(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】折り畳み式運搬用容器
(51)【国際特許分類】
B65D 6/18 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
B65D6/18 D
(21)【出願番号】P 2017187122
(22)【出願日】2017-09-27
【審査請求日】2020-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 義久
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-000966(JP,A)
【文献】特開2008-013194(JP,A)
【文献】特開2012-030881(JP,A)
【文献】登録実用新案第3057645(JP,U)
【文献】米国特許第5429261(US,A)
【文献】米国特許第6779680(US,B1)
【文献】国際公開第2011/131702(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 6/00-13/02
B65D 23/00-25/56
B65D 65/00-65/46
A47B 91/00-97/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と、
前記底板の上方に位置し、上下に貫通する開口部が形成された口枠と、
前記口枠に回転自在に連結された一対の揺動板と、
前記底板と口枠に回転自在に連結された一対の折曲板を備え、
前記揺動板は、
前記口枠に回転自在に連結される連結端部と、
前記揺動板の厚み方向に貫通し、指先を挿し込むことができる持ち手孔と、
前記持ち手孔の前記連結端部に近い部分に設けられ、前記指先を引っ掛けることができる指掛け片を含み、
前記指掛け片は、
前記連結端部から離れる方向に突出した縦片と、前記縦片の突先側の部分から内側方に向けて突出した横片を含み、
前記持ち手孔において前記横片の突先部よりも内側方の部分には、使用者が自身の指先を前記持ち手孔に外側方から挿し込み、その指先を上方に曲げて前記指掛け片に引っ掛けることができるように、空間が形成されて
おり、
前記縦片は、下側の部分ほど外側方に位置するように、滑らかに膨らんでいる
ことを特徴とする折り畳み式運搬用容器。
【請求項2】
前記縦片は、横方向の中央に近い部分ほど外側方に位置するように、滑らかに膨らんでいる
ことを特徴とする請求項1に記載の折り畳み式運搬用容器。
【請求項3】
前記持ち手孔の前記連結端部に近い側の縁部は、前記連結端部に近づく方向に向けて弧状に膨らむように形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の折り畳み式運搬用容器。
【請求項4】
底板と、
前記底板の上方に位置し、上下に貫通する開口部が形成された口枠と、
前記口枠に回転自在に連結された一対の揺動板と、
前記底板と口枠に回転自在に連結された一対の折曲板を備え、
前記揺動板は、
前記口枠に回転自在に連結される連結端部と、
前記揺動板の厚み方向に貫通し、指先を挿し込むことができる持ち手孔と、
前記持ち手孔の前記連結端部に近い部分に設けられ、前記指先を引っ掛けることができる指掛け片を含み、
前記指掛け片は、
前記連結端部から離れる方向に突出した縦片を含み、
前記縦片は、横方向の中央に近い部分ほど外側方に位置し、かつ、下側の部分ほど外側方に位置するように、滑らかに膨らんでいる
ことを特徴とする折り畳み式運搬用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳み状態と組立状態を切り換えることができる折り畳み式運搬用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
折り畳み状態と組立状態を切り換えることができる折り畳み式の運搬用容器が、従来知られている(特許文献1等参照)。
【0003】
この種の運搬用容器は、底板、口枠、一対の揺動板、一対の折曲板、および蓋板を備える。一対の揺動板は、口枠に対して回転自在に連結されている。一対の折曲板は、底板と口枠に対して回転自在に連結されている。蓋板は、口枠に形成された開口部を開閉する。
