(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】プリンタ及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 29/38 20060101AFI20220831BHJP
B41J 3/36 20060101ALI20220831BHJP
G06F 1/26 20060101ALI20220831BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220831BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B41J29/38 104
B41J3/36
G06F1/26
H02J7/00 B
H02J7/00 X
H02J7/35 K
(21)【出願番号】P 2017247977
(22)【出願日】2017-12-25
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】村越 利生
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-050277(JP,A)
【文献】特開2017-113971(JP,A)
【文献】特開2014-188931(JP,A)
【文献】特開2008-254285(JP,A)
【文献】特開平11-289687(JP,A)
【文献】特開2015-189025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/38
B41J 3/36
H02J 7/00
H02J 7/35
G06F 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の電源からケーブルを介して電力を供給される端子と、
前記端子に供給された電力を用いて充電電池を充電する充電手段と、
前記充電電池の電圧に応じて、前記充電電池に充電されている電力のみを用いて、あるいは前記充電電池に充電されている電力と前記外部の電源から供給される電力の双方を用いて印刷を行う印刷手段とを備え、
前記印刷手段は、前記充電電池の電圧が第1の閾値以上の場合に、前記充電電池に充電されている電力のみを用いて印刷を行い、
前記外部の電源から前記端子に電力が供給されておらず、且つ前記充電電池の電圧が前記第1の閾値よりも低い場合は、印刷を行わず、
前記外部の電源から前記端子に電力が供給されており、且つ前記充電電池の電圧が前記第1の閾値よりも低く、前記第1の閾値よりも低い第2の閾値以上の場合に、前記充電電池に充電されている電力と、前記外部の電源から供給される電力とを用いて印刷を行い、
前記外部の電源から前記端子に電力が供給されている場合であっても、前記充電電池の電圧が前記第2の閾値よりも低い場合は、印刷を行わないことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記充電電池が充電中であることを表示する表示手段を有し、
前記充電手段による前記充電電池の充電中に前記印刷手段に対する印刷要求があると、前記充電手段による前記充電電池の充電を停止しつつ、前記表示手段による前記充電中であることの表示を継続することを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記第2の閾値は、印刷しようとする印刷データに基づいて設定されることを特徴とする請求項1または2に記載のプリンタ。
【請求項4】
外部の電源からケーブルを介して電力を供給される端子を備えるプリンタを制御する方法であって、
前記端子に供給された電力を用いて充電電池を充電する充電工程と、
前記充電電池の電圧に応じて、前記充電電池に充電されている電力のみを用いて、あるいは前記充電電池に充電されている電力と前記外部の電源から供給される電力の双方を用いて印刷を行う印刷工程とを有し、
前記印刷工程において、前記充電電池の電圧が第1の閾値以上の場合に、前記充電電池に充電されている電力のみを用いて印刷を行い、
前記外部の電源から前記端子に電力が供給されておらず、且つ前記充電電池の電圧が前記第1の閾値よりも低い場合は、印刷を行わず、
