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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】離水抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/00 20160101AFI20220831BHJP
   A23L 29/212 20160101ALI20220831BHJP
   A23L 29/231 20160101ALI20220831BHJP
   A23L 29/238 20160101ALI20220831BHJP
   A23L 29/244 20160101ALI20220831BHJP
   A23L 29/25 20160101ALI20220831BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20220831BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20220831BHJP
【FI】
A23L29/00
A23L29/212
A23L29/231
A23L29/238
A23L29/244
A23L29/25
A23L29/256
A23L29/269
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018092013
(22)【出願日】2018-05-11
(65)【公開番号】P2019195308
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】306007864
【氏名又は名称】ユニテックフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬 霜
(72)【発明者】
【氏名】戸田 拓士
【審査官】安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-107957(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107019015(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107753333(CN,A)
【文献】特開2018-157803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21
A23
A61
CAplus/CABA/FSTA(STN)
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキクラゲ多糖体及びα化処理されたデンプンを有効成分として含む食品用の離水抑制剤。
【請求項2】
シロキクラゲ多糖体が平均分子量300万Mw以上である請求項1に記載の食品用の離水抑制剤。
【請求項3】
さらに増粘多糖類を含む請求項1又は2に記載の食品用の離水抑制剤。
【請求項4】
増粘多糖類がキサンタンガム、タラガム、グアガム、ローカストビーンガム、アグロバクテリウムスクシノグリカン、ペクチン、イオタカラギーナン、ラムダカラギーナン、グルコマンナン、アラビアガムグアガム、ローカストビーンガム、アグロバクテリウムスクシノグリカン、ペクチン、イオタカラギーナン、ラムダカラギーナン、グルコマンナン又はアラビアガムから選ばれるいずれか一種以上である請求項に記載の食品用の離水抑制剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の食品用の離水抑制剤を食品に添加する工程を含む、離水抑制された食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は離水抑制剤に関する。さらに詳しくは、シロキクラゲ多糖体及びデンプンを有効成分として含む離水抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から植物や動物を由来とする素材を加工した食品、医薬品、医薬部外品や化粧品等の製品が幅広く提供されてきた。これらは加工にあたり熱を加えたり、保存のために冷蔵、冷凍等されたりすることが多く、これらの処理によって素材の組織が破壊され、素材内の水分が流出して物性が変化する等の問題があった。そこで、この問題を解決するために、近年では様々な離水防止剤が開発されてきた。
