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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】玉掛解除装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/20 20060101AFI20220831BHJP
   B66C 1/34 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
E02B3/20 Z
B66C1/34 M
B66C1/34 P
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021021907
(22)【出願日】2021-02-15
(65)【公開番号】P2022124251
(43)【公開日】2022-08-25
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390001993
【氏名又は名称】みらい建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597093458
【氏名又は名称】日本サルヴ▲ヱ▼ージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 弘直
(72)【発明者】
【氏名】松本 実
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-067375(JP,A)
【文献】特開平08-091675(JP,A)
【文献】特開平09-278349(JP,A)
【文献】特開2010-173792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/20
B66C 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底に重量物を吊り下ろす際に用いられる玉掛解除装置であって、
玉掛け用具の下端に取り付けられる本体部と、
前記本体部に取り付けられるフレームと、を備え、
前記フレームは、前記重量物に備えられるフックに挿入可能な可動ピンと、
前記可動ピンの端部に設けられる土台部と、
前記土台部を前記本体部から離間させる方向へ付勢する弾性部材と、
音波を受信したときに起動する切離装置と、を備え、
前記切離装置は、前記可動ピンが前記フックに挿入された状態を保持し、
前記切離装置が起動することで、前記可動ピンの保持が解除されることを特徴とする玉掛解除装置。
【請求項2】
前記フレームは、前記本体部とは反対側の端部に振れ止め装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の玉掛解除装置。
【請求項3】
前記フレームは、前記可動ピンを前記本体部側へ押し込むジャッキを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の玉掛解除装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玉掛解除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シンカー(錘)やコンクリートブロック等の重量物を水中へ設置する作業においては、潜水士が玉掛ワイヤを重量物に掛けたり、外したりする作業を行っている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-52206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
浅い場所へ重量物を設置する場合には、潜水士が手作業によりチェーンやワイヤ等を取り外すことができるが、深い場所に設置する場合には、潜水士による作業は困難である。
【0005】
また、玉掛解除装置に電気信号を送信し、無人でチェーン等を重量物から取り外すことも可能であるが、水深が大きくなるにつれて、信号用ケーブルの配線作業が困難になる。
【0006】
このような観点から、本発明は、水底に吊り下ろした重量物の玉掛けを容易に解除し回収できる玉掛解除装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の玉掛解除装置は水底に重量物を吊り下ろす際に用いられる玉掛解除装置であって、玉掛け用具の下端に取り付けられる本体部と、前記本体部に取り付けられるフレームと、を備え、前記フレームは、前記重量物に備えられるフックに挿入可能な可動ピンと、前記可動ピンの端部に設けられる土台部と、前記土台部を前記本体部から離間させる方向へ付勢する弾性部材と、音波を受信したときに起動する切離装置と、を備え、前記切離装置は、前記可動ピンが前記フックに挿入された状態を保持し、前記切離装置が起動することで、前記可動ピンの保持が解除されることを特徴とする。
【0008】
かかる玉掛解除置によれば、切離装置が音波を受信することで起動し、可動ピンがフックに挿入されている状態が解除される。そのため、重量物のフックから可動ピンを引き抜くことができる。つまり、重量物から玉掛解除装置の本体部を離脱させることができるため、水底までの距離が大きい場所であっても、容易に重量物から玉掛を解除し回収することができる。
【0009】