前記外部の電源から前記端子に電力が供給されており、且つ前記充電電池の電圧が前記第1の閾値よりも低く、前記第1の閾値よりも低い第2の閾値以上の場合に、前記充電電池に充電されている電力と、前記外部の電源から供給される電力とを用いて印刷を行い、
前記外部の電源から前記端子に電力が供給されている場合であっても、前記充電電池の電圧が前記第2の閾値よりも低い場合は、印刷を行わないことを特徴とするプリンタの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電池を備えたプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
充電バッテリー又は外部電源から印字部にエネルギーを供給し印字を行うプリンタが知られている。この種のプリンタでは、従来は電源の種別を検出せずに、異なる電源に対して同じ駆動条件で印字を行っていた。そのため、例えば、駆動条件を充電バッテリーの駆動条件に設定した場合に、外部電源からエネルギー供給して印字すると、外部電源の本来の能力に対して、印字速度が遅くなったり、印字品質が劣ったりする等の問題がある。また、駆動条件を外部電源の駆動条件に設定した場合に、充電バッテリーからエネルギー供給して印字すると、充電バッテリーの使用時間が短くなる等の問題がある。
【0003】
これらの問題に対応するため、特許文献1では、適正な印字を実現するため、印字前に使用する電源の種別(充電バッテリー又は外部電源)を判別し、電源の種類に応じた駆動条件を選択できるプリンタが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、携帯型のサーマルプリンタなどでは、感熱紙の1ラインに印刷するドット数が多い場合などは、サーマルヘッドに短時間に大きな電力を供給する必要がある。そのため、携帯型のサーマルプリンタを実際に製品化する場合には、特許文献1に記載のプリンタのように、充電バッテリーと外部電源の両方を用いてプリントを可能とすると、外部電源であるACアダプタの容量を大きくする必要があり、ACアダプタがきわめて大型となる。このような大型のACアダプタを小型のプリンタに同梱するのは現実的でない。
【0006】
これに対し、一旦充電バッテリーに充電しておけば、バッテリーにたまった電力を短時間に放出できるので、実際の製品上は、充電バッテリーのみで印刷を行うことが現実的であり、ACアダプタはバッテリーの充電のためのみに用いられているのが実情である。そのため、従来の製品では、プリントのために、ACアダプタの電力が有効に利用されていないという問題がある。
【0007】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、充電池を備えるプリンタによる印刷において、外部電源からの電力も有効に利用できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係わるプリンタは、外部の電源からケーブルを介して電力を供給される端子と、前記端子に供給された電力を用いて充電電池を充電する充電手段と、前記充電電池の電圧に応じて、前記充電電池に充電されている電力のみを用いて、あるいは前記充電電池に充電されている電力と前記外部の電源から供給される電力の双方を用いて印刷を行う印刷手段とを備え、前記印刷手段は、前記充電電池の電圧が第1の閾値以上の場合に、前記充電電池に充電されている電力のみを用いて印刷を行い、前記外部の電源から前記端子に電力が供給されておらず、且つ前記充電電池の電圧が前記第1の閾値よりも低い場合は、印刷を行わず、前記外部の電源から前記端子に電力が供給されており、且つ前記充電電池の電圧が前記第1の閾値よりも低く、前記第1の閾値よりも低い第2の閾値以上の場合に、前記充電電池に充電されている電力と、前記外部の電源から供給される電力とを用いて印刷を行い、前記外部の電源から前記端子に電力が供給されている場合であっても、前記充電電池の電圧が前記第2の閾値よりも低い場合は、印刷を行わないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、充電池を備えるプリンタによる印刷において、外部電源からの電力も有効に利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態のモバイルサーマルプリンタの外観斜視図。
