(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】マグネットセパレータ
(51)【国際特許分類】
B03C 1/247 20060101AFI20220831BHJP
B03C 1/00 20060101ALI20220831BHJP
B03C 1/14 20060101ALI20220831BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20220831BHJP
C02F 1/48 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B03C1/247
B03C1/00 A
B03C1/14 101
B23Q11/00 U
C02F1/48 A
(21)【出願番号】P 2016234027
(22)【出願日】2016-12-01
【審査請求日】2019-03-14
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)「JIMTOF2016 第28回日本国際工作機械見本市」 開催日:2016年11月17日,18日,19日,20日,21日,22日 (2)製品リーフレット 頒布日:2016年11月17日,18日,19日,20日,21日,22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145448
【氏名又は名称】住友重機械ファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】西澤 信也
【合議体】
【審判長】日比野 隆治
【審判官】宮澤 尚之
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203140147(CN,U)
【文献】特開昭55-84560(JP,A)
【文献】米国特許第2901108(US,A)
【文献】実開昭52-19080(JP,U)
【文献】特公昭37-8689(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C1/00-1/32
B23Q11/00
C02F1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液から磁性スラッジを除去するマグネットセパレータにおいて、
磁性スラッジを被処理液の外部に排出するメインドラムと、
前記メインドラムの上流側に配置され、被処理液中の磁性スラッジを磁化させて磁化凝集体を形成するサブドラムと、を備え、
前記サブドラムは被処理液中に没した状態に配置され、前記サブドラムの上部に被処理液を流通する上部流路、および、前記サブドラムの下部に被処理液を流通する下部流路が形成され、
一端を前記サブドラムに当接し、他端を前記メインドラム側に配置して固定されたスクレーパを備
え、
前記スクレーパは、被処理液中に没した状態に配置され、
前記スクレーパの上側を通る液体と、前記スクレーパの下側を通る液体とが合流することを特徴とする、マグネットセパレータ。
【請求項2】
前記上部流路を流通した被処理液は、前記サブドラムと前記メインドラムの間を通過し、次に前記メインドラムの下部を流通する流れを形成し、
前記下部流路を流通した被処理液は、前記サブドラムと前記メインドラムの間の領域に向かって誘導され、前記上部流路からの被処理液の流れに合流することを特徴とする、請求項1に記載のマグネットセパレータ。
【請求項3】
前記下部流路の被処理液の流量は、前記上部流路の被処理液の流量よりも大きいことを特徴とする、請求項1又は2に記載のマグネットセパレータ。
【請求項4】
前記スクレーパの前記他端側に配置され、前記下部流路の被処理液を前記メインドラムに送液する開口部を備えたことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のマグネットセパレータ。
【請求項5】
前記開口部は、前記下部流路の被処理液を前記メインドラムの回転方向に送液することを特徴とする、請求項4に記載のマグネットセパレータ。
【請求項6】
