(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】ロータリー成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 49/36 20060101AFI20220831BHJP
B29C 49/56 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B29C49/36
B29C49/56
(21)【出願番号】P 2019015186
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】河田 勝幸
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04197071(US,A)
【文献】特開平03-096318(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0180974(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0187730(US,A1)
【文献】特開平11-333915(JP,A)
【文献】特開2012-218446(JP,A)
【文献】特開2017-177592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/36
B29C 49/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2金型と、カム軸と、カム軌道部材を備えるロータリー成形機であって、
第1及び第2金型及び
前記カム軸は、公転軸を中心に回転するように構成され、
前記カム軌道部材は、カム軌道を有し、
前記カム軸は、前記回転に伴って前記カム軌道に沿うように移動し、
前記カム軸の移動に伴って第1及び第2金型が開閉し、
前記カム軸の長手方向を軸方向とすると、
第1及び第2金型が閉じた時点での前記軸方向と、第1及び第2金型が最も開いた時点での前記軸方向の間の角度が45度以下であ
り、
前記カム軸の移動がギア機構を介して伝達されて第1及び第2金型が開閉される、ロータリー成形機。
【請求項2】
請求項1に記載のロータリー成形機であって、
前記カム軌道は、周方向に沿って前記公転軸からの距離が変化するように構成される、ロータリー成形機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のロータリー成形機であって、
前記カム軌道部材は、ベース板を有し、
前記カム軌道は、前記ベース板に設けられた環状溝又は環状突起によって構成される、ロータリー成形機。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載のロータリー成形機であって、
第1及び第2金型は、ヒンジ部で連結されており、
第1及び第2金型は、前記ヒンジ部を中心とする相対回転によって開閉される、ロータリー成形機。
【請求項5】
請求項
1~請求項4の何れか1つに記載のロータリー成形機であって、
前記ギア機構は、直線移動を回転移動に変換する機構である、ロータリー成形機。
【請求項6】
請求項1~請求項
5の何れか1つに記載のロータリー成形機であって、
前記公転軸は、水平面に対する角度が45度以下である、ロータリー成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリー成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のロータリー成形機では、一対の金型を公転させながら開閉することによって、一対の金型の間へのパリソンの供給、パリソンの成形、及び成形体の取り出しを行っている。一対の金型の開閉は、一対の金型の一方と一体である連結杆に保持されたカムローラをカム軌道によって移動させることによって行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、一対の金型を閉じた時点での連結杆の方向と、一対の金型が最も開いた時点での連結杆の方向の間の角度が90度以上になっている。このため、カム軌道を立体的に非常に大きく変位させる必要があり、そのようなカム軌道を実現するレールの製造難易度が非常に高い。