【0004】
運搬用容器が組立状態にあるとき、一対の揺動板と一対の折曲板は、いずれも底板と口枠の間において起立姿勢をとる。
【0005】
運搬用容器が折り畳み状態にあるとき、一対の揺動板は、起立姿勢から内側に約90度回転した姿勢をとり、一対の折曲板は、起立姿勢から内側に「く」字状に折れ曲がった姿勢をとる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した従来の運搬用容器においては、折り畳み状態にある運搬用容器を組立状態に切り換えるときに、使用者が、口枠を手で掴んでそのまま上方に持ち上げることが一般的である。これにより、各揺動板は自重によって外側に回転し、各折曲板は真っ直ぐに起立する。
【0008】
しかし、上記した従来の折り畳み式運搬用容器では、口枠の開口部を蓋板で閉じたままで、折り畳み式運搬用容器を折り畳み状態から組立状態に切り換える作業が、面倒な作業であった。
【0009】
というのも、折り畳み状態において口枠の開口部が蓋板で閉じられていると、口枠を持ち上げたときに、外部からの空気が各揺動板の内側に流入しにくく、その結果として、各揺動板が自重で勢い良く回転しにくいからである。
【0010】
各揺動板が勢い良く回転しないと、口枠を持ち上げた時点では各揺動板が起立姿勢にまで至らず、その後に蓋板を開けて、各揺動板を内側から押し込む作業が必要となる。そのため、組立て作業の効率化が困難となる。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、折り畳み状態において口枠の開口部が閉じられていても、組立て作業を効率的に行うことのできる折り畳み式運搬用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一様態に係る折り畳み式運搬用容器は、底板と、前記底板の上方に位置し、上下に貫通する開口部が形成された口枠と、前記口枠に回転自在に連結された一対の揺動板と、前記底板と前記口枠に回転自在に連結された一対の折曲板と、前記口枠の前記開口部を開閉する蓋板を備える。
【0013】
前記揺動板は、前記口枠に回転自在に連結される連結端部と、前記揺動板の厚み方向に貫通し、指先を挿し込むことができる持ち手孔と、
前記持ち手孔の前記連結端部に近い部分に設けられ、前記指先を引っ掛けることができる指掛け片を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、折り畳み状態において口枠の開口部が閉じられていても、組立て作業を効率的に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、一実施形態の折り畳み式運搬用容器の斜視図である。
【
図2】
図2は、同上の折り畳み式運搬用容器の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、同上の折り畳み式運搬用容器が備える底板の斜視図である。
【
図5】
図5は、同上の折り畳み式運搬用容器が備える口枠の斜視図である。
【
図6】
図6は、同上の折り畳み式運搬用容器が備える揺動板の斜視図である。
【
図9】
図9は、同上の揺動板の背面側の斜視図である。
【
図10】
図10は、同上の折り畳み式運搬用容器が備える折曲板の分解斜視図である。
【
図11】
図11は、同上の折り畳み式運搬用容器が折り畳み状態にあるときの要部斜視図である。
【
図12】
図12は、変形例1の折り畳み式運搬用容器の要部断面図である。
【
図13】
図13は、変形例2の折り畳み式運搬用容器の要部断面図である。
【
図14】
図14は、変形例3の折り畳み式運搬用容器の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[一実施形態]
一実施形態の折り畳み式運搬用容器について、添付図面に基づいて説明する。以下の説明において用いる上下等の各方向は、容器全体が組み立てられた状態(組立状態)を基準とする。
【0017】
(概要)
まず、一実施形態の折り畳み式運搬用容器の概要について説明する。
【0018】
図1、
図2に示すように、一実施形態の折り畳み式運搬用容器は、矩形板状の底板1と、底板1の上方に位置する矩形枠状の口枠2と、底板1と口枠2の間に取り付けられた一対の揺動板3と、底板1と口枠2の間に取り付けられた一対の折曲板4と、口枠2に形成された開口部20を開閉する一対の蓋板5を備える。
