(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/08 20060101AFI20220831BHJP
C08L 47/00 20060101ALI20220831BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20220831BHJP
C08K 3/011 20180101ALI20220831BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220831BHJP
C08K 5/5419 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
C08L23/08
C08L47/00
C08L83/05
C08K3/011
C08K3/013
C08K5/5419
(21)【出願番号】P 2018044372
(22)【出願日】2018-03-12
【審査請求日】2021-02-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】有野 恭巨
(72)【発明者】
【氏名】市野 光太郎
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/122495(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00-23/16
C08L 47/00
C08L 83/05
C08K 3/011
C08K 3/013
C08K 5/5419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン(A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)と、下記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)とに由来する構成単位を有し、下記(i)~(v)の要件を満たすことを特徴とするエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)、ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2個持つヒドロシリル基含有化合物(Y)、ヒドロシリコン架橋用の白金系触媒(Z)、上記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)100質量部に対して、補強剤を1~80質量部、および、軟化剤を0~
1質量部含むことを特徴とするエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物。
【化1】
(i)エチレン/α-オレフィンのモル比が40/60~99.9/0.1である。
(ii)非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率が、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)100重量%中、0.07重量%~10重量%である。
(iii)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)とが、下記式(1)を満たす。
4.5≦Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量≦40…式(1)
(iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η
*
(ω
=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η
*
(ω
=100)(Pa・sec)との比P(η
*
(ω
=0.1)/η
*
(ω
=100))と、極限粘度[η]と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率)とが、下記式(2)を満たす。
P/([η]
2.9)≦(C)の重量分率×6…式(2)
(v)3D-GPCを用いて得られた、1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB
1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たす。
LCB
1000C≦1-0.07×Ln(Mw)‥式(3)
【請求項2】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物が、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S):100質量部に対して、上記ヒドロシリル基含有化合物(Y)を0.1~100質量部、上記白金系触媒(Z)を0.1~100000重量ppm、および更に反応抑制剤(D)を0.05~5質量部含むことを特徴とする請求項1に記載のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物。
【請求項3】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物がパッキン用である請求項1または2に記載のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性、耐熱老化性に優れ、且つ生産性に優れるパッキンを得るに好適なエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(以下、EPDMと略す場合がある)をヒドロシリル架橋して得られる共重合体組成物(特許文献1)は、イオウ加硫や過酸化物架橋と比較して機械的強度、耐熱老化性、圧縮永久歪み、ブルーム性に優れ、連続架橋が可能であることなどの特徴を有し、パッキン、ガスケット等シール部品への応用が期待される。
【0003】
EPDMからなる共重合体組成物は、EPDMにさまざまな架橋剤、触媒、充填剤、配合剤を段階的に加えながら所定の温度条件下で段階的に混練して得られる。しかしながら、EPDMの炭素-炭素二重結合とヒドロシリル基含有化合物とによるヒドロシリル架橋反応は、温度がかかる混練の初期段階から既に開始されるため、混練途中での加工性が徐々に低下する。そのため、架橋反応を抑制する目的で、反応抑制剤が配合される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、柔軟性、耐熱老化性に優れ、且つ生産性に優れるパッキンを得るに好適なエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エチレン(A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)と、下記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)とに由来する構成単位を有し、下記(i)~(v)の要件を満たすことを特徴とするエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)、ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2個持つヒドロシリル基含有化合物(Y)、ヒドロシリコン架橋用の白金系触媒(Z)および補強剤を1~80質量部含むことを特徴とするエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物に係る。
【0007】
【化1】
(i)エチレン/α-オレフィンのモル比が40/60~99.9/0.1である。
(ii)非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率が、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)100重量%中、0.07重量%~10重量%である。
(iii)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)とが、下記式(1)を満たす。
4.5≦Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量≦40 … 式(1)
(iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η
*
(ω
=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η
*
(ω
=100)(Pa・sec)との比P(η
*
(ω
=0.1)/η
*
(ω
=100))と、極限粘度[η]と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率)とが、下記式(2)を満たす。
P/([η]
2.9)≦(C)の重量分率×6 … 式(2)
(v)3D-GPCを用いて得られた、1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB
1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たす。
LCB
1000C≦1-0.07×Ln(Mw) ‥ 式(3)
【発明の効果】
【0008】
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物は、パッキン等の成形体の生産性に優れると共に、得られる成形体は柔軟性、耐熱老化性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)>
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物〔以下、「共重合体組成物」と略称する場合がある。〕を構成するエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)〔以下、「共重合体(S)」と略称する場合がある。〕は、エチレン(A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)と、下記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)とに由来する構成単位を有する。
【0010】
【化2】
このような本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、上記(A)、(B)、(C)に由来する構造単位に加えて、さらに上記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(D)に由来する構成単位を有していてもよい。
【0011】
炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)としては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。これらのうち、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどの炭素原子数3~8のα-オレフィンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。このようなα-オレフィンは、原料コストが比較的安価であり、得られるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体が優れた機械的性質を示し、さらにゴム弾性を持った成形体を得ることができるため好ましい。これらのα-オレフィンは一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0012】
すなわち、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、少なくとも1種の炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)に由来する構成単位を含んでおり、2種以上の炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0013】
上記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)としては、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、ノルボルナジエン、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。これらのうちでは、入手容易性が高く、ヒドロシリル架橋が良好で、重合体組成物の耐熱性が向上しやすいことから非共役ポリエン(C)がVNBを含むことが好ましく、非共役ポリエン(C)がVNBであることがより好ましい。非共役ポリエン(C)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0014】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、エチレン(A)、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)および前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位に加えて、さらに、前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(D)に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0015】
このような非共役ポリエン(D)としては、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(2,3-ジメチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-エチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-メチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(3,4-ジメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-エチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(7-オクテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-メチル-6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2-ジメチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(5-エチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2,3-トリメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネンなどが挙げられる。これらのうちでは、入手容易性が高く、ヒドロシリル架橋時の架橋速度を制御しやすく、良好な機械物性が得られやすいことからENBが好ましい。非共役ポリエン(D)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0016】
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体が、前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(D)に由来する構成単位を含む場合、その割合は本発明の目的を損なわない範囲において特に限定されるものではないが、通常、0~20重量%、好ましくは0~8重量%、より好ましくは0.01~8重量%程度の重量分率で含む(ただし、(A)、(B)、(C)、(D)の重量分率の合計を100重量%とする)。
【0017】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、上述の通り、エチレン(A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)と、上記非共役ポリエン(C)と、必要に応じて上記非共役ポリエン(D)とに由来する構成単位を有する共重合体であって、下記(i)~(v)の要件を満たす。
(i)エチレン/α-オレフィンのモル比が40/60~99.9/0.1である。
