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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】装置の筐体
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/03 20060101AFI20220831BHJP
   H04M 1/02 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
H05K5/03 D
H04M1/02 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018083711
(22)【出願日】2018-04-25
(65)【公開番号】P2019192770
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100183760
【弁理士】
【氏名又は名称】山鹿 宗貴
(72)【発明者】
【氏名】森田 晋史
(72)【発明者】
【氏名】利守 紗千子
【審査官】赤穂 州一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-130382(JP,A)
【文献】特開2011-097414(JP,A)
【文献】特開2006-106632(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102316185(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/03
H04M 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイド孔部及び前記ガイド孔部とつながる嵌合孔部を含む孔部が設けられた第1ケース部材と、
前記孔部に対応する位置に突起部が設けられ、前記突起部が前記嵌合孔部に嵌合されることにより、前記第1ケース部材に対して固定される第2ケース部材と、
を備え、
前記ガイド孔部は、
第1ガイド孔部及び前記第1ガイド孔部とつながる第2ガイド孔部を含み、
前記第1ガイド孔部は、
前記第2ケース部材を前記第1ケース部材に対して固定させる際、前記第2ケース部材が前記第1ケース部材に対して垂直方向にガイドされた状態で近付くことができるように、前記垂直方向に延びた孔形状となっており、前記第1ガイド孔部の始端から前記第1ガイド孔部内に入れられた前記突起部の動きを前記垂直方向にガイドし、
前記第2ガイド孔部は、
前記第2ケース部材が前記第1ケース部材に対して斜め方向にガイドされた状態で近付くことができるように、前記斜め方向に延びた孔形状となっており、前記第1ガイド孔部の終端を通過して前記第2ガイド孔部の始端から前記第2ガイド孔部内に入れられた前記突起部の動きを前記斜め方向にガイドし、
前記突起部は、
前記突起部の先端が先細り状のテーパ部となっており、
前記第2ガイド孔部内でのガイド時に、前記テーパ部のテーパ面が、前記第2ガイド孔部が延在する前記斜め方向と平行になるように形成され、
前記嵌合孔部には、
前記第2ガイド孔部に沿って前記斜め方向に動いて前記第2ガイド孔部を通過し前記嵌合孔部内に達した前記突起部が嵌合し、
前記突起部が前記嵌合孔部に嵌合することにより、前記第2ケース部材が前記第1ケース部材に対して固定される、
装置の筐体。
【請求項2】
前記嵌合孔部は、
前記斜め方向とは異なる方向に延びた孔形状となっており、
前記第2ガイド孔部の終端を通過して前記嵌合孔部内に達した前記突起部が嵌合する、
請求項1に記載の装置の筐体。
【請求項3】
前記斜め方向は、第1方向と角度をなす方向であり、
前記孔部は、前記第1ケース部材に複数設けられ、
複数の前記孔部は、前記第1方向に間隔を空けて並ぶように配置され、
前記突起部は、前記第2ケース部材に複数設けられ、
複数の前記突起部の各々は、前記複数の孔部の各々に対応する位置に配置され、
各前記突起部が対となる前記孔部の嵌合孔部に嵌合することにより、前記第2ケース部材が前記第1ケース部材に対して固定される、
請求項1又は請求項2に記載の装置の筐体。
【請求項4】
前記第1ケース部材は、
ケース部本体と、
前記ケース部本体内に設置された被設置部材と、
を有し、
前記孔部は、
前記被設置部材に形成される、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の装置の筐体。
【請求項5】
前記ケース部本体は、
上面が開口した略扁平な矩形状部材であり、
