(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】軌道穿孔システム並びに関連する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B23B 29/034 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
B23B29/034 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017004439
(22)【出願日】2017-01-13
【審査請求日】2020-01-07
(32)【優先日】2016-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ホレマン, ウェズリー イー.
(72)【発明者】
【氏名】ファレル, ニコラス アール.
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0227055(US,A1)
【文献】特開昭58-206305(JP,A)
【文献】特開昭56-126504(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02084056(GB,A)
【文献】特開昭61-030343(JP,A)
【文献】米国特許第06227082(US,B1)
【文献】特表2002-516761(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0017017(US,A1)
【文献】特表2004-534666(JP,A)
【文献】特表2010-532275(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19712238(DE,A1)
【文献】特開平07-060516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00-29/34
B23B 35/00-49/06
B23C 1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道穿孔システム(100)であって、
カッター軸(122)の周りで回転可能なスピンドル(113)と、
前記スピンドルに連結され、且つ、前記スピンドルを前記カッター軸からオフセットされた軌道軸(112)の周りで回すように構成された、偏心回転機構(111)とを備えた軌道穿孔機械(110)、及び
前記スピンドルと共に回転するように連結されたカッター(120)であって、前記カッターの切削直径(Dc)を集合的に画定する複数の切削刃(130)を備え、前記カッターの前記切削直径が調整可能である、カッターを備
え、
前記カッター(120)が、本体(126)と当該本体に調整可能に固定された複数のインサート(128)とを更に備え、前記複数のインサートの各々が、前記切削刃(130)のうちの1つを画定し、前記カッターの前記切削直径(Dc)を調整するために、前記本体に対して半径方向へ調整可能であり、
前記カッター(120)が、前記カッターの前記本体(126)に対して前記複数のインサート(128)を自動で半径方向へ調整するように構成された、自動調整機構を更に備え、
前記自動調整機構が、前記複数のインサート(128)に連結され且つ前記カッター(120)の前記本体(126)に対して前記複数のインサートを半径方向へ移動させるように選択的に動作可能な、電子的に制御されたアクチュエータ(470)を備え、
前記電子的に制御されたアクチュエータ(470)がピストン(472)を備える、
軌道穿孔システム(100)。
【請求項2】
前記自動調整機構が、前記電子的に制御されたアクチュエータと動作可能に連結された制御モジュールを更に備え、且つ
前記制御モジュールが、前記カッターの前記本体に対して前記複数のインサートを半径方向へ移動させるように、前記電子的に制御されたアクチュエータに指示命令するように構成されている、請求項
1に記載の軌道穿孔システム(100)。
【請求項3】
前記自動調整機構が、前記ピストン(472)と移動不可能に連結された楔(440)を更に備える、請求項1又は2に記載の軌道穿孔システム(100)。
【請求項4】
加工対象物内に孔を形成する方法であって、
複数の切削刃(130)を備えるカッター(120)が周回するところの軌道軸(112)と前記カッターが回転するところのカッター軸(122)との間のオフセット(OS)を提供すること(510)、
前記カッターの切削直径(Dc)を調整すること(540)
であって、前記複数の切削刃を、ピストン(472)を備える電子的に制御されたアクチュエータ(470)を使用して、前記カッター軸(122)から離れるように又は前記カッター軸(122)に向かうように、半径方向へ自動で移動させることを含み、前記複数の切削刃(130)は、前記切削直径(Dc)を集合的に画定す
る、前記カッターの切削直径(Dc)を調整すること(540)、
前記加工対象物内の材料を切削するために、前記カッター軸の周りで前記カッターを回転させること(530)、及び
前記加工対象物内の材料を切削するために、前記カッター軸の周りで前記カッターを回転させると同時に、前記切削直径よりも大きい第1の孔直径を有する孔を前記加工対象物内に形成するために、前記軌道軸の周りで前記カッターを回すこと(530)を含む、方法。
【請求項5】
前記ピストン(472)が、楔(440)に移動不可能に連結され、前記楔(440)が、前記複数の切削刃(130)を半径方向へ移動させるように選択的に動作可能である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記カッター(120)の前記切削直径(Dc)が、第1の切削直径であり、前記方法が、
前記カッターの前記第1の切削直径を、前記第1の切削直径とは異なる第2の切削直径へ調整すること(540)、及び
前記加工対象物内の材料を切削するために、前記カッター軸
(122)の周りで前記カッタ
ーを回転させる(530)と同時に、前記第2の切削直径よりも大きく且つ前記第1の孔直径とは異なる第2の孔直径を有する孔を前記加工対象物内に形成するために、前記軌道軸(1
12)の周りで前記カッターを回すこと(530)を更に含む、請求項
4又は5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広くは、孔を穿設するための軌道穿孔システムに関し、特に、オフセットが一定で直径が調整可能なカッターを有する、軌道穿孔システムに関する。
【背景技術】
【0002】
軌道穿孔機械は、軌道軸の周りで回転するカッターを回すことによって、加工対象物内に孔を切削するために使用される。軌道穿孔機械によって穿設される孔は、カッターの切削直径にカッター軸と軌道軸との間のオフセットの2倍を加えたものと等しい孔直径を有する。概して、軌道穿孔機械は、改良された孔の品質、孔の位置からの穿孔デブリのより優れた排出、及びより低い穿孔温度などの、従来の穿孔機械を超えた幾つかの利点を提供する。
【0003】
従来の軌道穿孔機械は、調整不可能な一定の切削直径を有するカッターを使用し、カッター軸と軌道軸との間のオフセットを調整することによって、様々な孔直径を有する孔の切削を容易にする。従来の軌道穿孔機械によって採用されているオフセット調整機構は、しばしば、大きく、複雑で、高価で、弱く、且つ信頼性が低い。
【発明の概要】
【0004】
本願の主題は、当該技術分野の現行技術に対応して、特に、現時点で利用可能な技術によっては未だ完全には解決されていない、従来の軌道穿孔システムの欠点に対応して、開発されたものである。したがって、本出願の主題は、先行技術の上述の欠点のうちの少なくとも幾つかを克服する、軌道穿孔システム並びに関連する方法及び装置を提供するために開発された。
【0005】
一実施形態によれば、軌道穿孔システムは、軌道穿孔機械及びカッターを含む。軌道穿孔機械は、スピンドル及び偏心回転機構を含む。スピンドルは、カッター軸の周りで回転可能である。偏心回転機構は、スピンドルに連結され、カッター軸からオフセットされた軌道軸の周りでスピンドルを回すように構成されている。カッター軸と軌道軸との間のオフセットは、調整不可能であり一定である。カッターは、スピンドルと共に回転可能に連結され、カッターの切削直径を集合的に画定する複数の切削刃を備える。カッターの切削直径は、調整可能である。
【0006】
軌道穿孔システムのある実施態様では、カッターが、本体と本体に調整可能に固定された複数のインサートとを更に含む。複数のインサートの各々が、切削刃のうちの1つを画定する。更に、複数のインサートの各々は、カッターの切削直径を調整するために、本体に対して半径方向に調整可能である。
【0007】
軌道穿孔システムの特定の実施態様によれば、カッターは、本体に対して複数のインサートを手動で半径方向に調整するように構成された、手動調整機構を更に備える。
【0008】
軌道穿孔システムの特定の実施態様では、手動調整機構がカムを含む。カムは、複数のインサートと係合し、第1の回転方向へのカムの回転に際して、カッターの本体に対して半径方向外向きに複数のインサートを促し、且つ、第1の回転方向とは反対の第2の回転方向へのカムの回転に際して、カッターの本体に対して半径方向内向きに複数のインサートが移動されることを可能にするように構成された、非円形の係合表面を含む。
