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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】電線と保持金具との接続構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20220831BHJP
   H01R 4/64 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H01R4/64 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018142678
(22)【出願日】2018-07-30
(65)【公開番号】P2020021566
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大比叡 直樹
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 真大
(72)【発明者】
【氏名】黒田 桂治
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-005233(JP,U)
【文献】特開2000-285990(JP,A)
【文献】実開昭50-138535(JP,U)
【文献】特開2013-162728(JP,A)
【文献】米国特許第04951389(US,A)
【文献】特開2015-072876(JP,A)
【文献】特開2013-123019(JP,A)
【文献】特開2006-147223(JP,A)
【文献】特開2017-174862(JP,A)
【文献】特開2002-218621(JP,A)
【文献】特開2004-40867(JP,A)
【文献】特開2013-232384(JP,A)
【文献】特開2002-218622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/00-4/22
H01R 12/00-12/91
H01R 24/00-24/86
H01R 13/56-13/72
H01R 9/00
H01R 9/15-9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、電線を保持する保持金具と、を備え、
前記保持金具が、巻回始端から巻回終端まで前記電線の周囲に所定の巻き方向に一回りを超えて巻回された状態で前記電線にかしめ固定されたかしめ固定部と、前記巻回始端と直接又は介在部を介して間接的に接続され、取付対象に取り付けられる被取付部と、を含み、
前記かしめ固定部が、前記電線の長手方向に沿って見て、上底部と、前記上底部よりも幅広であって途中部に前記巻回終端が配置された下底部と、一対の脚部と、前記下底部と一方の脚部との間に形成され前記巻回始端が配置された湾曲状の下側コーナー部と、を含む台形形状を形成し、
前記かしめ固定部において、前記電線の周方向に関して前記巻回始端から所定範囲の部分である重合外側部分が、前記電線の周方向に関して前記巻回終端から所定範囲の部分である重合内側部分の外側に重合されて重合領域が形成されている、電線と保持金具との接続構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電線と保持金具との接続構造であって、
前記電線が、導体部を包囲する編組線と、前記編組線を包囲するシースとを有するシールド電線を含み、
前記編組線が、前記シースから露出し前記かしめ固定部に導通可能に接続された状態でかしめ固定部に包囲された露出部を含、前記保持金具が端子金具として機能する、電線と保持金具との接続構造。
【請求項3】
請求項2に記載の電線と保持金具との接続構造であって、
前記編組線の前記露出部が、前記シースの外側に折り返された折り返し部であり、
前記折り返し部の内側で前記シースを包囲するスリーブであって、前記かしめ固定部との間で前記折り返し部を挟む状態で前記かしめ固定部にかしめ固定され、前記かしめ固定部と相似の台形形状を形成するスリーブを備える、電線と保持金具との接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線と保持金具との接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された端子金具は、所定形状に打ち抜いた金属板材を曲げ加工して形成されおり、長手に延びる基底部と、一対のカシメ片と、接続部と、アーム部とを備えている。