また、前記フレームは、前記本体部とは反対側の端部に振れ止め装置を備えることが好ましい。
【0010】
本発明によれば、吊り下ろす際に、重量物が回転するのを防ぐことができるため、所定位置に重量物を設置することができる。
【0011】
また、前記フレームは、前記可動ピンを前記本体部側へ押し込むジャッキを備えることが好ましい。
【0012】
このようにすると、ジャッキで可動ピンを押圧することによって、付勢部材に抗して容易に可動ピンを重量物のフックに挿入することができる。そのため、容易に本体部と重量物とを固定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る玉掛解除装置によれば、水底に吊り下ろした重量物の玉掛けを容易に解除し回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る玉掛解除装置による玉掛作業を示す側面図である。
図2】本実施形態に係る玉掛解除装置の本体部を示す正面図である。
図3】本実施形態に係る玉掛解除装置の構成を示す側面図である。
図4】本実施形態に係る玉掛解除装置の構成を示す平面図である。
図5】(a)(b)は本実施形態に係る玉掛解除装置による重量物を吊り下げる際の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。本発明は、下記の実施形態のみに限定されるものではない。
【0016】
(玉掛解除装置1)
まず、本実施形態に係る玉掛解除装置1について図1を参照して説明する。図1に示すように、玉掛解除装置1は、例えば海底等にコンクリートブロック等の重量物を設置する際に使用する装置であり、本体部10と、フレーム20と、を備える。本体部10は、例えばチェーン等の玉掛用具の下端(シャックル等)に取り付けられている。また、フレーム20は、本体部10の側面に取り付けられている。
【0017】
(本体部10)
図2に示すように、本体部10には、重量物のフックAを内部に収容できる空間が形成されている。本体部10は、例えば鋼板等によって構成されている。本体部10の下部には開口が形成されており、開口を通じてフックAが本体部10内に挿入される。
本実施形態の本体部10は、一対の支持板11,11と、支持板11,11の側縁同士を繋ぐ側板12と、支持板11,11の上部に配置された係合ピン13とを備えている。
支持板11,11は、間隔を空けて配置されており、フックAを挟んで対向可能である。支持板11には挿入孔11aが形成されている。一方の支持板11の挿入孔11aと他方の支持板11の挿入孔11aは同軸上に配置されている。なお、本実施形態では、支持板11の外面に挿入孔11aの周囲を補強する補強板11bが添設されている。
係合ピン13は、玉掛用具の下端に係合可能である。係合ピン13は、支持板11,11の上部に固定されている。
【0018】
(フレーム20)
図3に示すように、フレーム20は、枠状部21と、可動ピン22と、弾性部材23と、土台部24と、切離装置25と、を備える。
【0019】
枠状部21は、上面が開口した有底の箱状を呈している。枠状部21は、本体部10の側面に取り付けられている。枠状部21の内部には、可動ピン22と、弾性部材23と、土台部24とが収容される。枠状部21は例えば鉄板等によって構成される。
【0020】
可動ピン22は、例えば円柱形状であり、枠状部21の内部に設けられている。可動ピン22は、本体部10の挿入孔11aと同軸上に配置されている。可動ピン22は軸方向にスライド移動可能であり、本体部10側にスライド移動すると枠状部21の外部へ突出する。つまり、可動ピン22は、本体部10側にスライド移動して一方の支持板11の挿入孔11aに挿入され、他方の支持板11の挿入孔11aから突出する(すなわち、本体部10を貫通する)。さらに、可動ピン22の端部には、土台部24が設けられている。また、土台部24と本体部10との間には、弾性部材23が配置されている。本実施形態の弾性部材23は、コイルバネであり、弾性部材23の内径は、可動ピン22の外径よりも大きく形成されている。弾性部材23は、コイルバネに限らず、例えば、ゴム等の弾性を有する部材を用いることもできる。
【0021】
土台部24は、直方体状に構成されている。土台部24は、係合部24aと、バネ受け部24bを備えて構成される。係合部24aは、土台部24の上面に立設されており、枠状部21から突出している。係合部24aは、後述する切離装置25と係合する部位であり、切離装置25の規格や形状に合わせて適宜設定することが好ましい。バネ受け24bは弾性部材23の外形よりも大きい外形を有している。
【0022】
切離装置25は、枠状部21の上部に設けられている。切離装置25は、水中を伝搬した所定周波数の音波(超音波信号)を受信することで起動する超音波切離装置を用いることが好ましい。なお、超音波とは20000Hz未満の人間の可聴域の高周波の弾性波も含む。接続部25aは土台部24の係合部24aに係合可能なフックを備えており、当該フックをモータの動力で回転させることで、係合部24aとの係合が解除される。係合部24aと接続部25aとが係合状態となることで、可動ピン22がフックAに挿入された状態が維持される。接続部25aの動力源(モータ)は、切離装置25が音波(超音波信号)を受信したときに起動する。なお、接続部25aは、回転式のフックに限定されず、開閉式にして係合部24aと係合するようにしてもよい。
【0023】