(ii)非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率が0.07重量%~10重量%である。
(iii)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)とが、下記式(1)を満たす。
4.5≦Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量≦40 … 式(1)
(iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*
(ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*
(ω=100)(Pa・sec)との比P(η*
(ω=0.1)/η*
(ω=100))と、極限粘度[η]と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率)とが、下記式(2)を満たす。
P/([η]2.9)≦(C)の重量分率×6 … 式(2)
(v)3D-GPCを用いて得られた、1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たす。
LCB1000C≦1-0.07×Ln(Mw) ‥ 式(3)
【0018】
本明細書において、前記(i)~(v)をそれぞれ、要件(i)~(v)とも記す。また、本明細書において、「炭素原子数3~20のα-オレフィン」を単に「α-オレフィン」とも記す。
【0019】
(要件(i))
要件(i)は、本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)中のエチレン/α-オレフィンのモル比が40/60~99.9/0.1を満たすことを特定するものであり、このモル比は好ましくは50/50~90/10、より好ましくは55/45~85/15、さらに好ましくは55/45~78/22を満たすことが望ましい。このような本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、ヒドロシリル架橋して得られるパッキンなどの成形体が優れたゴム弾性を示し、機械的強度ならびに柔軟性に優れたものとなるため好ましい。
【0020】
なお、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)中のエチレン量(エチレン(A)に由来する構成単位の含量)およびα-オレフィン量(α-オレフィン(B)に由来する構成単位の含量)は、13C-NMRにより求めることができる。
【0021】
(要件(ii))
要件(ii)は、本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)中において、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率が、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)100重量%中(すなわち全構成単位の重量分率の合計100重量%中)、0.07重量%~10重量%の範囲であることを特定するものである。この非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率は、好ましくは0.1重量%~8.0重量%、より好ましくは0.5重量%~5.0重量%であることが望ましい。
【0022】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)が、要件(ii)を満たすと、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物から得られるグラスランチャンネルなどの成形体が充分な硬度を有し、機械特性に優れたものとなるため好ましく、ヒドロシリル架橋した場合には、早い架橋速度を示すものとなり、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)が、パッキンなどの成形体の製造に好適なものとなるため好ましい。
【0023】
なお、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)中の非共役ポリエン(C)量(非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の含量)は、13C-NMRにより求めることができる。
【0024】
(要件(iii))
要件(iii)は、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)において、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)と、共重合体中における非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率:重量%)と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)とが、次の関係式(1)を満たすことを特定するものである。
4.5≦Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量≦40 … 式(1)
【0025】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)が、要件(iii)を満たす場合、VNBなどの非共役ポリエン(C)に由来する構造単位の含有量が適切であって、十分なヒドロシリル架橋性能を示すとともに、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物を用いてパッキンなどの成形体を製造した場合には、架橋速度に優れ、架橋後のパッキンなどの成形体が優れた機械特性を示すものとなるため好ましい。
【0026】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、より好ましくは、下記関係式(1')を満たすことが望ましい。
4.5≦Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量≦35 … 式(1')
なお、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数値として求めることができる。
【0027】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、「Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量」が前記式(1)あるいは(1')を満たす場合には架橋程度が適切となり、これを用いることにより機械的物性と耐熱老化性とにバランスよく優れたパッキンなどの成形体を製造することができる。「Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量」が少なすぎる場合には、ヒドロシリル架橋する際に架橋性が不足して架橋速度が遅くなることなることがあり、また多すぎる場合には過度に架橋を生じて得られるパッキンなどの成形体の機械的物性が悪化する場合がある。
【0028】
(要件(iv))
要件(iv)は、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)の、レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*
(ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*
(ω=100)(Pa・sec)との比P(η*
(ω=0.1)/η*
(ω=100))と、極限粘度[η]と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率:重量%)とが、下記式(2)を満たすことを特定するものである。
P/([η]2.9)≦(C)の重量分率×6 … 式(2)
【0029】
ここで、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*
(ω=0.1)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*
(ω=100)との比P(η*
