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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】光受信サブアセンブリ及び光モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/02 20060101AFI20220831BHJP
   H03F 3/08 20060101ALI20220831BHJP
   H03F 3/68 20060101ALI20220831BHJP
   H04B 10/69 20130101ALI20220831BHJP
【FI】
H01L31/02 B
H03F3/08
H03F3/68
H04B10/69
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018143363
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020021797
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】家村 光貴
(72)【発明者】
【氏名】榊原 靖彦
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-192510(JP,A)
【文献】特開2015-056704(JP,A)
【文献】特開2018-054737(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0063832(US,A1)
【文献】特開2012-169478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/0232、31/08-31/119
H03F 3/08、3/68
H04B 10/69
G02B 6/42-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数チャネルに対応して、バイアスが印加される第1電極及び第2電極をそれぞれが有し、入力された光信号を電気信号に変換して前記第1電極から前記電気信号をそれぞれが出力するように、モノリシック集積された複数の受光素子と、
前記複数チャネル対応して、前記第1電極及び第2電極にそれぞれ電気的に接続する第1配線及び第2配線をそれぞれが有する複数の回路を備え、前記複数の受光素子が搭載されるキャリアと、
前記複数チャネルに対応して、第1パッド及び第2パッドをそれぞれが有し、前記電気信号をそれぞれが増幅するように、モノリシック集積された複数の増幅素子と、
前記複数チャネルのそれぞれで、前記第1配線及び前記第1パッドを接続する第1ワイヤ並びに前記第2配線及び前記第2パッドを接続する第2ワイヤと、
を有し、
前記複数チャネルは、前記第1ワイヤ及び前記第2ワイヤの合計ワイヤ長さにおいて異なるように隣り合う一対のチャネルを含み、
前記一対のチャネルは、前記複数の回路のそれぞれが前記第2電極及び前記第2ワイヤの間に有する抵抗値において異なり、
前記一対のチャネルのうち前記合計ワイヤ長さが長い方で、前記抵抗値がより高く、
前記第2ワイヤは、一対の第2ワイヤを含み、
前記一対の第2ワイヤは、長さが異なり、
前記一対の第2ワイヤのうち長い方と前記第2電極との間でのみ、抵抗器が前記第2配線に直列接続されていることを特徴とする光受信サブアセンブリ。
【請求項2】
請求項1に記載された光受信サブアセンブリであって、
前記複数の増幅素子は、一列に並び、
前記複数の回路は、前記複数の増幅素子の並びに沿って、一列に並び、
前記複数の回路のピッチは、前記複数の増幅素子のピッチとは異なることを特徴とする光受信サブアセンブリ。
【請求項3】
請求項2に記載された光受信サブアセンブリであって、
前記複数の受光素子は、前記複数の回路の並びに沿って、一列に並び、
前記複数の受光素子のピッチは、前記複数の増幅素子の前記ピッチとは異なることを特徴とする光受信サブアセンブリ。
【請求項4】
請求項3に記載された光受信サブアセンブリであって、
前記複数の回路の前記ピッチは、前記複数の受光素子の前記ピッチと等しいことを特徴とする光受信サブアセンブリ。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載された光受信サブアセンブリであって、
