(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】4-ニトロフェノールの触媒分解が可能な変性CNF膜とその調製方法及び応用
(51)【国際特許分類】
B01J 31/28 20060101AFI20220831BHJP
C01G 3/02 20060101ALI20220831BHJP
B01J 37/34 20060101ALI20220831BHJP
B01J 31/06 20060101ALI20220831BHJP
D06M 11/42 20060101ALI20220831BHJP
D06M 101/06 20060101ALN20220831BHJP
【FI】
B01J31/28 Z
C01G3/02
B01J37/34
B01J31/06 Z
D06M11/42
D06M101:06
(21)【出願番号】P 2021517357
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(86)【国際出願番号】 CN2020076726
(87)【国際公開番号】W WO2021068449
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】201910954943.0
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520063990
【氏名又は名称】斉魯工業大学
【氏名又は名称原語表記】QILU UNIVERSITY OF TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】No.3501, Daxue Road, ChangQing District,Jinan City, Shandong Province 250353 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 兆云
(72)【発明者】
【氏名】楊 桂花
(72)【発明者】
【氏名】除 嘉川
(72)【発明者】
【氏名】和 銘
(72)【発明者】
【氏名】▲ジ▼ 徳賢
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104492486(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106512876(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110227509(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108940268(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103642062(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C01G 3/02
D06M 11/42
D06M 101/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノセルロース繊維とナノCuO粒子を含み、前記ナノCuO粒子
そのものは前記ナノセルロース繊維上でその場で成長し、前記ナノセルロース繊維は表面にアミン基がカップリンググラフトされていて、前記アミン基がアルコールアミン基であることを特徴とする4-ニトロフェノールの触媒分解が可能な変性ナノセルロース繊維膜。
【請求項2】
前記ナノセルロース繊維とナノCuO粒子の質量比が1:1~2であることを特徴とする請求項1に記載の変性ナノセルロース繊維膜。
【請求項3】
前記ナノセルロース繊維のアミン基は、グリコールアミンによって提供されることを特徴とする請求項1に記載の変性ナノセルロース繊維膜。
【請求項4】
前記ナノセルロース繊維の長さが500~2000nm、直径が10~50nmであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の変性ナノセルロース繊維膜。
【請求項5】
4-ニトロフェノールの触媒分解が可能な変性ナノセルロース繊維膜の調製方法であって、
CNFの懸濁液及び過酸化水素-アンモニア水混合物を混合し、均一に攪拌してから遠心分離し、得られたCNFを中性になるまで洗浄し、予備するステップ1と、
ステップ1で処理したナノセルロース繊維、水溶性銅源、及びアルカリ液を混合した後、黒色が現れるまで撹拌条件下で反応を行い、CNF@CuOを得るステップ2と、
CNF@CuOを再分散させてシランカップリング剤に添加し、水浴条件下で反応させ、前記反応終了後、反応液を遠心分離及び沈殿物を洗浄して回収し、疎水性変性CNF@CuOを取得するステップ3と、
疎水性変性されたCNF@CuOにグリコールアミンを加えて反応系の酸素を除去し、水浴条件下で反応させて、前記反応が完了した後、反応液を遠心分離し、沈殿物を洗浄して回収し、アミン基がグラフトされている変性ナノセルロース繊維の懸濁液を得るステップ4と、
前記アミン基をグラフトした変性ナノセルロース繊維の懸濁液をポリビニルアルコールと混合し、フィルムにキャストして、前記変性ナノセルロース繊維膜を得るステップ5と、を含むことを特徴とする
前記調製方法。
【請求項6】
前記ステップ1では、CNFの懸濁液を硫酸法で調製し、超音波処理を行うことを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項7】
前記ステップ1では、CNFの懸濁液と過酸化水素-アンモニア水混合液の添加比が1~2g:10mLであることを特徴とする請求項5記載の調製方法。
【請求項8】
前記ステップ1では、過酸化水素-アンモニア水混合液中の両者の質量比が1:1~2であることを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項9】
前記ステップ2では、水溶性銅源には、硫酸銅、硝酸銅、及び塩化銅のいずれか1つが含まれることを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項10】
前記ステップ2では、アルカリ液が水酸化ナトリウム水溶液またはアンモニア水であることを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項11】
前記ステップ2では、攪拌温度が60~90℃であることを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項12】
前記ステップ3では、水浴の温度が50~85℃であることを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項13】
前記ステップ3では、CNF@CuOとシランカップリング剤の質量比が10~5:1であることを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項14】
