記実施形態同様の効果を奏する。
【0047】
以上のように、本実施形態に係る気体供給装置は、対象容器の内部を所定の気体に置換すべく当該気体を通過させ得るハウジング3と、対象容器の一面に設けたポート101の近傍に密着するとともにポート101を開放させるべく押圧するノズル2と、ハウジング3及びノズル2に亘って設けられノズル2をポート101を介して所定の気体を対象容器内へ供給し得る使用姿勢及びポート101を介して対象容器内へ所定の気体を供給し得ない待機姿勢との間で動作させるべく拡縮する動作調整空間5と、動作調整空間5へ気体を出し入れすることによりノズル2の動作を制御する気体導入部4とを具備することを特徴とする。
【0048】
このようにすることで、対象容器内へ供給する所定の気体の圧力如何に拘泥されることなくノズル2が動作されるために対象容器たるFOUP100の内部へ所定の気体を好適に導入することができる。またノズル2はポート101を開放させるのみならずポート101の近傍に密着することにより所定の気体が外部へ漏洩してしまうことを有効に回避しているので、所定の気体を効率良く対象容器の内部へ導入することができる。その結果本実施形態によれば、対象容器の内部を所定の気体に、より高い効率にて供給することができるパージノズルユニット1、及びそのパージノズルユニット1を備えたパージ装置P並びにロードポートX、そして当該ロードポートXを備える半導体製造装置Mを提供することができる。
【0049】
対象容器の内部を高い効率にて所定の気体に置換し得る具体的な構成として本実施形態では、ノズル2が、対象容器の一面に設けたポート101の外縁102に密着することにより対象容器内の気体が外部へ流出することを防止するためのノズル部たる第一のノズル21と、ポート101を押圧する押圧面27及び対象容器内へ向けて気体を噴射する噴射部を有する押圧部たる第二のノズル22とを有するものである構成としている。
【0050】
また、対象容器内の気体をより効率良く所定の気体へと置換するための動作調整空間5の構成の一例として本実施形態では、動作調整空間5が、ハウジング3及び第一のノズル21の間に設けられ第一のノズル21をポート101の外縁102に密着させた密着姿勢(P1)及び当該密着姿勢(P1)から第一のノズル21とポート101とを離間させた離間姿勢(P2)との間で第一のノズル21を動作させるべく拡縮する第一の動作調整空間51と、第一のノズル21と第二のノズル22との間に設けられ、第二のノズル22をポート101から離間することによりポート101を閉止させた閉止姿勢(Q2)とポート101を押圧することにより当該ポート101を開放させた開放姿勢(Q1)との間で動作させるべく拡縮する第二の動作調整空間52とを有するものとした構成を適用している。
【0051】
そして、本実施形態に係るパージノズルユニット1の制御方法は、FOUP100内の気体をより効率良く所定の気体へと置換するための具体的な構成として本実施形態では、ハウジング3及び第一のノズル21の間に設けられ第一のノズル21をポート101の外縁102に密着させた密着姿勢(P1)及び当該密着姿勢(P1)から第一のノズル21とポート101とを離間させた離間姿勢(P2)との間で第一のノズル21を動作させるべく拡縮する第一の動作調整空間51と、第一のノズル21と第二のノズル22との間に設けられ、第二のノズル22をポート101から離間することによりポート101を閉止させた閉止姿勢(Q2)とポート101を押圧することにより当該ポート101を開放させた開放姿勢(Q1)との間で動作させるべく拡縮する第二の動作調整空間52とを有するパージノズルユニット1に適用される制御方法であり、気体導入部4により、これら第一の動作調整空間51及び第二の動作調整空間52へ圧縮空気を出し入れすることを特徴としている。
【0052】
更に、より簡素な構成にて第一のノズル21及び第二のノズル22の動作を制御するために本実施形態では、制御用気体導入装置を、第一の動作調整空間51へ制御用気体を出し入れするものとし、第一の動作調整空間51及び第二の動作調整空間52を連通する連通路53を更に設けることにより、第二の動作調整空間52をも拡縮させ得るものとしている。
【0053】
そして、第一のノズル21及び第二のノズル22の動作をより有効に制御するために本実施形態では、連通路53を、第一のノズル21がポート101の外縁102に密着した密着姿勢(P1)へと動作させた後に第二のノズル22を開放姿勢(Q1)へと動作させるように構成している。
【0054】
また本実施形態に係る半導体製造装置Mは、ロードポートXを備え、搬送されてきたパージ対象容器であるFOUP100を受け取り、当該FOUP100内に格納されているウェーハWを当該FOUP100の前面に形成した搬出入口111を介して出し入れすることを特徴とする。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態の構成に限られるものではない。上記実施形態では気体導入部4は、第一の動作調整空間51及び第二の動作調整空間52へ窒素ガスとは異なる気体である一例として圧縮空気を出し入れする態様を開示したが勿論、制御用気体としては圧縮空気に限られず、窒素ガスや他の不活性ガス、或いは乾燥させた空気を用いても良い。
【0056】
上記実施形態では、第1動作調整空間に圧縮空気を導入することによりノズル機構が上昇する上昇用動作調整空間を形成したが、圧縮空気の吸引では無く導入によりノズル機構を降下させる降下用動作調整空間をさらに設けてもよい。第2動作調整空間についても同様に上昇用の動作調整空間だけでなく、降下用の動作調整空間を設けても良い。または、バネ等の弾性付勢と組み合わせることにより上昇用、降下用の何れかの動作調整空間だけを形成しても良い。
【0057】
そして、上記実施形態では第一流路26aを構成する押圧部たる第二ノズル22により弁であるポート101を開放する構成としたが、第一流路26aを形成する部材とは別に、ポート101を開放する押圧部を設けても良い。また上記実施形態では、第二流路25aを形成する部材がハウジング3に対して相対的に移動する構成を適用したが、第二流路をハウジングに対して固定し、第一流路に対して相対的に動作し得る構成としても良い。
【0058】
また例えば上記実施形態では動作調整空間51,52と通気孔を1対1の関係で形成した態様を例示したが、1つの動作調整空間に連通する通気孔を複数形成した構成を採用してもよい。また上記実施形態では気体導入部4による圧縮空気の制御のみでノズル2を制御する態様を開示したが、ノズルを弾性付勢することにより動作可能にする態様を否定するものではない。
【0059】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1・・・気体供給装置(パージノズルユニット)
2・・・ノズル構造部(ノズル)
21・・・ノズル部(第一のノズル)
22・・・押圧部(第二のノズル)
3・・・ハウジング構造部(ハウジング)
4・・・気体導入部
5・・・動作調整空間
51・・・第一の動作調整空間
52・・・第二の動作調整空間
53・・・連通路
X・・・ロードポート
P・・・パージ装置
100・・・対象容器(FOUP)