前記複数の受光素子の配列方向で両端にある前記チャネルで、前記合計ワイヤ長さが最も長いことを特徴とする光受信サブアセンブリ。
【請求項6】
請求項5に記載された光受信サブアセンブリであって、
前記複数の受光素子の配列方向で中央にある少なくとも1つの前記チャネルで、前記合計ワイヤ長さが最も短いことを特徴とする光受信サブアセンブリ。
【請求項7】
請求項2から4のいずれか1項に記載された光受信サブアセンブリであって、
前記複数の受光素子の配列方向で一方端にある前記チャネルで、前記合計ワイヤ長さが最も短く、
前記複数の受光素子の配列方向で他方端にある前記チャネルで、前記合計ワイヤ長さが最も長いことを特徴とする光受信サブアセンブリ。
【請求項8】
請求項7に記載された光受信サブアセンブリであって、
前記合計ワイヤ長さは、前記合計ワイヤ長さが最も長い前記チャネルに近いほど、長いことを特徴とする光受信サブアセンブリ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載された光受信サブアセンブリであって、
前記複数の回路のいずれもが前記抵抗器を有することを特徴とする光受信サブアセンブリ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載された光受信サブアセンブリであって、
前記第2配線は、前記一対の第2ワイヤがそれぞれボンディングされる一対の端部を有することを特徴とする光受信サブアセンブリ。
【請求項11】
複数チャネルに対応して、バイアスが印加される第1電極及び第2電極をそれぞれが有し、入力された光信号を電気信号に変換して前記第1電極から前記電気信号をそれぞれが出力するように、モノリシック集積された複数の受光素子と、
前記複数チャネル対応して、前記第1電極及び第2電極にそれぞれ電気的に接続する第1配線及び第2配線をそれぞれが有する複数の回路を備え、前記複数の受光素子が搭載されるキャリアと、
前記複数チャネルに対応して、第1パッド及び第2パッドをそれぞれが有し、前記電気信号をそれぞれが増幅するように、モノリシック集積された複数の増幅素子と、
前記複数チャネルのそれぞれで、前記第1配線及び前記第1パッドを接続する第1ワイヤ並びに前記第2配線及び前記第2パッドを接続する第2ワイヤと、
を有し、
前記複数チャネルは、前記第1ワイヤ及び前記第2ワイヤの合計ワイヤ長さにおいて異なるように隣り合う一対のチャネルを含み、
前記一対のチャネルは、前記複数の回路のそれぞれが前記第2電極及び前記第2ワイヤの間に有する抵抗値において異なり、
前記一対のチャネルのうち前記合計ワイヤ長さが長い方で、前記抵抗値がより高く、
前記合計ワイヤ長さが最も短くはない前記チャネルで、前記第2配線に直列接続される抵抗器があり、
前記合計ワイヤ長さが最も短い前記チャネルで、前記第2配線に直列接続される抵抗器がないことを特徴とする光受信サブアセンブリ。
【請求項12】
請求項から11のいずれか1項に記載された光受信サブアセンブリであって、
前記抵抗器は、前記複数の受光素子がモノリシック集積されたチップ部品と重なることを特徴とする光受信サブアセンブリ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載された光受信サブアセンブリと、
入力された電気信号から変換された光信号を出力する光送信サブアセンブリと、
を有することを特徴とする光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光受信サブアセンブリ及び光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、25 Gbps程度の伝送速度を有する光伝送モジュールの集積化が進み、1つの光伝送モジュール内に複数の発光素子及び複数の受光素子が搭載されるようになってきた(特許文献1及び2)。パッケージの小型化も進み、パッケージ内に収める部品の小型化及び高密度化により、複数のチャネルを有するアレイ状のデバイス(光素子、電気増幅器)のチャネル間ピッチが狭くなってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-138601号公報
