(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】フィラーチューブの取付方法およびフィラーチューブの取付構造
(51)【国際特許分類】
B60K 15/04 20060101AFI20220831BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20220831BHJP
B29C 65/02 20060101ALI20220831BHJP
F16L 47/02 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B60K15/04 C
F02M37/00 301M
B29C65/02
F16L47/02
(21)【出願番号】P 2018042465
(22)【出願日】2018-03-09
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】姜 林
(72)【発明者】
【氏名】塚田 治樹
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-244893(JP,A)
【文献】特開2014-231286(JP,A)
【文献】特開2008-162572(JP,A)
【文献】特開2003-011229(JP,A)
【文献】実開平02-010121(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/04
F02M 37/00
B29C 65/00 - 65/82
F16L 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を備える燃料タンクを準備する工程と、
筒状の部材本体、および、前記部材本体の軸方向の端部から径方向外方に張り出している環状の部材フランジを備える介装部材であって、前記部材フランジ
の溶着面を前記介装部材の軸方向
端縁面とする前記介装部材を準備する工程と、
筒状のチューブ本体、および、前記チューブ本体の軸方向の端部から径方向外方に張り出している環状のチューブフランジを備えるフィラーチューブ
であって、前記チューブフランジの溶着面を前記フィラーチューブの軸方向端縁面とする前記フィラーチューブを準備する工程と、
前記燃料タンクの前記開口から前記燃料タンクの内部側に前記部材本体を配置させると共に、前記燃料タンクの前記開口の表側周面に前記部材フランジを係止させるように、前記介装部材を配置する工程と、
前記燃料タンクの前記表側周面と前記チューブフランジとの対向空間に熱板を配置して前記表側周面、前記部材フランジ
の溶着面および前記チューブフランジ
の溶着面を加温し、前記表側周面と前記チューブフランジ
の溶着面とを溶着すると共に前記部材フランジ
の溶着面と前記チューブフランジ
の溶着面とを溶着する工程と、
を備え
、
前記熱板は、第一面および第二面を有すると共に前記第一面から前記第二面に至る貫通孔を有する中空板状、または、前記第一面および前記第二面を有すると共に前記貫通孔を有しない中実板状に形成されており、
前記熱板が前記中空板状に形成されている場合には、前記熱板の前記第一面により前記表側周面および前記部材フランジの溶着面を加温している状態、および、前記熱板の前記第二面により前記チューブフランジの溶着面を加温している状態の何れの状態においても、前記燃料タンク、前記フィラーチューブおよび前記介装部材は、前記熱板の中空領域に存在しないように構成されている、フィラーチューブの取付方法。
【請求項2】
前記熱板の前記第一面および前記第二面は、平面状に形成されている、請求項1に記載のフィラーチューブの取付方法。
【請求項3】
前記燃料タンクの前記表側周面は、環状のチューブ被溶着面、および、前記チューブ被溶着面よりも前記開口寄りに形成され、前記チューブ被溶着面より凹状に形成される環状の凹状係止面を備え、
前記配置する工程は、前記燃料タンクの前記表側周面の前記凹状係止面に前記部材フランジを係止させるように、前記介装部材を配置し、
前記溶着する工程は、前記表側周面の前記チューブ被溶着面、前記部材フランジおよび前記チューブフランジを加温し、前記表側周面の前記チューブ被溶着面と前記チューブフランジとを溶着すると共に前記部材フランジと前記チューブフランジとを溶着する、請求項1
または2に記載のフィラーチューブの取付方法。
【請求項4】
前記溶着する工程は、
前記燃料タンクの前記表側周面と前記チューブフランジとの対向空間に1つの前記熱板を配置し、
前記熱板の
前記第一面により前記表側周面および前記部材フランジを加温し、同時に前記熱板の
前記第二面により前記チューブフランジを加温し、
加温した後に、前記熱板を前記表側周面と前記チューブフランジとの対向空間から外部へ移動させ、
前記熱板を移動させた後に、前記表側周面と前記チューブフランジとを溶着すると共に前記部材フランジと前記チューブフランジとを溶着する、請求項1
-3の何れか一項に記載のフィラーチューブの取付方法。
【請求項5】
前記溶着する工程は、
加温した後に、前記熱板を前記燃料タンクの前記表側周面、前記部材フランジおよび前記チューブフランジから離間させた状態で、前記熱板を前記開口の軸直角方向に相対的に移動させることによって、前記熱板を前記表側周面と前記チューブフランジとの対向空間から外部へ移動させる、請求項
4に記載のフィラーチューブの取付方法。
【請求項6】
前記フィラーチューブを準備する工程は、
押出機により押出成形された筒状の一次素材に対して、前記押出機に連続して配列されたコルゲート成形機を用いて前記チューブ本体および前記チューブフランジを成形することにより、前記チューブフランジの溶着面が前記一次素材の外周面の材料により形成された前記フィラーチューブを準備する、請求項1-
