(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】物体検知システム
(51)【国際特許分類】
B61L 23/00 20060101AFI20220831BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20220831BHJP
B61K 9/08 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B61L23/00 A
B60L3/00 Q
B61K9/08
(21)【出願番号】P 2018076900
(22)【出願日】2018-04-12
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 章紘
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇人
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 誉之
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-505397(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0093685(US,A1)
【文献】特開2006-275770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/00
B60L 3/00
B61K 9/08
B61L 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
専用路を走行する車両の通過空間内の物体を検知するシステムであって、
前記車両に配置された車上センサでは物体を検知できない死角空間
内の物体を検知する地上に配置された1以上の第1の地上センサと、前記死角空間に続く死角直後空間内の物体を
検知する地上に配置された
1以上の第2の地上センサ
とを備え、
前記1以上の第1の地上センサの検知範囲は前記死角空間をカバーし、前記1以上の第2の地上センサの検知範囲は前記死角直後空間をカバーし、
前記1以上の第1の地上センサの各々は、検知方向が前記専用路に交差する方向となるように配置されており、前記1以上の第2の地上センサの各々は、検知方向が前記専用路に沿った方向となるように配置されている
物体検知システム。
【請求項2】
前記専用路は軌道であり、前記車両は鉄道車両である
請求項1に記載の物体検知システム。
【請求項3】
前記
1以上の第2の地上センサの
各々の検知範囲の角度は、前記
1以上の第1の地上センサの
各々の検知範囲の角度より狭い
請求項
1又は2に記載の物体検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両が通過する線路における障害物等の物体を検知するものとして、線路に沿ってセンサを設置するものが知られている。例えば、誤検知を低減するために、列車の位置情報等を利用するものや(特許文献1参照)、センサの故障を検知するもの(特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-193669号公報
【文献】特開2016-43903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に開示の技術では、走行する全区間に亘ってセンサを設置する必要があるため、センサの数が膨大になる。そのため、設置や保守のコストが嵩む。
【0005】
上記の背景に鑑み、本発明は、設置や保守のコストを抑えつつ、障害物等の物体を的確に検知することができる物体検知システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、専用路を走行する車両の通過空間内の物体を検知するシステムであって、前記車両に配置された車上センサでは物体を検知できない死角空間内の物体を検知する地上に配置された1以上の第1の地上センサと、前記死角空間に続く死角直後空間内の物体を検知する地上に配置された1以上の第2の地上センサとを備え、前記1以上の第1の地上センサの検知範囲は前記死角空間をカバーし、前記1以上の第2の地上センサの検知範囲は前記死角直後空間をカバーし、前記1以上の第1の地上センサの各々は、検知方向が前記専用路に交差する方向となるように配置されており、前記1以上の第2の地上センサの各々は、検知方向が前記専用路に沿った方向となるように配置されている物体検知システムを第1の態様として提供する。
【0007】
第1の態様の物体検知システムによれば、第2の地上センサを検知方向が軌道に交差する方向となるように配置する場合と比べて、第2の地上センサの数を低減させることができる。