前記被設置部材は、
前記ケース部本体の内壁面に沿って形成された枠状部材であり、前記第1方向に延びるケース部本体の内壁面に沿った箇所に、前記複数の孔部が前記間隔を空けて並ぶように設けられ、
前記第2ケース部材は、
前記ケース部本体の上面と対向する下面が開口した略扁平な矩形状のカバー部材であり、前記第1方向に延びる前記第2ケース部材の内壁面上の、前記複数の孔部の各々に対応する位置に、前記複数の突起部の各々が設けられ、前記各突起部が対となる前記孔部の嵌合孔部に嵌合して前記第2ケース部材が前記第1ケース部材に対して固定されたとき、前記ケース部本体の上面の開口を塞ぐ、
請求項3を引用する請求項4に記載の装置の筐体。
【請求項6】
前記第1ケース部材、前記第2ケース部材は、それぞれ被嵌合部、嵌合部を有し、
前記突起部が前記嵌合孔部に嵌合する際、前記嵌合部が前記被嵌合部に嵌合して、前記突起部と前記嵌合孔部との嵌合による前記第1ケース部材と前記第2ケース部材との固定状態を補強する、
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の装置の筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置の筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品等の内蔵物を収容する装置の筐体が知られている。例えば特許文献1に、カバー部材をケース部本体にネジ止めしてケース部本体の開口部を塞ぐことにより、ケース部本体とカバー部材とによって規定されるスペース内に内蔵物を収容する筐体が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の筐体には、ケース部本体とカバー部材とを締結するため、カバー部材、ケース部本体のそれぞれに、締結用ネジを通すネジ孔部が複数形成されている。これらのネジ孔部は、内蔵物を収容するスペースの周囲に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-60307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
締結用ネジが無くともカバー部材をケース部本体に固定することが可能な構成を採用すると、内蔵物を収容するスペースの周囲にネジ孔部を形成する必要が無くなることから、筐体の外形寸法を小さくすることが可能となる。このような構成を持つ筐体の具体的一例を図5(a)に斜視図で示す。
【0006】
図5(a)に例示される筐体2Aは、上面が開口した略扁平な矩形状のケース部本体10Aと、ケース部本体10Aの上面と対向する下面が開口した略扁平な矩形状のカバー部材20Aを備える。ケース部本体10Aには、互いに平行な一対の外壁面11A、12Aが形成されている。各外壁面11A、12Aには、L字状の溝部100Aが間隔を空けて複数形成されている。カバー部材20Aには、対向する一対の内壁面21A、22Aが形成されている。各内壁面21A、22Aには、各溝部100Aに対応する位置に突起部200Aが形成されている。
【0007】
カバー部材20Aの内周面全体は、ケース部本体10Aの外周面全体よりも若干大きく形成されている。そのため、ケース部本体10Aとカバー部材20Aとを組み立てると(カバー部材20Aをケース部本体10Aに嵌めると)、カバー部材20Aの内周面全体がケース部本体10Aの外周面全体をほぼ隙間無く取り囲み、ケース部本体10Aとカバー部材20Aとによって規定されるスペース内に内蔵物が収容される。
【0008】
カバー部材20Aをケース部本体10Aに嵌める際、作業者は、各溝部100Aに、対となる突起部200Aを嵌合させる。これにより、カバー部材20Aがケース部本体10Aに対して固定される。図5(b)に、突起部200Aが対となる溝部100Aに嵌合されるまでの、溝部100Aに対する突起部200Aの動きを5ステップに分けて示す。図5(b)中、矢印は、ケース部本体10Aとカバー部材20Aとの組立作業時に作業者が荷重をかける方向を示す。
【0009】
作業者は、ケース部本体10Aの各外壁面11A、12Aに形成された各溝部100Aの始端から、対となる突起部200Aが溝部100A内に入るように、ケース部本体10Aに対してカバー部材20Aを位置合わせし、位置合わせされたカバー部材20Aを、各突起部200Aが対となる溝部100Aの下端110Aに当て付くまで、下方に(ケース部本体10A側に)押し込む(図5中、ステップA~B)。
【0010】
