IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 西田製凾株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-折畳式コンテナ 図1
  • 特許-折畳式コンテナ 図2
  • 特許-折畳式コンテナ 図3
  • 特許-折畳式コンテナ 図4
  • 特許-折畳式コンテナ 図5
  • 特許-折畳式コンテナ 図6
  • 特許-折畳式コンテナ 図7
  • 特許-折畳式コンテナ 図8
  • 特許-折畳式コンテナ 図9
  • 特許-折畳式コンテナ 図10
  • 特許-折畳式コンテナ 図11
  • 特許-折畳式コンテナ 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】折畳式コンテナ
(51)【国際特許分類】
   A47G 29/12 20060101AFI20220831BHJP
   B65D 6/18 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
A47G29/12 Z
B65D6/18 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018206634
(22)【出願日】2018-11-01
(65)【公開番号】P2019155066
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2018045320
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594126746
【氏名又は名称】西田製凾株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 昌彦
【審査官】田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-224377(JP,A)
【文献】特開2001-018956(JP,A)
【文献】特開平10-216006(JP,A)
【文献】特開昭50-146469(JP,A)
【文献】特開2004-299700(JP,A)
【文献】登録実用新案第3167554(JP,U)
【文献】特開2004-352277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 29/12-29/14
B65D 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面板(11)を有する底盤(1)と、底敷板(21)を挟んで前面板(22)及び後面板(23)が連なる基本部材(2)と、側面板(31)を有する一対の側壁部材(3)と、天面板(41)を有する蓋(4)と、四角形枠の上部フレーム(5)とから構成される折畳式コンテナであって、
底盤(1)、基本部材(2)、一対の側壁部材(3)及び蓋(4)は、それぞれ無発泡で空洞のない無垢の硬質プラスチック製シートから成り、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルのいずれかであり、上部フレーム(5)もまたプラスチック製であり、
基本部材(2)には、前面板(22)及び後面板(23)のそれぞれの下端及び上端並びに高さ方向中間部に熱罫線(25,26,27)が入れられ、側壁部材(3)には、上部及び下部に熱罫線(34,35)が入れられ、蓋(4)には、後部及び前部に熱罫線(45,46)が入れられ、
底面板(11)の上面に底敷板(21)が重ね合わされて固着され、基本部材(2)が前面板(22)及び後面板(23)の上方部分での溶着により上部フレーム(5)に取り付けられ、一対の側壁部材(3)が側面板(31)の上方部分での溶着により上部フレーム(5)に取り付けられ、蓋(4)が天面板(41)の後方部分での溶着により上部フレーム(5)に取り付けられ、
組立状態では、側面板(31)の下端に連なる係合片(33)が熱罫線(35)に沿って内側へ折り曲げられ、係合片(33)と底敷板(21)の両側端の係合切欠(28)とが係合し、天面板(41)が熱罫線(45)に沿って折り曲げられることにより蓋(4)が閉じられ、天面板(41)の前端に連なる前フラップ(43)が熱罫線(46)に沿って下方へ折り曲げられ、前フラップ(43)の錠受挿通穴(43a)から錠受具(55)の錠掛部(55b)が突出すると共に、錠受具(55)の座部(55a)が前フラップ(43)により覆い隠され、