【
図2】本発明の一実施形態のモバイルサーマルプリンタの外観側面図。
【
図3】モバイルサーマルプリンタの内部構造を示す側断面図。
【
図4】本体部に対して蓋部を開いた状態を示した斜視図。
【
図5】モバイルサーマルプリンタの電気的な構成を示すブロック図。
【
図6】LEDによるモバイルサーマルプリンタの状態を表示する機能を説明する図。
【
図7】モバイルサーマルプリンタの印字動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明のプリンタの一実施形態であるモバイルサーマルプリンタの外観斜視図である。
【0013】
図1において、モバイルサーマルプリンタ2は、アルミニウムなどの金属あるいは合成樹脂等からなる薄型の直方体状の筐体である本体部4と、本体部4に対してその端部付近に配置されたヒンジ部6により矢印Aの方向に開閉可能に支持された、やはり金属あるいは合成樹脂等からなる蓋部8とを有する。本体部4は、内部に例えばA6サイズなどの印刷用の感熱紙(印刷用紙)を複数枚収容可能な用紙収容部4aと、後述する感熱紙の搬送機構やサーマルヘッド(印刷ヘッド)などを内蔵する印刷機構部4bとを備える。用紙収納部4aには、蓋部8を矢印A方向に開いて複数枚の感熱紙(例えば50枚程度)を重ねて挿入することが可能である。用紙収納部4aに重ねて配置された複数枚の感熱紙は、重なりの一番下から1枚ずつ後述する給紙ローラ56により印刷機構部4bに供給される。
【0014】
供給された感熱紙は、印刷機構部4bにおいてサーマルヘッドが圧接されながらプラテンローラにより搬送されることにより印刷され、蓋部8の先端部分と印刷機構部4bとの間の隙間である排紙口4cからモバイルサーマルプリンタ2の外部、具体的には蓋部8の上面上に排出される。
【0015】
蓋部8のヒンジ6に近い位置の中央部には、透明なプラスチック板などが嵌め込まれた小窓(窓部)18が形成されている。ユーザはこの小窓18から用紙収納部4aの内部を覗くことができ(目視可能)、未使用の感熱紙の残枚数を目視で確認することができる。
【0016】
また、この小窓18内(窓部内)には、用紙収納部4a内に収納されている未使用の感熱紙の残量を表示する残量インジケータが内蔵されている。具体的には、用紙収納部4aに十分な枚数の感熱紙がある場合には、小窓18からは内部の黄色の指標部材が見えず、用紙の枚数が少なくなるにつれて指標部材が次第に小窓18内に見えるようになる。そのため、ユーザは小窓18を見ることにより、未使用の感熱紙の残量を直接見て確認できるとともに、残量インジケータの指標部材を見ることでも確認することができる。
【0017】
また、本体部4の小窓18に近い位置には、3個のLED20a,20b,20cが配置されている。これらのLEDは、モバイルサーマルプリンタ2の動作状態を表示する機能を有する。
【0018】
LED20aは、モバイルサーマルプリンタ2の電源の状態を表示する機能を有する。具体的には、LED20aが青色に点灯している場合は、プリンタがスリープ状態であるかプリント中であることを示す。LED20aが青色に点滅している場合は、スリープ状態で且つバッテリー残量が少ない状態を示す。さらに、LED20aが消灯している場合は、スタンバイ状態であることを示す。
【0019】
LED20bは、モバイルサーマルプリンタ2の動作モードの状態を表示する機能を有する。具体的には、LED20bが青色に点灯している場合は、Bluetooth(登録商標)による受信待機状態を示す。LED20bが青色に点滅している場合は、Bluetoothによる通信中の状態を示す。また、LED20bが緑色に点灯している場合は、USBによる受信待機状態を示す。LED20bが緑色に点滅している場合は、USBによる通信中の状態を示す。LED20bが赤色に点滅している場合は、エラー状態を示す。
【0020】
LED20cは、モバイルサーマルプリンタ2の充電状態を表示する機能を有する。具体的には、LED20cが消灯している場合は、充電停止中であることを示す。LED20cが橙色に点滅している場合は、充電のエラー状態を示す。LED20cが緑色に点灯している場合は、充電完了状態を示す。さらに、LED20cが橙色に点灯している場合は充電中を示す。
【0021】