前記一対のカシメ片は、前記基底部の左右両側縁から延設され、シールド電線のシースの外周上に折り返された編組線を介してシースにかしめられる。
【0003】
前記接続部は、前記基底部における前記カシメ片よりも後方の領域において、前記基底部の一方の側縁から延出されている。前記接続部に形成された接続孔に挿通されたボルト等が、アース部材に対して接続される。
前記アーム部は、前記基底部に対して前記接続部の反対側に配置されている。アーム部及びアーム部に隣接する基底部が、シースの外周の一部に巻かれる状態でシースにかしめられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-117286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、基底部の長手方向(電線の長手方向に相当)に関して、接続部の位置を、一対のカシメ片から離隔した位置に配置することが必要である。接続部の配置位置に制限があるため、取付対象に対する取付の自由度が低い。また、アーム部は、シースの外周の一部にしか巻かれておらず、かしめ保持力が弱い。
本発明の目的は、かしめ保持力が高く、且つ取付対象に対する取付自由度が高い、電線と保持金具の接続構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、電線(20)と、電線を保持する保持金具(30;30P;30Q)と、を備え、前記保持金具が、巻回始端(50s)から巻回終端(50e)まで前記電線の周囲に所定の巻き方向(R)に一回りを超えて巻回された状態で前記電線にかしめ固定されたかしめ固定部(50)と、前記巻回始端と直接又は介在部(62;63)を介して間接的に接続され、取付対象に取り付けられる被取付部(60)と、を含み、前記かしめ固定部が、前記電線の長手方向(X)に沿って見て、上底部(51)と、前記上底部よりも幅広であって途中部(52P)に前記巻回終端が配置された下底部(52)と、一対の脚部(53,54)と、前記下底部と一方の脚部との間に形成され前記巻回始端が配置された湾曲状の下側コーナー部(57)と、を含む台形形状を形成し、前記かしめ固定部において、前記電線の周方向に関して前記巻回始端から所定範囲の部分である重合外側部分(OL1)が、前記電線の周方向に関して前記巻回終端から所定範囲の部分である重合内側部分(OL2)の外側に重合されて重合領域(OL)が形成されている、電線と保持金具との接続構造(10;10P;10Q)を提供する。
【0007】
なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ。
請求項2に記載の発明のように、前記電線が、導体部(21a)を包囲する編組線(22)と、前記編組線を包囲するシース(23)とを有するシールド電線(20)を含み、前記編組線が、前記シースから露出し前記かしめ固定部に導通可能に接続された状態でかしめ固定部に包囲された露出部(22a)を含、前記保持金具が端子金具として機能してもよい。
【0008】
請求項3に記載の発明のように、前記編組線の前記露出部が、前記シースの外側に折り返された折り返し部(22a)であり、前記折り返し部の内側で前記シースを包囲するスリーブ(40)であって、前記かしめ固定部との間で前記折り返し部を挟む状態で前記かしめ固定部にかしめ固定され、前記かしめ固定部と相似の台形形状を形成するスリーブを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明では、かしめ固定部が、巻回始端から巻回終端まで一回りを超えて巻回された状態で台形形状を形成している。また、かしめ固定部において、下底部の途中部に配置された巻回終端から所定範囲の部分が重合内側部分とされ、下底部と一方の脚部との間の下側コーナー部に配置された巻回始端から所定範囲の部分が重合外側部分とされて、互いに重合されている。このため、かしめ固定部のスプリングバックによって、前記一方の脚部が、上端を中心として下端側を開こうとする開き力が、前記下側コーナー部において、重合内側部分を重合外側部分に押圧させて干渉させる方向に働く。このため、かしめ保持力を高くすることができる。
【0010】
また、取付対象に取り付けるための被取付部が、巻回始端と直接又は介在部を介して間接的に接続されている。このため、電線の長手方向に関して、かしめ固定部と被取付部とを任意の位置関係に設定することができ、取付の自由度を高くすることができる。