(ω=0.1)/η*
(ω=100))は、粘度の周波数依存性を表すものであって、式(2)の左辺にあたるP/([η]2.9)は、短鎖分岐や分子量などの影響はあるものの、長鎖分岐が多い場合に高い値を示す傾向がある。一般に、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体では、非共役ポリエンに由来する構成単位を多く含むほど、長鎖分岐を多く含む傾向があるが、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、従来公知のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体よりも長鎖分岐が少ないことにより上記式(2)を満たすことができると考えられる。本発明において、P値は、粘弾性測定装置Ares(Rheometric Scientific社製)を用い、190℃、歪み1.0%、周波数を変えた条件で測定を行って求めた、0.1rad/sでの複素粘度と、100rad/sでの複素粘度とから、比(η*比)を求めたものである。
【0030】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、好ましくは、下記式(2')を満たす。
P/([η]2.9)≦(C)の重量分率×5.7 … 式(2')
なお、極限粘度[η]は、135℃のデカリン中で測定される値を意味する。
【0031】
(要件(v))
要件(v)は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)の、3D-GPCを用いて得られた1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たすことを特定するものである。
LCB1000C≦1-0.07×Ln(Mw) ‥ 式(3)
【0032】
上記式(3)により、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)の単位炭素数当たりの長鎖分岐含量の上限値が特定される。
このようなエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、含まれる長鎖分岐の割合が少なく、ヒドロシリル架橋を行う場合の硬化特性に優れるとともに、これを用いて得られるパッキンなどの成形体が耐熱老化性に優れたものとなるため好ましい。
【0033】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、好ましくは、下記式(3')を満たす。
LCB1000C≦1-0.071×Ln(Mw) ‥ 式(3')
ここで、Mwと1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)は、3D-GPCを用いて構造解析法により求めることができる。本明細書においては、具体的には、次のようにして求めた。
【0034】
3D-高温GPC装置PL-GPC220型(Polymer Laboratories社製)を用い、絶対分子量分布を求め、同時に粘度計で極限粘度を求めた。主な測定条件は以下の通り。
検出器:示差屈折率計/GPC装置内蔵
2角度光散乱光度計PD2040型(Precison Detectors社製)
ブリッジ型粘度計PL-BV400型(Polymer Laboratories社製)
カラム:TSKgel GMHHR-H(S)HT×2本+TSKgel GMHHR-M(S)×1本
(いずれも1本当たり内径7.8mmφ×長さ300mm)
温度:140℃
移動相:1,2,4-トリクロロベンゼン(0.025%BHT含有)
注入量:0.5mL
試料濃度:ca 1.5mg/mL
試料濾過:孔径1.0μm焼結フィルターにて濾過
【0035】
絶対分子量の決定に必要なdn/dc値は標準ポリスチレン(分子量190000)のdn/dc値0.053と単位注入質量あたりの示差屈折率計の応答強度より、試料ごとに決定した。
粘度計より得られた極限粘度と光散乱光度計より得られた絶対分子量の関係より溶出成分毎の長鎖分岐パラメーターg'iを式(v-1)から算出した。
【0036】
【数1】
ここで、[η]=KM
v;v=0.725の関係式を適用した。
【0037】
また、g'として各平均値を下記式(v-2)、(v-3)、(v-4)から算出した。なお、短鎖分岐のみを有すると仮定したTrendlineは試料ごとに決定した。
【0038】
【数2】
更にg'wを用いて、分子鎖あたりの分岐点数BrNo、炭素1000個あたりの長鎖分岐数LCB
1000C、単位分子量あたりの分岐度λを算出した。BrNo算出はZimm-Stockmayerの式(v-5)、また、LCB
1000Cとλの算出は式(v-6)、(v-7)を用いた。gは慣性半径Rgから求められる長鎖分岐パラメーターであり、極限粘度から求められるg'との間に次の単純な相関付けが行われている。式中のεは分子の形に応じて種々の値が提案されている。ここではε=1(すなわちg'=g)と仮定して計算を行った。
【0039】
【数3】
λ=BrNo/M …(V-6)
LCB
1000C=λ×14000 …(V-7)
*式(V-7)中、14000はメチレン(CH
2)単位で1000個分の分子量を表す。
【0040】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、極限粘度[η]が好ましくは0.1~5dL/g、より好ましくは0.5~5.0dL/g、さらに好ましくは0.9~4.0dL/gであることが望ましい。
【0041】
また本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、重量平均分子量(Mw)が好ましくは10,000~600,000、より好ましくは30,000~500,000、さらに好ましくは50,000~400,000であることが望ましい。
【0042】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、上記の極限粘度[η]および重量平均分子量(Mw)を兼ね備えて満たすことが好ましい。
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)では、非共役ポリエン(C)がVNBを含むことが好ましく、VNBであることがより好ましい。すなわち上述した式(1)、式(2)ならびに後述する式(4)等において、「(C)の重量分率」が「VNBの重量分率」(重量%)であることが好ましい。
【0043】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、上述したように、上記(A)、(B)および(C)に由来する構造単位に加えて、さらに、前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(D)に由来する構成単位を、0重量%~20重量%の重量分率(ただし、(A)、(B)、(C)、(D)の重量分率の合計を100重量%とする)で含むことも好ましい。この場合には、下記(vi)の要件を満たすことが好ましい。
【0044】
(要件(vi))
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、共役ポリエン(D)に由来する構成単位の重量分率((D)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)と、共役ポリエン(D)の分子量((D)の分子量)とが、下記式(4)を満たす。
4.5≦Mw×{((C)の重量分率/100/(C)の分子量)+((D)の重量分率/100/(D)の分子量)}≦45 … 式(4)
式(4)では、共重合体1分子中の非共役ジエン((C)と(D)の合計)の含量を特定している。
【0045】
上記(D)に由来する構造単位を含むエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)が式(4)を満たす場合、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)の組成物から得られるパッキンなどの成形体が優れた機械物性と耐熱老化性を示すものとなるため好ましい。
【0046】
