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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】側枝開口方向検出装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/04 20060101AFI20220831BHJP
   A61C 5/40 20170101ALI20220831BHJP
【FI】
A61C19/04 Z
A61C5/40
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018083889
(22)【出願日】2018-04-25
(65)【公開番号】P2019187776
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】591065697
【氏名又は名称】藤栄電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000141598
【氏名又は名称】株式会社吉田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 正博
(72)【発明者】
【氏名】山中 通三
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-035331(JP,A)
【文献】特開平06-197870(JP,A)
【文献】特開平07-051293(JP,A)
【文献】実開昭62-166822(JP,U)
【文献】特開平06-237932(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0021720(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/04
A61C 5/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査歯の根管に形成された側枝の開口方向を検出するための側枝方向検出用電極と、
当該側枝方向検出用電極を回転駆動させる回転駆動用電動モータと、
当該回転駆動用電動モータを備え前記側枝方向検出用電極を着脱可能に保持するホルダと、を備えた側枝開口方向検出装置であって、
前記側枝方向検出用電極は、当該側枝方向検出用電極を形成する導電性金属と、
当該導電性金属を覆う絶縁膜と、
当該絶縁膜の一部を剥離するようにして形成された側枝方向検出用の開口部と、
前記側枝方向検出用電極の基端側に形成された支持部と、
を備え、
側枝方向検出用の前記開口部に流れる電流値及び/または指示値を検出して、一定時間内に検出値が予め設定した一定変動範囲内に安定したときに、前記回転駆動用電動モータを回転駆動させて、前記側枝の開口方向の検出をスタートさせる測定開始スイッチ、あるいは、前記側枝の開口方向の検出を自動的にスタートさせる自動測定開始手段を備え
前記回転駆動用電動モータによって前記側枝方向検出用電極が1回転したときに、前記回転駆動用電動モータの回転を停止させる回転停止手段を備えていること
を特徴とする側枝開口方向検出装置。
【請求項2】
被検査歯の根管に形成された側枝の開口方向を検出するための側枝方向検出用電極と、
当該側枝方向検出用電極を着脱可能に保持するホルダと、を備えた側枝開口方向検出装置であって、
前記側枝方向検出用電極は、当該側枝方向検出用電極を形成する導電性金属と、
当該導電性金属を覆う絶縁膜と、
当該絶縁膜の一部を剥離するようにして形成された側枝方向検出用の開口部と、
前記側枝方向検出用電極の基端側に設けられた保持部と、
を備え、
前記側枝開口方向検出装置は、
側枝方向検出用の前記開口部に流れる電流値及び/または指示値を検出して、一定時間内に検出値が予め設定した一定変動範囲内に安定したときに、前記側枝の開口方向の検出をスタートさせる測定開始スイッチ、あるいは、前記側枝の開口方向の検出を自動的にスタートさせる自動測定開始手段と、
被検査歯の根尖の位置を検出する根尖位置検出機構と、
側枝方向検出用の前記開口部に流れる電流値及び/または指示値と、予め実測して記録しておいた側枝開口位置の電流値及び/または指示値データとを比較する制御部と、
側枝方向検出用の前記開口部に流れる電流値及び/または指示値と、予め実測して記録しておいた側枝開口位置の電流値及び/または指示値データとを比較して一致したときに報知する報知手段と、
側枝方向検出用の前記開口部に流れる電流値及び/または指示値と、予め実測して記録しておいた側枝開口位置の電流値及び/または指示値データとを比較して一致したときに、前記側枝方向検出用電極に設けたストッパーを前記被検査歯に当接させ、前記側枝から前記ストッパーまでの距離を測定する測定手段と、
を備え、
前記側枝方向検出用電極の前記開口部を、前記報知手段が報知した前記根管内の略側枝開口位置まで挿入して、前記側枝方向検出用電極を1回転させて前記側枝の位置方向を測定すること
を特徴とする側枝開口方向検出装置。
【請求項3】
前記側枝方向検出用電極を回転させることによって得られる電流値及び/または指示値から前記側枝の歯根軸周りの位置を検出するための側枝位置検出手段を備えていること
を特徴とする請求項1または請求項に記載の側枝開口方向検出装置。
【請求項4】
前記側枝位置検出手段は、前記根管の長さを測定する根管長測定器に接続する1対の測定器接続手段を備えていること
を特徴とする請求項に記載の側枝開口方向検出装置。
【請求項5】
前記側枝位置検出手段は、口腔内、口腔外、あるいは、頬に接触させるアース用電極を備えていること
を特徴とする請求項または請求項に記載の側枝開口方向検出装置。
【請求項6】
前記側枝位置検出手段は、当該側枝位置検出手段に取り付けた前記側枝方向検出用電極
を前記根管内に送り込む自動繰出機構を備えていること
を特徴とする請求項に記載の側枝開口方向検出装置。
【請求項7】
前記側枝位置検出手段は、前記側枝方向検出用電極の上部に設けられた支持部を支持する弾性部材から成る接触子を備えていること
を特徴とする請求項または請求項に記載の側枝開口方向検出装置。
【請求項8】
前記ホルダには、
当該ホルダから下方向に向けて突出形成されて、側枝方向検出用電極を前記根管に挿入するときに、下端を前記被検査歯の上部に突き当てるためのガイド部と、
前記側枝方向検出用電極を前記根管内に送り込んだり、引き出したり、高速・低速回転させたりするための自動繰出機構と、
が設けられていること
を特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の側枝開口方向検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯牙の根管内から歯根膜腔に延びる側枝の開口方向を検出するのに使用される側枝開口方向検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯牙の根管から歯根膜腔に延びた側枝を検出する装置としては、特許文献1,2に記載された側枝検出装置が知られている。特許文献1,2に記載の側枝検出装置は、根管内に挿入される測定電極と、口腔内表面に配置される口腔電極と、測定電極に複数の測定用信号を印加する電源と、測定電極と口腔電極との間で検出される測定データに基づいて、根管から歯根膜腔に延びる側枝の有無を示す表示用データを出力するデータ処理部と、表示用データを表示する表示部と、から構成されている。その側枝検出装置は、測定電極が根管内に挿入されるに従って変化する表示用データの推移の波形により、側枝の有無を表示部に表示する装置である。
【0003】
特許文献1の側枝検出装置に使用される測定電極は、術者が手で持って歯牙の根管を切削するリーマ、または、ファイルから成る手用切削具が使用されている。測定電極は、測定電極を形成する導電性金属部と、この導電性金属部を覆った絶縁被膜と、導電性金属部の先端部近傍の位置ある絶縁被膜を隔離した状態の開口部と、術者が手で把持するハンドル部と、を備えている。
【0004】
特許文献2の側枝検出装置は、側枝の開口方向を表示することができる装置である。特許文献2の側枝検出装置は、特殊リーマから成る測定電極を歯牙の根管に挿入するときに、予め測定電極の開口部の位置を固定した場合、挿入位置のデータと、電流値の最大値及び最小値と、から側枝方向を判断可能になっている。
【0005】
また、特許文献2の側枝検出装置は、測定電極を回転駆動させるモータを使用することで、測定電極を安定した回転にして、電流値の最大値及び最小値を記録できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5058713号公報
【文献】特許第6035390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の側枝検出装置は、リーマまたはファイルから成る手用切削具を測定電極として使用して手動で移動させているので、回転速度が不安定で、手触れするため、側枝の検出精度が低いという問題点があった。
また、特許文献1の側枝検出装置は、測定電極を手動で回転させているので、一定な回転速度で、所定位置から360度回転させて停止させることが難しく、測定する電流値の値が誤差となって表れるという問題点があった。