【0019】
一対の揺動板3は、それぞれ合成樹脂製の主板31で主体が構成されている。各揺動板3の上縁部分(主板31の上縁部分)である連結端部32が、口枠2に対して回転自在に連結する。各揺動板3の下縁部分(主板31の下縁部分)である係合端部33は、底板1に対して係脱自在に係合する。
【0020】
一対の折曲板4は、互いに回転自在に連結された合成樹脂製の上板41と下板42で、それぞれの主体が構成されている。各折曲板4の上縁部分(上板41の上縁部分)が、口枠2に対して回転自在に連結され、各折曲板4の下縁部分(下板42の下縁部分)が、底板1に対して回転自在に連結されている。各折曲板4において、上板41と下板42が、内側に向けて「く」字状に折り曲がる。
【0021】
以下、一実施形態の折り畳み式運搬用容器の各構成について、更に詳しく述べる。
【0022】
(底板)
図3、
図4等に示すように、底板1は、その主体をなす合成樹脂製の底板本体11と、底板本体11の周縁部分に設けられた複数の係合部13と、同じく底板本体11の周縁部分に設けられた複数の連結部15を備える。
【0023】
底板本体11の周縁部分は、互いに平行である一対の短側部分111と、互いに平行である一対の長側部分112を有する。一対の短側部分111と一対の長側部分112は、周方向において交互にかつ連続して位置する。
【0024】
一対の短側部分111のそれぞれに、係合部13と外側片14が一体に設けられている。係合部13は、揺動板3の係合端部33が係脱自在に係合する部分であり、短側部分111の長さ方向の中央部に位置する。外側片14は、係合部13よりも外側方に位置する。
【0025】
一対の長側部分112のそれぞれに、複数の連結部15と外側片16が設けられている。連結部15には、折曲板4の下縁部分が回転自在に連結される。外側片16は、複数の連結部15よりも外側方に位置する。
【0026】
(口枠)
図5等に示すように、口枠2は、揺動板3の連結端部32が連結される一対の短側フレーム21と、折曲板4の上縁部分が連結される一対の長側フレーム22を、一体に有する。一対の短側フレーム21と一対の長側フレーム22は、周方向において交互にかつ連続して位置する。
【0027】
口枠2の開口部20は、一対の短側フレーム21と一対の長側フレーム22で全周を囲まれた部分であり、上下に貫通している。
【0028】
短側フレーム21の上面には、蓋板5の一部が載せられる。短側フレーム21の上面には、上方に突出するように二つの突起218が形成されている。
【0029】
長側フレーム22の上面には、複数の連結部226が形成されている。複数の連結部226には、蓋板5が回転自在に連結される。
【0030】
(揺動板)
図6から
図9には、揺動板3を示している。
【0031】
上記したように、揺動板3は、矩形状の主板31と、主板31の上縁部分で構成された連結端部32と、主板31の下縁部分で構成された係合端部33を備える。
【0032】
連結端部32には、口枠2の短側フレーム21に対して回転自在に連結する複数の連結部322が、一体に形成されている。複数の連結部322は、互いに距離をあけて一直線状に位置する。
【0033】
係合端部33には、底板1の係合部13に対して内側方から係脱自在に係合する係合部335が、一体に形成されている。係合部335は、係合端部33の長さ方向の中央部に位置する。係合部335には、底板1の係合部13に係合するための二つの係合爪337が形成されている。係合爪337の個数は二つに限定されず、少なくとも一つであればよい。
【0034】
主板31には、使用者が自身の指先(手先)を挿し込むことができるように、持ち手孔35が形成されている。持ち手孔35は、主板31の上部において、主板31の厚み方向D1に貫通している。主板31の上部は、即ち、主板31のうち連結端部32に近い側の部分である。主板31の厚み方向D1は、即ち、揺動板3の厚み方向である。
【0035】
持ち手孔35は、横方向に細長い貫通孔である。持ち手孔35の上縁部351は、上方(連結端部32に近づく方向)に向けて弧状に膨らむように形成されている(