【0003】
本発明者らも離水抑制剤のひとつとして、シロキクラゲ由来の多糖体を有効成分とする剤を開発し、この離水抑制剤が冷凍後解凍しても離水が少ない飲食品、化粧品等の提供に有用であることを確認している(特願2017-057996)。
このシロキクラゲ多糖体は、冷凍ゼリー、冷凍プリンに保水効果を与えたり、冷凍カスタードクリーム、冷凍ホワイトソースの冷凍解凍後の食感の保持等に働いたりすることも確認されており(例えば、非特許文献1、参照)、加工食品等の製造において有用な物質であることが示唆されている。
【0004】
キクラゲやシロキクラゲ由来の成分を加工食品等の製造に用いることが記載されている例として、例えば特許文献1では、シロキクラゲ由来の粘質性物質が飲食物の保水剤として有用であることが開示されている。特許文献2では、加工食肉の製造にあたり、一定の条件において、酸、酸化剤又は酵素で分解された澱粉又は物理的処理で低分子化された加工澱粉の糊液、及びマイタケ又はキクラゲから常温で粉砕後、水で抽出される抽出物を添加することが開示されている。
また、特許文献3では、食品の改質方法として、キクラゲの細断末又は粉砕末を、小麦粉や蕎麦粉又は魚肉や獣肉等水分が多くて固化しない状態の食品に配合することで、固化させる効果、粘弾性を生じさせる効果が発揮されることが開示されており、特許文献4では化粧料の提供にあたり、シロキクラゲ子実体より抽出した水溶性多糖類と水溶性高分子(但し、シロキクラゲ子実体より抽出した水溶性多糖類を除く)及び/又はリン脂質を含有させることが開示されている。
そして、特許文献5では、シロキクラゲのエタノール抽出物や熱水抽出物をNMF促進剤に含有する抽出物のひとつとして挙げており、これを保水能力改善用皮膚外用剤に用いることが開示されている。
しかし、これらの技術からシロキクラゲ由来の成分の十分な効果が開示されているとは言えなかった。
【0005】
そこで、本発明者らは本発明において、加工食品、医薬品、医薬部外品や化粧品等の製造におけるシロキクラゲ多糖体の更なる効果や有用性について検討を試みた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-339354号公報
【文献】特許第4440751号
【文献】特許第2554281号
【文献】特開2005-330257号公報
【文献】特開2006-124350号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】戸田拓士(2017). 白キクラゲ多糖トレメルガムTMの応用について 食品と開発 Vol.52 No.10, 72-74.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はシロキクラゲ多糖体を有効成分として含む新規な剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、シロキクラゲ多糖体及びデンプンを組み合わせ、これらを有効成分として含むことにより、冷凍後解凍した段階での離水を抑制するのみならず、加工食品、医薬品、医薬部外品や化粧品等の製造において広く離水を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は次の(1)~(5)に示される離水抑制剤等に関する。
(1)シロキクラゲ多糖体及びデンプンを有効成分として含む離水抑制剤。
(2)シロキクラゲ多糖体が平均分子量300万Mw以上である上記(1)に記載の離水抑制剤。
(3)デンプンがα化処理されたデンプンである上記(1)又は(2)に記載の離水抑制剤。
(4)さらに増粘多糖類を含む上記(1)~(3)のいずれかに記載の離水抑制剤。