【0008】
また、特許文献2の側枝検出装置は、電流値の最大値及び最小値を測定するのに、複数回のピークを求めて比較しなければならないので、測定電極を複数回回転させる必要があるという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、側枝の開口方向をさらに高い精度で容易に検出することができる側枝開口方向検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明に係る側枝開口方向検出装置は、被検査歯(歯牙)の根管に形成された側枝の開口方向を検出するための側枝方向検出用電極と、当該側枝方向検出用電極を回転駆動させる回転駆動用電動モータと、当該回転駆動用電動モータを備え前記側枝方向検出用電極を着脱可能に保持するホルダと、を備えた側枝開口方向検出装置であって、前記側枝方向検出用電極は、当該側枝方向検出用電極を形成する導電性金属と、当該導電性金属を覆う絶縁膜と、当該絶縁膜の一部を剥離するようにして形成された側枝方向検出用の開口部と、前記側枝方向検出用電極の基端側に形成された支持部と、を備え、側枝方向検出用の前記開口部に流れる電流値及び/または指示値を検出して、一定時間内に検出値が予め設定した一定変動範囲内に安定したときに、前記回転駆動用電動モータを回転駆動させて、前記側枝の開口方向の検出をスタートさせる測定開始スイッチ、あるいは、前記側枝の開口方向の検出を自動的にスタートさせる自動測定開始手段を備え、前記回転駆動用電動モータによって前記側枝方向検出用電極が1回転したときに、前記回転駆動用電動モータの回転を停止させる回転停止手段を備えていることを特徴とする。
ここで、指示値とは、表示部に表示された表示用データをいう。
【0011】
また、本発明に係る側枝開口方向検出装置は、被検査歯(歯牙)の根管に形成された側枝の開口方向を検出するための側枝方向検出用電極と、当該側枝方向検出用電極を着脱可能に保持するホルダと、を備えた側枝開口方向検出装置であって、前記側枝方向検出用電極は、当該側枝方向検出用電極を形成する導電性金属と、当該導電性金属を覆う絶縁膜と、当該絶縁膜の一部を剥離するようにして形成された側枝方向検出用の開口部と、前記側枝方向検出用電極の基端側に設けられた保持部と、を備え、前記側枝開口方向検出装置は、側枝方向検出用の前記開口部に流れる電流値及び/または指示値を検出して、一定時間内に検出値が予め設定した一定変動範囲内に安定したときに、前記側枝の開口方向の検出をスタートさせる測定開始スイッチ、あるいは、前記側枝の開口方向の検出を自動的にスタートさせる自動測定開始手段と、被検査歯の根尖の位置を検出する根尖位置検出機構と、側枝方向検出用の前記開口部に流れる電流値及び/または指示値と、予め実測して記録しておいた側枝開口位置の電流値及び/または指示値データとを比較する制御部と、側枝方向検出用の前記開口部に流れる電流値及び/または指示値と、予め実測して記録しておいた側枝開口位置の電流値及び/または指示値データとを比較して一致したときに報知する報知手段と、側枝方向検出用の前記開口部に流れる電流値及び/または指示値と、予め実測して記録しておいた側枝開口位置の電流値及び/または指示値データとを比較して一致したときに、前記側枝方向検出用電極に設けたストッパーを前記被検査歯に当接させ、前記側枝から前記ストッパーまでの距離を測定する測定手段と、を備え、前記側枝方向検出用電極の前記開口部を、前記報知手段が報知した前記根管内の略側枝開口位置まで挿入して、前記側枝方向検出用電極を1回転させて前記側枝の位置方向を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、側枝の開口方向をさらに高い精度で容易に検出することができる側枝開口方向検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る側枝開口方向検出装置の一例を示す概略説明図である。
図2】側枝位置検出手段を示す図で、ガイド部を省略した側枝位置検出手段の拡大概略側面図である。
図3】(a)は側枝を有する歯牙の拡大概略横断面図、(b)は側枝方向検出用電極の要部拡大概略横断面図、(c)は側枝方向検出用電極の拡大側面図である。
図4】根管長測定器の報知手段の一例を示す正面図である。
図5】側枝開口方向検出装置に使用される測定器接続手段の一例を示す概略説明図である。
図6】側枝位置検出手段のホルダの一例を示す拡大概略分解斜視図である。
図7】(a)側枝位置検出手段のキャップの一例を示す拡大概略底面図、(b)はホルダの一例を示す拡大底面図である。
図8】(a)側枝位置検出手段のキャップの一例を示す拡大概略平面図、(b)はホルダの内部構造の一例を示す拡大概略説明図である。
図9】側枝位置検出手段の電気回路図である。
図10】側枝位置検出手段に配設された回転停止手段の一例を示す拡大概略底面図であり、(a)はOFFのときの状態を示す、(b)はONのときの状態を示す。
図11】側枝位置検出手段に設けられた自動繰出機構に一例を示す拡大概略説明図である。
図12】根管内の側枝がある位置で側枝方向検出用電極を支持して回転させて電流の測定データを示すグラフである。
図13】側枝がある根管内に側枝方向検出用電極を挿入して側枝方向検出用電極を根管内から抜き取るまでの電流の測定データを示すグラフである。
図14】測定用信号2KHzと500Hzを使用して根管内の側枝がある位置で側枝方向検出用電極を1回転させたときの電流値を示すグラフである。
図15】本発明の実施形態に係る側枝開口方向検出装置の第1変形例を示す図であり、側枝開口方向検出装置に使用される測定器接続手段の一例を示す概略説明図である。
図16】本発明の実施形態に係る側枝開口方向検出装置の第1変形例を示す図であり、(a)は手動式の側枝位置検出手段の拡大概略側面図、(b)は側枝方向検出用電極を取り外した状態の手動式の側枝位置検出手段の拡大概略平面図である。
図17】本発明の実施形態に係る側枝開口方向検出装置の第2変形例を示す図であり、側枝開口方向検出装置に使用される測定器接続手段の一例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、図1図14を参照して、本発明の実施形態に係る側枝開口方向検出装置1及び側枝開口方向検出方法を説明する。
なお、本実施形態では、図1に示す側枝開口方向検出装置1において、側枝位置検出手段2の側枝方向検出用電極3側を前方向、接続端子21a側を後方向、被検査歯a側を下方向として説明する。
【0016】
≪側枝開口方向検出装置≫
図1に示すように、側枝開口方向検出装置1は、歯牙(被検査歯a)の根管bから歯根膜腔hに延びた側枝eの開口方向を検出する装置である。側枝開口方向検出装置1は、電源7、制御部8及び表示部41等を備えた側枝検出機能付きの根管長測定器4と、根管長測定器4に接続されて側枝方向検出用電極3を有する側枝位置検出手段2と、測定器接続手段6と、を主に備えて構成されている。側枝開口方向検出装置1は、側枝方向検出用の開口部32a(図2(a)参照)に流れる電流値の最小値を検出したときの開口部32aの位置から、根管bから歯根膜腔hに延びた側枝eの根管軸径方向の位置を自動的に検出可能である。
【0017】
<根管長測定器>
根管長測定器4は、被検査歯aの根管bを治療する際に、根管治療に先立って行われる根管長の測定と、側枝eの有無の検出と、側枝eの有る位置を示す表示と、を行う側枝検出機能付きの測定表示装置である。根管長測定器4は、電源7と、信号切換部11と、整合部12と、増幅部13と、変換部14と、データ処理部15と、第1の記憶部16と、第2の記憶部17と、表示部41と、制御部8と、アース電極60及びリード線9を有する測定器接続手段6(図5参照)と、を備えている。根管長測定器4は、側枝方向検出用の開口部32a(図2参照)の位置を報知する報知手段40としても機能する。根管長測定器4(報知手段40)は、被検査歯aの根管b内に挿入した側枝方向検出用電極3の先端位置を検出して、表示部41に表示するように構成されている。また、根管長測定器4は、側枝方向検出用電極3の開口部32aが、側枝eの付近になると報知手段40のアイコンによって報知するように構成されている。
【0018】
図1に示す電源7は、1つまたは複数の異なる周波数の測定用信号Pnを出力する。その一例を挙げると、電源7は、500Hzと、2KHzとの2つの周波数の測定用信号Pnを出力する。なお、電源7は、根管長測定器4内に配置された電池、または、家庭用電源から成る。
信号切換部11は、制御部8の指示に従って、500Hzまたは2KHzの周波数の測定用信号Pnを選択、または、切り換えて順次、整合部12へ送る。
【0019】
整合部12は、根尖位置、側枝位置及び側枝方向検出用の測定電極(以下、「側枝方向検出用電極3」という)に送る測定用信号Pnを、測定に適した電圧に変換し、増幅部13に送る。また、整合部12は、側枝方向検出用電極3に送る測定用信号Pnを、安全な電圧に変換する。
増幅部13は、被検査歯aの歯肉dに配置した電極端子5(口腔電極)から得られる測定データ(測定された測定電流In)を変換された電圧Vnに変換し増幅する。
変換部14は、測定された測定電流Inを直流電圧Vdcに変換する。
