(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】実装装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20220831BHJP
H05K 13/04 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
H05K13/04 B
(21)【出願番号】P 2020562232
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(86)【国際出願番号】 JP2020015887
(87)【国際公開番号】W WO2020213502
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】P 2019077370
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬山 耕平
(72)【発明者】
【氏名】歌野 哲弥
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-035493(JP,A)
【文献】特開2008-103608(JP,A)
【文献】特許第6342566(JP,B1)
【文献】特開2006-219226(JP,A)
【文献】特開平09-272645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップを被実装体に実装する実装装置であって、
前記被実装体が載置されるステージと、
前記ステージの上方において昇降可能に設けられ、前記半導体チップを前記被実装体に押圧する実装ヘッドと、
前記実装ヘッドと前記ステージとの間に、帯状のカバーフィルムを介在させるフィルム配置機構と、
を備え、前記フィルム配置機構は、
前記カバーフィルムが巻回された送出リールを有したフィルム送出部と、
送出された前記カバーフィルムを巻き取る回収リールを有したフィルム回収部と、
前記送出リールから前記回収リールに向かう前記カバーフィルムの経路途中に設けられ、前記カバーフィルムの進行方向を屈曲させるべく、前記カバーフィルムが折り返される1以上の中継シャフトであって、その軸方向が前記カバーフィルムの屈曲直前の進行方向
および前記カバーフィルムの屈曲直前の幅方向の双方に対して傾斜した方向に延びる1以上の中継シャフトと、
を備えることを特徴とする実装装置。
【請求項2】
請求項1に記載の実装装置であって、
前記中継シャフトは、その軸方向が、前記屈曲直前のカバーフィルムの進行方向に対して45度傾斜するように配置されている、ことを。特徴とする実装装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の実装装置であって、
前記実装装置は、オペレータの実装実行空間へのアクセスを許容するアクセス開口を有しており、
前記送出部および前記回収部は、いずれも、前記アクセス開口からみて前記ステージより奥側には配置されていない、
ことを特徴とする実装装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の実装装置であって、
前記フィルム配置機構は、さらに、前記ステージを横断する前記カバーフィルムを水平方向に移動させるべく、前記送出部、前記1以上の中継シャフト、および前記回収部のうちの少なくとも二つを水平方向に移動させるフィルム移動機構を備える、ことを特徴とする実装装置。
【請求項5】
請求項3に記載の実装装置であって、
前記フィルム配置機構は、さらに、前記ステージを横断する前記カバーフィルムを水平方向に移動させるべく、前記送出部、前記1以上の中継シャフト、および前記回収部のうちの少なくとも二つを水平方向に移動させるフィルム移動機構を備える、ことを特徴とする実装装置。
【請求項6】
請求項4に記載の実装装置であって、
前記送出部および前記回収部のうち少なくとも一つは、固定設置されており、前記フィルム移動機構で移動させられない、ことを特徴とする実装装置。
【請求項7】
請求項4に記載の実装装置であって、
前記1以上の中継シャフトは、前記ステージの第一方向両側に配置された第一中継シャフトおよび第二中継シャフトを含み、
前記第一中継シャフトおよび第二中継シャフトは、いずれも、その軸方向が、前記屈曲直前における前記カバーフィルムの進行方向に対して45度傾斜するように配置されており、
前記フィルム配置機構は、前記第一中継シャフトおよび前記第二中継シャフトを、前記第一方向に直交する第二方向同じ向きに連動して移動させる、
ことを特徴とする実装装置。
【請求項8】
請求項7に記載の実装装置であって、
前記送出リールおよび前記回収リールは、前記カバーフィルムが、前記送出リールから前記第一、第二中継シャフトを経由して前記回収リールに向かうことで、略コの字状を成すように、前記第一、第二中継シャフトに対して第二方向に離間して配置される、ことを特徴とする実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、半導体チップを被実装体に実装する実装装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体チップを、ワイヤを介することなく、基板または他の半導体チップである被実装体に実装するフリップチップボンダ技術が広く知られている。かかるフリップチップボンダでは、被実装体または半導体チップに、予め、熱硬化性樹脂からなる接合材料を塗布しておき、この接合材料を介して、半導体チップを被実装体に固着することがある。この場合、実装ヘッドで半導体チップを加熱および加圧する際に、半導体チップで押し出された接着材料が、上方に這い上がり、実装ヘッドに付着することがあった。また、実装ヘッドに付着しない場合であっても、加熱された接着材料から生じるヒュームガスが、実装ヘッド内に侵入することがあった。