前記サブドラムは、マグネットセパレータ本体に固定された外筒と、外周面に複数の磁石が間隔を空けて配置された内筒とを備え、前記内筒が前記下部流路を流通する被処理液の流れ方向と逆方向に回転することを特徴とする、請求項4又は5に記載のマグネットセパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理液に含まれる金属成分等の磁性スラッジを回収するためのマグネットセパレータに関する。更に詳しくは、本発明は、被処理液から磁性スラッジを回収するためのメインドラムと、その上流に配置され、磁性スラッジを磁化するためのサブドラムとを備えたマグネットセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
金属加工機械としては磁性金属を被切削材とする加工機械があり、このような金属加工機械からは、切削屑を含有する切削油が排出される。そして、このような切削油から切削屑を分離するための切削屑処理装置としては、マグネットセパレータが知られている。マグネットセパレータは、マグネットを外周に配置した回転ドラムを備えており、回転ドラムにより切削屑を吸着することで切削油から切削屑を分離する。その中でも、サブドラムに磁性体を磁化させる機能を持たせて回収率を向上する技術が注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の磁石が配置された第1の回転ドラム(メインドラム)と、その上流に第2の回転ドラム(サブドラム)を備えた回転ドラム型磁気分離装置が開示されている。この装置によれば、第2の回転ドラムに磁性体を磁化させる機能を持たせることにより、第2の回転ドラムに吸着された磁性体は磁化されて互いに引き寄せあい、大きな粒子を形成する。そして、大きな粒子は、第1の回転ドラムに誘導されやすくなり、第1の回転ドラムにより確実に回収することができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、磁性スラッジを被処理液の外部に排出するメインドラムと、メインドラムの上流側に配置され、被処理液中の磁性スラッジを磁化させて磁化凝集体を形成するサブドラムと、を備えたマグネットセパレータにおいて、磁性スラッジの回収率を更に向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題について鋭意検討した結果、本発明者は、被処理液中に没したサブドラムの上部と下部に被処理液を流通する流路を設けることにより、磁性スラッジの回収率が向上することを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下のマグネットセパレータである。
【0007】
上記課題を解決するための本発明のマグネットセパレータは、被処理液から磁性スラッジを除去するマグネットセパレータであって、磁性スラッジを被処理液の外部に排出するメインドラムと、前記メインドラムの上流側に配置され、被処理液中の磁性スラッジを磁化させて磁化凝集体を形成するサブドラムと、を備え、前記サブドラムは被処理液中に没した状態に配置され、前記サブドラムの上部に被処理液を流通する上部流路、および、前記サブドラムの下部に被処理液を流通する下部流路が形成されることを特徴とするものである。
【0008】
このマグネットセパレータによれば、サブドラムの上部および下部のいずれにも被処理液が流通することから、サブドラムの全周を利用して磁性スラッジを磁着することができる。そのため、サブドラムで形成される磁化凝集体の量が増加する。磁化凝集体は、凝集前の磁性スラッジより大きいことからメインドラムの磁力を受けやすくなり、メインドラムへの磁着が促進される。このような作用に基づいて、本発明のマグネットセパレータは、磁性スラッジの回収率が向上するという効果を奏する。さらに、下部流路においてサブドラムに磁着した磁性スラッジは、磁化される時間が長くなるため、磁化凝集体を形成するというサブドラムの効果がより一層発揮される。
また、サブドラムの上部を流通する被処理液は、サブドラムに磁着した磁性スラッジを後段のメインドラムへ移送する作用効果を奏する。
【0009】
本発明のマグネットセパレータの一実施態様としては、上部流路を流通した被処理液は、サブドラムとメインドラムの間を通過し、次にメインドラムの下部を流通する流れを形成し、下部流路を流通した被処理液は、サブドラムとメインドラムの間の領域に向かって誘導され、前記の上部流路からの被処理液の流れに合流するという特徴を有する。
