(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】皮膚用化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20220831BHJP
A61K 8/26 20060101ALI20220831BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20220831BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/26
A61K8/81
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2019002314
(22)【出願日】2019-01-10
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(72)【発明者】
【氏名】入合 健仁
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/003850(WO,A1)
【文献】特開2000-034218(JP,A)
【文献】ボタニカルモイスチャーローション シトラスハーブの香り、明色化粧品、2018年2月21日、Cosmetic-Info.jp [online],[検索日 2022年6月20日], インターネット<URL:https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=59447>
【文献】ボタニカルモイスチャーローション シトラスハーブの香り、明色化粧品、Amazon.co.jp [online],[検索日 2022年6月20日], インターネット<URL:https://www.amazon.co.jp/ボタニカル-モイスチャーローション-シトラスハーブの香り/dp/B078H7KPKG>
【文献】Energizer Active After Shave Lotion, Speick Naturkosmetik, 2013年2月, Mintel GNPD [online],[検索日 2022年6月20日], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID:1971202
【文献】Whitening Gel Sticker, Kobayashi Pharmaceutical, 2005年6月, Mintel GNPD [online],[検索日 2022年6月20日], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID:362246
【文献】Moist Skin Gel, Able International, 2017年1月, Mintel GNPD [online],[検索日 2022年6月20日], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID:4561869
【文献】Lift Repair Essence Medicated, Yakult Honsha, 2018年12月, Mintel GNPD [online],[検索日 2022年6月20日], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID:6224431
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~成分(C)を含有し、
成分(A)の含有量が0.5~10質量%であり、成分(B)の含有量が0.05~2質量%であり、成分(C)の含有量が0.01~0.4質量%であり、成分(B)と成分(C)の質量の含有比(B)/(C)が0.1~40であることを特徴とする皮膚用化粧料。
成分(A)トリメチルグリシン
成分(B)
硫酸アルミニウムカリウム
成分(C)
(スチレン/ビニルピロリドン)コポリマー
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布後にしっとり感、引き締め感があり、さらに、被膜感が残ると同時に、速乾性がある皮膚用化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のスキンケア意識の向上に伴い、皮膚に対して様々な効果を謳う化粧料が多く上市されている。中でも、肌荒れを代表とする皮膚トラブルを避けるニーズに最もマッチしている機能の一つとして、皮膚にしっとり感を付与することが挙げられる。よって、市場において、皮膚のしっとり感に重きを置いた化粧料は、特に数多く存在している。皮膚にしっとり感を付与する成分としては、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコールや、トリメチルグリシン等のアミノ酸誘導体が挙げられるが、中でも皮膚に対するなじみの良さの観点から、トリメチルグリシンが広く使用されている。
【0003】
また、化粧料にしっとり感を求めるユーザーは、皮膚に付与されたしっとり感を逃がさず長時間持続させたいと考えることが多い。一般的には、皮膚に引き締め感や被膜感を付与することが、皮膚のしっとり感を逃がさず長時間持続させるのに効果的であると広く認識されている。そのため、しっとり感だけではなく、皮膚に引き締め感や被膜感を同時に付与することが強く望まれている。
【0004】
