(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】金属製真空二重容器封着用ガラス組成物と金属製真空二重容器
(51)【国際特許分類】
C03C 8/24 20060101AFI20220831BHJP
C03C 3/066 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
C03C8/24
C03C3/066
(21)【出願番号】P 2018067491
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-02-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000178826
【氏名又は名称】日本山村硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091834
【氏名又は名称】室田 力雄
(72)【発明者】
【氏名】前田 浩三
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-238273(JP,A)
【文献】国際公開第2001/085631(WO,A1)
【文献】特開2005-052208(JP,A)
【文献】特開2009-007198(JP,A)
【文献】特開2002-348152(JP,A)
【文献】特開2010-280554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的にPbOを含まず、質量%表示で、
Bi
2O
3 :72~76%、ただし72%と76%を除く、
B
2O
3 :2~17%、
SiO
2 :0.1~9%、
ZnO :5~20%、
Na
2O :0.9~2%、
MgO、CaO、SrO、BaOの内の少なくとも1種以上を合計で0.1~5%、を含有
し、更に、
CuO、CoOの合計含有量を、0%を含まず、4%以下の範囲とし、
Li
2
O、K
2
Oの合計含有量を、0%を含み、1%を超えない範囲とした、
ことを特徴とする金属製真空二重容器封着用ガラス組成物。
【請求項2】
質量%表示で、Al
2O
3を2%以下含有することを特徴とする請求項1に記載の金属製真空二重容器封着用ガラス組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金属製真空二重容器封着用ガラス組成物で真空封着した金属製真空二重容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属製真空二重容器の封着用のガラス組成物と金属製真空二重容器、詳しくは、魔法瓶、携帯用保温ボトル等の金属製真空二重容器を低温で真空封着でき、真空を良好に保持できる金属製真空二重容器封着用ガラス組成物と、該ガラス組成物で封着した金属製真空二重容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属製真空二重容器の作製は、金属製の二重容器を真空炉にて加熱しながら、排気孔より内外容器間のガスを真空排気する、いわゆる脱ガス処理を実施した後、更に高温処理し、排気孔に設置したガラスをフローさせて排気孔を塞ぐ、いわゆる封着処理を実施することによりなされている。
真空での封着処理には真空炉を使用する必要があるが、真空炉における伝熱は輻射のみであり、一般的な炉に比べて温度の炉内ばらつきが大きくなる傾向にある。
また封着処理の前の脱ガス処理の際、ガラス中に結晶核が発生することがあり、更に高温での封着処理の際に、この核を中心として結晶析出が促進される。結晶析出が促進されるとフロー性が悪化し、封着が不完全となる。
よって脱ガス中の炉内ばらつきにより結晶析出の度合いが異なると、フロー性にばらつきが生じる。また封着処理の際の炉内ばらつきも結晶析出の度合い、フロー性に影響するので、封着処理の条件も封着性能に大きく影響を及ぼす。従って封着性能のばらつきを抑制するには、ガラスを結晶析出し難くすると共に、低温で封着させるために軟化点が低い組成の開発が必要となる。
金属製真空二重容器の封着には、従来、上記観点から鉛ガラスが使用されてきたが、近年の環境問題から無鉛化が望まれている。無鉛であるガラスとしては、例えばビスマス系ガラス、リン酸塩ガラス等が知られている。ビスマス系ガラスの場合、軟化点を低温化するためにはビスマス量を多く含んだ組成にしなければならず、ビスマス量が多い組成は結晶化が生じ易いという問題がある。結晶化させないためには、ビスマス量を制限しなければならず、そのため軟化点が高くなる傾向がある。
ビスマス系ガラスとしては下記の先行技術文献がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-128574号公報
【文献】特開2006-321665号公報
【文献】特開2008-24558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、封着用途として500℃以下の温度で焼成可能なビスマス系ガラス組成物が開示されている。