【文献】特開2014-192510号公報
【文献】特開2017-135194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チャネル間ピッチは、デバイスにより異なる場合がある。例えば、光受信サブアセンブリでは、電気増幅器の入力パッドのチャネル間ピッチと、受光素子(例えばPhoto Diode)のチャネル間ピッチとが異なる。その場合、受光素子と電気増幅器の間を電気的に接続するワイヤの長さがチャネルごとに異なる。電気信号の伝送路であるワイヤが長くなると、ワイヤ長に比例してインダクタンスLが大きくなり、受光素子の内部容量Cとともに構成されるLC共振回路によって伝送特性(高周波特性)が劣化する。つまり、チャネルごとに特性が異なってくる。
【0005】
チャネルの特性差として、特許文献3ではスキュー差を問題にしており、スキュー差を埋めるために、サブマウントの構造及びパターンをチャネルごとに異ならせている。しかし、サブマウントのサイズを大きくしたり、段差構造をもつサブマウントにしたりすることは、コスト面では不利である。
【0006】
本発明は、チャネルごとに特性を均一化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る光受信サブアセンブリは、複数チャネルに対応して、バイアスが印加される第1電極及び第2電極をそれぞれが有し、入力された光信号を電気信号に変換して前記第1電極から前記電気信号をそれぞれが出力するように、モノリシック集積された複数の受光素子と、前記複数チャネル対応して、前記第1電極及び第2電極にそれぞれ電気的に接続する第1配線及び第2配線をそれぞれが有する複数の回路を備え、前記複数の受光素子が搭載されるキャリアと、前記複数チャネルに対応して、第1パッド及び第2パッドをそれぞれが有し、前記電気信号をそれぞれが増幅するように、モノリシック集積された複数の増幅素子と、前記複数チャネルのそれぞれで、前記第1配線及び前記第1パッドを接続する第1ワイヤ並びに前記第2配線及び前記第2パッドを接続する第2ワイヤと、を有し、前記複数チャネルは、前記第1ワイヤ及び前記第2ワイヤの合計ワイヤ長さにおいて異なるように隣り合う一対のチャネルを含み、前記一対のチャネルは、前記複数の回路のそれぞれが前記第2電極及び前記第2ワイヤの間に有する抵抗値において異なり、前記一対のチャネルのうち前記合計ワイヤ長さが長い方で、前記抵抗値がより高いことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、チャネルごとの特性は、第1ワイヤ及び第2ワイヤの合計ワイヤ長さの違いによって不均一になる要因があっても、抵抗値の相違で調整されて均一化されている。
【0009】
(2)(1)に記載された光受信サブアセンブリであって、前記複数の増幅素子は、一列に並び、前記複数の回路は、前記複数の増幅素子の並びに沿って、一列に並び、前記複数の回路のピッチは、前記複数の増幅素子のピッチとは異なることを特徴としてもよい。
【0010】
(3)(2)に記載された光受信サブアセンブリであって、前記複数の受光素子は、前記複数の回路の並びに沿って、一列に並び、前記複数の受光素子のピッチは、前記複数の増幅素子の前記ピッチとは異なることを特徴としてもよい。
【0011】
(4)(3)に記載された光受信サブアセンブリであって、前記複数の回路の前記ピッチは、前記複数の受光素子の前記ピッチと等しいことを特徴としてもよい。
【0012】
(5)(2)から(4)のいずれか1項に記載された光受信サブアセンブリであって、前記複数の受光素子の配列方向で両端にある前記チャネルで、前記合計ワイヤ長さが最も長いことを特徴としてもよい。
【0013】
(6)(5)に記載された光受信サブアセンブリであって、前記複数の受光素子の配列方向で中央にある少なくとも1つの前記チャネルで、前記合計ワイヤ長さが最も短いことを特徴としてもよい。
【0014】
(7)(2)から(4)のいずれか1項に記載された光受信サブアセンブリであって、前記複数の受光素子の配列方向で一方端にある前記チャネルで、前記合計ワイヤ長さが最も短く、前記複数の受光素子の配列方向で他方端にある前記チャネルで、前記合計ワイヤ長さが最も長いことを特徴としてもよい。
