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特許7132570粘着体、粘着剤、接合体の製造方法及び粘着体の剥離方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】粘着体、粘着剤、接合体の製造方法及び粘着体の剥離方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20220831BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220831BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20220831BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220831BHJP
   C07C 69/767 20060101ALN20220831BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
C09J5/00
B32B27/00 M
C07C69/767
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018196928
(22)【出願日】2018-10-18
(65)【公開番号】P2020063391
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 尚平
(72)【発明者】
【氏名】▲廣▼▲瀬▼ 由美
(72)【発明者】
【氏名】星野 貴子
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 恵
(72)【発明者】
【氏名】後藤 慶次
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 淳
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-157769(JP,A)
【文献】特開2016-204505(JP,A)
【文献】特開2008-075072(JP,A)
【文献】特開平11-116917(JP,A)
【文献】特表2015-528038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00
C07C 69/767
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着成分を含有する粘着面と、
下記式(1)で表されるπ共役化合物を含有する解体性接着面と、
を備える、粘着体。
【化1】

[式中、Rは炭素原子数3~20のアルキル基を少なくとも一つ有する基を示し、nは1~3の整数を示す。複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のnは互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項2】
粘着成分を含有する粘着剤層と、
前記粘着剤層上に配置され、下記式(1)で表されるπ共役化合物を含有する解体性接着剤層と、
を備える、粘着体。
【化2】

[式中、Rは炭素原子数3~20のアルキル基を少なくとも一つ有する基を示し、nは1~3の整数を示す。複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のnは互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項3】
前記粘着剤層上の全面に前記解体性接着剤層が形成されている、請求項2に記載の粘着体。
【請求項4】
前記Rが下記式(2)で表される基である、請求項1~のいずれか一項に記載の粘着体。
【化3】

[式中、Rは炭素原子数3~20のアルキル基又は炭素原子数3~20のアルコキシ基を示し、pは1~5の整数を示す。pが2以上のとき、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項5】
前記π共役化合物が、35~150℃の少なくとも一部の温度域で液晶状態を示す、請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着体。
【請求項6】
前記粘着成分が、粘着性樹脂及び粘着付与剤からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、請求項1~のいずれか一項に記載の粘着体。
【請求項7】
前記粘着成分から構成される粘着剤の貯蔵弾性率が、10Pa~10Paである、請求項1~のいずれか一項に記載の粘着体。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の粘着体と被着体とが接合した接合体を製造する方法であって、
前記粘着体を前記被着体に押し付けて、前記粘着体と前記被着体とを接合させる接合工程を含む、接合体の製造方法。
【請求項9】
前記接合工程が、前記π共役化合物が液晶状態を示す温度域又は当該温度域を超える温度下で、前記粘着体を前記被着体に押し付ける工程である、請求項に記載の接合体の製造方法。
【請求項10】
前記粘着体と前記被着体との接合面を、前記π共役化合物が液晶状態を示す温度域又は当該温度域を超える温度に加熱する加熱工程を更に含む、請求項に記載の接合体の製造方法。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に記載の粘着体と被着体とが接合した接合体から、前記粘着体を剥離する方法であって、
前記粘着体と前記被着体との接合面の少なくとも一部に、前記π共役化合物が液晶状態を示す温度域下で光を照射する工程を含む、粘着体の剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、π共役化合物を用いた粘着体に関する。また、本発明は、π共役化合物を用いた粘着剤に関する。また、本発明は、上記粘着体を用いた接合体の製造方法に関する。更に、本発明は、接合体から粘着体を剥離する剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、継続的に接着状態を保持することができ、かつ、剥がす際には容易に剥がすことが可能な粘着剤が検討されている。例えば、特許文献1には、粘着面に部分的な非粘着領域を形成する印刷領域を有する易剥離性粘着シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-075072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の易剥離性粘着剤では、接着力と易剥離性との両立が難しい。例えば特許文献1の易剥離性粘着シートは、粘着面に非粘着領域が存在するため、高い接着力を発現し難い。また、剥離性の向上のために非粘着領域を拡大すると、接着力が更に低下してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、高い接着力を発現でき、且つ、容易に剥離することが可能な粘着体を提供することを目的とする。また、本発明は、当該粘着体を形成可能な粘着剤、当該粘着体と被着体とを接合した接合体、及び、当該接合体から粘着体を剥離する剥離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、平面性が高く剛直なπ共役骨格と、分子骨格の動きに伴い分子物性を変換できる柔軟なπ共役骨格との両方の特長を併せ持つ特殊なπ共役化合物に着目した。そして、当該π共役化合物を用いることで、高い接着力と易剥離性とを両立可能な粘着体を形成できることを見出した。
【0007】
本発明の第一の側面は、粘着成分を含有する粘着面と、下記式(1)で表されるπ共役化合物を含有する解体性接着面と、を備える、粘着体に関する。
【化1】

[式中、Rは炭素原子数3~20のアルキル基を少なくとも一つ有する基を示し、nは1~3の整数を示す。複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のnは互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【0008】
上記π共役化合物は、剛直なアセン骨格と柔軟なシクロオクタテトラエン骨格とを有している。また、上記π共役化合物は、固体状態を示す温度域と、液晶状態を示す温度域と、液体状態を示す温度域とを有しており、液晶状態を示す温度域又は当該温度域を超える温度で被着体に接触させた後、固体状態まで冷却することで、接着力を発現することができる。更に、上記π共役化合物は、固体状態で光照射しても物性にほとんど変化が生じないが、液晶状態で光照射すると一部の分子構造に変化が生じて流動性の液体状態に転移する。このため、上記π共役化合物を含有する解体性接着面は、接着力を発現することが可能であり、且つ、所定の温度域下で光照射することで接着力を容易に低減させることができる。
【0009】