しかしながら特許文献1に開示されているガラス組成物は、選択した組成によって非結晶性のガラスであったり、結晶性のガラスとなったりするため、安定性に欠け、ガラスのフロー性に問題があり、よって封着性能に問題がある。
また特許文献2には、500℃まで結晶化ピークが発現しないビスマス系無鉛ガラス組成物が開示されている。
しかしながら特許文献2の場合、結晶化温度が存在する組成が提示されるため、真空封着用として使用した場合、結晶が析出する可能性がある。
また特許文献3には、金属製真空二重容器の真空封着用に適したビスマス系の封着用無鉛ガラス組成物が開示されている。
しかしながら特許文献3に開示されているガラス組成物は、SiO2を含有していないため、耐水性に問題がある。またBi2O3の量が多いため、真空封着時に結晶が析出する可能性が高い。
【0005】
そこで本発明は上記従来技術の問題点を解消し、脱ガス及び真空封着等の焼成時において結晶析出がなく、金属製真空二重容器の真空封着を低温で、良好に且つ歩留まりよく行うことができ、また金属に対する接着性、密着性に優れた金属製真空二重容器封着用ガラス組成物と、該ガラス組成物で封着した金属製真空二重容器の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく研究を重ねた結果、ビスマスガラスにおいて、ビスマス量を増やすのではなく、アルカリ金属であるNa2Oを添加し、ある特定の成分範囲のときに結晶化せず、軟化点が低い組成になることを見出し、この知見に基づき更に検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明の金属製真空二重容器封着用ガラス組成物は、実質的にPbOを含まず、質量%表示で、Bi2O3:72~76%、ただし72%と76%を除く、B2O3:2~17%、SiO2:0.1~9%、ZnO:5~20%、Na2O:0.9~2%、MgO、CaO、SrO、BaOの内の少なくとも1種以上を合計で0.1~5%、を含有し、更に、CuO、CoOの合計含有量を、0%を含まず、4%以下の範囲とし、Li
2
O、K
2
Oの合計含有量を、0%を含み、1%を超えない範囲とした、ことを第1の特徴としている。
また本発明の金属製真空二重容器封着用ガラス組成物は、上記第1の特徴に加えて、質量%表示で、Al2O3を2%以下含有することを第2の特徴としている。
また本発明の金属製真空二重容器は、請求項1又は2に記載の金属製真空二重容器封着用ガラス組成物で真空封着したことを第3の特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の金属製真空二重容器封着用ガラス組成物によれば、焼成時に結晶が析出し難く、フロー性に優れ、低温で確実に封着することができる無鉛の金属製真空二重容器の封着用ガラスを提供でき、保温性を良好に保つのに好適である。CuO、CoOの合計含有量を、0%を含まず、4%以下の範囲としたので、ガラスの軟化点を下げ、流動性を上げることができる。またLi
2
O、K
2
Oの合計含有量を、0%を含み、1%を超えない範囲としたので、封着時にガラスの結晶化が起こり易くならず、よって封着がうまくできなくなる恐れがなくなる。
【0009】
また請求項2に記載の金属製真空二重容器封着用ガラス組成物によれば、上記請求項1に記載の構成による作用効果に加えて、質量%表示で、Al2O3を2%以下含有することにより、一層、結晶が析出し難い金属製真空二重容器の封着用ガラスを提供することができる。
【0010】
本発明の金属製真空二重容器によれば、請求項1又は2に記載の金属製真空二重容器封着用ガラス組成物で真空封着することにより、現に良好に封着された金属製真空二重容器を安価に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る金属製真空二重容器封着用ガラス組成物は、金属製真空二重容器を低温焼成で真空封着し、真空を良好に保持できる封着用ガラスとして好適に適用できる。
以下に、本実施形態の金属製真空二重容器封着用ガラス組成物について、各成分の含有量の限定理由等について説明する。以下は全て質量%とする。
【0012】
Bi2O3は本発明のガラスの網目を形成する酸化物であり、70~77%の範囲で含有させる。
Bi2O3が70%未満の場合、ガラスは得られるが、軟化点が高いために低温での封着ができないおそれがある。
一方、77%を超える場合、結晶が析出する可能性があり、封着が不安定になるおそれがあり、好ましくない。
Bi2O3の含有量は、ガラスの軟化点、結晶化等を考慮すると、72~76%であることが好ましく、73~75%未満であることがより好ましい。
【0013】
B2O3はガラスの網目を形成する酸化物であり、2~17%の範囲で含有させる。
B2O3が2%未満の場合、ガラスが得られないおそれがあり、また得られたとしてもガラスの成形性が悪く、或いは結晶が析出するおそれがある。
一方、17%を超える場合、軟化点が高くなるため、低温での封着ができなくなるおそれがあり、好ましくない。
B2O3の含有量は、ガラスの成形性、軟化点等を考慮すると、5~12%であることが好ましく、6~10%であることがより好ましい。
【0014】