前記ステップ3では、シランカップリング剤には、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン及びγ-(2,3-グリシドキシ)プロピルトリメトキシシランのいずれか1つが含まれることを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項15】
前記ステップ4では、反応系中の酸素を除去するための方法が、窒素を反応系に連続的に通過させることであることを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項16】
前記ステップ4では、前記グリコールアミンの量が1~30wt%であることを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項17】
前記ステップ4では、前記グリコールアミンの量が5~20wt%であることを特徴とする請求項16に記載の調製方法。
【請求項18】
前記ステップ4では、水浴の温度が45~60℃であることを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項19】
前記ステップ5では、アミン基がグラフト化されている変性ナノセルロース繊維懸濁液とポリビニルアルコールの体積比が2~4:1であることを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項20】
前記ステップ5では、アミン基がグラフトされている変性ナノセルロース繊維懸濁液の濃度が1.0wt%、1.2wt%、または1.5wt%であることを特徴とする請求項19に記載の調製方法。
【請求項21】
請求項1から4のいずれか一項に記載の変性ナノセルロース繊維膜または請求項5から20のいずれか一項に記載の方法により調製された変性ナノセルロース繊維膜を4-ニトロフェノール溶液に添加し、同時にNaBH
4を加えて攪拌し、前記4-ニトロフェノールを触媒分解する4-ニトロフェノールの触媒分解する方法。
【請求項22】
前記変性ナノセルロース繊維膜とNaBH
4の質量比が1~10:6であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記触媒分解が完了した後、前記変性されたナノセルロース膜は遠心分離によって回収されることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記回収後に得られた変性ナノセルロース膜を、4-ニトロフェノールの触媒分解に使用することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1から4のいずれか一項に記載の変性ナノセルロース繊維膜及び/または請求項5から20のいずれか一項に記載の方法により調製された変性ナノセルロース繊維膜の、環境、化学工業及び医学分野における応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年10月9日に中国特許庁に提出した出願番号がCN201910954943.0、発明名称が「4-ニトロフェノールの触媒分解が可能な変性CNF膜とその調製方法及び応用」である中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容が本出願に組み込まれて、援用される。
【0002】
本発明は、ナノセルロース繊維触媒の技術分野に関し、特に、4-ニトロフェノールの触媒分解が可能な変性CNF膜、及びその調製方法及び応用に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景技術に開示された情報は、本発明の全体的な背景の理解を高めることのみを目的とし、必ずしも、当該情報構成が当業者に知られている先行技術になったことを認めるか、またはいかなる形で提案するものと見なされてはいけない。
【0004】
4-ニトロフェノールは、頑固な水の不純物であり、染料、農薬、製薬業界に広く由来し、有毒な有機汚染物質である。4-ニトロフェノールを4-アミノフェノールに変換することで、4-ニトロフェノールの毒性を低減できる。また、4-アミノフェノールは、幅広い用途を有する微細な有機化学中間体の一つとして、製薬業界でパラセタモールなどを合成するために使用されることができる。また、現像剤、抗酸化剤及び石油添加剤などの製品の調製にも使用されることができる。
【0005】
現在、4-ニトロフェノールの触媒分解には、主に光触媒分解法とナノ貴金属粒子の触媒分解法の2つの方法がある。光触媒分解は、主に半導体(例えば、ナノ-TiO2、ナノ-ZnOなど)に387.5nm未満の波長の紫外線が照射される場合に、価電子帯の電子が励起され、移行して伝導帯に入り、したがって伝導帯に負に帯電した高活性電子(e-)を生成して、価電子帯に正に帯電した正孔(h+)を残し、電界の作用下で、電子と正孔は分離し、粒子表面の別々の部分に移動して、酸化還元システムを形成し、4-ニトロフェノールは犠牲剤として触媒還元される。しかし、半導体材料の価格は比較的高く、光触媒反応が条件に厳しい、反応が遅く、工業化には不可能である。貴金属粒子は、粒径が小さく、表面原子の占有率が高く、独特の量子サイズ効果、表面効果及びマクロ量子トンネリング効果などを有し、多くの独特な光学的、電気的、触媒的特性などを生み出し、比表面積と表面活性が非常に高く、4-ニトロフェノールを効率的に触媒分解できるが、貴金属のコストが高く、経済的な面で実用性が低く、また、光触媒分解法やナノ貴金属粒子分解法では、触媒の回収が困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術問題・達成する目的には、従来の方法において、4-ニトロフェノール分解に化学物質の使用量が多く、処理効果が不十分の問題を解決するために、(1)4-ニトロフェノール(廃水などにある)を処理できる再利用できる触媒の調製、(2)高い触媒効率、(3)再利用する際に高い触媒効率が少なくとも含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、4-ニトロフェノールの触媒分解が可能な変性ナノセルロース繊維膜及びその調製方法及び応用を提供し、本発明は、原料としてナノセルロース繊維(CNF)を使用し、ナノCuO粒子は、ナノセルロース繊維上にその場で
成長し、ナノセルロース繊維は、表面にアミン基がカップリンググラフトされていて、4-ニトロフェノールの分解触媒する能力があり、ポリビニルアルコールと混合されて膜になり、下水処理に使用され、また、リサイクルが可能で、CNFの産業化応用に新しい方向性を提供できる。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決策を提供する。
本発明はナノセルロース繊維とナノCuO粒子を含み、前記ナノCuO粒子は前記ナノセルロース繊維上でその場で成長し、前記ナノセルロース繊維は表面にアミン基がカップリンググラフトされていて、前記アミン基がアルコールアミン基である4-ニトロフェノールの触媒分解が可能な変性ナノセルロース繊維膜を提供する。