ジャッキ26は、枠状部21内に着脱可能に設置されている。ジャッキ26は、弾性部材23に抗して可動ピン22を本体部10方向へと押し込むための手段であり、例えば油圧ジャッキ等である。ジャッキ26は、枠状部21に固定された反力受け26aに反力をとって可動ピン22を押圧する。
【0024】
図4に示すように、枠状部21の先端には、振れ止め装置28が設けられている。振れ止め装置28は、枠状部21に対して傾倒自在に設けられた鋼材からなる。振れ止め装置28の先端28aには、図示せぬ振れ止め用ワイヤが接続される。
【0025】
(玉掛方法)
次に、玉掛解除装置1を使用した玉掛方法について説明する。
まず、チェーン等の玉掛用具の下端に取り付けられた玉掛解除装置1の本体部10を重量物のフックAに被せる。すなわち、本体部10の支持板11,11の間にフックAを位置させる。次に、ジャッキ26により可動ピン22を本体部10側に押し込み、本体部10の挿通孔11aに挿入する。
【0026】
図2に示すように、本体部10の内空にフックAが収容された状態で、可動ピン22を挿入孔11a挿入する(本体部10を貫通させる)と、フックAが可動ピン22に掛止される。
【0027】
続いて、図3に示すように、フックAに可動ピン22が挿入された状態で、切離装置25の接続部25aを係合部24aに引っ掛ける。切離装置25の接続部25aを係合部24aに係合すると、本体部10からの可動ピン22の抜け出しが阻止された状態となり、重量物と本体部10とが固定される。その後、ジャッキ26をフレーム20から取り外すとともに、ストッパ27をフレーム20に固定する。
【0028】
次に重量物であるシンカーWを海底に吊り下ろす作業について説明する。図5(a)に示すように、まず、玉掛解除装置1が装着されたシンカーWを、ワイヤYを介して吊り下げ、台船上から水上へ移動する。玉掛解除装置1の本体部10の係合ピン13には、シャックル等を介してチェーンT(玉掛用具)が接続されている。
【0029】
図5(b)に示すように、シンカーWを一定水位まで沈めた後、チェーンTをチェーン送出し装置の滑車Lに乗せる。その後、ワイヤYは撤去し、滑車Lに乗せたチェーンTを移動させることで、シンカーWを降下させ、所定位置にシンカーWを設置する。
【0030】
次に、重量物から玉掛解除装置1を切り離す方法について図3を参照しながら説明する。重量物を水底に設置したら、音波(超音波信号)を発信する発信器を水中に沈め、重量物に向けて音波を発信する。切離装置25が音波を受信すると、切離装置25が起動し、接続部25aが回転して土台部24の係合部24aとの係合状態を解除する。
【0031】
係合部24aと接続部25aとの係合状態が解除されると、弾性部材23の復元力により、土台部24のバネ受け部24bが本体部10とは反対側へ移動する。これに伴い、可動ピン22も本体部10と反対方向へスライド移動する。なお、土台部24は、ストッパ27に接触して停止する。本体部10と重量物を固定していた可動ピン22が本体部10から引き抜かれて枠状部21内に戻ると玉掛解除装置1が重量物から取り外される。重量物から玉掛解除装置1を取り外した後、玉掛解除装置1を引き上げて回収する。
【0032】
(作用効果)
以上説明した本実施形態に係る玉掛解除装置1によれば、切離装置25が音波を受信することで起動し、係合部24aとの接続部25aの係合状態が解除される。これにより、可動ピン22は弾性部材23に付勢されて、本体部10から引き抜かれる方向へとスライド移動する。つまり、重量物から本体部10を離脱させることができるため、水底までの距離が大きい場所であっても、容易に重量物から玉掛解除装置1を回収することができる。
【0033】
また、フレーム20は、振れ止め装置28を備えているため、振れ止め装置28に振れ止め用ワイヤを接続することができる。振れ止め用ワイヤを使用すれば、吊り下ろし中に重量物が回転するのを防ぎ、接地位置がずれるのを防止できる。
【0034】
また、フレーム20に取り付けたジャッキ26で可動ピン22を本体部10側に移動させれば、弾性部材23により付勢される可動ピン22を重量物のフックAに容易に挿入することができる。
【0035】
また、バネ受け24bは土台部24の外形よりも少し大きくなるように形成されているため、土台部24と枠状部21との間に適度にクリアランスが確保され、その結果、可動ピン22および土台部24をスムーズにスライド移動させることができる。
【0036】
以上、本願発明に係る実施形態について説明した。しかし、本発明は前述の実施形態に限らず各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
本実施形態では土台部の係合部と、切離装置の接続部とを係合させることで、可動ピンの挿入状態を維持したが、係合する部位は、土台部に限定されるものではない。例えば、切離装置を本実施形態のものと逆向きに配置し、切離装置の接続部を本体部に係止してもよい。
【0037】
また、可動ピンを円柱形状としたが、これに限定されず、例えば四角柱や他の多角柱形状としてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 玉掛解除装置
10 本体部
20 フレーム
21 枠状部
22 可動ピン
23 弾性部材
24 土台部
24a 係合部
24b バネ受け部
25 切離装置
25a 接続部
26 ジャッキ
T チェーン(玉掛け用具)
図1
図2
図3
図4
図5