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、製造が容易なロータリー成形機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、第1及び第2金型と、カム軸と、カム軌道部材を備えるロータリー成形機であって、第1及び第2金型及びカム軸は、公転軸を中心に回転するように構成され、前記カム軌道部材は、カム軌道を有し、前記カム軸は、前記回転に伴って前記カム軌道に沿うように移動し、前記カム軸の移動に伴って第1及び第2金型が開閉し、前記カム軸の長手方向を軸方向とすると、第1及び第2金型が閉じた時点での前記軸方向と、第1及び第2金型が最も開いた時点での前記軸方向の間の角度が45度以下である、ロータリー成形機が提供される。
【0007】
本発明では、第1及び第2金型が閉じた時点でのカム軸の軸方向と、第1及び第2金型が最も開いた時点でのカム軸の軸方向の間の角度が45度以下である。このため、特許文献1に比べて、カム軌道の立体的な変位が小さく、そのようなカム軌道の実現が特許文献1に比べて容易である。このため、本発明によれば、製造が容易なロータリー成形機が提供される。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記記載のロータリー成形機であって、前記カム軌道は、周方向に沿って前記公転軸からの距離が変化するように構成される、ロータリー成形機である。
好ましくは、前記記載のロータリー成形機であって、前記カム軌道部材は、ベース板を有し、前記カム軌道は、前記ベース板に設けられた環状溝又は環状突起によって構成される、ロータリー成形機である。
好ましくは、前記記載のロータリー成形機であって、第1及び第2金型は、ヒンジ部で連結されており、第1及び第2金型は、前記ヒンジ部を中心とする相対回転によって開閉される、ロータリー成形機である。
好ましくは、前記記載のロータリー成形機であって、前記カム軸の移動がギア機構を介して伝達されて第1及び第2金型が開閉される、ロータリー成形機である。
好ましくは、前記記載のロータリー成形機であって、前記ギア機構は、直線移動を回転移動に変換する機構である、ロータリー成形機である。
好ましくは、前記記載のロータリー成形機であって、前記公転軸は、水平面に対する角度が45度以下である、ロータリー成形機である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態のロータリー成形機1の正面図である。
【
図2】位置P1にある状態の金型ユニット3の左側面図である。
【
図3】
図3Aは、位置P1とP2の間にある状態の金型ユニット3の左側面図であり、
図3Bは、位置P2の間にある状態の金型ユニット3の左側面図である。
【
図4】カム軸3hの円筒部3h1がカム軌道部材5の環状溝5b内に配置されている状態の斜視図である。
【
図5】15個の金型ユニット3のカム軸3hがカム軌道部材5の環状溝5b内に配置されている状態の正面図である。
【
図6】レール11によって構成されたカム軌道5cを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0011】
1.ロータリー成形機1
図1~
図5に示すように、本発明の一実施形態のロータリー成形機1は、環状ベース2と、複数の金型ユニット3と、押出ヘッド4と、カム軌道部材5を備える。本実施形態では、15の金型ユニット3が環状ベース2の周方向に沿って等間隔に配置されている。
【0012】
図2に示すように、各金型ユニット3は、支柱3aと、第1金型(固定型)3bと、第2金型(可動型)3cと、ヒンジ部3dと、ピニオンギア3eと、ラックギア3fと、支持壁3gと、カム軸3hを備える。カム軸3hは、円筒部3h1と、軸部3h2を備える。
【0013】
支柱3a及び支持壁3gは、環状ベース2に固定されている。第1金型3bは、支柱3aに固定されている。第2金型3cは、ヒンジ部3dを介して第1金型3bに固定されている。このため、第2金型3cがヒンジ部3dを中心に回転することによって第1金型3bと第2金型3cが開閉可能になっている。
【0014】
ピニオンギア3eは、第2金型3cに固定されており、ヒンジ部3dを中心にピニオンギア3eを回転させることによって第2金型3cを回転させることができる。ラックギア3fは、リニアガイド(不図示)を介して支持壁3gに連結されている。ラックギア3fには、軸部3h2が固定されている。軸部3h2は、ベアリングを介して円筒部3h1に固定されている。
【0015】