SiO2はガラスの網目を形成する酸化物で、ガラスの成形性を向上させる成分であり、0.1~9%の範囲で含有させる。
SiO2が0.1%未満の場合、ガラスの成形性を向上させる効果がない。
またSiO2が9%を超える場合、ガラスの軟化点が高くなるため、低温での封着ができなくなるおそれがあり、好ましくない。
SiO2の含有量は、ガラスの成形性、軟化点等を考慮すると、0.6~7%であることが好ましく、1~5%であることがより好ましい。
【0015】
ZnOはガラスの軟化点を下げ、流動性を上げる効果がある成分であり、5~20%の範囲で含有させる。
ZnOが5%未満の場合、ガラスが得られないおそれがあり、また得られたとしてもガラスの成形性が悪く、或いは結晶が析出するおそれがある。
また20%を超える場合、ガラスが得られない可能性あり、また得られたとしても結晶が析出する可能性がある。
ZnOの含有量は、ガラスの成形性、軟化点を考慮すると、10~15%であることが好ましく、11~14%であることがより好ましい。
【0016】
MgO、CaO、SrO、BaOは、ZnOとの共存によりガラスの安定性を向上させる成分であり、それらの合計量が0.1~5%の範囲で含有させる。
合計量が0.1%未満の場合、安定性向上の効果が得られない可能性がある。
また5%を超える場合、ガラスが得られないか、或いは結晶が析出するため、好ましくない。
MgO、CaO、SrO、BaOの合計量は、ガラスの安定性、結晶化等を考慮すると、0.4~3%であるのが好ましく、0.4~1.5%がより好ましい。
【0017】
Na2Oはガラスの軟化点を下げ、ガラスの流動性を上げる成分であり、0.1~2.5%の範囲で含有させる。
Na2Oが0.1%未満の場合、軟化点を下げる効果が得られない可能性がある。
一方、Na2Oが2.5%を超える場合、ガラスが得られない可能性があり、また得られたとしても結晶が析出する可能性がある。
Na2Oの含有量は、ガラスの成形性、軟化点を考慮すると、0.4~2.0%であることが好ましく、0.9~2%であることがより好ましい。
【0018】
Al2O3はガラスの網目を形成する酸化物で、ガラスの成形性を向上させる成分であり、2%まで含有させてもよい。
Al2O3の含有量が2%を超える場合、ガラスの軟化点が高くなるため、低温での封着ができなくなるおそれがあり、或いはガラス中に溶解しないおそれがあり、好ましくない。
含有させる場合は、0.1~1%であることが好ましく、0.1~0.5%であることがより好ましい。
【0019】
CuO、CoOはガラスの軟化点を下げ、流動性を上げる成分である。合計で4%まで含有させてもよい。
CuO、CoOの合計量が4%を超える場合、結晶が析出して、封着がうまくできなくなるおそれがある。
CuO、CoOの含有量は、結晶化等を考慮すると、合計で2%以下含有させるのがよい。またCuO、CoOの含有量は、合計で0.1~2%とするのがより好ましい。
【0020】
Li2OやK2Oは、合計で1%まで含有させることができる。Li2OやK2Oは、Na2Oと比べて液相粘度を下げる効果が高いため、単独で添加すると、ガラスの安定性が下がり、封着時に結晶化が起こり易い。一方、Li2OやK2Oは、Na2Oと同時に添加することにより、混合アルカリ効果でガラスを安定化させると共に、ガラスの軟化点を下げることができる。よってLi2OやK2Oを含有させる場合は、Na2Oと一緒に含有させるのがよい。
Li2OやK2Oは、その合計量が1%を超えると、液相粘度が下がるため、結晶化が起こり易くなり、封着がうまくできなくなるおそれがある。
Li2OやK2Oは、ガラスの結晶化を考慮すると、添加しないのが好ましい。
【0021】
上記成分に加えて、ガラス製造時の安定性の向上、金属との反応抑制、接着性の改善を目的として、Fe2O3、La2O3、Y2O3、Yb2O3、CeO2、TiO2、ZrO2を合計で2%以下含有させることができる。
【0022】
酸化鉛(PbO)は実質的に含有させない。ここで「実質的に含有させない」との表現は、本発明においては酸化鉛(PbO)を有効成分とする原料は使用しないとの意であり、ガラスを構成する各成分の原料、その他に由来する微量分が不純物として混入したものを排除するものではない。言い換えれば、不純物として含有しているものまで本発明の範囲に入らないと言う意味ではない。具体的には、酸化鉛(PbO)は酸化物換算において、それらの合計量が1000ppm以下であれば、本発明の封着用ガラス組成物に含有されても実質上問題になるおそれはなく、本発明において「実質的に・・・含まない」に該当する。
【0023】
本発明の金属製真空二重容器封着用ガラス組成物は、480℃以下のガラス軟化点Ts、室温から300℃の範囲において90~120×10-7/℃の平均熱膨張係数αを有し、金属製真空二重容器の真空封着に好適である。
本発明の金属製真空二重容器は、二重容器間の空間を減圧状態に保ち、その挿通孔を前記ガラス組成物で封着することで得られる。
封着する真空二重容器を構成する金属材料としては、ステンレス鋼、その他の鋼、鉄材料、チタン材料、アルミニウム材料、その他の金属材料を対象とすることができる。
本発明の封着用ガラスは、例えば球状、半球状、おはじき状、或いは前記に類似した形状で使用することができる。
