(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】紙幣取扱装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/20 20190101AFI20220831BHJP
G07D 11/14 20190101ALI20220831BHJP
【FI】
G07D11/20
G07D11/14
(21)【出願番号】P 2018072128
(22)【出願日】2018-04-04
【審査請求日】2020-12-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504373093
【氏名又は名称】日立チャネルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉川 雄気
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】三輪 真也
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-099677(JP,A)
【文献】特開2018-010355(JP,A)
【文献】特開2016-029518(JP,A)
【文献】特開2016-012180(JP,A)
【文献】国際公開第2010/095235(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客と対面して紙幣を入出金する紙幣取扱装置であって、
前記紙幣を入金する入金開口部を有した入金部と、
前記紙幣を出金する出金開口部と、前記出金開口部を開閉するシャッタとを有した出金部と、
リジェクト紙幣を前記出金開口部に搬送する制御部と、を備え、
前記顧客の側から、前記入金部と前記出金部とがこの順に隣接して配置され、
前記出金部は、前記入金部の側に、前記入金部の開口上端まで延び前記出金部の全体を覆わない程度の幅であって中央位置付近に設けられた開閉自在な蓋体、を有した壁部を有
し、
前記制御部は、操作部から、入金取引において、前記紙幣の搬送中及び待機中は前記シャッタを閉め、前記リジェクト紙幣が発生したタイミングで前記シャッタを開ける第1の制御、または入金取引において、前記入金開口部に入金された前記紙幣を分離して搬送する前に前記シャッタを開ける第2の制御のいずれかの選択を受け付けて、前記紙幣の搬送中は前記シャッタの開状態を保持する前記第2の制御、を実行する、
ことを特徴とする紙幣取扱装置。
【請求項2】
前記制御部は、入金取引において、前記紙幣の搬送中及び待機中は前記シャッタを閉め、前記リジェクト紙幣が発生したタイミングで前記シャッタを開ける第1の制御を実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の紙幣取扱装置。
【請求項3】
前記制御部は、入金取引において、前記入金開口部に入金された前記紙幣を分離して搬送する前に前記シャッタを開ける第2の制御を実行し、前記紙幣の搬送中は前記シャッタの開状態を保持する、
ことを特徴とする請求項1に記載の紙幣取扱装置。
【請求項4】
前記制御部は、出金取引において、紙幣収納部から前記紙幣を分離して搬送する前に前記シャッタを閉め、前記紙幣の搬送終了後に前記シャッタを開ける第3の制御を実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の紙幣取扱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣を搬送する紙幣取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣取扱装置には、紙幣を投入する入金部を備え、さらに出金紙幣の搬送先とリジェクト紙幣の搬送先を兼ねる出金部を有する装置が存在する。この構成の紙幣取扱装置は、入金部及び出金部にシャッタを搭載しないものが稼働している。シャッタが無い紙幣取扱装置では、入金部及び出金部がオープンであり、入金取引でのリジェクト紙幣を、出金部から入金部へ即時再投入できる。また、オープンな入金部には、紙幣の積み増しができ、一度に大量の紙幣の入金が可能である。こうした特徴から、上記の紙幣取扱装置は、銀行の窓口業務における高速入出金機として利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した紙幣取扱装置を、銀行の窓口業務用としてだけでなく、ATMのように顧客が直接操作する形で運用したいという要望がある。しかし、顧客が紙幣取扱装置を操作する場合、出金部の紙幣を随時取り出せることが問題となる場合がある。例えば、出金取引中に紙幣取扱装置が異常停止した場合、顧客は出金部に出ている紙幣を取り出して、復旧を待たずに帰ってしまうことが考えられる。