【0015】
(8)(7)に記載された光受信サブアセンブリであって、前記合計ワイヤ長さは、前記合計ワイヤ長さが最も長い前記チャネルに近いほど、長いことを特徴としてもよい。
【0016】
(9)(1)から(8)のいずれか1項に記載された光受信サブアセンブリであって、前記複数の回路のそれぞれは、少なくとも前記合計ワイヤ長さが最も短くはない前記チャネルで、前記第2配線に直列接続される抵抗器を有し、前記一対のチャネルのうち前記合計ワイヤ長さが長い方で、前記抵抗器の抵抗値がより高いことを特徴としてもよい。
【0017】
(10)(9)に記載された光受信サブアセンブリであって、前記複数の回路のいずれもが前記抵抗器を有することを特徴としてもよい。
【0018】
(11)(9)又は(10)に記載された光受信サブアセンブリであって、前記第2ワイヤは、一対の第2ワイヤを含み、前記第2配線は、前記一対の第2ワイヤがそれぞれボンディングされる一対の端部を有することを特徴としてもよい。
【0019】
(12)(11)に記載された光受信サブアセンブリであって、前記一対の第2ワイヤは、長さが異なり、前記抵抗器は、前記一対の第2ワイヤのうち長い方と前記第2電極との間でのみ、前記第2配線に直列接続されていることを特徴としてもよい。
【0020】
(13)(9)から(12)のいずれか1項に記載された光受信サブアセンブリであって、前記抵抗器は、前記複数の受光素子がモノリシック集積されたチップ部品と重なることを特徴としてもよい。
【0021】
(14)本発明に係る光モジュールは、(1)から(13)のいずれか1項に記載された光受信サブアセンブリと、入力された電気信号から変換された光信号を出力する光送信サブアセンブリと、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明を適用した第1の実施形態に係る光モジュールの分解斜視図である。
図2】本発明を適用した第1の実施形態に係る光受信サブアセンブリの内部構造を示す平面図である。
図3図2に示す光受信サブアセンブリを構成する主要な部品を示す平面図である。
図4図2に示す光受信サブアセンブリの等価回路を示す図である。
図5】第1の実施形態の変形例に係る光受信サブアセンブリの分解図である。
図6】第1のシミュレーションの結果を示す図である。
図7】第2のシミュレーションの結果を示す図である。
図8】抵抗値Rdと3 dB帯域及び偏差との関係を示す図である。
図9】チャネルの伝送特性を均一にしたときのワイヤの合計ワイヤ長さの比と抵抗値Rd1との関係を抵抗値Rd2ごとに示す図である。
図10】第2の実施形態に係る光受信サブアセンブリを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面に基づき、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、以下に示す図は、あくまで、実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。
【0024】
[第1の実施形態]
図1は、本発明を適用した第1の実施形態に係る光モジュールの分解斜視図である。光モジュール100は、電気信号を光信号に変換するための光送信サブアセンブリ106(TOSA: Transmitter Optical Sub-Assembly)と、光信号を電気信号に変換するための光受信サブアセンブリ108(ROSA: Receiver Optical Sub-Assembly)と、を有する。送信側では図示しないホスト基板より送られる電気信号を、電気的インターフェース102を通して光送信サブアセンブリ106を介して光信号に変換し、これを光学的インターフェース104から送信する。受信側では光信号を受信し、電気信号を図示しないホスト側基板へと出力する。
【0025】
図2は、本発明を適用した第1の実施形態に係る光受信サブアセンブリの内部構造を示す平面図である。光信号が、光受信サブアセンブリ108に入光し、図示しないレンズによって集光されて、受光素子10に入射する。
【0026】