【0009】
好ましくは、前記ナノセルロース繊維とナノCuO粒子の質量比は1:1~2である。
【0010】
好ましくは、前記ナノセルロース繊維のアミン基は、グリコールアミンによって提供される。
【0011】
好ましくは、前記ナノセルロース繊維の長さは500~2000nm、直径は10~50nmである。
【0012】
本発明は、CNFの懸濁液及び過酸化水素-アンモニア水混合物を混合し、均一に攪拌してから遠心分離し、得られたCNFを中性になるまで洗浄し、準備するステップ1と、
ステップ1で処理したナノセルロース繊維、水溶性銅源、及びアルカリ液を混合した後、黒色が現れるまで撹拌条件下で反応を行い、CNF@CuOを得るステップ2と、
CNF@CuOを再分散させてシランカップリング剤に添加し、水浴条件下で反応させ、前記反応終了後、反応液を遠心分離し、沈殿物を洗浄して回収し、疎水性変性CNF@CuOを取得するステップ3と、
疎水性変性されたCNF@CuOにグリコールアミンを加えて反応系の酸素を除去し、水浴条件下で反応させて、前記反応が完了した後、反応液を遠心分離し、沈殿物を洗浄して回収し、アミン基がグラフトされている変性ナノセルロース繊維の懸濁液を得るステップ4と、
前記アミン基をグラフトした変性ナノセルロース繊維の懸濁液をポリビニルアルコールと混合し、フィルムにキャストして、前記変性ナノセルロース繊維膜を得るステップ5と、を含む4-ニトロフェノールの触媒分解が可能な変性ナノセルロース繊維膜の調製方法を提供する。
【0013】
好ましくは、前記ステップ1では、CNFの懸濁液を硫酸法で調製し、超音波処理を行う。
【0014】
好ましくは、前記ステップ1では、CNFの懸濁液と過酸化水素-アンモニア水混合液の添加比は1~2g:10mLである。
【0015】
好ましくは、前記ステップ1では、過酸化水素-アンモニア水混合液中の両者の質量比は1:1~2である。
【0016】
好ましくは、前記ステップ2では、水溶性銅源には、硫酸銅、硝酸銅、及び塩化銅のいずれか1つが含まれる。
【0017】
好ましくは、前記ステップ2では、アルカリ液は水酸化ナトリウム水溶液またはアンモニア水である。
【0018】
好ましくは、前記ステップ2では、攪拌温度は60~90℃である。
【0019】
好ましくは、前記ステップ3では、水浴の温度は50~85℃である。
【0020】
好ましくは、前記ステップ3では、CNF@CuOとシランカップリング剤の質量比は10~5:1である。
【0021】
好ましくは、前記ステップ3では、シランカップリング剤には、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン及びγ-(2,3-グリシドキシ)プロピルトリメトキシシランのいずれか1つが含まれる。
【0022】
好ましくは、前記ステップ4では、反応系中の酸素を除去するための方法は、窒素を反応系に連続的に通過させることである。
【0023】
好ましくは、前記ステップ4では、前記グリコールアミンの量は1~30wt%である。
【0024】
好ましくは、前記ステップ4では、前記グリコールアミンの量は5~20wt%である。
【0025】
好ましくは、前記ステップ4では、水浴の温度は45~60℃である。
【0026】
好ましくは、前記ステップ5では、アミン基がグラフトされている変性ナノセルロース繊維懸濁液とポリビニルアルコールの体積比は2~4:1である。
【0027】
好ましくは、前記ステップ5では、アミン基がグラフトされている変性ナノセルロース繊維懸濁液の濃度は1.0wt%、1.2wt%、または1.5wt%である。
【0028】
本発明は、また、前記変性ナノセルロース繊維膜を4-ニトロフェノール溶液に添加し、同時にNaBH4を加えて攪拌し、前記4-ニトロフェノールを触媒分解する4-ニトロフェノールの触媒分解する方法を提供する。
【0029】
好ましくは、前記変性ナノセルロース繊維膜とNaBH4の質量比は1~10:6である。
【0030】
好ましくは、前記触媒分解が完了した後、前記変性されたナノセルロース膜は遠心分離によって回収される。
【0031】
好ましくは、前記回収後に得られた変性ナノセルロース膜を、4-ニトロフェノールの触媒分解に使用する。
【0032】
本発明は、また、前記変性ナノセルロース繊維膜の、環境、化学工業及び医学分野における応用を提供する。
【発明の効果】
【0033】
従来技術と比較して、本発明は、以下の有益な効果を達成した。
(1)本発明は、CNFを原料として使用し、水系条件下で変性が行われるため、エコで、再生可能な利点がある。
【0034】
(2)本発明の変性CNF膜は、4-ニトロフェノールを分解できる優れた触媒分解能
力を有し、初めて使用する場合の分解率は94%以上に達することができ、また、短時間で効率的に4-ニトロフェノールを触媒分解でき、高効率の触媒分解能力により、本発明の変性CNF膜の使用量は、伝統的な化学物質による4-ニトロフェノールを処理するための使用量に比べて、大幅に削減した。
【0035】
(3)本発明の変性CNF膜は、4-ニトロフェノールを4-アミノフェノールに変換でき、4-ニトロフェノールの毒性を低減できるだけでなく、4-アミノフェノールを微細な有機化学中間体として使用することもできる。
【0036】
(4)本発明の変性CNF膜は、脱イオン水で洗浄することにより回収でき、洗浄剤であり、複数回の使用-回復-使用後も、4-ニトロフェノールの分解率を依然として85%以上に維持する。
【0037】
(5)本発明の調製方法は、簡単であり、強力な分解能力、強力な実用性を有し、普及しやすい。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の詳細な説明はすべて例示的なものであり、本発明のさらなる説明を提供することを意図していることに留意されたい。特に明記しない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0039】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、本発明による実施例を限定することを意図するものではないことに留意されたい。例えば、本明細書で使用される、文脈が明確に別段の指示をしない限り、単数形は複数形も含むことを意図している。さらに、「含む」及び/または「含める」という用語が使用された場合、機能、ステップ、操作、デバイス、コンポーネント、及び/またはそれらの組み合わせがあることを示している。
【0040】
上記のように、廃水中の4-ニトロフェノールをエコで、再生可能な材料で処理し、化学物質の使用を減らし、処理効率を改善することなどは、4-ニトロフェノールの分解を達成するための重要な方法である。そのため、本発明は、4-ニトロフェノールの触媒分解が可能な変性ナノセルロース繊維膜及びその調製方法を提供した。
【0041】