【0005】
上記問題を解決する手段として、顧客が直接操作するATMのように、紙幣の入出金部にシャッタを搭載し、シャッタによって入出金部への顧客操作を制限する手段がある。しかし、単純に入金部と出金部にシャッタを搭載するだけでは、前述した一度に大量の紙幣入金可能、入金リジェクト紙幣を即時再投入可能といった利便性が失われる恐れがある。
【0006】
そこで、本願発明では、従来の紙幣取扱装置の利便性を保持したまま、取引中における出金部からの紙幣の取り出しを制限することが可能な紙幣取扱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる紙幣取扱装置は、顧客と対面して紙幣を入出金する紙幣取扱装置であって、前記紙幣を入金する入金開口部を有した入金部と、前記入金部に隣接して配置され、前記紙幣を出金する出金開口部と、前記出金開口部を開閉するシャッタとを有した出金部と、リジェクト紙幣を前記出金開口部に搬送する制御部と、を備えることを特徴とする紙幣取扱装置として構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来の紙幣取扱装置の利便性を保持したまま、取引中における出金部からの紙幣の取り出しを制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1の紙幣取扱装置の概略外観を示す斜視図。
【
図2】実施例1の紙幣取扱装置を平面視して窓口係員Mと顧客Kに対する位置関係を概略的に示す説明図。
【
図3】実施例1の紙幣取扱装置の上部領域を概略的に示す斜視図。
【
図4】実施例1の紙幣取扱装置の内部構成と紙幣搬送経路を概略的に示す断面図。
【
図6】実施例1の紙幣搬送経路の構成のうち出金搬送に関与する経路構成を概略的に説明する説明図。
【
図7】実施例1の紙幣搬送経路の構成のうち入金搬送に関与する経路構成を概略的に説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
全体構成について説明する。
図1は本実施形態の紙幣取扱装置100の外観を示す斜視図であり、
図2は紙幣取扱装置100を平面視して窓口係員Mと顧客Kに対する位置関係を概略的に示す説明図であり、
図3は紙幣取扱装置100の上部領域を紙幣取扱装置100の後面側からみた斜視図である。
図1に示すように、紙幣取扱装置100は、その外観上、上下に区別され、下部領域を金庫110とし、その金庫110が有する筐体部112より上の上部領域を入出金機構部116とする。筐体部112は、金属製鋼板から形成され、
図1における紙面手前側に、開閉並びに施錠可能な金属製の金庫扉113を備え、この金庫扉113と共に金庫110を構成する。紙幣取扱装置100は、金庫扉113で閉じられた筐体部112に後述の紙幣識別部170や紙幣収納部200などを収容しセキュリティを確保している。
【0011】
また入出金機構部116は、窓口係員により操作される操作部である操作パネル118、入金ボタン114、出金ボタン115を備えるほか、上面に、後述の入金部120と出金部140を、
図1における紙面手前側から紙面奥側、即ち装置前面側から後面側に掛けて、出金部140、入金部120の順に隣接して備える。また、紙幣取扱装置100は、
図2に示すように、顧客応対テーブルDにて装置後面側が覆われ、入出金機構部116の入金部120と出金部140とを顧客Kに視認可能な構成としている。この顧客Kによる視認の様子は、
図3に示されており、紙幣取扱装置100は、顧客Kの側から、入金部120と出金部140をこの順に隣接して、入出金機構部116に備える。これにより顧客Kが入金部120へ紙幣を投入し易い構成となる。また
図2に示すように、窓口係員Mは、顧客応対テーブルDを挟んで顧客Kと対面し、操作パネル118の所定操作、入金ボタン114及び出金ボタン115の押下の他、顧客Kから預かった紙幣Bの入金部120への投入や出金部140に出金された紙幣の顧客Kへの受渡を行う。以下、紙幣取扱装置100の構成について詳述する。
【0012】
