(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】細胞培養装置
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20220831BHJP
C12N 5/0775 20100101ALN20220831BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12N5/0775
(21)【出願番号】P 2020037940
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】517000379
【氏名又は名称】株式会社フルステム
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千葉 俊明
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-148556(JP,A)
【文献】国際公開第2015/040554(WO,A1)
【文献】特開2004-313008(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141401(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/160000(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
C12N 1/00- 7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端に平坦な底部を有し、細胞を培養するための足場が充填される中空な空間部を備える略円柱体である細胞培養容器と、
強磁性体からなる複数の第1磁着体を周辺部に等間隔で備え、前記細胞培養容器の中空な空間部内に前記細胞培養容器の内壁と非接触状態で水平に配置される、前記細胞培養容器の略円柱体の直径よりも微小な直径の略円盤状の皿状体と、
前記皿状体の各々の第1磁着体を磁力により引き付けるように、前記皿状体の各々の第1磁着体と対応する磁石からなる複数の第2磁着体を備え、前記細胞培養容器の外側に位置して環内部に前記細胞培養容器を位置させ、上方向に移動することで磁力により連動して前記皿状体を上方向に移動させて前記細胞培養容器の中空な空間部内に充填された足場を下方から押し上げ、下方向に移動することで磁力により連動して前記皿状体を下方向に移動させ、前記細胞培養容器の中空な空間部内に充填された足場を重力落下させる、上下方向に移動する略リング状の環状体と、
前記環状体が前記細胞培養容器の底部よりも下方向に移動して格納される、強磁性体からなる格納部と、を有することを特徴とする細胞培養装置。
【請求項2】
前記格納部は、前記環状体の底部を周状に囲う底部周壁と、前記環状体の外側を周状に囲い前記底部周壁の外側に設けられる外側周壁と、前記環状体の内側を周状に囲い前記底部周壁の内側に設けられる内側周壁と、を有することを特徴とする請求項1に細胞培養装置。
【請求項3】
前記環状体は、その内部に前記第2磁着体が隙間を有して径方向に摺動可能に収納される収納部と、各々の第2磁着体と対応し、前記収納部の径方向外側に設けられる強磁性体からなる複数の第3磁着体と、を有し、
前記環状体が前記細胞培養容器の底部よりも下方向に移動して前記格納部に格納される際は前記第2磁着体は磁力により前記第3磁着体に引き寄せられて前記収納部内を摺動して径方向外側に移動し、
前記環状体が前記細胞培養容器の底部よりも上方向に移動して前記皿状体と並ぶ際は前記第2磁着体は磁力により前記第1磁着体に引き寄せられて前記収納部内を摺動して径方向内側に移動することを特徴とする請求項1又は2に記載の細胞培養装置。
【請求項4】
前記
第3磁着体の質量は前記第1磁着
体の質量よりも小さいことを特徴とする請求項3に記載の細胞培養装置。
【請求項5】
前記収納部は、その内側面と前記第2磁着体の外側面とが密着することで前記第2磁着体の径方向に摺動する以外の動きを規制する前記環状体の径方向に伸びる柱状中空部と、前記柱状中空部の径方向外側に位置する広がり部とを有することを特徴とする請求項3又は4に記載の細胞培養装置。
【請求項6】
前記第2磁着体は、前記環状体の径方向外側の端部に、前記広がり部内に位置するストッパ部を有し、前記環状体の径方向に垂直な断面積は、前記柱状中空部、前記ストッパ部、前記広がり部の順で大きいことを特徴とする請求項5に記載の細胞培養装置。
【請求項7】
前記細胞培養容器内に充填される足場は、複数の細胞支持小片の集合体である、ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の細胞培養装置。
【請求項8】