本発明はナノセルロース繊維とナノCuO粒子を含み、前記ナノCuO粒子は前記ナノセルロース繊維上でその場で成長し、前記ナノセルロース繊維は表面にアミン基がカップリンググラフトされている4-ニトロフェノールの触媒分解が可能な変性ナノセルロース繊維膜を提供する。
【0042】
いくつかの典型的な実施形態では、前記ナノセルロース繊維の長さは500~2000nm、直径は10~50nmであり、
いくつかの典型的な実施形態では、前記変性ナノセルロース繊維膜におけるCNFと前記ナノCuO粒子の質量比は1:1~2であり、過剰なナノCuO粒子により、ナノCuO粒子はCNFネットワーク構造に分散された量が増加し、洗浄プロセス中に損失する。
【0043】
いくつかの典型的な実施形態では、前記変性ナノセルロース繊維膜におけるアミン基は、グリコールアミンによって提供さる。
【0044】
本発明は、また、
CNFの懸濁液及び過酸化水素-アンモニア水混合物を混合し、均一に攪拌してから遠
心分離し、得られたCNFを中性になるまで洗浄し、予備するステップ1と、
ステップ1で処理したナノセルロース繊維、水溶性銅源、及びアルカリ液を混合した後、黒色が現れるまで撹拌条件下で反応を行い、CNF@CuOを得るステップ2と、
CNF@CuOを再分散させてシランカップリング剤に添加し、水浴条件下で反応させ、前記反応終了後、反応液を遠心分離及び沈殿物を洗浄して回収し、疎水性変性CNF@CuOを取得するステップ3と、
疎水性変性されたCNF@CuOにグリコールアミンを加えて反応系の酸素を除去し、水浴条件下で反応さ、前記反応が完了後、反応液を遠心分離し、沈殿物を洗浄して回収し、アミン基がグラフトされている変性ナノセルロース繊維の懸濁液を得るステップ4と、
前記アミン基をグラフトした変性ナノセルロース繊維の懸濁液をポリビニルアルコールと混合し、フィルムにキャストして、前記変性ナノセルロース繊維膜を得るステップ5と、を含む前記変性ナノセルロース繊維膜の調製方法を提供する。
【0045】
いくつかの典型的な実施形態では、CNFの懸濁液を硫酸法で調製し、超音波処理を行う。
【0046】
いくつかの典型的な実施形態では、前記ステップ1では、CNFの懸濁液と過酸化水素-アンモニア水混合液の添加比は1~2g:10mLである。
【0047】
いくつかの典型的な実施形態では、前記ステップ1では、過酸化水素-アンモニア水混合液中の両者の質量比は1:1~2である。
【0048】
いくつかの典型的な実施形態では、前記ステップ1では、過酸化水素-アンモニア水混合液中の両者の質量比は1:1~2である。過酸化水素-アンモニア水混合物を添加する主な目的は、CNFの表面に付着しているスルホン酸基を除去し、ヒドロキシル基含有量を増やして、CNFの表面活性を高めて、後続の変性プロセスに役立つことである。
【0049】
いくつかの典型的な実施形態では、前記ステップ2では、水溶性銅源には、硫酸銅、硝酸銅、及び塩化銅が含まれる。
【0050】
いくつかの典型的な実施形態では、前記ステップ2では、前記攪拌温度は60~90℃である。
【0051】
いくつかの典型的な実施形態では、前記ステップ3では、CNF@CuOとシランカップリング剤の質量比は10~5:1である。シランカップリング剤は主にCNFの表面にグラフトされ、疎水性を向上させ、また、シランカップリング剤はグリコールアミンにカップリンググラフトできるが、CNF@CuOとシランカップリング剤の質量比が5:1を超えると、CNFの疎水性が大幅に増加し、水の中での変性CNF膜の触媒分解作用に対して不利である。
【0052】
いくつかの典型的な実施形態では、前記ステップ3では、シランカップリング剤には、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン及びγ-(2,3-グリシドキシ)プロピルトリメトキシシランのいずれか1つが含まれる。
【0053】
いくつかの典型的な実施形態では、前記ステップ4では、反応系中の酸素を除去するための方法は、窒素を反応系に連続的に通過させることである。
【0054】
いくつかの典型的な実施形態では、前記ステップ4では、前記グリコールアミンの量は1~30wt%である。グリコールアミンを添加する主な目的は、触媒活性を有するアル
コールアミン基をグラフトして、シラン基の-Clを置き換えることである。
【0055】
いくつかの典型的な実施形態では、前記ステップ4では、前記グリコールアミンの量は5~20wt%である。本発明のさらなる研究により、グリコールアミンの量が5wt%未満の場合、変性CNF膜は、4-ニトロフェノールに対する触媒分解の効果が良好ではなく、グリコールアミンの量が20wt%を超える場合、グリコールアミンの量を増やし続けることは、4-ニトロフェノールの触媒分解にほとんど影響を与えないことが見出された。
【0056】
いくつかの典型的な実施形態では、前記ステップ4では、水浴の温度は45~60℃である。
【0057】
いくつかの典型的な実施形態では、前記ステップ5では、アミン基がグラフトされている変性ナノセルロース繊維懸濁液とポリビニルアルコールの体積比は2~4:1である。
【0058】
いくつかの典型的な実施形態では、前記ステップ5では、アミン基がグラフトされている変性ナノセルロース繊維懸濁液の濃度は1.0wt%、1.2wt%、または1.5wt%である。
【0059】
本発明は、また、前記変性ナノセルロース繊維膜を4-ニトロフェノール溶液に添加し、同時にNaBH4を加えて攪拌し、前記4-ニトロフェノールを触媒分解する、4-ニトロフェノールを触媒分解する方法を提供する。
【0060】
いくつかの典型的な実施形態では、前記4-ニトロフェノールの触媒分解する方法前記変性ナノセルロース繊維膜とNaBH4の質量比は1~10:6であり、10:6を超えると、4-ニトロフェノールの除去率の改善が著しくない。
【0061】
いくつかの典型的な実施形態では、前記触媒分解が完了した後、前記変性されたナノセルロース膜は遠心分離によって回収され、又は、変性CNF膜は、脱イオン水で洗浄することにより回収でき、4-ニトロフェノールの触媒分解に再利用できる。
【0062】
本発明は、また、前記変性ナノセルロース繊維膜の、環境、化学工業及び医学分野における応用を提供する。
【0063】
次に、本発明を特定の実施形態と併せてさらに説明する。
【0064】
実施例1
1. 4-ニトロフェノールの触媒分解が可能な変性ナノセルロース繊維膜であって、具体的なステップは次のとおりである。
(1)CNF懸濁液の調製:
a)ユーカリパルプ板を完全に分解するまで脱イオン水に浸し、パルプを48°SRの叩き度まで叩き、脱水して、12時間密封し、バランスを取ってから、水分を測定し、予備する。
【0065】
b)適切な量のスラリー(絶対乾燥スラリーと比較して)を取り、それを3つ口のフラスコに入れ、18:1の酸とパルプ比で適切な量の64%濃硫酸を加え、50℃の水浴で1時間酸加水分解を行い、反応が完了したら脱イオン水を加えて反応を停止し、遠心分離して上澄みのpHが3になるまで洗浄し、透析液が中性になるまで沈殿置換透析する。
【0066】