制御部8は、側枝開口方向検出装置1の各要素の制御をつかさどり、処理する。制御部8は、後記する自動測定開始手段81を備えている。制御部8は、電源7、データ処理部15、表示部41に電気的に接続されている。
【0020】
表示部41は、制御部8の指示に従い、直流電圧Vdcに基づいた測定結果を表示し、及び/または警告音を発する。表示部41は、データ処理部15で出力したデータを選択的に、または、一括して表示することができる。なお、表示部41の表示については、さらに、後で詳述する。
【0021】
データ処理部15は、直流電圧Vdcに対して表示部41に送信する表示用データを作成する。電源7から側枝方向検出用電極3(例えば、リーマ)に、例えば、500Hzまたは2KHzの各周波数の測定用信号Pnを印加すると、側枝方向検出用電極3と電極端子5間から各周波数毎の2種類の測定データ(In500HzとIn2KHz)が測定される。この2種類の測定データ(In500Hz,In2KHz)は、側枝方向検出用電極3を根管b内で根尖iに向かって挿入して行く過程で、順次測定される。
【0022】
根尖位置検出機構15aは、根尖iの位置を検出する装置である。電極位置検出機構15bは、側枝方向検出用電極3の先端の位置を検出する装置である。側枝及び側枝位置検出機構15cは、側枝eの有無と、側枝eの位置を検出する装置である。側枝方向検出機構15dは、側枝eの開口方向を検出する装置である。データ処理部15は、それらの検出機構15a~15dを選択的に切り替えることができる。データ処理部15に切替機構を設け、この切替機構により、これらの検出機構15a~15dを切り替えてもよい。
【0023】
図1に示す第1の記憶部16は、複数のモデル歯根尖位置測定データグループと、複数のモデル歯位置測定データグループと、を記憶している。各モデル歯根尖位置測定データグループは、側枝方向検出用電極3の先端が各々のモデル歯の根尖位置に配置された状態における、電極端子5から出力される複数の測定された信号(測定された電流In,電流Inを増幅し変換した電圧Vn、または、電圧Vnを変換した直流電圧Vdc)から構成されている。
【0024】
複数のモデル歯位置測定データグループは、側枝方向検出用電極3の先端がモデル歯の各々の根管b内における複数の所定位置の各々に配置された状態における、電極端子5から出力される複数の測定された信号(In、VnまたはVdc)、及び、根尖位置から側枝方向検出用電極3の先端までの距離を表示する指示値の組から構成されている。各モデル歯位置測定データグループは、モデル歯毎に異なる。各モデル歯位置測定データグループは、根尖iがあり、側枝eが無い各モデル歯で測定された測定データである。複数のモデル歯根尖位置測定データグループと、複数のモデル歯位置測定データグループは、側枝位置検出前に、予め第1の記憶部16に記憶されている。
【0025】
第2の記憶部17は、側枝方向検出用電極3が根管b内に挿入されるのに従って変化する、根尖位置から側枝方向検出用電極3の先端までの距離を表示する指示値が凸状に示した際の複数の測定された信号(In、VnまたはVdc)及び指示値を記憶する。
【0026】
≪側枝方向検出用電極≫
図2に示すように、側枝方向検出用電極3(リーマ電極)は、側枝検出時、根管長計測時、及び、側枝方向検出時に、被検査歯aの根管bに形成された側枝eの開口方向等を検出するために使用される測定電極である。また、この側枝方向検出用電極3は、被検査歯aの根管bを拡大させる根管拡大装置の根管切削用工具としても使用可能である。このため、側枝方向検出用電極3は、リーマあるいはファイルといわれているドリル形状に形成されている。図3(a)~(c)に示すように、側枝方向検出用電極3は、導電性金属31と、絶縁膜32と、側枝方向検出用の開口部32aと、支持部31aと、ストッパー34と、を有して成る。側枝方向検出用電極3は、根管bを拡大させる際に、回転駆動用電動モータM1(図8参照)によって回転駆動される位置検出用電極回転歯車24(図8参照)と同回転するチャック部20a(図5参照)に取り付けられ高速回転され、また、根管b及び側枝eを検出する際には、低速回転で定速駆動される。
【0027】
導電性金属31は、側枝方向検出用電極本体を形成する金属である。図7(b)に示すように、導電性金属31の外周部には、弾性リード線21bの金属接点部21dが接触・離間可能な位置に配置される。導電性金属31の上部には、支持部31aが設けられている。導電性金属31は、ステンレス鋼、超硬鋼、ニッケル・チタン合金(NiTi)等から成る。なお、導電性金属31は、導電性の金属から成るものであればよく、特に限定されない。
【0028】
図5に示すように、支持部31aは、側枝方向検出用電極3をチャック部20aに挿入して固定させると共に、ホルダ20側に電気的に接続させるための部位である。支持部31aは、導電性金属31の上端部(基端側)に一体形成された円柱形状の特殊電極部から成る。支持部31aの外周部には、軸線に沿って延設されたキー溝状の溝31bが形成されている。支持部31aは、チャック部20a内に取り付けた際に、図8に示す位置検出用電極回転歯車24及びカム部24bの軸孔内に装入されると共に、チャック部20aの内面に突出形成されたピン部20bが溝31bに係合することで、装着されている。
【0029】
図3(b)、(c)に示すように、絶縁膜32は、少なくとも根管b内に挿入される部分の導電性金属31の表面を覆う絶縁性の絶縁材料の薄膜から成る。絶縁膜32は、根管bを拡大可能な切削硬度を有した絶縁材料によって形成されている。絶縁膜32の一部には、側枝方向検出用の開口部32aが形成されている。その絶縁材料は、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、セラミックコーティング等から成る。絶縁材料は、具体例を挙げると、窒化チタン(TiN)、炭窒化チタン(TiCN)、窒化チタンアルミ(TiAIN)、窒化クロム(CrN)等の硬質皮膜のPVDコーティング(physical Vapor Deposition:物理的蒸着法)や、チタンコーティングが好ましい。なお、絶縁材料としては、窒化チタン(TiN)が最も適している。
【0030】
開口部32aは、導電性金属31の一部を露出させて電気を通すための導電性部位である。開口部32aは、例えば、絶縁膜32の一部を剥離して形成されたスリット状の穴から成る。その開口部32aは、側枝方向検出用電極3の先端部寄りの位置からストッパー34の下側近傍まで延設されている。導電性金属31は、その開口部32aを介して、絶縁膜32の外部環境と電気的に連結可能である。
このように構成された開口部32aは、形状を横幅を狭くし、上下に長い長方形に形成されていることによって、側枝eの開口方向の検出感度を下げずに、開口部32aを側枝位置に合わせ易くなっている。側枝方向検出用電極3の開口部32aは、測定開始時、どこに向けて配置してもよい。以下、その一例として、測定開始時に開口部32aを頬側に向くけて配置する場合を説明する。
【0031】
なお、絶縁膜32に設けた開口部32aは、小さい開口とすることにより、側枝eの開口方向を感度よく検出できるが、開口部32aを側枝位置に正確に合わせることが求められる。開口部32aを大きな開口とすれば、検出感度が低下するが、側枝方向検出用電極3を側枝位置に合わせる精度を下げることができる。
【0032】
図2及び図3(c)に示すように、ストッパー34は、根管b内に挿入する側枝方向検出用電極3の挿入量を規制するための板状部材である。ストッパー34は、側枝方向検出用電極3に上端部寄りの位置に移動可能に固定されている。
【0033】
<測定器接続手段>
図5に示すように、測定器接続手段6は、各リード線9の一端部及び他端部に取り付けられた電気接続用の電気接続具である。測定器接続手段6は、側枝開口方向検出装置1において、アース電極60と、接続プラグ61と、接続コネクタ62,63と、分岐コネクタ64と、プラグ65と、を備えて成る。
【0034】
<アース電極>
アース電極60は、例えば、図2に示すように、電極端子5と、接続クリップ60aと、を備えて構成されている。
電極端子5は、歯肉dに掛けるようにして取り付けられる口角クリップ等から成る電気接続用端子である。電極端子5は、歯肉dに掛ける使い方に限定されず、被検者が握り易い形状にして被検者に握ってもらって使用してもよい。従って、電極端子5の接触位置は、口腔内表面の歯肉dに限定されず、被検者の身体の一部であればよい。電極端子5の接触位置を口腔以外にした場合は、口腔領域の治療スペースを広く確保することが可能となる。
接続クリップ60aは、電極端子5に着脱自在に接続可能なワニクリップ等から成る。この接続クリップ60aは、電極端子5にリード線94を直接接続した場合、無くてもよい。
【0035】
接続プラグ61は、雌型の接続コネクタ63に接続される雄型端子を有する電気接続具である。雌型の接続コネクタ62は、ホルダ20の接続端子21aに接続される雄型端子を有する電気接続具である。分岐コネクタ64は、リード線91を2つのリード線92,93に分配させるための分配配線用コネクタである。プラグ65は、根管長測定器4に設けられたカプラ(図示省略)に接続される雄型端子を有する電気接続具である。
【0036】
<リード線>