前記培養される細胞は間葉系幹細胞である、ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の細胞培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単純な動作で培地の攪拌並びに細胞への栄養供給及び酸素化を可能とし、大量の細胞培養を可能とする細胞培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多能性幹細胞(胚性幹細胞、人工多能性幹(iPS)細胞)は、その無限増殖能及び多分化能から、再生医療の重要な細胞ソースとして認識されている。幹細胞を利用した再生医療としては、例えば、肝硬変や血液疾患、心筋梗塞の治療、血管の構築、骨や角膜の再生、移植用皮膚の確保等が考えられている。再生医療では、培養皿内で幹細胞等から目的とする細胞や臓器を増殖させ、人に移植するようにしている。最近では、骨髄由来の幹細胞から血管新生を行い、狭心症、心筋梗塞等の治療に成功している。
【0003】
近年、医薬品の生産や、遺伝子治療、再生医療、免疫療法等の分野において、幹細胞を人工的な環境下で効率良く大量に培養する細胞培養装置が求められている。
【0004】
図8は従来の細胞培養装置を説明するものである。
図8に示されるように従来の細胞培養装置は第1のチャンバー810と、多孔性の足場820と、第2のチャンバー830と、を備える。第2のチャンバー830は、圧縮及び減圧可能なベロー形状を有する。
図8では、第2のチャンバー830は非圧縮形状であり、第2のチャンバーに培養溶液が充填された状態であり、足場820はガス環境に間接的にさらされて細胞は酸素化を受ける。
図9では、第2のチャンバー830が圧縮形状となることで、培養溶液は上方へ押し上げられて第1のチャンバー810内に移動し、足場820は培養溶液に浸漬されて細胞は栄養供給を受ける。再び、
図8にもどり、第2のチャンバー830が非圧縮形状となることで、培養溶液は下方へ移動して第2のチャンバー830に培養溶液が充填された状態となる。
【0005】
しかし、上述の細胞培養装置では、第2のチャンバー830はベロー形状であるため、第2のチャンバー830へ移動した細胞がベロー形状の外側への凸部分に入り込み、以後は第2のチャンバー830の圧縮及び非圧縮による培養溶液の上下の移動の影響を受けにくくなり、酸素化が困難となる虞がある。また、第2のチャンバー830、特に中心部は、圧縮状態のベロー形状であっても、その構造から培養液を第1のチャンバー810へ完全に戻す事が出来ない。故に、多孔性の足場820に対して細胞を播種するには、第1のチャンバー810に細胞懸濁液を入れ静置、もしくはベロー形状を圧縮及び非圧縮させながら細胞接着させるが、発生する死空間及び死容量により、接着させる事ができない細胞懸濁液が存在することになり非効率である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、簡易な構造でありながらも細胞への十分な栄養供給及び酸素化を可能とし、適切な幹細胞の大量培養を可能とする細胞培養装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる細胞培養装置は、下端に平坦な底部を有し、細胞を培養する培地が充填される中空な空間部を備える略円柱体である細胞培養容器と、磁石又は強磁性体からなる複数の第1磁着体を周辺部に等間隔で備え、前記細胞培養容器の中空な空間部内に水平に配置された、前記細胞培養容器の略円柱体の直径よりも微小な直径の略円盤状の皿状体と、前記皿状体の各々の第1磁着体を磁力により引き付けるように、前記皿状体の各々の第1磁着体と対応する磁石からなる複数の第2磁着体を備え、前記細胞培養容器の外側に位置して環内部に前記細胞培養容器を位置させ、上方向に移動することで磁力により連動して前記皿状体を上方向に移動させて前記細胞培養容器の中空な空間部内に充填された培地を下方から押し上げ、下方向に移動することで磁力により連動して前記皿状体を下方向に移動させ、前記細胞培養容器の中空な空間部内に充填された培地を重力落下させる、上下方向に移動する略リング状の環状体と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な構造でありながらも細胞への十分な栄養供給及び酸素化を可能とし、且つ適切な幹細胞の大量培養が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態にかかる細胞培養装置の外観を説明する図である。
【
図2】本実施形態にかかる細胞培養装置の皿状体付近を詳細に説明する図である。
【
図3】本実施形態にかかる細胞培養装置の細胞培養容器の底部付近を詳細に説明する図である。
【
図4】本実施形態にかかる細胞培養容器の底部よりも下方に設けられる格納部を説明する図である。
【
図5】本実施形態にかかる細胞培養容器の環状体を説明する平面図であり、そのうち(a)は第2磁着体が径方向外側へ摺動している状態であり、(b)は第2磁着体が径方向内側へ摺動している状態である。
【
図6】第2磁着体が径方向内側へ摺動している状態を拡大して説明する図である。
【
図7】第2磁着体が径方向外側へ摺動している状態を拡大して説明する図である。
【
図8】ベロー形状のチャンバーが非圧縮形状である従来の細胞培養装置を説明する図である。