上記粘着体は、粘着面及び解体性接着面を有している。このため、被着体への貼付時には、粘着面及び解体性接着面の両方の寄与により高い接着力を発現できる。また、剥離時には、所定の温度域下で光照射して解体性接着面の接着力を低減させることで、容易に剥離が可能となる。
【0010】
本発明の第二の側面は、粘着成分を含有する粘着剤層と、上記粘着剤層上に配置され、上記式(1)で表されるπ共役化合物を含有する解体性接着剤層と、を備える、粘着体に関する。
【0011】
このような粘着体は、粘着剤層上に部分的に解体性接着剤層が形成されている場合は、被着体への押圧により粘着剤層による粘着面と解体性接着剤層による解体性接着面とを、被着体に接触させることができる。また、粘着剤層上の全面に解体性接着剤層が形成されている場合であっても、被着体への貼付時に強く押圧して解体性接着剤層の一部を破断させる、被着体への貼付前に面内方向に伸張させる、被着体への貼付前に解体性接着剤層の一部を剥離する等の方法によって、被着体との接合面に、粘着剤層による粘着面と解体性接着剤層による解体性接着面とを形成できる。このため、上記粘着体によれば、被着体への貼付時に、粘着面及び解体性接着面の両方の寄与により高い接着力を発現できる。また、剥離時には、所定の温度域下で光照射して解体性接着面の接着力を低減させることで、容易に剥離が可能となる。
【0012】
本発明の第三の側面は、粘着成分と上記式(1)で表されるπ共役化合物とを含有する粘着剤層を備える、粘着体に関する。
【0013】
このような粘着体は、被着体との接合面に粘着成分とπ共役化合物とが存在することで、両者の寄与により高い接着力を実現できる。また、剥離時には、所定の温度域下で光照射することでπ共役化合物を流動化させ、粘着剤層の剥離性を向上させることができる。
【0014】
上記Rは、下記式(2)で表される基であってよい。
【化2】

[式中、Rは炭素原子数3~20のアルキル基又は炭素原子数3~20のアルコキシ基を示し、pは1~5の整数を示す。pが2以上のとき、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【0015】
が上記式(2)で表される基であるπ共役化合物は、製造が容易であり、またR及びpを変更することで液晶状態を示す温度域を適宜調整することができる。
【0016】
上記π共役化合物は、35~150℃の少なくとも一部の温度域で液晶状態を示すものであってよい。このようなπ共役化合物を用いた粘着体は、被着体に悪影響を及ぼしにくい温度域下で剥離することができる。
【0017】
上記粘着成分は、粘着性樹脂及び粘着付与剤からなる群より選択される少なくとも一種を含有していてよい。
【0018】
上記粘着成分から構成される粘着剤の貯蔵弾性率は、10Pa~10Paであってよい。
【0019】
本発明の第四の側面は、粘着成分と下記式(1)で表されるπ共役化合物とを含有する粘着剤に関する。
【化3】

[式中、Rは炭素原子数3~20のアルキル基を少なくとも一つ有する基を示し、nは1~3の整数を示す。複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のnは互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【0020】
上記Rは、下記式(2)で表される基であってよい。
【化4】

[式中、Rは炭素原子数3~20のアルキル基又は炭素原子数3~20のアルコキシ基を示し、pは1~5の整数を示す。pが2以上のとき、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【0021】
本発明の第五の側面は、上記粘着体と被着体とが接合した接合体を製造する方法であって、上記粘着体を上記被着体に押し付けて、上記粘着体と上記被着体とを接合させる接合工程を含む、接合体の製造方法に関する。
【0022】
上記接合工程は、上記π共役化合物が液晶状態を示す温度域又は当該温度域を超える温度下で、上記粘着体を上記被着体に押し付ける工程であってよい。このような接合工程によれば、π共役化合物が接着性に寄与して粘着体が被着体に強固に接着される。
【0023】
上記製造方法は、上記粘着体と前記被着体との接合面を、上記π共役化合物が液晶状態を示す温度域又は当該温度域を超える温度に加熱する加熱工程を更に含んでいてよい。このような加熱工程によれば、π共役化合物が接着性に寄与するため、接合工程で仮接着した粘着体が強固に被着体に接着される。
【0024】
本発明の第六の側面は、上記粘着体と被着体とが接合した接合体から、上記粘着体を剥離する方法であって、上記粘着体と上記被着体との接合面の少なくとも一部に、上記π共役化合物が液晶状態を示す温度域下で光を照射する工程を含む、粘着体の剥離方法に関する。このような剥離方法では、光照射によって接着性に対するπ共役化合物の寄与が無くなるため、粘着体を容易に剥離することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、高い接着力を発現でき、且つ、容易に剥離することが可能な粘着体が提供される。また、本発明によれば、当該粘着体を形成可能な粘着剤、当該粘着体と被着体とを接合した接合体、及び、当該接合体から粘着体を剥離する剥離方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】粘着体の好適な一形態を示す断面図である。
図2】(a)は粘着体の好適な一形態を示す上面図であり、(b)はII-IIに沿った断面を示す断面図である。
図3】(a)は粘着体の好適な一形態を示す上面図であり、(b)はIII-IIIに沿った断面を示す断面図である。
図4】粘着体の好適な一形態を示す断面図である。
図5】粘着体の好適な一形態を示す断面図である。
図6】粘着体の好適な一形態を示す断面図である。
図7】粘着体の好適な一形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の好適な実施形態について以下に説明する。
【0028】
(π共役化合物)
本実施形態に係るπ共役化合物は、下記式(1)で表される化合物である。
【0029】
【化5】
【0030】
式中、Rは炭素原子数3~20のアルキル基を少なくとも一つ有する基を示し、nは1~3の整数を示す。複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のnは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0031】
上記π共役化合物は、固体状態を示す温度域と、液晶状態を示す温度域と、液体状態を示す温度域とを有しており、液晶状態を示す温度域又は当該温度域を超える温度で被着体に接触させた後、固体状態まで冷却することで、接着力を発現することができる。また、上記π共役化合物は、固体状態で光照射しても物性にほとんど変化が生じないが、液晶状態で光照射すると一部の分子構造に変化が生じて流動性の液体状態に転移する。このため、上記π共役化合物によれば、接着力を発現でき、且つ、所定の温度域下で光照射することでその接着力を容易に低減させることが可能な、解体性接着面を形成できる。
【0032】
なお、液晶状態における光照射後は、例えば上記π共役化合物が液体状態を示す温度(例えば150℃を超える温度)に加熱した後冷却することで、上記π共役化合物の分子構造を初期の状態に戻すことができる。すなわち、上記π共役化合物を含有する解体性接着面は、被着体からの剥離後、加熱処理を経ることで再利用が可能となる。
【0033】
より詳細には、上記π共役化合物は、シクロオクタテトラエン骨格で折れ曲がったV字型の分子骨格を有すると考えられ、ある特定の温度領域においてこのV字型の分子骨格が積み重なった集積構造を取ることで液晶状態を示すと考えられる。
【0034】
下記式(1-a)は、式(1)のRが炭素原子数12のアルキル基を有する基であり、nが2であるπ共役化合物の一つを例に取り、V字型の分子骨格を説明する式である。これ以外のπ共役化合物も同様のV字型の分子骨格を有する。
【0035】
【化6】
【0036】
上記π共役化合物は、液晶状態で光照射を受けると、アセン骨格又はシクロオクタテトラエン骨格の光二量化反応により二量体を形成すると考えられる。そして、液晶状態のπ共役化合物の一部が二量化することで、上述の集積構造が崩れ、液晶状態が液体状態へと変化して、流動性が発現すると考えられる。また、この二量化反応は、液晶状態での光照射により生じるもので、固体状態での光照射によっては生じないため、固体状態を示す温度域下で光を照射しても流動化が生じない。
【0037】
また、上記π共役化合物では、例えばπ共役化合物が液体状態を示す温度にまで加熱することで上記二量化反応の逆反応が生じて、二量体から単量体が生じると考えられる。このため、上記π共役化合物は、液晶状態における光照射によって二量体が混在して液晶状態を示さなくなった場合でも、加熱して二量化反応の逆反応を生じさせることによって、再度、液晶状態を示すようになる。
【0038】
光照射は、液晶状態のπ共役化合物が二量体を形成し得るものであればよい。例えば、光照射は、300~400nmの波長の紫外線の照射であってよい。このような紫外線によれば、液晶状態のπ共役化合物を容易に流動化させることができる。
