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  • 特許-スライド窓保持装置 図1
  • 特許-スライド窓保持装置 図2
  • 特許-スライド窓保持装置 図3
  • 特許-スライド窓保持装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】スライド窓保持装置
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/16 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
B60J1/16 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018111569
(22)【出願日】2018-06-12
(65)【公開番号】P2019214255
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390001579
【氏名又は名称】プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】有地 毅成
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-30416(JP,A)
【文献】特開2005-60978(JP,A)
【文献】実開昭58-112618(JP,U)
【文献】特開昭63-147075(JP,A)
【文献】実公昭46-28973(JP,Y1)
【文献】実開昭61-32369(JP,U)
【文献】特開平11-11147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/16
E05C 21/00
E05B 65/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械用のスライド窓を任意の位置で保持するスライド窓保持装置であって、
前記スライド窓をスライド可能に支持する枠体の側面に対して該スライド窓のスライド方向に沿って設けられ、外面に設けられる凹凸部がスライド方向に繰り返し形成された係合帯と、
前記スライド窓の内面に取り付けられるベースと、該ベースから垂直方向に突出する垂直壁とを備えるメインレバーと、
前記メインレバーに回動自在に設けられ、傾斜壁を有していて、該傾斜壁が前記スライド窓に向かって傾倒するとともに前記垂直壁に対して傾くロック姿勢と該傾斜壁が該スライド窓から離反して該垂直壁に近づくアンロック姿勢との間で回動可能なリリースレバーと、
前記リリースレバーに対して一体に連結し、前記ロック姿勢で前記凹凸部と係合する一方、前記アンロック姿勢で該凹凸部から離反するストッパーと、を備えたことを特徴とするスライド窓保持装置。
【請求項2】
更に、前記リリースレバーを前記ロック姿勢の方向に付勢する弾性体を備える請求項1に記載のスライド窓保持装置。
【請求項3】
前記ストッパーは、前記凹凸部に符合する凸凹部を備える請求項1又は2に記載のスライド窓保持装置。
【請求項4】
前記枠体は、前記スライド窓を水平方向にスライド可能に支持する下枠を有し、前記係合帯は、前記下枠の側面に対して設けられる請求項1~3の何れか一項に記載のスライド窓保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械用のスライド窓を任意の位置で保持することが可能なスライド窓保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば建設機械のキャブには、ガラス等によって形成され、枠体によってスライド可能に支持されるスライド窓が設けられている。このようなものとして特許文献1には、引き違いになるフロントガラスとリアガラスが、ランチャンネルを介して下枠に保持される車両用シングルサッシュ側窓が示されている。また特許文献2には、引き違いになる内ガラスと外ガラスが窓枠のガラスランに嵌め込まれるとともに、内ガラスと外ガラスに摺動接触するセンタサッシュが上下方向に配された車両用引き違い窓が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-97708号公報
【文献】実公平4-13218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなスライド窓は、ランチャンネルやセンタサッシュに常時接触しているため、スライド窓がスライドする際には、ランチャンネルやセンタサッシュよる摩擦が作用する。従って、多少の振動を受ける場合でもスライド窓を半開状態にしておくことができる。