【
図9】ベロー形状のチャンバーが圧縮形状である従来の細胞培養装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
【0012】
(1)第1実施形態
本実施形態にかかる細胞培養装置900は、
図1に示されるように、略円柱体である細胞培養容器100と、略円盤状の皿状体200と、略リング状の環状体300と、環状体300が格納される格納部400と、を有する。略円柱体とは、水平面での断面が円のみならず、楕円や小判形状等も包含する柱体である。略円盤状とは、平面視にて円のみならず、楕円や小判形状等も包含する形状である。略リング状とは、平面視にて円環状体のみならず、楕円環状体や小判形状の環状体も包含する形状である。
【0013】
細胞培養容器100は、上端に図示されない開口部を有し、下端に平坦な底部120を有する。細胞培養容器100は、細胞を培養するための足場が充填される中空な空間部130を備える。細胞培養容器100の上端の開口部からは足場、培地、培養対象である細胞を入れることができる。
【0014】
培養対象となる細胞は、特に限定されるものでなく、細胞障害を受けにくい細胞及び細胞障害を受けやすい細胞のいずれも可能であるが、好ましくは細胞障害を受けやすい細胞であり、より好ましくは、ヒト胚性幹(ES)細胞、iPS細胞、体性幹細胞等が挙げられる。体性幹細胞としては、例えば脂肪由来や骨髄由来の間葉系幹細胞が好ましい。また使用される培地は液体培地であり、例えばグルコース等を包含する。
【0015】
細胞培養容器100の寸法は、特に限定されるものではないが、例えば容積が250 ml(口径100mm、高さ50mm、底100mm)、500 ml(口径100mm、高さ100mm、底100mm)又は1000 ml(口径100mm、高さ200mm、底100mm)等とすることができる。
【0016】
細胞培養容器100は、細胞が容器内壁に付着しにくい細胞非接着性の容器であり、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン等の付着性の低いプラスチック製あるいは、フッ素加工、シリコン加工のような疎水性表面加工を施したプラスチック製又はガラス製の容器である。
【0017】
細胞培養容器100で培養された細胞は、振動装置700の振動部710により上下方向の振動が加えられる。振動装置700は、特に限定されるものではないが例えばボルテックスである。
【0018】
細胞培養容器100の空間部130に充填される足場は、例えば三次元多孔性足場である。3次元多孔性足場は、例えば平均間隙率が50~90%、好ましくは80~90%であり、平均ポアサイズが10~800μm、好ましくは200~400μmである。足場は、単一の足場、又は、複数の細胞支持小片の集合体からなる足場である。足場の培養面積は特に限定されるものではないが、例えば800~900000 cm2であり、好ましくは800~45000 cm2である。足場が複数の細胞支持小片の集合体からなる足場の場合、例えば、熱可塑性樹脂製の繊維からなる繊維集合体(不織布、織物、編み物等)であってもよいし、熱可塑性樹脂を予め混練した後、成形して作製したシートの集合体であってもよい。
【0019】
図2に示されるように、皿状体200は、複数の第1磁着体210を周辺部に等間隔で備える。皿状体200は、例えば厚み15 mm、外径95 mm、内径68 mmである。第1磁着体210は、培養細胞への影響を考慮して、強磁性体の金属である。例えば第1磁着体210は鉄、コバルト、ニッケルを主成分とする金属である。なお、第1磁着体210を磁石とする場合は、培養細胞への影響を抑制するため磁力の低い磁石することが好ましい。
【0020】
第1磁着体210の形状は、特に限定されるものではないが、例えば直径10 mm高さ10 mmの円柱体とすることができる。本実施形態においては、6個の第1磁着体210を略円盤状の皿状体200の周辺部に60度の等間隔で備える。第1磁着体210の磁力は鉄の場合には0ガウスである。皿状体200は、細胞培養容器100の中空な空間部内に水平に配置される。略円盤状の皿状体200は、細胞培養容器100の略円柱体の直径よりも微小な直径を有する。具体的には、細胞培養容器100の略円柱体の内径をD1とすると、略円盤状の皿状体200の直径D2は、0.90D1~0.998D1とすることが可能である。そのため略円盤状の皿状体200は、細胞培養容器100の内面に接触しない。なお、略円盤状の皿状体200の外周部に等間隔で配置された車輪を設け、それらの車輪と細胞培養容器100の内面とは接触させることは可能である。
【0021】