【0009】
軌道穿孔システムのある実施態様によれば、手動調整機構が楔を含む。楔は、複数のインサートと係合し、カッター軸と平行な第1の並進方向への本体に対する楔の並進移動に際して、カッターの本体に対して半径方向外向きに複数のインサートを促し、且つ、第1の並進方向とは反対の第2の並進方向への本体に対する楔の並進移動に際して、カッターの本体に対して半径方向内向きに複数のインサートが移動されることを可能にするように構成された、テーパを付けられた表面を含む。
【0010】
軌道穿孔システムのある実施態様では、手動調整機構が複数のシムを含み、複数のシムの各々は、複数のインサートのうちのそれぞれの1つと本体との間に位置決め可能であり、インサートの手動の半径方向の調整の後でインサートを支持する。複数のシムは、各々、複数のインサートの望ましい半径方向の調整と等しい寸法を有する。
【0011】
軌道穿孔システムの特定の実施態様によれば、カッターは複数のファスナを更に含み、複数のファスナの各々は、複数のインサートのうちのそれぞれの1つをカッターの本体と調整可能に固定させる。複数のインサートの各々はスロットを含み、スロットを通って複数のファスナのうちのそれぞれの1つが延在し、インサートをカッターの本体と調整可能に固定させ得る。更に、各ファスナは、インサートが本体に対して半径方向に調整される際に、それぞれのインサートのスロットに沿って並進移動することができる。
【0012】
軌道穿孔システムのある実施態様では、カッターが、カッターの本体に対して複数のインサートを自動で半径方向に調整するように構成された、自動調整機構を更に含む。自動調整機構は、複数のインサートに連結され且つカッターの本体に対して複数のインサートを半径方向へ移動させるように選択的に動作可能な、電子的に制御されたアクチュエータを含み得る。更に、自動調整機構は、複数のインサートと係合し、カッター軸と平行な第1の並進方向への本体に対する楔の並進移動に際して、カッターの本体に対して半径方向外向きに複数のインサートを促し、且つ、第1の並進方向とは反対の第2の並進方向への本体に対する楔の並進移動に際して、カッターの本体に対して半径方向内向きに複数のインサートが移動されるように促すように構成された、テーパを付けられた表面を含む、楔を更に含み得る。楔は、電子的に制御されたアクチュエータと連結され、電子的に制御されたアクチュエータの選択的な動作を介して、本体に対して並進移動が可能である。
【0013】
軌道穿孔システムのある実施態様によれば、自動調整機構が、電子的に制御されたアクチュエータと動作可能に連結された、制御モジュールを更に含む。制御モジュールは、カッターの本体に対して複数のインサートを半径方向へ移動させるように、電子的に制御されたアクチュエータに指示命令するように構成されている。制御モジュールは、軌道穿孔機械と動作可能に連結され、カッター軸の周りのスピンドル及びカッターの回転、並びに軌道軸の周りのスピンドルの軌道回転を制御することができる。更に、制御モジュールは、カッターが第1の切削直径を有するように、カッターの本体に対して複数のインサートを半径方向へ移動させるように電子的に制御されたアクチュエータに指示命令し、第1の切削直径よりも大きい第1の孔直径を有する孔を加工対象物内に形成するために、カッター軸の周りのスピンドル及び第1の切削直径を有するカッターの回転、並びに軌道軸の周りのスピンドルの軌道回転を制御し、カッターが第1の切削直径よりも大きい第2の切削直径を有するように、カッターの本体に対して複数のインサートを半径方向へ移動させるように電子的に制御されたアクチュエータに指示命令し、且つ、第1の孔直径から第1の孔直径よりも大きい第2の孔直径へ加工対象物内の孔を拡大させるために、カッター軸の周りのスピンドル及び第2の切削直径を有するカッターの回転、並びに軌道軸の周りのスピンドルの軌道回転を制御するように構成され得る。
【0014】
更に別の実施形態では、加工対象物内に孔を形成する方法が、その周りでカッターが周回するところの軌道軸と、その周りでカッターが回転するところのカッター軸との間のオフセットを提供することを含む。ある実施態様では、方法が、軌道軸とカッター軸との間のオフセットを調整不可能に一定にすることを更に含み得る。該方法は、カッターの切削直径を調整すること、及び加工対象物内の材料を切削するために、カッター軸の周りでカッターを回転させることも含む。該方法は、加工対象物内の材料を切削するために、カッター軸の周りでカッターを回転させると同時に、切削直径よりも大きい第1の孔直径を有する孔を加工対象物内に形成するために、軌道軸の周りでカッターを回すことを含む。
【0015】
該方法のある実施態様によれば、カッターは、カッターの切削直径を集合的に画定する、複数の切削刃を含む。更に、カッターの切削直径を調整することは、カッター軸から離れるように又はカッター軸へ向かうように、複数の切削刃を手動で半径方向へ移動させることを含み得る。代替的に又は更に、カッターの切削直径を調整することは、カッター軸から離れるように又はカッター軸へ向かうように、複数の切削刃を自動で半径方向へ移動させることを含み得る。カッターの切削直径を調整することは、カッターがカッター軸の周りで回転している間に、オンザフライ(on‐the‐fly)で、カッター軸から離れるように又はカッター軸へ向かうように、複数の切削刃を半径方向へ移動させることを含み得る。
【0016】
該方法の特定の実施態様では、カッターの切削直径が、第1の切削直径である。該方法は、カッターの第1の切削直径を、第1の切削直径とは異なる第2の切削直径へ調整することを更に含み得る。更に、該方法は、加工対象物内の材料を切削するために、カッター軸の周りでカッターを回転させると同時に、第2の切削直径よりも大きく且つ第1の孔直径とは異なる第2の孔直径を有する孔を加工対象物内に形成するために、軌道軸の周りでカッターを回すことを含み得る。
【0017】
別の一実施形態では、孔直径を有する孔を加工対象物内に形成するための、軌道穿孔機械と共に使用されるカッターが開示される。軌道穿孔機械は、軌道軸に対してオフセットされたカッター軸を含む。オフセットは、調整可能であるか又は調整不可能であり得る。カッターは、本体と本体に調整可能に固定された複数のインサートとを含む。複数のインサートの各々は、孔直径よりも小さいカッターの切削直径を集合的に画定する、複数の切削刃のうちの1つを画定する。複数のインサートは、切削直径を調整するために、本体に対して半径方向へ調整可能である。
【0018】
本開示の主題の説明される特徴、構造、利点、及び/又は特性は、1以上の実施形態及び/又は実装態様において、任意の適切なやり方で組み合され得る。後述の記載において、本開示の主題にかかる実施形態の深い理解を促すために、複数の具体的な詳細が提供される。本開示の主題が、特定の実施形態又は実装態様の特定の特徴、詳細、構成要素、材料、及び/又は方法のうちの1以上なしに実施され得ることを、当業者は認識するであろう。他の例においては、全ての実施形態又は実装形態には存在しなくてよい追加の特徴及び利点が、特定の実施形態及び/又は実装形態において認識されてよい。更に、ある場合、本発明の主題の態様を不明瞭にしないよう、周知の構造、材料、又は工程は詳細に記載又は図示されていない。本開示の主題の特徴及び利点は、後述の記載及び添付の特許請求の範囲によって更に明らかとなるか、或いは、本主題を下記に記載するように実施することにより理解されるであろう。
【0019】
本主題の利点がより容易に理解され得るように、上記で概説した本主題のより具体的な記載が、添付図面に示す特定の実施形態を参照して提供される。これら図面は本主題の典型的な実施形態のみを示し、したがって、その範囲を限定することは意図されておらず、本主題は、下記の図面を使用して更なる具体性及び詳細を用いて説明されることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の1以上の実施形態による、軌道穿孔システムの概略的な斜視図である。
【
図2】本開示の1以上の実施形態による、
図1の軌道穿孔システムのカッターの概略的な上面図である。
【
図3】本開示の1以上の実施形態による、カッターの詳細の斜視図である。
【
図4】本開示の1以上の実施形態による、1つの半径方向位置にあるインサートと共に示される、カッターの概略的な断面側面立面図である。
【
図5】本開示の1以上の実施形態による、別の1つの半径方向位置にあるインサートと共に示される、
図4のカッターの概略的な断面側面立面図である。
【
図6】本開示の1以上の実施形態による、1つの半径方向位置にあるインサートと共に示される、カッターの概略的な上面図である。
【
図7】本開示の1以上の実施形態による、別の1つの半径方向位置にあるインサートと共に示される、
図6のカッターの概略的な上面図である。
【
図8】本開示の1以上の実施形態による、1つの半径方向位置にあるインサートと共に示される、カッターの概略的な断面側面立面図である。
【
図9】本開示の1以上の実施形態による、別の1つの半径方向位置にあるインサートと共に示される、
