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特許7132662燃料電池システム、及びそのシャットダウン時と起動時にパージ及び排水を行う方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】燃料電池システム、及びそのシャットダウン時と起動時にパージ及び排水を行う方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04225 20160101AFI20220831BHJP
   H01M 8/04228 20160101ALI20220831BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20220831BHJP
   H01M 8/04303 20160101ALI20220831BHJP
   H01M 8/04791 20160101ALI20220831BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20220831BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20220831BHJP
【FI】
H01M8/04225
H01M8/04228
H01M8/04302
H01M8/04303
H01M8/04791
H01M8/04746
H01M8/04 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021514612
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 CN2019082998
(87)【国際公開番号】W WO2020057116
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】201811089463.4
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521104089
【氏名又は名称】上海恒勁動力科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】高 勇
(72)【発明者】
【氏名】ヤヌシュ ブラシュチク
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-100846(JP,A)
【文献】特開2013-101962(JP,A)
【文献】特開2008-021553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04225
H01M 8/04228
H01M 8/04302
H01M 8/04303
H01M 8/04791
H01M 8/04746
H01M 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタック(1)と、燃料電池スタックのカソードに接続する空気供給システムと、燃料電池スタックのアノードに接続する水素気体供給システムと、を備え、空気供給システムが、空気圧縮機(2)と、空気進入パイプライン(3)と、空気排気パイプライン(4)と、を備え、前記水素気体供給システムが、水素気体貯蔵タンクと、水素気体進入パイプライン(5)と、水素気体排気パイプラインと、を備えており、
前記空気排気パイプライン(4)は分岐パイプライン(6)を介して低酸素濃度気体貯蔵タンク(7)に接続され、当該低酸素濃度気体貯蔵タンク(7)は循環パイプライン(8)を介して前記水素気体進入パイプライン(5)に戻して接続され
前記水素気体進入パイプライン(5)には、電磁弁e(15)が設けられ、
前記空気排気パイプライン(4)には、電磁弁b(11)が設けられ、
前記分岐パイプライン(6)には、電磁弁c(12)が設けられ、
前記循環パイプライン(8)には、電磁弁d(13)と逆止弁(14)とが設けられる燃料電池システムであって、
i)燃料電池システムのシャットダウン過程又は低酸素濃度気体を生成する必要がある場合において、前記空気圧縮機(2)を停止し、前記電磁弁b(11)を閉じ、前記電磁弁c(12)、前記電磁弁d(13)及び前記逆止弁(14)を開いて、前記燃料電池スタック(1)の前記アノード側に残っている又は必要に応じて保存されている水素気体を使用して発電を継続して、これによりカソード側の空気中の酸素を消費して酸素濃度が15%以下の低酸素濃度気体を得て、該低酸素濃度気体を前記分岐パイプライン(6)を介して前記低酸素濃度気体貯蔵タンク(7)に貯蔵し、前記循環パイプライン(8)を介して前記低酸素濃度気体を前記燃料電池スタック(1)の前記アノード側に移動させて、水素気体の濃度が4%未満に減少するように前記アノード側のチャンネル内に残留する水素気体をパージし、