リード線9は、このようにして測定器接続手段6が設けられていることで、側枝位置検出手段2と側枝方向検出用電極3と根管長測定器4との間を離間可能に接続されている。リード線9は、側枝位置検出手段2と、側枝方向検出用電極3と、根管長測定器4とを電気的に接続するための電線である。リード線9は、プラグ65と分岐コネクタ64との間に配線されたリード線91と、分岐コネクタ64と接続コネクタ62との間に配線されたリード線92と、分岐コネクタ64と接続コネクタ63との間に配線されたリード線93と、接続プラグ61とアース電極60との間に配線されたリード線94と、を備えて成る。
【0037】
≪側枝位置検出手段≫
図1及び図2に示すように、側枝位置検出手段2は、側枝方向検出用電極3を回転させることによって得られる電流値から側枝eの歯根軸周りの位置を検出するための装置である。図6に示すように、側枝位置検出手段2は、ホルダ20と、ホルダ20の先端側のハンドピースヘッド部26に着脱可能に装着されるキャップ27と、から主に構成されている。図6図8あるいは図11に示すように、側枝位置検出手段2には、ホルダ20と、自動繰出機構22と、自動繰出機構保持部23と、位置検出用電極回転歯車24と、昇降歯車25と、回転駆動用電動モータM1と、昇降用電動モータM2と、測定開始スイッチSW1と、回転停止手段SW2と、昇降スイッチSW3と、チャック部20aと、キャップ27と、乾電池71と、電極着脱保持部材28と、接点用ノブ29と、が設けられている。側枝位置検出手段2は、根管長測定器4に接続して、側枝方向検出用電極3をハンドピースヘッド部26に取り付けて使用される。
【0038】
<ホルダ>
図8(b)に示すように、ホルダ20は、回転駆動用電動モータM1を備え、側枝方向検出用電極3を着脱可能に保持する保持部材である。ホルダ20は、ハンドピース本体を形成する絶縁樹脂製の部材から成る(図6参照)。ホルダ20には、術者等が把持するグリップ部21と、キャップ27が装着されるハンドピースヘッド部26と、が形成されている。
【0039】
グリップ部21には、1本の接続端子21aが基端側に向けて突出した状態に配置されている。接続端子21aは、1本のリード線92によって、図1に示す整合部12、信号切換部11を介して電源7に接続されている。このため、側枝位置検出手段2の配線構造を簡素化して、リード線9の配線作業を容易に行えるようにしている。
なお、接続端子21aの形状、構造等は、特に限定されない。図8(b)に示すように、グリップ部21内には、回転駆動用電動モータM1及び昇降用電動モータM2(図11参照)を駆動させるための乾電池71が設けられている。
【0040】
図6に示すように、ハンドピースヘッド部26は、グリップ部21の前端部に一体形成された略角筒状の部位である。ハンドピースヘッド部26の下側には、側枝方向検出用電極3が着脱されるチャック部20aと、弾性リード線21b(図7(b)参照)の金属接点部21dを側枝方向検出用電極3の支持部31aに導通・遮断させるための接点用ノブ29と、が設けられている。ハンドピースヘッド部26の内部には、図11に示す自動繰出機構22を配設することが好ましい。ハンドピースヘッド部26の内部には、昇降用電動モータM2を載設するモータ設置部26aと、昇降歯車25の雌ねじ部25bに先端部を軸支する軸受部26bと、側枝方向検出用電極3を根管bに挿入するときのガイドとなるガイド部26cと、が形成されている。
【0041】
図6に示すように、ガイド部26cは、側枝方向検出用電極3に略沿って下方向に向けて突出形成された突起から成る。ガイド部26cは、ホルダ20をキャップ27に内嵌させた際に、ガイド部係合溝27fの奥側に係合されて、キャップ27の下面から突出した状態に配置される。図11に示すように、ハンドピースヘッド部26は、そのガイド部26cの下端を被検査歯aの上部に突き当てて、側枝方向検出用電極3を根管bの上下方向に送り込むことができるので、高さ方向を正確に検出することができると共に、検出時におけるハンドピースヘッド部26の先端部の上下方向の振れを解消して安定化させることもできる。
【0042】
<自動繰出機構>
自動繰出機構22は、側枝位置検出手段2に取り付けた側枝方向検出用電極3を根管b内に送り込んだり、引き出したり、高速・低速回転させたりするための装置である。自動繰出機構22は、位置検出用電極回転歯車24と、位置検出用電極回転歯車24を回転させる回転駆動用電動モータM1と、自動繰出機構22を載置した自動繰出機構保持部23と、自動繰出機構保持部23を昇降させる昇降歯車25と、昇降歯車25を回転させる昇降用電動モータM2と、を備えている。
【0043】
<回転駆動用電動モータ>
回転駆動用電動モータM1は、被検査歯aの切削時に、側枝方向検出用電極3を高速回転させて被検査歯aを切削したり、側枝eの開口方向検出時に、側枝方向検出用電極3を所定の定速度で低速回転させたりするためのモータである。回転駆動用電動モータM1は、歯車減速機構を構成するギヤボックスM1aと、ギヤボックスM1aによって回転駆動用電動モータM1の回転を減速させて回転するロータ歯車M1bと、を備えている。
【0044】
<位置検出用電極回転歯車>
図11に示すように、位置検出用電極回転歯車24は、ロータ歯車M1bに噛合して側枝方向検出用電極3を減速回転させるための歯車である。位置検出用電極回転歯車24は、ロータ歯車M1bに噛合する歯形部24aと、カム溝24c(図10(b)参照)を有するカム部24bと、を備えている。
歯形部24aは、フェースギヤ、あるいは、かさ歯車から成る。
カム部24bは、図10(a)、(b)に示すように、円板の外周部にカム溝24cを切欠形成した部材から成る。歯形部24a及びカム部24bの軸孔には、側枝方向検出用電極3が着脱可能に装着される。
【0045】
<自動繰出機構保持部>
図11に示すように、自動繰出機構保持部23は、回転駆動用電動モータM1を載置した板部材であり、ハンドピースヘッド部26内に昇降可能に配置されている。自動繰出機構保持部23には、昇降歯車25の雄ねじ部25bに螺合している雌ねじ部が形成されている。
【0046】
<昇降用電動モータ>
昇降用電動モータM2は、被検査歯aを切削する際、側枝eを検出する際に、側枝方向検出用電極3を下降・上昇させるためのモータである。昇降用電動モータM2は、ロータ歯車M2aを備えている。昇降用電動モータM2は、ハンドピースヘッド部26の内底部に形成されたモータ設置部26aに固定されている。側枝開口方向検出装置1は、この昇降用電動モータM2を備えていることで、側枝方向検出用電極3を自動的に挿入する自動挿入装置を構成している。
なお、根管b内での側枝方向検出用電極3の先端の位置を測定して昇降用電動モータM2(自動挿入装置)を駆動・停止させる機構としては、その自動挿入装置に側枝方向検出用電極3を自動挿入した距離を電流値の変化から検出する仕組みを組み込むことで構成されている。
【0047】
<昇降歯車>
昇降歯車25は、自動繰出機構保持部23を昇降させることによって、側枝方向検出用電極3を下方向に送り出したり、上方向に復帰させたりするための歯車である。昇降歯車25は、ロータ歯車M2aの回転を減速回転させるための歯形部25aと、自動繰出機構保持部23の雌ねじ部(図示省略)に螺合して雄ねじ部25bと、を備えている。
歯形部25aは、フェースギヤ、あるいは、かさ歯車から成り、ロータ歯車M2aに噛合している。雄ねじ部25bは、昇降歯車25の下面の中心部から自動繰出機構保持部23の雌ねじ部(図示省略)に螺合し、先端がハンドピースヘッド部26に形成されたポビット軸受状の軸受部26bまで延設されて軸支されている。
【0048】
<乾電池>
乾電池71は、回転駆動用電動モータM1及び昇降用電動モータM2に電力を供給して回転駆動させるための電力供給源である。なお、乾電池71は、報知手段40内に設けられた電源7から回転駆動用電動モータM1及び昇降用電動モータM2に電力を供給するようにした場合は、無くてもよい。
【0049】
<測定開始スイッチ>
図8及び図9に示す測定開始スイッチSW1は、側枝e(図2参照)の開口方向の検出をスタートさせる測定開始用の手動スイッチである。測定開始スイッチSW1は、側枝方向検出用の開口部32a(図2参照)に流れる電流値及び/または指示値を検出して、一定時間内に検出値が予め設定した一定変動範囲内に安定したときに、回転駆動用電動モータM1を回転駆動させて、側枝e(図2参照)の測定を開始させる。
【0050】
<自動測定開始手段>
図9に示す自動測定開始手段81は、側枝方向検出用の開口部32aに流れる電流値及び/または指示値を検出して、一定時間内に検出値が予め設定した一定変動範囲内に安定したときに、回転駆動用電動モータM1を回転駆動させて、側枝eの開口方向の検出を自動的にスタートさせる装置である(図2参照)。自動測定開始手段81は、図1に示すように、例えば、根管長測定器4の制御部8内に設けられて、回転駆動用電動モータM1(図9参照)に駆動信号及び停止信号を送って回転・停止をさせるモータ制御部である。
【0051】
<回転停止手段>