【0003】
特許文献1には、こうした接着材料の熱圧着ツール(実装ヘッド)への付着を防止するために、熱圧着ツールの底面を、フィルム部材(カバーフィルム)で覆った実装装置が開示されている。すなわち、特許文献1の実装装置では、ボンディングヘッドに、熱圧着ツールと、フィルム部材を順次フィードするフィルム部材搬送機構と、を設けている。かかる実装装置によれば、熱圧着ツールへの接着材料の付着が効果的に防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-35493号公報
【文献】特開2004-165536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1等の従来技術では、帯状のフィルム部材は、熱圧着ツールの真下に直線的に掛け渡されており、熱圧着ツールの両側に、巻き出しロールおよび巻き取りロールが固定設置されている。換言すれば、特許文献1の技術では、巻き出しロールおよび巻き取りロールのレイアウトの自由度が低かった。
【0006】
なお、特許文献2には、樹脂フィルム(カバーフィルム)を、接合ツールとは分離して設けた実装装置が開示されている。しかし、特許文献2の実装装置において、樹脂フィルムは、接合ツールの振動から、チップ(半導体チップ)を保護するためのものであり、接着材料の接合ツールへの付着を防止するためのものではない。また、特許文献2の技術でも、フィルムを送出および回収するローラは、直線的に掛け渡されており、これらローラのレイアウトの自由度が低かった。
【0007】
そこで、本明細書では、各部材のレイアウトの自由度をより向上できる実装装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示する実装装置は、半導体チップを被実装体に実装する実装装置であって、前記被実装体が載置されるステージと、前記ステージの上方において昇降可能に設けられ、前記半導体チップを前記被実装体に押圧する実装ヘッドと、前記実装ヘッドと前記ステージとの間に、帯状のカバーフィルムを介在させるフィルム配置機構と、を備え、前記フィルム配置機構は、前記カバーフィルムが巻回された送出リールを有したフィルム送出部と、送出された前記カバーフィルムを巻き取る回収リールを有したフィルム回収部と、前記送出リールから前記回収リールに向かう前記カバーフィルムの経路途中に設けられ、前記カバーフィルムの進行方向を屈曲させるべく、前記カバーフィルムが折り返される1以上の中継シャフトであって、その軸方向が前記カバーフィルムの屈曲直前の進行方向および前記カバーフィルムの屈曲直前の幅方向の双方に対して傾斜した方向に延びる1以上の中継シャフトと、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記中継シャフトは、その軸方向が、前記屈曲直前のカバーフィルムの進行方向に対して45度傾斜するように配置されていてもよい。
【0010】
また、前記実装装置は、オペレータの実装実行空間へのアクセスを許容するアクセス開口を有しており、前記送出部および前記回収部は、いずれも、前記アクセス開口からみて前記ステージより奥側には配置されていなくてもよい。
【0011】
また、前記フィルム配置機構は、さらに、前記ステージを横断する前記カバーフィルムを水平方向に移動させるべく、前記送出部、前記1以上の中継シャフト、および前記回収部のうちの少なくとも二つを水平方向に移動させるフィルム移動機構を備えてもよい。
【0012】
この場合、前記送出部および前記回収部のうち少なくとも一つは、固定設置されており、前記フィルム移動機構で移動させられなくてもよい。
【0013】
また前記1以上の中継シャフトは、前記ステージの第一方向両側に配置された第一中継シャフトおよび第二中継シャフトを含み、前記第一中継シャフトおよび第二中継シャフトは、いずれも、その軸方向が、前記屈曲直前における前記カバーフィルムの進行方向に対して45度傾斜するように配置されており、前記フィルム配置機構は、前記第一中継シャフトおよび前記第二中継シャフトを、前記第一方向に直交する第二方向同じ向きに連動して移動させてもよい。
【0014】
この場合、前記送出リールおよび前記回収リールは、前記カバーフィルムが、前記送出リールから前記第一、第二中継シャフトを経由して前記回収リールに向かうことで、略コの字状を成すように、前記第一、第二中継シャフトに対して第二方向に離間して配置されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本明細書で開示する実装装置によれば、カバーフィルムの経路を屈曲させることができるため、各部材のレイアウトの自由度をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図5】送出部および回収部のより具体的な構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して実装装置10の構成について説明する。
図1は、実装装置10の基本的な構成を示す概略的な正面図であり、
図2は、概略的な平面図である。なお、見易さのため、
図1では、回収部22の図示を省略している。また、
図3は、仮圧着処理の様子を示す図であり、
図4は、本圧着処理の様子を示す図である。
【0018】