折畳状態では、係合片(33)が係合切欠(28)から離脱して、一対の側面板(31)が上部の熱罫線(34)に沿って内側へ折り曲げられることにより跳ね上げられ、前面板(22)及び後面板(23)が下端及び上端の熱罫線(25,26)に沿って内側へ折り曲げられると共に、高さ方向中央部の熱罫線(27)に沿って二つ折りにされることを特徴とする折畳式コンテナ。
【請求項2】
前記底盤(1)の底面板(11)には、周囲各辺にそれぞれストッパ片(12)が連設され、底面板(11)からストッパ片(12)が熱曲げにより上方へ折り曲げられ、
前面板(22)及び後面板(23)並びに一対の側面板(31)の外側への揺動がストッパ片(12)により阻止されることを特徴とする請求項1に記載の折畳式コンテナ。
【請求項3】
前記蓋(4)の天面板(41)には、一対の側端辺にそれぞれガード片(44)が連設され、天面板(41)から一対のガード片(44)が熱曲げにより下方へ折り曲げられ、
蓋(4)を閉じたとき、ガード片(44)により天面板(41)と上部フレーム(5)の側枠部(53)の隙間が覆われることを特徴とする請求項1又は2に記載の折畳式コンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、不在時に宅配物を受け取るための宅配ボックスや展示ケースとして使用可能な折畳式コンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、簡易型の宅配ボックスとして、図11に示すようなものが知られている。この宅配ボックスは、EVA樹脂等の軟質のシートから成り、角桶状の本体部71の上端後部に蓋72が開閉自在に連設され、蓋72を開けて本体71に宅配物を収納した後、蓋72を閉じ、本体部71の上部と蓋72の周囲のファスナ73の一対のスライダ74を突き合わせ、スライダ74に錠61のシャックル61aを挿通して、宅配物の盗難を防止するものとなっている。この宅配ボックスは、不使用時に折り畳んでおくこともできる。
【0003】
また、折畳式コンテナである宅配ボックスとして、下記特許文献1には、図12に示すようなものが記載されている。この宅配ボックスは、硬質の板材を主体とする底盤81、前面板82、後面板83、一対の側壁84及び蓋85から構成されている。
【0004】
そして、底盤81と後面板83、前面板82と一対の側壁84、後面板83と一対の側壁84及び後面板83と蓋85がそれぞれ蝶番86を介して回動自在に連結され、一対の側壁84の奥行方向の中央部で前側部と後側部とが縦向きの蝶番86を介して屈伸自在に連結されることにより、不使用時には折り畳めるようになっている。
【0005】
上記のような宅配ボックスを使用する際には、組立状態として、その内部に宅配物を収納した後、蓋85を閉じ、前面板82の上部の錠挿通穴82aと蓋85の前部の錠挿通穴85aとに錠61のシャックル61aを挿通して、宅配物の盗難を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】登録実用新案第3013613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図11に示すような簡易型の宅配ボックスでは、本体71及び蓋72が軟質のシートから成るので、カッターナイフで簡単に切り込むことができ、防犯性が極めて不十分のものとなるほか、上方からの落下物や荷重により潰れるように変形して、宅配物が破損する恐れがある。
【0008】
また、図12に示す宅配ボックスでは、壁面の主要部材をプラスチック製とした場合、宅配物を収納した状態で施錠しても、錠挿通穴82a,85aの部分をハンマー等で壊すことにより、錠61による施錠状態を解除して、蓋85を開けることができるので、やはり防犯性が不十分なものとなる。
【0009】
特に、軽量化のため材質を中空構造のプラスチック段ボール製とした場合、製造段階では、厚さ方向の途中まで切り込むハーフカットにより、折曲加工を容易に施すことができるものの、使用時に鋭利な刃物で切り込まれると、亀裂が生じやすく、その亀裂を拡大することにより、宅配物が盗まれる恐れがある。