5の何れか一項に記載のフィラーチューブの取付方法。
【請求項7】
開口を備える燃料タンクと、
前記燃料タンクの前記開口から前記燃料タンクの内部側に配置される筒状の部材本体、および、前記部材本体の軸方向の端部から径方向外方に張り出しており前記燃料タンクの前記開口の表側周面に係止された環状の部材フランジを備える介装部材であって、前記部材フランジ
の溶着面を前記介装部材の軸方向
端縁面とする前記介装部材と、
筒状のチューブ本体、および、前記チューブ本体の軸方向の端部から径方向外方に張り出しており前記表側周面および前記部材フランジに溶着された環状のチューブフランジを備える樹脂製のフィラーチューブ
であって、前記チューブフランジの溶着面を前記フィラーチューブの軸方向端縁面とする前記フィラーチューブと、
を備え
、
前記フィラーチューブは、複数層構造を有しており、
前記チューブフランジの溶着面は、前記チューブ本体の外周面と同一層を構成する、フィラーチューブの取付構造。
【請求項8】
前記燃料タンクの前記表側周面は、
前記チューブフランジに溶着される環状のチューブ被溶着面と、
前記チューブ被溶着面より前記開口寄りに形成され、前記チューブ被溶着面より凹状に形成され、前記部材フランジに係止される環状の凹状係止面と、
を備える、請求項
7に記載のフィラーチューブの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラーチューブの取付方法およびフィラーチューブの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2に、燃料タンクの開口の表側周面に、フィラーチューブの軸方向の端部におけるフランジを溶着することが開示されている。さらに、特許文献1には、燃料タンクの開口に、介装部材(インレットチェックバルブ等)を配置することが開示されている。介装部材は、燃料タンクの開口を跨いで、燃料タンクの内部側とフィラーチューブの内部側とに配置されている。
【0003】
特許文献1の
図2に記載の構造においては、フィラーチューブを燃料タンクに取り付ける際には、まず、介装部材(インレットチェックバルブ等を含む。以下同様。)をフィラーチューブの内周側に圧入によって嵌め込まれている。介装部材は、搬送時においてもフィラーチューブから容易に外れない程度の嵌合力で嵌め込まれている。その後、フィラーチューブのフランジと燃料タンクの開口の表側周面とが加温されて溶着されている。ここで、両者を加温するために、燃料タンクの開口の表側周面とフィラーチューブのフランジとが対向した状態で、その対向空間に熱板を配置する。この熱板に両者を接触させることによって、両者が加温される。そして、熱板を対向空間から取り除いて、燃料タンクとフィラーチューブとを溶着する。このようにして、介装部材を燃料タンクの開口に配置した状態で、燃料タンクとフィラーチューブとが溶着によって一体的に取り付けられている。
【0004】
また、特許文献1の
図3における構造においては、フィラーチューブを燃料タンクに取り付ける際には、まず、介装部材を燃料タンクの開口に挿入した状態で、介装部材の爪を燃料タンクの開口に係止する。その後、フィラーチューブのフランジと燃料タンクの開口の表側周面とが加温されて溶着されている。このようにして、介装部材を燃料タンクの開口に配置した状態で、燃料タンクとフィラーチューブとが溶着によって一体的に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5797690号公報
【文献】特開2003-194280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1における介装部材は、燃料タンクの開口を跨いで、燃料タンクの内部側にも延びており、且つ、フィラーチューブの内部側にも延びている。そのため、燃料タンクの開口の表側周面とフィラーチューブのフランジとを加温するための熱板は、円筒状に形成する。この円筒状の熱板を、介装部材の一部の外周側に配置した状態で、燃料タンクの開口の表側周面とフィラーチューブのフランジとを加温する。加温後に、燃料タンクとフィラーチューブとを開口の軸方向に移動して、熱板を、燃料タンクとフィラーチューブのフランジとの対向空間から取り除き、両者を溶着する。
【0007】
ここで、燃料タンクの開口の表側周面とフィラーチューブのフランジとを確実に溶着するために、両者の溶着部位を加温してから溶着するまでの時間を短くすることが求められる。しかし、介装部材が、燃料タンクの開口を跨いで両側に延びているため、熱板を対向空間から退避させるために、燃料タンクとフィラーチューブとを移動させる距離が長くなってしまう。そのため、溶着部位を加温してから溶着するまでの時間が長くなることを、他の手段により解決することをする必要がある。このことは、よりコストを要する原因となる。つまり、溶着部位を加温してから溶着するまでの時間を短くすることができれば、低コスト化を図ることが可能となる。
【0008】
本発明は、溶着部位を加温してから溶着するまでの時間を短くすることができるフィラーチューブの取付方法およびフィラーチューブの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1.フィラーチューブの取付方法)
本発明の一態様は、開口を備える燃料タンクを準備する工程と、
筒状の部材本体、および、前記部材本体の軸方向の端部から径方向外方に張り出している環状の部材フランジを備える介装部材であって、前記部材フランジの溶着面を前記介装部材の軸方向端縁面とする前記介装部材を準備する工程と、
筒状のチューブ本体、および、前記チューブ本体の軸方向の端部から径方向外方に張り出している環状のチューブフランジを備えるフィラーチューブであって、前記チューブフランジの溶着面を前記フィラーチューブの軸方向端縁面とする前記フィラーチューブを準備する工程と、