図8のカッターの概略的な断面側面立面図である。
【
図10】本開示の1以上の実施形態による、1つの半径方向位置にあるインサートと共に示される、カッターの概略的な断面側面立面図である。
【
図11】本開示の1以上の実施形態による、別の1つの半径方向位置にあるインサートと共に示される、
図10のカッターの概略的な断面側面立面図である。
【
図12】本開示の1以上の実施形態による、加工対象物内に孔を形成する方法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書全体で言及される「1つの実施形態」、「一実施形態」、又は同様の文言は、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書で「1つの実施形態では」「一実施形態では」、又は同様に記載されている場合、全て同一の実施形態を意味してもよいが、必ずしもそうでなくともよい。同様に、「実施態様」という語の使用は、本発明の1以上の実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、又は特性を有する実施態様を意味するが、特に相互関係を表す指示がなければ、実施態様は1以上の実施形態に関連付けられ得る。
【0022】
図1及び
図2を参照すると、一実施形態によれば、軌道穿孔システム100は、軌道穿孔機械110、及び軌道穿孔機械110と連結されたカッター120を含む。概して、軌道穿孔システム100は、加工対象物102内に孔104を形成(例えば、穿設又は切削)するために動作可能である。軌道穿孔機械110は、軌道軸112の周りで回転方向114へ回転する、偏心回転機構111を含む。偏心回転機構111の構成に応じて、軌道軸112は、偏心回転機構111の中心軸と同心であり得る。軌道穿孔機械110は、軌道軸112からオフセットされた位置で偏心回転機構と連結されたスピンドル113も含む。したがって、軌道軸112の周りの偏心回転機構111の回転は、スピンドル113が軌道軸112の周りを回ることをもたらす。スピンドル113は、軌道軸112の周りの偏心回転機構111の回転とは独立して、回転軸122の周りで回転方向124へ回転可能である。カッター軸122は、オフセットOSだけ、軌道軸122から間隔を空けられ又はオフセットされている。したがって、カッター軸122は、オフセットOSと等しい軌道半径で、軌道軸112の周りを回る。示されてはいないが、偏心回転機構111と連結されたスピンドルモータが、カッター軸122の周りでスピンドル113を回転させるように動作可能である。スピンドルモータは、電気モータ、電磁モータ、空気圧モータ、油圧モータなどの、様々な種類のモータのうちの何れかであり得る。
【0023】
従来の軌道穿孔機械とは異なり、軌道軸112とカッター軸122との間のオフセットOSは、調整不可能で一定である。言い換えると、軌道軸112とカッター軸122との間のオフセットOSは、調整可能ではない。軌道軸112とカッター軸122との間のオフセットOSは、調整不可能で一定なので、従来の軌道穿孔機械の、軌道軸とカッター軸との間のオフセットOSを調整するために必要な、大きく、複雑で、高価で、弱く、且つ、しばしば信頼性が低い、オフセット調整機構は、必要ではなく且つ軌道穿孔機械110に含まれない。オフセット調整機構がないので、軌道穿孔機械110は、より小さく、より単純で、より安価で、より強く、且つ、従来の軌道穿孔機械よりも信頼性が高くなり得る。
【0024】
軌道穿孔システムは、スピンドル113と連結された共に回転可能なカッター120を更に含む、概して、スピンドル113は、カッター軸122の周りでカッター120を回転させるように構成されている。言い換えると、カッター120は、スピンドル113と共に回転可能に連結されているので、カッター軸122の周りでスピンドル113が回転すると、カッター120は、それに対応してカッター軸122の周りで回転する。更に、カッター120は、カッター軸122がカッター120の中心軸又は対称軸と同心になるように、スピンドル113と連結されている。一実施例では、カッター120が、精密なドリルチャックを用いてスピンドルと共に回転可能に連結される。ドリルチャックは、(例えば、熱膨張技術を使用して)カッター120を解放不可能に一端と固定し、スピンドル113と共に回転可能に係合するために、他端に従来のスピンドルインターフェースを含む。他の実施例では、スピンドル113が、スピンドル113と解放可能にカッター120を固定する従来のチャックを含む。
【0025】
カッター120は、本体126、及び本体126と連結された切削部分127を含む。概して、切削部分127は、カッター120がカッター軸122の周りで回転される際に、加工対象物102から材料を切削するように構成された、少なくとも1つの切削刃を含む。カッター120の切削部分127は、切削直径を画定する。切削部分127の切削直径は、切削部分の切削半径の2倍として規定される。切削部分の切削半径は、カッター軸122と少なくとも1つの切削刃との間の距離に等しい。以下でより詳細に説明されるように、カッターの特定の実施態様を参照すると、カッター120の切削部分127の切削直径は、調整可能である。したがって、加工対象物内に様々なサイズの孔を形成するために、軌道軸とカッター軸との間で調整可能なオフセット及び調整不可能で一定な切削直径を有するカッターを有する、軌道穿孔機械に頼る従来の軌道穿孔システムとは異なり、軌道穿孔システム100は、加工対象物内に様々なサイズの孔を形成するために、軌道軸112とカッター軸122との間で調整不可能な一定のオフセット及び調整可能な切削直径を有するカッターを有する、軌道穿孔機械110を含む。
【0026】
加工対象物102内に孔104を形成するために、軌道軸112及びカッター軸122と平行な供給軸に沿って、カッター120が加工対象物102を通って軸方向に供給される際に、軌道穿孔システム100は、同時に、軌道軸112の周りで偏心回転機構111を回転させ、カッター軸122の周りでカッター120を回転させる。概して、偏心回転機構111は、オフセットOSだけ軌道軸112から間隔を空けられた(例えば、オフセットされた)調整不可能な位置にスピンドル113を保持し、軌道軸112の周りでスピンドル113を回転させる、軌道軸112の周りで回転可能な要素を含む。一実施例では、該要素が、モータによって軌道軸112の周りで回転されるシャフトのような要素であり、スピンドル113は、シャフトのような要素に連結され且つ軌道軸112から離れるように実質的に横向きに延在する、アーム又は他の間隔空け手段によって、軌道軸112からオフセットされた調整不可能な位置に保持される。カッター軸122の周りのカッター120の回転は、加工対象物102から材料を除去し、軌道軸112の周りの偏心回転機構111の回転は、カッター120が、材料を除去する際に、軌道軸112の周りを回ることをもたらす。したがって、軌道穿孔システム100によって形成された孔104は、軌道軸112と同心であり、オフセットOSにカッター120の切削部分127の切削半径RCを加えたものと等しい半径RHを有する。言い換えると、孔104は、軌道軸112上に中心を置き、オフセットOSにカッター120の切削部分127の切削半径RCを加えたものの2倍に等しい直径を有する。
【0027】
図3~
図5を参照すると、一実施形態によれば、カッター120の切削部分127は、各々が複数のインサート128のうちの1つに形成された、複数の切削刃130を含む。インサート128は、より軟らかい材料における穿孔に対して導電性を有する様々な材料のうちの何れかから作られ得る。例えば、ある実施態様では、インサート128が、炭素化合物から作られる。インサート128は、カッター120の本体126と調整可能に固定されており、カッター軸122と切削部分127のインサート128の切削刃130との間の距離に等しい切削半径RCを変更するために、したがって、切削半径RCの2倍、すなわち、切削部分の対称的に反対側のインサート128の切削刃130の間の距離に等しい切削直径DCを変更するために調整可能である。インサート128は、チップ129すなわち本体126の終端の周りの円周で、互いから等しい距離だけ離れるように位置決めされている。インサート128は、様々な形状及びサイズのうちの何れかを有し得る。ある実施例では、
図8及び
図9などで示されるように、インサート128が、実質的に正方形状である。対照的に、
図3~
図5、
図10、及び
図11で示される実施例では、インサート128が、半径方向内向きにテーパを付けられた表面152を有するように、独特に形作られている。示される実施形態でのインサート128の各々は、インサートの半径方向で最も外側の端部を画定する、実質的に直線的な切削刃130を有する。しかし、他の実施形態では、インサート128の切削刃130が、丸められ、湾曲し、又はギザギザなど、非直線的であり得る。
【0028】