図8及び図9に示す回転停止手段SW2は、回転駆動用電動モータM1によって側枝方向検出用電極3が1回転したときに、回転駆動用電動モータM1の回転を自動停止させるリミットスイッチである。図9に示すように、回転停止手段SW2は、測定開始スイッチSW1及び自動測定開始手段81に対して並列に接続されている。図10(a)、(b)に示すように、回転停止手段SW2は、スイッチ接点部(図示省略)と、可動子SW2aと、可動ばねSW2bと、摺動部SW2cと、を備えて成る。
【0052】
回転停止手段SW2は、図10(a)に示すように、カム部24bが停止している際にOFF状態になり、図10(b)に示すように、そのOFF位置からカム部24bが360度回転している際にON状態になる。このため、回転停止手段SW2は、開口部32aを頬側方向に向けて位置決めした所定の位置状態でチャック部20aに取り付けた側枝方向検出用電極3が、所定の位置にあるか、否かを検出する機能を備えている。
【0053】
不図示のスイッチ接点部は、固定接点と可動接点とで構成されている。
可動子SW2aは、可動接点上に配置されて、下降した場合に可動接点を固定接点に接触させてONさせるための部材である。可動子SW2aは、回転停止手段SW2のスイッチケースに上下動自在に突設されている。
可動ばねSW2bは、基端部を回転停止手段SW2のスイッチケースに固定し、先端部に摺動部SW2cを固定し、中央部に可動子SW2aの先端を配置した板ばね部材から成る。可動ばねSW2bは、摺動部SW2cがカム部24bの外周面に当接している際に、可動子SW2aを押し下げてON状態にし、摺動部SW2cがカム溝24cに係合した際に、可動子SW2aから離間して回転停止手段SW2をOFF状態にさせる。
摺動部SW2cは、位置検出用電極回転歯車24と一体に回転するカム部24bの外周面及びカム溝24cに摺接する摺動部位である。
【0054】
<昇降スイッチ>
図8に示す昇降スイッチSW3は、ONさせることによって、強制的に昇降用電動モータM2(図11参照)を正転・反転させて、側枝方向検出用電極3を上昇・下降させるための手動スイッチである。昇降スイッチSW3は、ホルダ20に設置されている。
【0055】
<チャック部>
図6に示すように、チャック部20aは、側枝方向検出用電極3の上端部に形成された支持部31aを着脱可能に取り付ける装着部である。チャック部20aは、支持部31aの外形よりやや大きい筒状構造となっており、筒状内の一部に上下方向に延設されたピン部20bが突出形成されている。チャック部20aは、ハンドピースヘッド部26の上端部に設けられた電極着脱保持部材28を着脱することで、支持部31aを固定させたり、離脱させたりすることができるように構成させている。
また、支持部31aの外周には、前記ピン部20bが入る溝31bがあり、この両者の凹凸関係により位置検出用電極回転歯車24(図8(b)参照)からの回転動作を側枝方向検出用電極3に伝達できるようになっている。
【0056】
<キャップ>
図6に示すように、キャップ27は、ハンドピースヘッド部26の先端部側に被せるように着脱可能に装着される略有底筒体である。キャップ27の先端側の下側には、側枝方向検出用電極3の支持部31aが挿入されると共に、側面視してコ字状の電極着脱保持部材28の下端部が着脱可能に装着される電極着脱部27a(図7(a)参照)と、電極着脱保持部材28の下端部に形成された係止突起28bが係合する保持部材係止溝27bと、ガイド部26cが係合されるU字溝から成るガイド部係合溝27fと、が切欠形成されている。キャップ27の先端側の上側には、図7(a)に示すように、電極着脱保持部材28の上端部及び係合突起28cが着脱可能に装着される保持部材着脱溝27dと、電極着脱保持部材28の上端部に形成された係止突起28dが係合する係止溝27eと、が切欠形成されている。
【0057】
<電極着脱保持部材>
図6に示すように、電極着脱保持部材28は、チャック部20aに挿入した円柱形状の支持部31aを下側から保持して、側枝方向検出用電極3がチャック部20aから抜け落ちるのを抑制して保持する部材である。電極着脱保持部材28は、側面視してコ字形状の金属製板部材から成る。電極着脱保持部材28の下端部は、基端部側に向かって略舌片状に突出形成されて、切欠溝28aと、係止突起28bと、を有している。電極着脱保持部材28の上端部は、基端部側に向かって略舌片状に突出形成されて、係合突起28cと、係止突起28dと、を有している。
【0058】
切欠溝28aは、導電性金属31が着脱自在に係合する大きさに形成されたU字状の溝から成る。切欠溝28aを有する舌片状部位は、切欠溝28aは、電極着脱保持部材28の下端部の先端に側枝方向検出用電極3の導電性金属31を挟み込むように装着されて(図7(a)参照)、切欠溝28aを有する舌片状部位が、支持部31aの下面を下側から支持して側枝方向検出用電極3がチャック部20aから落下するのを抑制するように形成されている。
係止突起28bは、切欠溝28aを有する舌片状部位から左右方向(幅方向)に突出形成されて保持部材係止溝27bに係合される。
【0059】
係合突起28cは、電極着脱保持部材28の上端から基端部方向に延設された舌片状の突出片である。係合突起28cは、保持部材着脱溝27dに着脱可能に装着されている。
係止突起28dは、係合突起28cの左右方向(幅方向)に突出形成されて保持部材係止溝27bに係合される突起である。
【0060】
<接点用ノブ>
図7(b)に示すように、接点用ノブ29は、金属接点部21dの先端に固定されて、前後方向(矢印m方向)に摺動するスライド操作部材から成る。接点用ノブ29は、キャップ27をハンドピースヘッド部26に装着した場合に、キャップ27の内壁に突出形成された接点用ノブ押圧突起27cによって押圧されて、金属接点部21dを支持部31aに接触させるように構成されている。また、接点用ノブ29を操作した場合も、金属接点部21dが特殊接点である支持部31aと接触してON状態になる。
【0061】
<表示部>
図4に示すように、前記した表示部41は、根管長測定器4の測定結果等の所定の情報を表示するモニタである。表示部41は、例えば、液晶パネルから成る。術者は、表示部41の表示を観察することにより、側枝方向検出用電極3の先端の開口部32a(図2(a)参照)が根尖位置に近づいて行く状況を正確に把握することができる。例えば、術者は、側枝eを有する被検査歯aを検査することにより、表示部41の側枝あり表示部46の「LC(Lateral Canal)」表示によって、被検査歯表示部42に側枝eが存在することを確認することができる。表示部41は、制御部8(図1参照)の指示に従い、直流電圧Vdcに基づいた測定結果を表示し、及び/または警告音を発する。
電源7がON時の表示部41には、例えば、報知表示部41aと、電源マーク41bと、被検査歯表示部42と、根管表示部43と、距離表示目盛部44と、が表示され、さらに側枝が検出されると、横じま表示部45と、側枝あり表示部46(LC)と、側枝の高さ表示部47と、が表示される。
【0062】
報知表示部41aは、報知手段40を示すアイコンである。
電源マーク41bは、電源7の作動状態を示すアイコンである。
被検査歯表示部42は、検査する被検査歯aを概略的に描いたアイコンである。被検査歯表示部42には、根尖位置からの距離を表示するための距離表示目盛部44を表すスケールが描かれている。
【0063】
根管表示部43は、一般的な根管bの形状を模式的に表示したアイコンである。根管bの部分には、横じま表示部45が描かれている。側枝方向検出用電極3を根尖iの位置に向かって挿入して行くのに従って、横じま表示部45の最下部45aが下降して、側枝方向検出用電極3の先端位置を表示する。図4に示す表示部41は、一例として、側枝方向検出用電極3の先端が根尖位置の3mm手前に位置している場合を表示している。このように、根管長測定器4は、側枝方向検出用電極3が根管b内に挿入されて行くときの側枝方向検出用電極3の先端の位置を測定する機構を備えている。
【0064】
根尖iの位置からの距離を示すための距離表示目盛部44は、計測した根尖iの位置からの距離をミリ(mm)単位で表すための目盛である。
横じま表示部45は、計測した根管bの計測した根尖iの位置からの距離を、所定間隔で表示するアイコンである。
【0065】
側枝あり表示部46は、側枝eが有ることを示すアイコンである。側枝あり表示部46は、例えば、「LC」の文字によって側枝eがあったことを表示する。
側枝の高さ表示部47は、側枝eの上下方向の長さを概略的に示すアイコンである。側枝の高さ表示部47は、表示部41の右側の丸印(図4では6個)によって側枝eの高さを表示する。側枝の高さ表示部47は、根尖3mm手前に側枝eがあった場合、丸印(図1では6個)によって側枝eの位置を表示することができる。
【0066】
側枝方向検出用電極3は、根管b内に挿入して行き、横じま表示部45が数値3.0を指す位置まで側枝方向検出用電極3を挿入することにより、側枝方向検出用電極3の先端を側枝位置に配置することができる。
【0067】
このため、術者は、側枝eの位置に配置した側枝方向検出用電極3を回転駆動用電動モータM1によって低速回転させて、側枝方向検出用電極3と電極端子5との間に流れる測定電流Inが一番大きくなったときの開口部32aの方向を、側枝eの方向として確認することができる。
【0068】
このように、根管長測定器4における側枝方向検出用電極3の開口部32aの位置を測定する機構は、側枝eの有無だけでは無く、側枝eの方向までも測定し、表示することができるように構成されている。
