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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/58 20060101AFI20220831BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20220831BHJP
   F16F 9/516 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
F16F9/58 A
F16F9/32 N
F16F9/516
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018112435
(22)【出願日】2018-06-13
(65)【公開番号】P2019215040
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-01-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514241869
【氏名又は名称】KYBモーターサイクルサスペンション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】森 健
(72)【発明者】
【氏名】小倉 秀昭
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-110342(JP,U)
【文献】特開2010-223303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/58
F16F 9/32
F16F 9/516
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内に摺動可能に挿入されて前記シリンダ内を伸側室と圧側室に区画するピストンと、
前記シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されて前記ピストンに連結されるピストンロッドと、
前記シリンダの軸方向の一端部に装着されて前記ピストンロッドを摺動自在に支持する環状のロッドガイドと、
前記ピストンロッドの側方から開口して前記伸側室と前記圧側室とを連通する通路と、
前記ピストンロッドの外周に軸方向へ移動可能に装着されて、前記通路を開閉するシャッタと、
前記シャッタと前記ロッドガイドとを連結するコイルばねと、
前記ピストンロッドの外周に設けられて前記ロッドガイドの先端及び前記シャッタの先端に当接可能なストッパとを備え、
前記ロッドガイドには、前記ロッドガイドの先端から開口して前記シャッタと前記コイルばねを収容可能な凹部が形成されており、
前記コイルばねのロッドガイド側の一端から前記凹部の開口端までの距離は、前記コイルばねが自然長となった状態での前記コイルばねの一端から前記シャッタの先端までの距離よりも短く、前記コイルばねが密着長となった状態での前記コイルばねの一端から前記シャッタの先端までの距離よりも長い
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記コイルばねは、連結部材を介して前記ロッドガイドに連結されており、
前記連結部材は、前記コイルばねの一端部内周に嵌合する環状の嵌合部と、前記嵌合部の一端から径方向外側へ突出して前記コイルばねの一端が当接する一端側シート部とを含み、
前記シャッタは、前記コイルばねの他端部内周に嵌合して前記ピストンロッドの外周に摺接する筒状のシャッタ本体と、前記シャッタ本体の一端から径方向外側へ突出して前記コイルばねの他端が当接する他端側シート部とを含み、
前記ストッパが前記ロッドガイドに当接した状態で、前記嵌合部と前記シャッタ本体との間に隙間が形成される
ことを特徴とする請求項に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記凹部の内周には、環状のクッションラバーが装着されており、
取付初期状態では、前記クッションラバーの先端が前記凹部から外方へ突出するとともに、前記シャッタの先端が前記クッションラバーの先端よりもストッパ側に位置する
ことを特徴とする請求項又はに記載の緩衝器。
【請求項4】
前記通路に挿入されて、前記通路の流路面積を変更可能な弁体と、