なお、これらのLED20a,20b,20cの導光部材は、小窓18側に露出されており、この露出された部分から漏れた光が小窓18を照明する。そのため、ユーザは、暗い場所でも小窓18内の感熱紙の残量や残量表示のためのインジケータを見ることができる。
【0022】
次に、
図2は、モバイルサーマルプリンタ2の側面図である。
図2において、モバイルサーマルプリンタ2の本体部4の側面には、電源ボタン22、USB端子24、充電端子26、蓋部8の開閉レバー28が配置されている。ユーザは、開閉レバー28を矢印Cの方向に操作することにより、片手で簡単に蓋部8を本体部4から開くことができる。開閉レバー28が矢印Cの方向に操作されると、蓋部8のロックが解除されて蓋部8が不図示の用紙押さえバネにより本体部4から浮き上がる。なお、本体部4の側面にはディンプル30が多数形成されており、ユーザが手で持った時に滑りにくいように配慮されている。
【0023】
次に、
図3は、モバイルサーマルプリンタ2の内部構造を示す側断面図である。
【0024】
図3において、すでに説明したように、本体部4の用紙収納部4aは複数枚の感熱紙Sを重ねて収納できるように構成されている。ユーザは、蓋部8を矢印Aの方向に開くことにより用紙収納部4aに例えばA6などのサイズの感熱紙Sを例えば50枚程度収納することができる。用紙収納部4aの下部には、電源となる充電式のバッテリー52や、電源回路や制御回路などを搭載した回路基板54などが配置されている。用紙収納部4aの図中右側の下部には、感熱紙Sを給送するための給紙ローラ56が配置され、感熱紙Sは、給紙ローラ56の回転と摩擦力により重なりの下から1枚ずつ分離され給送される。
【0025】
給紙ローラ56の用紙搬送方向下流側には、プラテンローラ58が配置され、プラテンローラ58に給送された感熱紙Sはプラテンローラ58により搬送方向が約180度反転される。さらにプラテンローラ58に、サーマルヘッド60が圧接されるように配置され、サーマルヘッド60がプラテンローラ58との間で感熱紙Sを挟んだ状態で加熱することにより印刷が行われる。本実施形態では、用紙収納部4aに載置された感熱紙の下側面に印刷が行われる。印刷された感熱紙Sは、すでに説明したように、蓋部8と印刷機構部4bの間に形成された排紙口4cから排出される。
【0026】
このように構成されるモバイルサーマルプリンタ2においては、用紙収納部4aに重ねて載置された感熱紙Sが、1番下の用紙から1枚ずつ給紙ローラ56の摩擦により矢印Dで示す給送方向に給送される。給送された感熱紙Sは、さらにプラテンローラ58に供給され、矢印Eで示すようにプラテンローラ58により搬送方向を約180度反転される。反転された感熱紙Sには、サーマルヘッド60が圧接され加熱されて印刷が行われる。印刷された感熱紙Sは、プラテンローラ58によりさらに搬送されて排紙口4cからサーマルプリンタの外部に排出される。
【0027】
なお、
図3に示すように、サーマルヘッド60とプラテンローラ58との間から抜けた用紙を本体部4の背面側に付勢する付勢部材61を設けている。付勢部材61はシート材で形成されており、これによって用紙の後端がプラテンローラ58側に付勢され、後続の用紙の先端がサーマルヘッド60とプラテンローラ58との間から抜けたのち、先行する用紙の後端の上側に乗りやすくなり、先行する用紙の後端がカールしていた場合であっても、後続の用紙の先端が先行する用紙の後端に衝突することによって起こるジャムの発生が低減される。
【0028】
次に、
図4は、本体部4に対して蓋部8を開いた状態を示した斜視図である。
【0029】
本体部4の用紙収納部4aは複数枚の感熱紙Sを重ねて収納できるように構成され、用紙の載置部の幅方向両端には、感熱紙Sの種類、及び感熱紙Sの有無を識別するための3つの紙検知センサ42a、42b、42cが配置されている。また、用紙収納部の図中左側の位置には、持ち上げレバー46が配置されている。この持ち上げレバー46は、その操作部46aを下方に押し下げることにより、シーソーの動きで用紙持ち上げ部46bが持ち上がり、感熱紙Sの先端部を持ち上げる。これにより、プリンタから印刷用紙を取り出す必要が生じた場合に、感熱紙Sを取り出しやすくすることができる。
【0030】