(5)増粘多糖類がキサンタンガム、タラガム、グアガム、ローカストビーンガム、アグロバクテリウムスクシノグリカン、ペクチン、イオタカラギーナン、ラムダカラギーナン、グルコマンナン、アラビアガムグアガム、ローカストビーンガム、アグロバクテリウムスクシノグリカン、ペクチン、イオタカラギーナン、ラムダカラギーナン、グルコマンナン又はアラビアガムから選ばれるいずれか一種以上である上記(4)に記載の離水抑制剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシロキクラゲ多糖体及びデンプンを有効成分として含む離水抑制剤の提供により、加工や保存等の段階で素材からの離水が生じず、物性の変化が起こりにくい安定した食品、医薬品、医薬部外品や化粧品等の提供が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の離水抑制剤Aによる離水抑制効果を示した図である(実施例2)。
図2】本発明の離水抑制剤Bによる離水抑制効果を示した図である(実施例3)。
図3】本発明の離水抑制剤Cによる離水抑制効果を示した図である(実施例6)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の「離水抑制剤」は、シロキクラゲ多糖体とデンプンを有効成分として含み、飲食品、化粧品等の離水を抑制し得る剤のことをいう。この「離水抑制剤」は、加熱、冷蔵や冷凍等の加工や保存を目的とした処理による、植物や動物を由来とする素材からの離水を抑制することができる。
本発明の「離水抑制剤」はシロキクラゲ多糖体とデンプン以外に、離水の抑制に有効なその他の成分や、剤の形態を保つのに必要なその他の成分等を含むものであっても良い。
【0014】
本発明の「離水抑制剤」の有効成分となるシロキクラゲ多糖体は、次の条件において測定した場合の平均分子量が300万Mw以上のシロキクラゲ由来の多糖体のことをいう。このシロキクラゲ多糖体は平均分子量が300万Mw以上であって離水抑制効果を示すものであれば従来知られているいずれのシロキクラゲ多糖体であっても良く、独自に調製して得たシロキクラゲ多糖体であっても良い。特に平均分子量が300万Mw以上500万Mw以下のシロキクラゲ多糖体であることが好ましい。
このようなシロキクラゲ多糖体として、例えば平均分子量が480万MwのUT-WC(ユニテックフーズ社)、又は平均分子量が300万MwのUT-WS(ユニテックフーズ社)等を挙げることができる。これらのシロキクラゲ多糖体は単独で使用しても良く、複数のものを混合して使用しても良い。
【0015】
<平均分子量の測定条件>
GPCによる分子量及び分子量分布の測定
・装置:ビルドアップGPCシステム(東ソー製)
・カラム:TSKgel GMPWXL(7.8mmID×30cm)(東ソー製)
・検出器:RI検出器
・溶離液:0.05M-NaNO3水溶液
・流速:0.5ml/min
・濃度:0.5mg/ml
・注入量:100μl
・カラム温度:40℃
前処理として、試料を秤量し所定量の溶離液を加えて、100℃10分加熱・冷却後、0.45μmのセルロースアセテートカートリッジフィルターにて濾過を行った。検量線は、標準プルラン(Shodex製)を用いて作成した。
【0016】
また、本発明の「離水抑制剤」の有効成分となるデンプンは、従来知られているデンプンや、独自に調製したデンプン等のいずれであっても良く、加工食品や化粧品等の製造において安全性が確認されているデンプンであることが好ましい。さらに本発明で用いるデンプンはα化処理がされているデンプンであることが好ましい。
このようなデンプンとして、例えば、馬鈴薯でんぷん、米デンプン、タピオカでんぷん、甘藷でんぷん、エンドウでんぷん、コーンスターチ、ヒドロキシプロピルデンプン、アセチル化デンプン、リン酸架橋デンプン、又はヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン等が挙げられる。C*POLARTEX-INSTANT12650(Cargill社)等の市販のデンプンを用いても良く、独自で調整したデンプンを用いても良い。また、これらのデンプンは一種又は二種以上を組み合わせて本発明の「離水抑制剤」に含むことができる。
【0017】
本発明の「離水抑制剤」はさらに、増粘多糖類を含むものであっても良い。増粘多糖類も従来知られている増粘多糖類や、独自に調製した増粘多糖類等のいずれであっても良く、加工食品や化粧品等の製造において安全性が確認されている増粘多糖類であることが好ましい。