ii)前記燃料電池システムの起動過程において、最初に前記電磁弁d(13)と逆止弁(14)を開き、前記低酸素濃度気体貯蔵タンク(7)の前記低酸素濃度気体を前記燃料電池スタック(1)の前記アノード側に充填してパージし、前記アノード側に残留している可能性のある酸素気体を排出する、あるいは前記アノード側の酸素含有量を水素気体を充填しても安全なレベルまで低減してから、電磁弁e(15)を開いて水素気体を導入する、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記水素気体排気パイプラインには水素気体含有量を測量するセンサーが設けられている請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
空気進入パイプライン(3)と水素気体進入パイプライン(5)は、電磁弁a(10)を備える接続パイプ(9)により接続されている請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃料電池システムは、
i)低酸素濃度気体を生成する必要がある場合又は燃料電池システムのシャットダウン過程において、前記空気圧縮機(2)を停止し又は前記空気圧縮機の速度を下げて空気供給量を減らし、前記電磁弁b(11)を閉じ、前記電磁弁c(12)、電磁弁d(13)及び逆止弁(14)を開き、前記燃料電池スタック(1)の前記アノード側に残っている又は必要に応じて保存されている水素気体を使用して発電を継続し、これによりカソード側の空気中の酸素を消費して酸素濃度が15%以下の低酸素濃度気体を得て、該低酸素濃度気体を前記分岐パイプライン(6)を介して前記低酸素濃度気体貯蔵タンク(7)に貯蔵し、前記循環パイプライン(8)を介して前記低酸素濃度気体を前記燃料電池スタック(1)の前記アノード側に移動させて、水素気体の濃度が4%未満に減少するように前記アノード側のチャンネルをパージし、
ii)前記電磁弁d(13)を閉じ、残留する低酸素濃度気体を前記低酸素濃度彫像タンク(7)に貯蔵し、前記電磁弁a(10)を開いて前記空気圧縮機(2)を駆動して高圧高速流の空気を前記燃料電池スタック(1)の前記アノード側と前記カソード側の双方に送り、反応生成物として前記燃料電池スタック内に存在する水を効果的にパージする、
ことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項の燃料電池システムをパージする方法であって、
i)燃料電池システムのシャットダウン過程又は低酸素濃度気体を生成する必要がある場合において、前記空気圧縮機(2)を停止し、前記電磁弁b(11)を閉じ、前記電磁弁c(12)、前記電磁弁d(13)及び前記逆止弁(14)を開いて、前記燃料電池スタック(1)の前記アノード側に残っている又は必要に応じて保存されている水素気体を使用して発電を継続して、これによりカソード側の空気中の酸素を消費して酸素濃度が15%以下の低酸素濃度気体を得て、該低酸素濃度気体を前記分岐パイプライン(6)を介して前記低酸素濃度気体貯蔵タンク(7)に貯蔵し、前記循環パイプライン(8)を介して前記低酸素濃度気体を前記燃料電池スタック(1)の前記アノード側に移動させて、水素気体の濃度が4%未満に減少するように前記アノード側のチャンネル内に残留する水素気体をパージする工程と、
ii)前記燃料電池システムの起動過程において、最初に前記電磁弁d(13)と逆止弁(14)を開き、前記低酸素濃度気体貯蔵タンク(7)の前記低酸素濃度気体を前記燃料電池スタック(1)の前記アノード側に充填してパージし、前記アノード側に残留している可能性のある酸素気体を排出する、あるいは前記アノード側の酸素含有量を水素気体を充填しても安全なレベルまで低減してから、電磁弁e(15)を開いて水素気体を導入する工程と、
を備える燃料電池システムをパージする方法。
【請求項6】
請求項3に記載の燃料電池システムをパージする方法であって、
i)燃料電池システムのシャットダウン過程又は低酸素濃度気体を生成する必要がある場合において、前記空気圧縮機(2)を停止し又は前記空気圧縮機の速度を下げて空気供給量を減らし、前記電磁弁b(11)を閉じ、前記電磁弁c(12)、電磁弁d(13)及び逆止弁(14)を開き、前記燃料電池スタック(1)の前記アノード側に残っている又は必要に応じて保存されている水素気体を使用して発電を継続し、これによりカソード側の空気中の酸素を消費して酸素濃度が15%以下の低酸素濃度気体を得て、該低酸素濃度気体を前記分岐パイプライン(6)を介して前記低酸素濃度気体貯蔵タンク(7)に貯蔵し、前記循環パイプライン(8)を介して前記低酸素濃度気体を前記燃料電池スタック(1)の前記アノード側に移動させて、水素気体の濃度が4%未満に減少するように前記アノード側のチャンネルをパージする工程と、