紙検知センサ42a、42b、42cは、光を発光する発光部と感熱紙Sで反射された光を受光する受光部とを有する反射型のセンサである。そして、紙検知センサ42a、42b、42cは、受光した反射光の強度が所定の閾値以上か否かにより、「1」あるいは「0」の信号を出力する。
【0031】
また、蓋部8は、
図4に示すように、薄型でも強度が保てるようにハニカム構造8aを有する。蓋部8は、内蓋8bと外蓋8cから構成されており、ハニカム構造8aは内蓋8bにおける外蓋8c側(蓋部8を閉じた際の用紙収納部4aの反対側)に設けられており、
図8では内蓋8bの紙面裏側に設けられている。そして、蓋部8の幅方向両端部には、用紙収納部4aに載置された感熱紙Sを弾性的に押さえるための紙押さえ44a、44bが配置されている。紙押さえ44a、44bは、主な目的として、紙検知センサ42a、42b、42cに対して感熱紙Sが浮いて誤検知を起こすことを抑制するために配置されている。そのため、紙検知センサ42a、42b、42cに近い位置で感熱紙Sを押さえることが好ましい。紙押さえ44a、44bは、感熱紙Sを押圧し過ぎると、給紙ローラ56で搬送される場合の抵抗になってしまうため、搬送性能の低下を抑制すべく、感熱紙Sが2、3枚しか残っていない場合は感熱紙を押さえない程度の隙間を有して配置されている。
【0032】
次に、
図5は、モバイルサーマルプリンタ2の電気的な構成を示すブロック図である。
【0033】
図5において、制御部501は、CPU(central processing unit:中央演算装置)502と、ROM(read only memory)503と、RAM(random access memory)504と、モータードライバー505と、用紙先端検出センサ506と、フラッシュメモリ509と、ステッピングモーター510と、サーマルヘッド60と、電源ボタン22と、LED20a,20b,20cと、電源部514と、Bluetoothモジュール515とを含んでいる。そして、これらはバスラインを介して相互に接続されて、各種データの送受信を相互に行うことができる。ACアダプタ(外部電源)519は、ケーブルを介して制御部501に電力を供給し、更に充電バッテリー(充電電池)52の充電電力を供給する。また、制御部501には、CPU502のファームウェアの開発やデバッグを行うための、CPUデバッガ517とPC(デバッグ)518のインタフェースが設けられている。
【0034】
各部の主な動作について簡単に説明すると、CPU502は、所定の制御プログラムを実行することによって、制御部501全体を統括的に制御するとともに、各部に必要な処理や制御を実行させる。ROM503は、CPU502が読み出して実行する制御プログラムを記憶している。RAM504は、CPU502が実行する処理に必要な各種データや印字に必要な印字データ、印字フォーマットなどを記憶する。
【0035】
感熱紙Sの搬送制御部であるモータードライバー505は、CPU502から供給される印字すべき文字、図形、及びバーコードなどの印字データに応じてステッピングモーター510を制御する。
【0036】
印字動作を制御するサーマルヘッドドライバ60Aは、CPU502から供給される印字すべき文字、図形、及びバーコードなどの印字データに対応する印字信号を生成し、その印字信号をサーマルヘッド60に供給して、感熱紙への印字を行う。
【0037】
制御部501はパーソナルコンピュータ(PC)やハンディターミナルなどの外部機器(ホスト機器516)と接続して通信を行うことができ、印字データを供給するホスト機器516との間で印字データやコマンドの送受信を行うことができる。通信方式としては無線によるものが望ましく、例えば、Bluetoothモジュール515では、2.45GHz帯の電波を利用したBluetooth規格のインタフェースが採用される。ただし、通信方式は、赤外線を利用したIrDA(Infrared Data Association)規格の通信インタフェースや、無線LANに用いられる規格の通信インタフェース等、任意の規格の無線通信インタフェースでよい。また、有線により通信を行うための通信インタフェースであってもよい。
【0038】