【0039】
また、式(1)中のnが1のとき、照射される光は254nmの波長の光を含むことが好ましく、式(1)中のnが2のとき、照射される光は365nmの波長の紫外線を含むことが好ましい。これにより、効率良くπ共役化合物の流動化を生じさせることができる。
【0040】
式(1)中、Rは、炭素原子数3~20のアルキル基を少なくとも一つ有する基を示す。Rがこのような基であることで、剛直なアセン骨格と柔軟なシクロオクタテトラエン骨格とを有しながら、所定の温度域で液晶状態を示すπ共役化合物が実現される。また、このようなπ共役化合物では、Rが有するアルキル基の炭素原子数を変更することで、容易に液晶状態を示す温度域を調整することができる。
【0041】
が有するアルキル基は、分岐状であっても直鎖状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。また、アルキル基の炭素原子数は、好ましくは4~20であり、より好ましくは6~20である。複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。複数のRが互いに同一なπ共役化合物は、製造が容易という利点がある。
【0042】
式(1)中、nは、1~3の整数を示す。nは互いに同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。複数のnが互いに同一なπ共役化合物は、製造が容易という利点がある。
【0043】
としては、下記式(2)で表される基が好適である。このようなRを有するπ共役化合物は、後述の製造方法によって容易に製造することができる。また、このようなπ共役化合物は、R及びpを変更することで容易に液晶状態を示す温度域を調整することができる。
【0044】
【化7】
【0045】
式中、Rは炭素原子数3~20のアルキル基又は炭素原子数3~20のアルコキシ基を示し、pは1~5の整数を示す。pが2以上のとき、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0046】
のアルキル基は、分岐状であっても直鎖状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。また、アルキル基の炭素原子数は、4~20であることが好ましく、6~20であることがより好ましい。
【0047】
のアルコキシ基は、分岐状であっても直鎖状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。また、アルコキシ基の炭素原子数は、4~20であることが好ましく、6~20であることがより好ましい。
【0048】
pは、好ましくは1~3であり、より好ましくは1又は2である。
【0049】
式(2)で表される基のうち、Rとしては下記式(2-1)、(2-2)、(2-3)又は(2-4)で表される基が特に好適である。
【0050】
【化8】
【0051】
は、上記の基に限定されず、炭素原子数3~20のアルキル基を少なくとも一つ有する基であればよい。Rは、π共役化合物に液晶性を付与する基であってよく、またRは、π共役化合物が所定の温度域で液晶状態を示すように選択された基であってよい。また、Rは、例えば、Chemical Review,2009,vol 109,6275-6540に記載されたような、液晶性を付与するために導入される置換基全般から選択することもできる。
【0052】
上記π共役化合物は、35~150℃(より好ましくは40~140℃、更に好ましくは70~100℃)の少なくとも一部の温度域で液晶状態を示すことが好ましい。このようなπ共役化合物を用いた粘着体は、被着体に悪影響を及ぼしにくい温度域下で剥離することができる。
【0053】
また、上記π共役化合物は、液晶状態を示す温度域が、35℃以上にあることが好ましく、40℃以上にあることがより好ましく、50℃以上にあることが更に好ましい。液晶状態を示す温度域が35℃以上であると、プロセス中の予期しない光照射による流動化が生じ難くなる。
【0054】
また、上記π共役化合物は、液晶状態を示す温度域が、150℃以下にあることが好ましく、145℃以下にあることがより好ましい。このようなπ共役化合物は、比較的容易にπ共役化合物を液晶状態にすることができるため、このようなπ共役化合物を用いることで粘着体の接着及び剥離がより容易となる。
【0055】
(π共役化合物の製造方法)
上記π共役化合物の製造方法の一態様について以下に説明する。本態様の製造方法は、下記式(3)で表されるテトラホルミル化合物と2-ブテン二酸ジエステルとを反応させる工程を含む。なお、式中、nは1~3の整数を示す。
【0056】
【化9】
【0057】
このようなテトラホルミル化合物と2-ブテン二酸ジエステルとの反応によれば、アセン骨格を伸張することができるとともに、両末端のベンゼン環にそれぞれ2つのエステル基を設けることができる。すなわち、上記反応によれば、下記式(5)で表される化合物を得ることができる。式中、Rは2-ブテン二酸ジエステルのエステル部分に由来する基を示す。
【0058】
【化10】
【0059】
式(5)で表される化合物は、Rが炭素原子数3~20のアルキル基を少なくとも一つ有する基であるとき、式(1)で表される化合物に相当する。すなわち、2-ブテン二酸ジエステルとして、エステル部分に式(1)のRに相当する基を有する2-ブテン二酸ジエステルを用いると、上記反応によって上記π共役化合物を得ることができる。なお、2-ブテン二酸ジエステルとしては、フマル酸ジエステルを用いることも、マレイン酸ジエステルを用いることもできる。
【0060】
ここで、エステル部分に式(1)のRに相当する基を有する2-ブテン二酸ジエステルは、下記式(4-1)又は(4-2)で表すことができる。式中、Rは式(1)のRと同義である。
【0061】
【化11】
【0062】
また、式(5)で表される化合物において、Rは、式(1)のRに相当する基でなくてもよい。この場合、式(5)で表される化合物のエステル交換反応を行って、Rを式(1)のRに相当する基に変換することによって、上記π共役化合物を得ることができる。
【0063】
なお、式(3)で表されるテトラホルミル化合物は、公知の方法で製造することができ、例えばJ.Am.Chem.Soc.,2013,135,8842(Yuan,C.;Saito,S.;Camacho,C.;Irle,S.;Hisaki,I.;Yamaguchi,S.)の記載等を参考に製造することができる。
【0064】
上記テトラホルミル化合物と2-ブテン二酸ジエステルとの反応条件は、例えば、C.Lin etal,Chem.Commun.2009,45,803や、Y.Lin etal,Org.Biomol.Chem.2011,9,4507に記載のアセン類の伸張反応の記載を参考に、適宜設定することができる。
【0065】
例えば、上記反応は、窒素雰囲気下、塩化メチレン溶媒中で、トリブチルホスフィン及びジアザビシクロウンデセンの存在下にテトラホルミル化合物と2-ブテン二酸ジエステルとを反応させることにより実施することができる。また、当該反応により得られた化合物は、例えばカラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラムクロマトグラフィー及び/又は高速液体クロマトグラフィー)により精製することができる。
【0066】
上記反応に用いる反応溶媒としては、上述の塩化メチレン以外に、例えば、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、トルエン等の芳香族系溶媒等を用いることができる。
【0067】
上記反応では、上述のトリブチルホスフィンに代えて、例えばトリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン等のトリアルキルホスフィンを用いることもできる。また、上記反応では、上述のジアザビシクロウンデセンの塩基を用いることもできる。具体的には、例えばカリウムtert-ブトキシド、水素化ナトリウム等の強塩基を好適に用いることができる。
【0068】
上記反応の反応温度は、例えば25℃以上とすることができ、使用した溶媒の沸点まで昇温してもよい。
【0069】
(粘着体)
本実施形態に係る粘着体は、粘着成分と上記π共役化合物との組み合わせによって、被着体への高い接着力と易剥離性とを両立するものであればよい。
【0070】
本実施形態に係る粘着体は、粘着成分及びπ共役化合物の両方の寄与により高い接着力を発現できる。また、所定の温度域下で光照射することで、π共役化合物の接着性への寄与を低減させることができるため、容易に被着体から剥離することができる。
【0071】
また、本実施形態に係る粘着体において、粘着成分は室温で粘着性を示すのに対して、π共役化合物は固体状態では粘着性を示さず、接着力を発現するためには液晶状態又は液体状態に転移させる必要がある。このような接着形態の違いから、本実施形態に係る粘着体は、粘着成分の作用で仮接着した後、π共役化合物の作用を発現させて接合する、等の多様な接合方法に応用できる。