ii)前記電磁弁d(13)を閉じ、残留する低酸素濃度気体を前記低酸素濃度彫像タンク(7)に貯蔵し、前記電磁弁a(10)を開いて前記空気圧縮機(2)を駆動して高圧高速流の空気を前記燃料電池スタック(1)の前記アノード側と前記カソード側の双方に送り、反応生成物として前記燃料電池スタック内に存在する水を効果的にパージする工程と、
を備える燃料システムのパージ方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池、特に燃料電池システム、及びそのシャットダウン時と起動時にパージ及び排水を行う方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料の化学的エネルギーを電気エネルギーに直接変換する発電装置である。その動作原理は、電気化学反応によって、物質中の化学的エネルギーを電気エネルギーに変換し、燃料電池の化学反応に必要な物質は外部から供給され、燃料と酸化剤を継続的に供給し続ける限り、燃料電池は電気エネルギーと熱エネルギーを継続的に出力し続ける。即ち、燃料電池は一種のエネルギー変換装置である。
【0003】
プロトン交換膜燃料電池は、水素気体を燃料として、酸素を酸化剤として使用する電気化学発電装置であり、水素気体と空気をそれぞれアノードとカソードに通し、気体が触媒の作用で反応して水を生成すると共に、大量の熱を発生する。燃料電池は、環境にやさしく、エネルギー変換率が高く、工率の調節が可能等の優れた点があるため、最もクリーンで効率的な新エネルギー発電装置の一つとして見なされ、自動車に広く使用できる。
【0004】
燃料電池が作動を停止し、燃料気体と酸化剤気体の供給が停止する際に、電堆における燃料流路及び酸化剤流路内には燃料気体及び酸化剤気体が残っている。そのため、燃料電池のダウンタイムが長くなり、特に、当該残った燃料気体及び酸化剤気体が電解質膜に浸透して電極触媒や触媒担体に損傷を与え、燃料電池の寿命が短くなることがある。また、燃料気体は一般的に可燃性で爆発性の水素気体であり、燃料電池の作動を停止した後(シャットダウン後)、電堆中に残った水素気体は容易に火災や爆発などの安全上の事故を引き起こす恐れがあるため、一般的にはシャットダウン後に電堆のパージを行う必要があることから、通常のパージ方法としてはシャットダウン後に高純度の窒素でパージするが、この方法ではエネルギーを浪費し、追加のNリソースが必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題に鑑み、上記の先行技術における技術的欠陥を克服するために、エネルギーを節約し、安全で、寿命が長い燃料電池システム、及びそのシャットダウン時と起動時のパージ及び排水の方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、以下の技術を通じて達成することができる。
【0007】
第一の燃料電池システムは、燃料電池スタック(1)と、燃料電池スタックのカソードに接続する空気供給システムと、燃料電池スタックのアノードに接続する水素気体供給システムと、を備え、空気供給システムが、空気圧縮機(2)と、空気進入パイプライン(3)と、空気排気パイプライン(4)と、を備え、前記水素気体供給システムが、水素気体貯蔵タンクと、水素気体進入パイプライン(5)及び水素気体排気パイプラインと、を備える、燃料電池システムであって、前記空気排気パイプライン(4)は分岐パイプライン(6)を介して低酸素濃度気体貯蔵タンク(7)に接続され、当該低酸素濃度気体貯蔵タンク(7)は循環パイプライン(8)を介して水素気体進入パイプライン(5)に戻し接続され、燃料電池のシャットダウン過程において、燃料電池スタック(1)のアノード側に残った水素気体はカソード側の空気中の酸素気体の消費または濃度の低減を生じさせ、生成した低酸素濃度気体はパージ及び燃料電池スタックの希釈に使用され、その残り部分が低酸素濃度気体貯蔵タンク(7)に貯蔵され、起動の際に燃料電池スタックのアノード側をパージする。
【0008】
前記空気排気パイプライン(4)には電磁弁b(11)が設けられている。
前記分岐パイプライン(6)には電磁弁c(12)が設けられている。
【0009】
前記循環パイプライン(8)には電磁弁d(13)と逆止弁(14)とが設けられている。
前記水素気体進入パイプライン(5)には電磁弁e(15)が設けられている。