【0008】
第1の態様の物体検知システムにおいて、前記専用路は軌道であり、前記車両は鉄道車両である、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0009】
第2の態様の物体検知システムによれば、死角空間を通過する軌道を走行する鉄道車両の障害物となり得る物体を、少ない数のセンサにより低コストで、的確に検知することができる。
【0014】
第1又は第2の態様の物体検知システムにおいて、前記1以上の第2の地上センサの各々の検知範囲の角度は、前記1以上の第1の地上センサの検知範囲の各々の角度より狭い、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0015】
第3の態様の物体検知システムによれば、死角直後空間内の物体を的確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係る物体検知システムの全体構成を示した図。
【
図2】一実施形態に係る車両側検知装置と地上側検知装置の構成を説明するための図。
【
図3】一実施形態に係る車両側検知装置の構成を示した図である。
【
図4】一実施形態に係る物体検知システムによる物体の検知を説明するための図。
【
図5】一実施形態に係る地上センサの配置を示した図。
【
図6】一実施形態に係る物体検知システムによる処理のフローを示した図。
【
図7】変形例に係る死角空間と死角直後空間を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施形態]
以下に本発明の一実施形態に係る物体検知システム10を説明する。
図1は、物体検知システム10の全体構成を示した図である。なお、ここでの物体は、車や人、落石や動物のようにある程度以上の大きさの、障害物となり得る物体である。
【0018】
図1に示されるように、物体検知システム10は、物体検知管理装置100と、車両側検知装置200と、地上側検知装置300とを備える。物体検知管理装置100は、物体検知システム10の全体の管理を行う。
【0019】
車両側検知装置200は、専用走行路としての線路RLを走行する列車TRに設けられ、障害物を検知する。地上側検知装置300は、線路RLの周辺に設けられ、車両側検知装置200での障害物の検知を補う機能を有する。
【0020】
物体検知管理装置100は、線路RLを走行する各々の列車TRに設けられた車両側検知装置200、及び線路RLの周辺に設けられた各々の地上側検知装置300との間で通信が可能である。したがって、線路RLの全区間において、物体検知システム10の管理が可能である。
【0021】
図2は、車両側検知装置200と地上側検知装置300の構成を説明するための図である。車両側検知装置200は、車上センサ210と、アンテナ220と、車両制御部230とを備える。
【0022】
車上センサ210は、列車TRの進行方向前方に配置されており、物体の有無を検知する。車上センサ210は、走行する列車TRの周辺側、特に前方側についての画像情報を取得可能とするように走行方向先頭側に向けて配置されている。具体的には、ミリ波レーダや、距離画像装置等のレーザを利用するもの、あるいは、撮像素子(カメラ)等で構成される。すなわち、車上センサ210は、画像データを取得することで、物体の有無を検知可能としている。
【0023】
ここで、車上センサ210は、画像データをそのまま検知結果として車両制御部230に送信し、画像の解析については車両制御部230において一括して行うものとしてもよいが、画像の解析処理においてもある程度行った上で検知結果を車両制御部230に送信するものとしてもよい。例えば、画像データ中から物体として検知される領域画像の画像データを車上センサ210において抽出してから、車両制御部230に送信する。車両制御部230は、物体として検知された当該領域画像の画像データからその大きさ等を判断して、検知された物体が障害物であるか否かを判定する。
【0024】
アンテナ220は、物体検知管理装置100に設けられたアンテナ110との間で無線による信号の送受信を行う。特に、ここでは、物体検知管理装置100を介して地上側検知装置300から送信される検知結果を受信する受信部として機能する。
【0025】
車両制御部230は、CPU等の各種演算回路や、データ記憶部等を有して構成されるコンピュータであり、各部と接続されており、物体検知を含めた各種車両制御を行う。車両制御部230は、列車TRを停止させるためのブレーキ装置240や、列車内の乗客等に向けて各種情報を伝達するためのスピーカや表示部等から構成される車内出力部250と接続されている。
【0026】