前記燃料タンクの前記開口から前記燃料タンクの内部側に前記部材本体を配置させると共に、前記燃料タンクの前記開口の表側周面に前記部材フランジを係止させるように、前記介装部材を配置する工程と、
前記燃料タンクの前記表側周面と前記チューブフランジとの対向空間に熱板を配置して前記表側周面、前記部材フランジの溶着面および前記チューブフランジの溶着面を加温し、前記表側周面と前記チューブフランジの溶着面とを溶着すると共に前記部材フランジの溶着面と前記チューブフランジの溶着面とを溶着する工程と、
を備え、
前記熱板は、第一面および第二面を有すると共に前記第一面から前記第二面に至る貫通孔を有する中空板状、または、前記第一面および前記第二面を有すると共に前記貫通孔を有しない中実板状に形成されており、
前記熱板が前記中空板状に形成されている場合には、前記熱板の前記第一面により前記表側周面および前記部材フランジの溶着面を加温している状態、および、前記熱板の前記第二面により前記チューブフランジの溶着面を加温している状態の何れの状態においても、前記フィラーチューブおよび前記介装部材は、前記熱板の中空領域に存在しないように構成されている、フィラーチューブの取付方法にある。
【0010】
介装部材は、筒状の部材本体と、部材本体の軸方向の端部に部材フランジとを備える。部材フランジは、介装部材の軸方向の端部に位置する。そのため、介装部材は、部材フランジより部材本体とは反対側には何も部材を有しない。
【0011】
そして、介装部材が燃料タンクの開口に配置される。このとき、介装部材の部材本体は、燃料タンクの内部に配置され、介装部材の部材フランジは、燃料タンクの開口の表側周面に係止されている。つまり、燃料タンクの開口の表側には、介装部材の端部に位置する部材フランジが位置している。従って、介装部材が燃料タンクの開口に配置された状態において、燃料タンクの開口より表側には、部材フランジ以外に存在しない。
【0012】
そして、フィラーチューブのチューブフランジを燃料タンクの開口の表側周面に対向させた状態で、熱板を当該対向空間に配置し、両者を加温する。このとき、熱板が存在する対向空間には、熱板以外の部材は何ら存在しない。そのため、熱板を当該対向空間から退避させるために、燃料タンクとフィラーチューブとの移動量は少なくて済む。従って、溶着部位を加温してから溶着までの時間を短くすることができる。その結果、溶着状態を非常に良好とすることができる。
【0013】
さらに、熱板が存在する当該対向空間には、熱板以外の部材は何ら存在しない。このことは、熱板と、熱板に接触させない他の部材との隙間管理をする必要がない。従来、熱板の内周面と介装部材の外周面との隙間を管理しなければならなかったのに対して、本発明によれば、その必要がない。従って、隙間管理をする必要がない分、製造コストを低減できる。
【0014】
また、フィラーチューブの内周側に介装部材を圧入によって嵌め込むことも必要ない。そのため、フィラーチューブの内周面を高精度に成形する必要がない。その結果、フィラーチューブの製造コストを低減できる。
【0015】
(2.フィラーチューブの取付構造)
本発明の他の態様は、開口を備える燃料タンクと、
前記燃料タンクの前記開口から前記燃料タンクの内部側に配置される筒状の部材本体、および、前記部材本体の軸方向の端部から径方向外方に張り出しており前記燃料タンクの前記開口の表側周面に係止された環状の部材フランジを備える介装部材であって、前記部材フランジの溶着面を前記介装部材の軸方向端縁面とする前記介装部材と、
筒状のチューブ本体、および、前記チューブ本体の軸方向の端部から径方向外方に張り出しており前記表側周面および前記部材フランジに溶着された環状のチューブフランジを備える樹脂製のフィラーチューブであって、前記チューブフランジの溶着面を前記フィラーチューブの軸方向端縁面とする前記フィラーチューブと、
を備え、
前記フィラーチューブは、複数層構造を有しており、
前記チューブフランジの溶着面は、前記チューブ本体の外周面と同一層を構成する、フィラーチューブの取付構造にある。
当該取付構造によれば、上述したフィラーチューブの取付方法と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】
図1のフィラーチューブの軸方向断面図であり、直線状の状態のフィラーチューブの図である。
【
図4】フィラーチューブの取付方法を示すフローチャートである。
【
図5】フィラーチューブの製造装置を示す平面図である。
【
図7】
図4のS4における各部材を初期位置の配置状態を示す図である。
【
図8】
図4のS5における介装部材を燃料タンクの開口に挿入した状態を示す図である。
【
図9】
図4のS6における熱板を挿入した状態を示す図である。
【
図10】
図4のS7における加温時の状態を示す図である。
【
図11】
図4のS8における熱板を退避させるための準備状態を示す図である。
【
図12】
図4のS9における熱板を退避させた状態を示す図である。
【
図13】
図4のS10における溶着時の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(1.燃料ライン1の構成)
燃料ライン1の構成について
図1を参照して説明する。燃料ライン1とは、自動車において、給油口20から燃料タンク10を介して内燃機関(図示せず)までのラインである。ただし、本実施形態においては、給油口20から燃料タンク10までを説明する。
【0018】