請求項2に記載の発明では、前記電線としてのシールド電線のシースから露出する編組線の露出部が、かしめ固定部に導通可能に接続された状態で包囲される。これにより、前記保持金具を電線の保持だけでなく、グラウンド用の端子金具としても機能させることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、シールド電線の編組線が、シースの外側に折り返された折り返し部を含む。かしめ固定部が、シースの外周に嵌合された相似の台形形状を形成するスリーブに対して、前記折り返し部を介して、かしめ固定されている。外側のかしめ固定部と内側のスリーブとが互いに相似の台形形状を形成する状態で、外側のかしめ固定部の締付力と内側のスリーブの反発力を拮抗させて、かしめ固定部の開きを確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(a)及び(b)は、本発明の第1実施形態に係る、電線と保持金具との接続構造の別角度からの概略斜視図である。
図2】電線としてのシールド電線の概略断面図である。
図3】電線と保持金具との接続構造の概略断面図である。
図4図4(a)~(f)は、電線と保持金具との接続方法を順次に示す工程図である。
図5図5(a)及び(b)は、前記接続方法の最終行程であるかしめ工程において、かしめ前の状態とかしめ完了後の状態とを順次に示している。
図6図6(a)~(d)は、前記接続方法の最終行程であるかしめ工程における、保持金具素材の状態変化を順次に示す概略図である。
図7図7は、本発明の第2実施形態に係る、電線と保持金具との接続構造の概略平面図である。
図8図8は、本発明の第3実施形態に係る、電線と保持金具との接続構造の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に従って説明する。
(第1実施形態)
図1(a)及び(b)は、本発明の第1実施形態に係る電線と保持金具との接続構造10の互いに別角度からの概略斜視図である。図2は、かしめ前の電線としてのシールド電線20の概略断面図である。図3は、電線と保持金具との接続構造10(以下では、単に接続構造10とも言う)の概略断面図である。
【0014】
図1(a)、(b)及び図3に示すように、接続構造10は、長手方向Xに延びる電線としてのシールド電線20と、保持金具30と、スリーブ40とを備えている。
まず、図2を参照して、シールド電線20について説明する。シールド電線20は、複数の被覆電線21と、複数の被覆電線21を包囲する編組線22と、編組線22を包囲する絶縁性のシース23と、絶縁性の中心部材24とを備えている。複数の被覆電線21は、中心部材24を包囲するように配置されている。各被覆電線21は、導体部21aと、導体部21aを包囲する絶縁部21bとを含む。
【0015】
シールド電線20の端部において、シース23が皮剥ぎされている。シース23の皮剥ぎ状態で露出された編組線22の露出部が、折り返されてシース23を包囲する折り返し部22aを形成している[図4(c),(d)も参照]。図3に示すように、スリーブ40は、折り返し部22aの内側で、シース23の外周23aに嵌合されている。すなわち、編組線22の折り返し部22aが、シース23を包囲している。
【0016】
次いで、保持金具30について説明する。
図1(a)及び(b)に示すように、保持金具30は、かしめ固定部50と、被取付部60とを備えている。保持金具30は、板金材料で形成されている。かしめ固定部50は、巻回始端50sから巻回終端50eまでシールド電線20の周囲に所定の巻き方向R[図1(a),(b)では時計回り]に一回りを超えて巻回されて重合領域OLを形成する状態で、シールド電線20に、かしめ固定されている。
【0017】
図3に示すように、かしめ固定部50は、シールド電線20の長手方向Xに沿って見て、上底部51と、上底部51と平行な下底部52と、第1脚部53と、第2脚部54とを含む台形形状を形成している。
かしめ固定部50は、上底部51と第1脚部53との間に形成された湾曲状の第1上側コーナー部55と、上底部51と第2脚部54との間に形成された湾曲状の第2上側コーナー部56とを含む。また、かしめ固定部50は、下底部52と第1脚部53との間に形成された湾曲状の第1下側コーナー部57と、下底部52と第2脚部54との間に形成された湾曲状の第2下側コーナー部58とを含む。