この特徴によれば、上部流路を流通した磁性スラッジを含む被処理液の流れと、下部流路を流通した被処理液が、サブドラムとメインドラムの間で合流するため、サブドラムとメインドラムの間の領域において、撹拌作用が発生する。よって、被処理液中の磁性スラッジは、サブドラムとメインドラムの間の領域において流動するため、メインドラムに近接する機会が増加してメインドラムへ磁着しやすいという効果を奏する。
【0010】
本発明のマグネットセパレータの一実施態様としては、下部流路の被処理液の流量は、上部流路の被処理液の流量よりも大きいという特徴を有する。
下部流路の被処理液の流量を上部流路の被処理液の流量より大きくすると、下部流路側を流通する磁性スラッジの量が増加するため、多くの磁性スラッジが下部流路においてサブドラムに磁着する。よって、磁化される時間が長くなり、磁化凝集体を形成しやすくなるという効果を奏する。
また、上述したサブドラムとメインドラムの間における撹拌作用においても、上方向への撹拌作用が強くなるため、磁性スラッジがメインドラムに近接する機会がより一層増加して磁着しやすくなる。
【0011】
本発明のマグネットセパレータの一実施態様としては、一端をサブドラムに当接し、他端をメインドラム側に配置して固定されたスクレーパ、及び、該スクレーパの他端側に配置され、下部流路の被処理液をメインドラムに送液する開口部を備えたという特徴を有する。
この特徴によれば、サブドラム用のスクレーパが、サブドラムからメインドラム側まで延設して配置されているため、スクレーパの一端で掻き取られた磁性スラッジは、スクレーパに沿ってメインドラム側まで流される。そして、磁性スラッジがスクレーパの他端側に到達すると、スクレーパの他端側に配置された開口部からの被処理液によりメインドラム方向に向かって流される。よって、磁性スラッジがメインドラムに近接する機会が増加して、メインドラムへ磁着しやすくなるという効果を奏する。
【0012】
本発明のマグネットセパレータの一実施態様としては、開口部は、下部流路の被処理液をメインドラムの回転方向に送液するという特徴を有する。
この特徴によれば、磁性スラッジがメインドラムの回転方向に沿って流動するため、磁性スラッジのメインドラムへの磁着を更に促進することができる。
【0013】
本発明のマグネットセパレータの一実施態様としては、サブドラムは、マグネットセパレータ本体に固定された外筒と、外周面に複数の磁石が間隔を空けて配置された内筒とを備え、前記内筒が下部流路を流通する被処理液の流れ方向と逆方向に回転するという特徴を有する。
この特徴によれば、内筒の外周面に複数の磁石が周方向に間隔を空けて配置されていることから、外筒の外周面には、磁力の強い領域と磁力の弱い領域が交互に形成される。そのため、磁性スラッジは、外筒の外周面上に周方向に間隔を空けて磁着する。外筒の外周面上に磁着した磁性スラッジは、内筒が下部流路を流通する被処理液の流れ方向と逆方向に回転することにより、外筒の周方向に移動し、サブドラム用のスクレーパで掻き取られる。スクレーパに到達した磁性スラッジは、磁力の強い領域がスクレーパの端部を通過するまで、磁力によってスクレーパの端部に留まり、大きな磁化凝集体を形成する。そして、磁力の弱い領域がスクレーパの端部を通過する際に、磁性スラッジは、大きな磁化凝集体としてスクレーパから剥がれ落ち、メインドラム方向へ移動する。このような作用により、磁性スラッジの磁化凝集体をより大きなものにすることができるため、メインドラムへの磁着をより確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、磁性スラッジを被処理液の外部に排出するメインドラムと、メインドラムの上流側に配置され、被処理液中の磁性スラッジを磁化させるサブドラムと、を備えたマグネットセパレータであって、磁性スラッジの回収性能に優れたマグネットセパレータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第一の実施態様のマグネットセパレータの構造を示す概略説明図である。
【
図2】本発明の第一の実施態様のマグネットセパレータの第2のスクレーパ及び開口部の詳細な構造を示す概略説明図である。