【0010】
また、蝶番86として金属製のものを用いた場合、廃棄に際し、プラスチック製の主要部材との分別が困難なため、複合材料の粗大ごみとして処理せざるを得ず、資源の再利用が図れないという問題がある。
【0011】
そこで、この発明は、使用時の防犯性に優れ、廃棄時には、分別の手間を要することなく、資源ごみとして処理可能な折畳式コンテナを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような課題を解決するため、この発明に係る折畳式コンテナは、底面板を有する底盤と、底敷板を挟んで前面板及び後面板が連なる基本部材と、側面板を有する一対の側壁部材と、天面板を有する蓋と、四角形枠の上部フレームとから構成され、
底盤、基本部材、一対の側壁部材及び蓋は、それぞれ無発泡で空洞のない無垢の硬質プラスチック製シートから成り、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルのいずれかであり、上部フレームもまたプラスチック製であり、
基本部材には、前面板及び後面板のそれぞれの下端及び上端並びに高さ方向中間部に熱罫線が入れられ、側壁部材には、上部及び下部に熱罫線が入れられ、蓋には、後部及び前部に熱罫線が入れられ、
底面板の上面に底敷板が重ね合わされて固着され、基本部材が前面板及び後面板の上方部分での溶着により上部フレームに取り付けられ、一対の側壁部材が側面板の上方部分での溶着により上部フレームに取り付けられ、蓋が天面板の後方部分での溶着により上部フレームに取り付けられ、
組立状態では、側面板の下端に連なる係合片が熱罫線に沿って内側へ折り曲げられ、係合片と底敷板の両側端の係合切欠とが係合し、天面板が熱罫線に沿って折り曲げられることにより蓋が閉じられ、天面板の前端に連なる前フラップが熱罫線に沿って下方へ折り曲げられ、前フラップの錠受挿通穴から錠受具の錠掛部が突出すると共に、錠受具の座部が前フラップにより覆い隠され、
折畳状態では、係合片が係合切欠から離脱して、一対の側面板が上部の熱罫線に沿って内側へ折り曲げられることにより跳ね上げられ、前面板及び後面板が下端及び上端の熱罫線に沿って内側へ折り曲げられると共に、高さ方向中央部の熱罫線に沿って二つ折りにされるものとしたのである。
【0013】
また、前記底盤の底面板には、周囲各辺にそれぞれストッパ片が連設され、底面板からストッパ片が熱曲げにより上方へ折り曲げられ、
前面板及び後面板並びに一対の側面板の外側への揺動がストッパ片により阻止されるものとしたのである。
【0014】
また、前記蓋の天面板には、一対の側端辺にそれぞれガード片が連設され、天面板から一対のガード片が熱曲げにより下方へ折り曲げられ、
蓋を閉じたとき、ガード片により天面板と上部フレームの側枠部の隙間が覆われるものとしたのである。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係る折畳式コンテナでは、組立状態で上部フレームから垂下した側面板の下端の係合片が底敷板の係合切欠に係合しているので、側面板が外側から押されても内側へ揺動せず、側面を開口させることができない。そして、上部フレームに取り付けた錠受具の座部が前フラップにより覆い隠されているので、施錠した状態では、錠受具を取り外すことができず、蓋を開くことができない。
【0016】
また、壁面をなす主要部材である底盤、基本部材、一対の側壁部材及び蓋がポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルのいずれかを材質とする無垢のシートとされているので、これらを3mm~10mm程度の厚みとしておけば、鋭利な刃物で切り込まれても、多少の傷はつくが、亀裂は発生しない。
【0017】
したがって、不使用時には嵩張らないように折り畳んでおける構造にもかかわらず、使用時に組み立てて施錠した状態において、高い防犯性が確保され、収納された宅配物の盗難が防止される。また、材質がポリエチレンテレフタレートやポリカーボネートである場合には、透明性を活かして、防犯性に優れた展示ケースとすることもできる。
【0018】