作業者は、各突起部200Aが各下端110Aに当て付くまでカバー部材20Aを押し込むと、次いで、ケース部本体10Aに対してカバー部材20Aを横方向にスライドさせる。これにより、突起部200Aが溝部100A内を横方向にスライドし、スライド先の位置で溝部100Aに嵌合する(図5中、ステップC~E)。各突起部200Aが各溝部110Aに嵌合することで、カバー部材20Aがケース部本体10Aに対して固定される。
【0011】
ケース部本体10A及びカバー部材20Aは樹脂成形品である。そのため、ケース部本体10A及びカバー部材20Aは、残留応力や冷却時(硬化時)に生じる体積収縮等の影響により、理想的な形状(設計値)に対して反りや曲り、ねじれ等の歪みを少なからず持っている。そのため、複数対ある溝部100Aと突起部200Aのうち、例えば1対の溝部100Aと突起部200Aとが嵌合されたとしても、残りの対において、突起部200Aが歪み分だけ溝部100Aから浮き上がって位置し、溝部100Aに嵌合されないことがある。
【0012】
全ての対の溝部100Aと突起部200Aとを嵌合させるため、作業者は、カバー部材20Aの全体を手で(又は治具を用いて)上方から押さえ付けて(ケース部本体10A側に荷重をかけて)、カバー部材20Aの歪みをケース部本体10Aの形状に合わせて矯正させながら(言い換えると、全ての対で突起部200Aが溝部100Aに対して浮き上がらないようにカバー部材20Aを変形させながら)、ケース部本体10Aに対してカバー部材20Aを横方向にスライドさせる必要がある(図5中、ステップC、Dの矢印参照)。すなわち、作業者は、カバー部材20Aの全体をケース部本体10A側に押え付けつつカバー部材20Aを横方向にスライドさせるという難しい作業を強いられる。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、第1ケース部材(一例としてケース部本体)に対して第2ケース部材(一例としてカバー部材)を固定する構成の筐体の組立性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施形態に係る装置の筐体は、ガイド孔部及びガイド孔部とつながる嵌合孔部を含む孔部が設けられた第1ケース部材と、孔部に対応する位置に突起部が設けられ、突起部が嵌合孔部に嵌合されることにより、第1ケース部材に対して固定される第2ケース部材とを備える。ガイド孔部は、第1ガイド孔部及び第1ガイド孔部とつながる第2ガイド孔部を含む。第1ガイド孔部は、第2ケース部材を第1ケース部材に対して固定させる際、第2ケース部材が第1ケース部材に対して垂直方向にガイドされた状態で近付くことができるように、垂直方向に延びた孔形状となっており、第1ガイド孔部の始端から第1ガイド孔部内に入れられた突起部の動きを垂直方向にガイドする。第2ガイド孔部は、第2ケース部材が第1ケース部材に対して斜め方向にガイドされた状態で近付くことができるように、上記斜め方向に延びた孔形状となっており、第1ガイド孔部の終端を通過して第2ガイド孔部の始端から第2ガイド孔部内に入れられた突起部の動きを上記斜め方向にガイドする。突起部は、突起部の先端が先細り状のテーパ部となっており、第2ガイド孔部内でのガイド時に、テーパ部のテーパ面が、第2ガイド孔部が延在する上記斜め方向と平行になるように形成される。嵌合孔部には、第2ガイド孔部に沿って上記斜め方向に動いて第2ガイド孔部を通過し嵌合孔部内に達した突起部が嵌合する。突起部が嵌合孔部に嵌合することにより、第2ケース部材が第1ケース部材に対して固定される。
【0015】
嵌合孔部は、上記斜め方向とは異なる方向に延びた孔形状となっており、第2ガイド孔部の終端を通過して嵌合孔部内に達した突起部が嵌合する構成としてもよい。
【0016】
上記斜め方向は、例えば第1方向と角度をなす方向である。この場合、孔部は、第1ケース部材に複数設けられ、複数の孔部は、第1方向に間隔を空けて並ぶように配置されてもよい。また、突起部は、第2ケース部材に複数設けられ、複数の突起部の各々は、複数の孔部の各々に対応する位置に配置されてもよい。この場合、各突起部が対となる孔部の嵌合孔部に嵌合することにより、第2ケース部材が第1ケース部材に対して固定される。
【0017】
第1ケース部材は、ケース部本体と、ケース部本体内に設置された被設置部材とを有する構成としてもよい。この場合、孔部は、被設置部材に形成される。
【0018】