前記ピストンロッド内に挿入されるコントロールロッドを介して前記弁体を駆動するアジャスタとを備える
ことを特徴とする請求項1からの何れか一項に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、緩衝器の中には、シリンダと、このシリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンに連結されてシリンダ外へと突出するピストンロッドと、伸側室と圧側室とを連通してこれらの間を移動する液体の流れに抵抗を与える減衰通路とを備えるものがある。このような緩衝器では、緩衝器の伸縮時に液体が減衰通路を流れるようになっており、その液体の流れに付与される抵抗に起因する減衰力が発生する。
【0003】
さらに、そのような緩衝器の中には、減衰通路を迂回して伸側室と圧側室とを連通するバイパス路をピストンロッドに形成するとともに、ピストンの伸長側へのストローク量が所定以上となる伸側ストロークエンド付近の領域にピストンがある場合にシャッタでバイパス路を閉じるものがある(例えば、特許文献1)。
【0004】
上記構成によれば、伸側ストロークエンド付近の領域にピストンがある場合には、バイパス路を閉じた分、減衰通路を流れる液体の流量が増えるので、発生する減衰力を大きくできる。このため、緩衝器が伸長していくと、その伸側ストロークエンド付近で大きな減衰力が発生し、その大きな減衰力で緩衝器の伸長速度を減速してから停止できる。よって、緩衝器の最伸長時の衝撃を緩和できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-54924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、例えば、特開2005-54924号公報に記載の緩衝器では、図5に示すように、シリンダ1の軸方向の一端部に装着されてピストンロッド3を摺動自在に支持するロッドガイド400にシャッタ600が取り付けられている。そして、そのシャッタ600は、環状であり、内周がピストンロッド3の外周に摺接する。
【0007】
さらに、そのピストンロッド3の側方にバイパス路Bが開口しており、緩衝器の伸長時にピストンロッド3がシリンダ1から退出してピストン2が図中上側へ移動していくと、バイパス路Bの開口b1がシャッタ600で塞がれる(図5)。そして、さらに緩衝器が伸長すると、ピストンロッド3の外周に設けたストッパ22がロッドガイド400に突き当たり、ピストン2のそれ以上の図中上側への移動が阻止されて、緩衝器のそれ以上の伸長が阻止される。
【0008】
このように、ストッパ22とロッドガイド400が当接したときのピストン2の位置が伸側ストロークエンドとなり、そのときに緩衝器が最伸長状態(伸切り)となる。そして、ピストン2が伸側ストロークエンドまで移動した状態においても、開口b1はシャッタ600で塞がれた状態に維持されるようになっている。
【0009】
上記したように、バイパス路Bがシャッタ600で閉じられるピストン2のストローク領域を閉塞領域とする。すると、従来の緩衝器の閉塞領域の大きさは、図5に示すように、バイパス路Bの開口b1の下端とシャッタ600の下端が径方向視で重なる閉塞領域の始端にピストン2が位置するときのストッパ22とロッドガイド400との間の距離x1に等しい。
【0010】
そして、その閉塞領域を大きくするには、シャッタ600の軸方向長さを長くして、緩衝器の伸長行程での早い段階(図5に示すピストン2の位置よりも低い位置)からバイパス路Bを閉じる方法が考えられるが、それだけでは閉塞領域を大きくできない。
【0011】
なぜなら、シャッタ600の軸方向長さを長くしただけでは、ストッパ22がロッドガイド4に突き当たるよりも前にシャッタ600に突き当たり、それ以上のピストン2の上側への移動が阻止されて、閉塞領域が大きくならないためである。
【0012】
このため、従来の緩衝器では、バイパス路Bのような、ピストンロッドに形成されて伸側室と圧側室とを連通する通路をシャッタで閉じる閉塞領域を大きくするのが難しく、閉塞領域が伸側ストロークエンド至近の領域に限られてしまう。
【0013】