【0018】
第1下側コーナー部57に、巻回始端50sが配置されている。下底部52は、上底部51よりも幅広である。下底部52の途中部52Pに、巻回終端50eが配置されている。
かしめ固定部50において、シールド電線20の周方向に関して、巻回始端50sから所定範囲の部分である重合外側部分OL1が、シールド電線20の周方向に関して、巻回終端50eから所定範囲の部分である重合内側部分OL2の外側に重合されて、重合領域OLが形成されている。すなわち、重合領域OLは、重合外側部分OL1と重合内側部分OL2とを含む。
【0019】
かしめ固定部50は、折り返し部22aの周囲に巻き方向Rに一回りを超えて巻回されて重合領域OLを形成する状態で、折り返し部22aを介して、スリーブ40にかしめ固定されている。
被取付部60は、巻回始端50sと直接連結された矩形板で形成されており、下底部52と平行に外側へ延びている。被取付部60は、巻回始端50sに沿う一辺部を有している。かしめ固定部50と被取付部60は、シールド電線20の長手方向に関して、重なる位置に配置されている。被取付部60には、取付対象に取り付けるためのボルト(図示せず)が挿通される挿通孔61が形成されている。
【0020】
スリーブ40は、金属製であり、かしめ固定部50と相似の台形形状を形成している。スリーブ40は、シールド電線20の長手方向に沿って見て、上底部41と、下底部42と、第1脚部43と、第2脚部44とを含む台形形状を形成している。
スリーブ40は、上底部41と第1脚部43との間に形成された湾曲状の第1上側コーナー部45と、上底部41と第2脚部44との間に形成された湾曲状の第2上側コーナー部46とを含む。また、スリーブ40は、下底部42と第1脚部43との間に形成された湾曲状の第1下側コーナー部47と、下底部42と第2脚部44との間に形成された湾曲状の第2下側コーナー部48とを含む。
【0021】
スリーブ40の上底部41が、かしめ固定部50の上底部51の内側に配置されており、スリーブ40の下底部42が、かしめ固定部50の下底部52の内側に配置されている。スリーブ40の第1脚部43が、かしめ固定部50の第1脚部53の内側に配置されており、スリーブ40の第2脚部44が、かしめ固定部50の第2脚部54の内側に配置されている。
【0022】
また、スリーブ40の第1上側コーナー部45が、かしめ固定部50の第1上側コーナー部55の内側に配置されており、スリーブ40の第2上側コーナー部46が、かしめ固定部50の第2上側コーナー部56の内側に配置されている。スリーブ40の第1下側コーナー部47が、かしめ固定部50の第1下側コーナー部57の内側に配置されており、スリーブ40の第2下側コーナー部48が、かしめ固定部50の第2下側コーナー部58の内側に配置されている。
【0023】
次いで、シールド電線20と保持金具30との接続方法について、図4(a)~(f)並びに図5(a)及び(b)を参照して、工程順に説明する。
まず、図4(a)及び(b)に示されるスリーブ素材装着工程では、シールド電線20のシース23の外周23aに、スリーブ40を形成するための円筒状のスリーブ素材400をシールド電線20の端末20a側から嵌合させる。
【0024】
次いで、図4(c)に示されるシース除去工程では、シールド電線20の端末20aから所定範囲において、シース23を皮剥ぎして除去する。これにより、端末20aから所定範囲の編組線22が露出される。
次いで、図4(d)に示される編組線折り返し工程では、編組線22の露出部分をスリーブ素材400の外側へ折り返し、編組線22の折り返し部22aを形成する。
【0025】
次いで、図4(e)及び(f)にされる保持金具素材装着工程では、シールド電線20の長手方向Xから折り返し部22aを包囲するように保持金具素材70を装着する。
具体的には、保持金具素材70は、被取付部60に相当する平板状の第1板部71と、第1下側コーナー部57の外側部分に相当する円弧板状の第2板部72と、下底部52の外側部分に相当する平板状の第3板部73と、円弧板状の第4板部74とを含む。
【0026】
第4板部74は、第3板部73に接続された基端部74aと、第2板部72の内側に隙間を設けて近接され、巻回終端50eを形成するための先端部74bとを含む。平坦な第3板部73と円弧板状の第4板部74とによって形成された挿通空間S内に、シールド電線20が挿通される。