c)沈殿物を取り出し、超音波セル粉砕機に入れ、1200Wで30分間処理した後、
高圧ホモジナイザーの第一のバルブ圧力を80bar、第二のバルブ圧力を350barで15分間ホモジナイズして、CNF懸濁液を取得する。
【0067】
(2)変性CNF膜の調製:
d)ステップc)のCNF懸濁液10gを3つ口フラスコに入れ、100mLのH2O2とNH3・H2Oの混合液(質量比が1:1)を加え、室温で1時間機械的に攪拌し、中性になるまで、脱イオン水で洗浄し遠心分離して、沈殿物を集めて、水分を測定する。
【0068】
e)8gのステップd)で処理されたCNFを3つ口フラスコに入れ、0.2MのCuSO4と1.0MのNaOHを100mLの脱イオン水に分散させて、3つ口フラスコに移し、溶液が黒くなるまで60℃で4時間攪拌し、CNF@CuOを取得し、ここで、CNFとCuOの質量比は1:1である。
【0069】
f)8gのステップe)からのCNF@CuOを取り、160mLの水エタノール(水とエタノールの質量比が1:3)を加えて再分散させ、0.8gの3-アミノプロピルトリエトキシシランを加え、50℃の水浴に6時間攪拌し、遠心分離して、濾液に塩化物イオンが含まれなくなるまで洗浄し、沈殿物を収集して水分を測定する。得られた沈殿物は疎水的に変性されたCNF@CuO(CNF@CuO-APTS)である。
【0070】
g)6gのステップf)のCNF@CuO-APTSを3つ口フラスコに入れ、1wt%のグリコールアミン(ステップf)のCNF@CuO-APTSと比較して)を加え、窒素を注ぎ続け、45℃の水浴で12時間反応させ、濾液に塩化物イオンが含まれなくなるまで洗浄し遠心分離して、沈殿物を集めて、変性CNF懸濁液を取得し、
h)ステップg)の変性CNF懸濁液は、4:1の体積でポリビニルアルコールと混合され、キャストされてフィルムを形成して得られる。
【0071】
2. 変性CNF膜による4-ニトロフェノールの触媒分解の試験:
50mLの1mmol/L4-ニトロフェノールをビーカーに入れ、100mgの変性CNF膜と600mgのNaBH4を同時に加え、5分間機械的に攪拌し、遠心分離して変性CNF膜を回収し、上部の液体を収集し、紫外可視分光光度計でスキャンし、400nmの波長での吸光度を記録し、その濃度を計算する。変性CNF膜は、脱イオン水で洗浄することにより回収され、再利用される。
【0072】
実施例2
1. 4-ニトロフェノールの触媒分解が可能な変性ナノセルロース繊維膜であって、具体的なステップは次のとおりである。
(1)CNF懸濁液の調製:実施例1と同じ。
【0073】
(2)変性CNF膜の調製:
d)ステップc)のCNF懸濁液10gを3つ口フラスコに入れ、100mLのH2O2とNH3・H2Oの混合液(質量比が1:1)を加え、室温で1時間機械的に攪拌し、中性になるまで、脱イオン水で洗浄し遠心分離して、沈殿物を集めて、水分を測定する。
【0074】
e)8gのステップd)で処理されたCNFを3つ口フラスコに入れ、0.2MのCuSO4と1.0MのNaOHを100mLの脱イオン水に分散させて、3つ口フラスコに移し、溶液が黒くなるまで60℃で4時間攪拌し、沈殿物であるCNF@CuOを取得し、ここで、CNFとCuOの質量比は1:1である。
【0075】
f)8gのステップe)からのCNF@CuOを取り、160mLの水エタノール(水とエタノールの質量比が1:3)を加えて再分散させ、0.8gのγ-メタクリロキシプ
ロピルトリメトキシシランを加え、50℃の水浴に6時間攪拌し、遠心分離して、濾液に塩化物イオンが含まれなくなるまで洗浄し、沈殿物を収集して水分を測定する。得られた沈殿物は、疎水的に変性されたCNF@CuO(CNF@CuO-APTS)である。
【0076】
g)6gのステップf)のCNF@CuO-MPSを3つ口フラスコに入れ、5wt%のグリコールアミン(ステップf)のCNF@CuO-APTSと比較して)を加え、窒素を注ぎ続け、45℃の水浴で12時間反応させ、濾液に塩化物イオンが含まれなくなるまで洗浄し遠心分離して、沈殿物を集めて、変性CNF懸濁液を取得し、
h)ステップg)の変性CNF懸濁液(濃度が1.0wt%)は、4:1の体積でポリビニルアルコールと混合され、キャストされてフィルムを形成して得られる。
【0077】
2. 変性CNF膜による4-ニトロフェノールの触媒分解の試験:
50mLの1mmol/L 4-ニトロフェノールをビーカーに入れ、100mgの変性CNF膜と600mgのNaBH4を同時に加え、5分間機械的に攪拌し、遠心分離して変性CNF膜を回収し、上部の液体を収集し、紫外可視分光光度計でスキャンし、400nmの波長での吸光度を記録し、その濃度を計算する。変性CNF膜は、脱イオン水で洗浄することにより回収され、再利用される。
【0078】
実施例3
1. 4-ニトロフェノールの触媒分解が可能な変性ナノセルロース繊維膜であって、具体的なステップは次のとおりである。
(1)CNF懸濁液の調製:実施例1と同じ。
【0079】
(2)変性CNF膜の調製:
d)ステップc)のCNF懸濁液10gを3つ口フラスコに入れ、100mLのH2O2とNH3・H2Oの混合液(質量比が1:1)を加え、室温で1時間機械的に攪拌し、中性になるまで、脱イオン水で洗浄し遠心分離して、沈殿物を集めて、水分を測定する。
【0080】
e)8gのステップd)で処理されたCNFを3つ口フラスコに入れ、0.2MのCuSO4と1.0MのNaOHを100mLの脱イオン水に分散させて、3つ口フラスコに移し、溶液が黒くなるまで60℃で4時間攪拌し、CNF@CuOを取得し、ここで、CNFとCuOの質量比は1:1である。
【0081】
f)8gのステップe)からのCNF@CuOを取り、160mLの水エタノール(水とエタノールの質量比が1:3)を加えて再分散させ、0.8gのγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを加え、50℃の水浴に6時間攪拌し、遠心分離して、濾液に塩化物イオンが含まれなくなるまで洗浄し、沈殿物を収集して水分を測定する。得られた沈殿物は疎水的に変性されたCNF@CuO(CNF@CuO-APTS)である。
【0082】
g)6gのステップf)のCNF@CuO-MPSを3つ口フラスコに入れ、5wt%のグリコールアミン(ステップf)のCNF@CuO-APTSと比較して)を加え、窒素を注ぎ続け、45℃の水浴で12時間反応させ、濾液に塩化物イオンが含まれなくなるまで洗浄し遠心分離して、沈殿物を集めて、変性CNF懸濁液を取得し、
h)ステップg)の変性CNF懸濁液(濃度が1.2wt%)は、4:1の体積でポリビニルアルコールと混合され、キャストされてフィルムを形成して得られる。
【0083】
2. 変性CNF膜による4-ニトロフェノールの触媒分解の試験:
50mLの1mmol/L4-ニトロフェノールをビーカーに入れ、100mgの変性CNF膜と600mgのNaBH4を同時に加え、5分間機械的に攪拌し、遠心分離して変性CNF膜を回収し、上部の液体を収集し、紫外可視分光光度計でスキャンし、400