各インサート128は、少なくとも部分的に、インサート128内で形成されたスロット134を通って延在し且つ本体126と係合する、それぞれのファスナ132によって、カッター120の本体126と調整可能に固定されている。ファスナ132は、インサート128がカッター軸122に対して内向き及び外向きに半径方向に移動されることを可能にするために緩められ、カッター軸122に対してインサート128を適所に固定するために締め付けられ得る。ファスナ132は、当該技術分野において既知の様々なファスナのうちの何れかであり得る。例えば、一実施態様では、ファスナ132が、カッター120の本体126内に形成された(図示せぬ)内側にネジが切られた開口と係合するように構成された、頭部及び外側にネジが切られたシャンクを有するボルトである。ファスナ132を締めることは、頭部がインサート128にしっかりと固定されるまで、シャンクを本体126内に形成された開口と螺合させることを含み得る。
図5で示されるように、ファスナ132が緩められると、インサート128は、指示矢印によって示されているように、カッター軸122に対して半径方向へ移動することができる。半径方向の移動は、カッター軸122と実質的に垂直な方向で行われる。インサート128が移動する際のスロット134とのファスナ132の係合を介して、且つ、カッター120の本体126内に形成された、インサート128の回転を抑制する段差131との係合を介して、インサート128の移動が、半径方向の並進移動に限定される。
図4及び
図5を参照すると、インサート128がカッター軸122に対して半径方向へ移動する際に、ファスナ132の一部分が、スロット134と係合したままであり、スロット134に沿って並進方向へ移動する。本体126の段差131は、カッター軸122に平行な方向又は半径方向に垂直な方向における、インサート128に対する支持をも提供する。
【0029】
本開示のカッターのインサート128は、手動調整機構を介して手動で、又は自動調整機構を介して自動で、半径方向に調整され得る。
図3~
図5で示されるように、一実施形態によれば、カッター120の手動調整機構は、カッター軸122に対してインサート128を半径方向に同時に移動させるために、カッター軸122に沿って(例えば、平行に)並進移動され得る、楔140を含む。楔140は、本体126のチップ129から本体126に沿って延在する方向へ収縮する、テーパを付けられた表面150を含む。更に、手動調整機構は、カッター軸122に沿って楔140を選択的に並進移動させるための様々な特徴のうちの何れかを含む。一実施例では、手動調整機構が、本体126内に形成され且つカッター軸122と同軸の開口125と螺合する、ファスナ142を含む。ファスナ142は、楔140内に形成された貫通孔141を通って延在するシャンクを含み、貫通孔141又は貫通孔に隣接する楔140と係合する、貫通孔の最も小さい直径よりも大きい頭部を含む。ファスナ142が本体126に対して回転される際に、ファスナ142と開口125との間の螺合は、本体126に対するファスナ142の回転方向に応じた方向へ、カッター軸122に沿ってファスナ142が並進移動することをもたらす。本体126に対するファスナ142の回転は、ファスナ142の頭部内に形成され且つファスナ142の回転のためのツール(例えば、ドライバー、ハンドドリルなど)を受け入れるように構成された、ツール係合凹部144によって容易にされ得る。
【0030】
カッター120が、カッター軸122と同軸のファスナ142を使用して、カッター軸122に沿って楔140を移動させるように示されたが、他の実施形態では、他の方法及び特徴が使用されて、本開示の本質から逸脱することなしに、カッター軸122に沿って楔140が手動で移動され得る。例えば、楔140を手動で移動させるためにウォーム駆動が使用され得る。ウォーム駆動は、楔140に固定されたウォームシャフト、及び回転されたときにウォームシャフトを並進移動させるようにウォームシャフトと係合するウォームギアを含む。
【0031】
図4及び
図5で見られるように、下向き方向へのファスナ142の並進移動は、ファスナ142の頭部が、楔140と係合し且つ楔140を本体126に対して下向きに駆動することをもたらす。楔140が本体に対して下向きに駆動されると、楔140のテーパを付けられた表面150は、インサート128のテーパを付けられた表面150と係合する。インサート128は下向きの移動が妨げられているので、楔140のテーパを付けられた表面150とインサート128のテーパを付けられた表面152との間の係合は、
図5で示されているように、半径方向外向きにインサート128を促す(例えば、強いる又は駆動する)。このやり方では、インサート128の位置の半径方向外向きの調整は、均等に且つ同時に実行され得る。更に、インサート128が半径方向外向きに調整されると、カッター120の切削直径は、第1の直径D1から第2の直径D2に増加する。インサート128が半径方向外向きへ調整され、望ましく拡大された切削直径が達成された後で、ファスナ132は、インサート128を適所に保持するように締め付けられ得る。
【0032】
図4及び
図5で見られるように、上向き方向へのファスナ142の並進移動は、ファスナ142の頭部が、楔140と係合解除され且つ楔140が本体126に対して上向きに移動することを可能にすることをもたらす。楔140は上向き方向へ移動することが可能にされているので、楔140のテーパを付けられた表面150は、インサート128が半径方向内向きへ調整されることを可能とするように、インサート128の半径方向内向きへの移動を妨げない。インサート128が半径方向内向きへ調整されると、カッター120の切削直径は減少する。ある実施態様では、ファスナ142が上向き方向へ移動する際に、付勢要素が、インサート128が半径方向内向きへ移動し且つ楔が上向きへ移動することをもたらすように、カッター120が、インサート128を半径方向内向きに付勢するように構成された(図示せぬ)付勢要素を含む。インサート128が半径方向内向きへ調整され、望ましく低減された切削直径が達成された後で、ファスナ132は、インサート128を適所に保持するように締め付けられ得る。
【0033】
加工対象物がインサートによって切削されている際に、加工対象物102によってインサート128へ加えられている半径方向内向きへの力のために、ある実施形態では、インサート128が半径方向内向きの力によって不注意に半径方向内向きへ移動することを妨げるために、カッター120が半径方向の支持を提供する。一実施形態によれば、インサート128が半径方向へ調整される際にインサート128への半径方向の支持を提供するために、インサート128が半径方向へ調整される際に、楔140のテーパを付けられた150は、インサート128のテーパを付けられた表面152と係合したままである。
【0034】
図6及び
図7を参照すると、一実施形態によれば、カッター220の切削部分127は、各々が複数のインサート128のうちの1つに形成された、複数の切削刃130も含む。インサート128は、カッター220の本体126と調整可能に固定され、カッター220の切削半径又は切削直径を変更するために調整可能である。インサート128は、チップ129すなわち本体126の終端の周りの円周で、互いから等しい距離だけ離れるように位置決めされる。インサート128は、各々、半径方向内向きの表面252を有する。
【0035】
図3~
図5を参照して上述されたように、各インサート128は、少なくとも部分的に、インサート128内で形成されたスロットを通って延在し且つ本体126と係合する、(図示せぬ)それぞれのファスナによって、カッター220の本体126と調整可能に固定され得る。したがって、ファスナは、インサート128がカッター軸122に対して内向き及び外向きに半径方向に移動されることを可能にするために緩められ、カッター軸122に対してインサート128を適所に固定するために締め付けられ得る。
【0036】
一実施形態によれば、
図6及び
図7で示されているように、カッター220の手動調整機構は、カッター220の本体126と回転可能に連結された、カム240を含む。カム240は、カッター軸122の周りで、本体126に対して回転可能である。ある実施態様では、カム240が、カム240を回転させるためのツール(例えば、ドライバー、ハンドドリルなど)を受け入れるように構成された、ツール係合凹部244を含む。更に、カム240は、カム240が回転する際にカッター軸122の周りで回転する、非円形の係合表面250を含む。カム240が回転すると、非円形の係合表面250がインサート128の半径方向内向きの表面252と係合するように、カム240が構成されている。非円形の係合表面250の非円形性のために、カム240が回転すると、非円形の係合表面250は、インサート128がカッター軸122に対して半径方向へ移動することを促す又は可能にする。非円形の係合表面250に対するインサート128の位置に応じて、カム240の回転は、第1の切削半径R1などの第1の切削半径から第2の切削半径R2などの第2の切削半径へ切削半径を増加させるように、インサート128を半径方向外向きへ促すか、又は切削半径を低減させるように、インサート128がカッター軸122に対して半径方向内向きへ移動することを可能にするかの何れかであり得る。
【0037】