図2は、金型3b,3cが最も開いた状態を示し、
図3Aは、金型3b,3cを閉じる途中の状態を示し、
図3Bは、金型3b,3cを閉じた後の状態を示す。
【0016】
図2の状態から円筒部3h1が上昇すると、軸部3h2とラックギア3fも一緒に上昇する。ラックギア3fの上昇に伴ってピニオンギア3e及び第2金型3cが時計回りに回転し、
図3Aの状態となる。円筒部3h1をさらに上昇させると、第2金型3cがさらに時計回りに回転して
図3Bの状態となる。
【0017】
図3Bの状態から円筒部3h1が下降すると、軸部3h2とラックギア3fも一緒に下降する。ラックギア3fの下降に伴ってピニオンギア3e及び第2金型3cが反時計回りに回転し、
図3Aの状態となる。円筒部3h1をさらに下降させると、第2金型3cがさらに反時計回りに回転して
図2の状態となる。
【0018】
このように、ラックギア3fとピニオンギア3eによって構成されるギア機構によって、カム軸3hの直線移動が金型3cの回転移動に変換されて、金型3b,3cが開閉される。なお、ギア機構は、直線移動を回転移動に変換可能な別の機構であってもよい。
【0019】
このように、円筒部3h1を上下方向に平行移動させることによって金型3b,3cを開閉させることが可能になっている。
【0020】
環状ベース2は、不図示の回転駆動機構によって公転軸Cを中心に回転可能になっている。環状ベース2の回転に伴って金型ユニット3も回転する。従って、環状ベース2の回転に伴って、金型3b,3c及びカム軸3hが公転軸Cを中心に回転する。環状ベース2は、
図1では、時計周りに回転する。
【0021】
図4~
図5に示すように、カム軌道部材5は、ベース板5aを有し、ベース板5aに環状溝5bが設けられている。環状溝5bによってカム軌道5cが構成されている。カム軸3hの円筒部3h1は環状溝5b内に配置されており、環状ベース2の回転に伴って、円筒部3h1が環状溝5b(カム軌道5c)に沿って移動し、その結果、カム軸3h及びラックギア3fが環状溝5b(カム軌道5c)に沿って移動する。ベース板5aにカム軌道5cが設けられているので、公転軸Cを中心にベース板5aを回転させることによって、金型3a,3bの開閉タイミングを容易に変更可能である。
【0022】
図5に示すように、カム軌道5cは、周方向に沿って公転軸Cからの距離Dが変化するように構成されている。位置P1及びP2での公転軸Cからのカム軌道5cの内周面までの距離をそれぞれD1,D2とすると、以下のことがいえる。
・位置P1において距離Dが最小(D1)である。
・位置P1からP2に向かう間に距離Dが徐々に大きくなる。
・位置P2とP3の間で距離Dが一定(D2)である。
・位置P3からP4に向かう間に距離Dが徐々に小さくなる。
・位置P4とP1の間で距離Dが一定(D1)である。
【0023】
カム軸3hはカム軌道5cに沿って移動するので、距離Dの増減は、
図2~
図3でのカム軸3hの昇降に相当する。このため、カム軸3hがカム軌道5cに沿って移動することによって、金型3b,3cを開閉することができる。
【0024】
金型3b,3cの開閉動作は、以下のようになる。
・位置P1において金型3b,3cが最も開いた状態になっている。
・位置P1からP2に向かう間に金型3b,3cが徐々に閉じる。
・位置P2とP3の間で金型3b,3cが閉じている。
・位置P3からP4に向かう間に金型3b,3cが徐々に開く。
・位置P4とP1の間で金型3b,3cが最も開いた状態になっている。
【0025】
図4に示すように、環状溝5bの側面5b1は、ベース板5aの主面に垂直であり、円筒部3h1の外周面が環状溝5bの側面5b1に当接しながらカム軸3hが移動するので、カム軸3hは、その軸方向(長手方向)Xを変化させずに、平行移動する。位置P1及びP2での軸方向をそれぞれX1,X2とすると、金型3b,3cが閉じた時点(位置P2の時点)での軸方向X2と、金型3b,3cが最も開いた時点(位置P1の時点)での軸方向X1の間の角度が0度である。カム軸3hの軸方向は、円筒部3h1の中心軸の方向と一致する。
【0026】
なお、環状溝5bの側面を傾斜させることによってカム軸3hの軸方向Xを変化させることも可能である。但し、軸方向Xの変化を大きくすると、カム軌道5cを形成することが困難になったり、カム軸3hの動作が不安定になったりしやすいので、軸方向X1,X2の間の角度は45度以下が好ましい。この角度は、具体的には例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0027】