【0005】
しかし、例えばクローラ等で悪路を走行する場合や、建設機械のアームに削岩機を取り付けて削岩作業を行う場合においては、スライド窓にも大きな振動が及ぶことになるため、半開状態を維持することは困難であった。
【0006】
なお図示は省略するが、従来の建設機械用スライド窓において半開状態を維持するためのものとしては、先端にゴムを取り付けたボルトを備え、ボルトを回転させることによってスライド窓の内側面にゴムを押し付けるものがある。しかし、スライド窓を所定の位置に動かした後にボルトをねじ込まなければならず、操作性に劣っている。
【0007】
また、スライド窓を支持する下枠に対して上方を開放した複数の溝を設け、この溝に係合するロック機構をスライド窓に取り付けたものも知られている。しかし、スライド窓の半開状態を維持できる位置は、溝を設けた部分に限られることになる。また溝の数を増やすにも、数が増すにつれて加工費が嵩むうえ、強度の点でも懸念がある。更に溝を形成することによって止水壁の高さが低くなるため、雨天時に雨水が室内に浸入しやすくなる点でも不具合がある。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決することを課題とするものであり、建設機械用のスライド窓を、作業時や移動時などのように大きな振動が及ぶ場合でも、全閉、全開状態で保持しておくことができ、更に任意の位置で半開状態にしておくこともできるスライド窓保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、建設機械用のスライド窓を任意の位置で保持するスライド窓保持装置であって、前記スライド窓をスライド可能に支持する枠体の側面に対して該スライド窓のスライド方向に沿って設けられ、外面に設けられる凹凸部がスライド方向に繰り返し形成された係合帯と、前記スライド窓の内面に取り付けられるベースと、該ベースから垂直方向に突出する垂直壁とを備えるに設けられるメインレバーと、前記メインレバーに回動自在に設けられ、傾斜壁を有していて、該傾斜壁が前記スライド窓に向かって傾倒するとともに前記垂直壁に対して傾くロック姿勢と該傾斜壁が該スライド窓から離反して該垂直壁に近づくアンロック姿勢との間で回動可能なリリースレバーと、前記リリースレバー対して一体に連結し、前記ロック姿勢で前記凹凸部と係合する一方、前記アンロック姿勢で該凹凸部から離反するストッパーと、を備えたことを特徴とするスライド窓保持装置である。
【0010】
このようなスライド窓保持装置においては、更に、前記リリースレバーを前記ロック姿勢の方向に付勢する弾性体を備えることが好ましい。
【0011】
また前記ストッパーは、前記凹凸部に符合する凸凹部を備えることが好ましい。
【0012】
そして前記枠体は、前記スライド窓を水平方向にスライド可能に支持する下枠を有し、前記係合帯は、前記下枠の側面に対して設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のスライド窓保持装置においては、スライド窓を何れの位置にスライドさせてもストッパーが係合帯の凹凸部に係合するため、作業時や移動時などのように大きな振動が及ぶ場合でも半開状態を維持することができる。またロック姿勢のリリースレバーをアンロック姿勢に変位させるには、これをメインレバーとともに掴めばよいため、スライド窓を別の位置に容易にスライドさせることができる。また、従来の構造で採用した溝を設けていないため、雨天時に雨水が浸入しやすくなることもない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に従うスライド窓保持装置の一実施形態を、スライド窓に取り付けた状態で示した図である。
図2図1に示したスライド窓保持装置に関し、(a)は図1におけるA部の拡大図であり、(b)は(a)に示したB-Bに沿う断面図であり、(c)は(a)に示したC-Cに沿う断面図である。
図3図1に示すスライド窓保持装置の分解斜視図である。
図4】ストッパーの凸凹部と係合帯の凹凸部の変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明に従うスライド窓保持装置の一実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態であるスライド窓保持装置1を、スライド窓100に取り付けた状態で示した図である。図示したスライド窓100は、建設機械のキャブの側部に設けられる枠体101に対し、その内側前方に取り付けられている。ここで枠体101は、ともに水平方向に延在する下枠102と上枠103、及び垂直方向に対して傾斜して延在する前枠104、並びに垂直方向に延在する後枠105により構成されている。このような枠体101に対してスライド窓100は、下枠102と上枠103に支持されつつ、図示した状態から後方に向けて(図1の矢印の向きに)スライドさせることが可能である。なお下枠102等には、図2(c)に示すように、スライド窓100を摺動可能に支持するグラスランチャンネル102aが設けられている。また本実施形態において、枠体101の内側後方には、スライド窓100に対して引き違いになる他のスライド窓106も取り付けられている。