望ましくは、カム240による全てのインサート128の半径方向外向きへの調整は一様である。したがって、一実施態様において、示されるように、非円形の係合表面250は、各々の1つがインサート128のうちのそれぞれの1つと係合する、複数の平坦な側部を有する実質的に多角形状を有する。一実施例では、カッター220が3つのインサート128を有し、カム240の非円形の係合表面250が、三角形状又は六角形状である。別の一実施例では、カッター220が6つのインサート128を有し、カム240の非円形の係合表面250が六角形状である。非円形の係合表面250の側部が平坦なので、カム240が回転すると、インサート128と係合する非円形の係合表面250の側部の一部分のカッター軸122からの半径方向の距離が変動し、それに対応して、本体126に対するインサート128の半径方向に向けられた移動を促す又は可能にする。ある実施形態では、非円形の係合表面250が滑らかなカムの輪郭を有するように、カム240の非円形の係合表面250の側部又は角部が、丸められることも可能である。
【0038】
ある実施態様では、インサートの半径方向内向きの移動を可能にするようにカム240が回転されたときに、付勢要素が、インサート128が半径方向内向きに移動することをもたらすように、カッター220が、インサート128を半径方向内向きに付勢するように構成された(図示せぬ)付勢要素を含む。加工対象物がインサートによって切削されている際の、加工対象物102によってインサート128に加えられる半径方向内向きの力のために、インサート128が半径方向へ調整される際にインサート128に半径方向の支持を提供するために、インサート128が半径方向へ調整される際に、カム240の非円形の係合表面250は、インサート128の半径方向内向きの表面252と係合したままである。
【0039】
図8及び
図9を参照すると、一実施形態によれば、カッター320の切削部分127は、各々が複数のインサート128のうちの1つに形成された、複数の切削刃130も含む。インサート128は、カッター320の本体126と調整可能に固定され、カッター320の切削半径又は切削直径を変更するために調整可能である。インサート128は、チップ329すなわち本体126の終端の周りの円周で、互いから等しい距離だけ離れるように位置決めされる。インサート128は、各々、半径方向内向きの表面352を有する。
図3~
図5を参照して上述されたように、各インサート128は、少なくとも部分的に、インサート128内で形成されたスロット134を通って延在し且つ本体126と係合する、それぞれのファスナ132によって、カッター320の本体126と調整可能に固定され得る。したがって、ファスナは、インサート128がカッター軸122に対して内向き及び外向きに半径方向に移動されることを可能にするために緩められ、カッター軸122に対してインサート128を適所に固定するために締め付けられ得る。
【0040】
一実施形態によれば、
図8及び
図9で示されているように、カッター320の手動調整機構は、各々が複数のインサート128のうちのそれぞれの1つと本体126との間に位置決めされた、複数のシム360を含む。上述されたように、加工対象物がインサートによって切削されている際に、加工対象物102によってインサート128に加えられる半径方向内向きの力のために、半径方向内向きへの力に対してインサート128を支持し、半径方向内向きへの力によって不注意にインサート128が半径方向内向きへ移動することを妨げるために、半径方向の支持が望ましいだろう。
図8で示されるように、インサート128がカッター軸122に対して半径方向の最も内側の位置にあるときに、カッター320の本体126の中心部分331が、そのような半径方向の支持を提供することができる。しかし、インサート128が、カッター軸122及び本体126の中心部分331から離れるように半径方向外向きへ調整されたときに、本体126の中心部分331は、もはや半径方向の支持を提供しない。したがって、シム360のうちの1つが、半径方向外向きへ調整されたインサート128と本体126(例えば、本体126の中心部分331)との間に配置される。ある実施形態では、各シム360が、複数のインサート128の望ましい半径方向の調整(すなわち、インサートが半径方向外向きへ調整される望ましい量)と等しい、寸法(例えば、厚さ)を有する。代替的に、複数のシム360は、望ましい半径方向の調整を達成するために、並んで(side‐by‐side)配置され得る。このやり方では、本体126の中心部分331と協働して、1以上のシム360が、インサート128が不注意に半径方向内向きへ移動することを妨げるために必要な半径方向の支持を提供する。
【0041】
一実施形態によれば、
図10及び
図11で示されているように、カッター420は、各々が複数のインサート128のうちの1つに形成された、複数の切削刃130を有する切削部分127を含む。インサート128は、カッター420の本体126と調整可能に固定され、カッター420の切削半径又は切削直径を変更するために調整可能である。インサート128は、チップ329すなわちカッター420の本体126の終端の周りの円周で、互いから等しい距離だけ離れるように位置決めされ得る。
【0042】
カッター420は、カッター420の本体126に対して複数のインサート128を自動で半径方向へ調整するように構成された、自動調整機構も含む。自動調整機構は、電子的に制御されたアクチュエータ470及び楔440を含む。概して、電子的に制御されたアクチュエータ470は、楔440を介してインサート128と連結され、カッター420の本体126に対してインサート128を半径方向へ移動させるように選択的に動作可能である。
【0043】
図3~
図5のカッター120の楔140のように、楔440は、カッター軸122に対してインサート128を半径方向に且つ同時に移動させるために、カッター軸122に沿って並進移動が可能である。楔140と同様に、楔440は、本体126のチップから本体126に沿って延在する方向へ収縮する、テーパを付けられた表面150を含む。(
図10及び
図11で見られるように)楔440が本体に対して下向きに駆動されると、楔440のテーパを付けられた表面150は、インサート128のテーパを付けられた表面152と係合する。インサート128は下向きの移動を妨げられているので、楔440のテーパを付けられた表面150とインサート128のテーパを付けられた表面152との間の係合は、
図11で示されているように、半径方向外向きにインサート128を促す。このやり方では、インサート128の位置の半径方向外向きの調整は、均等に且つ同時に実行され得る。更に、インサート128が半径方向外向きに調整されると、カッター420の切削直径は、第1の直径D1から第2の直径D2に増加する。(
図10及び
図11で見られるように)楔440が上向きに駆動されると、楔440のテーパを付けられた表面150は、インサート128が半径方向内向きへ調整されることを可能にするように、インサート128の半径方向内向きへの移動を妨げない。インサート128が半径方向内向きへ調整されると、カッター420の切削直径は減少する。ある実施態様では、付勢要素が、インサート128が半径方向内向きへ移動することをもたらすように、カッター420が、インサート128を半径方向内向きへ付勢するように構成された(図示せぬ)付勢要素を含む。
【0044】
カッター軸122に沿って楔140を手動で移動させる、カッター120の手動調整機構とは異なり、カッター420のカッター軸122に沿った楔440の移動は、電子的に制御されたアクチュエータ470の選択的な動作及び作動を介して、自動的に実行される。電子的に制御されたアクチュエータ470は、加えられた力の下でシリンダー473内で移動可能なピストン472を含む。ピストン472は、楔440と移動不可能に連結されている。したがって、ピストン472がシリンダー473内で移動すると、楔440は、それに対応して移動する。このやり方において、シリンダー473内で、ピストン472が加えられた力の下でシリンダー473内で下向きに移動すると、楔440は下向きに駆動され、ピストン472が加えられた力の下でシリンダー473内で上向きに移動すると、楔440は上向きに駆動される。
【0045】
加えられる力は、空気圧力、油圧力、磁気力、電気的な動力などのうちの1以上であり得る。更に、シリンダー473内でピストン472を移動させるために、ピストン472に加えられる力の適用は、制御モジュール480によって制御される。より具体的には、制御モジュール480が、電気信号通信ライン474を介して、電気的に制御されたアクチュエータ470に指示命令を送信し、電気的に制御されたアクチュエータ470を作動させ、ピストン472及び楔440を移動させ、インサート128を半径方向へ調整する。このやり方では、カッター420が回転している間でさえも、インサート128が、オンザフライ又はインシトゥ(in‐situ)で半径方向へ調整され得る。
【0046】
カッター420は、電子的に制御されたアクチュエータ470及び楔440を用いて、インサート128を自動で半径方向へ移動させるが、他の実施形態では、インサート128が、本開示の本質から逸脱することなく、楔及び/又は電子的に制御されたアクチュエータなしに、他の特徴及び方法を用いて自動で半径方向へ移動され得る。
【0047】