【0069】
前記したデータ処理部15は、直流電圧Vdcに対して表示部41に送信する表示用データを作成する。
電源7から側枝方向検出用電極3に、例えば、500Hzまたは2KHzの各周波数の測定用信号Pnを印加すると、側枝方向検出用電極3と電極端子5との間から各周波数毎の2種類の測定データ(In500HzとIn2KHz)が測定される。この2種類の測定データ(In500Hz,In2KHz)は、側枝方向検出用電極3を根管b内で根尖孔cに向かって挿入して行く過程で、順次測定される。
【0070】
側枝方向検出用電極3を根管bの開口端から根尖iに向けて挿入して行く際に得られる測定データInの推移の波形は、被検査歯aに側枝eが有る場合と無い場合とでは、特有の変化を示すことを確認した。すなわち、測定データ(In,Vn,Vdc)は、側枝eの有無を示す表示用データとして根管長測定器4の表示部41に送られ、表示することができる。
【0071】
図12は、図1に示す側枝開口方向検出装置1を使用した実験で得られた値を内部処理したデータであって、根管b内の側枝eがある位置で側枝方向検出用電極3を支持して回転させて電流の測定データを示すグラフである。横軸が時間で、縦軸が電流値及び指示値である。図12のグラフは、精度を高くするために、サンプル数を図13及び図14のグラフのときよりも多くして取得している。
図2に示す側枝方向検出用電極3の根管b内への挿入位置を固定(例えば、開口部32aの開口方向を頬側に固定)すると、指示値の最小値の位置(電流値が最大の位置)が側枝方向の位置になる。回転駆動用電動モータM1によって低速度で回転される側枝方向検出用電極3の回転速度は、略一定である。このため、図12のグラフ全体の長さ(横軸)と、スタートから側枝方向位置データまでの長さとを比較すれば、開口部32aの回転角度を算出することが可能である。
【0072】
図13は、側枝eがある根管b内に側枝方向検出用電極3を挿入して側枝方向検出用電極3を根管b内から抜き取るまでの実際の電流値の測定データを示すグラフである。横軸が時間で、縦軸が電流値及び指示値である。
図13において、横軸1~6の間は、側枝方向検出用電極3を挿入しているときのデータである。横軸6~32の間は、側枝方向検出用電極3の安定期間で、側枝eの開口方向の測定に充分使用することができるデータの安定性を確認している。横軸32~53までは、側枝方向検出用電極3が1回転したデータである。横軸53以後は、側枝方向検出用電極3を抜いたときのデータである。
【0073】
図14は、測定用信号2KHzと500Hzを使用して根管内の側枝がある位置で側枝方向検出用電極3を1回転させたときの電流値を抜粋して示したグラフである。横軸が時間で、縦軸が電流値及び指示値である。
図14において、側枝eを示す位置は、指示値が最小の位置で、電流値が最大の位置である。
【0074】
≪作用≫
次に、図1図14を参照して本実施形態に係る側枝開口方向検出装置1及び側枝開口方向検出方法の作用を説明する。
【0075】
側枝開口方向検出装置1を使用して側枝eの開口方向を検出する場合は、まず、図1及び図2に示すように、被検者の口腔粘膜(口唇)等に電極端子5を引っ掛けるようにして取り付ける。また、被検者の身体の一部に電極端子5を接触させる。その電極端子5は、図5に示すように、測定器接続手段6及びリード線9を介して根管長測定器4及びホルダ20に接続する。
【0076】
次に、電源スイッチ(図示省略)、及び、根管長測定器4のスイッチ(図示省略)を操作して、図1に示す電源7及び根管長測定器4をONさせる。これにより、電源7がONして、リード線9及び測定器接続手段6を介して電極端子5側がアースとなるように、電気が供給可能な状態になる。また、根管b内に挿入した側枝方向検出用電極3の挿入深さから根管長の測定や、開口部32a(図2参照)の挿入位置による側枝eの検出が可能な状態となる。
【0077】
<第1のステップ>
第1のステップでは、まず始めに、図2に示す側枝方向検出用電極3(リーマ)を使用して被検査歯aの根管bを削りながら根尖iの位置を検出した後、側枝方向検出用電極3を根管bから抜き取る。このとき、側枝eがある場合は、根管長測定器4の表示部41の側枝あり表示部46によって警告表示されると共に、おおよその側枝位置が、側枝の高さ表示部47によって知らされる。なお、側枝eが無い場合は、側枝あり表示部46、及び、側枝の高さ表示部47による表示は無い。
これと同時に、側枝方向検出用電極3が根管bに挿入されたときから抜き出されるまでの500Hzと2KHzとの電流値及び表示値のデータが、根管長測定器4に記録される。この電流値及び表示値のデータから比または差のデータを算出することで、図12図14に示すような側枝eの特有のカーブを算出し、カーブの頂点に側枝eがあることが、根管長測定器4のメモリに記録される。
【0078】
<第2のステップ>
第2のステップ2では、第1のステップの後、図2に示す側枝方向検出用電極3を根管b内に再度挿入し、側枝方向検出用の前記開口部32aに流れる電流値と、予め実測して記録しておいた側枝開口位置の電流値データとを比較して一致したときに、報知手段40の側枝あり表示部46で報知する。このときに、側枝方向検出用電極3に設けたストッパー34を被検査歯aに当接させて、側枝方向検出用電極3を根管bから抜き、側枝eからストッパー34までの距離を測定する。
【0079】
<第3のステップ>
第3のステップでは、さらに、側枝eの方向(歯根軸周りの位置)を検出するために、側枝方向検出用電極3の開口部32aを頬側の位置に合わせて、開口部32aを報知手段40が報知した根管b内の側枝開口位置まで挿入して、側枝方向検出用電極3を1回転させて側枝eの位置方向を測定する。
【0080】
このように、側枝開口方向検出装置1を使用した側枝開口方向検出方法では、側枝eの位置方向を1度に測定せず、第1~第3のステップに分けて、電流の値から側枝eの存在、位置、開口方向を順に検出することで、正確に側枝eの開口方向を検出することができる。
【0081】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る側枝開口方向検出方法は、側枝開口方向検出装置1を使用して側枝eの開口方向を検出する側枝開口方向検出方法であって、側枝方向検出用電極3を使用して被検査歯a(歯牙)の根管bを削りながら根尖iの位置を検出した後、側枝方向検出用電極3を根管bから抜き取る第1ステップと、第1のステップの後、側枝方向検出用電極3を根管b内に再度挿入し、側枝方向検出用の開口部32a(図2参照)に流れる電流値及び/または指示値と、予め実測して記録しておいた側枝開口位置の電流値及び/または指示値データとを比較して一致したときに、報知手段40で報知すると共に、このときに側枝方向検出用電極3に設けたストッパー34を被検査歯a(歯牙)に当接させて、側枝方向検出用電極3を根管bから抜き、側枝eからストッパー34までの距離を測定する第2ステップと、側枝方向検出用電極3の開口部32aを、報知手段40が報知した根管b内の略側枝開口位置まで挿入して、側枝方向検出用電極3を1回転させて側枝eの位置方向を測定する第3ステップと、を含む。
【0082】
これにより、本発明の側枝開口方向検出方法は、側枝eの歯根軸周りの位置を検出するために、例えば、側枝方向検出用電極3の方向検出用の開口部32aを頬側の位置に合わせて、報知手段40が側枝eのある位置を表示する略側枝警告表示位置まで挿入して、側枝方向検出用電極3を1回転させる。側枝方向検出用の開口部32aに流れる電流値及び/または指示値を検出することで、側枝eの開口方向をさらに高い精度で検出することができる。
また、報知手段40は、側枝方向検出用電極3を根管bに挿入して側枝eの検出したときに、側枝方向検出用の開口部32aの位置(側枝eの根管軸径方向の位置)を、表示、音、音声等で術者に知らせることができる。
【0083】
図1または図2に示すように、本発明の実施形態に係る側枝開口方向検出装置1は、被検査歯a(歯牙)の根管bに形成された側枝eの開口方向を検出するための側枝方向検出用電極3と、当該側枝方向検出用電極3を回転駆動させる回転駆動用電動モータM1(図8(b)及び図9参照)と、当該回転駆動用電動モータM1を備え側枝方向検出用電極3を着脱可能に保持するホルダ20と、を備えた側枝開口方向検出装置1であって、側枝方向検出用電極3は、当該側枝方向検出用電極3を形成する導電性金属31と、当該導電性金属31を覆う絶縁膜32と、当該絶縁膜32の一部を剥離するようにして形成された側枝方向検出用の開口部32aと、側枝方向検出用電極3の基端側に形成された支持部31aと、を備え、側枝方向検出用の開口部32aに流れる電流値及び/または指示値を検出して、一定時間内に検出値が予め設定した一定変動範囲内に安定したときに、回転駆動用電動モータM1を回転駆動させて、側枝eの開口方向の検出をスタートさせる測定開始スイッチSW1(図8(b)及び図9参照)、あるいは、側枝eの開口方向の検出を自動的にスタートさせる自動測定開始手段81(図1及び図9参照)を備えている。
【0084】