【0017】
ここで、本実施形態のスライド窓保持装置1は、図2図3に示すように、メインレバー2、リリースレバー3、ストッパー4、ピン5、弾性体6、パッキン7、リテーナ8、ねじ9、及び係合帯10で構成されるものである。
【0018】
メインレバー2は、スライド窓100の内面に取り付けられる部材である。本実施形態のメインレバー2は、矩形板状をなし、取り付け時においてスライド窓100の内面に接するベース2aを備えている。また、図3に示すようにベース2aの上部と下部には、円形の通し孔2bが設けられている。なお通し孔2bは、ねじ9を挿通させてメインレバー2をスライド窓100に取り付ける際に使用されるものであり、スライド窓100にも通し孔2bに対応する孔が設けられている。またメインレバー2は、ベース2aから垂直方向に突出する垂直壁2cを備えている。垂直壁2cの上縁部と下縁部には、ベース2aから垂直方向に突出するとともに垂直壁2cよりも突出量が少ない一対の支持壁2dが一体に連結している。そして支持壁2dには、図3に示すように、上下方向に支持壁2dを貫通する軸孔2eが設けられている。
【0019】
リリースレバー3は、メインレバー2に回動自在に設けられる部材である。図3に示すように本実施形態におけるリリースレバー3は、円筒状をなすとともに一対の支持壁2dの間に収まる本体部3aを備えていて、軸孔2eとともに本体部3aにピン5を挿通させることによって、メインレバー2に回動可能に支持される。なお詳細については後述するが、リリースレバー3は、ストッパー4と係合帯10とが係合するロック姿勢と、係合帯10との係合が解けるアンロック姿勢との間で回動するものである。ここで図2は、リリースレバー3がロック姿勢に変位した状態を示していて、図2(b)に示す矢印の方向にリリースレバー3を回動させた状態がアンロック姿勢になる。またリリースレバー3は、本体部3aに連結するとともに、ロック姿勢において垂直壁2cに対して傾く傾斜壁3bを備えている。
【0020】
ストッパー4は、本実施形態においては矩形板状をなすとともに、本体部3aに対して一体に連結するものである。なおストッパー4は、リリースレバー3とは別異の部材として形成し、リリースレバー3に取り付けられるものでもよい。ここでストッパー4の下端部には、下枠102に正対する面において、凸凹部4aが形成されている。
【0021】
ピン5は、円柱状をなすものであって、その一端部には、円板状のフランジが設けられている。上述したようにピン5は、軸孔2eと本体部3aに挿通されて、メインレバー2に対してリリースレバー3を回動可能に支持するものである。なお、ピン5の他端部は、軸孔2eと本体部3aに挿通された後にカシメ等によって径方向外側に膨出されるものであり、これによりピン5は、メインレバー2に対して抜け止め保持される。
【0022】
弾性体6は、リリースレバー3をロック姿勢の方向に付勢するものである。本実施形態においては、螺旋状に巻かれるとともに一端部と他端部を長く延在させた、所謂ねじりばねを使用している。そして、ねじりばねの中心にピン5を挿通させるとともに、一端部と他端部がメインレバー2とリリースレバー3に当接するようにして取り付けられる。なお弾性体6は、このようなねじりばねに限定されるものではなく、長手方向に伸縮するスプリングをメインレバー2とリリースレバー3との間に介在させて、スプリングが伸張する際の押圧力によって、リリースレバー3をロック姿勢の方向に付勢させるようにしてもよい。
【0023】
パッキン7は、雨水等が建設機械のキャブの内側に浸入するのを防止するものである。本実施形態のパッキン7は、メインレバー2のベース2aと略同じ大きさに形成された矩形板状になるものであり、図3に示すように上部と下部には、貫通孔7aが設けられている。図示したパッキン7は、スライド窓100の外面側に配置されるものであるが、スライド窓100の内面側に設けてもよい。またパッキン7を2つ準備して、スライド窓100の外面側と内面側にそれぞれ設けてもよい。
【0024】