【0072】
また、本実施形態に係る粘着体は、被着体との接合面における粘着成分及びπ共役化合物の比率を変更することで、接着強度及び剥離性を調整できるため、多様な用途に応用できる。
【0073】
一態様において、粘着体は、粘着成分を含有する粘着面と、上記π共役化合物を含有する解体性接着面と、を備えるものであってよい。このような粘着体は、被着体への貼付時には、粘着面及び解体性接着面の両方の寄与により高い接着力を発現できる。また、剥離時には、所定の温度域下で光照射して解体性接着面の接着力を低減させることで、容易に剥離が可能となる。
【0074】
上記粘着体は、被着体との接合面において、上記粘着面と上記解体性接着面とが含まれていればよく、被着体との接合前に上記形態を有している必要はない。
【0075】
一態様において、粘着体は、粘着成分を含有する粘着剤層と、粘着剤層上に配置され、上記π共役化合物を含有する解体性接着剤層と、を備えるものであってよい。
【0076】
上記粘着体は、粘着剤層上に部分的に解体性接着剤層が形成されていてよい。この場合、被着体への押圧により粘着剤層による粘着面と解体性接着剤層による解体性接着面とを、被着体に接触させることができる。
【0077】
また、上記粘着体は、粘着剤層上の全面に解体性接着剤層が形成されていてもよい。この場合、被着体への貼付時に強く押圧して解体性接着剤層の一部を破断させる、被着体への貼付前に面内方向に伸張させる、被着体への貼付前に解体性接着剤層の一部を剥離する等の方法によって、被着体との接合面に、粘着剤層による粘着面と解体性接着剤層による解体性接着面とを形成できる。
【0078】
一態様において、粘着体は、粘着成分を含有する粘着部と、π共役化合物を含有する解体性接着部とを有し、粘着部からなる粘着面と解体性接着部からなる解体性接着面とを有する接合面を備えるものであってもよい。
【0079】
上記粘着体は、例えば、粘着部からなる連続相に、解体性接着部からなる分散相が分散した構造を有していてよい。また、上記粘着体は、解体性接着部からなる連続相に、粘着部からなる分散相が分散した構造を有していてもよい。また、上記粘着体は、基材上に粘着部と解体性接着部とがそれぞれ形成された構造を有していてよく、粘着部及び解体性接着部はそれぞれ複数形成されていてよく、互いに接触していても離間していてもよい。
【0080】
一態様において、粘着体は、粘着成分とπ共役化合物とを含有する粘着剤で構成された粘着剤層を備えるものであってもよい。このような粘着体は、例えば、粘着剤層上に、微細な粘着面と解体性接着面とが混在していると見做すことができる。
【0081】
上記粘着体は、粘着成分及びπ共役化合物の両方の寄与によって粘着剤層を被着体に強固に接着できる。また、上記粘着体は、接着力が低下し、容易に剥離が可能となる。
【0082】
本実施形態において、粘着成分は特に限定されず、粘着剤として使用し得る成分であればよい。粘着成分としては、例えば、公知の粘着剤を用いてよい。
【0083】
粘着成分は、例えば、室温(例えば25℃)で粘着性を示す粘着剤(感圧接着剤)を形成可能な組成物であってよい。
【0084】
粘着成分から構成される粘着剤の貯蔵弾性率は、例えば10Pa~10Paであってよい。
【0085】
粘着成分は、例えば、粘着性樹脂及び粘着付与剤からなる群より選択される少なくとも一種を含有していてよい。粘着性樹脂は、公知の粘着性樹脂であってよく、例えば、上述の貯蔵弾性率を有する樹脂であってよい。粘着付与剤は、公知の粘着付与剤であってよく、例えば、石油系樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、クマロンーインデン樹脂、天然樹脂ロジン、変性ロジン、グリセリンエステルロジン、ペンタエリスリトールエステルロジン、フェノール樹脂、キシレン樹脂、脂環族系石油樹脂、スチレン系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂等であってよい。これらは一種を単独で用いてよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0086】
本実施形態において、解体性接着剤層及び解体性接着部は、本発明の効果が奏される範囲において、π共役化合物以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリアミド、スチレン系ポリマー等の熱可塑性高分子;(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ系化合物等の硬化性モノマー成分;光開始剤等が挙げられる。
【0087】
以下、図面を参照しつつ、粘着体の好適な形態について説明する。なお、図面は理解を容易にするため一部を誇張して描いており、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0088】
(第1の形態)
図1は、粘着体の好適な一形態を示す断面図である。図1に示す粘着体10は、π共役化合物を含有する解体性接着剤層11と、粘着成分を含有する粘着剤層12と、基材13と、を備えている。粘着体10は、粘着剤層12の一方の主面上に解体性接着剤層11を備えており、粘着剤層12の他方の主面上に基材13を備えている。
【0089】
粘着体10は、例えば、一方の主面が解体性接着剤層11で構成され、他方の主面が基材13で構成されたテープ状又はフィルム状の粘着体であってよい。粘着体10は、粘着剤層12の露出が少ないため、保管時及び使用時の取り扱い性に優れる。
【0090】
粘着体10は、解体性接着剤層11側の面(接合面)で被着体と接合される。例えば、粘着体10は、解体性接着剤層11と被着体とが接するように被着体上に粘着体10を配置し、粘着体10を被着体に強く押し付け、解体性接着剤層11の一部を破断させることで、粘着剤層12と被着体とを接触させ、被着体上に仮接着することができる。
【0091】
また、粘着体10は、面内方向に伸張して解体性接着剤層11の一部を破断させることで接合面に粘着剤層12を露出させてもよい。この場合、被着体上に配置した粘着体10を軽く押圧することで、粘着剤層12と被着体とが接着し、被着体上に粘着体10を仮接着することができる。
【0092】
また、粘着体10は、解体性接着剤層11の一部を剥離することで接合面に粘着剤層12を露出させてもよい。この場合、被着体上に配置した粘着体10を軽く押圧することで、粘着剤層12と被着体とが接着し、被着体上に粘着体10を仮接着することができる。
【0093】
被着体上に仮接着した粘着体10は、π共役化合物が液晶状態を示す温度域又は当該温度域を超える温度に加熱し、その後、π共役化合物が固体状態を示す温度域まで冷却することにより、被着体に強固に接合できる。
【0094】
また、粘着体10は、π共役化合物が液晶状態を示す温度域又は当該温度域を超える温度に加熱した状態で被着体に押し付けることで、被着体に接合してもよい。この場合、流動化した解体性接着剤層11を押し退けて粘着剤層12の一部と被着体とが接触することで、粘着剤層12による接着力が発現する。また、被着体への貼付後に、π共役化合物が固体状態を示す温度域まで冷却されることで解体性接着剤層11による接着力が発現し、粘着体10と被着体とが強固に接合される。
【0095】
解体性接着剤層11は、π共役化合物が積層構造を形成可能であれば、極めて薄い場合であっても接着力を発現できる。この観点から、解体性接着剤層11の厚さは、例えば0.1μm以上であってよい。また、解体性接着剤層11の破断が容易となる観点、及び、コスト低減の観点からは、解体性接着剤層11の厚さは、例えば50μm以下であってよく、30μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
【0096】
粘着剤層12の厚さは特に限定されず、例えば、解体性接着剤層11の破断箇所に流入して被着体と接触できる厚さがあればよい。粘着剤層12の厚さは、粘着剤層12を構成する粘着剤の種類及び粘着体10の用途等に応じて適宜変更してもよい。粘着剤層12の厚さは、例えば、0.1~100μmであってよく、好ましくは0.1~60μmである。
【0097】
図1において、粘着体10は、粘着剤層12の解体性接着剤層11と反対側の主面上に基材13を備えている。なお、粘着体10は必ずしも基材を備えている必要はなく、解体性接着剤層11と粘着剤層12とから構成されていてもよい。
【0098】
基材13の種類及び形状は特に限定されず、粘着剤層12を構成する粘着剤の種類及び粘着体10の用途等に応じて適宜変更できる。基材13は、例えば、金属基材、無機基材、樹脂基材等であってよい。また、基材13の形状は、例えば、フィルム状、テープ状、直方体状等であってよい。
【0099】
基材13は、被着体と共に組立品を構成する部材の一つであってよい。また、基材13は、被着体に一時的に貼付される支持部材又は保護部材であってもよい。
【0100】