この実装装置10は、複数の半導体チップ102を、基板または他の半導体チップである被実装体に実装することで半導体装置を製造する装置である。以下では、被実装体として基板100を用いる場合を例に挙げて説明する。半導体チップ102は、フリップチップボンダ技術で、基板に実装される。具体的には、
図3、
図4に示す通り、各半導体チップ102の底面には、バンプ104と呼ばれる導電性材料からなる突起が形成されており、このバンプ104を、基板100の表面に形成された電極108に接合することで、半導体チップ102と基板100とが電気的に接続される。
【0019】
通常、一つの基板100には、複数の半導体チップ102が、二次元アレイ状に実装される。基板100のうち、半導体チップ102が実装される箇所には、バンプ104と電気的に接続される電極108が形成されている。また、基板100の上面または半導体チップ102の底面には、予め、非導電性で熱硬化性の材料からなる接合材料106(例えば、非導電性ペースト(NCP)や非導電性フィルム(NCF)等)が設けられている。半導体チップ102と基板100との間に、この接合材料106を介在させた状態で、半導体チップ102を基板100に向かって加熱加圧することで、接合材料106が硬化し、半導体チップ102が、基板100に機械的に接着、固定される。
【0020】
実装装置10は、半導体チップ102を基板100に実装するに当たって、仮圧着処理と本圧着処理とを実行する。仮圧着処理は、半導体チップ102を、基板100に仮置きする処理である。また、本圧着処理は、仮圧着された半導体チップ102を、加熱するとともに加圧することで、半導体チップ102を基板100に機械的・電気的に接続することである。この本圧着処理の際、半導体チップ102は、接合材料106の硬化温度以上、かつ、バンプ104の溶融温度以上の温度で加熱される。本例では、複数の半導体チップ102の仮圧着処理を連続して実行した後に、この仮圧着された複数の半導体チップ102の本圧着処理を連続して実行する。
【0021】
実装装置10は、上述した手順で、半導体チップ102を基板100に実装するための装置である。実装装置10は、ステージ12と、実装ヘッド16と、フィルム配置機構18と、これら各部の駆動を制御する制御部20と、を備えている。
【0022】
ステージ12は、基板100(被実装体)が載置される部位である。このステージ12には、例えば、基板100を吸引保持する吸引孔や基板100を加熱するためのヒータ(いずれも図示せず)等が設けられている。このステージ12は、ベース14によって支えられている。
【0023】
実装ヘッド16は、ステージ12と対向して設けられており、ステージ12に対して水平方向および垂直方向に移動可能となっている。実装ヘッド16の先端面には、
図3に示す通り、半導体チップ102を吸引保持するための吸引孔17が形成されている。この吸引孔17は、図示しない吸引ポンプに連通されており、当該吸引ポンプによって発生する負圧により、半導体チップ102が、実装ヘッド16の先端面に吸引保持される。また、実装ヘッド16の内部には、吸引保持した半導体チップ102を加熱するためのヒータ(図示せず)が設けられている。
【0024】
仮圧着処理において、実装ヘッド16は、図示しないチップ供給源から半導体チップ102を受け取り、当該半導体チップ102を、基板100上の実装位置に載置したうえで、加熱および加圧して、半導体チップ102を基板100に仮圧着する。この仮圧着時の加熱温度は、接合材料106が軟化開始する軟化開始温度以上、かつ、接合材料106の硬化が開始する硬化開始温度以下である。また、本圧着処理において、実装ヘッド16は、基板100に仮圧着された半導体チップ102を加熱および加圧して、半導体チップ102を基板100に本圧着する。この本圧着時の加熱温度は、バンプ104が溶融する溶融温度以上、かつ、接合材料106の硬化開始温度以上である。また、本圧着処理時における加圧力は、仮圧着処理時における加圧力よりも大きい。
【0025】
ところで、上述した通り、本圧着処理の際、実装ヘッド16は、半導体チップ102を基板100に押圧する。このとき、
図4に示すように、半導体チップ102により外側に押し出された接合材料106の一部が、はみ出て、上方に這い上がることがある。この這い上がった接合材料106が、実装ヘッド16に付着すると、その後の実装処理が適切に行えないおそれがある。また、実装ヘッド16に接合材料106が付着しない場合であっても、加熱された接合材料106から生じるヒュームガスが、実装ヘッド16の吸引孔17に入り込み、これにより実装ヘッド16が汚染される場合もあった。
【0026】
そこで、本明細書で開示する実装装置10では、本圧着処理の際に、実装ヘッド16と半導体チップ102との間にカバーフィルム110を介在させている。
図4に示す通り、かかるカバーフィルム110を設けることで、実装ヘッド16への接合材料106の付着、および、実装ヘッド16の吸引孔17へのヒュームガスの侵入が効果的に防止される。なお、当然ながら、実装ヘッド16と半導体チップ102との間にカバーフィルム110が介在して吸引孔17がカバーフィルム110で覆われると、実装ヘッド16で半導体チップ102を吸引保持できない。そのため、実装ヘッド16が半導体チップ102を吸引保持する仮圧着処理において、カバーフィルム110は、半導体チップ102および実装ヘッド16から水平方向に離間した位置に退避している。
【0027】
実装装置10には、本圧着処理時に、仮圧着された半導体チップ102と実装ヘッド16との間に、カバーフィルム110を介在させるフィルム配置機構18が設けられている。カバーフィルム110は、一方向に長尺な帯状であり、その幅は、一つの半導体チップ102の幅よりも大きい。また、カバーフィルム110は、溶融温度および硬化開始温度にも耐えられる程度の耐熱性を有し、また、接合材料106の剥離性が高い素材からなる。具体的には、カバーフィルム110は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素樹脂で構成される。