前記水素気体排気パイプラインには水素気体含有量を測定するセンサーが設けられている。
【0010】
上記燃料電池システムを使用して低酸素気体(低酸素含有量気体)を生成し、シャットダウン時にアノード側の流体通路をパージし、その中の水素気体を希釈して吹き飛ばし、少なくとも水素気体濃度を爆発限界未満に下げ、燃焼または爆発を防ぎ、安全係数を改善し、そして、その他の低酸素濃度気体または不活性ガスを追加的にパージする必要がなく、エネルギーを節約すると共に、燃料電池の使用寿命を改善した。同時に、低酸素濃度気体を用いてアノード側の流体通路をパージし、H(水素気体)を吹き飛ばし、電堆内の電気化学反応をタイミングよく停止させることができ、電堆(スタック)、また、起動時に、燃料電池システムのアノード側に酸素含有気体体を希釈及び排出し、具体的には以下のステップを有する:
【0011】
(1)シャットダウンの過程中または低酸素含有量気体を生成する必要がある場合は、空気圧縮機(2)をシャットダウンし、電磁弁b(11)を閉じ、電磁弁c(12),電磁弁d(13)及び逆止弁(14)を開き、燃料電池スタック(1)のアノード側に残っているまたは必要に応じて保存されている水素気体を使用して、継続的に発電し、カソード側の空気中の酸素気体を消費し切ることによって、低酸素濃度気体を獲得し、当該低酸素濃度気体は分岐パイプライン(6)を介して低酸素濃度気体貯蔵タンク(7)に貯蔵され、循環パイプライン(8)を介して燃料電池スタック(1)のアノード側に送られることによって、アノード側の流路に残っている水素気体をパージし、水素気体濃度を4%以下まで減少させる;
(2)起動する前に、まず電磁弁d(13)と逆止弁(14)を開き、低酸素濃度気体貯蔵タンク(7)に貯蔵される低酸素濃度気体を燃料電池スタック(1)のアノード側に充填してパージし、残留する酸素気体を排出しまたはアノード側の酸素含有量を安全な水素チャージ(水素補填)のレベルまで低減してから、電磁弁e(15)を開いて水素気体を供給する。
【0012】
第二の燃料電池システムは、燃料電池スタック(1)と、燃料電池スタックのカソードに接続する空気供給システムと、燃料電池スタックのアノードに接続する水素気体供給システムと、を備え、空気供給システムは、空気圧縮機(2)と、空気進入パイプライン(3)と、空気排気パイプライン(4)と、を備え、前記水素気体供給システムは、水素気体貯蔵タンクと、水素気体進入パイプライン(5)及び水素気体排気パイプラインと、を備える、燃料電池システムであって、前記空気排気パイプライン(4)は分岐パイプライン(6)を介して低酸素濃度気体貯蔵タンク(7)に再接続され、当該低酸素濃度気体貯蔵タンク(7)は循環パイプライン(8)を介して水素気体進入パイプライン(5)に戻し接続され、前記空気進入パイプライン(3)と水素気体進入パイプライン(5)との間に接続パイプが設けられ、当該接続パイプ(9)には電磁弁a(10)が設けられ、燃料電池のシャットダウン過程において、燃料電池スタック(1)のアノード側の過剰な水素気体を利用してカソード側に残った空気中の酸素気体を消費して、生成した低酸素濃度気体は燃料電池スタックのアノード側に残った水素気体を吹き飛ばし、空気圧縮機は燃料電池電堆のアノード及びカソードの両側に空気を供給して、燃料電池スタックに蓄積された水を吹き飛ばす。
【0013】
前記空気排気パイプライン(4)には電磁弁b(11)が設けられ;前記分岐パイプライン(6)には電磁弁c(12)が設けられ;前記循環パイプライン(8)には電磁弁d(13)と逆止弁(14)とが設けられ;前記水素気体進入パイプライン(5)には電磁弁e(15)が設けられ;前記水素気体排気パイプラインには水素気体含有量を測定するセンサーが設けられている。
【0014】
上記第二の燃料電池システムのシャットダウン時及び起動時にパージ及び排水を行う方法であって、燃料電池システムが生成した低酸素含有量気体と空気圧縮機が提供する空気を用いて、シャットダウン時に、燃料電池システム内の水を安全に排出し、具体的には以下のステップを有する:
【0015】
(1)シャットダウンの過程中または低酸素含有量気体を生成する必要がある場合は、空気圧縮機(2)をシャットダウンし、電磁弁b(11)を閉じ、電磁弁c(12)、電磁弁d(13)及び逆止弁(14)を開き、燃料電池スタック(1)のアノード側に残ったまたは必要に応じて保存されている水素気体を使用して、継続的に発電し、カソード側の空気中の酸素気体を消費し切って、低酸素濃度気体を取得し、当該低酸素濃度気体は分岐パイプライン(6)を介して低酸素濃度気体貯蔵タンク(7)に貯蔵され、そして循環パイプライン(8)を介して燃料電池スタック(1)のアノード側に送られ、アノード側の流路をパージし、水素気体濃度を4%以下まで減少させる;