図9参照)。持ち手孔35の下縁部353は、横方向に一直線状に形成されている。厚み方向D1における上縁部351寸法は、厚み方向D1における下縁部353の寸法よりも幅広である(
図8参照)。
【0036】
主板31には、使用者が自身の指先を曲げて引っ掛けることのできる指掛け片36が、一体に形成されている。指掛け片36は、持ち手孔35の上縁部351のうち厚み方向D1の外側の一部から、下方(連結端部32から離れる方向)に向けて突出している。
【0037】
主板31を厚み方向D1に視たときに、指掛け片36は、持ち手孔35の上側部分を占めるように位置する。また、指掛け片36は、持ち手孔35の下縁部353よりも外側方に位置する。
【0038】
指掛け片36は、下方に突出した縦片361と、縦片361の突先側の部分から内側方に向けて突出した横片363を有する。縦片361と横片363は、断面L字状に連続している。なお、縦片361のうち横片363が突出する部分(突先側の部分)は、縦片361の突先に限定されず、突先よりも上方の位置から横片363が突出しても構わない。
【0039】
縦片361は、外側方に向けて僅かに膨らむように形成されている。縦片361は、横方向の中央に近い側の部分ほど外側方に位置し、かつ、下側の部分ほど外側方に位置するように、その全体が滑らかに膨らんでいる。
【0040】
主板31を厚み方向D1に視たときに、縦片361の突先部は、持ち手孔35の下縁部353と平行に位置する。本文で用いる平行の文言は厳密な意味での平行に限定されず、略平行な場合も含む。縦片361の突先部は、持ち手孔35の下縁部353よりも外側方に位置する。
【0041】
横片363は、持ち手孔35の下縁部353と平行に形成されている。横片363は、持ち手孔35の下縁部353よりも外側方に位置する。横片363の内側方の突先部は、横方向に一直線状に形成されている(
図9参照)。横片363の突先部は、鉛直方向の断面が円弧状となるように(
図8参照)、滑らかに湾曲形成されている。横片363の厚み方向D1の寸法は、横方向の中央に近い側の部分ほど徐々に幅広となるように設けられている。
【0042】
また、指掛け片36の破損を防止するため、縦片361は、横片363よりも肉厚に形成している。
【0043】
揺動板3は、上記の持ち手孔35と指掛け片36を備えるので、使用者は、持ち手孔35に対して自身の指先を外側方から挿し込み、その指先を上方に曲げて指掛け片36に引っ掛けることができる。このときの掛かり代は、横片363の厚み方向D1の寸法によって確保される。また、指掛け片36に横片363が形成されていることで、使用者が指掛け片36を握ったときに痛みを感じることが抑えられる。
【0044】
さらに、一実施形態の折り畳み式運搬用容器において、主板31の横方向の両端部には、外側方に向けて膨らむように湾曲した湾曲部37と、外側方に向けて突出した縦リブ38が、上下に一直線状に形成されている。湾曲部37とこれの内側に位置する縦リブ38との間には、スペースが形成されている。
【0045】
互いに隣接する湾曲部37と縦リブ38の間には、操作片34が架け渡されている。操作片34は、揺動板3の下部に位置している。
【0046】
操作片34は、主板31の下部の一部から外側方に距離をあけた位置で、主板31と一体に形成されている。操作片34は、外側方に向けて膨らんだ円弧状の形状を有する。操作片34と主板31の間には、使用者が自身の指先を挿し込むことができる空間が形成されている。
【0047】
使用者は、各操作片34に対して自身の指先を引っ掛け、揺動板3を外側に引っ張ることが可能である。各操作片34は外側方に向けて膨らんでいるので、このとき使用者が痛みを感じることは抑えられる。
【0048】
(折曲板)
図10には、折曲板4を分解して示している。
【0049】
上記したように、折曲板4は、上板41と下板42で主体が構成され、上板41と下板42が「く」字状に折り曲がることで、その全体が二つ折り可能である。
【0050】
上板41の上縁部分(口枠2に近い側の縁部分)には、口枠2の長側フレーム22に対して回転自在に連結する複数の連結部412が、一体に形成されている。
【0051】
上板41の下縁部分(口枠2から離れた側の縁部分)には、下板42に対して回転自在に連結するためのヒンジ軸414と軸受部416が、一体に形成されている。また、上板41の下縁部分には、ヒンジ軸414と軸受部416よりも内側方に位置する内側片418が、一体に形成されている。