【0028】
フィルム配置機構18は、未使用のカバーフィルム110を送出する送出部21と、使用済みのカバーフィルム110を回収する回収部22と、カバーフィルム110の経路途中に設けられた中継シャフト26と、カバーフィルム110を水平方向に移動させるフィルム移動機構28と、を有している。送出部21は、未使用のカバーフィルム110を送出する部位で、少なくとも、未使用のカバーフィルム110が巻回された送出リール23を有している。また、回収部22は使用済みのカバーフィルム110を回収する部位で、少なくとも、使用済みのカバーフィルム110を巻き取る回収リール24を有している。
【0029】
送出リール23から回収リール24に向かうカバーフィルム110の経路途中には、中継シャフト26が設けられている。中継シャフト26は、
図2に示すように、当該中継シャフト26の軸方向が、当該中継シャフト26に向かうカバーフィルム110の進行方向に対して45度傾斜するように配置されている。カバーフィルム110は、この中継シャフト26において折り返されることで、その進行方向が、略90度屈曲する。したがって、中継シャフト26の軸方向は、屈曲前後におけるカバーフィルム110の進行方向に対して45度傾斜している。
【0030】
なお、カバーフィルム110は、その送出に伴い、中継シャフト26の表面を滑りながら進む。そのため、カバーフィルム110が中継シャフト26の表面で円滑に滑るように、中継シャフト26は、非回転の軸となっている。また、中継シャフト26の表面は、適度な滑り性を有しており、例えば、中継シャフト26の表面に、滑り性を向上させる表面処理、例えば、フッ素樹脂加工やセラミックコーティング加工等を施してもよい。
【0031】
ここで、
図1、
図2の例では、こうした中継シャフト26を、ステージ12を挟んで送出リール23の反対側に一つだけ設けている。そのため、カバーフィルム110は、送出リール23から回収リール24に向かう途中で、略90度に1回だけ屈曲しており、全体としては、カバーフィルム110は、平面視で略L字状の経路を進む。また、この場合、回収リール24の回転軸は、送出リール23の回転軸に対して90度傾いている。ただし、後に詳説するように、中継シャフト26の個数は、一つに限らず複数でもよい。
【0032】
また、
図1、
図2では、見やすくするために、送出部21および回収部22として、送出リール23および回収リール24のみを図示しているが、送出部21および回収部22には、実際には、カバーフィルム110を適切に送出・回収するために追加の駆動源やローラが設けられることが多い。
図5は、送出部21および回収部22のより具体的な構成を示す斜視図である。
図5に示す通り、また、既述した通り、カバーフィルム110は、送出リール23から中継シャフト26を経由して回収リール24に巻き取られる。
【0033】
このカバーフィルム110の送出・回収に伴い、送出リール23および回収リール24に巻回されたカバーフィルム110で構成されるフィルムロールの直径が変動する。フィルムロールの直径が変動すれば当然のことながら、リール一回転辺りのフィルム送出・回収量が変化する。こうした1回転辺りの送出・回収量の変動を吸収するために、送出リール23および回収リール24の少なくとも一方に、回転速度が制御できるモータを連結し、当該モータの回転速度を調整することで、カバーフィルム110の送出・回収量を調整するようにしてもよい。ただし、この場合、フィルムロールの直径を検知するセンサが必要であり、また、モータ制御が複雑となりやすい。
【0034】
そこで、モータ制御を容易にするために、
図5に示す通り、回収部22に、さらに、カバーフィルム110を挟持する駆動ローラ30および従動ローラ33を設けてもよい。駆動ローラ30および従動ローラ33は、回収リール24のすぐ上流側に設けられている。従動ローラ33は、駆動ローラ30と協働してカバーフィルム110を挟み込み、駆動ローラ30の回転に伴い、従動して回転する。駆動ローラ30は、駆動モータ32に接続されており、一定速度で回転可能となっている。駆動ローラ30が一定速度で回転することで、カバーフィルム110が一定速度で回収リール24側に送られる。
【0035】
この場合、回収リール24には、回収モータ29が連結されており、回収リール24は、当該回収モータ29の駆動に伴い回転し、駆動ローラ30から送られたカバーフィルム110も巻き取る。このとき、カバーフィルム110の回収速度は、駆動ローラ30で担保されているため、回収モータ29について複雑な速度制御をする必要はない。また、この場合、送出リール23は、カバーフィルム110の引き出しに伴い従動して回転する構成としてもよい。
【0036】
また、送出部21および回収部22の少なくとも一方には、さらに、カバーフィルム110のテンションを一定に保つテンションローラ36が設けられてもよい。
図5の例では、回収部22にテンションローラ36が設けられている。テンションローラ36は、カバーフィルム110の経路途中であって、駆動ローラ30よりも上流側に設けられている。テンションローラ36は、例えば、バネ37等の付勢手段により、カバーフィルム110が緊張する方向に付勢されている。
図5の例では、テンションローラ36は、カバーフィルム110を上側から押さえるとともに、バネ37により下側に付勢されている。かかるテンションローラ36を設けることで、カバーフィルム110のテンションを容易に一定に保つことができる。
【0037】