【
図3】本発明の第一の実施態様のマグネットセパレータの開口部の送液方向を説明する概略説明図である。
【
図4】(A)本発明の第一の実施態様のマグネットセパレータにおいて、サブドラムとメインドラムの間における撹拌作用を説明する概略説明図である。(B)
図4(A)中のEの領域の拡大図である。
【
図5】本発明の第一の実施態様のマグネットセパレータのサブドラム、上部流路および下部流路の断面(
図1のX-X断面)の構造を示す概略説明図である。
【
図6】マグネットセパレータを用いてクーラント液を処理した場合の回収率を表すグラフである。グラフ中の(A)は、サブドラムを備えていない従来のマグネットセパレータにおける回収率を示すグラフであり、グラフ中(B)は、本発明の第一の実施態様のマグネットセパレータにおける回収率を示すグラフである。
【
図7】本発明の第二の実施態様のマグネットセパレータの構造を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のマグネットセパレータは、被処理液に含有する磁性スラッジを磁力によって回収するものである。本発明の被処理液としては、磁性スラッジを含む液体であれば、特に制限されず、油性の液体でも、水溶性の液体でもよい。一般的な被処理液としては、例えば、磁性金属を被削材とする金属研磨加工機械におけるクーラント液や、鋼板等にメッキを施す装置におけるメッキ液等が挙げられる。本発明のマグネットセパレータは、これらの被処理液から磁性スラッジを回収して、被処理液を清浄化することができる。その他、本発明のマグネットセパレータは、例えば、産業廃棄物からの希少金属の回収や、飲料や食用油等からの異物の除去等に利用することもできる。
【0017】
以下に、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
〔第一の実施態様〕
[マグネットセパレータ]
図1には、本発明の第一の実施態様のマグネットセパレータ100の構造を示す。本発明のマグネットセパレータ100は、略矩形状の筐体からなる本体1と、本体1内に磁性スラッジを含む被処理液を投入する投入部4と、磁性スラッジを除去された処理液を排出する処理液排出部6aと、磁性スラッジを排出する磁性スラッジ排出部6bを備えている。また、本体1の内部には、被処理液を貯留する液溜め部5が設けられ、本体1の内部は、所定の水位まで被処理液を溜めることができるように構成されている。
【0018】
投入部4は、本体1の一端側(
図1の右側)に設けられ、処理液排出部6a及び磁性スラッジ排出部6bは、本体1の他端側(
図1の左側)に設けられている。そして、投入部4から投入された被処理液は、液溜め部5を通過して処理液排出部6aの方向へ流れるように構成されている。
【0019】
本体1の内部には、磁性スラッジを磁着して被処理液の外部に排出するメインドラム2と、該メインドラム2の上流側に配置され、被処理液中の磁性スラッジを磁化させて磁化凝集体を形成するサブドラム3を備えている。サブドラム3は、被処理液中に没した状態で配置され、その上部及び下部には、被処理液が流通する上部流路13及び下部流路14が形成されている。
【0020】
本体1の内部には、投入部4の流入口と離間して整流壁8が設置されている。整流壁8は、投入された被処理液の流れを積極的に下部流路14の方向へ誘導し、下部流路14における磁性スラッジの磁着を促進する。また、整流壁8を設置することにより、投入部4から流入した流速の速い被処理液の流れが制限されるため、サブドラム3で磁化されずに上部流路13を通過する磁性スラッジの量を減少することができる。
【0021】
<メインドラム>
メインドラム2は、被処理液の流れに対して直交する方向に、略水平に軸支された回転ドラムである。メインドラム2は、下側略半周を被処理液の液面下に浸し、上側略半周は液面から出るように設置されている。
【0022】
メインドラム2は、回転可能に軸支された外筒2aと、外周面に複数の磁石が配置された内筒2bからなり、複数の磁石を有する内筒2bは、外筒の内部に固定されている。外筒2aの回転方向は、下部を通過する被処理液の流れと逆方向(
図1の紙面から見て反時計回り)である。
【0023】