要件(vi)を満たさず、式(4)中の「Mw×{((C)の重量分率/100/(C)の分子量)+((D)の重量分率/100/(D)の分子量)}」が少なすぎる場合、すなわち非共役ジエンの含量が少なすぎる場合には、十分な架橋がなされず適切な機械物性が得られない場合があり、多すぎる場合にはヒドロキシ架橋が過剰となり得られる成形体の機械物性が悪化する場合がある他、耐熱老化性が悪化する場合がある。
【0047】
(要件(vii))
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、特に限定されるものではないが、レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.01rad/sでの複素粘度η*
(ω=0.01)(Pa・sec)と、周波数ω=10rad/sでの複素粘度η*
(ω=10)(Pa・sec)と、非共役ポリエン(c)に由来する見かけのヨウ素価とが、下記式(5)を満たすことが好ましい。
Log{η*
(ω=0.01)}/Log{η*
(ω=10)}≦0.0753×{非共役ポリエン(C)に由来する見かけのヨウ素価}+1.42 … 式(5)
ここで、複素粘度η*
(ω=0.01)および複素粘度η*
(ω=10)は、要件(vi)における複素粘度η*
(ω=0.1)および複素粘度η*
(ω=100)と測定周波数以外は同様にして求められる。
【0048】
また、非共役ポリエン(C)に由来する見かけのヨウ素価は、次式により求められる。
(C)に由来する見かけのヨウ素価=(C)の重量分率×253.81/(C)の分子量
上記式(5)において、左辺は長鎖分岐量の指標となる剪断速度依存性を表し、右辺は重合時に長鎖分岐として消費されていない非共役ポリエン(C)の含有量の指標を表す。要件(vii)を満たし、上記式(5)を満たす場合には、長鎖分岐の程度が高すぎないため好ましい。一方上記式(5)を満たさない場合には、共重合した非共役ポリエン(C)のうち、長鎖分岐の形成に消費された割合が多いこと分かる。
【0049】
またさらに本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位を十分量含有することが好ましく、共重合体中における非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、共重合体の重量平均分子量(Mw)とが、下記式(6)を満たすことが好ましい。
6-0.45×Ln(Mw)≦(C)の重量分率≦10 …式(6)
【0050】
また本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の数(nC)が、好ましくは6個以上、より好ましくは6個以上40個以下、さらに好ましくは7個以上39個以下、またさらに好ましくは10個以上38個以下であることが望ましい。
【0051】
このような本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、VNBなどの非共役ポリエン(C)から導かれる構成単位を十分量含有し、かつ、長鎖分岐含有量が少なく、過酸化物を用いて架橋を行う場合の硬化特性に優れ、成形性がよく、機械的特性などの物性バランスに優れるとともに特に耐熱老化性に優れる。
【0052】
さらに本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(D)に由来する構成単位の数(nD)が、好ましくは29個以下、より好ましくは10個以下、さらに好ましくは1個未満であることが望ましい。
【0053】
このような本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、ENBなどの非共役ポリエン(D)から導かれる構成単位の含有量が本発明の目的を損なわない範囲に抑制されており、後架橋を生じにくく、十分な耐熱老化性を有するため好ましい。
【0054】
ここで、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)の重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の数(nC)あるいは非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の数(nD)は、非共役ポリエン(C)または(D)の分子量と、共重合体中における非共役ポリエン(C)または(D)に由来する構成単位の重量分率((C)または(D)の重量分率(重量%))と、共重合体の重量平均分子量(Mw)とから、下記式により求めることができる。
(nC)=(Mw)×{(C)の重量分率/100}/非共役ポリエン(C)の分子量
(nD)=(Mw)×{(D)の重量分率/100}/非共役ポリエン(D)の分子量
【0055】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(C)および(D)に由来するそれぞれの構成単位の数(nc)および(nD)が、いずれも上記の範囲を満たす場合には、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)が、長鎖分岐含有量が少なく、かつ、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)を含む組成物をヒドロキシ架橋を行う場合の架橋速度が速く、得られるパッキンなどの成形体の機械的特性などの物性バランスに優れるとともに、後架橋を生じにくく特に耐熱老化性に優れたものとなるため好ましい。
【0056】
<エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)の製造>
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、エチレン(A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)と、前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)と、必要に応じて前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に1つのみ2含む非共役ポリエン(D)とからなるモノマーを共重合してなる共重合体である。
【0057】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、前記の要件(i)~(v)を満たす限りにおいて、どのような製法で調製されてもよいが、メタロセン化合物の存在下にモノマーを共重合して得られたものであることが好ましく、メタロセン化合物を含む触媒系の存在下にモノマーを共重合して得られたものであることがより好ましい。
【0058】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、具体的には、例えば、国際公開第2015/122495号パンフレット記載のメタロセン触媒に記載の方法を採用することにより製造することができる。
【0059】
<ヒドロシリル基含有化合物(Y)>
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物に含まれる成分の一つであるヒドロシリル基含有化合物(Y)は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)と反応して架橋剤として作用する。このヒドロシリル基含有化合物(Y)は、従来から製造・市販されている、例えば、線状、環状、分岐状の各構造あるいは三次元網目状構造の樹脂状物など、その構造においていずれでも使用可能であるが、本発明で用いるヒドロシリル基含有化合物(Y)は、1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含んでいなければならない。
【0060】
このようなヒドロシリル基含有化合物(Y)は、通常、下記の一般式で表わされる化合物を使用することができる。
R4
bHcSiO(4-b-c)/2
上記一般式において、R4は、脂肪族不飽和結合を除く、炭素原子数1~10、特に炭素原子数1~8の置換または非置換の1価炭化水素基であり、このような1価炭化水素基としては、メチル基やエチル基からはじまりノニル基やデシル基に至る、n-、iso-、sec-、tert-などの異性体を含むアルキル基、フェニル基、ハロゲン置換のアルキル基、例えばトリフロロプロピル基を例示することができる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0061】