ケース部本体は、上面が開口した略扁平な矩形状部材であってもよい。この場合、被設置部材は、ケース部本体の内壁面に沿って形成された枠状部材であり、第1方向に延びるケース部本体の内壁面に沿った箇所に、複数の孔部が間隔を空けて並ぶように設けられる。第2ケース部材は、ケース部本体の上面と対向する下面が開口した略扁平な矩形状のカバー部材であり、第1方向に延びる第2ケース部材の内壁面上の、複数の孔部の各々に対応する位置に、複数の突起部の各々が設けられ、各突起部が対となる孔部の嵌合孔部に嵌合して第2ケース部材が第1ケース部材に対して固定されたとき、ケース部本体の上面の開口を塞ぐ。
【0019】
第1ケース部材、第2ケース部材は、それぞれ被嵌合部、嵌合部を有する構成としてもよい。突起部が嵌合孔部に嵌合する際、嵌合部が被嵌合部に嵌合して、突起部と嵌合孔部との嵌合による第1ケース部材と第2ケース部材との固定状態を補強する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施形態によれば、第1ケース部材に対して第2ケース部材を固定する構成の筐体の組立性が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る装置の全体図(上面図)である。
図2】本発明の一実施形態に係る装置の分解斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る装置を図1のA-A線で切断したときのA-A線断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る装置に備えられる突起部が対となる孔部に嵌合されるまでの、孔部に対する突起部の動きを5ステップに分けて示す図である。
図5】従来構成の装置の斜視図(図5(a))及び従来構成の装置に備えられる突起部が対となる溝部に嵌合されるまでの、溝部に対する突起部の動きを5ステップに分けて示す図(図5(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る装置について図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態に係る装置は、電子部品等の内蔵物を収容する筐体を備えたものであり、例示的には、車載型ディスプレイ装置やカーナビゲーション装置、タブレット端末、PHS(Personal Handy phone System)、スマートフォン、フィーチャフォン、携帯ゲーム等である。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る装置1の全体図(上面図)を示す。図2は、装置1の分解斜視図を示す。図3は、装置1を図1のA-A線で切断したときのA-A線断面図を示す。図1中、紙面と直交する方向をZ方向とし、Z方向と直交しかつ互いに直交する2方向をそれぞれX、Y方向と記す。図1のZ方向で矢じりが示す方向を+Z方向と記し、+Z方向と反対の方向を-Z方向と記す。図1の右方向、左方向をそれぞれ、+X方向、-X方向と記し、図1の上方向、図1の下方向をそれぞれ、+Y方向、-Y方向と記す。図2以降の図面においても、X、Y、Zの各方向を必要に応じて記す。
【0024】
図2に示されるように、装置1は、筐体2を備えている。なお、図2をはじめとする各図(筐体2の内部が見える図)においては、便宜上、電子部品等の内蔵物の図示を省略し、筐体2のみを図示する。
【0025】
筐体2は、第1ケース部材の一例であるケース部材10と、第2ケース部材の一例であるカバー部材20を備えている。ケース部材10は、ケース部本体12及び枠状部材(被設置部材)14を備えている。
【0026】
ケース部本体12は、樹脂成形品であり、上面が開口した(図3参照)略扁平な矩形状部材である。便宜上、ケース部本体12の上面の開口に符号120を付す。枠状部材14は、金属製部品であり、矩形状部材であるケース部本体12の内壁面全周に沿った矩形枠形状を有している。
【0027】
図3に示されるように、ケース部本体12には支持部122及び爪部124が形成されている。図3では、支持部122は、筐体2の端部2aにだけ図示されているが、端部2aだけでなく筐体2の端部2b(図面上不可視の位置)にも形成されている。また、図3では、爪部124は、筐体2の各端部2a、2bに1つずつ図示されているが、各端部2a、2bにてY方向に間隔を空けて複数形成されている。
【0028】
筐体2の各端部2a、2bに形成された一対の支持部122は、枠状部材14の各被支持領域140(図2参照)と面接触し、枠状部材14全体を下から支えている。
【0029】
枠状部材14には、ケース部本体12の各爪部124に対応する位置に被支持片142が形成されている。各爪部124は、対となる被支持片142の上端に係ることにより、枠状部材14全体を上から押さえている。