これにより、側枝開口方向検出装置1は、導電性金属31を覆う絶縁膜32の一部に側枝方向検出用の開口部32aが有ることで、開口部32aに流れる電流値及び/または指示値を検出することによって、側枝eの開口方向を検出することができる。側枝開口方向検出装置1は、電流値及び/または指示値を検出する際に、一定時間内に検出値が一定変動範囲内に安定したときに、測定開始スイッチSW1(図8(b)及び図9参照)、あるいは、自動測定開始手段81をON状態にさせて側枝方向検出用電極3の開口部32aを回転駆動用電動モータM1で定回転させて、開口部32aに流れる電流値及び/または指示値を検出している。このため、従来よりもさらに高い精度で側枝eの開口方向を容易に検出することができる。
【0085】
また、側枝開口方向検出装置1は、図9及び図10(a)、(b)に示すように、回転駆動用電動モータM1によって側枝方向検出用電極3(図1参照)が1回転したときに、回転駆動用電動モータM1の回転を停止させる回転停止手段SW2を備えていることが好ましい。
これにより、回転停止手段SW2は、回転駆動用電動モータM1が回転駆動して側枝方向検出用電極3を1回転させたときに、停止させることで、側枝方向検出用電極3の開口部32aを、根管b内を1回転させて開口部32aに流れる電流値の最小値を検出する。このため、効率よく側枝eの開口方向を検出することができる。
【0086】
また、側枝開口方向検出装置1は、図1図2及び図8(b)に示すように、側枝方向検出用電極3を回転させることによって得られる電流値から側枝eの歯根軸周りの位置を検出するための側枝位置検出手段2を備えていることが好ましい。
これにより、側枝位置検出手段2は、側枝方向検出用電極3を回転させることによって、電流値から側枝eの歯根軸周りの位置を自動で検出することができる。
【0087】
また、図11に示すように、側枝位置検出手段2は、当該側枝位置検出手段2に取り付けた側枝方向検出用電極3を根管b(図2参照)内に送り込む自動繰出機構22を備えていることが好ましい。
これにより、自動繰出機構22は、根尖部へ向かって根管b(図2参照)内に自動的に送り込むことができるので、側枝eの開口方向だけでなく高さ方向も検出するため、作業効率を向上させることができる。
【0088】
以上のように、本発明の側枝開口方向検出装置1は、側枝方向検出用の開口部32aに流れる電流値及び/または指示値を検出して、一定時間内に検出値が予め設定した一定変動範囲内に安定したときに、測定開始スイッチSW1、あるいは、自動測定開始手段81をONさせて、側枝eの開口方向を検出する。そして、側枝方向検出用電極3は、回転駆動用電動モータM1によって1回転して測定終了位置まで回転すると、回転停止手段SW2により回転駆動用電動モータM1の回転が自動停止される。このため、側枝開口方向検出装置1は、従来よりも、さらに高い精度で容易に側枝eを検出することができる。
【0089】
[第1変形例]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものでは無く、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。なお、既に説明した構成は同じ符号を付してその説明を省略する。
図15は、本発明の実施形態に係る側枝開口方向検出装置1Aの第1変形例を示す図であり、側枝開口方向検出装置1Aに使用される測定器接続手段の一例を示す概略説明図である。図16は、本発明の実施形態に係る側枝開口方向検出装置1Aの第1変形例を示す図であり、(a)は手動式の側枝位置検出手段2Aの拡大概略側面図、(b)は側枝方向検出用電極3Aを取り外した状態の手動式の側枝位置検出手段2Aの拡大概略平面図である。
【0090】
図15及び図16(a)、(b)に示すように、本発明に係る側枝開口方向検出装置1Aは、側枝方向検出用電極3Aを手動で回転駆動させる手動式の装置であってもよい。
図16(a)または(b)に示すように、ホルダ20A(キャナルインスツルメントホルダ)は、歯科診断で歯牙aの根管bに挿入する側枝方向検出用電極3Aを係止するために使用される(図1及び図2参照)。ホルダ20Aは、一方向に伸び先端に向かって外径が細くなるように形成された絶縁管21Aと、先端に導体フック22Aaを有する接触子22Aと、を備えている。
【0091】
接触子22Aは、導体フック22Aaを、絶縁管21Aの先端面に形成された先端開口部21Aaの外に残して絶縁管21Aに挿入される。その導体フック22Aaは、接触子22Aだけを通すように狭められている。ホルダ20Aは、導体フック22Aaを絶縁管21Aの先端開口部21Aaから突出させるように接触子22Aの後端を押圧するための操作部23Aをさらに備えている。
【0092】
操作部23Aは、絶縁管21Aと同様、例えば、プラスチック等の材料から成る円筒状の支持体24A及び操作キャップ25Aを含む。支持体24Aは、絶縁管21Aよりも大きな外径を持ち絶縁管21Aとは反対の後端側において開放されるようにして絶縁管21Aと一体的に形成されている。操作キャップ25Aは、支持体24A側に開口を有し、支持体24Aに部分的に収容されることが可能である。
【0093】
前記接触子22Aは、絶縁管21A及び操作部23Aの内部に収容されている。接触子22Aは、1枚の金属板を打ち抜いて形成され、その先端は導体フック22Aaとして半円形に曲げられている。
【0094】
前記絶縁管21Aの先端には、フックガード21Abが導体フック22Aaの側面を覆うように形成されている。導体フック22Aaの略中央付近には、先端側の幅を小さく形成した段差22Abが設けられている。絶縁管21Aの先端開口部21Aaと段差22Abとの間には、接触子22Aを後端側に付勢するための付勢部材26Aが設けられている。付勢部材26Aは、ばね部材であって、操作部23Aによって縮められ、その後に、導体フック22Aaを引き戻して側枝方向検出用電極3Aを先端開口部21Aaに係止するように延びる。
【0095】
図16(a)または(b)に示すように、前記接触子22Aの後端は、3つの枝22Ac,22Ad,22Aeに分岐したフォーク状に形成されている。その3つの枝22Ac,22Ad,22Aeの両側の2つ(枝22Ac,22Ae)は、操作キャップ25Aの内壁に対向して形成される一対の溝(図示省略)に通される。中央部の枝22Adは、絶縁被覆された導体であるリード線27Aを接続するために使用されている。リード線27Aの導体は、接触子22Aにおける中央の枝22Adに半田付けされている。
【0096】
操作キャップ25Aは、外壁に形成された3つの突起(図示省略)、及び、接触子22Aの枝22Ac側(すなわち、側枝方向検出用電極3Aを係止した状態で操作部23Aの上端側となる位置)に配置されるリード引出口25Aaを有している。3つの突起(図示省略)は、支持体24Aの内壁に形成される3つの溝(図示省略)に沿って摺動可能に配置されている。リード線27Aは、リード引出口25Aaを介して外部に引き出される。そのリード線27Aは、前記した実施形態と同様に、リード線9を介して根管長測定器4に接続されている(図15参照)。
【0097】
前記ホルダ20Aの長さ(すなわち、側枝方向検出用電極3Aを係止した状態における絶縁管21A及び操作部23Aとの合計長さ)は、例えば、35mm~55mmの範囲に設定されている。また、前記支持体24Aには、操作部23Aを支持するための追加アタッチメントを嵌め合わせる係止部として、例えば、3つの凸部24Aaを形成してもよい。なお、リード引出口25Aaは、接触子22Aの枝22Ad側(すなわち、側枝方向検出用電極3Aを係止した状態で操作部23Aの下端側となる位置)に配置されてもよい。
【0098】
このほか、ホルダ20Aには、側枝方向検出用の開口部32aに流れる電流値及び/または指示値を検出して、一定時間内に検出値が予め設定した一定変動範囲内に安定したときに、側枝eの開口方向の検出をスタートさせる測定開始スイッチSW1Aと、側枝eの開口方向の検出を自動的にスタートさせる自動測定開始手段SW2Aと、の少なくとも一方が設けられている。測定開始スイッチSW1A及び自動測定開始手段SW2Aは、例えば、絶縁管21Aに設けられたプッシュッスイッチから成る。
【0099】
図16(a)、(b)を参照して、ホルダ20Aによって側枝方向検出用電極3Aを係止するための手順を説明する。
操作キャップ25Aを押すと、絶縁管21A内で接触子22Aを取り巻く付勢部材26Aのばねが縮められ、接触子22Aの導体フック22Aaが図16(a)に示すように、絶縁管21Aの先端開口部21Aaを離れて前方に突出する。
【0100】
この状態で、図16(b)に示す根尖位置、側枝位置及び側枝方向検出用の側枝方向検出用電極3Aを導体フック22Aaと先端開口部21Aaとの間に入れて、操作キャップ25Aを押すことで止めると、付勢部材26Aのばねが元の位置に戻るように伸びる。これにより、導体フック22Aaが引き戻されて、側枝方向検出用電極3Aを先端開口部21Aaに係止する。
【0101】
測定位置を検出する場合には、側枝方向検出用電極3Aの保持部33Aを親指と人差し指とで挟んで根管内に挿入して回転させる。このとき、ホルダ20Aの長さ(すなわち、側枝方向検出用電極3Aを係止した状態における絶縁管21A及び操作部23Aとの合計長さ)が35mm~55mmの範囲に設定されているため、ほとんどの場合に、ホルダ20Aを手のひらの内側に包み込むことができる。
【0102】