軌道穿孔システム100は、軌道穿孔機械110の偏心回転機構111に連結された、軌道穿孔機械110のスピンドル113と共に回転可能に連結されたカッター120を含むように示されているが、カッター220、320、420などの、本開示のカッターの何れも、カッター120と同じやり方でスピンドル113と共に回転可能に連結され得ることが認識される。
【0048】
ある実施形態では、制御モジュール480が、軌道穿孔機械110の動作を制御するように更に構成されている。したがって、制御モジュール480は、軌道穿孔機械110と動作可能に連結され、偏心回転機構111及びスピンドル113の動作特性を制御する指示命令を、軌道穿孔機械に送信し得る。例えば、制御モジュール480は、偏心回転機構111の回転(すなわち、軌道軸112の周りのカッター軸122の軌道回転)及びスピンドル113(すなわち、スピンドルと共に回転可能に連結されたカッター)の回転の開始、停止、及び回転速度を制御するように構成され得る。更に、制御モジュール480は、軌道穿孔機械110と連結されたロボットと動作可能に連結され、所定の場所で加工対象物102内に孔104を形成するために、ロボットの動作を制御して、加工対象物102に対して軌道穿孔機械を精密に且つ自動で位置決めするように構成されている。
【0049】
一実施形態によれば、制御モジュール480は、カッター420が第1の切削直径を有するように、電子的に制御されたアクチュエータ470に指示命令し、楔440の移動を介して、カッター420の本体126又はカッター軸122に対してインサート128を移動させるように構成されている。制御モジュール480は、第1の望ましい軌道回転速度で回転するように偏心回転機構111に指示命令し、第1の望ましい切削回転速度で回転するようにスピンドル及び第1の切削直径を有するカッター420に指示命令するようにも構成されている。更に、軌道軸112が加工対象物102内で形成されるべき孔104の中心と同心であり、第1の切削直径を有するカッター420のインサート128が、加工対象物102内に第1の孔直径を有する孔104を切削するように、制御モジュール480が、加工対象物102に対して偏心回転機構111を位置決めするように、ロボットに指示命令するように構成され得る。加工対象物102内に第1の孔直径を有する孔104が切削された後で、制御モジュール480は、カッター420が第1の切削直径よりも大きい第2の切削直径を有するように、楔440の移動を介して、カッター420の本体126又はカッター軸122に対してインサート128を移動させるように、電子的に制御されたアクチュエータ470に指示命令するように構成されている。制御モジュール480は、更に、第2の望ましい軌道回転速度で回転するように偏心回転機構111に指示命令し、第2の望ましい切削回転速度で回転するようにスピンドル及び第2の切削直径を有するカッター420に指示命令するように構成されている。更に、軌道軸112が第1の孔直径を有する孔104の中心と同心であり、第2の切削直径を有するカッター420のインサート128が、第1の孔直径から第1の孔直径よりも大きい第2の孔直径へ孔104を拡大させるために材料104を切削するように、制御モジュール480が、加工対象物102に対して偏心回転機構111を位置決めするように、ロボットに指示命令し得る。
【0050】
示されている実施形態の軌道穿孔機械110は、調整不可能に一定である、軌道軸112とカッター軸122との間のオフセットOSを有するものとして説明されたが、ある実施形態では、本開示の調整可能な切削直径を有するカッターは、軌道軸112とカッター軸122との間の調整可能なオフセットOSを有する従来の軌道穿孔機械と共に使用され得る。例えば、調整可能なオフセットOSを有する既存の軌道穿孔機械を所有するユーザは、調整可能なオフセットOSを有する軌道穿孔機械に対して調整不可能な一定のオフセットOSを有する軌道穿孔機械が有する利点にも関わらず、一定のオフセットOSを有する新しい軌道穿孔機械を取得(例えば、購入)する代わりに、彼らの既存の軌道穿孔機械を用いて、カッターの様々な有利な特徴に照らして、本開示のカッターを使用したいと望むかもしれない。そのようなユーザは、彼らの従来の軌道穿孔機械のオフセットOSを調整可能に固定し、本明細書で説明されたカッターの切削直径を調整することによって、加工対象物内に孔を形成し得る。代替的に、一実施例では、ユーザが、孔のサイズに対する比較的大まかな調整を行うために従来の軌道穿孔機械の調整可能なOSを使用し、孔のサイズに対する比較的細かい又は精密な調整を行うためにカッターの調整可能な切削直径を使用することによって、加工対象物内に孔を形成し得る。
【0051】
次に
図12を参照すると、一実施形態によれば、例えば、本開示の軌道穿孔システム100などを用いて、加工対象物内に孔を形成する方法500は、偏心回転機構の軌道軸とカッター軸との間のオフセットを提供すること(510)を含む。ある実施態様では、軌道軸とカッター軸との間のオフセットは、調整不可能で一定である。更に、方法500は、加工対象物内の材料を切削するために、調整可能な切削直径を有するカッターを提供する(520)。カッターは、軌道軸の周りを回り、カッター軸の周りで回転する。方法500は、軌道軸の周りでカッターを回し、及びカッター軸の周りでカッターを回転させ、加工対象物内に孔を切削すること(530)を更に含む。加工対象物内に孔を切削する前又は切削した後で、方法500は、カッターの切削直径を調整すること(540)も含む。一実施例では、カッターの切削直径が、加工対象物内に最初の孔を切削する前に調整される。その孔は、調整された切削直径と比例する孔直径を有する。別の一実施例によれば、カッターの切削直径は、加工対象物内に第1の孔直径を有する最初の孔を切削した後で調整される(例えば、第1の切削直径から第2の切削直径へ増加される)。加工対象物内に孔を切削すること(530)は、調整された切削直径を有するカッターを用いて、加工対象物内の最初の孔の孔直径を、第2の切削直径よりも大きく且つ第1の孔直径よりも大きい第2の孔直径へ拡大することを含む。
【0052】
方法500のある実施態様では、カッターの切削直径を調整すること(540)が、複数の切削刃を移動させて、カッター軸から離れるように又はカッター軸に向かうように、カッターの切削直径を集合的に画定することを含む。ある実施例によれば、カッターの複数の切削刃は、手動で移動される。他の実施例では、カッターの複数の切削刃が、カッターがカッター軸の周りで回転している際にオンザフライなどで、自動で又は自動的なやり方で移動される。
【0053】
上述の記載において、「上」「下」「上方」「下方」「水平」「垂直」「左」「右」「上部」「下部」などの特定の表現が用いられていることがある。これらの語は、該当する場合、相関関係を取り扱う際に説明に何らかの明確性をもたらすために用いられている。しかし、これらの語には絶対的な関係、位置、及び/または向きを含意させる意図はない。例えば、ある物体に関して、単純にこの物体の上下を逆にすることで「上方の」表面が「下方の」表面となり得る。それでもなお、これは未だ同じ物体である。更に、「含む」、「備える」、「有する」などの語及びこれらの変化形は、そうでないと明示的に記載のない限り、「~を含むがそれらに限定されない」ことを意味する。列挙されたアイテムは、別途明示的な記載のない限り、それらアイテムのうちの任意のもの又は全てが互いを排除する及び/又は互いを含むものであることを含意しない。「1つの(a)」「1つの(an)」及び「(the)」などの語は、別途明示的な記載のない限り、「1以上の」も表現する。更に、「複数」の語は「少なくとも2つ」と定義され得る。
【0054】
更に、本明細書における、1つの要素が他の要素に「連結される」ことは、直接的な連結及び間接的な連結を含み得る。直接的な連結は、1つの要素が他の要素と連結し、且つ他の要素と何らかの形で接触していることと定義され得る。間接的な連結は、互いに直接的に接触しておらず、連結された要素間に1以上の追加の要素を有する、2つの要素間の連結と定義され得る。更に、本明細書で使用される際に、1つの要素を他の要素に固定することは、直接的な固定及び間接的な固定を含み得る。更に、本明細書で使用する「隣接」とは、必ずしも接触を表さない。例えば、1つの要素は他の要素に、接触することなく隣接し得る。
【0055】
本明細書の中で使用される際に、「~のうちの少なくとも1つ」というフレーズは、アイテムのリストとともに使用されるときに、リストされたアイテムのうちの1以上の種々の組み合わせが使用され、且つリストの中の各々のアイテムのうちの1つだけが必要とされ得る、ということを意味する。アイテムとは、特定の物体、物品、又はカテゴリのことであり得る。すなわち、「~のうちの少なくとも1つ」は、アイテムの任意の組み合わせ、又は幾つかのアイテムが列挙から使用され得ることを意味するが、列挙されたアイテムの全てが必要なわけではない。例えば、「アイテムA、アイテムB、及びアイテムCのうちの少なくとも1つ」は、例えば、「アイテムA」、「アイテムAとアイテムB」、「アイテムB」、「アイテムAとアイテムBとアイテムC」、又は「アイテムBとアイテムC」を意味し得る。幾つかの場合には、「アイテムA、アイテムB、及びアイテムCのうちの少なくとも1つ」は、例えば、限定するものではないが、「2個のアイテムAと1個のアイテムBと10個のアイテムC」、「4個のアイテムBと7個のアイテムC」、又は他の何らかの好適な組み合わせを意味し得る。