図1において、燃料ライン1は、少なくとも、燃料タンク10、給油口20、フィラーチューブ30、介装部材40、および、ブリーザライン50を備える。燃料タンク10は、熱可塑性樹脂により成形され、ガソリンなどの液体燃料を貯留する。燃料タンク10に貯留された液体燃料は、図示しない内燃機関へ供給され、内燃機関を駆動するために用いられる。燃料タンク10には、燃料供給用の開口11が形成される。開口11は、燃料タンク10の上面または側面に形成される。給油口20は、給油ノズル(図示せず)を挿入可能な自動車の外面付近に設けられる。
【0019】
フィラーチューブ30は、熱可塑性樹脂により成形され、給油口20と燃料タンク10との間を接続する。フィラーチューブ30の一端は、燃料タンク10の開口11の表側周面に溶着される。フィラーチューブ30の他端は、給油口20の挿入部21に圧入により嵌め込まれる。給油口20に給油ノズルが挿入されて、給油ノズルから液体燃料が供給されることにより、液体燃料がフィラーチューブ30を通過して燃料タンク10に貯留される。ここで、燃料タンク10に液体燃料が満タンになると、フィラーチューブ30に液体燃料が貯留され、給油ノズルの先端に液体燃料が触れることにより、給油ノズルによる液体燃料の供給が自動的に停止される。フィラーチューブ30は、全長に亘って一体に成形されており、直線状の非蛇腹筒部、容易に屈曲可能な蛇腹部、屈曲形成された非蛇腹部等を備える。
【0020】
介装部材40は、燃料タンク10の開口11に配置されている。液体燃料がフィラーチューブ30から燃料タンクに供給される際に、液体燃料が介装部材40を通過する。介装部材40は、例えば、インレットチェックバルブ等である。この場合、フィラーチューブ30から燃料タンク10に液体燃料が供給された場合に、燃料タンク10内の液体燃料がフィラーチューブ30側に逆流することが防止される。
【0021】
ブリーザライン50は、燃料タンク10と給油口20とを接続しており、フィラーチューブ30と並行に配置される。ブリーザライン50は、液体燃料がフィラーチューブ30を介して燃料タンク10に供給される際に、燃料タンク10内の燃料蒸気を燃料タンク10の外に排出するためのラインである。
【0022】
(2.フィラーチューブ30の構成の概要)
フィラーチューブ30の構成の概要について、
図2を参照して説明する。フィラーチューブ30は、異種の熱可塑性樹脂による複数層構造である。フィラーチューブ30は、
図2に示すように、筒状のチューブ本体31、チューブ本体31の軸方向の第一端部に形成される環状のチューブフランジ32、および、チューブ本体31の軸方向の第二端部に形成される給油口端部33を備える。
【0023】
チューブ本体31は、燃料タンク10と給油口20の相対位置、距離、周辺装置のレイアウトなどに応じた配策経路を形成可能となるように、適宜設計されている。本実施形態においては、チューブ本体31は、非蛇腹状の第一筒部31a、蛇腹部31b、および、非蛇腹状の第二筒部31cを備える。第一筒部31aは、ほぼ円筒状に形成されている。蛇腹部31bは、第一筒部31aに接続されており、屈曲可能な蛇腹形状に形成されている。第二筒部31cは、蛇腹部31bに接続され、かつ、給油口端部33に接続されている。第二筒部31cは、中間位置において屈曲形成されている。
【0024】
ただし、チューブ本体31は、上記の他に、例えば、複数の蛇腹部分を備えるようにしてもよいし、全てを蛇腹部分としてもよいし、蛇腹部分を1か所も備えないようにしてもよい。また、第二筒部31cは、非蛇腹状であって屈曲形成されているが、直線状に形成してもよい。
【0025】
チューブフランジ32は、チューブ本体31の軸方向の第一端部から径方向外方に張り出している。チューブフランジ32は、燃料タンク10の開口11の表側周面に全周に亘って溶着される。チューブフランジ32は、燃料タンク10に加えて、介装部材40の部材フランジ42(後述する)にも溶着される。
【0026】
給油口端部33は、円筒状に形成されており、給油口20における筒状の挿入部21の外面に対して圧入により嵌め込まれている。つまり、給油口端部33は、給油口20の挿入部21が圧入される前に比べて、圧入後の状態が拡径している。
【0027】
(3.フィラーチューブ30の層構成)
フィラーチューブ30の層構成について、
図3を参照して説明する。
図3には、チューブ本体31の第一端部側の一部分とチューブフランジ32を示している。
【0028】
図3に示すように、フィラーチューブ30は、異種の熱可塑性樹脂による複数層構造である。フィラーチューブ30は、内層側から順に、最内層51、内側接着層52、中間層53、外側接着層54、および、最外層55を備える。フィラーチューブ30は、全長に亘って、当該複数層構造を有している。
【0029】
最内層51は、液体燃料に触れる面であるため、耐ガソリン性を有する材料が用いられる。さらに、給油口端部33が給油口20の挿入部21に圧入された状態において、最内層51は、挿入部21に対して引っ掛かり力(抜け防止力)を有する必要がある。そのため、最内層51は、シール性を有する材料が用いられる。そこで、最内層51は、高密度ポリエチレン(HDPE)を主体として形成される。ただし、最内層51は、上記性能を有する材料であれば、他の材料を用いることもできる。
【0030】
中間層53は、最内層51の外周側に配置され、耐燃料透過特性を有する。中間層53は、耐燃料透過特性を有する材料として、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)およびポリアミド(PA)系の何れかを主体として形成される。ただし、中間層53は、上記性能を有する材料であれば、他の材料を用いることもできる。
【0031】