このような増粘多糖類として、例えば、キサンタンガム、タラガム、グアガム、ローカストビーンガム、アグロバクテリウムスクシノグリカン、ペクチン、イオタカラギーナン、ラムダカラギーナン、グルコマンナン、アラビアガムグアガム、ローカストビーンガム、アグロバクテリウムスクシノグリカン、ペクチン、イオタカラギーナン、ラムダカラギーナン、グルコマンナン、アラビアガム等のゲル化しない増粘多糖類が挙げられる。SATIAXANE CX90(Cargill社)(キサンタンガム)やVIDOGUM SP175(UNIPECTINE社)(タラガム)等の市販の増粘多糖類を用いても良く、独自で調整した増粘多糖類を用いても良い。また、これらの増粘多糖類は一種又は二種以上を組み合わせて本発明の「離水抑制剤」に含むことができる。
【0018】
また、本発明の「離水抑制剤」はさらにデキストリン等の分散剤を含むものであっても良い。分散剤も従来知られている分散剤や、独自に調製した分散剤等のいずれであっても良く、加工食品や化粧品等の製造において安全性が確認されている分散剤であることが好ましい。
【0019】
本発明の「離水抑制剤」として、シロキクラゲ多糖体とデンプンが配合された市販の剤を用いても良く、さらにシロキクラゲ多糖体、デンプンと増粘多糖類が配合された市販の剤を用いても良い。
【0020】
本発明の「離水抑制剤」に含まれるシロキクラゲ多糖体とデンプンは1:99~99:1の割合で組み合わされて含有されていれば良く、5:95~95:5の割合であることが好ましい。さらに割合が30:70~70:30であることが好ましく、特に50:50や5:95の割合で組み合わされて含有されていることが好ましい。
シロキクラゲ多糖体が多すぎる場合はねとつきが出やすく、また、デンプンが多い場合は加熱調理時の離水抑制効果が小さくなりやすい傾向があることから、離水抑制剤の使用目的や使用場面に応じてシロキクラゲ多糖体とデンプンの割合を調整することが好ましい。
例えば、シロキクラゲ多糖体とデンプンを30:70の割合で組み合わせて含有されている離水抑制剤であれば、添加した食品を加熱した場合、加熱による離水が生じにくい傾向がある。また、シロキクラゲ多糖体とデンプンを70:30の割合で組み合わせて含有されている離水抑制剤であれば、添加して製造した食品を長時間冷蔵保存した場合でも全く離水を生じないか、またはほとんど離水を生じない傾向がある。さらに、シロキクラゲ多糖体とデンプンを50:50の割合で組み合わせて含有されている離水抑制剤であれば、添加した食品を加熱した場合加熱による離水が生じにくく、また、該食品を長時間冷蔵保存した場合でもほとんど離水を生じない傾向がある。
なお、シロキクラゲ多糖体とデンプンに、さらに増粘多糖類を組み合わせる場合は、本発明の「離水抑制剤」全量に対して5~10w/w%となるように含有させることが好ましい。
【0021】
本発明の「離水抑制剤」は、加工食品、医薬品、医薬部外品や化粧品等の製造に用いることができる。加工食品として、例えば、惣菜や弁当の具として提供される野菜炒め、蒸し野菜、サラダ、ハンバーグ、焼き魚、魚の煮付け等が挙げられる。
本発明の「離水抑制剤」は、加工食品等を製造するための植物や動物由来の素材を加熱処理する前に添加しても良く、加熱処理後に冷蔵、冷凍等する前に添加しても良く、いずれの場合も植物や動物由来の素材からの離水を抑制することができる。このような「素材」としては、植物、キノコ類、動物等を由来とする素材が挙げられる。
【実施例
【0022】
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例等に限定されるものではない。
【0023】
[実施例1]
離水抑制剤の製造
1.試料
1)シロキクラゲ多糖体
UT-WC又はUT-WS(いずれもユニテックフーズ社)
2)デンプン
C*POLARTEX-INSTANT12650(Cargill社)
3)増粘多糖類
(1)キサンタンガム
SATIAXANE CX90(Cargill社)
(2)タラガム
VIDOGUM SP175(UNIPECTINE社)
4)デキストリン