【0056】
別途提示されない限り、「第1」、「第2」などの用語は、本書では単に符号として使用され、それらの用語が表すアイテムに順序的、位置的、又は序列的な要件を課すことは意図していない。更に、例えば「第2」のアイテムに言及することによって、例えば「第1」のもしくはより小さい数のアイテム、及び/又は、「第3」のもしくはより大きい数のアイテムの存在が、必要とされることまたは除外されることはない。
【0057】
本明細書で使用されているように、特定の機能を実行するように構成されたシステム、装置、構造、物品、要素、構成要素、又はハードウェアは、実際に、いかなる変更も行わずにその特定の機能を実行することが可能であり、更なる改変をした後にその特定の機能を実行するという単に潜在能力を有するというものではない。言い換えるならば、特定の機能を実行するように構成されたシステム、装置、構造、物品、要素、構成要素、又はハードウェアは、特定の機能を実行するという目的のために、特に選択され、作り出され、実装され、利用され、プログラムされ、且つ/又は設計される。本明細書で使用される、「ように構成された」という表現は、システム、装置、構造、物品、要素、構成要素、又はハードウェアが更なる改変なしで特定の機能を実行することを可能にする、システム、装置、構造、物品、要素、構成要素、又はハードウェアの特性が存在することを意味する。この開示において、特定の機能を実行するように構成されたと表現されるシステム、装置、構造、物品、要素、構成要素、又はハードウェアは、その機能を実行するように適合している、及び/又は、実行するように作動可能であると、さらに又は或いは表現することもできる。
【0058】
本明細書に記載の機能ユニットの多くは、実装における独立性をより具体的に強調するためにモジュールと名付けられている。例えば、モジュールは、カスタムVLSI回路又はゲートアレイを含むハードウェア回路、論理チップ、トランジスタ、又は他のディスクリートコンポーネントなどの市販の半導体として実装され得る。モジュールはまた、フィールドプログラマブルゲートアレイ、プログラマブルアレイ論理、プログラマブル論理デバイスなどのプログラマブルハードウェアデバイスに実装され得る。
【0059】
モジュールはまた、様々なタイプのプロセッサによって実行するためのソフトウェアに実装され得る。コンピュータ可読プログラムコードの識別されたモジュールは、例えば、1以上のコンピュータ指示命令の物理的ブロック又は論理的ブロックを含み、これらは例えば、オブジェクト、工程、又は機能として整理され得る。しかし、識別されたモジュールの実行可能物(executables)は、物理的に共に位置している必要はなく、異なる位置に記憶されて論理的に集められるとモジュールを構成しモジュールの規定の目的を達成する、異種の(disparete)指示命令を含み得る。
【0060】
実際、コンピュータ可読プログラムコードのモジュールは、単一の指示命令又は複数の指示命令であり得、異なるプログラム間及び幾つかのメモリデバイス間の幾つかの異なるコードセグメントに分散されていてもよい。同様に、本明細書において、運航上のデータは、モジュール内で識別され示されており、任意の適切な形態で実施され、任意の適切なタイプのデータ構造内で整理され得る。運航上のデータは、単一のデータセットとして収集されるか、又は、異なる記憶デバイス間を含む異なる位置に分散され、少なくとも部分的に、システム又はネットワーク上の単なる電子信号として存在し得る。モジュール又はモジュールの一部分がソフトウェア内に実装される場合、コンピュータ可読プログラムコードは、一以上のコンピュータ可読媒体に記憶される及び/又は伝播され得る。
【0061】
コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読プログラムコードを記憶している有形のコンピュータ可読記憶媒体であり得る。コンピュータ可読記憶媒体は、例えば、電子式、光学式、電磁式、赤外線、ホログラフ式、微小機械式、又は半導体システム、装置、もしくはデバイス、又はこれらの任意の適切な組み合わせであり得るがこれらに限定されない。
【0062】
コンピュータ可読媒体のより具体的な例は、携帯型コンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能なプログラマブルリードオンリメモリ(EPROM若しくはFlashメモリ)、携帯型コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD‐ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、光学記憶デバイス、磁気記憶デバイス、ホログラフ式記憶媒体、微小機械式記憶デバイス、又はこれらの任意の適切な組み合わせを含み得るがこれらに限定されない。本明細書の文脈において、コンピュータ可読記憶媒体は、指示命令実行システム、装置、もしくはデバイスによって及び/又はこれらとの組み合わせで利用される、コンピュータ可読プログラムコードを包含する及び/又は記憶することができる任意の有形媒体であり得る。
【0063】
コンピュータ可読媒体はまた、コンピュータ可読信号媒体であり得る。コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読プログラムコードが内部に埋め込まれ、例えば搬送波のベースバンドで又はその一部で伝播されるデータ信号を含み得る。そのような伝播信号は、電気式、電磁式、磁気式、光学式、又はこれらの任意の適切な組み合わせを含むがこれらに限定されない、様々な形態のうちの任意のものであり得る。コンピュータ可読信号媒体は、指示命令実行システム、装置、又はデバイスを用いて又はこれらと接続されてコンピュータ可読プログラムコードを通信、伝播、伝送できる、コンピュータ可読記憶媒体でない任意のコンピュータ可読媒体であってもよい。コンピュータ可読信号媒体に実装されるコンピュータ可読プログラムコードは、ワイヤレス、ワイヤライン、光ファイバケーブル、無線周波数(RF)など、又はこれらの任意の適切な組み合わせを含むがこれらに限定されない、任意の適切な媒体を用いて伝送され得る。
【0064】
一実施形態で、コンピュータ可読媒体は、一又は複数のコンピュータ可読記憶媒体並びに一又は複数のコンピュータ可読信号媒体の組み合わせを含み得る。例えば、コンピュータ可読プログラムコードは、プロセッサによって実行されるために光ファイバケーブルを通じて電磁式信号として伝播されてもよく、また、プロセッサによって実行されるためにRAM記憶デバイスに記憶されてもよい。
【0065】
本発明の実施態様の工程を行うためのコンピュータ可読プログラムコードは、Java、Smalltalk、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語、及び、「C」プログラミング言語もしくはこれに類するプログラミング言語などの従来の手続き型プログラミング言語を含む、1以上のプログラミング言語の任意の組み合せで書かれていてよい。コンピュータ可読プログラムコードは、完全にユーザのコンピュータ上で、スタンドアロンのソフトウェアパッケージとして部分的にユーザのコンピュータ上で、部分的にユーザのコンピュータ上且つ部分的にリモートコンピュータ上で、又は完全にリモートのコンピュータもしくはサーバ上で実行され得る。後者の場合、リモートコンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)はワイドエリアネットワーク(WAN)を含む任意のタイプのネットワークを介してユーザのコンピュータに接続され得るか、又は、(例えば、インターネットサービスプロバイダを利用してインターネットを介して)外部のコンピュータへの接続がなされてもよい。
【0066】
本明細書に記載の概略フローチャートは一般的に、論理フローチャートとして記載されている。従って、記載の順序及び名付けられたステップは、提供される方法の一実施形態を示す。示される方法の1以上のステップ若しくはそれらの部分の機能、論理、又は効果と同等の他のステップ及び方法が想起され得る。更に、用いられている形式及びシンボルは、本方法の論理的ステップを説明するために提供されており、本方法の範囲を限定するものではないことが理解されよう。フローチャートにおいて様々なタイプの矢印及び線が用いられうるが、これらに対応する方法の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。実際、幾つかの矢印又はその他の接続部は、本方法の論理的フローのみを示すために用いられ得る。例えば、矢印は、記載の方法の列挙されたステップ間において指定されてない期間の待機又は監視を示し得る。更に、具体的な方法が発生する順序は、図示されている対応するステップの順序に厳格に従うこともあるが、従わないこともある。
【0067】
更に、本発明は下記の条項による実施形態を含む。
条項1
カッター軸の周りで回転可能なスピンドルと、
前記スピンドルに連結され、且つ、前記スピンドルを前記カッター軸からオフセットされた軌道軸の周りで回すように構成された、偏心回転機構とを備えた軌道穿孔機械、及び