【0052】
下板42の下縁部分(底板1に近い側の縁部分)には、複数の連結部422が一体に形成されている。複数の連結部422は、底板1の長側部分112に形成された複数の連結部15に対して、回転自在に連結する。
【0053】
下板42の上縁部分(底板1から離れた側の縁部分)には、上板41に対して回転自在に連結するためのヒンジ軸424と軸受部426が、一体に形成されている。下板42と上板41の相対的な回転範囲は、上板41の内側片418によって、内側に向けて「く」字状に折れ曲がる範囲に制限されている。
【0054】
(蓋板)
図1、
図2に示すように、一対の蓋板5は、口枠2に対して回転自在に取り付けられる。具体的には、口枠2が備える一対の長側フレーム22に対して、一対の蓋板5が一対一に取り付けられる。
【0055】
一対の蓋板5は、口枠2が形成する開口部20を開閉し、これにより容器の収納空間を外部に対して開閉する。一対の蓋板5は、互いに共通の構成を備えている。蓋板5の外形は矩形板状である。
【0056】
蓋板5が備える一対の長辺側の端縁部のうち、一方には複数の連結部51が形成され、他方には薄板状のオーバーラップ部53が形成されている。
【0057】
連結部51は、口枠2の長側フレーム22の連結部226(
図5参照)に対して回転自在に連結される。オーバーラップ部53は、もう一つの蓋板5のオーバーラップ部53に重なる部分である。
【0058】
蓋板5が備える一対の短辺側の端縁部には、貫通孔55が形成されている。蓋板5が開口部20を閉じる姿勢にあるときに、口枠2の各短側フレーム21に形成された突起218が、対応する貫通孔55に一対一で嵌り込む。
【0059】
(全体)
一実施形態の折り畳み式運搬用容器は、上記の各構成を備えるので、口枠2の開口部20を一対の蓋板5で閉じた状態のまま、折り畳み状態から組立状態に切り換える作業が、効率的に行われる。
【0060】
つまり、開口部20が閉じていると、口枠2を持ち上げたときに開口部20からは空気が流入しないが、一実施形態の折り畳み式運搬用容器では各揺動板3に持ち手孔35が貫通形成されており、持ち手孔35を通じて内側に空気が流入するので、各揺動板3は外側に向けて勢い良く回転する。
【0061】
一実施形態の折り畳み式運搬用容器では、一対の蓋板5で開口部20を閉じた折り畳み状態から、以下に述べる一連の動作で、簡単に組み立て作業を完了することが可能である。
【0062】
図11に要部(口枠2と一対の揺動板3のみ)を示すように、折り畳み状態においては、一対の揺動板3が内側に回転した姿勢で収容されている。ここで、図中にて想像線で示すように、口枠2の両側の短側フレーム21の下方に、使用者が指先を挿し入れ、その指先を曲げて持ち手孔35の指掛け片36に引っ掛ける。
【0063】
次いで、口枠2全体を持ち上げながら、両側の短側フレーム21を支軸として指掛け片36を外側に回転させ、これにより両側の揺動板3を、自重を伴って外側に向けて回転させる。このとき、持ち手孔35を通じて内側に空気が流入するので、各揺動板3は勢い良く回転する。この勢いで、引き続いて指掛け片36を外側に引っ張ることで、各揺動板3を底板1に係合させることができる。
【0064】
各揺動板3が底板1に対して適切に係合しなかった場合には、使用者が自身の指先を持ち手孔35の下縁部353に引っ掛け、外側に向けて強く引っ張ればよい。また、各揺動板3に設けた各操作片34に指先を引っ掛け、揺動板3を外側に引っ張ることも可能である。
【0065】
以上のように、一実施形態の折り畳み式運搬用容器によれば、折り畳み状態において口枠の開口部20が閉じられていても、従来のように、いったん蓋板5を開けて各揺動板3を内側から押し込む必要なく、組立て作業を効率的に完了させることができる。
【0066】
[変形例]
以下、各種の変形例の折り畳み式運搬用容器について説明する。
【0067】
なお、各変形例の折り畳み式運搬用容器の基本的な構成は、上記した一実施形態の折り畳み式運搬用容器の構成と共通である。以下において、一実施形態の折り畳み式運搬用容器と同様の構成については、同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0068】