【実施例】
【0024】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0025】
(ガラスの製造)
原料として、酸化ビスマス、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酸化ケイ素、ホウ酸、水酸化アルミニウム、酸化銅、酸化コバルト等を用いた。
表1~表5に示すように、実施例1~27及び比較例1~3に示すガラス組成となるように原料を調合、混合した。
得られた混合物を白金るつぼに入れ、850~950℃の温度で1時間溶融した後、双ロール法で急冷してガラスフレークを得ると共に、予め加熱しておいたカーボン板に流し出してブロックを作製した。
その後、ブロックは予想されるガラス転移点Tgより約50℃高い温度に設定した電気炉に入れ、徐冷を行った。
作製したガラスフレークを900~1000℃の温度範囲で再溶融し、軟化点よりも200~300℃高い温度まで下げて適当な粘度にした後、摘下し、直径約5mm、高さ約2mm、重量約140mgの半球状の成形体を成形した。
【0026】
(評価)
実施例1~27、比較例1~3について、下記の方法によりガラス粉末のガラス転移点、軟化点、結晶化温度、ガラスブロックの熱膨張係数αを測定すると共に、ガラスのフロー性を判定した。
結果を表1~表5に示す。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
(1)ガラス転移点Tg、軟化点Ts、結晶化温度Tp
ガラスフレークを乳鉢で粉砕し、ガラス粉末を得た。そのガラス粉末約60~80mgを白金セルに充填し、DTA測定装置(リガク社製Thermo Plus TG8120)を用いて、室温から20℃/分で昇温させて、ガラス転移点(℃)、軟化点(℃)を測定した。またDTA測定装置で結晶化温度(℃)が検出されるかを判定した。
【0033】
(2)熱膨張係数α
得られたガラスブロックを約5×5×15mmに切り出し、研磨して測定用のサンプルとした。TMA測定装置を用いて、室温から10℃/分で昇温したときに得られる熱膨張曲線から、50℃と300℃の2点に基づく熱膨張係数(×10-7/℃)を求めた。
【0034】
(3)ガラスのフロー径
得られた半球状の成形体を粉砕し、10gを内径20mmの金型に入れ、3MPaで10秒プレス成型して圧粉体とした。この圧粉体をSUS製板の上に置き、焼成温度500℃、保持時間15分で焼成し、そのフローした直径を測定した。
【0035】
(4)フロー後の結晶性
フロー後の成形体をX線回折分析(XRD)により「非晶質」、「微結晶含有」、「結晶」の何れであるかを判定した。
ここで、「非晶質」とはXRDでハローしか見られず、結晶が析出していない状態、「微結晶含有」とはハローの中に微量すぎて同定ができないぐらいの結晶ピークが見られる状態、「結晶」とは同定できる結晶ピークが見られる状態、を示す。
【0036】
(実施例1)
原料としては、酸化ビスマス、ホウ酸、酸化ケイ素、酸化亜鉛、炭酸バリウム、炭酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、酸化銅を用い、所定の割合になるよう調合、混合し、該混合物を白金るつぼに入れ、950℃の温度で1時間溶融した後、双ロール法で急冷してガラスフレークを得ると共に、予め加熱しておいたカーボン板に流し出してブロックを作製した。その後、ブロックは予想されるガラス転移点より約50℃高い温度に設定した電気炉に入れ、徐冷を行った。
できたガラスフレークを乳鉢で粉砕し、ガラス粉末を得、約80mgを白金セルに充填し、DTA測定装置を用いて、室温から20℃/分で昇温させて、ガラス転移点、軟化点を測定したところ、それぞれ369℃、438℃であった。なお、結晶化温度は検出されなかった。
またガラスブロックから切り出したサンプルの50℃と300℃の2点に基づく熱膨張係数αを求めたところ、105×10-7/℃であった。
作製したガラスフレークを1000℃で再溶融し、適当な粘度となるまで温度を下げて滴下し、半球状の成形体を作製した。得られた成形体を粉砕した圧粉体を作製した後、500℃で15分焼成した。焼成後のフロー径を測定したところ、25.5mmであった。またXRDにて結晶化の状態を判定したところ、非晶質であった。
【0037】
(実施例2~27、比較例1~3)
実施例2~27、比較例1~3も実施例1と同様に作製し、測定、評価した。
実施例1~27の組成物は、何れも結晶化温度が検出されず、フロー後のXRDでも非晶質か微結晶含有であり、フロー性も良好であった。
これに対して比較例1、2は、結晶化温度が検出され、フロー後のXRDで結晶が確認された。またNa2Oを含有せず、Li2Oを含有する比較例3では、軟化点よりも200~300℃高い温度では結晶化が著しいために、半球状の成形体を作製することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の金属製真空二重容器封着用ガラス組成物及び金属製真空二重容器は、ステンレス鋼やその他の金属製真空二重容器製造の産業において大いに利用できる。