内筒2bに配置された複数の磁石の極性は、外筒の外周面に所定の磁束を発生させて磁性スラッジを磁着させることができるように配置されている。第一の実施態様のマグネットセパレータ100では、
図1に示すように、N極とS極の磁石が交互に配置されている。また、複数の磁石は、内筒2bの外周面の略3分の2の部分に配置されており、残りの略3分の1の部分には配置されておらず、磁力が作用しないように構成されている。
【0024】
メインドラム2は、外筒2aを回転させることにより外筒2aの外周面に磁着した磁性スラッジを被処理液の外部に排出することができる。なお、メインドラムの構成は、磁力によって被処理液中の磁性スラッジを磁着し、磁着した磁性スラッジを被処理液の外部に移送できる構成であれば特に制限されず、例えば、外筒の内周面に磁石を配置し、磁石を備えた外筒を回転させる構成としてもよいし、外筒を固定し、磁石を備えた内筒を回転させる構成としてもよい。
【0025】
メインドラム2の頂上部近傍には、頂上部より回転方向後方側にローラ7、頂上部より回転方向前方側に第1のスクレーパ11が設置されている。
ローラ7は、ゴム等の弾性体を表面に配してあり、所定の押圧でメインドラム2の外筒2aの外周面に当接されている。外筒2aとローラ7との間を磁着された磁性スラッジが通過することにより、磁性スラッジの液分が絞り取られるため、液分の少ない磁性スラッジを分離回収することができる。
【0026】
ローラ7の表面に配した弾性体としては、CR(クロロプレン)系ゴム、NBR(ニトリル)系ゴム等の弾性体が主流であるが、例えば、ポリエステルポリオールを主成分とした未架橋のポリウレタン材を用いてもよい。
【0027】
第1のスクレーパ11は、メインドラム2の外筒2aの外周面に当接しており、ローラ7で液分が絞り取られた磁性スラッジを外筒2aの外周面から掻き取るための構成である。なお、第1のスクレーパ11は、内筒2bの磁石が配置されていない領域に設けられている。
【0028】
メインドラム2の下部には、第1の底壁9がメインドラム2の外周に離間して設置されている。第1の底壁9の形状は、メインドラムの外周に沿った形状であり、メインドラム2と第1の底壁9の間に、被処理液が流れる流路が形成されている。第1の底壁9を設けることにより、被処理液がメインドラム2の外周の近傍を通過するため、磁性スラッジの磁着を促進することができる。
【0029】
メインドラム2の外周に磁着した磁性スラッジは、外筒2aが回転することにより、外筒2aの周囲に磁着しながら液面上に移送され、ローラ7により液分が絞り取られる。さらに、磁性スラッジは、磁石が配置されていない領域まで移送されると、磁力から解放され、第1のスクレーパ11により掻き取られる。掻き取られた磁性スラッジは、磁性スラッジ排出部6bより、本体1の外部に排出される。
【0030】
<サブドラム>
サブドラム3は、メインドラム2より小径の回転ドラムであり、メインドラム2の上流側(被処理液の流れ方向手前側)に配置されている。サブドラム3は被処理液中に没した状態に配置され、サブドラム3の上部には、被処理液を流通する上部流路13、および、下部には、被処理液を流通する下部流路14が形成されている。
【0031】
サブドラム3の構造は、本体1を貫通するように固定された外筒3aと、外周面に複数の磁石が配置された内筒3bからなり、複数の磁石を有する内筒3bは、外筒3aの内部に回転可能に固定されている。回転方向は、下部流路14を流れる被処理液の流れ方向と逆方向(
図1の紙面から見て反時計回り)である。また、外筒3aが本体1の壁と液密な状態で固定され、回転駆動する内筒3b側に被処理液が流れ込まないように構成されている。この構成によれば、内筒3bの回転機構に液体が触れないため、回転機構の故障等のトラブルを低減することができる。また、外筒3aと本体1の壁との間から被処理液が本体1外へ漏れ出ることを防止することができる。なお、上記サブドラム3の構成は一例であり、メインドラム2と同様、磁力によって被処理液中の磁性スラッジを磁着し、外筒3bの周囲を移送できる構成であれば特に制限さない。
【0032】
サブドラム3の磁石の配置は、
図1に示すように、S極とN極が隣接した磁石群を偶数組(8組)配置している。隣接する磁石群は、間隔を空けて同極が対向するように配されている。この配列により、隣接する磁石群の間に磁着力の弱い領域が形成される。