パインデックス#2 (松谷化学工業株式会社)
【0024】
2.離水抑制剤A
1)シロキクラゲ多糖体(UT-WC)とデンプンを5:95の割合で組み合わせることにより、離水抑制剤A-1を製造した。
2)シロキクラゲ多糖体(UT-WC)とデンプンを30:70の割合で組み合わせることにより、離水抑制剤A-2を製造した。
3)シロキクラゲ多糖体(UT-WC)とデンプンを50:50の割合で組み合わせることにより、離水抑制剤A-3を製造した。
4)シロキクラゲ多糖体(UT-WC)とデンプンを70:30の割合で組み合わせることにより、離水抑制剤A-4を製造した。
【0025】
3.離水抑制剤B
シロキクラゲ多糖体(UT-WC)、デンプン、キサンタンガム及びタラガムを5:85:1:9の割合で組み合わせることにより、離水抑制剤Bを製造した。
【0026】
4.離水抑制剤C
シロキクラゲ多糖体(UT-WC)、デンプン、キサンタンガム、タラガム及びデキストリンを20:40:1:9:30の割合で組み合わせることにより、離水抑制剤Cを製造した。
【0027】
[実施例2]
離水抑制効果の検討
実施例1の離水抑制剤Aをそれぞれ0.05w/w%添加して製造したもやし炒めにおける離水抑制効果を確認した。
【0028】
1.試験方法
1)フライパンにサラダ油10gをひき、1分間加熱した(予熱)。
2)上記1)にもやし250gを入れた後、4分間炒めた。
3)上記2)に離水抑制剤と食塩2.5gを添加しさらに2分間炒めた。
4)上記3)のもやし炒めについて、加熱後重量を測定し、式1により加熱歩留まりを算出した。
5)上記4)のもやし炒めを48時間冷蔵した後、離水量(g)を測定した。
6)上記5)のもやし炒めをさらにレンジアップ(600W、2分間)し、その後の離水量(g)を測定した。
測定結果を表1に示し、48時間冷蔵した後の離水の様子を図1に示した。
また、比較としてシロキクラゲ多糖体(UT-WC)またはデンプンのみを0.05w/w%添加したものについても検討した。
【0029】
[式1]
【0030】
【表1】
【0031】
2.結果
表1に示すように、本発明の離水抑制剤A-3を添加した場合は、シロキクラゲ多糖体やデンプンのみを添加した場合と比べて加熱した段階での歩留まりが高く、48時間冷蔵した段階での離水もほとんど生じないもやし炒めが製造できることが確認できた。
また、本発明の離水抑制剤A-2を添加した場合は加熱した段階での歩留まりが高く、加熱による離水が生じにくいもやし炒めが製造できることが確認できた。さらに、本発明の離水抑制剤A-4を添加した場合は48時間冷蔵した段階で全く離水が生じないもやし炒めが製造できることが確認できた。
【0032】
[実施例3]
離水抑制効果(濃度)の検討
実施例1の離水抑制剤Bの添加量が0.25w/w%~0.50w/w%となるように食材に添加して、実施例2の試験方法と同様に製造したもやし炒めにおける離水抑制効果を確認した。
離水量等の測定結果を表2に示し、48時間冷蔵した後、及びレンジアップ後の離水の様子を図2に示した。
【0033】
【表2】
【0034】
2.結果
表2に示すように、本発明の離水抑制剤Bを添加した場合、加熱した段階での歩留まりが高く、48時間冷蔵した後でも離水が生じないもやし炒めが製造できることが確認できた。また本発明の離水抑制剤Bを添加したもやし炒めは冷蔵保存後、きっ食するためにレンジアップした際もほとんど離水が生じず、無添加のものと比べて変色が少ないことも確認できた。
【0035】
[実施例4]
離水抑制効果(添加の順番)の検討
離水抑制剤Bの添加量が0.25w/w%となるように添加して製造したもやし炒めにおける離水抑制効果を確認した。
【0036】
1.試験方法
次の試験区毎にもやし、離水抑制剤B及び食塩を添加する順番を変更した以外は実施例2の試験方法と同様にもやし炒めを製造した。
<試験区>
A.離水抑制剤B及び食塩を混合してもやしに添加した後、予熱したフライパンで5分間炒めた。
B.予熱したフライパンでもやしを5分間炒めた後、離水抑制剤B及び食塩を混合して添加した。
C.食塩をもやしに添加した後、予熱したフライパンで5分間炒め、その後離水抑制剤Bを添加した。
D.離水抑制剤Bをもやしに添加した後、予熱したフライパンで5分間炒め、その後食塩を添加した。