次いで、図5(a)及び(b)に示されるかしめ工程では、シールド電線20が挿通された状態の保持金具素材70が、かしめ型100の下型80上に配置された後、かしめ型100の上型90が下降されることにより、下型80と上型90との間に形成されたキャビティCの内面によって台形状にかしめられる。
【0027】
具体的には、下型80は、それぞれキャビティCの内面の一部を形成する、下底部形成部81と、第1下側コーナー部形成部82と、第2下側コーナー部形成部83とを含む。また、下型80は、型合わせ部84と、被取付部60に相当する第1板部71を受ける座部85とを含む。
上型90は、それぞれキャビティCの内面の一部を形成する、上底部形成部91と、第1脚部形成部92と、第2脚部形成部93と、第1上側コーナー部形成部94と、第2上側コーナー部形成部95とを含む。また、上型90は、型締め状態で下型80の型合わせ部84と当接される型合わせ部96と、型締め状態で下型80の座部85との間で第1板部71(被取付部60)を挟持する挟持部97とを含む。
【0028】
ここで、図6(a)~(d)は、かしめ工程中における第4板部74の状態変化を示す概略図である。図6(a)~(d)においては、簡略化のため、シールド電線20とスリーブ40との図示を省略してある。図6(a)に示される、かしめ前の状態から、図6(b)に示すように、上型90が少し下降した初期段階では、第4板部74が、上型90の第1脚部形成部92と第2脚部形成部93によって下側へ押圧され、且つ、第4板部74が上下に長い楕円状に変形され、且つ、第4板部74の先端部74bが、第3板部73の途中部に当接される。
【0029】
次いで、上型90がさらに下降することにより、図6(c)に示すように、第4板部74に、第1脚部53に近似した形状の第1直線状部74cと、第2脚部54に近似した形状の第2直線状部74dと、第1直線状部74cと第2直線状部74dとの間の湾曲凸部形状の頂部74eと、先端部74bを支点として第1直線状部に対して折り曲げられた折り曲げ状部74fとが形成される。
【0030】
次いで、図6(d)及び図5(b)に示すように、上型90が型締め状態まで下降することにより、上底部51と、下底部52と、第1脚部53と、第2脚部54と、第1上側コーナー部55と、第2上側コーナー部56と、第1下側コーナー部57、第2下側コーナー部58とが形成される。また、基端部74aに相当する巻回始端50sから所定範囲の部分である重合外側部分OL1が、先端部74bに相当する巻回終端50eから所定範囲の部分である重合内側部分OL2の外側に重合されて重合領域OLが形成される。
【0031】
上型90の上底部形成部91が、かしめ工程の最終段階で上底部51を形成するときに、上底部51を介して、折り曲げ状部74fに相当する重合内側部分OL2を重合外側部分OL1側へ強く押圧することができる。このため、重合領域OLを高いかしめ荷重で強くかしめることが可能となる。
また、かしめ工程の最終段階で、第1上側コーナー部55と第2上側コーナー部56が形成されるため、かしめ工程の途中において、巻回終端50eの巻き方向Rへの変位が阻害されることがない。このため、巻き方向Rに関して所要の長さの重合領域OLを得ることができる。
【0032】
また、かしめ時において、シールド電線20の中心部材24が、中心部材24の周囲の複数の被覆電線21が偏ったり、捩じれたりすることを抑制する機能を果たす。なお、図3及び図5(b)では、中心部材24の図示を省略してある。
本実施形態では、かしめ固定部50が、巻回始端50sから巻回終端50eまで一回りを超えて巻回された状態で台形形状を形成している。また、かしめ固定部50において、下底部52と第1脚部53との間の第1下側コーナー部57に配置された巻回始端50sから所定範囲の部分が重合外側部分OL1とされ、下底部52の途中部52Pに配置された巻回終端50eから所定範囲の部分が重合内側部分OL2とされて、重合外側部分OL1と重合内側部分OL2とが互いに重合された重合領域OLを形成している。
【0033】
このため、かしめ固定部50のスプリングバックによって、第1脚部53が、上端を中心として下端側を開こうとする開き力F(図3参照)が、第1下側コーナー部57において、重合内側部分OL2を重合外側部分OL1に押圧干渉させる方向に働く。このため、かしめ保持力を高くすることができる。