粘着体10は、基材13の粘着剤層12と反対側の面上に、更に他の構造を有していてもよい。例えば、粘着体10は、基材13の粘着剤層12と反対側の面上に、粘着成分とπ共役化合物との組み合わせによる接着構造を更に有していてもよい。当該接着構造は、例えば、解体性接着剤層11及び粘着剤層12と同様の構造であってよく、後述する他の形態が有する接着構造と同様の構造であってもよい。
【0101】
(第2の形態)
図2(a)は、粘着体の好適な一形態を示す上面図であり、図2(b)は、図2(a)のII-II断面を示す断面図である。図2に示す粘着体20は、π共役化合物を含有する解体性接着剤層21と、粘着成分を含有する粘着剤層22と、基材23と、を備えている。粘着体20は、粘着剤層22の一方の主面上に、帯状の解体性接着剤層21を複数備えており、粘着剤層22の他方の主面上に基材23を備えている。
【0102】
粘着体20は、例えば、テープ状又はフィルム状の粘着体であってよい。粘着体20は、粘着剤層22が部分的に露出しているため、被着体に押し付けることで容易に仮接着することができる。被着体上に仮接着した粘着体20は、π共役化合物が液晶状態を示す温度域又は当該温度域を超える温度に加熱し、その後、π共役化合物が固体状態を示す温度域まで冷却することにより、被着体に対して強固に接合できる。
【0103】
また、粘着体20は、π共役化合物が液晶状態を示す温度域又は当該温度域を超える温度に加熱した状態で被着体に押し付けることで、被着体に接合してもよい。この場合、粘着剤層22の露出部と被着体との接触により粘着剤層22による接着力が発現し、また、被着体への貼付後に、π共役化合物が固体状態を示す温度域まで冷却されることで解体性接着剤層21による接着力が発現し、粘着体20と被着体とが強固に接合される。
【0104】
解体性接着剤層21は、π共役化合物が積層構造を形成可能であれば、極めて薄い場合であっても接着力を発現できる。この観点から、解体性接着剤層21の厚さは、例えば0.1μm以上であってよい。また、コスト低減の観点からは、解体性接着剤層21の厚さは、例えば50μm以下であってよく、30μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
【0105】
解体性接着剤層21の幅、及び、隣接する解体性接着剤層21間の距離(すなわち、粘着剤層22の露出部の幅)は特に限定されず、所望の粘着性及び剥離性に応じて適宜変更してよい。接合面に占める解体性接着剤層21の割合を多くすることで、剥離性がより向上する。また、接合面に露出する粘着剤層22の割合を多くすることで、仮接着時の接着力及び被着体との接合強度が向上する。
【0106】
粘着体20において、複数の解体性接着剤層21は互いに略同一の幅を有していることが好ましく、粘着剤層22上に規則的に配置されていることが好ましい。
【0107】
粘着体20において、解体性接着剤層21はテープ状の粘着体20の幅方向及び長さ方向に対して角度を付けて形成されているが、解体性接着剤層21の角度は、幅方向又は長さ方向と平行であってもよい。粘着体20のように解体性接着剤層21を形成することで、幅方向又は長さ方向のいずれの方向から剥離しても、被着体との界面に解体性接着剤層21を存在させることができ、剥離性がより良好となる。
【0108】
粘着剤層22の厚さは特に限定されず、粘着剤層22を構成する粘着剤の種類及び粘着体20の用途等に応じて適宜変更してよい。粘着剤層22の厚さは、例えば、0.1~100μmであってよく、好ましくは0.1~60μmである。
【0109】
図2において、粘着体20は、粘着剤層22の解体性接着剤層21と反対側の主面上に基材23を備えている。なお、粘着体20は必ずしも基材を備えている必要はなく、解体性接着剤層21と粘着剤層22とから構成されていてもよい。
【0110】
基材23の種類及び形状は特に限定されず、粘着剤層22を構成する粘着剤の種類及び粘着体20の用途等に応じて適宜変更できる。基材23は、例えば、金属基材、無機基材、樹脂基材等であってよい。また、基材23の形状は、例えば、フィルム状、テープ状、直方体状等であってよい。
【0111】
基材23は、被着体と共に組立品を構成する部材の一つであってよい。また、基材23は、被着体に一時的に貼付される支持部材又は保護部材であってもよい。
【0112】
粘着体20は、基材23の粘着剤層22と反対側の面上に、更に他の構造を有していてもよい。例えば、粘着体20は、基材23の粘着剤層22と反対側の面上に、粘着成分とπ共役化合物との組み合わせによる接着構造を更に有していてもよい。当該接着構造は、例えば、解体性接着剤層21及び粘着剤層22と同様の構造であってよく、本明細書の他の形態が有する接着構造と同様の構造であってもよい。
【0113】
(第3の形態)
図3(a)は、粘着体の好適な一形態を示す上面図であり、図3(b)は、図3(a)のIII-III断面を示す断面図である。図3に示す粘着体30は、π共役化合物を含有する解体性接着剤層31と、粘着成分を含有する粘着剤層32と、基材33と、を備えている。粘着体30は、粘着剤層32の一方の主面上に、複数の解体性接着剤層31が互いに離間して設けられており、粘着剤層32の他方の主面上に基材33が設けられている。
【0114】
粘着体30は、例えば、テープ状又はフィルム状の粘着体であってよい。粘着体30は、粘着剤層32が部分的に露出しているため、被着体に押し付けることで容易に仮接着することができる。被着体上に仮接着した粘着体30は、π共役化合物が液晶状態を示す温度域又は当該温度域を超える温度に加熱し、その後、π共役化合物が固体状態を示す温度域まで冷却することにより、被着体に対して強固に接合できる。
【0115】
また、粘着体30は、π共役化合物が液晶状態を示す温度域又は当該温度域を超える温度に加熱した状態で被着体に押し付けることにより、被着体に接合してもよい。この場合、粘着剤層32の露出部と被着体との接触により粘着剤層32による接着力が発現し、また、被着体への貼付後に、π共役化合物が固体状態を示す温度域まで冷却されることで解体性接着剤層31による接着力が発現し、粘着体30と被着体とが強固に接合される。
【0116】
解体性接着剤層31は、π共役化合物が積層構造を形成可能であれば、極めて薄い場合であっても接着力を発現できる。この観点から、解体性接着剤層31の厚さは、例えば0.1μm以上であってよい。また、コスト低減の観点からは、解体性接着剤層31の厚さは、例えば50μm以下であってよく、30μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
【0117】
解体性接着剤層31の形状、及び、隣接する解体性接着剤層21間の距離は特に限定されず、所望の粘着性及び剥離性に応じて適宜変更してよい。接合面に占める解体性接着剤層31の割合を多くすることで、剥離性がより向上する。また、接合面に露出する粘着剤層32の割合を多くすることで、仮接着時の接着力及び被着体との接合強度が向上する。
【0118】
粘着体30において、複数の解体性接着剤層31は互いに略同一の形状であることが好ましく、粘着剤層32上に規則的に配置されていることが好ましい。
【0119】
粘着剤層32の厚さは特に限定されず、粘着剤層32を構成する粘着剤の種類及び粘着体30の用途等に応じて適宜変更してよい。粘着剤層32の厚さは、例えば、0.1~100μmであってよく、好ましくは0.1~60μmである。
【0120】
図3において、粘着体30は、粘着剤層32の解体性接着剤層31と反対側の主面上に基材33を備えている。なお、粘着体30は必ずしも基材を備えている必要はなく、解体性接着剤層31と粘着剤層32とから構成されていてもよい。
【0121】
基材33の種類及び形状は特に限定されず、粘着剤層32を構成する粘着剤の種類及び粘着体30の用途等に応じて適宜変更できる。基材33は、例えば、金属基材、無機基材、樹脂基材等であってよい。また、基材33の形状は、例えば、フィルム状、テープ状、直方体状等であってよい。
【0122】
基材33は、被着体と共に組立品を構成する部材の一つであってよい。また、基材33は、被着体に一時的に貼付される支持部材又は保護部材であってもよい。
【0123】
粘着体30は、基材33の粘着剤層32と反対側の面上に、更に他の構造を有していてもよい。例えば、粘着体30は、基材33の粘着剤層32と反対側の面上に、粘着成分とπ共役化合物との組み合わせによる接着構造を更に有していてもよい。当該接着構造は、例えば、解体性接着剤層31及び粘着剤層32と同様の構造であってよく、本明細書の他の形態が有する接着構造と同様の構造であってもよい。
【0124】
(第4の形態)
図4は、粘着体の好適な一形態を示す断面図である。図4に示す粘着体40は、π共役化合物を含有する解体性接着剤層41と、粘着成分を含有する粘着剤層42と、基材43と、を備えている。粘着体40において、粘着剤層42は一方の主面側に複数の凹部が設けられており、当該凹部に解体性接着剤層41が設けられている。これにより、粘着体40では、解体性接着剤層41による解体性接着面と粘着剤層42による粘着面とが同一面に形成されている。
【0125】
粘着体40は、例えば、テープ状又はフィルム状の粘着体であってよい。粘着体40は、粘着剤層42が部分的に露出しているため、被着体に押し付けることで容易に仮接着することができる。被着体上に仮接着した粘着体40は、π共役化合物が液晶状態を示す温度域又は当該温度域を超える温度に加熱し、その後、π共役化合物が固体状態を示す温度域まで冷却することにより、被着体に対して強固に接合できる。