【0037】
<試験区(比較)>
a.食塩をもやしに添加した後、予熱したフライパンで5分間炒めた。
b.予熱したフライパンでもやしを5分間炒めた後、食塩を添加した。
各試験区における加熱歩留まり、48時間冷蔵した後の離水量及びレンジアップ後の離水量を測定し、結果を表3に示した。
【0038】
【表3】
【0039】
2.結果
表3に示すように、本発明の離水抑制剤Bを添加した場合、添加の順番による影響を受けることなく、いずれも加熱した段階での歩留まりが高く、48時間冷蔵した後や冷蔵保存後にレンジアップした際も全く離水が生じないことが確認できた。
【0040】
[実施例5]
非加熱調理食品における離水抑制効果の検討
実施例1で製造した離水抑制剤Bの添加量が0.2w/w%となるように、キャベツに添加し、製造したコールスローサラダにおける離水抑制効果を確認した。
【0041】
1.試験方法
1)キャベツの千切り40gに離水抑制剤Bを分散させた。
2)上記1)に市販のコールスロードレッシング10gを和えた。
3)ビーカー上に茶こしを置き、茶こし内に上記2)のコールスローサラダを乗せて48時間冷蔵した。冷蔵後、ビーカー内に溜まった液体の量を測定し、離水量(g)を調べた。
【0042】
2.結果
比較として離水抑制剤Bを分散させずに製造したコールスローサラダは48時間冷蔵した後離水が2.1g生じていたが、離水抑制剤Bを添加して製造したコールスローサラダは離水が全く生じていなかった。離水抑制剤Bの添加量が0.1 w/w%となるように添加した場合も同様の結果であった。
従って、これらの結果から、本発明の離水抑制剤は非加熱調理食品においても離水抑制効果があることが確認できた。
【0043】
[実施例6]
離水抑制効果の検討
実施例1の離水抑制剤Cを食材に添加して製造したもやし炒めにおける離水抑制効果を確認した。比較としてシロキクラゲ多糖体又はデンプンを含まない剤(比較剤a,b)についても検討した。
【0044】
1.試験方法
1)フライパンにサラダ油10gをひき、1分間加熱した(予熱)。
2)上記1)にもやし250gを入れた後、4分間炒めた。
3)食塩2.5gと離水抑制剤C(又は比較剤a,b)を混合したものを上記2)のもやしに加えて分散させた。
4)上記3)の加熱歩留まりもやし炒めについて加熱歩留まりが70%になるまで加熱した。
5)上記4)のもやし炒めを48時間冷蔵した後、離水量(g)を測定した。
6)上記5)のもやし炒めをさらにレンジアップ(600W、2分間)し、その後の離水量(g)を測定した。
7)上記6)のもやし炒めについて、表4に示した3項目5段階の基準に従って官能評価を行った。評価は官能パネリスト5名によって行い、その平均を評価結果とした。
表5に離水量の測定結果と官能評価の結果を示した。また、48時間冷蔵した後、及びレンジアップ後の離水の様子を図3に示した。
【0045】
【表4】
【0046】
【表5】
【0047】
2.結果
表5に示すように、本発明の離水抑制剤Cを添加した場合、48時間冷蔵した後でも、冷蔵保存後きっ食するためにレンジアップした際も全く離水が生じず、非常にツヤ感、シャキシャキ感があり、また、ぬめりがなくて非常にすっきりした食感のもやし炒めが製造できることが確認できた。一方、シロキクラゲ多糖体を含まない比較剤aやデンプンを含まない比較剤bを添加した場合は、冷蔵後もレンジアップした際も離水が生じること、また、ツヤ感、シャキシャキ感及びぬめり感の全ての項目が充足した好ましいもやし炒めが製造できないことが示された。
従ってこれらの結果より、シロキクラゲ多糖体及びデンプンの両方を有効成分として含むことにより、加工や保存等の段階で素材からの離水が生じず、好ましい外観や食感を有する加工食品等が製造できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のシロキクラゲ多糖体及びデンプンを有効成分として含む離水抑制剤の提供により、冷凍後解凍した段階での離水を抑制するのみならず、加工や保存等の幅広い段階において素材からの離水が生じず、物性の変化が起こりにくい安定した食品、医薬品、医薬部外品や化粧品等の提供が容易となる。
図1
図2
図3