電源部514は電源回路を備えており、電源ボタン22に対する押下操作を監視する。モバイルサーマルプリンタ2の電源がオン状態で、電源ボタン22が押下されるとCPU502は電源部514に制御信号を出力し、電源をオフする。また、モバイルサーマルプリンタ2の電源がオフ状態で、電源ボタン22が押下されるとCPU502は電源部514に制御信号を出力し、電源をオンする。
【0039】
電源部514は充電回路514aを備えており、ACアダプタ519が接続された状態で、充電バッテリー52の残量が少ない場合には、ACアダプタ519の電力を、充電回路514aを介して充電バッテリー52に供給し、充電処理を行う。
【0040】
図6は、LEDによるモバイルサーマルプリンタ2の状態を表示する機能を説明する図である。
図6において、LED20cは、モバイルサーマルプリンタ2の充電状態を表示する機能を有する。具体的には、LED20cが消灯している場合は、充電停止中であることを示す。LED20cが橙色に点滅している場合は、充電のエラー状態を示す。LED20cが緑色に点灯している場合は、充電完了状態を示す。さらに、LED20cが橙色に点灯している場合は充電中を示す。
【0041】
次に、本実施形態のモバイルサーマルプリンタにおける印刷動作について説明する。
図7は、モバイルサーマルプリンタの印刷動作を示すフローチャートである。
【0042】
まず、ステップS701において、外部のホスト機器516等から印字要求がモバイルサーマルプリンタ2に入力されると、CPU502は、充電バッテリー52への充電動作が行われている場合には、ステップS702において電源部514の充電動作を停止させる。これにより充電回路514aには、ACアダプタ519からの電圧が加わらなくなる。ここで充電動作を停止させるのは、後のステップS704、S706において、充電回路514aにACアダプタ519の電圧がかかっていると、充電バッテリー52の電圧を検出できなくなるからである。
【0043】
ステップS703においては、CPU502は、モバイルサーマルプリンタ2の充電端子26にACアダプタ519が接続されているか否かを検出する。ステップS703において、ACアダプタ519が接続されていない場合は、ステップS704に進み、接続されている場合は、ステップS706に進む。
【0044】
ステップS704では、CPU502は、充電回路514aに充電バッテリー52の電圧(Vbat)を検出させる。この時、充電バッテリー52の電圧が、印刷を行うために十分な電圧である閾値V1以上(閾値以上)である場合には、ステップS705に進み、通常の印字動作を実行する。その後、ステップS708で、充電動作を再開する。ここで、閾値V1としては、一般的な印刷データを印刷可能な電圧値を予め設定した固定値でも良いし、印字要求がなされた印刷データに対し、印刷に必要な電力量を算出した結果によって動的に設定しても良い。なお、印字要求された印刷データに対して必要な電力量を算出するのは、CPU502などのモバイルサーマルプリンタ2内の構成でも良いし、モバイルサーマルプリンタ2に接続されるホスト機器516やその他の機器で算出した必要電力量を、ホスト機器516からモバイルサーマルプリンタ2に対して印刷データの送信と同時に送信するようにしても良い。必要電力量の送信は印刷データ内に埋め込んでも良い。
【0045】
一方、ステップS704において、充電バッテリー52の電圧が、閾値V1未満(閾値未満)である場合には、印刷が全くできないか、印刷の途中でプリンタが停止してしまうことが考えられる。そのため、そのまま印刷をせずに、ステップS707において、ユーザにLED20aを用いて充電が必要であることを知らせ、ACアダプタ519をモバイルサーマルプリンタ2に接続させるように促す。そして、ステップS708において、充電バッテリー52の充電が開始される。
【0046】
ステップS706では、CPU502は、充電回路514aに充電バッテリー52の電圧を検出させ、充電バッテリー52の電圧が閾値V2以上であるか否かを判断する。ここで、この閾値V2は閾値V1よりも小さい電圧値であり、充電バッテリー52からの電力供給のみで印刷を行うために十分な電圧ではないが、ACアダプタ519からの電力の補助を受ければ少なくとも1枚の感熱紙の印刷が可能であるような電圧値である。そのため、この閾値V2は、ACアダプタ519から供給可能な電力に応じて決定され、ACアダプタ519から供給可能な電力に対して所定の余裕を見込んで設定される。言い換えれば、V1-V2の値は、ACアダプタ519で補える電圧よりも十分に小さい値に設定される。なお、サーマルヘッド60の消費電力は、1ラインに印刷するドット数や、感熱紙1枚全体に印刷するドット数などの印刷データに依存するため、上記の所定の余裕は印刷データに基づいて設定されるが、予め設定された固定値を用いても良い。