【0030】
枠状部材14は、支持部122によって下から支えられると共に爪部124によって上から押さえられることにより(言い換えると、ケース部本体12内で挟持されることにより)、ケース部本体12に対して固定されている。
【0031】
図2に示されるように、枠状部材14は、X方向(第1方向の一例)に延びるケース部本体12の内壁面に沿った箇所(一対の辺部144)に、複数の孔部146が間隔を空けて並ぶように形成されている。一例として、孔部146は、各辺部144に4つずつ形成されている。
【0032】
カバー部材20は、樹脂成形品であり、ケース部本体12の上面と対向する下面が開口した略扁平な矩形状部材である。カバー部材20は、X方向に延びる互いに平行な一対の内壁面202、204を有している。各内壁面202、204には、枠状部材14に形成された複数の孔部146の各々に対応する位置に、突起部206が形成されている。本実施形態では、各孔部146と対となる突起部206が、各内壁面202、204上に4つずつ形成されている。
【0033】
図3に示されるように、各突起部206が対となる孔部146に嵌合することにより、カバー部材20がケース部本体12に対して固定され、ケース部本体12の上面の開口120が塞がれる。これにより、不図示の内蔵物がケース部本体12とカバー部材20とによって規定されるスペース内に収容される。
【0034】
図4に、突起部206が対となる孔部146に嵌合されるまでの、孔部146に対する突起部206の動きを5ステップに分けて示す。図4中、矢印は、作業者がケース部本体12にカバー部材20を組み付ける際、作業者がカバー部材20にかける荷重の方向を示す。
【0035】
図4に示されるように、孔部146は、第1ガイド孔部146a、第1ガイド孔部146aとつながる第2ガイド孔部146b(ガイド孔部の一例)及び第2ガイド孔部146bとつながる嵌合孔部146cからなる。すなわち、孔部146は、第1ガイド孔部146a、第2ガイド孔部146b及び嵌合孔部146cから構成された単一の孔部である。図4では、第1ガイド孔部146a、第2ガイド孔部146b及び嵌合孔部146cのそれぞれを区別して示す便宜上、各孔部の境界に一点鎖線を付す。
【0036】
作業者は、枠状部材14の各辺部144に形成された第1ガイド孔部146aの始端から、対となる突起部206が第1ガイド孔部146a内に入るように、ケース部本体12に対してカバー部材20を位置合わせする(図4中、ステップ1)。
【0037】
作業者は、ケース部本体12に対して位置合わせされたカバー部材20を下方に押し込む(-Z方向であって、ケース部本体12側に荷重をかける。)。カバー部材20が下方に押し込まれると、カバー部材20に形成された各突起部206は、対となる第1ガイド孔部146aの終端を通過して第2ガイド孔部146bの始端から第2ガイド孔部146b内に入る(図4中、ステップ2~3)。
【0038】
図4に示されるように、第2ガイド孔部146bは、XZ平面内において+X方向と角度θをなす斜め方向D(図4のステップ1の二点鎖線参照)に延びた孔形状となっている。第2ガイド孔部146bは、第2ガイド孔部146b内に入れられた突起部206の動きを斜め方向Dにガイドする。突起部206の動きが斜め方向Dにガイドされるため、作業者によってカバー部材20が下方に押し込まれると、カバー部材20がケース部本体12に対して斜め方向Dにスライドしながらケース部本体12に近付く(言い換えると、-Z方向に移動すると同時に+X方向に移動する)(図4中、ステップ3~4)。
【0039】
作業者による-Z方向の荷重だけでカバー部材20をケース部本体12に対して斜め方向Dに(言い換えると、作業者による-Z方向の荷重だけで突起部206を第2ガイド孔部146bに沿って)スライドさせるためには、突起部206と第2ガイド孔部146b(の縁部146bb)間に生じる摩擦力が適正な値に収まるように、筐体2を設計する必要がある。
【0040】
具体的には、作業者によってカバー部材20に-Z方向の荷重(例えば装置1の製造業者が標準的な値として定めたもの)がかけられると、突起部206から第2ガイド孔部146bの縁部146bbに対して荷重(便宜上符合Fを付す。)がかかり、縁部146bbからの垂直抗力(=Fcosθ)が突起部206にかかる(図4中、ステップ3参照)。突起部206と縁部146bbとの摩擦係数をμとすると、突起部206と縁部146bb間には、摩擦力F’(=μFcosθ)が生じる。また、作業者によってカバー部材20に-Z方向の荷重がかけられたとき、突起部206には、縁部146bbと平行な力の成分F”(=Fsinθ)が加わる。摩擦力F’が成分F”よりも小さくなるように摩擦係数μ(言い換えると、突起部206及び第2ガイド孔部146bの材質等)及び第2ガイド孔部146bの向き(角度θ)を設定することにより、作業者による-Z方向の荷重だけでカバー部材20をケース部本体12に対して斜め方向Dにスライドさせることができるようになる。