【0016】
(2)電磁弁d(13)を閉め、残った低酸素濃度気体が低酸素濃度気体貯蔵タンク(7)に貯蔵され、電磁弁a(10)を開き、同時に空気圧縮機(2)が燃料電池スタック(1)のアノード側とカソード側に高圧で多量の空気を送り、燃料電池スタックに残った反応生成水を有効にパージする。
【0017】
また、上記燃料電池システムを使用することで、低酸素濃度気体を用いてアノード側の流体通路内の水素気体をパージした後、空気圧縮機でアノード側の流体通路に継続的に空気を送って、その中に蓄積された水を排出することができ、さらに電堆を保護することができる。具体的には以下のステップを有する:
【0018】
(1)シャットダウンの過程中または低酸素含有量気体を生成する必要がある場合は、空気圧縮機(2)を停止しまたは空気圧縮機の回転速度を下げて空気供給を減らし、電磁弁b(11)を閉め、電磁弁c(12),電磁弁d(13)及び逆止弁(14)を開き、燃料電池スタック(1)のアノード側に残っているまたは必要に応じて保存されている水素気体を使用して、継続的に発電し、カソード側の空気中の酸素気体を消費し切って、低酸素濃度気体(通常、酸素含有量が15%以下)を取得し、当該低酸素濃度気体は分岐パイプライン(6)を介して低酸素濃度気体貯蔵タンク(7)に貯蔵され、及び循環パイプライン(8)を介して燃料電池スタック(1)のアノード側に送られ、アノード側の流路をパージし、水素気体濃度を4%以下まで減少させる;
【0019】
(2)電磁弁d(13)を閉めることにより、残った低酸素濃度気体が低酸素濃度気体貯蔵タンク(7)に貯蔵され、電磁弁a(10)を開くことにより、空気圧縮機(2)が燃料電池スタック(1)のアノード側とカソード側に同時に高圧で多量の空気を送り、燃料電池スタックに残留した反応水を効果的にパージする。
【発明の効果】
【0020】
従来技術と比較して、本発明は以下の有益な効果を奏する。
【0021】
(1)燃料電池のシャットダウンを行う時、または低酸素含有量気体の生成が必要な時に、燃料電池スタックのアノード側に残ったまたは保存されている水素気体を用いて、継続的に発電し、カソード側の空気中の酸素気体を消費し切るかまたは濃度を下げることによって、低酸素濃度気体を取得し、当該低酸素濃度気体を利用して以下の目的を実現することができる:
【0022】
a.シャットダウン時にアノード側の流体通路をパージし、その中の水素気体を希釈して吹き飛ばし、少なくとも水素気体濃度を爆発限界未満まで低下させることにより、燃焼または爆発を防ぎ、安全係数を改善し、更に、追加の低酸素濃度気体またはその他の不活性ガスでパージする必要がなく、エネルギーを節約すると共に、燃料電池の使用寿命を延ばすことができる。
【0023】
b.低酸素濃度気体を用いてアノード側の流体通路をパージし、Hを吹き飛ばす(飛ばし排出し)ことにより、電堆中の電気化学反応が適時に停止し、電堆を保護することができる。
【0024】
C.生成した低酸素濃度気体を貯蔵することによって、起動時に、当該低酸素濃度気体を利用してアノード側をパージし、その中に残留可能な酸素またはアノード側の酸素含有量を安全な水素補填のレベルまで低減させた後に、再度水素気体を供給し、安全性能を向上させるとともに、エネルギーを節約することができる。
【0025】
(2)シャットダウンの過程において、低酸素濃度気体を用いてアノード側の流体通路内の水素気体を希釈してパージした後、空気圧縮機で継続的に燃料電池電堆のアノード及びカソードの両側に空気を供給して、燃料電池スタック内に蓄積された水を吹き飛ばし、電堆をさらに保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の燃料電池システムの水素気体及び空気をパージする状態を示す概略図である;
図2】本発明の燃料電池システムの排水を行う状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施例及び図面に基づいて、本発明について詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
図1に示すように、燃料電池スタック1と、燃料電池スタックのカソードに接続する空気供給システムと、燃料電池スタックのアノードに接続する水素気体供給システムと、を備え、空気供給システムは、空気圧縮機2と、空気進入パイプライン3と、空気排気パイプライン4と、を備え、前記水素気体供給システムは、水素気体貯蔵タンクと、水素気体進入パイプライン5及び水素気体排気パイプラインと、を備える、燃料電池システムであって、前記空気排気パイプライン4は分岐パイプライン6を介して低酸素濃度気体貯蔵タンク7に接続され、当該低酸素濃度気体貯蔵タンク7は循環パイプライン8を介して水素気体進入パイプライン5に戻り接続され、前記空気排気パイプライン4には電磁弁b11が設けられている。前記分岐パイプライン6には電磁弁c12が設けられている。前記循環パイプライン8には電磁弁d13と逆止弁14とが設けられている。前記水素気体進入パイプライン5には電磁弁e15が設けられている。前記水素気体排気パイプラインには水素気体含有量を測定するセンサーが設けられている。