略リング状の環状体300は、細胞培養容器100の外側に位置して環内部に細胞培養容器100を位置させる。環状体300の厚みは、例えば皿状体200と同じであり15 mmである。略リング状の環状体300は、皿状体200の各々の第1磁着体210と対応するように磁石からなる複数の第2磁着体310を備える。第2磁着体310の形状は、特に限定されるものではないが、例えば直径10 mm高さ16 mmの円柱体とすることができる。第2磁着体310の磁力は、例えば永久磁石では4500~4800ガウスである。皿状体200の第1磁着体210の一方側の端部と、環状体300の第2磁着体310の他方の側の端部との間の距離は、例えば0.1mm~10.0mmである。環状体300の各々の第2磁着体310と皿状体200の各々の第1磁着体210とは対応するため、環状体300が細胞培養容器100に沿って上下移動している場合は、環状体300の高さ(即ち、鉛直方向の位置)と皿状体200の高さとは一致する。環状体300の高さと皿状体200の高さとが一致することを環状体300と皿状体200とが鉛直方向の高さにて並ぶと表現することも可能である。
【0022】
皿状体200の中央部には複数の貫通孔220が設けられている。貫通孔220の孔径は、特に限定されるものではないが例えば1mm~5mmとすることが可能である。
【0023】
環状体300は、昇降装置320により支持され且つ上下移動を行う。環状体300は上下移動を行うため、磁力により環状体300と連動する皿状体200も上下移動を行う。これにより培地の攪拌、並びに、細胞への酸素化及び栄養供給が可能となる。環状体300の上下移動の運動は、例えば単振動運動、又は、略単振動運動である。環状体300の上下移動の周期は、例えば0.5回/時間~12.0回/時間とすることが可能である。略単振動運動は、例えば、下方から上方へ移動しで一定時間停止し、次に上方から下方へ移動し一定時間停止し、再び下方から上方へ移動する運動の繰返しの運動である。環状体300の上下移動のストローク長さは、細胞培養容器100の高さよりも大きい。具体的には環状体300は細胞培養容器100の上部近傍から細胞培養容器100の底部120よりも更に下方までの範囲を上下移動することができ、環状体300の上下移動のストローク長さは例えば80mm~260mmとすることが可能である。環状体300の上方向又は下方向への移動速度は、例えば0.5mm/秒~10.0mm/秒とすることが可能である。
【0024】
図3に示されるように、細胞培養容器100は、その底部120の中央部に上方へ突出する内部が空間部である底部凸部125を有する。換言すれば、細胞培養容器100は、その底部120の中央部に底部凸部125に対応する形状の底部凹部126を有する。例えば、細胞培養容器100の底部120の直径が100 mmの場合、底部凹部126の深さは8 mmであり、底部凹部126の内部の直径は60 mmである。振動装置700の振動部710は、底部凹部126に隙間無くはめ込まれる。
【0025】
皿状体200は、細胞培養容器100の底部凸部125がはめ込まれる皿凹部230をその下面の中央部に備える。なお、
図3においては、細胞培養容器100の底部凸部125と皿状体200の皿凹部230との間には間隙が記載されているが、底部凸部125は皿凹部230に隙間無くはめ込まれるものであっても良い。
【0026】
図4に示されるように、細胞培養容器100の底部120よりも下方には格納部400が設けられる。環状体300が細胞培養容器100の底部120よりも下方向に移動して環状体300は格納部400に格納される。略リング状の環状体300が格納されるように格納部400は平面視で略リング状である。
【0027】
格納部400は強磁性体から構成され具体的には鉄、コバルト、ニッケルを主成分とする金属で構成される。格納部400は強磁性体から構成されるため、格納部400内に環状体300が格納された場合、環状体300内部の第2磁着体310の外部への磁力の作用は格納部400により低減されるので、第2磁着体310の培養細胞への磁力の影響を抑制することができる。
【0028】
格納部400は、環状体300の底部を周状に囲う底部周壁401と、環状体400の外側を周状に囲い底部周壁401の外側に設けられる外側周壁403と、環状体400の内側を周状に囲い底部周壁401の内側に設けられる内側周壁402と、を有する。底部周壁401、内側周壁402及び外側周壁403の厚みは、第2磁着体310の磁力を外部へ遮蔽する観点から定められ、特に限定されるものではないが例えば0.1mm以上2mm以下、好ましくは0.5mm以上1.5mm以下、より好ましくは0.8mm以上1.2mm以下である。
【0029】
格納部400の底部周壁401と細胞培養容器100の底部120との間の距離は、特に限定されるものではないが例えば30mm以上200mm以下であり、好ましくは40mm以上150mm以下であり、より好ましくは50mm以上100mm以下である。
【0030】
内側周壁402と外側周壁403とは同じ高さにて形成されても良いし異なる高さにて形成されても良い。内側周壁402及び外側周壁403の高さはともに環状体300内部の第2磁着体310の高さよりも長いほうが好ましく、特に限定されるものではないが例えば12mm以上50mm以下、好ましくは18mm以上40mm以下、より好ましくは24mm以上30mm以下である。
【0031】
次に本実施形態にかかる細胞培養装置の使用態様について説明する。
【0032】