また、製造時に加工する際、プラスチック段ボールのように、ハーフカットとして折り曲げられるようにすることはできないが、別途蝶番等を用いることなく、ヒートバーを押し当てる熱罫線又は熱曲げとし、さらに、構成部材同士の接合を、別途金属製のリベット等を用いることなく、熱溶融による溶着としたので、廃棄する際には、錠受具を外すだけで、プラスチックのみから成る資源ごみとして容易に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明の実施形態に係る折畳式コンテナの組立施錠状態を示す斜視図
図2】同上の組立/折畳過程を示す斜視図
図3】同上の組立/折畳過程を示す斜視図
図4】同上の折畳状態を示す斜視図
図5図1のV-V線に沿った縦断正面図
図6図1のVI-VI線に沿った縦断側面図
図7】同上の底盤の展開状態を示す図
図8】同上の基本部材の展開状態を示す図
図9】同上の側壁部材の展開状態を示す図
図10】同上の蓋の展開状態を示す図
図11】従来の簡易型の宅配ボックスの組立施錠状態を示す斜視図
図12】特許文献1に記載された宅配ボックスの(12A)組立施錠状態を示す斜視図、(12B)同上の組立/折畳過程を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0021】
この折畳式コンテナは、図1に示すように、組立施錠状態で直方体となり、底面を形成する底盤1、底部で繋がり前面及び後面を形成する基本部材2、両側面を形成する一対の側壁部材3、天面を形成する蓋4及び四角形枠の上部フレーム5から構成される。
【0022】
底盤1、基本部材2、一対の側壁部材3及び蓋4は、無発泡で空洞のない厚さ3mm~10mm程度の無垢の硬質プラスチック製のシートから成り、その材質は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル(例えば、積水成型工業社製のタフビロン:登録商標)のいずれかとされている。
【0023】
なお、宅配ボックスとして使用するものでは、収納された宅配物が外部から見えないように、不透明で着色されたシートを使用し、展示ケースとして使用する場合には、収納された展示物が外部からよく見えるように、透明性の高いポリエチレンテレフタレートやポリカーボネートのシートを使用する。
【0024】
展開状態で図7に示すように、底盤1は、底面板11の周囲の各端辺にストッパ片12が連設された構成となっており、製造時には、底面板11からストッパ片12が上方へ折り曲げられる。この折り曲げは、ヒートバーで押圧して加熱に伴い軟化した状態で折り曲げ、徐冷に伴い塑性変形させる熱曲げとされている。
【0025】
また、展開状態で図8に示すように、基本部材2は、底敷板21を挟んで前面板22及び後面板23が連なり、前面板22及び後面板23の底敷板21とは反対側の端辺に、それぞれ接合片24が連設された構成となっている。
【0026】
底敷板21と前面板22の境界、底敷板21と後面板23の境界、前面板22と接合片24の境界及び後面板23と接合片24の境界には、それぞれV字溝状に窪んだヒンジとなる熱罫線25,26が入れられ、前面板22及び後面板23の高さ方向中央部にも、V字溝状に窪んだヒンジとなる横向きの熱罫線27が入れられている。
【0027】
熱罫線25,26は、シートの表面側が窪んだものとされ、熱罫線27は、シートの裏面側が窪んだものとされている。熱罫線27の位置には、熱罫線27に沿った屈伸の繰り返しによりシートが破断しないようにするため、シートの裏面側にV字溝状の窪みに沿ってフィラメントテープ27aが貼り付けられている。
【0028】
底敷板21の両側端には、凹入した係合切欠28が形成され、係合切欠28の奥側の端縁中央部には、指入凹所28aが設けられている。
【0029】
なお、組み立てに際しては、基本部材2と共に、上部フレームとの接合部を補強するため、接合片24とほぼ同一幅で高さが大きい形状の一対の補強部材29が使用される。
【0030】
また、展開状態で図9に示すように、側壁部材3は、側面板31の上端辺に接合片32が、下端辺に係合片33がそれぞれ連設された構成となっており、側面板31に把手穴31aが形成されている。側面板31と接合片32の境界及び側面板31と係合片33の境界には、それぞれV字溝状に窪んだヒンジとなる熱罫線34,35が入れられている。
【0031】