光受信サブアセンブリは、複数の受光素子10(例えばフォトダイオード(PD))を有する。受光素子10は、光信号が入射する面(上面)とは反対側の面(底面)に受光部12(吸収層)を有する裏面入射型受光素子である。複数の受光素子10は、チップ部品14(PDアレイ等)にモノリシック集積されている。複数の受光素子10は、それぞれ、複数チャネルCH1~CH4に対応する。
【0027】
図3は、図2に示す光受信サブアセンブリを構成する主要部品を示す平面図である。複数の受光素子10は一列に並んでいる。複数の受光素子10のピッチP1は例えば500 umである。受光素子10は、バイアスが印加される第1電極16及び第2電極18を有する。第1電極16及び第2電極18は、チップ部品14の底面にある。受光素子10は、受光部12から入力された光信号を電気信号に変換して、第1電極16から電気信号を出力する。
【0028】
受光素子10はPN接合を有するInPベースの半導体素子であり、p型半導体に接続する側をアノード、n型半導体に接続する側をカソードと呼称してもよい。つまり、第1電極16及び第2電極18を、それぞれ、アノード及びカソードということもできる。別の言い方として、p型半導体側をシグナル電極、n型半導体側をバイアス電極と呼称することもある。なお、アノード及びカソードという呼称は、便宜上のものであり逆に呼び合うこともある。つまり、ここでのアノード及びカソードという呼称は、受光素子10は異なる極性(異なる電位差)の二つの電極(第1電極16及び第2電極18)を有していることを示している。
【0029】
光受信サブアセンブリは、複数の受光素子10が搭載されるキャリア20を有する。キャリア20は、複数の受光素子10(チップ部品14)を一体的に支持する1つの基板である。キャリア20は、複数チャネルCH1~CH4(又は複数の受光素子10)にそれぞれ対応する複数の回路22を備えている。複数の回路22は、複数の受光素子10の並びに沿って、一列に並んでいる。複数の回路22のピッチP1は、複数の受光素子10のピッチP1と等しい。
【0030】
回路22は、受光素子10と電気的に接続する。電気的接続には半田24を使用する。半田24は、チップ部品14のボンディングプロセスでは半田ボールである。なお、回路22と受光素子10の電気的な接続が可能であれば半田24に限定されず、接続手段を選択してもよい。
【0031】
受光素子10の第1電極16及び第2電極18が回路22に対向する。回路22は、第1電極16に電気的に接続する第1配線26を有する。回路22は、第2電極18に電気的に接続する第2配線28を有する。第2配線28は、一対の端部を有し、例えばU字状になっている。第1配線26は、第2配線28の一対の端部の間に配置される。第1配線26及び第2配線28は、抵抗値の低い金属(たとえばAu、アルミ、白金、銀など)で形成されている。
【0032】
複数の回路22のそれぞれが抵抗器30を有する。隣同士の一対のチャネル(例えば第1チャネルCH1及び第2チャネルCH2)では、回路22が有する抵抗器30の抵抗値において異なる。抵抗器30は、NiとCrの化合物、TaとNの化合物、Ti、Mo等の抵抗値の高い材料からなる膜である。抵抗器30は、第2配線28に直列接続されている。詳しくは、第2配線28の一方の端部と中間部(第2電極18との接合部又は半田24が設けられる部分)との間に抵抗器30があり、第2配線28の他方の端部と中間部との間には抵抗器30はない。抵抗器30の少なくとも一部又は全部が、複数の受光素子10がモノリシック集積されたチップ部品14と重なる。
【0033】
光受信サブアセンブリは、例えば、プリアンプ、リミッティングアンプ、オートゲインコントローラ又はトランスインピーダンスアンプなどの増幅器32を有する。増幅器32は、キャリア20の隣に配置され、両者の間隔は例えば70 umである。増幅器32には、複数の増幅素子34(例えばオペアンプ)がモノリシック集積されている。複数の回路22(複数の受光素子10)の配列方向に沿って、複数の増幅素子34が並んでいる。複数の増幅素子34は、一列に並んでいる。増幅素子34のピッチP2は、例えば250 umであり、複数の受光素子10(複数の回路22)のピッチP1(500 um)とは異なる。複数の増幅素子34の配列方向の中心と、複数の回路22の配列方向の中心が一致している。
【0034】