まず、細胞培養容器100の中空な空間部130内に配置された皿状体200を、細胞培養容器100の下部近傍に位置させる。この場合、環状体300の高さと皿状体200の高さとは一致するため、環状体300も細胞培養容器100の下部近傍に位置する。なお、環状体300の高さと皿状体200の高さが一致するとは、第2磁着体310の鉛直方向の中心部と第1磁着体210の鉛直方向の中心部との高さが一致することを意味する。そして、細胞培養容器100の上端の図示されない開口部から、細胞培養容器100の空間部130へ足場、培地、及び、培養対象である細胞を入れる。
【0033】
次に、細胞培養容器100の下部近傍に位置していた環状体300を上方向に移動させる。環状体300の各々の第2磁着体310と皿状体200の各々の第1磁着体210とは対応しており、磁力により環状体300と皿状体200とが連動して、皿状体200も上方向に移動する。皿状体200が上方向へ移動することで、細胞培養容器100の中空な空間部130内に充填された足場及び足場に付着している細胞は、皿状体200により下方から押し上げられて上方へ移動する。皿状体200は上方へ移動するが、皿状体200の中央部には複数の貫通孔220が設けられているため、細胞培養容器100の空間部130内の培地は上方へ押し上げられず貫通孔220を通過し、その際には培地が撹拌される。
【0034】
次に、環状体300は、皿状体200を細胞培養容器100の上部近傍にて位置させて移動を止める。皿状体200が細胞培養容器100の上部近傍にて位置するとは、細胞培養容器100の高さをL(高さLは、細胞培養容器100の上端の開口部から底部120までの距離とする。)とすると、皿状体200が細胞培養容器100の上端から下方へ例えば0.3L~0.7Lの距離だけ離間した位置である。皿状体200が細胞培養容器100の上部近傍にて位置する場合、培地は上方へ押し上げられていないため、例えば細胞は酸素化を受けることが可能である。
【0035】
次に、環状体300を下方向に移動させる。磁力により環状体300と皿状体200とが連動して、皿状体200も下方向に移動する。皿状体200が下方向へ移動することで、足場及び足場に付着している細胞は重力落下し、培地に浸漬されて細胞は栄養供給を受ける。
【0036】
環状体300が下方向に移動し続けて細胞培養容器100の下部近傍にて位置すると、皿状体200は細胞培養容器100の底部凸部125に接触し、皿状体200の皿凹部230が細胞培養容器100の底部凸部125に隙間無くはめ込まれて停止する。
【0037】
その後、環状体300は細胞培養容器100の底部120よりも更に下方へ移動し、
図4に示されている格納部400内に格納される。環状体300が格納部400内に格納されることで環状体300内部の第2磁着体310の培養細胞への磁力作用が低減される。
【0038】
格納部400内に環状体300を一定時間格納した後、格納部400内に格納されている環状体300を上方向に移動させる。環状体300が上方向に移動し続けて細胞培養容器100の下部近傍にて、環状体300の高さと皿状体200の高さとが一致した場合、環状体300の各々の第2磁着体310と皿状体200の各々の第1磁着体210とが対応することで、磁力により環状体300と皿状体200とが連動して、皿状体200も上方向に移動する。
【0039】
培養後は、皿状体200の皿凹部230を細胞培養容器100の底部凸部125に隙間無くはめ込み、そして、振動装置700の振動部710を細胞培養容器100の底部凹部126に隙間無くはめ込む。この状態で振動装置700を作動させ、振動部710から例えば上下方向の振動を細胞培養容器100内の培養細胞へ伝える。これにより3次元多孔性足場の奥深くに埋没した培養細胞を回収し易くなる。
【0040】
このようにして、第1実施形態では、培養細胞への磁力の影響を抑制しつつ細胞への酸素化及び栄養供給を可能とする。
【0041】
(2)第2実施形態
多数枚の不織布シート等のように大量の足場を使用すると、足場の重量のために皿状体200の上昇運動が阻害される虞がある。大量の足場を使用した場合でも皿状体200の上昇運動を適切に行わせるためには、第1磁着体210と第2磁着体との磁力の作用を適切に担保する必要があり、そのためには第1磁着体210と第2磁着体310との距離を縮める必要がある。しかしながら第1磁着体210と第2磁着体310との距離を縮めた場合、予期せぬ外力が細胞培養装置900に加わると、格納部400内に格納された環状体300が上昇をする際に細胞培養容器100の底部120に衝突をする虞もある。そのためには皿状体200が上昇運動する際には環状体300内の第2磁着体310を皿状体200側へ引き寄せる必要がある一方で、格納部400内に格納された環状体300が上昇をする際には環状体300内の第2磁着体310は皿状体200とは反対側に移動していることが好ましい。
【0042】
上述の問題を解決するために、本実施形態にかかる細胞培養装置900では、前述の第1実施形態の構成に加えて、環状体300に特徴的構成を有する。即ち、本実施形態にかかる細胞培養装置900では、