図4は紙幣取扱装置100の内部構成と紙幣搬送経路を概略的に示す断面図である。図示するように、紙幣取扱装置100は、既述した入出金機構部116には、紙幣Bの入金を受け付ける入金部120と紙幣Bを出金する出金部140とを隣接配置して備え、金庫110の筐体部112には、紙幣識別部170と搬送機構部180と紙幣収納部200とを収容して備える。こうして金庫110に収容された紙幣識別部170と紙幣収納部200は、筐体部112により、入出金機構部116の入金部120と出金部140から区画され、筐体部112において、紙幣識別部170が紙幣収納部200の上方側に位置する。
【0013】
また
図3に示すとおり、入金部120は、出金部140よりも紙幣識別部170側、即ち後面側に配置され、この入金部120と隣接配置された出金部140は、入金部120の側に壁部141を備える。この壁部141は、出金部140の内部を入金部120の側で覆い、その上端の基部141bに蓋体141cを隔てて備える。蓋体141cは、出金部140の開口上端を覆うよう開閉自在とされ、出金部140に搬送されてきた出金紙幣の飛び出しを防止する。壁部141は、入金部120の開口上端までしか延びておらず、蓋体141cにあってもその幅が狭くされている。よって、壁部141および蓋体141cは、顧客応対テーブルDを隔てた顧客K(
図2参照)が入金部120の側から出金部140を眺める際の視線を遮らない。また、蓋体141cが出金部140全体を覆う形状になっておらず、その幅が狭い、かつ、中央位置付近に設けられているため、窓口係員M(
図2参照)の手の動線の妨げにならないことから入金部120への紙幣Bの投入の妨げにもならず操作性がよい。
【0014】
紙幣識別部170は、搬送機構部180が形成する後述の第1主搬送経路183(
図6参照)の一部経路を形成する。換言すれば、第1主搬送経路183は、紙幣識別部170を通過する。そして、この紙幣識別部170は、紙幣Bの金種種別の他、記番号、紙幣真偽、破損状況(リジェクト要否)等を、入出金の過程で第1主搬送経路183を搬送される紙幣Bについて鑑別する。紙幣識別部170による紙幣識別は、例えば、紙幣Bをスキャンして得られる画像データ、紙幣Bの表面の凹凸形状、磁気特性、紫外線などに対する光学特性など種々の情報を利用して行うことができる。紙幣識別部170の識別結果は、後述の制御部300(
図5参照)に出力され、紙幣搬送先のカセットの決定、リジェクト搬送等に用いられる。
【0015】
搬送部に相当する搬送機構部180は、入金部120および出金部140から紙幣収納部200に掛けて、紙幣入金経路180INと紙幣出金経路180OUTとを形成する。この両経路の詳細については後述するが、
図4に示すように、紙幣入金経路180INは、入金部120から紙幣識別部170に到る上流側入金経路181を備える。紙幣出金経路180OUTは、紙幣識別部170から出金部140に到る下流側出金経路186を備える。これら経路を有する搬送機構部180は、上記の入出金経路にて入金部120と出金部140とを紙幣識別部170と紙幣収納部200とに接続して、紙幣を搬送する。紙幣収納部200は、紙幣収納カセット201~205を備え、それぞれのカセットに後述するように紙幣Bを収納する。
【0016】
次に、電気的構成について説明する。まず、
図5は紙幣取扱装置100の制御ブロックを示す説明図である。紙幣取扱装置100は、電気的な機能ブロックとして、入金部120と、出金部140と、紙幣収納部200の紙幣収納カセット201~205と、紙幣識別部170と、操作パネル118と、入金ボタン114と、出金ボタン115と、搬送機構部180と、制御部300とを備える。出金部140は、後述するように、シャッタ150を備える。搬送機構部180は、後述するように、カセットごとのゲート201bを初めとするゲート群と、紙幣搬送経路に複数設置した検知センサ188の検知センサ群と、紙幣搬送を担う複数の駆動モータ189の駆動モータ群とを備える。制御部300は、主制御部301と、メモリ302と、操作端末Pと通信することができる上位通信部303とを有する。主制御部301は、主に制御用のマイクロプロセッサからなる。主制御部301は、入金部120や出金部140に含まれる紙幣送出・搬送に関与する駆動機器等の他、出金部140が備えるシャッタ150、搬送機構部180のゲート群、駆動モータ群を、紙幣の入出金搬送に伴い駆動制御する。検知センサ群に含まれる検知センサ188は、後述の紙幣入金経路180INや紙幣出金経路180OUTにて紙幣搬送状態を検知するほか、入金部120や出金部140における紙幣有無、紙幣収納カセット201~205における紙幣収納枚数等を検知し、その検知信号を制御部300に出力する。