【0126】
また、粘着体40は、π共役化合物が液晶状態を示す温度域又は当該温度域を超える温度に加熱した状態で被着体に押し付けることで、被着体に接合してもよい。この場合、粘着剤層42の露出部と被着体との接触により粘着剤層42による接着力が発現し、また、被着体への貼付後に、π共役化合物が固体状態を示す温度域まで冷却されることで解体性接着剤層41による接着力が発現し、粘着体40と被着体とが強固に接合される。
【0127】
解体性接着剤層41は、π共役化合物が積層構造を形成可能であれば、極めて薄い場合であっても接着力を発現できる。この観点から、解体性接着剤層41の厚さは、例えば0.1μm以上であってよい。また、コスト低減の観点からは、解体性接着剤層41の厚さは、例えば50μm以下であってよく、30μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
【0128】
解体性接着剤層41の形状、及び、隣接する解体性接着剤層41間の距離は特に限定されず、所望の粘着性及び剥離性に応じて適宜変更してよい。接合面に占める解体性接着剤層41の割合を多くすることで、剥離性がより向上する。また、接合面に露出する粘着剤層42の割合を多くすることで、仮接着時の接着力及び被着体との接合強度が向上する。解体性接着剤層41は、例えば、図2(a)と同様の上面図を成すように形成されていてよく、図3(a)と同様の上面図を成すように形成されていてもよい。
【0129】
粘着体40において、複数の解体性接着剤層41は互いに略同一の形状であることが好ましく、粘着剤層42上に規則的に配置されていることが好ましい。
【0130】
粘着剤層42の厚さは特に限定されず、粘着剤層42を構成する粘着剤の種類及び粘着体40の用途等に応じて適宜変更してよい。粘着剤層42の厚さは、例えば、0.1~100μmであってよく、好ましくは0.1~60μmである。
【0131】
図4において、粘着体40は、粘着剤層42の解体性接着剤層41と反対側の主面上に基材43を備えている。なお、粘着体40は必ずしも基材を備えている必要はなく、解体性接着剤層41と粘着剤層42とから構成されていてもよい。
【0132】
基材43の種類及び形状は特に限定されず、粘着剤層42を構成する粘着剤の種類及び粘着体40の用途等に応じて適宜変更できる。基材43は、例えば、金属基材、無機基材、樹脂基材等であってよい。また、基材43の形状は、例えば、フィルム状、テープ状、直方体状等であってよい。
【0133】
基材43は、被着体と共に組立品を構成する部材の一つであってよい。また、基材43は、被着体に一時的に貼付される支持部材又は保護部材であってもよい。
【0134】
粘着体40は、基材43の粘着剤層42と反対側の面上に、更に他の構造を有していてもよい。例えば、粘着体40は、基材43の粘着剤層42と反対側の面上に、粘着成分とπ共役化合物との組み合わせによる接着構造を更に有していてもよい。当該接着構造は、例えば、解体性接着剤層41及び粘着剤層42と同様の構造であってよく、本明細書の他の形態が有する接着構造と同様の構造であってもよい。
【0135】
(第5の形態)
図5は、粘着体の好適な一形態を示す断面図である。図5に示す粘着体50は、π共役化合物を含有する解体性接着部51と、粘着成分を含有する粘着部52と、基材53と、を備えている。粘着体50において、基材53の一方面上には、解体性接着部51と粘着部52とがそれぞれ設けられており、解体性接着部51による解体性接着面と粘着部52による粘着面とが形成されている。なお、粘着体50は、基材53とは反対側の接合面にも、解体性接着部51による解体性接着面と粘着部52による粘着面とが形成されていてもよい。
【0136】
粘着体50は、例えば、テープ状又はフィルム状の粘着体であってよい。粘着体50は、接合面に粘着面が部分的に形成されているため、接合面を被着体に押し付けることで容易に仮接着することができる。被着体上に仮接着した粘着体50は、π共役化合物が液晶状態を示す温度域又は当該温度域を超える温度に加熱し、その後、π共役化合物が固体状態を示す温度域まで冷却することにより、被着体に対して強固に接合できる。
【0137】
また、粘着体50は、π共役化合物が液晶状態を示す温度域又は当該温度域を超える温度に加熱した状態で被着体に押し付けることにより、被着体に接合してもよい。この場合、粘着面と被着体との接触により粘着部52による接着力が発現し、また、被着体への貼付後に、π共役化合物が固体状態を示す温度域まで冷却されることで解体性接着部51による接着力が発現し、粘着体50と被着体とが強固に接合される。
【0138】
解体性接着部51及び粘着部52の形状は特に限定されず、所望の粘着性及び剥離性に応じて適宜変更してよい。接合面に占める解体性接着面の割合を多くすることで、剥離性がより向上する。また、接合面に露出する粘着面の割合を多くすることで、仮接着時の接着力及び被着体との接合強度が向上する。解体性接着部51及び粘着部52は、例えば、図2(a)と同様の上面図を成すように形成されていてよく、図3(a)と同様の上面図を成すように形成されていてもよい。
【0139】
解体性接着部51及び粘着部52の厚さは特に限定されず、粘着部52を構成する粘着剤の種類及び粘着体50の用途等に応じて適宜変更してよい。解体性接着部51及び粘着部52の厚さは、例えば、0.1~100μmであってよく、好ましくは0.1~60μmである。
【0140】
図5において、粘着体50は、粘着部52の解体性接着部51と反対側の主面上に基材53を備えている。なお、粘着体50は必ずしも基材を備えている必要はなく、解体性接着部51と粘着部52とから構成されていてもよい。
【0141】
基材53の種類及び形状は特に限定されず、粘着部52を構成する粘着剤の種類及び粘着体50の用途等に応じて適宜変更できる。基材53は、例えば、金属基材、無機基材、樹脂基材等であってよい。また、基材53の形状は、例えば、フィルム状、テープ状、直方体状等であってよい。
【0142】
基材53は、被着体と共に組立品を構成する部材の一つであってよい。また、基材53は、被着体に一時的に貼付される支持部材又は保護部材であってもよい。
【0143】
粘着体50は、基材53の解体性接着部51及び粘着部52と反対側の面上に、更に他の構造を有していてもよい。例えば、粘着体50は、基材53の解体性接着部51及び粘着部52と反対側の面上に、粘着成分とπ共役化合物との組み合わせによる接着構造を更に有していてもよい。当該接着構造は、例えば、解体性接着部51及び粘着部52と同様の構造であってよく、本明細書の他の形態が有する接着構造と同様の構造であってもよい。
【0144】
(第6の形態)
図6は、粘着体の好適な一形態を示す断面図である。図6に示す粘着体60は、π共役化合物を含有する第一の解体性接着剤層61a及び第二の解体性接着剤層61bと、粘着成分を含有する粘着剤層62と、を備えている。粘着体60においては、粘着剤層62の一方の主面上に第一の解体性接着剤層61aが設けられており、粘着剤層62の他方の主面上に第二の解体性接着剤層61bが設けられている。
【0145】
粘着体60は、例えば、各主面がそれぞれ第一の解体性接着剤層61a及び第二の解体性接着剤層61bで構成されたテープ状又はフィルム状の粘着体であってよい。粘着体60は、粘着剤層62の露出が少ないため、保管時及び使用時の取り扱い性に優れる。
【0146】
粘着体60は、第一の解体性接着剤層61a側の面(第一の接合面)及び第二の解体性接着剤層61b側の面(第二の接合面)の両方で被着体と接合できる。例えば、粘着体60は、第一の解体性接着剤層61aと被着体とが接するように被着体上に粘着体60を配置し、粘着体60を被着体に強く押し付けることで第一の解体性接着剤層61aの一部を破断させることで、粘着剤層62と被着体とを接触させ、被着体上に仮接着することができる。また、粘着体60は、第一の被着体と第二の被着体とで粘着体60を挟持し、粘着体60の両側から圧力をかけることで、第一の解体性接着剤層61aの一部及び第二の解体性接着剤層61bの一部を破断させて、第一の被着体及び第二の被着体を仮接着させることもできる。
【0147】
また、粘着体60は、面内方向に伸張して第一の解体性接着剤層61aの一部及び第二の解体性接着剤層61bの一部を破断させることで第一の接合面及び第二の接合面に粘着剤層62を露出させてもよい。この場合、第一の被着体と第二の被着体とで粘着体60を挟持し、軽く両側から圧力をかけることで、粘着体60を介して第一の被着体と第二の被着体と仮接着させることができる。
【0148】
また、粘着体60は、第一の解体性接着剤層61aの一部及び/又は第二の解体性接着剤層61bの一部を剥離することで、第一の接合面及び/又は第二の接合面に粘着剤層62を露出させてもよい。この場合、被着体と粘着体60とを容易に仮接着させることができる。
【0149】
仮接着した粘着体60は、π共役化合物が液晶状態を示す温度域又は当該温度域を超える温度に加熱し、その後、π共役化合物が固体状態を示す温度域まで冷却することにより、被着体に強固に接合できる。