さらに、送出部21および回収部22の少なくとも一方に、カバーフィルム110の高さ位置(カバーフィルム110の面に対して垂直方向の位置)を調整する調整ローラ34を設けてもよい。かかる調整ローラ34を設けることで、送出リール23および回収リール24に形成されるフィルムロールの直径が変化しても、カバーフィルム110を同じ高さ位置に掛け渡すことができる。
図5の例では、送出リール23のすぐ下流側に第一調整ローラ34aを、また、テンションローラ36のすぐ上流側に、第二調整ローラ34bを設けている。
【0038】
再び、
図1、
図2を参照してフィルム配置機構18について説明する。
図1、
図2から明らかな通り、本例では、送出リール23と中継シャフト26がステージ12の両側に配されている。そのため、カバーフィルム110は、ステージ12ひいては当該ステージ12に載置された基板100を一方向(図示例ではX方向)に横断することになる。本圧着処理の開始前の段階では、基板100の上には、複数の半導体チップ102が二次元アレイ状に仮圧着されている。そのため、カバーフィルム110は、一列分の半導体チップ102の上方を覆うことができる。
【0039】
フィルム配置機構18は、カバーフィルム110で覆われる列を順次変更できるように、さらに、送出部21および中継シャフト26をY方向に移動させるフィルム移動機構27を備えている。フィルム移動機構27は、送出部21、中継シャフト26、および回収部22のうち、ステージ12の両側に配される二つ(本例では送出部21および中継シャフト26)を水平方向に移動させることで、ステージ12を横断するカバーフィルム110を水平方向に移動させる。このフィルム移動機構27の具体的な構成は、特に限定されないが、例えば、送出部21および中継シャフト26に連結されたプレート50を一方向に進退させる直動機構を含んでもよい。直動機構としては、種々の公知の機構を用いることができ、例えば、モータで回転する一対のプーリと、このプーリに掛け渡されたタイミングベルトと、を含んでもよい。また、直動機構は、モータで回転するスプラインシャフトと、当該スプラインシャフトと並行して伸びるガイドシャフトと、スプラインシャフトが螺合されるとともにガイドシャフトが挿通された移動ブロックと、を含んでもよい。さらに、別の形態として、直動機構は、リニアモータや油圧シリンダやエアシリンダ、電磁シリンダ等を有してもよい。
【0040】
制御部20は、上述した実装ヘッド16やフィルム配置機構18、ステージ12の駆動を制御する。制御部20は、例えば、各種演算を行うプロセッサ(例えばCPU)と、各種データおよびプログラムも記憶するメモリと、を備えている。制御部20には、各種センサでの検知結果が入力されており、制御部20は、この検知結果に応じて、各部の駆動制御を行う。より具体的には、制御部20は、実装ヘッド16の移動制御や、実装ヘッド16およびステージ12のヒータの温度制御、吸引機構の駆動制御などを行う。また、制御部20は、カバーフィルム110を適切な位置に配置するべく、フィルム配置機構18の駆動制御も行う。
【0041】
次に、こうした実装装置10による半導体チップ102の実装の流れについて、
図6~
図8を参照して説明する。
図6~
図8は、実装途中の様子を示す概略平面図であり、
図5は、仮圧着処理の様子を、
図7、
図8は、本圧着処理の様子を示している。
【0042】
既述した通り、基板100の表面のうち、半導体チップ102の実装箇所には、予め、接合材料106が塗布されている。制御部20は、実装ヘッド16を駆動して、基板100の各実装箇所に半導体チップ102を仮圧着させる。具体的には、実装ヘッド16は、図示しないチップ供給源に移動し、その先端面で新たな半導体チップ102を吸引保持する。続いて、実装ヘッド16は、対応する実装箇所の真上に移動する。その後、実装ヘッド16は、
図3に示すように基板100に向かって下降し、吸引保持した半導体チップ102を、対応する実装箇所(ひいては接合材料106)の上に押し当てることで、半導体チップ102を仮圧着する。
【0043】
一つの半導体チップ102が仮圧着できれば、実装ヘッド16は、当該半導体チップ102の吸引を解除したうえで上昇する。その後、実装ヘッド16は、同様の手順で、全ての半導体チップ102の仮圧着を順次行っていく。
図6において、各半導体チップ102に付された数字は、仮圧着の順番を示している。
図6から明らかな通り、図示例では、半導体チップ102は、左下隅から仮圧着される。そして、一列ごとに進行方向を反転しながらジグザグ状に、半導体チップ102の仮圧着が行われる。
【0044】
ここで、この仮圧着処理の際、制御部20は、フィルム移動機構28を駆動して、カバーフィルム110を仮圧着の予定箇所から水平方向に離間した位置に退避させる。本例では、ステージ12の両側に配された送出部21および中継シャフト26を実装ヘッド16から水平方向に離間した位置に移動させることで、カバーフィルム110を退避させることができる。このように仮圧着処理の期間中、カバーフィルム110を、仮圧着の予定箇所から水平方向に離間させることで、実装ヘッド16の吸引孔17がカバーフィルム110で覆われないため、実装ヘッド16で半導体チップ102を適切に吸引保持できる。
【0045】
全ての半導体チップ102を仮圧着できれば、続いて、制御部20は、実装ヘッド16に本圧着処理を実行させる。具体的には、実装ヘッド16は、仮圧着された半導体チップ102を、順次、基板100に加圧および加熱して本圧着する。
図7、
図8において各半導体チップ102に付された数字は、本圧着の順番を示している。図示例では、本圧着も仮圧着と同様に、左下隅から開始され、その後、一列ごとに進行方向を反転しながらジグザグ状に進められる。