しかし、しっとり感を謳う一般的な化粧料は、塗布後にしっとり感を強く得ることができるが、その一方で、塗布後のぬるぬる感やじめじめ感が続いて不快である。そのため、しっとり感に重きを置く化粧料においては、引き締め感や被膜感だけではなく、塗布直後すぐにぬるぬる感やじめじめ感などの不快感を実感しなくなる快適性(以下、速乾性という)も大いに求められる。
【0005】
このため、塗布後にしっとり感、引き締め感があり、さらに、被膜感が残ると同時に、速乾性がある皮膚用化粧料が切に望まれていた。
【0006】
特許文献1には、トリメチルグリシンとアクリル酸系ポリマーを含有する、保湿性と伸びの良さを両立させた皮膚用化粧料が開示されている。
【0007】
特許文献2には、硫酸アルミニウムカリウム、トリメチルグリシンなどの電解質を多く含有する、安定性が良好な水性ゲル状化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-98224号公報
【文献】特開2010-202605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の技術は、しっとり感と伸びの良さを得ることができるものの、被膜感および速乾性に関しては検討されていない。
【0010】
特許文献2に記載の技術は、しっとり感と引き締め感を得ることができるものの、被膜感および速乾性に関しては検討されていない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、成分(A)トリメチルグリシン、成分(B)アルミニウムを含む金属塩より選択される1種以上、成分(C)スチレンを構成単量体単位として含む重合体より選択される1種以上を含有する皮膚用化粧料を提供することによって、本発明に至った。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、塗布後にしっとり感、引き締め感があり、さらに、被膜感が残ると同時に、速乾性がある皮膚用化粧料を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、含有量を示す単位は、特に明記しない限り全て質量%である。
【0014】
本発明は、次の成分(A)~成分(C)を含有し、成分(B)と成分(C)の質量の含有比(B)/(C)が0.1~40であることを特徴とする皮膚用化粧料である。
成分(A)トリメチルグリシン
成分(B)アルミニウムを含む金属塩より選択される1種以上
成分(C)スチレンを構成単量体単位として含む重合体より選択される1種以上
【0015】
本発明による皮膚用化粧料には、塗布後の皮膚のしっとり感の観点から、成分(A)トリメチルグリシン(以下、成分(A)という)を含有する。
【0016】
本発明に用いる成分(A)の含有量は、特に限定されないが、0.1~10%が好ましく、0.5~10%がより好ましく、1~10%がさらに好ましい。成分(A)の含有量が0.1%未満の場合、しっとり感が得られない恐れがあり、10%を超えた場合、べたつき感が強くなり不快感を得る恐れがある。
【0017】
本発明による皮膚用化粧料には、塗布後の皮膚の引き締め感の観点から、成分(B)アルミニウムを含む金属塩より選択される1種以上(以下、成分(B)という)を含有する。
【0018】
本発明に用いる成分(B)は、特に限定されないが、塗布後の皮膚の引き締め感の観点から、硫酸アルミニウムカリウム、塩化アルミニウム等が挙げられる。中でも塗布後の皮膚の引き締め感の観点から、硫酸アルミニウムカリウムが好ましい。これらは1種以上を選択して含有されてもよい。
【0019】
本発明に用いる成分(B)の含有量は、特に限定されないが、0.01~4%が好ましく、0.05~4%がより好ましく、0.1~4%がさらに好ましい。成分(B)の含有量が0.01%未満の場合、引き締め感を得にくい恐れがあり、4%を超えた場合、きしみが強くなり不快感を得る恐れがある。
【0020】
本発明による皮膚用化粧料には、塗布後の皮膚の被膜感の観点から、成分(C)スチレンを構成単量体単位として含む重合体より選択される1種以上(以下、成分(C)という)を含有する。
【0021】
本発明に用いる成分(C)は、特に限定されないが、塗布後の皮膚の被膜感の観点から、(スチレン/ビニルピロリドン)コポリマー、(スチレン/アクリレーツ)コポリマー等が挙げられる。中でも塗布後の皮膚の被膜感の観点から、(スチレン/ビニルピロリドン)コポリマーが好ましい。これらは1種以上を選択して含有されてもよい。
【0022】
本発明に用いる成分(C)の含有量は、特に限定されないが、塗布後の皮膚の被膜感の観点から、0.005~2%が好ましく、0.01~2%がより好ましく、0.02~2%がさらに好ましい。成分(C)の含有量が0.005%未満の場合、被膜感を得にくい恐れがあり、2%を超えた場合、成分(C)が析出して経時安定性を損なう恐れがある。
【0023】
本発明に用いる成分(B)と成分(C)の含有比(B)/(C)は、塗布後の皮膚の速乾性の観点から、0.1~40が好ましく、0.5~20がより好ましく、1~10がさらに好ましい。含有比(B)/(C)が0.1未満の場合、塗布後にべたつき感が強くなり速乾性が損なわれ、40を超えた場合、塗布後にきしみが出て速乾性が損なわれる。
【0024】
本発明による皮膚用化粧料の剤形は、特に限定されるものではないが、液状、ジェル状、水中油型エマルション等である。中でも、皮膚へのなじみの良さの観点から、液状が好ましい。
【0025】
本発明による皮膚用化粧料の剤形が液状である場合、粘度は特に限定されるものではないが、25℃において200mPa・s以下であることが好ましい。