【0150】
また、第一の被着体及び第二の被着体の間に配置した粘着体60に対して、π共役化合物が液晶状態を示す温度域又は当該温度域を超える温度に加熱した状態で両側から圧力をかけることで、被着体に接合してもよい。この場合、第一の解体性接着剤層61a及び第二の解体性接着剤層61bを押し退けて粘着剤層62の一部と第一の被着体及び第二の被着体とが接触することで、粘着剤層62による接着力が発現する。また、π共役化合物が固体状態を示す温度域まで冷却されることで第一の解体性接着剤層61a及び第二の解体性接着剤層61bによる接着力が発現し、第一の被着体、粘着体60及び第二の被着体が強固に接合される。
【0151】
第一の解体性接着剤層61a及び第二の解体性接着剤層61bは、π共役化合物が積層構造を形成可能であれば、極めて薄い場合であっても接着力を発現できる。この観点から、第一の解体性接着剤層61a及び第二の解体性接着剤層61bの厚さは、それぞれ、例えば0.1μm以上であってよい。また、破断が容易となる観点、及び、コスト低減の観点からは、第一の解体性接着剤層61a及び第二の解体性接着剤層61bの厚さは、それぞれ、例えば50μm以下であってよく、30μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
【0152】
粘着剤層62の厚さは特に限定されず、例えば、第一の解体性接着剤層61a及び第二の解体性接着剤層61bの破断箇所に流入して被着体と接触できる厚さがあればよい。粘着剤層62の厚さは、粘着剤層62を構成する粘着剤の種類及び粘着体60の用途等に応じて適宜変更してもよい。粘着剤層62の厚さは、例えば、0.1~100μmであってよく、好ましくは0.1~60μmである。
【0153】
(第7の形態)
図7は、粘着体の好適な一形態を示す断面図である。図7に示す粘着体70は、粘着成分及びπ共役化合物を含有する粘着剤で構成された粘着剤層72と基材73とを備えており、基材73の一方の主面上に粘着剤層72が設けられている。
【0154】
粘着体70は、例えば、テープ状又はフィルム状の粘着体であってよい。粘着体70は、粘着剤層72が粘着成分を含有しているため、被着体に押し付けることで容易に仮接着することができる。被着体上に仮接着した粘着体70は、π共役化合物が液晶状態を示す温度域又は当該温度域を超える温度に加熱し、その後、π共役化合物が固体状態を示す温度域まで冷却することにより、被着体に対して強固に接合できる。
【0155】
粘着剤層72の厚さは特に限定されず、粘着成分の種類及び粘着体70の用途等に応じて適宜変更してよい。粘着剤層72の厚さは、例えば、0.1~100μmであってよく、好ましくは0.1~60μmである。
【0156】
粘着剤層72を構成する粘着剤中、π共役化合物の含有量は特に限定されず、粘着剤層72が粘着性を発現できる範囲で適宜変更してよい。粘着剤に占めるπ共役化合物の割合を多くすることで、剥離性がより向上する。また、粘着剤に占めるπ共役化合物の割合を少なくすることで、仮接着時の接着力及び被着体との接合強度が向上する。π共役化合物の含有量は、粘着剤の全量基準で、例えば、0.1質量%以上であってよく、5質量%以上が好ましい。また、π共役化合物の含有量は、粘着剤の全量基準で、例えば、50質量%以下であってよく、30質量%以下が好ましい。
【0157】
図7において、粘着体70は、粘着剤層72の一方の主面上に基材73を備えている。なお、粘着体70は必ずしも基材を備えている必要はなく、粘着剤層72のみから構成されていてもよい。
【0158】
基材73の種類及び形状は特に限定されず、粘着剤層72を構成する粘着剤の種類及び粘着体70の用途等に応じて適宜変更できる。基材73は、例えば、金属基材、無機基材、樹脂基材等であってよい。また、基材73の形状は、例えば、フィルム状、テープ状、直方体状等であってよい。
【0159】
基材73は、被着体と共に組立品を構成する部材の一つであってよい。また、基材73は、被着体に一時的に貼付される支持部材又は保護部材であってもよい。
【0160】
粘着体70は、基材73の粘着剤層72と反対側の面上に、更に他の構造を有していてもよい。例えば、粘着体70は、基材73の粘着剤層72と反対側の面上に、粘着成分とπ共役化合物との組み合わせによる接着構造を更に有していてもよい。当該接着構造は、例えば、粘着剤層72と同様であってよく、本明細書の他の形態が有する接着構造と同様の構造であってもよい。
【0161】
(接合体の製造方法)
本実施形態に係る接合体の製造方法は、上述の粘着体を被着体に押し付けて、粘着体と被着体とを接合させる接合工程を含む。
【0162】
接合工程では、粘着体中の粘着成分の作用によって、粘着体と被着体とが接着するように実施されてよい。
【0163】
接合工程は、上記π共役化合物が液晶状態を示す温度域又は当該温度域を超える温度下で、上記粘着体を上記被着体に押し付ける工程であってもよい。このような接合工程によれば、粘着成分及びπ共役化合物の両方の寄与により、粘着体を被着体に強固に接合できる。
【0164】
また、接合工程は、粘着体と被着体とを仮接着する工程であってよい。この場合、本実施形態に係る製造方法は、粘着体と被着体との接合面を、π共役化合物が液晶状態を示す温度域又は当該温度域を超える温度に加熱する加熱工程を更に含んでいてよい。このような加熱工程によれば、粘着成分及びπ共役化合物の両方の寄与により、粘着体を被着体に強固に接合できる。
【0165】
被着体は特に限定されない。被着体の具体例としては、例えばガラス、サファイア、石英、フッ化カルシウム、ステンレス、アルミ、鉄、シリコンウエハ、窒化ガリウム、シリコンカーバイド等が挙げられる。
【0166】
(粘着体の剥離方法)
本実施形態に係る粘着体の剥離方法は、粘着体と被着体との接合面の少なくとも一部に、π共役化合物が液晶状態を示す温度域下で光を照射する照射工程を含む。
【0167】
被着体が光透過性を有するとき、照射工程は、被着体側から接合面に光を照射する工程であってよい。また、粘着体が基材を有しない又は基材が光透過性を有するとき、照射工程は、粘着体の被着体と反対側から光を照射する工程であってよい。照射工程を経ることで、粘着体を容易に剥離することができる。
【0168】
また、照射工程は、粘着体と被着体との界面に接合面に平行な方向から光を照射しつつ、粘着体を剥離する工程であってもよい。
【0169】
照射工程で照射する光の波長は、π共役化合物が吸収可能な波長であればよい。照射光の波長は、例えば200~450nmであってよい。
【0170】
照射工程で照射する光の照射量は、接合面のπ共役化合物の含有量に応じて適宜変更してよい。例えば、光の照射量は、接合面に対して、100~100000mJ/cmの積算光量となるように照射してよい。上記積算光量は、好ましくは200~50000mJ/cm、より好ましくは200~30000mJ/cmである。
【0171】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例
【0172】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0173】
(フマル酸ジエステルの合成)
マレイン酸(81.7mg,0.70mmol)と炭酸セシウム(688.2mg,2.10mmol)を無水ジメチルホルムアミド(3mL)に溶かし、室温、窒素雰囲気下で50分間撹拌した。反応溶液に3,4-ビス(ドデシルオキシ)ベンジルブロミド(1.91g,3.50mmol)を滴下し、60℃で3日間撹拌した。室温に戻した後、反応溶液に水を加えて反応を停止し、塩化メチレンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで脱水し、溶媒を留去した。残留物をヘキサン-塩化メチレン混合溶媒(混合比1:2,R=0.35)を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製することで,白色固体としてビス(3,4-ビス(ドデシルオキシ)ベンジル)フマレート(305.3mg,0.29mmol,収率42%)を得た。
【0174】
なお、ビス(3,4-ビス(ドデシルオキシ)ベンジル)フマレートのスペクトルデータは以下のとおりであった。
H NMR(400MHz,CDCl):δ 6.83-6.92(m,8H),5.13(s,4H),3.98(t,J=6.6Hz,8H),1.77-1.84(m,8H),1.26-1.45(m,72H),0.86-0.89(m,12H);
13C NMR(100MHz,CDCl):δ 164.9,149.7,149.4,133.9,127.9,121.7,114.7,113.9,69.6,69.5,67.4,32.1,29.9,29.8,29.8,29.6,29.6,29.5,29.5,29.4,26.2,26.2,22.8,14.2;
HRMS(高分解能質量分析計)(APCI(大気圧化学イオン化法),positive):[M]calcd. for C66112,1032.8352;found 1032.8379.