そこで、本発明は、このような問題を解決し、ピストンロッドに形成されて伸側室と圧側室とを連通する通路を閉じる閉塞領域を容易に大きくできる緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する緩衝器は、ピストンロッドの側方から開口し、シリンダ内にピストンで区画された伸側室と圧側室とを連通する通路と、ピストンロッドの外周に軸方向へ移動可能に装着されて通路を開閉するシャッタと、シリンダの一端部に装着されるロッドガイドとシャッタとを連結するコイルばねと、ピストンロッドの外周に設けられてロッドガイドの先端及びシャッタの先端に当接可能なストッパとを備え、ロッドガイドにはロッドガイドの先端から開口してシャッタとコイルばねを収容可能な凹部が形成されており、コイルばねのロッドガイド側の一端から凹部の開口端までの距離は、コイルばねが自然長となった状態でのコイルばねの一端からシャッタの先端までの距離よりも短く、コイルばねが密着長となった状態でのコイルばねの一端からシャッタの先端までの距離よりも長いことを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、シャッタとロッドガイドをコイルばねで連結した分、シャッタの位置を伸側室側へ下げられる。さらに、コイルばねが変形できるので、ピストンの伸長側への移動がシャッタで阻止されることがなく、通路の閉塞領域を容易に大きくできる。
【0016】
また、上記構成によれば、密着長となった状態でコイルばねに荷重がかからず、コイルばねの耐久性を向上できる。
【0017】
また、上記緩衝器では、コイルばねが連結部材を介してロッドガイドに連結されており、その連結部材がコイルばねの一端部内周に嵌合する環状の嵌合部と、この嵌合部の一端から径方向外側へ突出してコイルばねの一端が当接する一端側シート部とを含み、シャッタがコイルばねの他端部内周に嵌合してピストンロッドの外周に摺接する筒状のシャッタ本体と、このシャッタ本体の一端から径方向外側へ突出してコイルばねの他端が当接する他端側シート部とを含み、ストッパがロッドガイドに当接した状態では嵌合部とシャッタ本体との間に隙間ができるとよい。当該構成によれば、シャッタの耐久性を向上できる。
【0018】
また、上記緩衝器では、ロッドガイドの凹部の内周に環状のクッションラバーが装着されており、取付初期状態でのクッションラバーの先端が凹部から外方へ突出するとともに、シャッタの先端がクッションラバーの先端よりもストッパ側に位置するとよい。
【0019】
上記構成によれば、コイルばねとクッションラバーは、それぞれ圧縮されると緩衝器を収縮方向へ附勢するので、これらの附勢力によっても緩衝器の伸長作動を妨げられる。さらに、上記構成によれば、緩衝器の伸長行程において、先ずコイルばねが機能てからクッションラバーが機能し、緩衝器の伸長作動を妨げる力が段階的に大きくなるので、緩衝器の最収縮時の衝撃をより確実に緩和できる。
【0020】
また、上記緩衝器は、通路に挿入されてその通路の流路面積を変更可能な弁体と、ピストンロッド内に挿入されるコントロールロッドを介して弁体を駆動するアジャスタとを備えるとよい。当該構成によれば、アジャスタの操作により通路の流路面積を変更できるので、緩衝器の発生する減衰力を大小調節できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の緩衝器によれば、ピストンロッドに形成されて伸側室と圧側室とを連通する通路をシャッタで閉じる閉塞領域を容易に大きくできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施の形態に係る緩衝器を示した縦断面図である。
図2図1の一部を拡大して示した部分拡大縦断面図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る緩衝器のピストンが閉塞領域の始端にある状態を示した部分拡大縦断面図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る緩衝器のピストンが閉塞領域の終端となる伸側ストロークエンドにある状態を示した部分拡大縦断面図である。
図5】従来の緩衝器のピストンが閉塞領域の始端にある状態を示した部分拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態の緩衝器について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品か対応する部品を示す。