図5(a)(b)に示されるように、環状体300はその内部に第2磁着体310が収納される収納部350を有する。収納部350は第2磁着体310が環状体300の径方向に摺動可能となるようにその内部に隙間を有している。これにより第2磁着体310は径方向に摺動可能に収納部350に収納されている。
【0043】
収納部350は、環状体300の径方向に伸びる柱状中空部351と、その柱状中空部351の径方向外側に位置する広がり部352とを有する。柱状中空部351の柱体断面と第2磁着体310の断面とは同じ形状であり、柱状中空部351の内側面と第2磁着体310の外側面とは密着し、これにより第2磁着体310が径方向に摺動する以外の動きが規制される。即ち第2磁着体310は環状体300の径方向に摺動運動のみ行い、例えば環状体300の径方向に垂直な方向へは移動しない。
【0044】
広がり部352は柱状中空部351と空間的に連続している。
図5(a)(b)に示されるように、環状体300の径方向に垂直な断面積は、柱状中空部351よりも広がり部352が大きい。
【0045】
第2磁着体310は、環状体300の径方向外側の端部にストッパ部370を有する。
図5(a)(b)に示されるように、環状体300の径方向に垂直な断面積は、柱状中空部351よりもストッパ部370が大きく、ストッパ部370よりも広がり部352が大きい。ストッパ部370は広がり部352内に位置する。ストッパ部370の環状体300の径方向の長さ(即ちストッパ部370の厚み)は例えば1.5mmである。
【0046】
環状体300は、収納部350の径方向外側に第3磁着体360を備える。即ち、
図5(a)(b)に示されるように、環状体300には、広がり部352の径方向外側に第3磁着体360が設けられる。第3磁着体360は第1磁着体210と同様に強磁性体の金属である。例えば第3磁着体360は鉄、コバルト、ニッケルを主成分とする金属である。第3磁着体360の質量は第1磁着体210の質量よりも小さい。なお、第3磁着体360を磁石とする場合は、培養細胞への影響を抑制するため磁力の低い磁石することが好ましい。
【0047】
なお上述したように第2実施形態にかかる構成では、第1実施形態と異なり、環状体300は、第2磁着体310を摺動可能に収納する収納部350と、第3磁着体360と、ストッパ部370と、を有するが、この特徴的構成を引寄せ機構(後述するように、環状体300の高さと皿状体200との高さが一致した場合、第2磁着体310は第3磁着体360ではなく第1磁着体210に引き寄せられる機構を有するため)と称することが可能である。
【0048】
次に本実施形態にかかる細胞培養装置の使用態様について説明する。
【0049】
まず、細胞培養容器100の中空な空間部130内に配置された皿状体200を、細胞培養容器100の下部近傍に位置させる。このとき、環状体300の高さと皿状体200の高さとは一致しており、環状体300も細胞培養容器100の下部近傍に位置する。
【0050】
第2磁着体310は磁石であるが、第1磁着体210及び第3磁着体360は強磁性体からなる金属である。そして第3磁着体360の質量は第1磁着体210の質量よりも小さい。これにより環状体300の高さと皿状体200との高さが一致した場合、第2磁着体310は第3磁着体360ではなく第1磁着体210に引き寄せられることになり、
図5(b)及び
図6に示されるように、環状体300内部の第2磁着体310は、収納部350内で摺動して、環状体300の径方向内側へ移動している。径方向内側とは環状体300の中心部へ向かう側である。なお、第2磁着体310は磁石であり第1磁着体210は強磁性体からなる金属であるため、磁力による作用は第2磁着体310から第1磁着体210へ及ぼされるが、第1磁着体210は皿状体200に固定されており、第2磁着体310は環状体300の径方向に摺動可能であるため、第2磁着体310は第1磁着体210に引き寄せられるという説明になる。
【0051】
図5(b)に示されるように、環状体300の径方向に垂直な断面積は、柱状中空部351、ストッパ部370、広がり部352の順で大きいので、第2磁着体310が第1磁着体210に引き寄せられる場合、ストッパ部370が広がり部352の径方向内側の端部に当接し、これにより第2磁着体310の径方向内側の端部と細胞培養容器100の外側面との間には微少な距離L2の隙間が生じることになる。距離L2は特に限定されるものではないが例えば0.05mm~0.15mmであり好ましくは0.1mmである。
図5(b)に示されるように、ストッパ部370の径方向外側の端部と広がり部352の径方向内側の端部との間には隙間が生じるがその距離は例えば2.2mmである。
【0052】
次に、細胞培養容器100の下部近傍に位置していた環状体300を上方向に移動させる。環状体300の各々の第2磁着体310と皿状体200の各々の第1磁着体210とは対応しており、磁力により環状体300と皿状体200とが連動して、皿状体200も上方向に移動する。第1磁着体210と第2磁着体310とが微少な距離L2にて接近しているから、例えば多数枚の不織布シート等のように大量の足場を使用した場合にあっても、足場の重量のために皿状体200の上昇運動が阻害される虞はない。