最外層55は、中間層53の外周側に配置され、中間層53を保護する。最外層55は、フィラーチューブ30の最外面を形成する。そのため、最外層55には、耐衝撃性、耐候性、耐薬品性を有する材料が用いられる。そこで、最外層55は、高密度ポリエチレン(HDPE)およびポリアミド(PA)系の何れかを主体として形成される。さらに、本実施形態においては、最外層55が、燃料タンク10に溶着される層となる。そのため、最外層55には、燃料タンク10の外面の材料と溶着特性の良好な材料が適用される。特に、最外層55は、燃料タンク10の外面の材料と同種の材料が好適である。ただし、最外層55は、上記性能を有する材料であれば、他の材料を用いることもできる。
【0032】
内側接着層52は、最内層51の外周面と中間層53の内周面とを接着する層である。外側接着層54は、中間層53の外周面と最外層55の内周面とを接着する層である。内側接着層52および外側接着層54は、変性ポリエチレン(変性PE)を主体として形成される。ただし、最内層51および中間層53の一方が、他方に対する接着性能を有する場合には、内側接着層52は不要となる。また、中間層53および最外層55の一方が、他方に対する接着性能を有する場合には、外側接着層54は不要となる。
【0033】
(4.チューブフランジ32の詳細構成)
次に、チューブフランジ32の詳細について
図3を参照して説明する。チューブフランジ32は、軸方向の端面である溶着面32a、径方向外方に最も張り出した最外径面32b、当該最外径面32bとチューブ本体31の外周面とを接続する接続外面32c、および、内周面32dを備える。溶着面32aは、軸直角方向に平行な面に形成されている。ただし、溶着面32aのうち内周側は、切断された面となるため、軸直角方向に平行な面ではなく、軸方向内方(
図3の右側)に凹状となるように形成されるようにしてもよい。接続外面32cは、テーパ状に形成しているが、これに限られるものではなく、軸直角方向に平行な面とすることもできる。
【0034】
ここで、チューブフランジ32は、上述したように、フィラーチューブ30の他の部位と同様に、複数層構造を有している。つまり、チューブフランジ32は、最内層51、内側接着層52、中間層53、外側接着層54および最外層55を備える。ただし、チューブフランジ32の径方向の厚みは、チューブ本体31の径方向の厚みに比べると厚い。そのため、チューブフランジ32の各層の厚みが、他の部位の各層の厚みに比べて厚くなっている。
【0035】
従って、チューブフランジ32の最外径面32bおよび接続外面32cは、最外層55の材料により形成されている。内周面32dは、最内層51の材料により形成されている。内周面32dには、径方向外方に環状の溝が形成されている。この溝は、コルゲート成形の際に成形される溝である。
【0036】
溶着面32aに、フィラーチューブ30を構成する複数層の露出面が存在する。ここで、溶着面32aにおいて、最内層51、内側接着層52、中間層53および外側接着層54の厚みは、チューブ本体31においてチューブフランジ32に接続される部位(
図3に示すチューブ本体31の部位)の厚みと同等である。従って、溶着面32aにおいて、チューブフランジ32が径方向外方に張り出す大部分が、最外層55の材料により形成される。溶着面32aにおいて、最外層55の材料により形成された部分が、燃料タンク10および介装部材40に溶着される部位となる。ただし、他の層51-54が、介装部材40に溶着されることを妨げない。
【0037】
(5.フィラーチューブ30の取付方法)
フィラーチューブ30の取付方法について、
図4-
図13を参照して説明する。ここで、フィラーチューブ30の取付方法とは、フィラーチューブ30の製造、並びに、フィラーチューブ30の燃料タンク10および介装部材40への溶着を含む意味である。換言すると、燃料タンク10、フィラーチューブ30および介装部材40が結合されたフィラーチューブ30の取付構造の製造方法である。
【0038】
(5-1.ステップS1)
まず、フィラーチューブ30を準備する(
図4のS1:「フィラーチューブ準備工程」)。フィラーチューブ30は、
図5に示す製造装置100により製造される。製造装置100は、押出機110と、押出機110に連続して配列されたコルゲート成形機120と、コルゲート成形機120に連続して配列された切断機130とを備える。
【0039】
つまり、押出機110(
図5に示す)により一次素材30aが成形され(S11)、コルゲート成形機120(
図5,6に示す)により二次素材30bが成形し(S12)、切断機130(
図5に示す)によりフィラーチューブ30が成形される(S13)。
【0040】
ここで、製造装置100について、
図5および
図6を参照して説明する。押出機110は、筒状の一次素材30aを一定速度で押し出す。一次素材30aは、
図3に示すような複数層構造を有しており、軸方向に亘って同一の内径および同一の外径を有する円筒状に形成されている。つまり、一次素材30aは、全体として一定の径方向厚みに形成されており、各層も一定の径方向厚みに形成されている。
【0041】
コルゲート成形機120は、押出機110のノズル111から押し出された一次素材30aを複数の分割金型123,124の内周面に吸着させることによって、複数の分割金型123,124の内周面に倣った形状に賦形する。コルゲート成形機120は、押出機110により押出成形された一次素材30aの形状を変える部位に適用できる。本実施形態においては、コルゲート成形機120は、蛇腹部31bの成形、および、チューブフランジ32の成形を行う。
【0042】
コルゲート成形機120は、
図5および
図6に示すように、ガイド台121、吸引装置122、複数の分割金型123,124、および、駆動歯車125を備える。ガイド台121の上面には、長円形状の第一ガイド溝121aと、第一ガイド溝121aの隣に同一形状の第二ガイド溝121bとが形成される。さらに、ガイド台121には、第一ガイド溝121aおよび第二ガイド溝121bに連通する連通孔121c(
図6に示す)が形成されている。吸引装置122(