前記スピンドルと共に回転するように連結されたカッターであって、前記カッターの切削直径を集合的に画定する複数の切削刃を備え、前記カッターの前記切削直径が調整可能である、カッターを備える、軌道穿孔システム。
条項2
前記カッターが、本体と前記本体に調整可能に固定された複数のインサートとを更に備え、前記複数のインサートの各々が、前記切削刃のうちの1つを画定し、前記カッターの前記切削直径を調整するために、前記本体に対して半径方向へ調整可能である、条項1に記載の軌道穿孔システム。
条項3
前記カッターが、前記本体に対して前記複数のインサートを手動で半径方向へ調整するように構成された、手動調整機構を更に備える、条項2に記載の軌道穿孔システム。
条項4
前記手動調整機構がカムを備え、前記カムが非円形の係合表面を備え、前記非円形の係合表面が
前記複数のインサートと係合し、
第1の回転方向への前記カムの回転に際して、前記カッターの前記本体に対して半径方向外向きへ前記複数のインサートを促し、且つ
前記第1の回転方向とは反対の第2の回転方向への前記カムの回転に際して、前記カッターの前記本体に対して半径方向内向きへ前記複数のインサートが移動されることを可能にするように構成されている、条項3に記載の軌道穿孔システム。
条項5
前記手動調整機構が楔を備え、前記楔がテーパを付けられた表面を備え、前記テーパを付けられた表面が、
前記複数のインサートと係合し、
前記カッター軸と平行な第1の並進方向への前記本体に対する前記楔の並進移動に際して、前記カッターの前記本体に対して半径方向外向きへ前記複数のインサートを促し、且つ
前記第1の並進方向とは反対の第2の並進方向への前記本体に対する前記楔の並進移動に際して、前記カッターの前記本体に対して半径方向内向きへ前記複数のインサートが移動されることを可能にするように構成されている、条項3に記載の軌道穿孔システム。
条項6
前記手動調整機構が複数のシムを備え、前記複数のシムの各々が、前記複数のインサートのうちのそれぞれの1つと前記本体との間に位置決め可能であり、前記インサートの手動の半径方向の調整の後で前記インサートを支持する、条項3に記載の軌道穿孔システム。
条項7
前記複数のシムが、各々、前記複数のインサートの望ましい半径方向の調整と等しい寸法を有する、条項6に記載の軌道穿孔システム。
条項8
前記カッターが複数のファスナを更に備え、前記複数のファスナの各々が、前記複数のインサートのうちのそれぞれの1つを前記カッターの前記本体と調整可能に固定させる、条項3に記載の軌道穿孔システム。
条項9
前記複数のインサートの各々がスロットを備え、前記複数のファスナのうちのそれぞれの1つが、前記インサートを前記カッターの前記本体に調整可能に固定させるように前記スロットを通して延在し、且つ
前記インサートが前記本体に対して半径方向へ調整される際に、各ファスナが、それぞれのインサートの前記スロットに沿って並進移動する、条項8に記載の軌道穿孔システム。
条項10
前記カッターが、前記カッターの前記本体に対して前記複数のインサートを自動で半径方向へ調整するように構成された、自動調整機構を更に備える、条項2に記載の軌道穿孔システム。
条項11
前記自動調整機構が、前記複数のインサートに連結され且つ前記カッターの前記本体に対して前記複数のインサートを半径方向へ移動させるように選択的に動作可能な、電子的に制御されたアクチュエータを備える、条項10に記載の軌道穿孔システム。
条項12
前記自動調整機構が楔を更に備え、前記楔がテーパを付けられた表面を備え、前記テーパを付けられた表面が、
前記複数のインサートと係合し、
前記カッター軸と平行な第1の並進方向への前記本体に対する前記楔の並進移動に際して、前記カッターの前記本体に対して半径方向外向きへ前記複数のインサートを促し、且つ
前記第1の並進方向とは反対の第2の並進方向への前記本体に対する前記楔の並進移動に際して、前記カッターの前記本体に対して半径方向内向きへ前記複数のインサートが移動されることを促すように構成され、且つ
前記楔が、電子的に制御されたアクチュエータと連結され、前記電子的に制御されたアクチュエータの選択的な動作を介して、前記本体に対して並進移動が可能である、条項11に記載の軌道穿孔システム。
条項13
前記自動調整機構が、前記電子的に制御されたアクチュエータと動作可能に連結された制御モジュールを更に備え、且つ
前記制御モジュールが、前記カッターの前記本体に対して前記複数のインサートを半径方向へ移動させるように、前記電子的に制御されたアクチュエータに指示命令するように構成されている、条項11に記載の軌道穿孔システム。
条項14
前記制御モジュールが、前記カッター軸の周りの前記スピンドル及び前記カッターの回転、並びに前記軌道軸の周りの前記スピンドルの軌道回転を制御するように、前記軌道穿孔機械と動作可能に連結され、
前記制御モジュールが、
前記カッターが第1の切削直径を有するように、前記カッターの前記本体に対して前記複数のインサートを半径方向へ移動させるように前記電子的に制御されたアクチュエータに指示命令し、
前記第1の切削直径よりも大きい第1の孔直径を有する孔を加工対象物内に形成するために、前記カッター軸の周りの前記スピンドル及び前記第1の切削直径を有する前記カッターの回転、並びに前記軌道軸の周りの前記スピンドルの軌道回転を制御し、
前記カッターが前記第1の切削直径よりも大きい第2の切削直径を有するように、前記カッターの前記本体に対して前記複数のインサートを半径方向へ移動させるように前記電子的に制御されたアクチュエータに指示命令し、且つ
前記第1の孔直径から前記第1の孔直径よりも大きい第2の孔直径へ前記加工対象物内の前記孔を拡大させるために、前記カッター軸の周りの前記スピンドル及び前記第2の切削直径を有する前記カッターの回転、並びに前記軌道軸の周りの前記スピンドルの軌道回転を制御するように構成されている、条項13に記載の軌道穿孔システム。
条項15
前記カッター軸と前記軌道軸との間の前記オフセットが、調整不可能で一定である、条項1に記載の軌道穿孔システム。
条項16
加工対象物内に孔を形成する方法であって、
カッターが周回するところの軌道軸と前記カッターが回転するところのカッター軸との間のオフセットを提供すること、
前記カッターの切削直径を調整すること、
前記加工対象物内の材料を切削するために、前記カッター軸の周りで前記カッターを回転させること、及び
前記加工対象物内の材料を切削するために、前記カッター軸の周りで前記カッターを回転させると同時に、前記切削直径よりも大きい第1の孔直径を有する孔を前記加工対象物内に形成するために、前記軌道軸の周りで前記カッターを回すことを含む、方法。
条項17
前記カッターが、前記カッターの前記切削直径を集合的に画定する、複数の切削刃を備え、且つ
前記カッターの前記切削直径を調整することが、前記カッター軸から離れるように又は前記カッター軸へ向かうように、前記複数の切削刃を半径方向へ手動で移動させることを含む、条項16に記載の方法。
条項18
前記カッターが、前記カッターの前記切削直径を集合的に画定する、複数の切削刃を備え、且つ
前記カッターの前記切削直径を調整することが、前記カッター軸から離れるように又は前記カッター軸へ向かうように、前記複数の切削刃を半径方向へ自動で移動させることを含む、条項16に記載の方法。
条項19
前記カッターの前記切削直径を調整することが、前記カッターが前記カッター軸の周りで回転している間に、オンザフライで、前記カッター軸から離れるように又は前記カッター軸に向かうように、前記複数の切削刃を半径方法へ移動させることを含む、条項18に記載の方法。
条項20
前記カッターの前記切削直径が、第1の切削直径であり、前記方法が、
前記カッターの前記第1の切削直径を、前記第1の切削直径とは異なる第2の切削直径へ調整すること、及び
前記加工対象物内の材料を切削するために、前記カッター軸の周りで前記カッターを回転させると同時に、前記第2の切削直径よりも大きく且つ前記第1の孔直径とは異なる第2の孔直径を有する孔を前記加工対象物内に形成するために、前記軌道軸の周りで前記カッターを回すことを更に含む、条項16に記載の方法。
条項21
前記軌道軸と前記カッター軸との間の前記オフセットを、調整不可能に一定にすることを更に含む、条項16に記載の方法。
条項22
孔直径を有する孔を加工対象物内に形成するために、軌道軸に対してオフセットされたカッター軸を備えた、軌道穿孔機械と共に使用されるためのカッターであって、
本体、及び
前記本体と調整可能に固定された複数のインサートであって、各々が複数の切削刃のうちの1つを画定し、前記孔直径よりも小さい前記カッターの切削直径を集合的に画定する、複数のインサートを備え、
前記切削直径を調整するために、前記複数のインサートが、前記本体に対して半径方向へ調整可能である、カッター。
【0068】
本主題は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の特定の形で実施することができる。前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。特許請求の範囲の目的及び均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。