本実施形態では、公転軸Cは、水平面に平行であり、このために、ロータリー成形機1の上方に設置した押出ヘッド4から金型3b,3cの間にパリソン8を投入するのが容易になっている。パリソン8は、溶融樹脂で形成されており、筒状であることが好ましいがシート状であってもよい。また、パリソン8の投入方向は、金型3b,3cの回転軌跡の接線方向であることが好ましい。水平面に対する公転軸Cの角度は、45度以下が好ましく、具体的には例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0028】
2.ロータリー成形方法
ロータリー成形機1を用いて、ロータリー成形を行うことができる。
【0029】
本発明の一実施形態のロータリー成形方法は、パリソン投入工程と、成形工程と、取り出し工程を備える。
【0030】
パリソン投入工程は、開いた状態の金型3b,3cの間に、押出ヘッド4から押し出されたパリソン8を金型3b,3cの間に投入する。金型3b,3cは、位置P4とP1の間で最も開いた状態になっており、その後、位置P1からP2に向かう間に徐々に閉じるので、位置P4からP2までの所望の位置において、金型3b,3c間にパリソン8を投入することができる。但し、位置P4に近い位置でパリソン8を投入しようとすると、押出ヘッド4やパリソン8が成形体9と干渉しやすく、位置P2に近い位置において、パリソン8を投入しようとすると、パリソン8が金型3b,3cに干渉しやすいので、パリソン投入工程は、位置P4とP1の中央位置P41と、位置P1とP2の中央位置P12の間において行うことが好ましい。
【0031】
成形工程では、金型3b,3cによってパリソン8の成形を行う。金型3b,3cが閉じた状態で金型3b,3c内に形成されるキャビティは、成形体9の外形に対応する形状になっているため、金型3b,3cを用いた成形によって成形体9を形成することができる。成形は、ブロー成形であってもよく、真空成形であってもよい。
【0032】
取り出し工程では、開いた状態の金型3b,3cから成形体9を取り出す。金型3b,3cは、位置P3からP4に向かう間に徐々に開き、その後、位置P4とP1の間で最も開いた状態になる。このため、位置P3からP1までの所望の位置において、成形体9を取り出すことができる。但し、位置P3に近い位置で成形体9を取り出そうとすると、成形体9が金型3b,3cに干渉しやすく、位置P1に近い位置で成形体9を取り出そうとすると、成形体9が押出ヘッド4やパリソン8に干渉しやすいので、取り出し工程は、位置P3とP4の中央位置P34と、位置P4とP1の中央位置P41の間において行うことが好ましい。また、金型3b,3c、成形体9、取り出し装置の干渉を避けるために、金型3b,3cが完全に開いてから成形体9を取り出すことが好ましいので、取り出し工程は、位置P4と位置P1の間で行うことが好ましく、位置P4と位置P41の間で行うことがさらに好ましい。
【0033】
3.その他の実施形態
・上記実施形態では、環状溝5bによってカム軌道5cを構成したが、ベース板5aに設けた環状突起によってカム軌道5cを構成してもよい。
・
図6に示すように、レール11によってカム軌道5cを構成してもよい。
・金型3b,3cの両方が回転することによって金型3b,3cが開閉するように構成してもよい。
・金型3b,3cは、平行に接近及び離間させることによって開閉させる構成であってもよい。
・カム軸3hが金型に直接連結された構成であってもよい。
・金型3b,3cは、一定速度で開閉するように構成してもよく、開閉速度が変化するようにしてもよい。例えば、金型3b,3cが位置P1からP2に向かう間に、金型3b,3cが閉じる速度が徐々に高まるようにしてもよい。このようにすることによって、パリソン8と金型3cの干渉を避けやすくなる。金型3b,3cの開閉速度は、カム軌道5cを変更することによって調整可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 :ロータリー成形機
2 :環状ベース
3 :金型ユニット
3a :支柱
3b :第1金型
3c :第2金型
3d :ヒンジ部
3e :ピニオンギア
3f :ラックギア
3g :支持壁
3h :カム軸
3h1 :円筒部
3h2 :軸部
4 :押出ヘッド
5 :カム軌道部材
5a :ベース板
5b :環状溝
5b1 :側面
5c :カム軌道
8 :パリソン
9 :成形体