熱罫線34,35は、シートの表面側が窪んだものとされ、熱罫線35の位置には、熱罫線35に沿った屈伸の繰り返しによりシートが破断しないようにするため、シートの裏面側にV字溝状の窪みに沿ってフィラメントテープ35aが貼り付けられている。
【0032】
また、展開状態で図10に示すように、蓋4は、天面板41の後端辺に接合片42が、前端辺に前フラップ43が、一対の側端辺にガード片44がそれぞれ連設された構成となっており、製造時には、天面板41から一対のガード片44が熱曲げにより下方へ折り曲げられる。前フラップ43の中央部には、スロット状の錠受挿通穴43aが穿設されている。
【0033】
天面板41と接合片42の境界及び天面板41と前フラップ43の境界には、それぞれV字溝状に窪んだヒンジとなる熱罫線45,46が入れられ、熱罫線45,46は、シートの裏面側が窪んだものとされている。
【0034】
熱罫線45,46の位置には、熱罫線45,46に沿った屈伸の繰り返しによりシートが破断しないようにするため、シートの裏面側にV字溝状の窪みに沿ってフィラメントテープ45a,46aが貼り付けられている。
【0035】
また、図2及び図3に示すように、上部フレーム5は、前枠部51、後枠部52及び一対の側枠部53から構成され、荷崩防止片54が四隅のコーナー部から上方へ突出している。上部フレーム5の材質は、強度に優れ、段積み時等に破損しにくい性質を有するものとして、例えば、靭性の大きいポリエチレンとされている。
【0036】
ところで、基本部材2の熱罫線25,26,27、側壁部材3の熱罫線34,35及び蓋4の熱罫線45,46を入れる際には、V字状のヒートバーを押し当てて熱変形させるが、その材料は無垢のシートなので、相当量のノロが発生し、ノロを専用の治具でカットしなければならない。特に、表面側では、シートに傷が付かず、カット面が平滑となるようにしなければならないので、手作業でこの作業を行うには、高度な熟練を要する。
【0037】
なお、フィラメントテープ27a,35a,45a,46aは、必須ではないが、貼り付けておくと、耐久性が向上する。
【0038】
上記のような部材を用いて折畳式コンテナを製造する際には、底面板11の上面に底敷板21を重ね合わせて、底盤1に基本部材2を溶着又は接着剤により固着する。
【0039】
また、前面板22及び後面板23に連なる接合片24を、それぞれ前枠部51及び後枠部52に補強部材29を挟んで溶着部Wで溶着することにより、基本部材2を上部フレーム5に取り付け、一対の側面板31に連なる接合片32をそれぞれ一対の側枠部53に溶着部Wで溶着することにより、側壁部材3を上部フレーム5に取り付ける。そして、天面板41に連なる接合片42を後枠部52に溶着部Wで溶着することにより、蓋4を上部フレーム5に取り付ける。
【0040】
上記溶着部Wでの溶着手段としては、高温体の押し当てによる熱溶着、超音波振動を与えて摩擦熱により昇温させる超音波溶着、高周波電界を与えて発熱させる高周波溶着等を採用することができる。
【0041】
なお、上記工程に先立って、側面板31の両側辺部には、溝形材である保護部材36を嵌め、溶着部Wでの溶着により固定しておく。また、側面板31の把手穴31aには、プラスチック製の把手ハンドル37を装着しておく。
【0042】
また、前枠部51に金属製の錠受具55を取り付ける。錠受具55は、座部55aとU字状の錠掛部55bとから成るものであり、座部55aをねじ止め等により前枠部51に固定する。さらに、補強部材29の表面と前フラップ43の裏面には、錠受挿通穴43aの両側方に位置するように面ファスナ60を取り付ける。
【0043】
このように製造した折畳式コンテナを使用時に組み立てるには、図1図5及び図6に示すように、底敷板21から前面板22及び後面板23を熱罫線25に沿って上方へ折り曲げることにより直立させ、一対の側枠部53からそれぞれ側面板31が垂下した状態としておく。また、側面板31から熱罫線35に沿って係合片33を内側へ折り曲げ、係合片33と底敷板21の係合切欠28とを係合させる。
【0044】
この状態において、前面板22及び後面板23の内側への屈曲は、側面板31の両側端との当接により阻止され、前面板22及び後面板23の外側への揺動は、底盤1のストッパ片12により阻止される。また、側面板31の内側への揺動は、係合片33と底敷板21の係合切欠28との係合により阻止され、側面板31の外側への揺動は、底盤1のストッパ片12により阻止される。
