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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/72 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
B60N2/72
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018156064
(22)【出願日】2018-08-23
(65)【公開番号】P2020029181
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆
(72)【発明者】
【氏名】森田 嘉明
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-122770(JP,A)
【文献】特開2004-290605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/72
B60N 2/70
A47C 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するシートクッションを備える車両用シートであって、
乗員荷重を受けるため、車両進行方向に対して右側に設けられた右板材と左側に設けられた左板材と、
前記右板材、前記左板材をそれぞれ支持し、車両進行方向に垂直に設けられた複数の支持部材と、
前記支持部材の一端に係合し、前記支持部材の他端を上下方向に揺動可能にする係合部材と、
前記複数の支持部材の前記他端間に設けられ、前記他端間を引っ張り、前記複数の支持部材の前記他端の上下動を連動させる弾性部材と、から成り、
前記右板材、前記左板材の上下動を連動させるスタビライザーを前記シートクッションに備え、
前記複数の前記支持部材が、前記一端と前記他端が略コ字状に曲げられた複数の金属線からなり、
前記複数の金属線の一方が、前記右板材、前記左板材の車両進行方向前側に付けられ、
他方が、前記右板材、前記左板材の車両進行方向後側に付けられ、
前記金属線の略コ字状に曲げられた前記他端の中央に、前記弾性部材を掛けるための半円状の延在部が設けられている車両用シート
【請求項2】
請求項1の車両用シートであって、
前記弾性部材は、コイルバネと前記コイルバネの両端から伸び前記金属線の前記半円状の延在部に掛かる係合片とから成る車両用シート
【請求項3】
乗員が着座するシートクッションを備える車両用シートであって、
乗員荷重を受けるため、車両進行方向に対して右側に設けられた右板材と左側に設けられた左板材と、
前記右板材、前記左板材をそれぞれ支持し、車両進行方向に垂直に設けられた複数の支持部材と、
前記支持部材の一端に係合し、前記支持部材の他端を上下方向に揺動可能にする係合部材と、
前記複数の支持部材の前記他端間に設けられ、前記他端間を引っ張り、前記複数の支持部材の前記他端の上下動を連動させる弾性部材と、から成り、
前記右板材、前記左板材の上下動を連動させるスタビライザーを前記シートクッションに備え、
前記右板材、前記左板材にそれぞれ設けられる前記複数の前記支持部材が、前記一端と前記他端が略コ字状に曲げられ、前記一端と前記他端とを繋ぐ直線部と、前記一端から延在するヘ字状の第1延在部と、前記他端から延在するヘ字状の第2延在部とを備える一組のループ状の金属線からなり、
前記支持部材は、前記直線部が2箇所、前記右板材、前記左板材に固定され、前記第1延在部の先端近傍が前記右板材、前記左板材に固定され、前記第2延在部の先端近傍が前記右板材、前記左板材に固定され、
前記一組の金属線の一方が、前記右板材、前記左板材の車両進行方向前側に付けられ、
他方が、前記右板材、前記左板材の車両進行方向後側に付けられ、
前記係合部材が、前記金属線の略コ字状に曲げられた前記一端を引っ掛けるフックから成る車両用シート
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シートクッション内のコイルスプリングにエアーダンパを配置し、エアーダンパによってシートクッションの沈み込みを制御し、乗員の不快感を軽減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-269029号公報