上記一般式において、bは、1≦b<3、好ましくは0.6<b<2.2、特に好ましくは1.5≦b≦2であり、cは、1<c≦3、好ましくは1≦c<2であり、かつ、b+cは、0<b+c≦3、好ましくは1.5<b+c≦2.7である。
【0062】
本発明に係るヒドロシリル基含有化合物(Y)は、1分子中のケイ素原子数が好ましくは2~1000個、特に好ましくは2~300個、最も好ましくは4~200個のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、具体的には、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルテトラシクロシロキサン、1,3,5,7,8-ペンタメチルペンタシクロシロキサン等のシロキサンオリゴマー、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、R2
2(H)SiO1/2 単位とSiO4/2単位とからなり、任意にR2
3SiO1/2 単位、R2
2SiO2/2 単位、R2(H)SiO2/2単位、(H)SiO3/2 またはR2SiO3/2単位を含み得るシリコーンレジンなどを挙げることができる。
【0063】
分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
(CH3)3SiO-(-SiH(CH3)-O-)d-Si(CH3)3
(式中のdは2以上の整数である。)
【0064】
分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
(CH3)3SiO-(-Si(CH3)2-O-)e-(-SiH(CH3)-O-)f-Si(CH3)3
(式中のeは1以上の整数であり、fは2以上の整数である。)
【0065】
分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
HSi(CH3)2O-(-Si(CH3)2-O-)e-Si(CH3)2H
(式中のeは1以上の整数である。)
【0066】
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
HSi(CH3)2O-(-SiH(CH3)-O-)e-Si(CH3)2H
(式中のeは1以上の整数である。)
【0067】
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、例えば下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
HSi(CH3)2O-(-Si(CH3)2-O-)e-(-SiH(CH3)-O-)h-Si(CH3)2H
(式中のeおよびhは、それぞれ1以上の整数である。)
【0068】
以上のような化合物は、公知の方法により製造することができ、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサンおよび/またはテトラメチルシクロテトラシロキサンと、末端基となり得るヘキサメチルジシロキサンあるいは1,3-ジハイドロ-1,1,3,3- テトラメチルジシロキサンなどの、トリオルガノシリル基あるいはジオルガノハイドロジェンシロキシ基を含む化合物とを、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸等の触媒の存在下に、-10℃~+40℃程度の温度で平衡化させることによって容易に得ることができる。
【0069】
<白金系触媒(Z)>
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物に含まれる成分の一つであるヒドロシリコン架橋用の白金系触媒(Z)は、付加反応触媒であり、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)が有するアルケニル基と、ヒドロシリル基含有化合物(Y)のヒドロシリル基との付加反応(アルケンのヒドロシリル化反応)を促進するものであれば、特に制限はなく使用することができる。
【0070】
具体的な白金系触媒は、通常、付加硬化型の硬化に使用される公知のものでよく、例えば米国特許第2,970,150号明細書に記載の微粉末金属白金触媒、米国特許第2,823,218号明細書に記載の塩化白金酸触媒、米国特許第3,159,601号公報明細書および米国特許第159,662号明細書に記載の白金と炭化水素との錯化合物、米国特許第3,516,946号明細書に記載の塩化白金酸とオレフィンとの錯化合物、米国特許第3,775,452号明細書および米国特許第3,814,780号明細書に記載の白金とビニルシロキサンとの錯化合物などが挙げられる。
【0071】
より具体的には、白金の単体(白金黒)、塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-アルコール錯体、あるいはアルミナ、シリカ等の担体に白金の担体を担持させたものなどが挙げられる。
【0072】
<反応抑制剤(D)>
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物に配合してもよい成分の一つである反応抑制剤(D)は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)が有するアルケニル基と、ヒドロシリル基含有化合物(Y)のヒドロシリル基との架橋反応(アルケンへのヒドロシリル化付加反応)を抑制する機能を有する化合物である。かかる反応抑制剤(D)を配合した場合は、組成物の混練時および成形時での加工性を安定にする点で好ましい。
【0073】
本発明に係わる反応抑制剤(D)の具体例としては、例えば、ベンゾトリアゾール;1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、1-エチニルシクロヘキサノール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレンアルコール類;、アクリロニトリル;N,N-ジアリルアセトアミド、N,N-ジアリルベンズアミド、N,N,N',N'-テトラアリル-o-フタル酸ジアミド、N,N,N',N'-テトラアリル-m-フタル酸ジアミド、N,N,N',N'-テトラアリル-p-フタル酸ジアミドなどアミド化合物);その他、イオウ、リン、窒素、アミン化合物、イオウ化合物、リン化合物、スズ、スズ化合物、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、ハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物などが挙げられる。
これら化合物の中でも3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オールが特に好ましい。
【0074】
<補強剤>
本発明の共重合体組成物に含まれる成分の一つである補強剤は、カーボンブラック、シランカップリング剤で表面処理したカーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、活性化炭酸カルシウム、微粉タルク、微分ケイ酸などが挙げられる。
【0075】
これら補強剤の中でも、カーボンブラックが好ましい。かかるカーボンブラックとしては、例えば、旭#55G、旭#60G(以上、旭カーボン(株)製)、シースト(SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT、G-SO等)(以上、東海カーボン(株)製)など公知のものが挙げられる。これらカーボンブラックは、単独で使用することもできるし、併用することもできる。また、シランカップリング剤などで表面処理したものを使用することもできる。
【0076】
《エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物》