【0017】
次に、
図6を用いて出金搬送処理について説明する。
図5の操作端末Pから上位通信部303を通じて、出金命令を受けた制御部300は駆動モータ群189を制御し、紙幣収納カセット201~205から紙幣Bを出金部140へ、操作端末Pから指定された枚数分の紙幣収納カセット201~205から紙幣Bを移動させる。一例として、出金紙幣リジェクト庫を紙幣収納カセット204に割り当てた場合の搬送経路を説明する。紙幣収納カセット201、202、203から繰り出された紙幣は、上流側出金経路185を通って紙幣識別部170で、正常券かリジェクト券かを判断する。正常券と判断された紙幣は、ゲート163を経由して下流側出金経路186を通って出金部140に搬送する。リジェクト券と判断された紙幣は、ゲート204bでカセット204の出金紙幣リジェクト庫に搬送する。よって、出金時にリジェクトが発生すると、出金部140への到達する紙幣は連続することなくまばらに到着する。また、リジェクト券を出金部140に搬送することもできる。その場合、操作端末Pから指定された枚数分の紙幣を紙幣収納カセット201~205から出金部140へ搬送後、出金部140にある全ての紙幣、即ち正常券とリジェクト券を、出金紙幣リジェクト庫に搬送し、出金取引をやり直す。
【0018】
次に、
図7を用いて入金搬送処理について説明する。
図7に示すように、紙幣入金経路180INは、入金部120から延びて筐体部112を経由し、紙幣識別部170に到る。その後、紙幣入金経路180INは、紙幣識別部170の経路下流の方向転換ローラー180rで折り返し、紙幣識別部170より下方側に位置する紙幣収納部200の各カセットの並びに沿って紙幣収納カセット205まで延びる。こうした経路軌跡を有する紙幣入金経路180INは、入金部120から紙幣識別部170に到るまでを上流側入金経路181とし、当該経路より下流の経路を下流側入金経路182とする。搬送機構部180は、下流側入金経路182を、紙幣識別部170を通過して方向転換ローラー180rまで延びる第1主搬送経路183と、方向転換ローラー180rで折り返して水平方向に延びて紙幣収納部200の紙幣収納カセット205に到る第2主搬送経路184とで、形成する。入金部120に投入された紙幣Bは、1枚ずつ分離され、搬送路へと繰り出される。搬送機構部180は、搬送路へ繰り出された紙幣Bを、上記した紙幣入金経路180INの経路に沿って入金搬送し、紙幣識別部170の識別結果に応じて紙幣収納カセット201~205のいずれかに入金搬送する。紙幣識別部170でリジェクト券と判断された紙幣は、ゲート205bを経由して下流側出金経路186を通り、出金部140に搬送する。
【0019】
次に、シャッタ150の動作について説明する。
図4に示すように、出金部140は上方側にシャッタ150を備える。このシャッタ150は、閉状態の時は、主制御部301の制御により、矢印150aの方向、即ち入金部120側にスライドして、出金部140の上方側全体を覆って紙幣Bの取り出し及び投入、手の挿入といった操作を制限する。また、シャッタ150は、開状態の時は、主制御部301の制御により、矢印150bの方向、即ち金庫扉113側にスライドして出金部140への操作を可能とする。
【0020】
ここでは、
図4に示すように、シャッタ150の形状を弧状にしているが、湾曲の無い形状でもよい。また、シャッタ150を金庫扉113側にスライドさせた状態を開状態としているが、シャッタ150を入金部120側や、装置の側面方向にスライドさせた状態を開状態としてもよい。
【0021】
紙幣搬送中及び待機中は、シャッタ150を閉状態とすることで、出金取引中における紙幣の取り出しを制限できる。一方、入金取引では、リジェクトが発生した場合、紙幣搬送終了までは出金部140に搬送されたリジェクト紙幣を取り出すことができない。そこで、主制御部301は、入金取引では、リジェクト発生の時点でシャッタ150を開ける制御を行う。本実施例における入金取引の制御(第1の制御)フローを
図8に示す。以降は、
図8のフローを順に見ていくことにより、リジェクトが発生した時点でシャッタ150を開ける動作とその効果について説明する。
【0022】