複数の増幅素子34は、複数チャネルCH1~CH4に対応して、それぞれ電気信号を増幅する。増幅素子34は第1パッド36を有する。第1パッド36には、受光素子10からの電気信号が入力される。増幅素子34は第2パッド38を有する。第2パッド38には、受光素子10に供給するためのバイアスの電圧が現れる。第1パッド36及び第2パッド38は増幅器32に直接設けられている。
【0035】
増幅器32は、増幅素子34に電力を供給するための電源パッド40を有する。電源パッド40は、ワイヤ42,44によって外部電源線路に接続されている。ワイヤ42,44の間には平板キャパシタ46の一方の電極が接続される。増幅器32は、受光素子10にバイアスを印加するための他の電源パッド48を有する。電源パッド48は、ワイヤ50,52によって外部電源線路に接続されている。ワイヤ50,52の間には平板キャパシタ54の一方の電極が接続される。
【0036】
光受信サブアセンブリは、配線基板56を有する。配線基板56は、複数のシグナルパターン58を有する。一対のシグナルパターン58が差動伝送線路を構成している。一対のシグナルパターン58は、一対のGNDパターン60に挟まれている。GNDパターン60は、スルーホール62で、裏面にあるGNDプレーン64に接続されている。増幅器32の出力パッド66は、ワイヤ68によってシグナルパターン58に接続されて、増幅された電気信号を出力するようになっている。増幅器32のGNDパッド70は、ワイヤ72によってGNDパターン60に接続されている。
【0037】
光受信サブアセンブリは、複数チャネルCH1~CH4のそれぞれで、第1配線26及び第1パッド36を接続する第1ワイヤW1を有する。光受信サブアセンブリは、複数チャネルCH1~CH4のそれぞれで、第2配線28及び第2パッド38を接続する第2ワイヤW2を有する。それぞれのチャネルで、第1ワイヤW1及び第2ワイヤW2は合計ワイヤ長さLを有する。
【0038】
隣同士の一対のチャネルは、第1ワイヤW1及び第2ワイヤW2の合計ワイヤ長さLにおいて異なる。複数の受光素子10の配列方向で両端にある第1チャネルCH1又は第4チャネルCH4で、合計ワイヤ長さLが最も長い。複数の受光素子10の配列方向で中央にある第2チャネルCH2又は第3チャネルCH3で、合計ワイヤ長さLが最も短い。合計ワイヤ長さLの比は、インダクタンスの比に近似する。合計ワイヤ長さLの違いは、チャネルごとに伝送特性が異なる要因となる。
【0039】
第2ワイヤW2は、一対の第2ワイヤW2を含む。第2配線28は、一対の第2ワイヤW2がそれぞれボンディングされる一対の端部を有する。図2に示すように一対の第2ワイヤW2は、長さが異なる。回路22に含まれる抵抗器30は、一対の第2ワイヤW2のうち長い方と第2電極18との間でのみ、第2配線28に直列接続されている。
【0040】
本実施形態によれば、隣同士の一対のチャネルにおいて、合計ワイヤ長さLが長い方(例えば第1チャネルCH1)で抵抗器30の抵抗値がより高くなっている。これにより、チャネルごとの伝送特性は、第1ワイヤW1及び第2ワイヤW2の合計ワイヤ長さLの違いによって不均一になっても、抵抗器30の抵抗値の相違で調整して均一化することができる。
【0041】
図4は、図2に示す光受信サブアセンブリの等価回路を示す図である。受光素子10は、受光した光に比例したフォトカレントIpd(ω)を押し出す電流源であり、内部容量Cpd及び内部抵抗Rpdを伴った素子と考えることができる。増幅素子34は、入力抵抗Rinに近似される入力インピーダンスを有する。
【0042】
本実施形態では、第2電極18に正の電圧を印加する(逆バイアス状態)。受光素子10へは増幅器32から、バイアスを印加するための電圧Vpdが供給される。尚、多くの半導体の受光素子10は本実施形態と同方向のバイアス電圧が印加されて使われるが、電圧の正負の向きは、特に限定されず、使用する受光素子10によって適宜選択される。
【0043】
受光素子10へのバイアスの印加は、外部にある電源74から、第2ワイヤW2を介して第2配線28からなされる。増幅器32内のバイアス線路にはフィルタ等がつけられることが多く、その引き回し方法等は、増幅器32のメーカー各社によって異なる。
【0044】
受光素子10に光信号が入力されると、受光した光に比例した電気信号が発生する。電気信号は、第1ワイヤW1を介して第1パッド36を通って増幅素子34に入力される。
【0045】