車両制御部230は、車両側検知装置200を構成するものとして、車上センサ210やアンテナ220を介して取得した情報について、画像処理等の各種必要な処理を施すことで、これらの情報に基づいて障害物の有無についての判断をし、判断結果に基づく動作制御を行う。
【0027】
より具体的には、車上センサ210により取得した画像データに基づく物体の有無の検知結果やアンテナ220により取得した検知結果から、進行方向前方に障害物があると判断されると、車両制御部230は、ブレーキ装置240を動作させて車両を減速させたり停止させたりする。さらに、車両制御部230は、乗客に対して急ブレーキによる停止を行う旨の報知等を行う。すなわち、車両制御部230は、車上センサ210において検知された物体が障害物であるか否かを判定する判定部として機能し、さらに、判定部での判定結果に基づく動作制御を行うものとして機能する。
【0028】
さらに、詳細な図示は省略するが、車両制御部230は、マスコン(主幹制御器)の操作等の各部の動作制御も可能であり、上述のような障害物検知における障害物の有無の判断を含めた外環境の把握をしつつ運転制御を行うことで、列車TRの線路RL上での自動運転を可能としている。なお、ここでの自動運転については、運転士(見張り役)を乗せた状態で行う場合のほか、運転士がいない完全無人の自動運転をも含み得るものとする。
【0029】
次に、地上側検知装置300は、地上センサ310と、アンテナ320と、地上側制御部330を備える。
【0030】
地上センサ310は、線路RLに沿って、列車TRの走行のために必要な位置に配置されて、物体の有無の検知を行う。すなわち、地上センサ310は、車両側検知装置200を構成する車上センサ210では検知ができない範囲について補うべく適所に設けられている。なお、具体的な地上センサ310の設置箇所の例については、後述する。
【0031】
地上センサ310は、車上センサ210と同様に、画像情報を取得可能なセンサであり、具体的には、撮像素子(カメラ)や距離画像装置やミリ波レーダ等で構成されている。すなわち、地上センサ310は、画像データを取得することで、物体の有無を検知可能にしている。
【0032】
アンテナ320は、物体検知管理装置100に設けられたアンテナ110との間で無線による信号の送受信を行う。特に、ここでは、地上センサ310での検知結果を物体検知管理装置100に送信する送信部として機能する。
【0033】
地上側制御部330は、CPU等の各種演算回路や、データ記憶部等を有して構成されるコンピュータであり、各部と接続されることで、各種制御を行う。
【0034】
ここで、地上センサ310や地上側制御部330の構成について、例えば、地上センサ310で取得した画像データをそのまま検知結果として物体検知管理装置100を介して車両側検知装置200に送信し、画像の解析については車両側検知装置200の車両制御部230において一括して行うものとしてもよい。しかしながら、地上センサ310あるいは地上側制御部330で、画像の解析処理においてもある程度行った上で、検知結果を、物体検知管理装置100を介して車両側検知装置200に送信するものとしてもよい。また、例えば、地上センサ310あるいは地上側制御部330で取得される画像データ中から、物体として検知される領域画像の画像データを抽出し、抽出したデータを、物体検知管理装置100を介して車両側検知装置200に送信する。車両側検知装置200の車両制御部230は、物体として検知された当該領域画像の画像データからその大きさ等を判断して、検知された物体が障害物であるか否かを判定する。
【0035】
図3は、車両側検知装置200の構成を示した図である。上述のように、車両側検知装置200は、列車TRに搭載され、障害物の検知に対する種々の処理を行うものである。そして、車両制御部230が、各種動作制御を担っており、障害物検知に関する各種処理についても行っている。これを可能とするための車両制御部230の構成としては、種々の態様が考えられる。
【0036】
図3(A)に示す例では、車両制御部230は、各種制御回路やプログラム等で構成され、車上センサ210やアンテナ220からの情報を取得する主制御部231を有する。
【0037】
主制御部231は、列車TRの位置を検知する位置検知部232として機能するとともに、車上センサ210やアンテナ220から取得した情報についての選択を行う情報選択部233として機能する。位置検知部232は、取得した列車TRの現在位置の情報に基づいて、その位置において列車TRに搭載された車上センサ210によって検知可能な事項と検知不能な事項とについて把握する。情報選択部233は、位置検知部232が把握した事項に基づき、車上センサ210による物体の検知結果の情報とアンテナ220から取得した物体の検知結果の情報とについて取捨選択を行う。すなわち、車上センサ210によって検知可能な事項については、車上センサ210での検知結果を採用する。そして、検知不能な事項、すなわち地上側検知装置300によって補う必要のある事項については、アンテナ220から取得した検知結果を採用することで、外部状況の的確な把握を可能にしている。言い換えると、主制御部231は、情報選択部233として、車両側検知装置200による検知結果の情報と、地上側検知装置300による検知結果の情報とのうち、採用すべき監視結果を選択することで、上述のような動作制御を可能としている。