また、サブドラム3の反対側に配置した磁石とは、互いに同極が対向するように配されている。
【0033】
また、サブドラム3の下部には、メインドラム2と同様に、サブドラム2の外周に沿った形状の第2の底壁10がサブドラム3の外周に離間して設置されている。これにより、磁性スラッジのサブドラム3への磁着を促進するという効果を奏する。
【0034】
サブドラム3の頂上部近傍には、サブドラム3に磁着した磁性スラッジを掻き取るための第2のスクレーパ12が設けられている。第2のスクレーパ12は、一端をサブドラム3に当接しており、他端はメインドラム2側まで延設して、第1の底壁9に溶接して固定されている。さらに第2のスクレーパ12の他端側には、下部流路14の被処理液をメインドラム2の回転方向に送液するための開口部15が形成されている。なお、第2のスクレーパ12及び開口部15の詳細な構造については、
図2に示した。
【0035】
開口部15は、第一の実施態様においては、第2のスクレーパ12の端部側に開けた開口により構成されているが、下部流路14の被処理液をメインドラム2に向かって送液できれば、どのような構成としてもよい。例えば、第2のスクレーパの他端を第1の底壁9に固定せずに、第2のスクレーパの他端と第1の底壁9との間の間隙を開口部としたり、開口を有するメッシュで構成したり、開口の面積が徐々に縮小するノズルを設けたりしてもよい。
【0036】
ここで、開口部15の送液方向について、
図3を参照して説明すると、開口部15の送液方向とは、開口部15を構成する面(
図3中の破線L
1)の中心(
図3中のP)を通る垂線(
図3中の矢印L
2)の方向である。
そして、下部流路14からの被処理液をメインドラム2に送液する開口部とは、前記開口部の送液方向(L
2)が、上記開口部の中心Pを通るメインドラム2の接線(
図3中の一点鎖線)の範囲内に向かっている構成を意味する。
また、下部流路14からの被処理液をメインドラム2の回転方向に送液する開口部とは、前記開口部の送液方向(L
2)が、メインドラム2の中心(
図3中のQ)と前記開口部の中心Pを通る線(
図3中の破線L
3)よりメインドラム2の回転方向前方に向かっている構成を意味する。
【0037】
次に、上部流路13および下部流路14の作用について、被処理液の流れを説明しながら詳述する。なお、被処理液の流れについては、
図1中および
図2中に矢印で示している。
【0038】
投入部4から投入された磁性スラッジを含有する被処理液は、整流壁8により下方向への流れに変えられ、液溜め部5に溜められる。液溜め部5に溜められた被処理液は、上部流路13および下部流路14に分かれて流れるため、サブドラム3の全周囲を利用して磁性スラッジを磁着することができる。サブドラム3に磁着した磁性スラッジは、磁化されて互いに引き寄せ合う作用が生じるため、細かい粒子が集まって磁化凝集体を形成する。磁性スラッジが大きな磁化凝集体となると、磁力を受けやすくなりメインドラム2への磁着が促進されるという効果を奏し、磁性スラッジの回収率が向上する。また、下部流路14においてサブドラム3に磁着した磁性スラッジは、磁化される時間が長くなることから、より大きな磁化凝集体を形成するため、メインドラム2での磁着をより一層促進することができる。
【0039】
サブドラム3に磁着した磁性スラッジは、磁石がサブドラムの周方向に回転することにより、サブドラムの周方向に移動し、第2のスクレーパ12の端部で掻き取られる。その際、スクレーパ12の端部まで移動した磁性スラッジは、磁石の配置された領域がスクレーパ12の端部を通過するまで、磁力によってスクレーパ12の端部に留まり、大きな磁化凝集体を形成する。そして、磁石が配置されていない領域がスクレーパ12の端部を通過する際に、磁性スラッジからなる大きな磁化凝集体はスクレーパ12から剥がれ落ち、メインドラム2の方向へ移動する。このような作用により、磁性スラッジの磁化凝集体をより大きなものにすることができるため、メインドラム2への磁着をより確実に行うことができる。
【0040】