図12には、変形例1の折り畳み式運搬用容器の要部を示している。
図12に示す断面は、一実施形態の折り畳み式運搬用容器の
図8に相当する部分の断面である。
【0069】
変形例1の折り畳み式運搬用容器において、指掛け片36の横片363は、縦片361の突先側の部分から、外側方に向けて突出している。
【0070】
この変形例においても、使用者が持ち手孔35に指先を挿し入れ、その指先を曲げて指掛け片36に引っ掛けることができ、横片363によって掛かり代が確保される。なお、縦片361の突先側の部分から内側方に向けて突出する指掛け片36と、この突先側の部分から外側方に向けて突出する指掛け片36の、両方を備えることも可能である。
【0071】
図13には、変形例2の折り畳み式運搬用容器の要部を示している。
図13に示す断面は、一実施形態の折り畳み式運搬用容器の
図8に相当する部分の断面である。
【0072】
変形例2の折り畳み式運搬用容器においては、縦片361の先端面から、一つまたは複数の突起365が下方に突出している。
【0073】
この変形例においても、使用者が持ち手孔35に指先を挿し入れ、その指先を曲げて指掛け片36に引っ掛けることができ、突起365の存在によって指先が引っ掛かりやすくなる。
【0074】
図14には、変形例3の折り畳み式運搬用容器の要部を示している。
図14に示す断面は、一実施形態の折り畳み式運搬用容器の
図8に相当する部分の断面である。
【0075】
変形例3の折り畳み式運搬用容器において、指掛け片36は、持ち手孔35の上縁部351のうち、厚み方向D1の内側の一部から、下方に突出している。指掛け片36は、下方に突出した縦片361で構成されており、
図8に示すような横片363を備えない。
【0076】
この変形例においても、使用者が持ち手孔35に指先を挿し入れ、その指先を曲げて指掛け片36に引っ掛けることができる。
【0077】
その他、一実施形態の折り畳み式運搬容器の各構成は、適宜に変更可能である。
【0078】
たとえば、一実施形態の折り畳み式運搬用容器では、一対の蓋板5が口枠2に回転自在に連結されているが、蓋板5の個数は1つでもよいし、蓋板5が口枠2から着脱自在でもよい。
【0079】
[作用効果]
上記した一実施形態およびその変形例の説明から理解されるように、第1の形態の折り畳み式運搬用容器は、底板1、口枠2、一対の揺動板3、一対の折曲板4、および蓋板5を備える。口枠2は底板1の上方に位置し、上下に貫通する開口部20が形成されている。一対の揺動板3は、口枠2に回転自在に連結されている。一対の折曲板4は、底板1と口枠2に回転自在に連結されている。蓋板5は、口枠2の開口部20を開閉する。
【0080】
揺動板3は、連結端部32、持ち手孔35、および指掛け片36を含む。連結端部32は、口枠2に回転自在に連結される。持ち手孔35は、揺動板3の厚み方向D1に貫通し、指先を挿し込むことができる。指掛け片36は、持ち手孔35の連結端部32に近い部分に設けられ、指先を引っ掛けることができる。
【0081】
第1の形態の折り畳み式運搬用容器によれば、口枠2の開口部20を蓋板5で閉じたままで、折り畳み状態の口枠2を持ち上げると、各揺動板3の持ち手孔35を通じて内側に空気が流入するので、各揺動板3は勢い良く回転する。
【0082】
ここで、使用者が自身の指先を指掛け片36に引っ掛けた状態で、口枠2を持ち上げながら、各揺動板3を外側に勢い良く回転させれば、一連の動作で簡単に組み立て作業を完了させることが可能である。
【0083】
したがって、第1の形態の折り畳み式運搬用容器によれば、口枠2の開口部20を蓋板5で閉じたままで、折り畳み状態から組立状態に切り換える作業が、効率的に行われる。
【0084】
第2の形態の折り畳み式運搬用容器は、第1の形態において、指掛け片36は、縦片361と横片363を含む。縦片361は、連結端部32から離れる方向に突出している。横片363は、縦片361の突先側の部分から突出している。
【0085】
第2の形態の折り畳み式運搬用容器によれば、横片363によって指の掛かり代が一層確保されるので、組立て作業がより効率的に行われる。
【符号の説明】
【0086】
1 底板
2 口枠
20 開口部
3 揺動板
35 持ち手孔
32 連結端部
35 持ち手孔
36 指掛け片
361 縦片
363 横片
4 折曲板
5 蓋板