【0053】
次に、環状体300は、皿状体200を細胞培養容器100の上部近傍にて位置させて移動を止める。皿状体200が細胞培養容器100の上部近傍にて位置する場合、培地は上方へ押し上げられていないため、例えば細胞は酸素化を受けることが可能である。
【0054】
次に、環状体300を下方向に移動させる。磁力により環状体300と皿状体200とが連動して、皿状体200も下方向に移動する。足場及び足場に付着している細胞は重力落下し、培地に浸漬されて細胞は栄養供給を受ける。
【0055】
環状体300が下方向に移動し続けて細胞培養容器100の下部近傍にて位置すると、皿状体200は細胞培養容器100の底部凸部125に接触し、皿状体200の皿凹部230が細胞培養容器100の底部凸部125にはめ込まれる。
【0056】
次に、皿状体200は細胞培養容器100の底部凸部125にはめ込まれたままであるが、環状体300は細胞培養容器100の底部120よりも更に下方へ移動する。環状体300が下方へ移動するにつれて、第2磁着体310と第1磁着体210との距離が大きくなり、第1磁着体210に引き寄せられていた第2磁着体310はついには第1磁着体210ではなく第3磁着体360に引き寄せられ、
図5(a)及び
図7に示されるように、第2磁着体310は、収納部350内で摺動して、環状体300の径方向外側へ移動する。径方向外側とは環状体300の中心部から離れる側である。なお、第2磁着体310は磁石であり第3磁着体360は強磁性体からなる金属であるため、磁力による作用は第2磁着体310から第3磁着体360へ及ぼされるが、第3磁着体360は環状体300に固定されており、第2磁着体310は環状体300の径方向に摺動可能であるため、第2磁着体310は第3磁着体360に引き寄せられるという説明になる。ストッパ部370は広がり部352の径方向外側の端部に当接し、これにより第2磁着体310の径方向内側の端部と細胞培養容器100の外側面との間は距離L1の間隔となる。距離L1は特に限定されるものではないが例えば2.1mm~2.5mmであり好ましくは2.3mmである。
【0057】
次に、
図4に示されるように、細胞培養容器100の底部120よりも下方に設けられている格納部400に環状体300が格納される。環状体300が格納部400に格納されている場合、第2磁着体210は第3磁着体360に引き寄せられており、ストッパ部370は広がり部352の径方向外側の端部に当接している。格納部400内に環状体300が格納された場合、第2磁着体310の外部への磁力の作用は格納部400により低減され、培養細胞への磁力の影響を抑制することができる。
【0058】
次に、格納部400内に格納されている環状体300を上方向に移動させる。第2磁着体310の径方向内側の端部と細胞培養容器100の外側面とは距離L1離間しているので、環状体300の上端部と細胞培養容器100の底部120との高さが等しくなる時、仮に予期せぬ外力が働いたとしても、環状体300の第2磁着体310は細胞培養容器100に当接する虞は極めて少ない。
【0059】
更に環状体300が上方向に移動し、環状体300の高さと皿状体200の高さとが一致する付近の高さまで環状体300が上昇した場合、
図5(b)及び
図6に示されるように、第2磁着体310は第3磁着体360ではなく第1磁着体210に引き寄せられることになり、第2磁着体310は収納部350内で摺動して環状体300の径方向内側へ移動し、第1磁着体210と第2磁着体310とが距離L2にて接近する。この状態で環状体300と皿状体200とが連動して皿状体200も上方向に移動する。
【0060】
このようにして、第2実施形態では、大量の不織布シートを入れた場合でも環状体300の的確な上下運動を担保し、且つ、培養細胞への磁力の影響を抑制しつつ細胞への酸素化及び栄養供給を可能とする。
【実施例】
【0061】
(実施例1)
本実施例では環状体を格納する格納部を有する細胞培養装置(第1実施形態の細胞培養装置)を使用した細胞培養の実施例を示す。
【0062】
細胞培養容器の中空な空間部内に配置された皿状体を、細胞培養容器の下部近傍に位置させた。細胞培養容器の上端の開口部から、細胞培養容器の空間部へ足場、培地、及び、培養対象である細胞を入れた。細胞は2.0×107個の脂肪由来間葉系幹細胞(ADSC)であった。足場はCESCO社のBioNOC IIマトリックスを500枚使用した(3D培養)。環状体の上下移動のストローク長さは90mmであった。即ち細胞培養容器の高さは60mmであり、細胞培養容器の底部と格納部との距離は30mmであった。環状体の上方向又は下方向への移動速度は1.0mm/秒とした。環状体の上下移動の周期は1.0回/時間とした。培養日数は7日であった。
【0063】
細胞の糖消費量をGlucCellハンディ・グルコースモニター(CESCO社)を用いて測定したところ、日数が増加するにつれて細胞の糖消費量が上昇しており、本実施例にかかる細胞培養装置を使用することにより、適切に細胞が培養されたことが判明した。