図6に示す)は、ガイド台121の連通孔121cに接続され、連通孔121cに連通される空間の空気を吸引する。
【0043】
複数の第一分割金型123は、フィラーチューブ30を軸方向に2つに切断した一方部分を形成するための金型である。複数の第一分割金型123は、ガイド台121の第一ガイド溝121a上に沿って順次移動する。つまり、複数の第一分割金型123のそれぞれが順次移動することで、フィラーチューブ30の半分が形成される。ここで、複数の第一分割金型123の各々における上面には、ラック歯が形成される。
【0044】
また、複数の第二分割金型124は、フィラーチューブ30を軸方向に切断した他方部分を形成するための金型である。複数の第二分割金型124は、ガイド台121の第二ガイド溝121b上に沿って順次移動する。つまり、複数の第二分割金型124のそれぞれが順次移動することで、フィラーチューブ30の残りの半分が形成される。ここで、複数の第二分割金型124の各々における上面には、ラック歯が形成される。
【0045】
第一分割金型123の一部および第二分割金型124の一部には、蛇腹部31bに対応する賦形面を有する。また、第一分割金型123の他の一部および第二分割金型124の他の一部には、チューブフランジ32に対応する賦形面を有する。
【0046】
駆動歯車125は、複数の第一分割金型123と複数の第二分割金型124を移動させるピニオン歯車である。駆動歯車125は、複数の第一分割金型123と複数の第二分割金型124とが合わさる金型対のうち、押出機110側に配置される。そして、駆動歯車125が、当該部位に位置する第一分割金型123および第二分割金型124に噛合し、駆動歯車125が回転駆動することによって、複数の第一分割金型123および複数の第二分割金型124が順次移動される。
【0047】
さらに、駆動歯車125の回転速度を変更することにより、複数の分割金型123,124の移動速度を変更することができる。複数の分割金型123,124の移動速度を速くすると、押出機110のノズル111付近に位置する分割金型123,124に対応する部分のフィラーチューブ30の径方向厚みが薄くなる。一方、複数の分割金型123,124の移動速度を遅くすると、押出機110のノズル111付近に位置する分割金型123,124に対応する部分のフィラーチューブ30の径方向厚みが厚くなる。
【0048】
例えば、チューブフランジ32に対応する分割金型123,124の移動速度は、チューブ本体31の非蛇腹状の第一筒部31aに対応する分割金型123,124の移動速度より遅い。従って、チューブフランジ32の径方向厚みを、第一筒部31aの径方向厚みよりも厚くすることができる。
【0049】
ここで、コルゲート成形機120から出力される二次素材30bは、軸方向に連続した形状である。つまり、連続した二次素材30bは、複数のフィラーチューブ30が連結された形状を有する。そこで、切断機130が、コルゲート成形機120により賦形された連続した二次素材30bを、所定長さに切断することにより個々のフィラーチューブ30を成形する。
【0050】
上記のようにフィラーチューブ30が、押出機110およびコルゲート成形機120により成形されることで、チューブフランジ32の溶着面32aが一次素材30aの外周面の材料(チューブ本体31の最外層55の材料)により形成されたフィラーチューブ30が成形される。このように、チューブフランジ32を押出機110およびコルゲート成形機120により成形することにより、別途プレス加工機を用いる必要がない。そのため、製造コストを低減できる。さらに、押出機110およびコルゲート成形機120を用いることで、
図3に示すように、チューブフランジ32の溶着面32aを、チューブ本体31の最外層55の材料により成形することが可能となる。その結果、溶着面32a、燃料タンク10および介装部材40の溶着性能を向上することができる。
【0051】
(5-2.ステップS2,S3)
燃料タンク10を準備する(
図4のS2:「燃料タンク準備工程」)。燃料タンク10は、
図1に示すように、開口11を備える。ここで、開口11付近の詳細構成について、
図7を参照して説明する。
【0052】
開口11の内周面は、軸方向に亘って同径に形成されている。燃料タンク10の開口11の表側周面12は、開口11の径方向に段状に形成されている。燃料タンク10の開口11の表側周面12は、環状のチューブ被溶着面12a、および、環状の凹状係止面12bを備える。チューブ被溶着面12aは、開口11の軸方向に直交する平面状に形成されている。チューブ被溶着面12aが、開口11付近において、燃料タンク10における最も外方に位置する。チューブ被溶着面12aは、フィラーチューブ30のチューブフランジ32の溶着面32aに溶着される部位である。凹状係止面12bは、チューブ被溶着面12aよりも開口11寄りに形成されている。さらに、凹状係止面12bは、チューブ被溶着面12aより凹状に形成されている。凹状係止面12bは、介装部材40の部材フランジ42に係止される部位である。つまり、凹状係止面12bは、溶着面32aに溶着される面ではない。
【0053】
また、介装部材40を準備する(
図4のS3:「介装部材準備工程」)。介装部材40は、
図1に示すように、燃料タンク10の開口11に配置される。介装部材40の外形の詳細形状について、
図7を参照して説明する。なお、
図7においては、介装部材40の内部構造は、図示していないが、介装部材40の内部には、機能部材が収容されている。介装部材40がインレットチェックバルブである場合には、バルブ機能を有する部材が介装部材40の内部に収容される機能部材となる。
【0054】
介装部材40は、内部に機能部材を収容する筒状の部材本体41、および、部材本体41の軸方向の端部から径方向外方に張り出している環状の部材フランジ42を備える。部材本体41の外径は、燃料タンク10の開口11の内径より僅かに小さい。