【0041】
突起部206は、第2ガイド孔部146b内でスムーズに動きやすくなるように、先端206aが後端206bよりも大きめに面取りされた形状(やや先細りの形状)となっている。先端206aの面206aaは、第2ガイド孔部146b内でのスライド時に第2ガイド孔部146bの延在方向(すなわち、斜め方向D)と平行になるよう、先端206aを面取りすることで得られた面となっている。
【0042】
説明の便宜上、後端206bの丸面取り部の頂点206bbと面206aa間の距離に符号D1を付し、第2ガイド孔部146bの幅に符号D2を付す(図4中、ステップ4参照)。突起部206が第2ガイド孔部146b内をスライドする際における、斜め方向D以外の方向への突起部206のガタ付きを抑えるため、距離D1と幅D2との差はできる限り少ない方が好ましい。一方、距離D1と幅D2との差が少なすぎると、突起部206が第2ガイド孔部146b内で円滑にスライドし難くなる。これらの点及び公差を考慮し、幅D2は、距離D1より僅かに大きい値に設定されている。
【0043】
作業者によってカバー部材20が下方に押し込まれて突起部206が+X方向に移動すると、突起部206の上端206cが嵌合孔部146cの縁部146ccに係り、突起部206が縁部146ccによって上方から押さえられた状態となる(図4中、ステップ4)。カバー部材20に形成された全ての突起部206が対となる嵌合孔部146cの縁部146ccによって上方から押さえられる。言い換えると、カバー部材20の全体が縁部146ccによって上方から押さえられる。
【0044】
図5の従来構成の筐体2Aと同様に、ケース部本体12及びカバー部材20も、残留応力や樹脂の硬化時に生じる体積収縮等の影響により、理想的な形状(設計値)に対して反りや曲り、ねじれ等の歪みを少なからず持っている。しかし、上述したように、本実施形態では、カバー部材20の全体が縁部146ccによって上方から押さえられる。そのため、ケース部本体12及びカバー部材20の歪みに起因する、孔部146に対する突起部206の浮き上がりが防止される。
【0045】
従って、作業者は、カバー部材20を押さえ付けることなく、ケース部本体12に対してカバー部材20を+X方向に動かすだけで(ケース部本体12に+X方向への荷重をかけるだけで)、突起部206を嵌合孔部146c内に入れることができる。
【0046】
嵌合孔部146cは、X方向に延びた孔形状となっている。嵌合孔部146cの幅D4は、公差を加味すると、突起部206の幅D3よりも極僅かに大きいが、幅D3と幅D4はほぼ同じ値に設定されている。そのため、突起部206の全体が第2ガイド孔部146bの終端を通過して嵌合孔部146c内に達すると、突起部206が嵌合孔部146cに嵌合する(図4中、ステップ5及び図3参照)。カバー部材20に形成された全ての突起部206が対となる嵌合孔部146cに嵌合することにより、カバー部材20がケース部本体12に対して固定される。
【0047】
附言するに、突起部206は、ケース部本体12やカバー部材20の歪みに応じて嵌合孔部146cの縁部146cc又はその反対側の縁部(縁部146ccと対向する縁部)146cdに寄りかかった状態で(荷重をかけた状態で)嵌合孔部146cに嵌合する。そのため、突起部206は、嵌合孔部146cから-X方向に抜けにくくなっている。すなわち、筐体2は、ケース部本体12やカバー部材20の歪みを利用して、ケース部本体12とカバー部材20とがより強固に固定される構成となっている。
【0048】
作業者は、図5を用いて例示した難しい作業(具体的には、カバー部材20の全体をケース部本体12側に押え付けつつカバー部材20を+X方向に動かすという作業)を強いられることなく、カバー部材20をケース部本体12に対して固定させることができる。
【0049】