【0047】
なお、ここで補足説明をすると、すでに背景技術の欄でも説明したように、携帯型のサーマルプリンタなどでは、感熱紙の1ラインに印刷するドット数が多い場合などは、サーマルヘッドに短時間に大きな電力を供給する必要がある。そのため、携帯型のサーマルプリンタを実際に製品化する場合には、充電バッテリーと外部電源の両方を用いてプリントを可能とすると、外部電源であるACアダプタの容量を大きくする必要があり、ACアダプタがきわめて大型となる。このような大型のACアダプタを小型のプリンタに同梱するのは現実的でない。そのため、通常は充電バッテリーと外部電源の両方を使用可能とはせず、一旦充電バッテリーに充電して、バッテリーにたまった電力を短時間に放出できるようにすることで印刷を行う。
【0048】
これに対し、本実施形態では、ACアダプタ519からの電力を充電バッテリー52の電圧不足を補助するために使用する。ACアダプタ519からの電力を用いると、CPU502は充電バッテリー52の電圧を印刷中に逐次モニターすることはできなくなるが、本実施形態では、ACアダプタ519から供給できる電圧に対して閾値V2の値を上記の所定の余裕を見込んで設定する。これにより、充電バッテリー52の電圧を逐次モニターできなくとも、電圧不足とならないように対処している。このように、本実施形態においては、充電バッテリー52の電圧が安定的に印刷できる電圧よりもわずかに低い場合でも、ACアダプタ519の電力を補助として用いることにより(充電バッテリー52の電力とACアダプタ519の電力の双方を用いることにより)、印刷を行うことが可能となる。
【0049】
図7の説明に戻って、ステップS706おいて、充電バッテリー52の電圧が閾値V2以上であれば、ステップS705に進み、上記のようにACアダプタ519の電力の補助を受けて印刷を実行する。
【0050】
一方、ステップS706において、充電バッテリー52の電圧が閾値V2未満であれば、ACアダプタ519の電力の補助を受けても、印刷が全くできないか、印刷の途中でプリンタが停止してしまうことが考えられる。そのため、そのまま印刷をせずに、ステップS707において、ユーザにLED20aを用いて充電が必要であることを知らせる。そして、ステップS708において、充電バッテリー52の充電が開始される。
【0051】
なお、
図7のフローチャートにおいて、ACアダプタ519が充電端子26にはじめから接続されている場合、ステップS702において充電を停止すると、LED20cが充電中を示す橙色の点灯から一旦消灯し、ステップS708で充電が再開されると再び橙色の点灯となる。そのため、LED20cが点滅して紛らわしい表示となる。これを解決するために、ステップS702の前にLED20cの点灯状態を変更不能にし、ステップS708の後で再び変更可能になるようにして、LED20cが点灯したままの状態を保つようにしてもよい。特に、
図7のフローチャートにおいてVbatが閾値未満の場合(ステップS704、ステップS706のいずれかでNOの場合)に、特に有効である。さらに、ステップS707を省略し、ステップS702で充電停止した後にステップS704やステップS706でNOと判定された場合にすぐにステップS708に遷移して充電を再開する場合に有効となる。
【0052】
なお、上記の実施形態では、プリンタを携帯式のものとして説明したが、本発明は、携帯式のプリンタに限らず、充電バッテリーを駆動電源とし、ACアダプタから充電バッテリーを充電する電力を供給するプリンタの全てに適用可能である。また、任意の種類の用紙に印字を行う任意のプリンタにも適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
2:モバイルサーマルプリンタ
4:本体部
4a:用紙収納部
8:蓋部
52:充電バッテリー
56:給紙ローラ
58:プラテンローラ
60:サーマルヘッド
501:制御部
502:CPU
519:ACアダプタ