受光素子10を流れるフォトカレントIpd(ω)と増幅素子34に入力される電圧Vin(ω)の関係は次式で表される。
【数1】
【0046】
なお、Rdは抵抗器30の抵抗値であり、Lは第1ワイヤW1及び第2ワイヤW2の合計ワイヤ長さLである。全てのチャネルで同等の周波数特性を得るためには、Lの相違に比例して、Rdの値を変更すればよい。
【0047】
例えば、第1チャネルであれば、
【数2】
であり、L1=L1-1+L1-2+L1-3である。
【0048】
第2チャネルであれば、
【数3】
であり、L2=L2-1+L2-2+L2-3である。
【0049】
第1チャネル及び第2チャネルで同等の周波数特性を得るためには、
in+Rpd+Rd1+jωL1=Rin+Rpd+Rd2+jωL2
が成立すればよい。
【0050】
合計ワイヤ長さL1,L2の相違に基づき、抵抗値Rd2から抵抗値Rd1は次の式で求めることができる。
【数4】
【数5】
【0051】
[第1の実施形態の変形例]
図5は、第1の実施形態の変形例に係る光受信サブアセンブリの分解図である。この例では、合計ワイヤ長さLが最も短いチャネルでは、回路122は抵抗器を有していない。つまり、第2チャネルCH2又は第3チャネルCH3は、第2電極118及び第2ワイヤW2の間に有する抵抗値が0 Ωである。なお、ここでは第2配線128そのものの抵抗は十分に小さいために考慮しない。複数の回路122のそれぞれは、合計ワイヤ長さLが最も短いチャネルを除き、第2配線128に直列接続される抵抗器130を有する。これにより、隣り合う一対のチャネル(第1チャネルCH1及び第2チャネルCH2あるいは第3チャネルCH3及び第4チャネルCH4)のうち合計ワイヤ長さLが長い方で、回路122の抵抗値がより高くなっている。回路122が第2電極118及び第2ワイヤW2の間に有する抵抗値は、抵抗器130があることで高くなっている。
【0052】
この例では、第1ワイヤW1のインダクタンスが679 pHであり、第2ワイヤW2のインダクタンスが506 pHである。第1ワイヤW1の合計ワイヤ長さLと第2ワイヤW2の合計ワイヤ長さLの比は、インダクタンスの比に近似しており、L1/L2=679 pH/506 pH=1.34である。
【0053】
受光素子110のRpd=20 Ω、増幅素子34の入力抵抗Rin=30 Ω、抵抗Rd2=0 Ωとすると、上述したように、
【数6】
の式から、(30+20+Rd1)/(30+20+Rd2)=679/506であるため、Rd1=17.1 Ωが求められる。
【0054】
図6は、第1のシミュレーションの結果を示す図である。横軸は周波数であり、縦軸は透過電力特性を示すS21である。図6において、第1チャネル及び第2チャネルのいずれでも回路が抵抗器を有しない場合(Rd1=0 Ω,Rd2=0 Ω)、第1チャネルでは第2チャネルよりも、ピーク強度が1.3 dB大きい。これは、第1チャネルでは第2チャネルよりも、第1ワイヤ及び第2ワイヤの合計ワイヤ長さが長いことに起因する。
【0055】
これに対して、第1の実施形態の変形例(図5)に示すように、第1チャネルCH1で抵抗器130(Rd1=17.1 Ω)を設けることによって、第1チャネルCH1及び第2チャネルCH2のピーク強度を同等の1.1 dBに抑えることができる。3 dB帯域(S21が3 dBとなる周波数)は、27.3 GHz(25 GHz以上)あり、25 Gbps伝送モジュールにおいては十分な帯域を確保している。
【0056】
図7は、第2のシミュレーションの結果を示す図である。このシミュレーションでは、第1の実施形態(図2及び図3)に示すように、第1チャネルCH1で回路22に抵抗器30(Rd1=25 Ω)を設け、第2チャネルCH2で回路22に抵抗器30(Rd2=10 Ω)を設ける。その結果、3 dB帯域が25 GHz以上であり、第1チャネルCH1及び第2チャネルCH2でのピーク強度を0.5 dBに均一に抑えることができる。
【0057】