図3に示されるように、筐体2の端部2a、2bには、突起部206と嵌合孔部146cとの嵌合によるケース部本体12とカバー部材20との固定状態を補強する構成が設けられている。具体的には、端部2aにおいて、ケース部本体12には、凹部(ケース部本体12の内壁面に形成された凹部であり、被嵌合部)126が形成され、カバー部材20には、凸部208(嵌合部)が形成されている。端部2bにおいて、ケース部本体12には、矩形孔部(被嵌合部)128が形成され、カバー部材20には、凸部210(嵌合部)が形成されている。凸部208は、凹部126に対応する相似形状を有しており、凹部126よりも極僅かに小さい。凸部210は、矩形孔部128に対応する相似形状を有しており、矩形孔部128よりも極僅かに小さい。
【0050】
図4のステップ5に示されるように、突起部206を嵌合孔部146cに嵌合させるため、ケース部本体12に対してカバー部材20を+X方向に動かすと、突起部206が嵌合孔部146cに嵌合するタイミングで凸部208が凹部126に嵌合すると共に凸部210が矩形孔部128に嵌合する。これらの部材が嵌合することで、突起部206と嵌合孔部146cとの嵌合によるケース部本体12とカバー部材20との固定状態が補強される。
【0051】
装置1は、締結用ネジが無くともカバー部材20がケース部本体12に対して固定される構成となっている。装置1の筐体2には、電子部品等の内蔵物を収容するスペースの周囲に締結用ネジを通すネジ孔部を形成する必要がない。そのため、筐体2は、締結用ネジ及びネジ孔部を必要とする構成と比べて小型に設計し易くなっている。また、筐体2の外観にネジ頭が露出しないため、外観がシンプルになる。
【0052】
締結用ネジが無くともカバー部材20がケース部本体12に対して固定されるようにするため、ケース部本体12及びカバー部材20の全周に係合爪を所定間隔毎に設ける構成(いわゆる嵌め殺し構造)を採用することが考えられる。しかし、この構成を採用すると、ケース部本体12からカバー部材20を損傷なしで取り外すことが難しい。
【0053】
一例として、電子部品等の内蔵物の修理を行うため、ケース部本体12からカバー部材20を取り外す場合を考える。この場合、ケース部本体12からカバー部材20を取り外す度に、ケース部本体12及びカバー部材20が(主に嵌め殺し構造の部分が)損傷する虞がある。ケース部本体12及びカバー部材20が損傷すると、これらの損傷部品は破棄して新たな部品に代える必要があるため、コストがかさむ。
【0054】
本実施形態では、カバー部材20に-X方向の荷重がかけられると、嵌合孔部146cに対する突起部206の嵌合が解除され、-X方向の荷重がそのまま継続してかけられると、カバー部材20がケース部本体12に対して上方に(第2ガイド孔部146bにガイドされて斜め方向Dとは逆の方向に)スライドし、カバー部材20が上方に(+Z方向であって、ケース部本体12から離れる方向に)引き上げられると、突起部206が第2ガイド孔部146b及び第1ガイド孔部146aを通過して孔部146から外れて、ケース部本体12がカバー部材20から取り外された状態となる。
【0055】
すなわち、本実施形態に係る筐体2によれば、カバー部材20に-X方向の荷重をかけてカバー部材20を上方(+Z方向)に引き上げるという作業だけでケース部本体12からカバー部材20が取り外される。そのため、ケース部本体12及びカバー部材20が損傷するリスクが少なく、これらの部品の損傷に伴うコストの発生が抑えられる。
【0056】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施例等又は自明な実施例等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
【0057】
上記の実施形態では、ケース部材10が孔部146を備え、カバー部材20が突起部206を備える構成となっているが、別の実施形態では、ケース部材10が突起部を備え、カバー部材20が孔部を備える構成に置き換えてもよい。
【0058】
上記の実施形態では、突起部206は、先端206a側が面取りされた矩形状の突起部であるが、別の実施形態では、突起部206は、円柱状など、他の形状の突起部であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 装置
2 筐体
2a、2b 端部
10 ケース部材
12 ケース部本体
14 枠状部材
20 カバー部材
120 開口
122 支持部
124 爪部
126 凹部
128 矩形孔部
140 被支持領域
142 被支持片
144 辺部
146 孔部
146a 第1ガイド孔部
146b 第2ガイド孔部
146bb 縁部
146c 嵌合孔部
146cc、146cd 縁部
202、204 内壁面
206 突起部
206a 先端
206aa 面
206b 後端
206bb 頂点
206c 上端
208、210 凸部
図1
図2
図3
図4
図5