【0175】
(π共役化合物A1の製造)
下記式で表される反応により、π共役化合物A1を製造した。
【化12】
【0176】
具体的には、ビス(3,4-ビス(ドデシルオキシ)ベンジル)フマレート2(1.25g,1.20mmol)の塩化メチレン溶液(30mL)にトリブチルホスフィン(325μL,1.30mmol)を窒素雰囲気下0℃で滴下し、反応溶液を室温で40分間撹拌した。その後、反応溶液を、窒素雰囲気下0℃に冷やしたテトラホルミル化合物1(208.6mg,0.50mmol)(上記式中の化合物1)の塩化メチレン溶液(60mL)に滴下し、更に塩基であるジアザビシクロウンデセン(5μL,0.05mmol)を滴下した。50℃で2日間撹拌した後、反応溶液に水を加えて反応を停止し、塩化メチレンで3回抽出した。抽出後の有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した後、溶媒を留去した。残留物をヘキサン-塩化メチレン-トリエチルアミン混合溶媒(混合比2:48:1)(R値(retention factor value)=0.80)を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離することで粗生成物を得た。更に、クロロホルム-トリエチルアミン混合溶媒(混合比50:1)を溶媒として高速液体クロマトグラフィーにより精製することで黄色固体としてπ共役化合物A1(343.6mg,0.14 mmol,収率28%)(上記式中の化合物A1)を得た。
【0177】
[示査走査熱量計による測定]
セイコーインスツル社製示査走査熱量計(型式:Exstar 6000 DSC 6200)にて、π共役化合物A1を窒素雰囲気下、2℃/分の速度で液体状態を示す200℃まで加熱した。200℃で10分間保持した後、2℃/分の速度で冷却したところ、補外開始点142.7℃で、液体から液晶への相転移に伴う18.3mJ/mgの発熱ピークが観察された。更に補外開始点67.3℃で、液晶から結晶への相転移に伴う14.8mJ/mgの発熱ピークが観察された。
【0178】
(粘着成分Aの製造)
セプトン2004(100g、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、クラレ社製)及びクリアロンP-105(100g、粘着付与剤、ヤスハラケミカル社製)を配合し、プロペラ型撹拌翼のついた混練機をもちいて200℃で溶融混練して粘着成分Aを製造した。
【0179】
<実施例1>
(粘着体の製造)
粘着成分Aを、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み50μm)上にコーターを使用して温度180℃で塗工した後、冷却して、粘着剤層を有する粘着テープT1を得た。粘着剤層の厚さは20μmとした。
【0180】
次いで、離型処理フィルム(東レ社製、セラピールMFA、厚み38μm)に170℃で溶融したπ共役化合物を塗工し、冷却して、解体性接着剤層を形成した。得られた解体性接着剤層を、粘着テープT1の粘着剤層上にラミネートして、実施例1の粘着体A1を得た。解体性接着剤層の厚さは3μmとした。
【0181】
(粘着体の使用)
粘着体A1をガラス板に押し付けて仮接着し、70℃に加熱して、ガラス板と粘着体A1との接合体を得た(接着面積1.2cm×1.2cm)。得られた接合体の片側をクランプで固定し、粘着テープT1の端部に空けた穴にプッシュプルゲージ(株式会社シロ産業、WPARX-10)の先端を引っかけた。プッシュプルゲージを引張り、180°ピール強度を測定した。この測定を5回繰り返し、各回で測定されたピール強度を算術平均した結果、4.4N/1.2cmであった。
【0182】
次に、上記と同様の方法で接合体を形成し、当該接合体を100℃に保持した状態で365nmの波長の紫外線(照度2.6W/cm)を10秒間、ガラス側より接合面に照射した。その後、上記と同様にピール強度を測定した結果、ピール強度の平均は、2.8N/1.2cmであった。
【0183】
この結果から、実施例1の粘着体A1では、所定の温度域下での光照射により、接合面の接着力を低減させて剥離性を向上させることができることが確認された。
【0184】
<比較例1>
(粘着体の製造)
解体性接着剤を使用しなかった。具体的には、粘着成分Aを、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み50μm)上にコーターを使用して温度180℃で塗工した後、冷却して、粘着剤層を有する粘着テープT1を得た。粘着剤層の厚さは20μmとした。この粘着テープT1を、比較例1の粘着体B1として用いた。
【0185】
(粘着体の使用)
粘着体B1をガラス板に貼付し、ガラス板と粘着体B1との接合体を得た(接着面積1.2cm×1.2cm)。得られた接合体について、実施例1と同様にピール強度を測定した結果、ピール強度の平均は、4.3N/1.2cmであった。
【0186】
次に、上記と同様の方法で接合体を形成し、当該接合体を100℃に保持した状態で365nmの波長の紫外線(照度2.6W/cm)を10秒間、ガラス側より接合面に照射した。その後、上記と同様にピール強度を測定した結果、ピール強度の平均は、6.3N/1.2cmであった。
【0187】
<比較例2>
粘着成分Aを使用せず、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み50μm)上に直接、解体性接着剤層を形成して、積層体を形成した。この積層体は粘着性を有さず、室温でガラス板に押し付けても、ガラス板に接着しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0188】
本発明の粘着体は、粘着成分及びπ共役化合物の寄与により高い接着力を発現でき、且つ、光照射によって接合面の接着力を低減させて容易に剥離することができる。このため、本発明の粘着体は、剥離性を有する粘着体として、様々な分野での応用が期待できる。
【符号の説明】
【0189】
10,20,30,40,50,60,70…粘着体、11,21,31,41…解体性接着剤層、51…解体性接着部、61a…第一の解体性接着剤層、61b…第二の解体性接着剤層、12,22,32,42,62,72…粘着剤層、52…粘着部、13,23,33,43,53,73…基材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7