【0038】
なお、位置検知部232における列車TRの位置検知すなわち位置に関する情報取得の方法については、例えば、物体検知管理装置100との通信を利用する。他の方法として、地上に設けた地上子と車上に設けた車上子との結合(図示略)、あるいは走行距離からの算出、各種センサを設けて線路RLの勾配や傾斜角度の変化等外部環境に関する変化を随時読み取る等、種々の方法が考えられる。
【0039】
また、例えば、
図3(B)に示す例では、主制御部231は、上述と同様の位置検知部232として機能することに加え、
図3(A)に示した情報選択部233に代えて、検知先を切り替える監視切替部234として機能する。
【0040】
図3(B)に例示する構成の場合では、車両制御部230における検知についての情報の取得元である車上センサ210とアンテナ220とを切り替えるための切替スイッチ部SWを、主制御部231の前段に設けている。位置検知部232は、取得した位置情報に基づいて、その位置において列車TRに搭載された車上センサ210によって検知可能な事項と検知不能な事項とについて把握する。監視切替部234は、位置検知部232が把握した事項に基づき、車両側検知装置200による検知と、地上側検知装置300による検知とを、線路RL上における現在位置の情報に応じて、適宜切り替える。この場合も、車上センサ210によって検知可能な事項については、車上センサ210での検知結果を採用する。そして、検知不能な事項、すなわち地上側検知装置300によって補う必要のある事項については、アンテナ220から取得した検知結果を採用することで、外部状況の的確な把握が可能となる。
【0041】
なお、
図3(A)に示す例及び
図3(B)に示す例のいずれにおいても、車両制御部230は、車両側検知装置200による検知と地上側検知装置300による検知とに関する各種処理を行う検知処理部として機能していることになる。
【0042】
図4は、物体検知システム10による物体の検知を説明するための図である。
図4は、線路RLが曲線状になっている区間についての一例を示す平面図である。
図4に破線で示される建築限界内PPは、線路周辺の構造物を設置してはならない建築限界内の範囲を示している。物体検知システム10での障害物の物体の検知は、建築限界内PPにおいて可能であればよい。
【0043】
図4に示されるように、線路RLが曲線状の区間においては、建築限界内PPの外側に樹木・看板等が存在している。検知範囲MRは、車上センサ210による物体の検知が可能な範囲である。曲線状の区間の手前を走行する列車TRの車上センサ210は、前方の曲線状の区間においては、樹木・看板等により検知範囲MRの一部が遮られる。
図4に示されるように、検知範囲MR内には、樹木・看板等で遮られていない検知可能範囲MR1と、樹木・看板等で遮られている検知不能範囲MR2とが存在している。したがって、検知不能範囲MR2に障害物があったとしても、車上センサ210で検知することはできない。
【0044】
図4において、列車TRが曲線状の区間を通過すると、線路RLは直線状となっており、検知範囲MRを遮るものがなくなる。ここで、曲線状の区間を通過した直後に、列車TRの車上センサ210が前方にある障害物OBを検知したとする。このとき、車上センサ210による検知結果に基づいて、車両側検知装置200では、車両制御部230の動作によりブレーキ装置240が作動する。そして、列車TRは減速して停止する。
図4において、検知可能距離L1は、車上センサ210が障害物OBを検知した時点(ブレーキ装置240が作動する直前)における検知範囲MRのうち前方方向について検知可能な距離である。また、停止距離L2は、ブレーキ装置240が作動してから列車TRが停止するまでに走行する距離である。
【0045】
図4に示されるように、停止距離L2は検知可能距離L1より短い。したがって、通常の直線状の区間における走行では、検知範囲MR内に障害物が検知された場合、直後にブレーキ装置240を作動させれば障害物の前で列車TRを停止させることができる。
【0046】
しかしながら、曲線状の区間を通過した直後の直線状の区間においては、車上センサ210によって、停止距離L2より近い距離内に、直前まで検知不能だった障害物OBが突然検知された場合、列車TRは障害物OBの手前で停止することができず、障害物OBと衝突してしまう。