【0024】
図1に示す一実施の形態に係る緩衝器Dは、鞍乗型車両の後輪を懸架するリアクッションユニット、又は車室を備えた自動車のサスペンション装置等に利用されている。
【0025】
そして、以下の説明では、説明の便宜上、図1に示した状態での緩衝器Dの上下を単に「上」「下」という。しかし、車両に取り付けられた状態での緩衝器Dの上下を取付対象に応じて適宜変更できるのは勿論である。具体的には、緩衝器Dを図1と同じ向きで車両に取り付けても、上下逆向きにして取り付けてもよい。
【0026】
つづいて、本実施の形態に係る緩衝器Dの具体的な構造について説明する。図1に示すように、緩衝器Dは、有底筒状のシリンダ1と、このシリンダ1内に摺動自在に挿入されるピストン2と、下端がピストン2に連結されて上端がシリンダ1外へと突出するピストンロッド3とを備える。
【0027】
そして、ピストンロッド3の上端には、ブラケット(図示せず)が設けられており、ピストンロッド3がそのブラケットを介して車体と車軸の一方に連結される。その一方、シリンダ1の底部1aにもブラケット(図示せず)が設けられており、シリンダ1がそのブラケットを介して車体と車軸の他方に連結される。
【0028】
このようにして緩衝器Dは車体と車軸との間に介装される。そして、車両が凹凸のある路面を走行する等して車輪が車体に対して上下に振動すると、ピストンロッド3がシリンダ1に出入りして緩衝器Dが伸縮するとともに、ピストン2がシリンダ1内を上下(軸方向)に移動する。
【0029】
また、緩衝器Dは、シリンダ1の上端部に取り付けられてピストンロッド3を摺動自在に支える環状のロッドガイド4を備える。このロッドガイド4の内周には、環状のブッシュ40が装着されており、ロッドガイド4は、このブッシュ40を介してピストンロッド3を摺動自在に軸支する。なお、ブッシュ40を廃し、ロッドガイド4で直接ピストンロッド3を支えていてもよい。
【0030】
さらに、ロッドガイド4には、ピストンロッド3の外周に摺接するダストシール41及びオイルシール42と、シリンダ1の内周に密着する外周シール43とが装着されている。そして、これらのシールとロッドガイド4により、ピストンロッド3のシリンダ1内への挿入を許容しつつ、シリンダ1の上端を液密に塞いでいる。
【0031】
なお、図1に示すダストシール41、オイルシール42、及び外周シール43は、個別にロッドガイド4に装着されている。しかし、ダストシール41、オイルシール42、及び外周シール43を一つのシール部材として一体化してもよい。このように、ピストンロッド3の外周、及びシリンダ1の内周をシールするシール部材の構成は適宜変更できる。
【0032】
上記したように、シリンダ1の上端はロッドガイド4で塞がれている。その一方、シリンダ1の下端は底部1aで塞がれている。このように、シリンダ1内は、密閉空間とされている。また、そのシリンダ1内のピストン2から見てピストンロッド3とは反対側に、フリーピストン10が摺動自在に挿入されている。
【0033】
そして、シリンダ1内におけるフリーピストン10の上側には液室Lが形成され、下側にはガス室Gが形成されている。さらに、液室Lは、ピストン2でピストンロッド3側の伸側室L1とピストン2側の圧側室L2とに区画されており、伸側室L1と圧側室L2には、それぞれ作動油等の液体が充填されている。その一方、ガス室Gには、エア、又は窒素ガス等の気体が圧縮された状態で封入されている。
【0034】
なお、フリーピストン10に替えて、ブラダ、又はベローズ等を利用して液室Lとガス室Gとを仕切っていてもよく、この仕切となる可動隔壁の構成は適宜変更できる。さらには、内部に可動隔壁を有してガス室Gが形成される部材もシリンダ1に限られず、例えば、シリンダ1とは別置き型のタンクを設け、そのタンク内に可動隔壁を設けてガス室Gを形成してもよい。
【0035】
つづいて、ピストン2には、伸側室L1と圧側室L2とを連通する伸側通路2aと圧側通路2bが形成されている。さらに、ピストン2の下側(圧側室L2側)には、伸側通路2aの出口を開閉する伸側バルブ20が積層されるとともに、ピストン2の上側(伸側室L1側)には、圧側通路2bの出口を開閉する圧側バルブ21が積層されている。
【0036】
伸側バルブ20は、伸側減衰要素であり、緩衝器Dの伸長時に開いて伸側室L1から圧側室L2へ向かう液体の流れに抵抗を与える。その一方、圧側バルブ21は、圧側減衰要素であり、緩衝器Dの収縮時に開いて圧側室L2から伸側室L1へ向かう液体の流れに抵抗を与える。