【0064】
7日目に、細胞培養容器内から3.0×108個の大量のADSCを回収した。なお、3次元多孔性足場の奥深くに埋没した培養細胞にダメージを与えることなく効率的に回収することは困難であるが、培養後に、細胞培養容器内に、トリプシン-EDTA及びカゼイナーゼを有する酵素溶液を添加して培養細胞に酵素処理を行うことにより大量に培養細胞を細胞培養容器から回収できる。
【0065】
回収したADSCが正常な核型を保持しているか解析した。回収したADSCをカルノア固定した後、簡易核型解析(Q-band)を実施した(株式会社chromocenter)。簡易核型解析(Q-band解析)は分染法により検出される染色体に特徴的なバンドパターンをもとに各染色体を同定し、倍数性、異数性及び転座の有無等を解析する手法である。その結果、回収したADSCは正常な核型を保持しており、本実施例にかかる細胞培養装置を使用して培養された細胞は正常な核型が維持されていることが明らかとなった。
【0066】
即ち、第1実施例では、培養細胞への磁力の影響を抑制して適切な細胞培養できたことが示された。
【0067】
(実施例2)
本実施例では環状体を格納する格納部を有するとともにいわゆる引寄せ機構を備える細胞培養装置(第2実施形態の細胞培養装置)を使用した細胞培養の実施例を示す。
【0068】
細胞培養容器の中空な空間部内に配置された皿状体を、細胞培養容器の下部近傍に位置させた。細胞培養容器の上端の開口部から、細胞培養容器の空間部へ足場、培地、及び、培養対象である細胞を入れた。細胞は2.0×108個の脂肪由来間葉系幹細胞(ADSC)であった。足場はCESCO社のBioNOC IIマトリックスを5000枚使用した(3D培養)。環状体の上下移動のストローク長さは90mmであった。即ち細胞培養容器の高さは60mmであり、細胞培養容器の底部と格納部との距離は30mmであった。環状体の上方向又は下方向への移動速度は1.0mm/秒とした。環状体の上下移動の周期は1.0回/時間とした。培養日数は10日であった。10日の培養期間の間、正常に環状体は上下移動をしていた。
【0069】
細胞の糖消費量をGlucCellハンディ・グルコースモニター(CESCO社)を用いて測定したところ、日数が増加するにつれて細胞の糖消費量が上昇しており、本実施例にかかる細胞培養装置を使用することにより、適切に細胞が培養されたことが判明した。
【0070】
10日目に、細胞培養容器内から3.0×109個の大量のADSCを回収した。回収したADSCが正常な核型を保持しているか解析した。回収したADSCをカルノア固定した後、簡易核型解析(Q-band)を実施した(株式会社chromocenter)。その結果、回収したADSCは正常な核型を保持しており、本実施例にかかる細胞培養装置を使用して培養された細胞は正常な核型が維持されていることが明らかとなった。
【0071】
即ち、第2実施例では、5000枚もの大量の不織布シートを入れた場合でも環状体の的確な上下運動を担保し、且つ、培養細胞への磁力の影響を抑制しつつ細胞培養できたことが示された。
【0072】
(実施例3)
実施例1及び2による大量培養及び回収後のADSCを用いて、脂肪細胞、軟骨細胞、骨細胞への分化誘導を実施した。分化誘導にはR&D System社のHuman Mesenchymal Stem Cell Functional IDentification Kitを用いた。24ウエル培養プレートにそれぞれ104個の細胞を接着させた後、脂肪細胞への分化誘導には、キット付属のADipogenic SupplementとITS SupplementをDMEM基礎培地50mlに添加した分化培地を用いて14日間の培養を行った。軟骨細胞への分化誘導には、キット付属のChonDrogenic SupplementとITS SupplementをDMEM基礎培地50mlに添加した分化培地を用いて21日間の培養を行った。骨細胞への分化誘導には、キット付属のOsteogenic SupplementとITS SupplementをDMEM基礎培地50mlに添加した分化培地を用いて21日間の培養を行った。
【0073】
分化誘導後の脂肪細胞、軟骨細胞、骨細胞を同定するため、4%パラフォルムアルデヒド固定後にOilReD-O、Alcian Blue、Alizarin ReD染色を実施した。その結果、大量培養後のADSCは、幹細胞性質及び多分化能を保持しており、脂肪細胞、軟骨細胞、骨細胞へと分化した。
【産業上の利用可能性】
【0074】
細胞の培養に利用できる。
【符号の説明】
【0075】
100:細胞培養容器
120:底部
125:底部凸部
126:底部凹部
130:空間部
200:皿状体
220:貫通孔
230:皿凹部
210:第1磁着体
300:環状体
310:第2磁着体
320:昇降装置
350:収納部
351:柱状中空部
352:広がり部
360:第3磁着体
370:ストッパ部
400:格納部
401:底部周壁
402:内側周壁
403:外側周壁
700:振動装置
710:振動部
900:細胞培養装置