【文献】特開2016-97702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、複数のエアーダンパを用いるため、製造コストが嵩み、また、複雑な構成を採用しているため、長期に渡り信頼性を得るのは難しいと考えられる。
【0005】
本発明の目的は、着座乗員の車両左右方向の揺動を抑制できる車両用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、乗員が着座するシートクッションを備える車両用シートであって、乗員荷重を受けるため、車両進行方向に対して右側に設けられた右板材と左側に設けられた左板材と、前記右板材、前記左板材をそれぞれ支持し、車両進行方向に垂直に設けられた複数の支持部材と、前記支持部材の一端に係合し、前記支持部材の他端を上下方向に揺動可能にする係合部材と、前記複数の支持部材の前記他端間に設けられ、前記他端間を引っ張り、前記複数の支持部材の前記他端の上下動を連動させる弾性部材と、から成り、前記右板材、前記左板材の上下動を連動させるスタビライザーを前記シートクッションに備え、前記複数の前記支持部材が、前記一端と前記他端が略コ字状に曲げられた複数の金属線からなり、前記複数の金属線の一方が、前記右板材、前記左板材の車両進行方向前側に付けられ、
他方が、前記右板材、前記左板材の車両進行方向後側に付けられ、前記金属線の略コ字状に曲げられた前記他端の中央に、前記弾性部材を掛けるための半円状の延在部が設けられていることを技術的特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両用シートは、乗員荷重を受ける右側の右板材と左側の左板材とを連動させるスタビライザーをシートクッションに備えるため、スタビライザーを付加するという簡易且つ廉価な構成で、シートのクッション性を高めても着座乗員の車両左右方向の揺れを抑制し、乗員のホールド性を維持できる。また、構成が簡易であるため、長期に渡り高い信頼性を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1(A)は、本発明の第1実施形態に係る車両用シートのシートクッションの平面図であり、図1(B)はシートクッション内のバネ配置を示す平面図であり、図1(C)はバネ上にスタビライザーを配置した状態を示す平面図である。
図2図2(A)は、第1実施形態の車両用シートのスタビライザーの平面図であり、図2(B)は、スタビライザーの低面図である。
図3図3(A)は、第1実施形態の車両用シートのスタビライザーを上側から見た斜視図であり、図3(B)は、スタビライザーを下側から見た斜視図である。
図4図4(A)は、図2(A)に示す車両用シートのスタビライザーのa矢視図であり、図4(B)は、スタビライザーの動作の説明図である。
図5】スタビライザーの動作の説明図であり、図5(A)は直線走行時を、図5(B)は従来品の車両用シートのコーナ走行時を、図5(C)は第1実施形態の車両用シートのコーナ走行時を示している。
図6】本発明の第2実施形態に係る車両用シートのシートクッションの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
図1(A)は、本発明の第1実施形態に係る車両用シートのシートクッション20の平面図であり、図1(B)はシートクッション20内のバネ28R1、28R2、28L1、28L2の配置を示す平面図であり、図1(C)はバネ上にスタビライザー10を配置した状態を示す平面図である。図2(A)はスタビライザー10の平面図であり、図2(B)はスタビライザー10の底面図である。図3(A)は、スタビライザー10を上側から見た斜視図であり、図3(B)は、スタビライザーを下側から見た斜視図である。以下の説明において、「前」、「後」、「右」、「左」、「上」、「下」とは、車両進行方向から見た方向を意味する。
【0010】
車両用シートのシートクッション20は、図示しない一対の前後スライドレール上に車両前後方向に移動可能に支持されている。シートクッション20の後方、上側には図示しないシートバックが取付られている。シートクッション20は、シートフレーム24上にシート布22を覆うことにより構成されている。図1(B)に示されるように、シートフレーム24は、右側壁24Rと左側壁24Lと先端部24Fとから成るU字状の枠体である。シートフレーム24の右側壁24Rと左側壁24Lとの後方には、図示しないシートバックを傾動調整するためのシャフト26が設けられている。右第1バネ28R1、右第2バネ28R2、左第1バネ28L1、左第2バネ28L2の4本のバネは、略S字状の連続するS字状バネから成り、シャフト26とシートフレーム24の先端部24Fとの間に渡されている。右第1バネ28R1、右第2バネ28R2、左第1バネ28L1、左第2バネ28L2の下側には図示しないクッション材が収容されている。