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物は、上記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)100質量部に対して、上記ヒドロシリル基含有化合物(Y)を、通常、0.1~100質量部、好ましくは0.1~75質量部、より好ましくは0.1~50質量部、さらには0.2~30質量部、さらには0.2~20質量部、特には0.5~10質量部、最も好ましくは0.5~5質量部、上記白金系触媒(Z)を、通常0.1~100000重量ppm、好ましくは0.1~10000重量ppm、さらに好ましくは1~5000重量ppm、特に好ましくは5~1000重量ppm、上記反応抑制剤(D)を配合する場合は、好ましくは0.05~5質量部、より好ましくは0.07~5質量部、さらには0.07~4.5質量部、さらに好ましくは0.1~4.5質量部、特に好ましくは0.1~3.0質量部、最も好ましくは0.1~1.0質量部の範囲で含み、且つ上記補強剤を1~80質量部、好ましくは10~60質量部含む組成物である。
【0077】
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物は、上記各成分を上記範囲で含むことにより、成形体を製造する際の生産性に優れると共に、柔軟性と硬度の耐熱老化性に優れたパッキンなどの成形体が得られる。
【0078】
<その他の成分>
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物は、上記成分に加え、本発明の目的が損なわれない限り、それ自体公知のゴム配合剤、例えば、有機過酸化物、α,β-不飽和有機酸の金属塩、老化防止剤、架橋助剤、架橋促進剤、加工助剤、活性剤、酸化防止剤、充填剤、可塑剤、軟化剤、粘着付与剤、発泡剤等を適宜配合することができる。
【0079】
〔老化防止剤〕
老化防止剤としては、一般的なゴム組成物に用いられる公知の老化防止剤を用いることができる。具体的には、イオウ系老化防止剤、フェノール系老化防止剤及びアミン系老化防止剤などが挙げられる。
【0080】
本発明において、老化防止剤は、単独で用いてもよいが、高温下で、長時間の耐熱老化性を維持する点で、2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
本発明において、イオウ系老化防止剤は、共重合体(S)100質量部に対して、好ましくは0.2~10質量部、より好ましくは0.2~8質量部、特に好ましくは0.2~6質量部の範囲で用いることができる。前記範囲でイオウ系老化防止剤を用いると、耐熱老化性の向上効果が大きく、しかも、本発明の共重合体組成物の架橋を阻害することもないため好ましい。
【0081】
フェノール系老化防止剤は、共重合体(S)100質量部に対して、好ましくは0.2~5質量部、より好ましくは0.5~4質量部、特に好ましくは0.5~3質量部の範囲で用いることができる。前記範囲でフェノール系老化防止剤を用いると、耐熱老化性の向上効果が大きく、しかも、本発明の共重合体組成物の架橋を阻害することもないため好ましい。
【0082】
アミン系老化防止剤は、共重合体(S)100質量部に対して、好ましくは0.05~5質量部、より好ましくは0.1~4質量部、特に好ましくは0.2~3質量部の範囲で用いられる。前記範囲でアミン系老化防止剤を用いると、耐熱老化性の向上効果が大きく、しかも、本発明の共重合体組成物の架橋を阻害することもないため好ましい。
【0083】
〔架橋助剤〕
架橋助剤としては、具体的には、イオウ;p- キノンジオキシム等のキノンジオキシム系化合物;ポリエチレングリコールジメタクリレート等のメタクリレート系化合物;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等のアリル系化合物;マレイミド系化合物;ジビニルベンゼンなどが挙げられる。このような架橋助剤は、使用する有機過酸化物1モルに対して好ましくは0.5~2モル、より好ましくは約等モルの量で用いられる。
【0084】
〔加工助剤〕
加工助剤としては、一般に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛またはエステル類等が挙げられる。これらの加工助剤は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。加工助剤は、共重合体(S)100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下の量で適宜配合することができる。加工助剤の配合量が前記範囲内であると、混練加工性、押出加工性、射出成形性等の加工性に優れる。
【0085】
〔活性剤〕
活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類;ジ-n-ブチルアミン、トリエタノールアミン等のアミン類などが挙げられる。これらの活性剤は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。活性剤は、共重合体(S)100質量部に対して、好ましくは0.2~15質量部、好ましくは0.3~10質量部、さらに好ましくは0.5~8質量部の範囲で適宜配合することができる。
【0086】
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物には、ゴム、樹脂などを他の成分として配合することができる。それらの配合剤は、用途に応じて、その種類、含有量が適宜選択されるが、これらのうちでも特に補強剤、無機充填剤、軟化剤などを用いることが好ましい。
【0087】
〔軟化剤〕
軟化剤としては、一般的なゴム組成物に用いられる公知の軟化剤を用いることができる。具体的には、プロセスオイル、潤滑油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;トール油;サブ(ファクチス);蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸及び脂肪酸塩;石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質などが挙げられる。なかでも石油系軟化剤が好ましく、プロセスオイルがより好ましく、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル等がさらに好ましく、パラフィン系プロセスオイルが特に好ましい。これらの軟化剤は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0088】
軟化剤は上記共重合体(S)100質量部に対して、好ましくは0~30質量部、より好ましくは0~15質量部、特に好ましくは0~1質量部の範囲で用いられる。軟化剤(E)の配合量が零か若しくは前記範囲内の共重合体組成物であれば、タックが少なく、加工性に優れ、得られるパッキン等の成形体は、耐熱老化性、機械的性質等に優れる。
【0089】
本発明では、必要に応じて用いられる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの汎用樹脂が挙げられる。また、本発明では、必要に応じて用いられるゴムとしては、シリコーンゴム、エチレン・プロピレンランダム共重合体ゴム(EPR)、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴムなどをブレンドして用いることができる。
【0090】
また、上記共重合体(S)とは異なるが類似するゴム(EPT)、更には、上記共重合体(S)同士であっても、(イ)エチレン/炭素数3~20のα-オレフィンのモル比、(ロ)ヨウ素価、または(ハ)極限粘度[η]が異なる上記共重合体(S)同士を2種以上混合して用いることもできる。特に、(ハ)においては、低極限粘度成分と高極限粘度の混合が挙げられる。
【0091】
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物は、混練-成形加工する際の50~130℃の比較的低い温度では、架橋反応が抑制されるので、押出し成形性、プレス成形性、射出成形性等の成形性、およびロール加工性などの加工性に優れており、しかも、架橋温度である150~200℃では、短時間で架橋し得るという架橋特性にも優れている。したがって、下記、種々公知の成形方法を採用することにより、低温特性(低温での柔軟性、ゴム弾性等)、機械特性、耐熱安定性などに優れるパッキンなどの成形体を従来の共重合体組成物に比べ、高速で成形することができる。