紙幣取扱装置100が待機状態(S1101)になると、主制御部301が入金ボタン114の押下を監視する(S1102)。顧客による入金ボタン114の押下を契機に、主制御部301が駆動モータ群189を制御し、入金部120に置かれた紙幣の分離及び搬送を開始(S1103)する。紙幣搬送中は、主制御部301が紙幣識別部170の識別結果を見てリジェクトの発生を監視し、リジェクト券か否かを判定(S1104)する。搬送紙幣がリジェクト券と判定された場合は(S1104;Yes)、主制御部301がシャッタ150を制御し、シャッタ150が閉状態か否かを判定(S1105)し、閉状態であると判定した場合は(S1105;Yes)、シャッタ150を開ける(S1106)。主制御部301は、この監視を紙幣搬送終了と判定するまで(S1107;Yes)、即ち入金部120に投入された紙幣全てが紙幣収納部200または出金部140に搬送されるまで行う(S1107;No)。主制御部301は、紙幣搬送終了後は、シャッタ150が開状態か否かを判定(S1108)する。主制御部301は、開状態であると判定した場合(S1108;Yes)、出金部140の紙幣の有無を判定(S1109)し、出金部140に搬送されたリジェクト紙幣が全て取り出されるのを待つ。主制御部301は、出金部140に紙幣が無くなったと判定した場合(S1109;Yes)、シャッタ150を閉じる(S1110)。その後、主制御部301は、取引を終了(S1111)する。
【0023】
以上の動作により、入金リジェクトが発生した時、窓口係員Mや顧客Kは紙幣搬送終了を待たずに、即座にリジェクト紙幣を取り出して入金部130へ再投入できる。
【0024】
ここでは、紙幣識別部170の識別結果によってリジェクトの発生及びシャッタ150を開けるタイミングを判断したが、入金取引中に出金部140へ紙幣が集積された時点でリジェクト発生と判断し、シャッタ150を開けることもできる。
【実施例2】
【0025】
次に、他の実施例について説明する。実施例1で説明したシャッタ150の制御では、入金取引中のリジェクトに対するシャッタ150の開動作(S1106)で異常が発生した場合、入金搬送が完了していない状態、少なくとも、紙幣識別部170でリジェクト券と判断された紙幣が、出金部140、または下流側出金経路186、または下流側入金経路182にある状態で紙幣取扱装置100が停止する。したがって、窓口係員Mや顧客Kは紙幣取扱装置100の復旧を待つ必要がある。また、上記開動作で異常が発生した場合、入金取引中のリジェクト紙幣が出金部140手前の搬送路に残り、紙幣の計数誤りを生じる場合がある。そこで、入金取引では、紙幣の分離開始直前にシャッタ150を開ける。実施例2のハードウェアの構成は、実施例1と同じとする。実施例2における入金取引の制御(第2の制御)フローを
図9に示す。以降は、
図9のフローを順に見ていくことにより、紙幣の分離開始直前にシャッタ150を開ける動作とその効果について説明する。
【0026】
紙幣取扱装置100が待機状態(S1201)になると、主制御部301が入金ボタン114の押下を監視する(S1202)。顧客による入金ボタン114の押下を契機に、主制御部301がシャッタ150及び駆動モータ群189を制御し、シャッタ150を開け(S1203)、入金部120に置かれた紙幣の分離及び搬送を開始(S1204)する。主制御部301は、紙幣の搬送中は、シャッタ150は開状態を保持する。紙幣搬送終了(S1205;Yes)後は、主制御部301は、出金部140の紙幣の有無を判定(S1206)し、出金部140に搬送されたリジェクト紙幣が全て取り出されるのを待つ。主制御部301は、出金部140に紙幣が無くなったと判定した場合(S1206;Yes)、シャッタ150を閉じる(S1207)。その後、主制御部301は、取引を終了(S1208)する。
【0027】
以上の動作により、実施例1と同様に、紙幣搬送終了を待たずに入金リジェクト紙幣を即時再投入できる。また、シャッタ150の開動作(S1203)において異常が発生し、紙幣取扱装置100が停止しても、紙幣の分離及び搬送の開始前である。よって、窓口係員Mや顧客Kは入金部120にある紙幣を取り出して帰るか、別の紙幣取扱装置で入金取引を行うことができる。また、上記異常が発生した場合でも、紙幣の分離及び搬送の開始前にシャッタ150が開状態となっているため、シャッタ150の開動作の異常に伴って入金取引中のリジェクト紙幣が搬送路に残ることがなく、紙幣の計数誤りを生じる虞がなくなる。
【0028】
ここでは、入金ボタン114の押下を監視することにより、紙幣の分離開始及びシャッタ150を開けるタイミングを判断したが、入金ボタン114を設けずに、
図5の操作端末Pから上位通信部303を通じて制御部300が入金命令を受けた時点で紙幣の分離を開始するものとし、その前にシャッタ150を開けることもできる。
【実施例3】
【0029】