【0045】
そして、宅配物や展示物を収納した後、天面板41を接合片42との境界の熱罫線45に沿って前方へ折り曲げることにより蓋4を閉じ、前フラップ43を天面板41から熱罫線46に沿って下方へ折り曲げ、前フラップ43を補強部材29に面ファスナ60で固定し、錠受挿通穴43aから錠受具55の錠掛部55bを突出させる。
【0046】
その後、錠受具55の錠掛部55bに南京錠等の錠61のシャックル61aを挿通して施錠し、宅配物や展示物の盗難を防止する。
【0047】
このような組立施錠状態では、側面板31が外側から押されても内側へ揺動せず、側面を開口させることができない。また、ガード片44により天面板41と側枠部53の隙間が覆われる。そして、錠受具55の座部55aが前フラップ43により覆い隠されているので、錠受具55を取り外すことができず、蓋4を開くことができない。
【0048】
また、壁面をなす主要部材である底盤1、基本部材2、一対の側壁部材3及び蓋4が無発泡で空洞のないポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル(例えば、積水成型工業社製のタフビロン:登録商標)のいずれかを材質とする無垢のシートとされ、その厚みが3mm~10mm程度とされているので、鋭利な刃物で切り込まれても、多少の傷はつくが、亀裂は発生せず、高い防犯性が確保される。具体的なシートの厚みは、防犯性と重量との兼ね合いを考慮して、5mm程度としておくのがよい。
【0049】
なお、この折畳式コンテナを屋外に置く場合には、折畳式コンテナ自体の盗難を防止するため、ワイヤー錠やチェーン錠を用いて、折畳式コンテナをドアノブや手摺、面格子等の構造物に連結固定できるようにしておくとよい。
【0050】
一方、この折畳式コンテナを不使用時に折り畳んでおく際には、図2に示すように、蓋4を開けた状態で、指入凹所28aに指を入れて係合片33の端縁に指を掛け、係合片33の先端部を引き上げつつ、側面板31を表面側から内側へ押して、係合片33を係合切欠28から離脱させ、一対の側面板31を接合片32との境界の熱罫線34に沿って内側へ折り曲げることにより跳ね上げる。
【0051】
次に、図3に示すように、前面板22及び後面板23を、底敷板21との境界の熱罫線25及び接合片24との境界の熱罫線26に沿って内側へ折り曲げ、高さ方向中央部の熱罫線27に沿って内側へ屈曲させる。
【0052】
そして、図4に示すように、前面板22及び後面板23を二つ折りにして底敷板21に重ね、前面板22及び後面板23に側面板31を重ねて、これらを底盤1と蓋4との間に挟むと、高さが組立状態の1/3程度となり、屋内での保管時に嵩張ることがない。
【0053】
このとき、前フラップ43の錠受挿通穴43aから錠受具55の錠掛部55bを突出させ、錠掛部55bに錠61のシャックル61aを掛けておくと、錠61の紛失を防止することができる。
【0054】
上記のような折畳式コンテナは、耐久性に優れるため、長期間使用できるが、不要になった場合には、錠受具55を取り外すだけで、プラスチックのみから成る資源ごみとして容易に処理することができるので、蝶番や金属製のリベットを取り外して分別する等の多大な手間を要することがなく、環境に悪影響を及ぼすことがない。
【符号の説明】
【0055】
1 底盤
2 基本部材
3 側壁部材
4 蓋
5 上部フレーム
11 底面板
12 ストッパ片
21 底敷板
22 前面板
23 後面板
24 接合片
25,26,27 熱罫線
27a フィラメントテープ
28 係合切欠
28a 指入凹所
29 補強部材
31 側面板
31a 把手穴
32 接合片
33 係合片
34,35 熱罫線
35a フィラメントテープ
36 保護部材
37 把手ハンドル
41 天面板
42 接合片
43 前フラップ
43a 錠受挿通穴
44 ガード片
45,46 熱罫線
45a,46a フィラメントテープ
51 前枠部
52 後枠部
53 側枠部
54 荷崩防止片
55 錠受具
55a 座部
55b 錠掛部
60 面ファスナ
61 錠
61a シャックル
W 溶着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12