【0047】
以上のように、線路RLが曲線状の区間においては、以下の2つの問題が生じる。第1に、列車が曲線状の区間を通過する前には、曲線状の区間において障害物が検知不能となる範囲が存在する。第2に、列車が曲線状の区間を通過した直後には、停止距離L2より近い距離内に障害物が突然検知されても、障害物の手前で停止することができない。
【0048】
これらの問題を解決するため、本実施形態では、線路RLが曲線状の区間及びその区間に続く停止距離L2を含む区間においては、障害物を検知可能なセンサを地上に設置する。
【0049】
図5は、地上センサ310の配置を示した図である。
図5において、死角空間DSは、列車TRの車上センサ210の検知範囲MR内に検知不能範囲が発生する可能性がある空間(この例では、線路RLが曲線状の区間)である。死角空間DS内の物体を検知するために、
図5の例では、5個の地上センサ、すなわち地上センサ310-1、310-2、・・・、310-5が設置されている。
【0050】
図5において、死角直後空間DNは、列車TRが死角空間DSを通過した直後に通過する停止距離L2を含む空間である。死角直後空間DN内の物体を検知するために、
図5の例では、2個の地上センサ310-6、310-7が設置されている。
【0051】
地上センサ310-1、310-2、・・・、310-5は、線路RLに沿って、線路RLの両側に設けられている。地上センサ310-1、310-3、310-5が線路RLの一方側(列車TRの進行方向右側)に設けられており、地上センサ310-2、310-4が線路RLの他方側(列車TRの進行方向左側)に設けられている。各々の地上センサ310は、検知範囲が列車TRの走行方向と交差する方向(軌道と交差する方向)となるように設けられている。そして、死角空間DS内の建築限界内PP全体を地上センサ310-1、310-2、・・・、310-5の検知範囲でカバーしている。
【0052】
地上センサ310-6と310-7は、線路RLに対して互いに異なる側(地上センサ310-6が列車TRの進行方向左側、地上センサ310-7が列車TRの進行方向右側)に設けられている。そして、地上センサ310-6は死角空間DS側に設けられており、地上センサ310-7は死角空間DSから遠い側に設けられている。地上センサ310-6、310-7は、検知範囲が列車TRの走行方向に沿った方向(軌道に沿った方向)となるように設けられている。そして、死角直後空間DN内の建築限界内PP全体を地上センサ310-6、310-7の検知範囲でカバーしている。
【0053】
図5に示されるように、地上センサ310-6、310-7の検知範囲は、地上センサ310-1、310-2、・・・、310-5の検知範囲と比べて距離が長い。遠くまで精度良く検知可能とするため、地上センサ310-6、310-7の検知範囲の角度(画角)は地上センサ310-1、310-2、・・・、310-5より小さくなっている。
【0054】
図6は、物体検知システム10における処理のフローを示した図である。
【0055】
地上側検知装置300の地上側制御部330は、まず、複数の地上センサ310の各々から画像データを取得し(ステップS611)、それらの画像データに基づいて、物体の検知を行う(ステップS612)。そして、検知された物体が障害物であるか否かの検知結果情報を、アンテナ320を介して物体検知管理装置100に送信する(ステップS613)。
【0056】
物体検知管理装置100は、アンテナ110での受信待ちの状態となっている。地上側検知装置300から送信される検知結果情報を受信すると(ステップS621)、その情報から、障害物があるか否かを確認する(ステップS622)。障害物がある場合はその検知結果情報を、アンテナ110を介して車両側検知装置200に送信する(ステップS623)。
【0057】
車両側検知装置200の車両制御部230は、まず、車上センサ210からの画像データを取得し(ステップS631)、その画像データに基づいて物体の検知を行う(ステップS632)。そして、検知された物体が障害物であるか否かを判定する(ステップS633)。障害物であると判定すると、ブレーキ装置240を作動させ、列車TRを停止させる制御を行う(ステップS636)。
【0058】
障害物ではないと判定された場合は、アンテナ220を介しての物体検知システム10からの検知結果情報の受信の有無を確認する(ステップS634)。情報を受信していた場合、列車TRの現在位置から障害物の位置までの距離が所定距離より近いか判定する(ステップS635)。列車TRの現在位置から障害物の位置までの距離が所定距離より近い場合、ブレーキ装置240を作動させ、列車TRを停止させる制御を行う(ステップS636)。