【0046】
ここで、本圧着処理の際、制御部20は、フィルム移動機構28を駆動して、カバーフィルム110を実装ヘッド16と本圧着の対象の半導体チップ102との間に介在させる。かかる位置にカバーフィルム110を介在させることで、本圧着の際、
図4に示すように、這い上がってきた接合材料106の実装ヘッド16への付着や、ヒュームガスの実装ヘッド16への侵入を効果的に防止できる。
【0047】
ここで、本圧着対象の半導体チップ102は、順次、変わっていく。したがって、カバーフィルム110の位置も、本圧着処理の進行状況に応じて、順次、変更しなければならない。ただし、本例では、カバーフィルム110は、一列分(3個)の半導体チップ102を覆うように掛け渡されている。したがって、フィルム移動機構28は、カバーフィルム110の真下に位置する一列分(3個)の半導体チップ102への本圧着が終了するまでは、カバーフィルム110(送出部21および中継シャフト26)を移動させず、カバーフィルム110の真下に位置する半導体チップ102全ての本圧着が終了すればカバーフィルム110を隣接する次の列の真上に移動させる。
【0048】
図7、
図8の例によれば、図面上から2列目の半導体チップ102を本圧着する際、フィルム移動機構28は、
図7に示す通り、カバーフィルム110を当該二列目の実装箇所の真上に位置させる。また、二列目の半導体チップ102全ての本圧着処理が終了すれば、フィルム移動機構は、
図8に示す通り、カバーフィルム110(送出部21および中継シャフト26)を図面上から一列目の実装箇所の真上に位置させる。
【0049】
また、このフィルム移動機構28によるカバーフィルム110の水平移動に連動して、カバーフィルム110の送出・回収も行う。具体的には、一列分の半導体チップ102の本圧着処理が終了すれば、回収部22は、回収モータ29や駆動モータ32を駆動して、実装箇所一列に対応する距離だけカバーフィルム110を回収する。
図7の例においては、カバーフィルム110上の位置P1が、基板100の一端近傍に位置し、位置P2が、基板100の他端近傍に位置している。回収部22は、この位置P1から位置P2までの距離分だけ、カバーフィルム110を回収する。この回収に伴い、送出リール23も回転するため、回収された距離と同じ距離分の未使用のカバーフィルム110が送出される。これにより、基板100の真上に未使用のカバーフィルム110が配置される。
【0050】
また、カバーフィルム110を、回収部22から離れる方向に水平移動させた場合、送出部21から回収部22までのカバーフィルム110の経路距離が増加する。この増加した経路距離分だけ、余分にカバーフィルム110が引き出される必要がある。そこで、カバーフィルム110が回収部22から離れる方向に水平移動する際には、当該移動距離と同じ距離分だけ、カバーフィルム110を送出リール23または回収リール24から引き出す。例えば、カバーフィルム110が回収部22から離れる方向に水平移動する際には、駆動モータ32を逆駆動して駆動ローラ30を逆回転させることで、使用済みのカバーフィルム110を、回収リール24から引き出してもよい。また、カバーフィルム110が回収部22に近づく方向に水平移動する際には、その移動距離分だけカバーフィルム110が弛むことになるため、この場合には、当該移動距離分だけ、カバーフィルム110を余分に巻き取る。
【0051】
ところで、これまでの説明で明らかな通り、本例では、カバーフィルム110の経路途中に、当該カバーフィルム110の進行方向を屈曲させる中継シャフト26を設けている。本例では、説明を簡単にするために、中継シャフト26の個数を一つとしているが、中継シャフト26の個数や位置を適宜調整することで、カバーフィルム110の経路設計の自由度が向上する。そして、これにより、送出部21および回収部22のレイアウトの自由度が向上する。
【0052】
すなわち、中継シャフト26がない場合、カバーフィルム110は、送出リール23から回収リール24までほぼ一直線に進む必要があり、送出部21および回収部22の位置は、ステージ12の両側に限定される。しかし、これまで説明した通り、送出部21および回収部22には、カバーフィルム110を適切に送出・回収するために、複数のローラやモータ、付勢手段等が設けられており、中継シャフト26に比べて大型かつ複雑になりやすい。実装装置10の種類によっては、このように大型になりやすい送出部21および回収部22を設置するスペースをステージ12の両側に充分に確保できないこともある。
【0053】
また、送出部21および回収部22は、中継シャフト26に比べて構成が複雑であるため、より頻繁なメンテナンスが必要となる。こうしたメンテナンスには、送出リール23および回収リール24に取り付けられたフィルムロールの交換も含まれる。送出部21および回収部22の双方をステージ12の両側に配置した場合、ユーザーから送出部21および回収部22へのアクセスがしづらくなり、メンテナンスが難しくなる場合もあった。一方、本例のように、カバーフィルム110の進行方向を屈曲させる中継シャフト26を設ければ、送出部21および回収部22の位置を比較的自由に動かすことができ、レイアウトの自由度を大幅に向上できる。
【0054】
また、これまでの説明から明らかな通り、本圧着処理の進行状況に応じて、カバーフィルム110を水平方向に移動させる必要がある。中継シャフト26がなく、ステージ12の両側に送出部21および回収部22が配置された構成とすると、カバーフィルム110を水平移動させるためには、送出部21および回収部22の双方を移動させなければならない。しかし、上述した通り、送出部21および回収部22は、大型で複雑であるため、双方をフィルム移動機構28で水平移動させようとした場合、フィルム移動機構28が大型化、複雑化しやすくなる。