【0092】
<エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物の加工>
本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物からなる発泡体を得るには、公知の一般的なゴム配合物の加工方法(成形方法)を採用し得る。具体的には、以下の通りである。
【0093】
バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー類を用いて、例えば、前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)ならびに他の成分を80~170℃の温度で3~10分間混練した後、ヒドロシリル基含有化合物(Y)、白金系触媒(Z)、反応抑制剤(D)、補強剤、軟化剤および充填剤を夫々上記範囲の量で、必要に応じて他の配合剤や他のゴムや樹脂などを加えて、オープンロールなどのロール類あるいはニーダーを用いて、ロール温度50~130℃で5~30分間混練した後、分出しすることにより調製することができる。このようにして通常リボン状またはシート状の組成物が得られる。
【0094】
得られた組成物は、例えば、押出成形機、カレンダーロール、プレス、射出成形機、トランスファー成形機など種々の成形法によって所望形状に予備成形、あるは成形と同時にまた成形物を加硫槽内に導入し、加熱して架橋することにより、パッキン等の成形体を得ることができる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例で用いた共重合体の物性は前記記載の測定方法で、共重合体組成物からなる成形体の物性は、以下の方法で測定した。
【0096】
〔硬度〕
実施例および比較例で得られた厚み2mmの架橋シートから長さ方向に、JIS K 6251(1993年)に記載の3号型ダンベルで打ち抜いて試験片を得た。該試験片の平らな部分を6枚重ねて12mmとし、JIS K6253に従い硬度(JIS-A)を測定した。
【0097】
〔引張り試験:引張破断点応力、引張破断点伸び〕
実施例および比較例で得た架橋シートを打抜いてJIS K6251(1993年)に記載されている3号形ダンベル試験片を調製し、この試験片を用いてJIS K6251第3項に規定される方法に従い、測定温度25℃、引張速度500mm/分の条件で引張り試験を行ない、引張破断点応力(TB)および引張破断点伸び(EB)を測定した。
【0098】
〔圧縮永久歪み(CS)〕
実施例および比較例で得られた成形体(厚み12.5mm、直径29mm)を、圧縮永久歪み測定金型に取り付けた後、試験片の高さが荷重をかける前の高さの25%分圧縮し、金型ごと70℃のギヤーオーブン中にセットして22時間または、120℃のギヤーオーブン中にセットして70時間熱処理した。次いで試験片を取出し、30分間放冷後、試験片の高さを測定し以下の計算式で圧縮永久歪み(%)を算出した。
圧縮永久歪み(%)={(t0-t1)/(t0-t2)}×100
t0:試験片の試験前の高さ。
t1:試験片を熱処理し30分間放冷した後の高さ。
t2:試験片の測定金型に取り付けた状態での高さ。
【0099】
[エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の製造]
〔製造例1〕
攪拌翼を備えた容積300Lの重合器を用いて、連続的に、エチレン、プロピレン、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)の重合反応を87℃にて行った。
重合溶媒としてはヘキサン(フィード量:43.4L/h)を用いて、連続的に、エチレンフィード量が4.7kg/h、プロピレン量が6.1kg/h、VNBフィード量が200g/hおよび水素フィード量が65NL/hとなるように、重合器に連続供給した。
【0100】
重合圧力を1.5MPaG、重合温度を87℃に保ちながら、主触媒としてジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを用いて、フィード量0.0028mmol/hとなるよう、重合器に連続的に供給した。また、共触媒として(C6H5)3CB(C6F5)4(CB-3)をフィード量0.014mmol/h、有機アルミニウム化合物としてトリイソブチルアルミニウム(TIBA)をフィード量20mmol/hとなるように、それぞれ重合器に連続的に供給した。
【0101】
このようにして、エチレン、プロピレンおよびVNBから形成されたエチレン・プロピレン・VNB共重合体を24質量%含む溶液が得られた。重合器下部から抜き出した重合反応液中に少量のメタノールを添加して重合反応を停止させ、スチームストリッピング処理にてエチレン・プロピレン・VNB共重合体を溶媒から分離した後、80℃で一昼夜減圧乾燥した。
【0102】
以上の操作によって、エチレン、プロピレンおよびVNBから形成されたエチレン・プロピレン・VNB共重合体(S-1)が、毎時7.5kgの速度で得られた。
得られた共重合体(S-1)の物性を前記記載の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0103】
〔製造例2〕
攪拌羽根を備えた実質内容積100リットルのステンレス製重合器(攪拌回転数=250rpm)を用いて、連続的にエチレンとプロピレンと5-ビニル-2-ノルボルネンとの三元共重合を行なった。重合器側部より液相へ毎時ヘキサンを60リットル、エチレンを3.8kg、プロピレンを7.9kg、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)を1500gの速度で、また、水素を250リットル、触媒としてVOCl3を48ミリモル、Al(Et)2Clを240ミリモル、Al(Et)1.5 Cl1.5 を48ミリモルの速度で連続的に供給した。上記条件で共重合反応を行い、エチレン・プロピレン・VNB共重合体(以下、共重合体(A-1)と略す)が均一な溶液状態で得られた。スチームストリッピング処理にてエチレン・プロピレン・VNB共重合体を溶媒から分離した後、80℃で一昼夜減圧乾燥した。
得られた共重合体(A-1)の物性を前記記載の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0104】
【0105】
[実施例1]
第一段階として、BB-2型バンバリーミキサー(神戸製鋼所製)を用いて、製造例1で得た共重合体(S-1)100質量部を30秒間素練りし、次いでこれに、補強剤としてカーボンブラック(旭#60UG、旭カーボン(株)社製)40質量部を加え、140℃で2分間混練した。その後、ラムを上昇させ掃除を行ない、さらに、1分間混練を行ない、約150℃で排出し、第一段階の配合物を得た。
【0106】
次に、第二段階として、第一段階で得られた配合物を、6インチロ-ル(日本ロール(株)社製、前ロールの表面温度50℃、後ロールの表面温度50℃、前ロールの回転数16rpm、後ロールの回転数18rpm)に巻き付けて、これに、ヒドロシリル基含有化合物(信越化学(株)製:(CH3)3SiO-(SiH(CH3)-O-)6-Si(CH3)2-O-Si(C6H6)2-O-Si(CH3)3)4重質量部、白金系触媒(信越化学(株)製:塩化白金酸+[CH2=CH(Me)SiO]4錯体)0.1質量部および反応抑制剤(信越化学(株)製:3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール)0.2質量部を加え10分間混練して未架橋の配合物を得た。
【0107】
次に、得られた組成物をシート状に分出し、100トンプレス成形機を用いて170℃で10分間プレスし、厚み2mmの架橋シートを調製した。得られた架橋シートの物性を上記記載の方法で評価した。
【0108】
ただし、圧縮永久歪試験用の試料は以下の方法で調整したものを使用した。上記の未架橋の組成物をシート状に分出し、100トンプレス成形機を用いて170℃で15分間プレスし、CS測定用ブロック(直径29mm、厚さ12.5mm)を調製した。これを用いて、CS(圧縮永久歪み)の評価を行った。
【0109】
[比較例1]
実施例1で用いたエチレン・プロピレン・VNB共重合体(S-1)に替えて、製造例2で得られた共重合体(A-1)を用いる以外は実施例1と同様に行った。
結果を表2に示す。
【0110】