【0059】
列車TRを停止させない場合は、ステップS631からの処理を繰り返す。また、列車TRを停止させた場合は、乗務員が障害物の除去や安全確認を行った後(ステップS637)、ステップS631からの処理を再開する。
【0060】
以上のように、列車TRに設けられた車上センサ210を用いて軌道上の障害物を検知することにより、地上に設けられる地上センサ310の数を大幅に低減することができる。また、軌道上の車上センサ210により検知不能な死角空間DSには、地上センサ310を設けることにより、車上センサ210での検知を補うことができる。さらに、死角空間DSに続く列車TRの停止距離までの間の死角直後空間DNにも地上センサ310を設けることにより、車上センサ210での検知を補うことができる。
【0061】
[変形例]
上述した実施形態は様々に変形することができる。以下にそれらの変形の例を示す。なお、上述した実施形態及び以下に示す変形例は適宜組み合わされてもよい。
【0062】
(1)上述の実施形態においては、死角空間DSは、線路RLが曲線状の区間であるものとしたが、死角空間DSとなる条件は線路RLが曲線状であることに限られない。例えば、線路RLの軌道に高低差がある場合、太陽光の反射等の環境により車上センサ210の検知結果の信頼性が確保されない場合等も死角空間DSとなり得る。
【0063】
図7は、変形例に係る死角空間DS、死角直後空間DNを示した図である。
図7において、線路RLは、地点Gから地点Hに至る区間において起伏のある地表面に敷設されている。そのため、地点Gから地点Hまでの区間を走行中の列車TRの車上センサ210は、地点Hに近づいても、地点Hより先の区間は死角となり物体の検知が不能な範囲となる。死角空間DSは、列車TRが地点Hに達するまでの間、車上センサ210が物体の検知が不能となる空間である。死角空間DSには、上述の実施形態と同様に、地上センサ310-1、310-2、・・・、310-5が設けられている。
【0064】
列車TRが死角空間DSを通過すると、車上センサ210の前方は物体の検知が可能となる。しかしながら、停止距離L2までの空間は、障害物が検知できても障害物の手前で列車TRを停止させることが不可能である。したがって、この区間は死角直後空間DNであり、上述の実施形態と同様に、地上センサ310-6、310-7が設けられている。
【0065】
(2)上述の実施形態においては、死角直後空間DNに地上センサ310-6、310-7の検知方向を軌道に沿った方向としたが、死角空間DSと同様に、軌道に交差する方向としてもよい。
【0066】
(3)上述の実施形態においては、地上側検知装置300からの検知結果の送信は、物体検知管理装置100を介して、車両側検知装置200に送信されるものとしたが、地上側検知装置300から直接車両側検知装置200に送信されるものとしてもよい。
【0067】
(4)上述の実施形態においては、車両側検知装置200、地上側検知装置300の各々で障害物の有無の判断をするものとしたが、これに限定されない。例えば、地上側検知装置300では障害物の有無の判断をせず、取得した画像データを、物体検知管理装置100を介して車両側検知装置200に送信し、車両側検知装置200が画像データに基づいて障害物の有無の判断をすることとしてもよい。
【0068】
また、物体検知管理装置100が地上側検知装置300からの画像データに基づいて障害物の有無を判断し、検知情報を車両側検知装置200に送信することとしてもよい。
【0069】
(5)上述の実施形態においては、物体検知システムは、線路を走行する列車に適用されるものとしたが、専用走行路としての軌道(新設軌道、併用軌道)を走行する車両である路面電車に適用することとしてもよい。また、専用走行路としての専用道路を走行する車両であるバスに適用することとしてもよい。
【0070】
(6)上述の実施形態においては、死角空間DSをカバーする地上センサ310の数は5個、死角直後空間DNをカバーする地上センサ310の数は2個であるものとしたが、これらの数はあくまで例示である。例えば、列車TRの走行方向における死角直後空間DNの距離が1つの地上センサ310の検知可能な距離を超える場合、死角直後空間DNを2個1組の地上センサ310ではカバーしきれなくなる。この場合、2組以上の地上センサで死角直後空間DNをカバーすればよい。
【符号の説明】
【0071】
10…物体検知システム、100…物体検知管理装置、110…アンテナ、200…車両側検知装置、210…車上センサ、220…アンテナ、230…車両制御部、231…主制御部、232…位置検知部、233…情報選択部、234…監視切替部、240…ブレーキ装置、250…車内出力部、300…地上側検知装置、310…地上センサ、320…アンテナ、330…地上側制御部。