【0055】
一方、本例では、ステージ12を挟んで送出部21の反対側に中継シャフト26を設けている。そして、この中継シャフト26を送出部21とともに水平移動させる一方で、回収部22を位置固定としている。これにより、大型の回収部22を移動させるための機構が不要となり、実装装置10全体の小型化やコスト低減が可能となる。
【0056】
次に、他の実装装置10の構成について、
図9を参照して説明する。
図9は、他の実装装置10の概略平面図である。実装装置10は、カバー60により覆われており、当該カバー60の内部には、半導体チップ102を基板100に実装する実装実行空間62が形成されている。カバー60の前面には、実装装置10の内外に連通するとともに開閉自在のドア66が取り付けられたアクセス開口64が設けられている。オペレータは、このアクセス開口64を介して実装実行空間62内にアクセスする。
【0057】
実装実行空間62内には、幅方向に長尺なベース14が設けられており、このベース14の上には、基板100を幅方向一端から他端に搬送する(図面Y方向に搬送する)基板搬送レール38が設けられている。実装装置10の幅方向両側には、基板100を実装装置10に供給するローダー40と、実装処理後の基板100を実装装置10から回収するアンローダー42が設けられている。ローダー40により実装装置10に供給された基板100は、基板搬送レール38に沿って、アンローダー42側へと搬送される。
【0058】
基板100の搬送経路の途中には、上流側から順に、プレステージ44およびボンディングステージ46が設けられている。プレステージ44は、仮圧着処理に先立って、基板100を温める。アクセス開口64からみてプレステージ44の奥側には、基板100の所定箇所に接合材料106を塗布するディスペンサ68が設けられている。ディスペンサ68は、基板100の上に接合材料106を二次元アレイ状に塗布する。
【0059】
プレステージ44よりも下流側位置には、ボンディングステージ46が設けられている。ボンディングステージ46は、
図1、
図2におけるステージ12に対応する部材であり、基板100が載置される。アクセス開口64からみてボンディングステージ46の奥側には、半導体チップ102を実装する実装ヘッド16が設けられている。実装ヘッド16は、一つの基板100に複数の半導体チップ102を仮圧着した後、仮圧着された複数の半導体チップ102を本圧着する。
図9における二点鎖線の矢印は、圧着処理における実装ヘッド16の進行経路を示している。
図9から明らかな通り、実装ヘッド16は、基板搬送方向(Y方向)に並ぶ複数の半導体チップ102を連続して圧着する動作と、基板搬送方向に直交する方向(X方向)にシフトする動作と、を繰り返し行い、圧着処理をジグザグ状に進める。
【0060】
実装装置10には、本圧着処理の際に、実装ヘッド16と半導体チップ102との間にカバーフィルム110を介在させるフィルム配置機構18も設けられている。このフィルム配置機構18は、カバーフィルム110の経路途中に二つの中継シャフト26a,26bが設けられており、カバーフィルム110が平面視で略コの字状に掛け渡されている点で、
図1、
図2に開示したフィルム配置機構18と相違している。
【0061】
より具体的に説明すると、
図9に示す通り、本例では、ボンディングステージ46のY方向両側に第一中継シャフト26aおよび第二中継シャフト26bを設けている。なお、当然ながら、この二つの中継シャフト26a,26bが、基板100の搬送を阻害しないように配置されている。例えば、基板100の搬送を阻害しないように、基板搬送レール38を跨ぐブリッジ70を設けておき、当該ブリッジ70の上に中継シャフト26a,26bを設置してもよい。また、別の形態として、基板搬送レール38の上空に、X方向に延びるレール(図示せず)を設けておき、当該レールから中継シャフト26a,26bを吊り下げ保持してもよい。いずれにしても、二つの中継シャフト26a,26bは、ボンディングステージ46の両側に配置されており、第一中継シャフト26aから第二中継シャフト26bに進むカバーフィルム110が、一列分の半導体チップ102を上側から覆えるようになっている。
【0062】
第一中継シャフト26aのX方向手前側には、送出部21が設けられている。送出部21は、ベース14に固定設置されており、その位置は不変となっている。また、送出リール23の回転軸は、Y方向と平行であり、カバーフィルム110は、X方向に送出される。この送出部21の構成は、
図1、
図2、
図5を参照して説明した送出部21の構成とほぼ同じである。第一中継シャフト26aは、その軸方向が送出リール23の回転軸に対して45度傾くように配置されている。したがって、送出部21から送出されたカバーフィルム110は、X方向を奥側に進んだ後、第一中継シャフト26aで折り返されることで、その進行方向が90度屈曲する。
【0063】
第二中継シャフト26bは、第一中継シャフト26aに対して鏡像配置されており、二つの中継シャフト26a,26bは、平面視で略ハの字状を成すように配置されている。別の見方をすれば、第二中継シャフト26bは、その軸方向が、屈曲直前のカバーフィルム110の進行方向に対して45度傾くように配置されている。そのため、当該第二中継シャフト26bで折り返されたカバーフィルム110は、その進行方向が、再度、90度屈曲する。
【0064】
第二中継シャフト26bのX方向手前側には、回収部22が設けられている。回収部22も、ベース14に固定設置されており、その位置は不変となっている。また、回収リール24の回転軸は、Y方向と平行であり、X方向に進むカバーフィルム110を巻き取ることができる。この回収部22の構成も、