リテーナ8は、スライド窓100とパッキン7とを間に挟んで、ねじ9によってメインレバー2を固定保持するものである。本実施形態のリテーナ8は、ベース2aと略同じ大きさに形成された矩形板状になるものであり、上部と下部には、図3に示すように円筒状をなすとともにねじ9を係合させるボス8aが設けられている。
【0025】
係合帯10は、図1に示すように長尺の帯状をなすものであって、本実施形態においては下枠102に対して前後方向に長く延在するように設けられている。また係合帯10の外面には、図2(b)に示すようにストッパー4の凸凹部4aに係合する凹凸部10aが設けられている。なお凹凸部10aは、係合帯10の全長に亘って前後方向に繰り返し形成されている。係合帯10の材質は、例えば合成樹脂(ポリプロピレン樹脂など)やラバー、金属など、種々のものが採用可能である。また係合帯10の裏面には、両面テープ10bが設けられていて、これにより下枠102に対して係合帯10を固着させている。下枠102に係合帯10を取り付けるに当たっては、例えば接着剤を使用するなど、他の手段を用いてもよい。なお、下枠102に対して凹凸部10aに対応する形状を形成することによって、下枠102に係合帯10の機能を持たせてもよいが、本実施形態のように両面テープ10b等を使用して係合帯10を固着させる場合は、既存の下枠102に取り付けることができるという利点がある。
【0026】
このような部材によって構成されるスライド窓保持装置1は、弾性体6の付勢力によってリリースレバー3が回動し、図2(b)に示すように、傾斜壁3bがスライド窓に向かって傾倒するロック姿勢に変位している。この状態においては、ストッパー4の凸凹部4aが係合帯10の凹凸部10aに係合するため、スライド窓100が前後方向にスライドすることはない。
【0027】
一方、スライド窓100を前後方向にスライドさせるには、傾斜壁3bがスライド窓100から離反して垂直壁2cに近づくように(図2(b)に示す矢印の向きに傾斜壁3bが回動するように)、傾斜壁3bと垂直壁2cとを指で掴めばよい。これによりリリースレバー3を、ストッパー4の凸凹部4aと係合帯10の凹凸部10aとの係合が解けるアンロック姿勢に変位させることができるため、傾斜壁3bと垂直壁2cとを指で掴んだまま前後方向に動かせば、スライド窓100を任意の位置に動かすことができる。
【0028】
その後は、傾斜壁3bと垂直壁2cとを掴んでいた指を離せば、弾性体6の付勢力によってリリースレバー3がロック姿勢に変位する。従って、ストッパー4の凸凹部4aと係合帯10の凹凸部10aが再び係合するため、スライド窓100が半開状態であっても、その位置を維持することができる。
【0029】
なお、図2に示した凸凹部4aは、ストッパー4の幅方向(前後方向)の全域に亘って設けられているが、図4(a)に示すように、ストッパー4の一部に設けたものでもよい。また凸凹部4aは、凹凸部10aの凹部に入り込む少なくとも1つの凸部で構成してもよいし、凹凸部10aの凸部を受け入れる少なくとも一つの凹部で構成してもよい。また図2図4(a)に示す凸凹部4aと凹凸部10aは、何れも三角形状になるものであるが、その形状は任意に変更可能であって、例えば図4(b)に示すように、凸凹部4aは半円状で凹凸部10aは矩形状としてもよく、また図4(c)に示すように、凸凹部4aと凹凸部10aを台形状にしてもよい。このように、凸凹部4aにおける凸部や凹部の数、或いは凸凹部4aと凹凸部10aの形状を変更すれば、スライド窓100を保持する力を調整することができる。
【0030】
以上、本発明に従うスライド窓保持装置の一実施形態について説明したが、本実施形態は一例に過ぎず、本発明には特許請求の範囲に従う範疇で種々の変更を加えたものも含まれる。例えば弾性体6を省略して、使用者がリリースレバー3をロック姿勢に変位させるように構成してもよい。またメインレバー2は、ねじ9を使ってスライド窓100に取り付けていたが、両面テープ等を利用してスライド窓100に固着してもよい。また本実施形態のスライド窓保持装置1は、前後方向にスライドするスライド窓100に設けたが、上下方向にスライドするものに使用することも可能である。そしてスライド窓保持装置1の取り付け先はスライド窓100に限られず、他のスライド窓106に設けてもよい。なお本実施形態においては、使用者の手が届きやすいところにスライド窓保持装置1を取り付けるべく、係合帯10を下枠102に設けたが、上枠103に設けてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1:スライド窓保持装置
2:メインレバー
3:リリースレバー
4:ストッパー
4a:凸凹部
6:弾性体
10:係合帯
10a:凹凸部
100:スライド窓
101:枠体
102:下枠
図1
図2
図3
図4