上部流路13を通過した被処理液は、その後、サブドラム3とメインドラム2の間を通過し、続いて、メインドラム2の下部を流通するという流れを形成する。第2のスクレーパ12で掻き取られた磁性スラッジの磁化凝集体は、この流れに乗ってメインドラム2側へ移送され、メインドラム2に磁着する。そして、メインドラム2で磁性スラッジが除去された処理液は、処理液排出部6aへと向かって本体1の外に排出される。
【0041】
一方、下部流路14を通過した被処理液も、サブドラム3とメインドラム2の間の領域に向かって誘導され、上部流路13からの流れに合流する。これにより、サブドラム3とメインドラム2の間の領域において、撹拌作用が発生する。なお、下部流路14からの被処理液は、磁性スラッジを殆ど含まないものである。
【0042】
図4には、この撹拌作用を説明する概略説明図を示した。
図4に示すように、上部流路13を通過した被処理液は、サブドラム3とメインドラム2の間を通過し、その後、メインドラム2と第1の底壁9の間を流通する(
図4中の実線矢印)。また、下部流路14を通過した被処理液は、第2の底壁10により、サブドラム3とメインドラム2の間の領域(R)に誘導されて、上部流路13からの流れに合流する(
図4中の破線矢印)。なお、サブドラム3とメインドラム2の間の領域(R)とは、サブドラム3とメインドラム2の上部側の各接線を連結する線と、下部側の各接線を連結する線(
図4中の一点鎖線)の間の領域である。
【0043】
図4(B)に示すように、下部流路14からの被処理液が上部流路13からの流れに合流すると、上部流路13からの流れに含まれる磁性スラッジが上方向に流動する作用を受ける。そのため、磁性スラッジがメインドラム2に近接する機会が増加して、メインドラム2へ磁着しやすくなるという効果を奏する。
【0044】
第一の実施態様のマグネットセパレータ100では、下部流路14からの被処理液は、開口部15を介して上部流路13からの流れに合流する。開口部15の送液方向は、下部流路14の被処理液をメインドラム2の回転方向に送液するため、磁性スラッジをメインドラム2に向けて流動させることができる。
【0045】
なお、合流による撹拌作用を得るためには、開口部15を設けなくてもよく、下部流路14からの被処理液を、サブドラム3とメインドラム2の間の領域(R)に誘導できるような誘導部材を設けた構成でもよい。
【0046】
上部流路13および下部流路14を流れる被処理液の流量は、サブドラム3の磁着力等を考慮しつつ、磁性スラッジがサブドラム3に磁着できるように適宜設定される。磁性スラッジの磁化する時間を長くするという観点から、下部流路14の被処理液の流量を上部流路13の被処理液の流量より大きくすることが好ましい。また、下部流路14の被処理液の流量を大きくすることにより、下部流路14からの被処理液を上部流路13からの流れに合流した際に、磁性スラッジが強く流動し、メインドラム3に近接する機会がより高まるという効果もある。
【0047】
ここで、下部流路14を流れる被処理液の流量は、下部流路14の断面積や、開口部15の開口面積のうち最小の断面積によって決められる。また、上部流路13を流れる被処理液の流量は、投入部4より投入される被処理液の流量により調整することができる。
【0048】
図5に、サブドラム3の中心における垂直断面図(
図1の一点鎖線X-X)を示す。上部流路13の最小断面積は、サブドラム3の真上における流路の断面積(R1)であるから、上部流路13の最小断面積(R1)は、液面の高さによって変動する。例えば、下部流路14の最小断面積をサブドラム3の真下の流路の断面積(R2)とすると、R2>R1となるように液面の高さ(投入部4からの被処理液の投入量)を調整することにより、下部流路14における被処理液の流量を上部流路13における被処理液の流量より大きくすることができる。
なお、上記の流量調整では、運転条件により調整したが、サブドラム3の上部に壁等の流量調整部を設けて、上部流路13の最小断面積を一定に設定してもよい。
【0049】
図6には、第一の実施態様のマグネットセパレータ100を用いてクーラント液を処理した場合の回収率を表すグラフを示した。グラフ中の(A)は、サブドラムを備えていない従来のマグネットセパレータにおける回収率を示すグラフであり、グラフ中(B)は、本発明の第一の実施態様のマグネットセパレータ100における回収率を示すグラフである。
グラフを見ると、本発明のマグネットセパレータでは、サブドラムを備えていない従来のマグネットセパレータよりも回収率が約1.5倍も向上したことがわかる。