また、かしめ固定部50が一方向(所定の巻き方向R)に巻回される構造である。このため、取付対象に取り付けるための被取付部60を、巻回始端50sと直接、連結することが可能である。また、後述する図7に示す第2実施形態や図8に示す第3実施形態のように、被取付部60を、巻回始端50sに対して介在部62,63を介して間接的に連結することも可能である。すなわち、シールド電線20の長手方向に関して、かしめ固定部50と被取付部60とを任意の位置関係に設定することができ、取付の自由度を高くすることができる。
【0034】
また、シールド電線20のシース23から露出する編組線22の露出部(折り返し部22a)が、かしめ固定部50に導通可能に接続された状態で包囲される。これにより、保持金具30を電線の保持だけでなく、グラウンド用の端子金具としても機能させることができる。
また、シールド電線20の編組線22が、シース23の外側に折り返された折り返し部22aを含む。かしめ固定部50が、シース23の外周に嵌合された相似の台形形状を形成するスリーブ40に対して、折り返し部22aを介して、かしめ固定されている。このため、外側のかしめ固定部50と内側のスリーブ40とが互いに相似の台形形状を形成する状態で、外側のかしめ固定部50の締付力と内側のスリーブ40の反発力を拮抗させて、かしめ固定部50の開きを確実に抑制することができる。
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態に係る、電線と保持金具との接続構造10Pの概略平面図である。図7の第2実施形態が、図1(b)の第1実施形態と異なるのは、接続構造10Pでは、保持金具30Pにおいて、被取付部60が、かしめ固定部50の巻回始端50sから平板状の介在部62を介して接続されていることである。介在部62は、かしめ固定部50の下底部52(図7では示さず)に対して平行である。
【0035】
介在部62と被取付部60とは、面一に形成されている。シールド電線20の長手方向Xに関して、かしめ固定部50の一部の位置と被取付部60の一部の位置とが、重なるように配置されている。
本実施形態では、介在部62の任意の位置に被取付部60を接続するようなレイアウトが可能であり、取付対象に対する取付の自由度が向上する。
(第3実施形態)
図8は、本発明の第3実施形態に係る、電線と保持金具との接続構造10Qの概略斜視図である。
【0036】
図8の第3実施形態が、図1(b)の第1実施形態と異なるのは、接続構造10Qでは、保持金具30Qにおいて、被取付部60が、かしめ固定部50の巻回始端50sからアングル状の介在部63を介して接続されていることである。
介在部63は、かしめ固定部50の巻回始端50sと接続され、かしめ固定部50の下底部52に対して平行な平板状の第1板部64と、第1板部64において巻回始端50sと平行な一側縁64aから直交状に延設された第2板部65とを含む。
【0037】
被取付部60は、第2板部65において、一側縁64aに対して傾する一側縁65aから直交状に延設されている。これにより、被取付部60は、シールド電線20の長手方向Xに対して傾斜されている。また、シールド電線20の長手方向Xに関して、かしめ固定部50の一部の位置と被取付部60の一部の位置とが、重なるように配置されている。
本実施形態では、介在部63において、一側縁64aに対する一側縁65aの傾斜角度を所望に設定することができ、取付対象に対する取付の自由度が向上する。
【0038】
本発明は、各前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、図示していないが、シールド電線20において、中心部材24に代えて被覆電線21が配置されてもよい。また、本発明を、電線として編組線を有しない通常の被覆電線に対して適用してもよい。
その他、本発明は、特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0039】
10;10P;10Q 電線と保持金具との接続構造
20 シールド電線
21a 導体部
22 編組線
22a 折り返し部(露出部)
23 シース
30;30P;30Q 保持金具
40 スリーブ
50 かしめ固定部
50s 巻回始端
50e 巻回終端
51 上底部
52 下底部
52P 途中部
53 第1脚部(一方の脚部)
54 第2脚部
57 第1下側コーナー部
60 被取付部
62 介在部
63 介在部
OL 重合領域
OL1 重合外側部分
OL2 重合内側部分
R 巻き方向
X 長手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8