【0055】
ここで、介装部材40の部材フランジ42は、介装部材40の軸方向の端部に位置する。つまり、介装部材40は、部材フランジ42より部材本体41とは反対側に何も部材を有しない。詳細には、介装部材40は、部材フランジ42の軸方向の端面より、部材本体41とは反対側に何も部材を有しない。
【0056】
また、部材フランジ42の外径は、燃料タンク10の凹状係止面12bの内径より僅かに小さい。また、部材フランジ42の軸方向長さは、燃料タンク10の凹状係止面12bの凹深さと同等である。部材フランジ42の軸方向長さが凹状係止面12bの凹深さと同一でもよいし、凹深さより僅かに短くてもよいし、凹深さより僅かに長くてもよい。さらに、部材フランジ42は、端面に軸方向に突出する環状小突起42aを備える。環状小突起42aは、部材フランジ42の端面のうち径方向外寄りに形成されている。なお、部材フランジ42は、環状小突起42aを備えない構成とすることもできる。
【0057】
(5-3.ステップS4,S5)
燃料タンク10、フィラーチューブ30および介装部材40のそれぞれを準備できると、
図7に示すように、これらを初期位置に配置する(
図4のS4:「初期位置配置工程」)。初期位置とは、燃料タンク10の開口11を上方に向けるように燃料タンク10を配置し、開口11の上方に開口11に同軸上に介装部材40を配置する。部材本体41が下方、部材フランジ42が上方に位置するように、介装部材40が配置される。さらに、介装部材40の上方に、フィラーチューブ30を配置する。このとき、フィラーチューブ30のチューブフランジ32が、開口11および介装部材40に同軸上に位置する。
【0058】
続いて、
図8に示すように、介装部材40を燃料タンク10の開口11に挿入する(
図4のS5:「介装部材挿入工程」)。詳細には、燃料タンク10の開口11から介装部材40の部材本体41を挿入させる。そうすると、介装部材40の部材本体41が、燃料タンク10の内部に配置される。さらに、燃料タンク10の開口11の表側周面12に部材フランジ42を係止させるように、介装部材40を配置する。特に、部材フランジ42は、表側周面12のうち凹状係止面12bに係止される。
【0059】
このとき、フィラーチューブ30のチューブフランジ32の溶着面32aは、燃料タンク10のチューブ被溶着面12aおよび介装部材40の部材フランジ42に対して、隙間を有して配置されている。さらに、溶着面32a,12a,42を加温するための熱板60を、当該隙間の横に配置しておく。つまり、チューブフランジ32の溶着面32aと燃料タンク10のチューブ被溶着面12aとの対向空間の間隔は、熱板60が挿入可能な間隔に対応する。なお、介装部材40の部材フランジ42の環状小突起42aが、チューブ被溶着面12aから僅かに突出しているが、非常に僅かであるため、実質的に考慮する必要はない。ここで、熱板60は、中空円盤状に形成されており、上方に位置する第一面61および下方に位置する第二面62が共に加温可能な面を形成する。
【0060】
ここで、燃料タンク10の開口11の内径は、介装部材40の部材本体41の外径より大きい。さらに、燃料タンク10の凹状係止面12bの内周面の内径は、介装部材40の部材フランジ42の外径より大きい。従って、介装部材40は、燃料タンク10の開口11および凹状係止面12bに圧入されることなく、容易に挿入される。従って、介装部材40の挿入は、容易に行われる。
【0061】
さらに、開口11が上方に向くように燃料タンク10が配置されており、介装部材40の部材フランジ42が凹状係止面12bに係止されるため、介装部材40を燃料タンク10の開口11に挿入した状態において、介装部材40の重力によって、介装部材40の状態を容易に維持することができる。つまり、介装部材40を保持する必要がない。
【0062】
さらに、介装部材40は、部材フランジ42よりも、部材本体41とは反対側に何ら張り出す部材を有しない。従って、燃料タンク10の開口11の表側(外側)には、介装部材40の端部に位置する部材フランジ42以外に、張り出す部材は存在しない。そして、介装部材40が開口11に配置された状態において、燃料タンク10の表側周面12と介装部材40の部材フランジ42が同等の面上に位置する。
【0063】
また、フィラーチューブ30は、介装部材40が挿入されることはない。当然に、フィラーチューブ30の内周側に介装部材40が圧入によって嵌め込まれることもない。そのため、フィラーチューブ30の内周面の寸法は、介装部材40との関係において何ら考慮する必要がない。従って、フィラーチューブ30の内周面を高精度に成形する必要がない。その結果、フィラーチューブ30の内周面の設計および製造が容易となり、フィラーチューブ30の製造コストを低減できる。
【0064】
なお、本実施形態においては、熱板60は、中空円盤状としたが、中実円盤状とすることもできる。ただし、熱効率の観点から、熱板60は、中空円盤状とする方が好適できある。
【0065】
(5-4.ステップS6)
次に、
図9に示すように、熱板60を、フィラーチューブ30のチューブフランジ32の溶着面32aと燃料タンク10のチューブ被溶着面12aと対向空間に、横スライド(開口11の軸直角方向への移動)によって挿入する(
図4のS6:「熱板挿入工程」)。
【0066】
(5-5.ステップS7)
次に、
図10に示すように、燃料タンク10を熱板60に対して相対的に上昇させることにより、熱板60に、燃料タンク10のチューブ被溶着面12aおよび介装部材40の部材フランジ42を接触させる。さらに、フィラーチューブ30のチューブフランジ32を熱板60に対して相対的に下降させることにより、熱板60に、チューブフランジ32を接触させる。
【0067】