nmの波長での吸光度を記録し、その濃度を計算する。変性CNF膜は、脱イオン水で洗浄することにより回収され、再利用される。
【0084】
実施例4
1. 4-ニトロフェノールの触媒分解が可能な変性ナノセルロース繊維膜であって、具体的なステップは次のとおりである。
(1)CNF懸濁液の調製:実施例1と同じ。
【0085】
(2)変性CNF膜の調製:
d)20gの上記のナノセルロースフィラメントの懸濁液を3つ口フラスコに入れ、100mLのH2O2とNH3・H2Oの混合液(質量比が1:2)を加え、室温で1時間機械的に攪拌し、中性になるまで、脱イオン水で洗浄し遠心分離して、沈殿物を集めて、水分を測定する。
【0086】
e)8gのステップd)で処理されたCNFを3つ口フラスコに入れ、0.2MのCuSO4と1.0MのNaOHを100mLの脱イオン水に分散させて、3つ口フラスコに移し、溶液が黒くなるまで70℃で4時間攪拌し、CNF@CuOを取得し、ここで、CNFとCuOの質量比は1:2である。
【0087】
f)8gのステップe)からのCNF@CuOを取り、160mLの水エタノール(水とエタノールの質量比が1:3)を加えて再分散させ1.0gのγ-(2,3-プロピレンオキシド)プロピルトリメトキシシランを加え、60℃の水浴に6時間攪拌し、遠心分離して、濾液に塩化物イオンが含まれなくなるまで洗浄し、沈殿物を収集して水分を測定する。得られた沈殿物は疎水的に変性されたCNF@CuO(CNF@CuO-APTS)である。
【0088】
g)6gの上記のCNF@CuO-EPPMを取り、3つ口フラスコに入れ、10wt%のグリコールアミン(ステップf)のCNF@CuO-APTSと比較して)を加え、窒素を注ぎ続け、50℃の水浴で12時間反応させ、濾液に塩化物イオンが含まれなくなるまで洗浄し遠心分離して、沈殿物を集めて、変性CNF懸濁液を取得し、
h)上記変性CNF懸濁液(濃度が1.5wt%)は、3:1の体積に従ってポリビニルアルコールと混合され、キャストされてフィルムを形成して、得られる。
【0089】
2. 変性CNF膜による4-ニトロフェノールの触媒分解の試験:
50mLの1mmol/L4-ニトロフェノールをビーカーに入れ、100mgの変性CNF膜と200mgのNaBH4を同時に加え、5分間機械的に攪拌し、遠心分離して変性CNF膜を回収し、上部の液体を収集し、紫外可視分光光度計でスキャンし、400nmの波長での吸光度を記録し、その濃度を計算する。変性CNF膜は、脱イオン水で洗浄することにより回収され、再利用される。
【0090】
実施例5
1. 4-ニトロフェノールの触媒分解が可能な変性ナノセルロース繊維膜であって、具体的なステップは次のとおりである。
(1)CNF懸濁液の調製:実施例1と同じ。
【0091】
(2)変性CNF膜の調製:
d)ステップc)のCNF懸濁液20gを3つ口フラスコに入れ、100mLのH2O2とNH3・H2Oの混合液(質量比が1:2)を加え、室温で1時間機械的に攪拌し、中性になるまで、脱イオン水で洗浄し遠心分離して、沈殿物を集めて、水分を測定する。
【0092】
e)8gのステップd)で処理されたCNFを3つ口フラスコに入れ、0.2MのCuCl2と1.0MのNaOHを100mLの脱イオン水に分散させて、3つ口フラスコに移し、溶液が黒くなるまで70℃で4時間攪拌し、CNF@CuOを取得し、ここで、CNFとCuOの質量比は1:2である。
【0093】
f)8gのステップe)からのCNF@CuOを取り、160mLの水エタノール(水とエタノールの質量比が1:3)を加えて再分散させ、1.0gの3-アミノプロピルトリエトキシシランを加え、60℃の水浴に6時間攪拌し、遠心分離して、濾液に塩化物イオンが含まれなくなるまで洗浄し、沈殿物を収集して水分を測定する。得られた沈殿物は疎水的に変性されたCNF@CuO(CNF@CuO-APTS)である。
【0094】
g)6gのステップf)のCNF@CuO-APTSを3つ口フラスコに入れ、10wt%のグリコールアミン(ステップf)のCNF@CuO-APTSと比較して)を加え、窒素を注ぎ続け、50℃の水浴で12時間反応させ、濾液に塩化物イオンが含まれなくなるまで洗浄し遠心分離して、沈殿物を集めて、変性CNF懸濁液を取得し、
h)ステップg)の変性CNF懸濁液(濃度が1.0wt%)は、4:1の体積でポリビニルアルコールと混合され、キャストされてフィルムを形成して得られる。
【0095】
2. 変性CNF膜による4-ニトロフェノールの触媒分解の試験:
50mLの1mmol/Lの4-ニトロフェノールをビーカーに入れ、200mgの変性CNF膜と200mgのNaBH4を同時に加え、5分間機械的に攪拌し、遠心分離して変性CNF膜を回収し、上部の液体を収集し、紫外可視分光光度計でスキャンし、400nmの波長での吸光度を記録し、その濃度を計算する。変性CNF膜は、脱イオン水で洗浄することにより回収され、再利用される。
【0096】
実施例6
1. 4-ニトロフェノールの触媒分解が可能な変性ナノセルロース繊維膜であって、具体的なステップは次のとおりである。
(1)CNF懸濁液の調製:実施例1と同じ。
【0097】
(2)変性CNF膜の調製:
d)ステップc)のCNF懸濁液20gを3つ口フラスコに入れ、100mLのH2O2とNH3・H2Oの混合液(質量比が1:2)を加え、室温で1時間機械的に攪拌し、中性になるまで、脱イオン水で洗浄し遠心分離して、沈殿物を集めて、水分を測定する。
【0098】
e)8gのステップd)で処理されたCNFを3つ口フラスコに入れ、0.2MのCuCl2と1.0MのNaOHを100mLの脱イオン水に分散させて、3つ口フラスコに移し、溶液が黒くなるまで70℃で4時間攪拌し、CNF@CuOを取得し、ここで、CNFとCuOの質量比は1:2である。
【0099】
f)8gのステップe)からのCNF@CuOを取り、160mLの水エタノール(水とエタノールの質量比が1:3)を加えて再分散させ、1.0gのγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを加え、60℃の水浴に6時間攪拌し、遠心分離して、濾液に塩化物イオンが含まれなくなるまで洗浄し、沈殿物を収集して水分を測定する。得られた沈殿物は疎水的に変性されたCNF@CuO(CNF@CuO-APTS)である。
【0100】
g)6gの上記CNF@CuO-MPSを3つ口フラスコに入れ、10wt%のグリコールアミン(ステップf)のCNF@CuO-APTSと比較して)を加え、窒素を注ぎ続け、50℃の水浴で12時間反応させ、濾液に塩化物イオンが含まれなくなるまで洗浄し遠心分離して、沈殿物を集めて、変性CNF懸濁液を取得し、
h)ステップg)の変性CNF懸濁液(濃度が1.0wt%)は、3:1の体積でポリビニルアルコールと混合され、キャストされてフィルムを形成して得られる。
【0101】
2. 変性CNF膜による4-ニトロフェノールの触媒分解の試験:
1mmol/Lの4-ニトロフェノール50mLをビーカーに入れ、300mgの変性CNF膜と200mgのNaBH4を同時に加え、5分間機械的に攪拌し、遠心分離して変性CNF膜を回収し、上部の液体を収集し、紫外可視分光光度計でスキャンし、400nmの波長での吸光度を記録し、その濃度を計算する。変性CNF膜は、脱イオン水で洗浄することにより回収され、再利用される。
【0102】
実施例7
1. 4-ニトロフェノールの触媒分解が可能な変性ナノセルロース繊維膜であって、具体的なステップは次のとおりである。
(1)CNF懸濁液の調製:実施例1と同じ。
【0103】
(2)変性CNF膜の調製:
d)ステップc)のCNF懸濁液10gを3つ口フラスコに入れ、100mLのH2O2とNH3・H2Oの混合液(質量比が1:1)を加え、室温で1時間機械的に攪拌し、中性になるまで、脱イオン水で洗浄し遠心分離して、沈殿物を集めて、水分を測定する。
【0104】
e)8gのステップd)で処理されたCNFを3つ口フラスコに入れ、0.2MのCu(NO3)2と1.0MのNaOHを100mLの脱イオン水に分散させて、3つ口フラスコに移し、溶液が黒くなるまで80℃で4時間攪拌し、CNF@CuOを取得し、ここで、CNFとCuOの質量比は1:1である。
【0105】
f)8gのステップe)からのCNF@CuOを取り、160mLの水エタノール(水とエタノールの質量比が1:3)を加えて再分散させ、1.3gの3-アミノプロピルトリエトキシシランを加え、70℃の水浴に6時間攪拌し、遠心分離して、濾液に塩化物イオンが含まれなくなるまで洗浄し、沈殿物を収集して水分を測定する。得られた沈殿物は疎水的に変性されたCNF@CuO(CNF@CuO-APTS)である。
【0106】
g)6gのステップf)のCNF@CuO-APTSを3つ口フラスコに入れ、15wt%のグリコールアミン(ステップf)のCNF@CuO-APTSと比較して)を加え、窒素を注ぎ続け、55℃の水浴で12時間反応させ、濾液に塩化物イオンが含まれなくなるまで洗浄し遠心分離して、沈殿物を集めて、変性CNF懸濁液を取得し、
h)ステップg)の変性CNF懸濁液(濃度が1.0wt%)は、2:1の体積でポリビニルアルコールと混合され、キャストされてフィルムを形成して得られる。
【0107】
2. 変性CNF膜による4-ニトロフェノールの触媒分解の試験:
50mLの1mmol/Lの4-ニトロフェノールをビーカーに入れ、400mgの変性CNF膜と100mgのNaBH4を同時に加え、5分間機械的に攪拌し、遠心分離して変性CNF膜を回収し、上部の液体を収集し、紫外可視分光光度計でスキャンし、400nmの波長での吸光度を記録し、その濃度を計算する。変性CNF膜は、脱イオン水で洗浄することにより回収され、再利用される。
【0108】
実施例8
1. 4-ニトロフェノールの触媒分解が可能な変性ナノセルロース繊維膜であって、具体的なステップは次のとおりである。
(1)CNF懸濁液の調製:実施例1と同じ。
【0109】
(2)変性CNF膜の調製:
d)ステップc)のCNF懸濁液10gを3つ口フラスコに入れ、100mLのH2O2とNH3・H2Oの混合液(質量比が1:1)を加え、室温で1時間機械的に攪拌し、中性になるまで、脱イオン水で洗浄し遠心分離して、沈殿物を集めて、水分を測定する。
【0110】
e)8gのステップd)で処理されたCNFを3つ口フラスコに入れ、0.2MのCu(NO3)2と1.0MのNH3・H2Oを100mLの脱イオン水に分散させて、3つ口フラスコに移し、溶液が黒くなるまで80℃で4時間攪拌し、CNF@CuOを取得し、ここで、CNFとCuOの質量比は1:1である。
【0111】
f)8gのステップe)からのCNF@CuOを取り、160mLの水エタノール(水とエタノールの質量比が1:3)を加えて再分散させ、1.3gのγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを加え、70℃の水浴に6時間攪拌し、遠心分離して、濾液に塩化物イオンが含まれなくなるまで洗浄し、沈殿物を収集して水分を測定する。得られた沈殿物は疎水的に変性されたCNF@CuO(CNF@CuO-APTS)である。
【0112】
g)6gの上記のCNF@CuO-MPSを3つ口フラスコに入れ、15wt%のグリコールアミン(ステップf)のCNF@CuO-APTSと比較して)を加え、窒素を注ぎ続け、55℃の水浴で12時間反応させ、濾液に塩化物イオンが含まれなくなるまで洗浄し遠心分離して、沈殿物を集めて、変性CNF懸濁液を取得し、
h)ステップg)の変性CNF懸濁液(濃度が1.5wt%)は、2:1の体積でポリビニルアルコールと混合され、キャストされてフィルムを形成して得られる。
【0113】
2. 変性CNF膜による4-ニトロフェノールの触媒分解の試験:
50mLの1.5mmol/Lの4-ニトロフェノールをビーカーに入れ、200mgの変性CNF膜と100mgのNaBH4を同時に加え、5分間機械的に攪拌し、遠心分離して変性CNF膜を回収し、上部の液体を収集し、紫外可視分光光度計でスキャンし、400nmの波長での吸光度を記録し、その濃度を計算する。変性CNF膜は、脱イオン水で洗浄することにより回収され、再利用される。
【0114】
実施例9
1. 4-ニトロフェノールの触媒分解が可能な変性ナノセルロース繊維膜であって、具体的なステップは次のとおりである。
(1)CNF懸濁液の調製:実施例1と同じ。
【0115】
(2)変性CNF膜の調製:
d)ステップc)のCNF懸濁液10gを3つ口フラスコに入れ、100mLのH2O2とNH3・H2Oの混合液(質量比が1:1)を加え、室温で1時間機械的に攪拌し、中性になるまで、脱イオン水で洗浄し遠心分離して、沈殿物を集めて、水分を測定する。
【0116】
e)8gのステップd)で処理されたCNFを3つ口フラスコに入れ、0.2MのCu(NO3)2と1.0MのNH3・H2Oを100mLの脱イオン水に分散させて、3つ口フラスコに移し、溶液が黒くなるまで80℃で4時間攪拌し、CNF@CuOを取得し、ここで、CNFとCuOの質量比は1:1である。
【0117】
f)8gのステップe)からのCNF@CuOを取り、160mLの水エタノール(水とエタノールの質量比が1:3)を加えて再分散させ、1.3gの3-アミノプロピルトリエトキシシランを加え、70℃の水浴に6時間攪拌し、遠心分離して、濾液に塩化物イオンが含まれなくなるまで洗浄し、沈殿物を収集して水分を測定する。得られた沈殿物は疎水的に変性されたCNF@CuO(CNF@CuO-APTS)である。
【0118】
g)6gの上記のCNF@CuO-APTSを3つ口フラスコに入れ、15wt%のグリコールアミン(ステップf)のCNF@CuO-APTSと比較して)を加え、窒素を注ぎ続け、55℃の水浴で12時間反応させ、濾液に塩化物イオンが含まれなくなるまで洗浄し遠心分離して、沈殿物を集めて、変性CNF懸濁液を取得し、
h)上記の変性CNF懸濁液(濃度が1.0wt%)は、2:1の体積でポリビニルアルコールと混合され、キャストされてフィルムを形成して得られる。
【0119】
2. 変性CNF膜による4-ニトロフェノールの触媒分解の試験:
50mLの2mmol/Lの4-ニトロフェノールをビーカーに入れ、200mgの変性CNF膜と100mgのNaBH4を同時に加え、5分間機械的に攪拌し、遠心分離して変性CNF膜を回収し、上部の液体を収集し、紫外可視分光光度計でスキャンし、400nmの波長での吸光度を記録し、その濃度を計算する。変性CNF膜は、脱イオン水で洗浄することにより回収され、再利用される。
【0120】
実施例10
1. 4-ニトロフェノールの触媒分解が可能な変性ナノセルロース繊維膜であって、具体的なステップは次のとおりである。
(1)CNF懸濁液の調製:実施例1と同じ。
【0121】
(2)変性CNF膜の調製:
d)ステップc)のCNF懸濁液20gを3つ口フラスコに入れ、100mLのH2O2とNH3・H2Oの混合液(質量比が1:2)を加え、室温で1時間機械的に攪拌し、中性になるまで、脱イオン水で洗浄し遠心分離して、沈殿物を集めて、水分を測定する。
【0122】
e)8gのステップd)で処理されたCNFを3つ口フラスコに入れ、0.2MのCuSO4と1.0MのNH3・H2Oを100mLの脱イオン水に分散させて、3つ口フラスコに移し、溶液が黒くなるまで90℃で4時間攪拌し、CNF@CuOを取得し、ここで、CNFとCuOの質量比は1:2である。
【0123】
f)8gのステップe)からのCNF@CuOを取り、160mLの水エタノール(水とエタノールの質量比が1:3)を加えて再分散させ、1.6gのγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを加え、85℃の水浴に6時間攪拌し、遠心分離して、濾液に塩化物イオンが含まれなくなるまで洗浄し、沈殿物を収集して水分を測定する。得られた沈殿物は疎水的に変性されたCNF@CuO(CNF@CuO-APTS)である。
【0124】
g)6gの上記のCNF@CuO-MPSを3つ口フラスコに入れ、20wt%のグリコールアミン(ステップf)のCNF@CuO-APTSと比較して)を加え、窒素を注ぎ続け、60℃の水浴で12時間反応させ、濾液に塩化物イオンが含まれなくなるまで洗浄し遠心分離して、沈殿物を集めて、変性CNF懸濁液を取得し、
h)上記の変性CNF懸濁液(濃度が1.0wt%)は、2:1の体積でポリビニルアルコールと混合され、キャストされてフィルムを形成して得られる。
【0125】
2. 変性CNF膜による4-ニトロフェノールの触媒分解の試験:
50mLの2.5mmol/Lの4-ニトロフェノールをビーカーに入れ、200mgの変性CNF膜と60mgのNaBH4を同時に加え、5分間機械的に攪拌し、遠心分離して変性CNF膜を回収し、上部の液体を収集し、紫外可視分光光度計でスキャンし、400nmの波長での吸光度を記録し、その濃度を計算する。変性CNF膜は、脱イオン水で洗浄することにより回収され、再利用される。
【0126】
実施例11
1. 4-ニトロフェノールの触媒分解が可能な変性ナノセルロース繊維膜であって、具体的なステップは次のとおりである。
(1)CNF懸濁液の調製:実施例1と同じ。
【0127】
(2)変性CNF膜の調製:
d)ステップc)のCNF懸濁液20gを3つ口フラスコに入れ、100mLのH2O2とNH3・H2Oの混合液(質量比が1:2)を加え、室温で1時間機械的に攪拌し、中性になるまで、脱イオン水で洗浄し遠心分離して、沈殿物を集めて、水分を測定する。
【0128】
e)8gのステップd)で処理されたCNFを3つ口フラスコに入れ、0.2MのCuSO4と1.0MのNH3・H2Oを100mLの脱イオン水に分散させて、3つ口フラスコに移し、溶液が黒くなるまで90℃で4時間攪拌し、CNF@CuOを取得し、ここで、CNFとCuOの質量比は1:2である。
【0129】
f)8gのステップe)からのCNF@CuOを取り、160mLの水エタノール(水とエタノールの質量比が1:3)を加えて再分散させ、1.6gのγ-(2,3-グリシドキシ)プロピルトリメトキシシランを加え、85℃の水浴に6時間攪拌し、遠心分離して、濾液に塩化物イオンが含まれなくなるまで洗浄し、沈殿物を収集して水分を測定する。得られた沈殿物は疎水的に変性されたCNF@CuO(CNF@CuO-APTS)である。
【0130】
g)6gの上記のCNF@CuO-EPPMを3つ口フラスコに入れ、30wt%のグリコールアミン(ステップf)のCNF@CuO-APTSと比較して)を加え、窒素を注ぎ続け、60℃の水浴で12時間反応させ、濾液に塩化物イオンが含まれなくなるまで洗浄し遠心分離して、沈殿物を集めて、変性CNF懸濁液を取得し、
h)上記の変性CNF懸濁液(濃度が1.0wt%)は、2:1の体積でポリビニルアルコールと混合され、キャストされてフィルムを形成して得られる。
【0131】
2. 変性CNF膜による4-ニトロフェノールの触媒分解の試験:
50mLの3mmol/Lの4-ニトロフェノールをビーカーに入れ、200mgの変性CNF膜と60mgのNaBH4を同時に加え、5分間機械的に攪拌し、遠心分離して変性CNF膜を回収し、上部の液体を収集し、紫外可視分光光度計でスキャンし、400nmの波長での吸光度を記録し、その濃度を計算する。変性CNF膜は、脱イオン水で洗浄することにより回収され、再利用される。
【0132】
性能試験:
濾液中の4-ニトロフェノールの濃度を性能試験指標として、実施例1~11で調製した変性ナノセルロースフィラメントで4-ニトロフェノールを処理した後の濾液の濃度を測定した。試験方法は:それぞれ0.005g/L、0.001g/L、0.0015g/L、0.002g/L、0.0025g/Lの4-ニトロフェノール標準サンプルを調整し、それらを紫外線可視分光光度計に配置して、表1に示すように、吸光度を測定し、標準曲線を作成する。
【0133】
濾液をそれぞれ紫外可視分光光度計に入れて吸光度を測定し、検量線に従って濃度を算出し、試験結果を表2、3に示す。
【0134】
【0135】
計算によると、検量線はy=16.827x+0.0151であり、こで、xは4-ニトロフェノールの濃度g/Lであり、yは紫外可視光の吸光度T%である。
【0136】
【0137】
【0138】
表2及び表3から、本発明の方法によりCNFを変性した後、短時間で効率的に4-ニ
トロフェノールを触媒分解でき、脱イオンにより洗浄し回収した後でも、依然として優れた4-ニトロフェノール除去能力を備えている。
【0139】
上記の実施形態の説明は、本発明の方法及びコアアイデアを理解するのを助けるためにのみ使用される。当業者にとって、本発明の原理から逸脱することなく、本発明にいくつかの改良及び修正を加えることができ、これらの改良及び修正もまた、本発明の特許請求の範囲に入る。これらの実施形態に対する様々な修正は当業者には明らかであり、本明細書で定義される一般原理は、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、他の実施形態で実施することができる。したがって、本発明は、本文書に示される実施形態に限定されるものではなく、本文書に開示される原理及び新規の特徴と一致する最も広い範囲に準拠する必要がある。