【0011】
右第1バネ28R1、右第2バネ28R2、左第1バネ28L1、左第2バネ28L2の上側であって、前述したシート布22の下にスタビライザー10が配置されている。図2(A)に示されるようにスタビライザー10は、乗員荷重を受けるため、車両進行方向に対して右側に設けられた右板材12Rと左側に設けられた左板材12Lを備える。右板材12R、左板材12Lは略矩形の樹脂板から成り、通気及び軽量用の開口12aが複数設けられている。第1実施形態で、右板材12R、左板材12Lは樹脂板から成るが、右板材12R、左板材12Lは合板又は軽量金属板で形成することもできる。右板材12Rは一組の支持部材14Rf、14Rrにより支持される。支持部材14Rfは右板材12Rの車両進行方向の前側に付けられ、支持部材14Rrは右板材12Rの車両進行方向の後側に付けられる。左板材12Lは一組の支持部材14Lr、14Lfにより支持される。支持部材14Lfは左板材12Lの車両進行方向の前側に付けられ、支持部材14Lrは左板材12Lの車両進行方向の後側に付けられる。支持部材14Rf、14Rr、14Lr、14Lfは車両進行方向に垂直に設けられる。支持部材14Rf、14Rr、14Lr、14Lfは、図2(B)に示されるように略コ字状に曲げられた一端14oと略コ字状に曲げられた他端14eとを備えるループ状の金属線から成る。支持部材14は、更に、一端14oと他端14eとを繋ぐ直線部14sと、一端14oから延在するヘ字状の第1延在部14gと、他端14eから延在するヘ字状の第2延在部14fとを備える。直線部14sが2箇所、止め金具15で板材12に固定され、第1延在部14gの先端近傍が止め金具15で板材12に固定され、第2延在部14fの先端近傍が止め金具15で板材12に固定される。
【0012】
支持部材14の一端14oに係合するようにブラケット18が設けられ、支持部材14の他端14eが上下方向に揺動可能にされている。図3(A)に示されるようにブラケット18は、上面18u、下面18d、側面18sを備える断面略コ時状に形成されている。上面18uは、図1(C)に示すシートフレーム24の右側壁24R、左側壁24Lの上面24uに当接し、側面18sは、シートフレーム24の右側壁24R、左側壁24Lの内面24sに当接し、下面18dは、シートフレーム24の右側壁24R、左側壁24Lの下面(図示せず)に当接することで、ブラケット18は、シートフレーム24の右側壁24R、左側壁24Lに固定される。ブラケット18の側面18sに、支持部材14の一端14oに係合する断面略V字状のフック18seが形成されている。第1実施形態では、フック18seを備えるブラケットが用いられたが、シートフレーム24にフックを設けて支持部材14を引っかけることもできる。
【0013】
図2(A)に示される右側の支持部材14Rf、14Rrの他端14eと、左側の支持部材14Lf、14Lrの他端14eとの間には弾性部材16f、16rが設けられ、該弾性部材16f、16rにより右側の支持部材14Rf、14Rrの他端14eと、左側の支持部材14Lf、14Lrの他端14eとが引っ張られ、右側の支持部材14Rf、14Rrの他端14eと左側の支持部材14Lf、14Lrの他端14eの上下動が連動させられる。
【0014】
図4(B)に弾性部材16が拡大して示される。弾性部材16は、コイルバネ16sとコイルバネの両端から伸び支持部材14の他端14eに掛かる半円状の係合片16e、16eとを備える。支持部材14の略コ字状に曲げられた他端14eの略中央に半円状の延在部14eeが設けられている。弾性部材16の係合片16eは、支持部材14の半円状の延在部14eeに掛けられることで、弾性部材16は支持部材14に取り付けられる。ここで、弾性部材16はバネを備えたが、ゴム等で弾性部材を形成することも可能である。なお、押しさげられた右板材12R、左板材12Lを上側に押し上げる動きは、右第1バネ28R1、右第2バネ28R2、左第1バネ28L1、左第2バネ28L2により行われ、弾性部材16の張力は右第1バネ28R1、右第2バネ28R2、左第1バネ28L1、左第2バネ28L2よりも弱く設定されている。