図8は、抵抗値Rdと3 dB帯域及び偏差との関係を示す図である。偏差とは、透過帯域内の周波数領域において、0 dBに対してどれくらいずれているかを示し、ここでは0~25 GHzの範囲でプラス方向にずれている量の最大値(ピーク強度)を示している。25 Gbps伝送モジュールにおいて十分な伝送特性を確保するためには、3 dB帯域が25 GHz以上であり、偏差が1.5 dB以下であることが要求される。シミュレーションの結果、Rd1が10~30 Ωであれば、伝送特性が良好となることが分かる。抵抗器を配置することでCH間の偏差を均一(同程度)に揃えることができる。抵抗器の値を大きくした場合は3 dB帯域小さくなるという傾向にあるが、CH間の伝送特性の均一化のためには偏差を同程度とした方が効果が大きく、本実施形態によりCH間の伝送特性の均一化を図ることができる。
【0058】
図9は、チャネルの伝送特性を均一にしたときのワイヤの合計ワイヤ長さLの比と抵抗値Rd1との関係を抵抗値Rd2ごとに示す図である。抵抗値Rdが10~30 Ωの範囲内であれば、良好な伝送特性が得られることは上述した。したがって、抵抗値Rd1は10~30 Ωの範囲内であることが望まれる。
【0059】
第1の実施形態の変形例(図5)に示すように、第2チャネルCH2の回路122の抵抗値Rd2=0 Ωの例を挙げる。第1ワイヤW1及び第2ワイヤW2の合計ワイヤ長さLの比が1.2~1.6であれば、第1チャネルCH1及び第2チャネルCH2の伝送特性を均等にするためには、10~30 Ωの範囲内の抵抗値Rd1を有する抵抗器130を第1チャネルCH1の回路122に設ければよい。
【0060】
第1の実施形態(図2及び図3)に示すように、第2チャネルCH2の回路22にも抵抗器30を設けた場合、その抵抗値Rd2が増加すると、均一な伝送特性が得られるときの合計ワイヤ長さLの比の範囲は狭まる。抵抗値Rd2=10 Ωのときには、合計ワイヤ長さLの比は1.0~1.3の範囲にする必要がある。
【0061】
[第2の実施形態]
図10は、第2の実施形態に係る光受信サブアセンブリを示す図である。本実施形態では、配列方向の一方端にある受光素子210と配列方向の一方端にある増幅素子234(第1チャネルCH1)が、配列方向に直交する方向に隣り合うように、チップ部品214と増幅器232が並んでいる。
【0062】
複数の受光素子210の配列方向で一方端にある第1チャネルCH1で、合計ワイヤ長さLが最も短い。複数の受光素子210の配列方向で他方端にある第4チャネルCH4で、合計ワイヤ長さLが最も長い。合計ワイヤ長さLは、合計ワイヤ長さLが最も長い第4チャネルCH4に近いほど長い。
【0063】
本実施形態でも、図9に示す相関関係が成立する。ただし、本実施形態では、抵抗値Rd2の抵抗器30は第1チャネルCH1にあり、抵抗値Rd1の抵抗器30は第2チャネルCH2にある。第1チャネルCH1及び第2チャネルCH2の関係は、第2チャネルCH2及び第3チャネルCH3にも該当し、第3チャネルCH3及び第4チャネルCH4にも該当する。
【0064】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0065】
10 受光素子、12 受光部、14 チップ部品、16 第1電極、18 第2電極、20 キャリア、22 回路、24 半田、26 第1配線、28 第2配線、30 抵抗器、32 増幅器、34 増幅素子、36 第1パッド、38 第2パッド、40 電源パッド、42 ワイヤ、44 ワイヤ、46 平板キャパシタ、48 電源パッド、50 ワイヤ、52 ワイヤ、54 平板キャパシタ、56 配線基板、58 シグナルパターン、60 GNDパターン、62 スルーホール、64 GNDプレーン、66 出力パッド、68 ワイヤ、70 GNDパッド、72 ワイヤ、74 電源、100 光モジュール、102 電気的インターフェース、104 光学的インターフェース、106 光送信サブアセンブリ、108 光受信サブアセンブリ、110 受光素子、118 第2電極、122 回路、128 第2配線、130 抵抗器、210 受光素子、214 チップ部品、232 増幅器、234 増幅素子、Cpd 内部容量、CH1 第1チャネル、CH2 第2チャネル、CH3 第3チャネル、CH4 第4チャネル、Ipd(ω) フォトカレント、P1 ピッチ、P2 ピッチ、Rd1 抵抗値、Rd2 抵抗値、Rin 入力抵抗、Rpd 内部抵抗、Vpd 電圧、Vin(ω) 電圧、W1 第1ワイヤ、W2 第2ワイヤ。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10