本出願に際し被験者10名(男性4名、女性6名)に従来のホルダにリーマ(側枝方向検出用電極3A)を装着してリーマグリップ部分を親指と人差し指で持ちリーマが回し易いホルダの長さを被験者毎に求めた。この実験結果から、最小35mm~最大55mmという範囲が操作し易い長さであると判断した。
【0103】
本発明の第1変形例のホルダ20Aであると、これが操作者の手のひらの内側において、特定位置に固定され易くなり、操作者の親指と人差し指とで側枝方向検出用電極3Aの保持部33Aを1回転させたときに、同様な負荷で側枝方向検出用電極3Aを手動で回転させて、側枝eの開口方向を側枝検出機能付きの根管長測定器4で検出可能となる。
【0104】
第1変形例の場合は、被検査歯a(歯牙)の根管bに形成された側枝eの開口方向を検出するための側枝方向検出用電極3Aと、当該側枝方向検出用電極3Aを着脱可能に保持するホルダ20Aと、を備えた側枝開口方向検出装置1Aであって、側枝方向検出用電極3Aは、当該側枝方向検出用電極3Aを形成する導電性金属31と、当該導電性金属31を覆う絶縁膜32と、当該絶縁膜32の一部を剥離するようにして形成された側枝方向検出用の開口部32aと、側枝方向検出用電極3Aの基端側に設けられた保持部33Aと、を備え、側枝方向検出用の開口部32aに流れる電流値及び/または指示値を検出して、一定時間内に検出値が予め設定した一定変動範囲内に安定したときに、側枝eの開口方向の検出をスタートさせる測定開始スイッチSW1A、あるいは、側枝eの開口方向の検出を自動的にスタートさせる自動測定開始手段81を備えている(図1及び図2参照)。
【0105】
これにより、側枝開口方向検出装置1Aは、たとえ、側枝方向検出用電極3Aを手で掴んで回転させる手動式のものであっても、開口部32aに流れる電流値及び/または指示値が一定時間内に一定変動範囲内に安定したときに、測定開始スイッチSW1A、あるいは、自動測定開始手段81をONさせて、側枝eの開口方向の検出をスタートさせるため、従来よりもさらに高い精度で容易に側枝eを検出することができる。
【0106】
また、図16(a)、(b)に示すように、側枝方向検出用電極3Aを手動的に回転させることによって得られる電流値から側枝eの歯根軸周りの位置を検出するための側枝位置検出手段2Aを備えていることが好ましい。
これにより、側枝開口方向検出装置1Aの側枝位置検出手段2Aは、手動式に側枝方向検出用電極3Aを回転させる装置であっても、前記実施形態の側枝位置検出手段2と同様に、側枝eの歯根軸周りの位置を検出することができる。
【0107】
また、側枝位置検出手段2Aは、側枝方向検出用電極3Aの上部に設けられた支持部31Aaを支持する弾性部材から成る接触子22Aを備えていることが好ましい。
これにより、側枝位置検出手段2Aは、接触子22Aによって、側枝方向検出用電極3Aの支持部31Aaを弾性的に支持した状態で側枝方向検出用電極3Aを回転(旋回)させることができる。このため、接触子22Aは、側枝方向検出用電極3Aの上下動や、ガタ付きや、傾きを吸収して弾性支持しながら電気的な接続状態を維持することができる。
【0108】
[第2変形例]
図17は、本発明の実施形態に係る側枝開口方向検出装置1Bの第2変形例を示す図であり、側枝開口方向検出装置1Bに使用される測定器接続手段21Ba,21Bbの一例を示す概略説明図である。
【0109】
前記実施形態の側枝位置検出手段2は、図5に示すように、1つの接続端子21aを有し、その接続端子21aに接続コネクタ62を接続して分岐コネクタ64、プラグ65を介して根管長測定器4に接続するものに限定されるものではない。
【0110】
図17に示すように、側枝位置検出手段2Bは、根管b(図2参照)の長さを測定する根管長測定器4に接続する1対の測定器接続手段21Ba,21Bbを備えていることが好ましい。
これにより、側枝位置検出手段2Bのホルダ20Bには、1対の測定器接続手段21Ba,21Bbが備えられていることで、2本の測定器接続手段21Ba,21Bbに接続コネクタ62B,63Bを接続することによって、リード線9、分岐コネクタ64B、プラグ65Bを介して根管長測定器4に接続することができる。
【0111】
また、図17に示すように、側枝位置検出手段2Bは、口腔内、口腔外、あるいは、頬に接触させるアース用電極60Bを備えていることが好ましい。
これにより、側枝位置検出手段2Bは、アース用電極60Bを備えていることで、リード線9の配線を簡素化することができる。この側枝位置検出手段2Bに接続されるリード線9には、アース用電極60Bのほかに、根管長測定器4に接続するプラグ65Bが設けられているため、リード線9の配線作業が行い易い。
【0112】
[その他の変形例]
<ストッパーの変形例>
図1及び図2に示すストッパー34は、側枝方向検出用電極3のストッパー34の位置を設定するために、側枝方向検出用電極3には、目盛を付けてもよいし、目盛の代わりに側枝方向検出用電極3を色分けしてもよい。
【0113】
<データ処理部の変形例>
また、図1に示す根管長測定器4のデータ処理部15は、ストッパー34を自動的に動かし、検出された側枝位置に基づいて側枝方向検出用電極3のストッパー34の位置を設定する設定機構を備えていてもよい。
さらに、データ処理部15は、側枝方向検出用の側枝方向検出用電極3を自動的に動かし、側枝方向検出用電極3を根管b内に挿入してストッパー34が被検査歯aの上部に接触する位置に側枝方向検出用電極3を配置する配置機構を備えていてもよい。
【0114】
<側枝方向検出用電極の変形例>
また、側枝方向検出用電極3の一例として、図3(b)、(c)に示すように、開口部32aを導電性金属31の先端部分の一箇所のみに形成した場合を説明したが、開口部32aは、開口部32aを介して絶縁膜32の外部環境と電気的に連結可能なものであればよく、複数設けてもよい。例えば、開口部32aは、側枝方向検出用電極3の軸方向に沿って複数設けてもよい。
【0115】
また、開口部32aの形状は、感度よく検出できる形状であればよく、スリット形状に限定されず、適宜変更しても構わない。開口部32aは、例えば、直径0.5mm~1mmの円、あるいは、一辺が0.5mm~1mmの大きさの非円形であってもよい。
また、側枝方向検出用電極は、複数の測定された電流の波形を得るために先端が絶縁されている必要があるが、例えば、先端から1mm~5mm(2mmがより好ましい)を絶縁コーティングし、その絶縁コーティングの上2mm~5mm(3mmがより好ましい)を開口にすることができる。また、側枝方向検出用電極3は、絶縁膜32でコーティングした後、一部を切り取って開口部32aを形成したものを使用することもできる。また、絶縁膜32は、導電性金属31の表面を酸化させて酸化膜にすることで形成してもよい。
【0116】
また、開口部32aは、外部表面を平坦にし、凹凸が無い面とすることによって、側枝方向検出用電極3を根管b内に挿入し回転させる際に、開口部32aが根管bの内壁に引掛け難くすることができる。
【0117】
<回転停止手段の変形例>
また、前記実施形態では、側枝方向検出用電極3の開口部32aが所定の位置にあるか、否かを、回転停止手段SW2によって検出できるようにしているが、他の開口位置検出手段によって開口部32aの位置を自動的に認識可能にしてもよい。例えば、開口位置検出手段は、側枝方向検出用電極3に設けられた被検出部と、ハンドピースヘッド部26側に設けられて被検出部を検出する検出部と、を備えて構成されたものであってもよい。
【0118】
さらに開口位置検出手段の具体例を挙げると、検出部は、被検出部が磁石の場合、磁石の磁気を検出可能なホール素子でもよい。
また、検出部は、被検出部が発光素子の場合、発光ダイオード等の発光素子からの光を受光してその光を検出するフォトダイオード等の受光素子でもよい。
また、検出部は、被検出部が発光素子の場合、光センサや光反射センサ等の光検出部でもよい。
また、検出部は、被検出部がマーカの場合、マーカの有無を検出するカメラでもよい。
また、検出部は、被検出部が色を付けたマーカの場合、マーカの色を検出する色検出子でもよい。
【0119】
<根管長測定器の変形例>
根管長測定器4は、図2または図4に示すように、ストッパー34を被検査歯aに当接させて、側枝方向検出用電極3を根管bから抜き、側枝eからストッパー34までの距離を測定する際、根管長測定器4の表示部41に設けた目盛と照合したり、表示部41に表示された目盛に表示された目盛と照合して測定したり、また、リーマ長を自動で読み取る手段を根管長測定器4に設けて測定したりしてもよい。
【符号の説明】
【0120】
1,1A,1B 側枝開口方向検出装置
2,2A,2B 側枝位置検出手段
3,3A 側枝方向検出用電極
8 制御部
20,20A,20B ホルダ
21Ba,21Bb 測定器接続手段
22 自動繰出機構
22A 接触子
31 導電性金属
31a,31Aa 支持部
32 絶縁膜
32a 開口部
33A 保持部
34 ストッパー
40 報知手段
60,60B アース用電極
81 自動測定開始手段
a 被検査歯(歯牙)
b 根管
e 側枝
i 根尖
M1 回転駆動用電動モータ
SW1,SW1A 測定開始スイッチ
SW2,SW2A 回転停止手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17