次に、更なる他の実施例について説明する。実施例1及び2では、シャッタ150は閉状態を基本とし、必要に応じて開ける。それに対し、本実施例では、シャッタ150は開状態を基本とする点が異なる。本実施例では、紙幣搬送中及び待機中はシャッタ150を開状態とし、出金取引では紙幣の分離開始直前にシャッタ150を閉める。実施例3のハードウェアの構成は、実施例1と同じとする。実施例3における出金取引の制御(第3の制御)フローを
図10に示す。以降は、
図10のフローを順に見ていくことにより、紙幣の分離開始直前にシャッタ150を閉める動作とその効果について説明する。
【0030】
紙幣取扱装置100が待機状態(S1301)になると、主制御部301が出金ボタン115の押下を監視する(S1302)。顧客による出金ボタン115の押下を契機に、主制御部301がシャッタ150及び駆動モータ群189を制御し、シャッタ150を閉め(S1303)、紙幣収納部200から紙幣の分離及び搬送を開始(S1304)する。主制御部301は、紙幣の搬送中は、シャッタ150は閉状態を保持する。紙幣搬送終了(S1305;Yes)後は、主制御部301は、シャッタ150を開け(S1306)、出金部140から紙幣を取り出せる状態にする。その後、主制御部301は、取引を終了(S1308)する。
【0031】
以上の動作により、出金取引中は、顧客操作による出金部140からの紙幣の取り出しを制限できる。また、入金取引では、シャッタ150が常に開状態であるため、リジェクト紙幣が出金部140に搬送された時点でリジェクト紙幣を取り出し、入金部120に再投入できる。
【0032】
上記各実施例では、紙幣を投入する入金部と、紙幣を取り出す出金部と、を有し、かつそれらが互いに独立し、リジェクト紙幣を出金部に搬送する紙幣取扱装置において、出金部に対する顧客操作を許可あるいは制限する手段として、出金部に開閉するシャッタを設けて上述したような制御を実行している。したがって、紙幣搬送中及び待機中は出金部に搭載したシャッタを閉状態とすることで、取引途中における出金部への操作を制限でき、出金取引中に紙幣を取り出されることがなくなる。さらに、入金取引では、リジェクトが発生したタイミングでシャッタを開ける制御にしたので、入金取引においてリジェクト紙幣の取り出し及び再投入を即時行える利便性と、シャッタ搭載による出金部への操作の制限を両立できる。このように、入金リジェクト紙幣を即時再投入可能という従来の利便性はそのままに、出金取引中における紙幣の取り出しを制限でき、顧客操作型の運用が可能となる。すなわち、大量入金可能、入金リジェクト紙幣を即時再投入可能といった入出金取引における従来の利便性を保持しつつ、出金取引中の紙幣の取り出しを制限することができ、銀行の窓口業務用としても、ATMのように顧客が直接操作する形でも使用可能な紙幣取扱装置を提供することができる。
【0033】
以上、図面を用いて詳細に説明したが、上述の種々の例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。例えば、上記紙幣取扱装置100では、
図8に示した入金取引における第1の制御または
図9に示した入金取引における第2の制御のいずれかを実行する前提で説明したが、これらの制御を状況に応じて選択可能な構成としてもよい。
【0034】
具体的には、主制御部301は、操作パネル118から、
図8に示す第1の制御または
図9に示す第2の制御を実行するための選択を受け付け、当該選択に応じていずれかの制御を実行してもよい。このような構成とすることにより、例えば、入金紙幣の汚損や破損がある場合にはリジェクト紙幣が生じる可能性が高いため、上記シャッタ150の開動作で異常を発生させないように、窓口係員は
図9の制御を選択して処理を実行し、また、入金紙幣が新札に近い状態である場合にはリジェクト紙幣が生じる可能性が低いため、窓口係員は
図8の制御を選択して処理を実行する等、入金紙幣の状態に応じて相応しい処理を切り替えて選択することができる。
【符号の説明】
【0035】
100……紙幣取扱装置
110……金庫
112……筐体部
112h…貫通孔
113……金庫扉
114……入金ボタン
115……出金ボタン
116……入出金機構部
118……操作パネル
120……入金部
140……出金部
150……シャッタ
150a…シャッタ閉方向
150b…シャッタ開方向
300……制御部
301……主制御部
302……メモリ
303……上位通信部
B…………紙幣
M…………窓口係員
K…………顧客
D…………顧客応対テーブル
P…………操作端末