図1、
図2、
図5を参照して説明した回収部22の構成とほぼ同じである。
【0065】
フィルム配置機構18は、さらに、ボンディングステージ46を横断するカバーフィルム110をX方向に移動させるフィルム移動機構28を有している。本例では、二つの中継シャフト26a,26bをX方向に移動させれば、カバーフィルム110もX方向に移動する。そのため、フィルム移動機構28は、二つの中継シャフト26a,26bをX方向に移動させる機構である。かかる機構は、例えば、中継シャフト26a,26bに連結されたプレートを、直動機構に取り付けることで構成できる。直動機構としては、種々の公知の機構を用いることができ、例えば、モータで回転する一対のプーリとこのプーリに掛け渡されたタイミングベルトとを含んでもよい。また、直動機構は、モータで回転するスプラインシャフトと当該スプラインシャフトと並行して伸びるガイドシャフトとスプラインシャフトが螺合されるとともにガイドシャフトが挿通された移動ブロックとを含んでもよい。さらに、別の形態として、直動機構は、リニアモータや油圧シリンダやエアシリンダ、電磁シリンダ等を有してもよい。いずれにしても、二つの中継シャフト26a,26bをX方向に移動させる移動機構を設けることで、ボンディングステージ46を横断するカバーフィルム110のX方向位置を変化させることができる。
【0066】
ここで、これまでの説明から明らかな通り、本例では、送出部21および回収部22は、位置固定であり、二つの中継シャフト26a,26bのみを水平移動させている。中継シャフト26a,26bは、送出部21および回収部22に比べて、小型で軽量であるため、かかる構成とすることで、フィルム移動機構28を小型かつ簡易な構成にできる。特に、本例では、圧着処理が基板搬送方向(Y方向)に進行する。この場合、カバーフィルム110が基板搬送方向(圧着処理の進行方向)にボンディングステージ46を横断するように、カバーフィルム110を掛け渡す必要がある。そのため、中継シャフト26がない場合、送出部21および回収部22をステージ12の基板搬送方向両側に配置しなければならない。しかし、大型で複雑な送出部21および回収部22を、基板100の搬送を阻害しないようにボンディングステージ46の両側にX方向に移動可能に配置するためには、複雑な構成が必要となり、実装装置10の大型化やコスト増加を招きやすかった。本例では、ボンディングステージ46の両側に、小型で軽量な中継シャフト26a,26bを配置しているため、こうした問題を解決できる。
【0067】
また、
図9から明らかな通り、本例では、送出部21および回収部22を、アクセス開口64からみてボンディングステージ46よりも手前側に配置している。かかる構成とすることで、オペレータは、アクセス開口64から、ボンディングステージ46を越えることなく、送出部21または回収部22にアクセスできるため、送出部21および回収部22のメンテナンス作業を容易に行える。
【0068】
なお、ここまで説明した構成は、いずれも、一例であり、少なくとも、カバーフィルム110の経路途中に当該カバーフィルム110の進行方向を屈曲させる中継シャフト26を有するのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。したがって、中継シャフト26の個数や配置等は、適宜、変更されてもよい。また、送出部21および回収部22の設置位置や構成も適宜変更されてもよい。したがって、例えば、
図10に示すように、ボンディングステージ46を挟んで基板搬送方向両側に第二中継シャフト26bおよび回収部22を設けるとともに、送出部21と第二中継シャフト26bとの間に、第一中継シャフト26aを設けてもよい。
【0069】
また、これまでの説明では、中継シャフト26は、屈曲前後のカバーフィルム110の進行方向に対して45度傾いて配置しているが、中継シャフト26の傾きは、適宜変更されてもよい。例えば、中継シャフト26は、屈曲直前のカバーフィルム110の進行方向に対して30度傾いて配置されてもよい。この場合、カバーフィルム110は、中継シャフト26で掘り返されることで、その進行方向が120度屈曲する。すなわち、中継シャフト26の傾き角度をθ度とした場合、カバーフィルム110は、中継シャフト26で折り返されることで、その進行方向が(180-2×θ)度屈曲する。
【0070】
また、送出部21および回収部22は、それぞれ、少なくとも送出リール23および回収リール24を有していれば、適宜変更されてもよい。したがって、送出部21および回収部22の構成は、
図5に示したものに限定されない。さらに、実装装置10は、実装ヘッド16とステージ12とフィルム配置機構18とを有するのであれば、その他の構成も適宜変更されてもよい。
【符号の説明】
【0071】
10 実装装置、12 ステージ、14 ベース、16 実装ヘッド、17 吸引孔、18 フィルム配置機構、20 制御部、21 送出部、22 回収部、23 送出リール、24 回収リール、26 中継シャフト、27 フィルム移動機構、28 フィルム移動機構、29 回収モータ、30 駆動ローラ、32 駆動モータ、33 従動ローラ、34 調整ローラ、34a 第一調整ローラ、34b 第二調整ローラ、36 テンションローラ、38 基板搬送レール、40 ローダー、42 アンローダー、44 プレステージ、46 ボンディングステージ、50 プレート、60 カバー、62 実装実行空間、64 アクセス開口、66 ドア、68 ディスペンサ、70 ブリッジ、100 基板、102 半導体チップ、104 バンプ、106 接合材料、108 電極、110 カバーフィルム。