そして、熱板60により、燃料タンク10のチューブ被溶着面12a、介装部材40の部材フランジ42およびチューブフランジ32の溶着面32aが加温される(
図4のS7:「加温工程」)。詳細には、熱板60の第一面61により、燃料タンク10のチューブ被溶着面12aおよび介装部材40部材フランジ42が加温される。さらに、熱板60の第二面62により、チューブフランジ32の溶着面32aが加温される。つまり、1つの熱板60の第一面61および第二面62を用いることにより、燃料タンク10のチューブ被溶着面12a、介装部材40の部材フランジ42およびチューブフランジ32の溶着面32aを同時に加温することができる。
【0068】
さらに、熱板60の第一面61により部材フランジ42が加温されることにより、部材フランジ42の溶融材料、特に環状小突起42aの部分の材料が、部材フランジ42と燃料タンク10の凹状係止面12bとの隙間に入り込む。
【0069】
ここで、従来、熱板60の内周面に介装部材40が挿入されていたため、熱板60の内周面と介装部材40の外周面との隙間を管理しなければならなかった。しかし、本実施形態においては、熱板60が存在する対向空間には、熱板60以外に何ら存在しない。熱板60は、中空円盤状としているが、中空領域に何ら部材が挿入されることはない。そのため、熱板60と他の部材との径方向(開口11の径方向)の隙間管理を厳しくする必要がない。従って、隙間管理をする必要がない分、製造コストを低減できる。
【0070】
(5-6.ステップS8,S9)
次に、熱板60による加温状態を所定時間行った後には、
図11に示すように、燃料タンク10を熱板60に対して相対的に下降させることにより、熱板60から、燃料タンク10のチューブ被溶着面12aおよび介装部材40の部材フランジ42から離間させる(
図4のS8:「退避準備工程」)。さらに、
図11に示すように、フィラーチューブ30のチューブフランジ32を熱板60に対して相対的に上昇させることにより、熱板60から、チューブフランジ32を離間させる(
図4のS8:「退避準備工程」)。
【0071】
ここで、上述したように、介装部材40の端部に部材フランジ42が設けられ、部材フランジ42よりも部材本体41とは反対側には何ら部材が存在しない。従って、燃料タンク10の開口11の表側周面12から、外方に突出する部材は、実質的に存在しない。そのため、熱板60が存在する対向空間には、熱板60以外の部材は何ら存在しない。例えば、中空円盤状の熱板60の中空領域に、何ら部材が存在しない。これは、燃料タンク10も、介装部材40も、チューブフランジ32も、当該対向空間において溶着する部位以外の部材が存在しないためである。
【0072】
従って、熱板60から、燃料タンク10のチューブ被溶着面12a、介装部材40の部材フランジ42およびチューブフランジ32を離間させるための移動量は、極めて僅かで十分である。従って、当該移動に要する時間は、短くて済む。
【0073】
続いて、
図12に示すように、熱板60を、燃料タンク10のチューブ被溶着面12aとチューブフランジ32との対向空間から横スライド(開口11の軸直角方向への移動)により外部へ移動させる(
図4のS9:「熱板退避工程」)。
【0074】
(5-7.ステップS10)
熱板60を移動させた後には、
図13に示すように、燃料タンク10のチューブ被溶着面12aとチューブフランジ32の溶着面32aとを上下方向に移動させて、チューブ被溶着面12aとチューブフランジ32の溶着面32aとを溶着する(
図4のS10:「溶着工程」)。同時に、チューブフランジ32の溶着面32aと介装部材40の部材フランジ42とを溶着する(
図4のS10:「溶着工程」)。
【0075】
ここで、溶着のための燃料タンク10およびチューブフランジ32の移動量は、熱板60から離間させるための移動量に、熱板60の厚みを合計した量となる。上述した退避準備工程において説明したように、熱板60から離間させるための燃料タンク10およびチューブフランジ32の移動量は、少なくできる。さらに、熱板60は、厚くする必要はないため、薄くすることが可能である。従って、溶着のために、燃料タンク10およびチューブフランジ32の移動量も少なくできる。
【0076】
このように、燃料タンク10のチューブ被溶着面12a、チューブフランジ32および介装部材40の部材フランジ42は、熱板60により加温された後に、溶着するまでの時間を短くすることが可能となる。従って、溶着状態を非常に良好とすることができる。
【0077】
ここで、熱板60の第一面61により介装部材40の部材フランジ42が加温されることにより、部材フランジ42の溶融材料が、部材フランジ42と燃料タンク10の凹状係止面12bとの隙間に入り込んでいる。そして、溶着する際に、当該部位も同時に溶着される。つまり、燃料タンク10と介装部材40とが直接的に溶着される。
【0078】
このように、燃料タンク10とチューブフランジ32、チューブフランジ32と介装部材40の部材フランジ42、および、燃料タンク10と介装部材40の部材フランジ42とが、それぞれ、直接的に溶着される。従って、当該3部材は、強固に接合されている。
【符号の説明】
【0079】
1:燃料ライン、 10:燃料タンク、 11:開口、 12:表側周面、 12a:チューブ被溶着面、 12b:凹状係止面、 20:給油口、 21:挿入部、 30:フィラーチューブ、 31:チューブ本体、 31a:第一筒部、 31b:蛇腹部、 31c:第二筒部、 32:チューブフランジ、 32a:溶着面、 32b:最外径面、 32c:接続外面、 32d:内周面、 33:給油口端部、 40:介装部材、 41:部材本体、 42:部材フランジ、 42a:環状小突起、 50:ブリーザライン、 60:熱板、 61:第一面、 62:第二面、 100:製造装置、 110:押出機、 120:コルゲート成形機、 130:切断機