【0029】
上記の燃料電池システムを利用してシャットダウン時及び起動時にパージする方法は、以下のステップを有する:
(1)シャットダウン時にまたは低酸素含有量気体の生成が必要な場合は、電磁弁b11を閉じ、電磁弁c12,電磁弁d13及び逆止弁14を開き、燃料電池スタック1のアノード側に残っているまたは必要に応じて保存されている水素気体を使用して、継続的に発電し、カソード側の空気中の酸素気体を消費し切ることによって、低酸素濃度気体を獲得し、当該低酸素濃度気体は分岐パイプライン6を介して低酸素濃度気体貯蔵タンク7に貯蔵され、循環パイプライン8を介して燃料電池スタック1のアノード側に送られることによって、アノード側の流路に残っている水素気体をパージし、水素気体濃度を4%以下まで減少させる;
【0030】
(2)起動する前に、まず電磁弁d13と逆止弁14を開き、低酸素濃度気体貯蔵タンク7に貯蔵される低酸素濃度気体を燃料電池スタック1のアノード側に充填してパージし、残留する酸素気体を排出しまたはアノード側の酸素含有量を安全な水素チャージ(水素補填)のレベルまで減らしてから、電磁弁e15を開いて水素気体を供給する。
【0031】
燃料電池スタックのカソード側に供給される酸化剤としての気体は空気であるため、その酸素含有量は21%であり、アノード側に供給される燃料としての気体は高純度水素気体であるため、シャットダウン時に、アノード側に残っている水素気体の含有量が高く、カソード側の空気中の酸素気体をほぼ完全に消費し切ることが可能であり、得られた気体は主に低酸素濃度気体とレアガス等を含むため、電堆に残っている水素気体のパージに用いることができると共に、その一部を保存して、起動時にアノード側の酸素をパージすることができる。
【実施例2】
【0032】
図2に示すように、燃料電池スタック1と、燃料電池スタックのカソードに接続する空気供給システムと、燃料電池スタックのアノードに接続する水素気体供給システムと、を備え、空気供給システムは、空気圧縮機2と、空気進入パイプライン3と、空気排気パイプライン4と、を備え、前記水素気体供給システムは、水素気体貯蔵タンクと、水素気体進入パイプライン5及び水素気体排気パイプラインと、を備える、燃料電池システムであって、前記空気排気パイプライン4は分岐パイプライン6を介して低酸素濃度気体貯蔵タンク7に接続され、当該低酸素濃度気体貯蔵タンク7は循環パイプライン8を介して水素気体進入パイプライン5に接続され、前記空気進入パイプライン3と水素気体進入パイプライン5との間に接続パイプ9が設けられ、当該接続パイプには電磁弁a10が設けられ、 前記空気排気パイプライン(4)には電磁弁b(11)が設けられ;前記分岐パイプライン(6)には電磁弁c(12)が設けられ;前記循環パイプライン(8)には電磁弁d(13)と逆止弁(14)とが設けられ;前記水素気体進入パイプライン(5)には電磁弁e(15)が設けられ;前記水素気体排気パイプラインには水素気体含有量を測定するセンサーが設けられている。
【0033】
上記システムには、実施例1で述べた水素気体と酸素をパージする機能に加え、シャットダウン時にシステムに蓄積された水を安全に排出することも可能であり、その方法は次のとおりである:
【0034】
(1)シャットダウン過程中または低酸素含有量気体を生成する必要がある場合は、空気圧縮機2を停止しまたは空気圧縮機の回転速度を下げて空気供給を減らし、電磁弁b11を閉じ、電磁弁c12と電磁弁d13及び逆止弁14を開き、燃料電池スタック1のアノード側に残ったまたは必要に応じて保存されている水素気体を使用して、継続的に発電し、カソード側の空気中の酸素気体を消費し切って、低酸素濃度気体(通常は、酸素含有量が15%以下)を取得し、当該低酸素濃度気体は分岐パイプライン6を介して低酸素濃度気体貯蔵タンク7に貯蔵され、その後循環パイプライン8を介して燃料電池スタック1のアノード側に送られ、アノード側の流路をパージして、水素気体濃度を4%以下まで減少させる;
【0035】
(2)電磁弁d13を閉め、残った低酸素濃度気体を低酸素濃度気体貯蔵タンク7に貯蔵し、電磁弁a10を開き、空気圧縮機2が燃料電池スタック1のアノード側とカソード側に同時に高圧で多量の空気を送り、燃料電池スタック内に残留する反応水を効果的にパージする。
図1
図2