【0026】
本発明における粘度は、常法により調製した当該化粧料をサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、25℃で24時間静置した後に、ヘリカルスタンド付B型粘度計(モデル:デジタル粘度計TVB-10M、東機産業株式会社製)により、M1号ローターを用いて25℃、30rpmで1分間回転させた後に測定したものである。
【0027】
本発明による皮膚用化粧料は、本発明の効果を奏していれば、その他、水、油剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、増粘剤、溶剤、ビタミン類、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、キレート剤、抽出液、発酵液、着色剤、精油、香料等を含有することができ、これらは1種以上含有してもよい。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0029】
表1~4に示される評価試験において、成分および含有量を種々変更しながら皮膚用化粧料を常法により調製した。
【0030】
本明細書に示す評価試験において、「しっとり感」、「引き締め感」、「被膜感」、「速乾性」に関して以下方法で評価を行った。
【0031】
専門のパネラー10名が実施例および比較例で得られた各皮膚用化粧料を使用し、各項目に関する評価を行った。具体的には、室温20℃、湿度50%に調整された条件下にて、顔面全体に2g塗布して1分経過後、各項目に関して官能にて評価した。各人が項目毎に5点(非常に良好)、4点(より良好)、3点(良好)、2点(不良)、1点(非常に不良)の5段階で評価して全員の平均点を算出した後、下記判定基準に従って判定した。
(平均点の判定基準)
4.0点以上 : 5
3.5点以上4.0点未満 : 4
3.0点以上3.5点未満 : 3
2.0点以上3.0点未満 : 2
2.0点未満 : 1
【0032】
(第1評価試験)
第1評価試験において、成分(A)の含有量に関して皮膚用化粧料を評価した。表1に、皮膚用化粧料の成分とその含有量および評価結果を示す。
【0033】
【0034】
表1に示す実施例1~5より、しっとり感、引き締め感、被膜感および速乾性に関して良好な結果を得た。
【0035】
(第2評価試験)
第2評価試験において、成分(B)の種類、含有量および成分(B)と成分(C)の含有比(B)/(C)に関して皮膚用化粧料を評価した。表2に、皮膚用化粧料の成分とその含有量および評価結果を示す。
【0036】
【0037】
表2に示す実施例6~13より、しっとり感、引き締め感、被膜感および速乾性に関して良好な結果を得た。
【0038】
(第3評価試験)
第3評価試験において、成分(C)の種類、含有量および成分(B)と成分(C)の含有比(B)/(C)に関して皮膚用化粧料を評価した。表3および表4に、皮膚用化粧料の成分とその含有量および評価結果を示す。
【0039】
【0040】
【0041】
表3に示す実施例14~24より、しっとり感、引き締め感、被膜感および速乾性に関して良好な結果を得た。
【0042】
以下に皮膚用化粧料の実施例25および実施例26を記載する。
【0043】
実施例25および実施例26により得られた皮膚用化粧料は、しっとり感、引き締め感、被膜感および速乾性に関して良好な結果を得た。
【0044】
実施例25
成 分 含有量(%)
(A)トリメチルグリシン 3.00
(B)硫酸アルミニウムカリウム 0.20
(C)(スチレン/ビニルピロリドン)コポリマー 0.06
グリセリン 9.00
エタノール 2.00
1,3-ブチレングリコール 2.00
エデト酸二ナトリウム 0.01
クエン酸 0.01
クエン酸ナトリウム 0.35
メチルパラベン 0.15
フェノキシエタノール 0.30
グリチルリチン酸ジカリウム 0.10
水溶性コラーゲン ※1 0.10
カミツレ花エキス ※2 0.10
乳酸桿菌/ブドウ果汁発酵液 ※3 0.10
乳酸桿菌/ローヤルゼリー発酵液 ※4 0.10
ビルベリー葉エキス ※5 0.10
水 82.32
合 計 100.00
【0045】
実施例26
成 分 含有量(%)
(A)トリメチルグリシン 3.00
(B)硫酸アルミニウムカリウム 0.20
(C)(スチレン/ビニルピロリドン)コポリマー 0.06
グリセリン 9.00
エタノール 2.00
1,3-ブチレングリコール 3.50
エデト酸二ナトリウム 0.01
クエン酸 0.01
クエン酸ナトリウム 0.35
メチルパラベン 0.15
フェノキシエタノール 0.30
水溶性コラーゲン ※1 0.10
カミツレ花エキス ※2 0.10
コメヌカエキス ※6 0.10
桜美精(テクノーブル社製) 0.10
和美乃盆盆 (一丸ファルコス社製) 0.10
水 80.92
合 計 100.00
【0046】
※1:シタビラメコラーゲン(一丸ファルコス社製)
※2:オーガニックカミツレエキスBG-50(香栄興業社製)
※3:ファーメンテージ シャルドネ B(一丸ファルコス社製)
※4:ラクトローヤル-J(テクノーブル社製)
※5:キュアベリー(一丸ファルコス社製)
※6:つや姫米ぬかエキス(日油社製)
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、塗布後にしっとり感、引き締め感があり、さらに、被膜感が残ると同時に、速乾性がある皮膚用化粧料を提供できる。