【0015】
図4(A)は、図2(A)に示すスタビライザー10のa矢視図である。
乗員の荷重が左板材12Lよりも右板材12R側に大きく掛かることで、右板材12Rが沈み、右側のブラケット18Rfのフック18seに係合されている右側の支持部材14Rfが一端14oを中心として時計回り方向に傾動する。これにより、弾性部材16の張力を介して左側の支持部材14Lfが一端14oを中心として反時計回り方向に傾動する。これにより、右板材12Rの下向きの動きに、左板材12Lが連動させられる。
【0016】
乗員の荷重が右板材12Rよりも左板材12L側に大きく掛かることで、左板材12Lが沈み、左側のブラケット18Lfのフック18seに係合されている左側の支持部材14Lfが一端14oを中心として反時計回り方向に傾動する。これにより、弾性部材16の張力を介して右側の支持部材14Rfが一端14oを中心として時計回り方向に傾動する。これにより、左板材12Lの下向きの動きに、右板材12Rが連動させられる。
【0017】
第1実施形態のスタビライザー10では、左板材12Lと右板材12Rとの上下動が連動するため、着座乗員の右側或いは左側の一方のみが沈み込み難くなる。このため、右第1バネ28R1、右第2バネ28R2、左第1バネ28L1、左第2バネ28L2の張力を下げても着座乗員の右側或いは左側の一方のみが沈み込み難くい。これにより、右第1バネ28R1、右第2バネ28R2、左第1バネ28L1、左第2バネ28L2の張力を下げることで、シートの座り心地をソフトにして高めながら、着座乗員の車両左右方向への揺動を抑制することができる。
【0018】
図5は、スタビライザーの動作の説明図であり、図5(A)は直線走行時を、図5(B)は従来品の車両用シートのコーナ走行時を、図5(C)は第1実施形態の車両用シートのコーナ走行時を示している。図5(A)に示される直線走行時の例では、シート面に垂直方向に0.98Gが加わっている。図5(B)、図5(C)に示されるコーナ走行時の例では、シート面に垂直方向に0.98Gの重力が加わると同時に、平行方向に0.2Gの遠心力が加わっている。図5(B)に示されるスタビライザーを備えない従来品の車両用シートでは、シートに対する座骨の傾きは5.0゜であった。図5(C)に示される第1実施形態の車両用シートではシートに対する座骨の傾きは1.6゜に抑えられた。
【0019】
第1実施形態の車両用シートでは、横揺れの生じるコーナ走行時等に座骨の傾きが抑えられるので、着座乗員の上半身、頭部の傾きが小さくなり、着座乗員の車両左右方向の揺動を抑制でき、着席乗員の疲労を軽減できる。右側の右第1バネ28R1、右第2バネ28R2と左側の左第1バネ28L1、左第2バネ28L2とを連動させるスタビライザー10をシートクッションに備えるため、スタビライザー10を付加するという簡易且つ廉価な構成で、着座乗員の車両左右方向の揺動を抑制することができる。また、構成が簡易であるため、長期に渡り高い信頼性を備える。
【0020】
[第2実施形態]
図6は第2実施形態に係る車両用シートのシートクッションの平面図である。
第2実施形態のスタビライザー10は、第1実施形態のスタビライザー10と同様に形成されている。第2実施形態のスタビライザー10の右板材12Rは一本の右側のS字状バネ28Rのみで支持され、左板材12Lは一本の左側のS字状バネ28Lのみで支持されている。
【0021】
第2実施形態の車両用シートでは、スタビライザー10で着座乗員の安定を高めながら、S字状バネの本数を減らすことで、コストの低減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
上述した実施形態では、鋼線をS字状に折り曲げてなり、座面に平行に配置されるS字状バネを例示したが、座面に垂直に配置されるコイルバネにもスタビライザーは適用可能である。
【符号の説明】
【0023】
10:スタビライザー
12R:右板材
12R:右板材
14:支持部材
14o:一端
14e:他端
16:弾性部材
18:ブラケット
18se:フック
20:シートクッション
28L1:左第1バネ
28L2:左第2バネ
28R1:右第1バネ
28R2:右第2バネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6