【0050】
〔第二の実施態様〕
図7には、本発明の第二の実施態様のマグネットセパレータ101の構造を示す。本発明の第二の実施態様のマグネットセパレータ101では、第2のスクレーパ12の一端がサブドラム3の外周面に固定され、他端は固定されていない。そのため、第2のスクレーパ12の他端と、第1の底壁9との間に間隙が形成されており、この間隙が下部流路14の被処理液を流通する開口部16として作用する。さらに、開口部16は、下部流路14の被処理液をメインドラム2に送液する構成となっている。
【0051】
また、第2のスクレーパ12の他端は、メインドラム2に向かって湾曲した形状となっている。この形状によれば、上部流路13の被処理液の流れにより搬送された磁性スラッジが、第2のスクレーパ12の他端の湾曲した形状に沿ってメインドラム2の方向に流れることから、磁性スラッジのメインドラム2への磁着を促進するという効果を奏する。
【0052】
また、第二の実施態様のマグネットセパレータ101では、本体1の内部に天面から垂下して固定された流量調整部17を備えている。流量調整部17は、上部流路13の被処理液の流量を調整するための部材であり、上部流路13の被処理液の流量を、下部流路14の被処理液の流量より小さく設定することができる。また、この部材によれば、投入部4からの被処理液の投入量が増加した場合でも、上部流路13の被処理液の流量が、下部流路14の被処理液の流量より小さい状態に維持することができる。
【0053】
さらに、この流量調整部17は、サブドラム3に沿った形状であり、サブドラム3との間に流路を形成している。これにより、サブドラム3への磁性スラッジの磁着をさらに促進することができる。
【0054】
[磁性スラッジを含有する被処理液の処理方法]
本発明のマグネットセパレータを用いて磁性スラッジを被処理液から分離回収する方法としては、以下の工程により実施される。
磁性スラッジを被処理液の外部に排出するメインドラムと、前記メインドラムの上流側に配置され、被処理液中の磁性スラッジを磁化させるサブドラムと、を備えたマグネットセパレータを用いて磁性スラッジを含有する被処理液を処理する方法において、
(工程1)前記被処理液をマグネットセパレータに投入する工程、
(工程2)マグネットセパレータに投入した前記被処理液を前記サブドラムの上部に流通する工程、
(工程3)マグネットセパレータに投入した前記被処理液を前記サブドラムの下部に流通する工程、
(工程4)前記サブドラムの上部に流通した被処理液と、前記サブドラムの下部に流通した被処理液を合流して、前記サブドラムの上部に流通した被処理液に含まれる磁性スラッジを流動する工程、とを備えたことを特徴とするものである。
【0055】
さらに、上記処理方法において、
(工程5)前記サブドラムの下部に流通する被処理液の流量は、前記サブドラムの上部に流通する被処理液の流量より大きくなるように調整する工程を具備することが好ましい。
なお、上記本発明のマグネットセパレータの各構成の使用を、処理方法の工程として追加してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のマグネットセパレータは、被処理液に含有する磁性スラッジを磁力によって回収するものであり、油性、水溶性を問わず高い回収率が実現される。被処理液としては、例えば、磁性金属を被削材とする金属研磨加工機械におけるクーラント液や、鋼板等にメッキを施す装置におけるメッキ液等が挙げられる。
【0057】
また、本発明のマグネットセパレータは、液体から金属等の磁性スラッジを分離する操作であれば利用することができる。例えば、産業廃棄物からの希少金属の回収や、飲料や食用油等からの異物の除去等に利用してもよい。
【符号の説明】
【0058】
100,101…マグネットセパレータ、1…本体、2…メインドラム、2a…外筒、2b…内筒、3…サブドラム、3a…外筒、3b…内筒、4…投入部、5…液溜め部、6a…処理液排出部、6b…磁性スラッジ排出部、7…ローラ、8…整流壁、9…第1の底壁、10…第2の底壁、11…第1のスクレーパ、12…第2のスクレーパ、13…上部流路、14…下部流路、15,16…開口部、17…流量調整部、S…磁性スラッジ