【0037】
上記構成によれば、ピストンロッド3がシリンダ1から退出して緩衝器Dが伸長する場合、ピストン2がシリンダ1内を上方へ移動して伸側室L1を圧縮する。そして、この伸側室L1の液体が伸側バルブ20を押し開き、伸側通路2aを通って圧側室L2へと移動する。当該液体の流れに対しては、伸側バルブ20により抵抗が付与される。このため、緩衝器Dの伸長時には、伸側室L1の圧力が上昇して緩衝器Dの伸長作動を妨げる伸側の減衰力が発生する。
【0038】
また、緩衝器Dの伸長時には、シリンダ1から退出したピストンロッド3の体積分、シリンダ1内の容積が増加する。すると、ガス室Gの圧力によりフリーピストン10が押し上げられる。このようにして緩衝器Dの伸長時にはガス室Gの容積が拡大し、これによりシリンダ1から退出するピストンロッド3の体積分を補償できる。
【0039】
反対に、ピストンロッド3がシリンダ1内へ侵入して緩衝器Dが収縮する場合、ピストン2がシリンダ1内を下方へ移動して圧側室L2を圧縮する。そして、この圧側室L2の液体が圧側バルブ21を押し開き、圧側通路2bを通って伸側室L1へと移動する。当該液体の流れに対しては、圧側バルブ21により抵抗が付与される。このため、緩衝器Dの収縮時には、圧側室L2の圧力が上昇して緩衝器Dの収縮作動を妨げる圧側の減衰力が発生する。
【0040】
また、緩衝器Dの収縮時には、シリンダ1内へ侵入したピストンロッド3の体積分、シリンダ1内の容積が減少する。すると、ガス室Gの圧力に抗してフリーピストン10が押し下げられる。このようにして緩衝器Dの収縮時にはガス室Gの容積が縮小し、これによりシリンダ1内へ侵入するピストンロッド3の体積分を補償できる。
【0041】
以上からわかるように、本実施の形態では、伸側バルブ20と圧側バルブ21のそれぞれが、伸側又は圧側の減衰力を発生するための減衰要素として機能する。さらに、伸側通路2aと圧側通路2bのそれぞれが、伸側又は圧側の減衰要素を設けた減衰通路となっている。そして、本実施の形態では、減衰要素である伸側バルブ20と圧側バルブ21がそれぞれリーフバルブとなっていて、減衰通路である伸側通路2aと圧側通路2bがともに一方通行となっている。このため、伸側減衰力と圧側減衰力を独立して設定できる。
【0042】
しかし、減衰要素の構成は適宜変更できる。例えば、減衰要素として、ポペットバルブ等のリーフバルブ以外のバルブを利用したり、オリフィス、又はチョーク等の絞りを利用したりしてもよい。また、減衰通路は、必ずしも一方通行でなくてもよく、双方向流れが許容されていてもよい。加えて、減衰通路は、必ずしもピストン2に形成されていなくてもよく、例えば、シリンダ1の外周側に形成されていてもよい。
【0043】
さらに、緩衝器Dの様式も適宜変更できる。例えば、本実施の形態では、緩衝器Dが片ロッド、単筒型となっている。しかし、シリンダ1の外周にアウターシェルを設けて緩衝器を複筒型にしてもよい。この場合には、ガス室G及びフリーピストン10を廃するとともに、シリンダ1とアウターシェルとの間に液体を貯留してリザーバ室を形成し、このリザーバ室でシリンダに出入りするピストンロッド体積分を補償できる。また、ピストンロッド3をピストン2の両側からシリンダ1外へ突出させて緩衝器を両ロッド型にしてもよく、この場合には、シリンダに出入りするピストンロッドの体積補償自体を不要にできる。
【0044】
つづいて、緩衝器Dは、減衰通路である伸側通路2aと圧側通路2bを迂回して伸側室L1と圧側室L2とを連通するバイパス路Bを備えている。このバイパス路Bは、ピストンロッド3に形成されており、一端がそのピストンロッド3の側方に開口して伸側室L1に接続されるとともに、他端がピストンロッド3の下方に開口して圧側室L2に接続されている。
【0045】
より詳しくは、図2に示すように、ピストンロッド3の先端部には、その直上部よりも外径の小さな取付部3aが設けられている。この取付部3aの先端外周には螺子溝3bが形成されてナット30が螺合するとともに、取付部3aの末端には環状の段差3cが形成されている。そして、取付部3aの外周に環状の圧側バルブ21、ピストン2、及び伸側バルブ20を装着し、ナット30を締めると、圧側バルブ21、ピストン2、及び伸側バルブ20は、内周部ナット30と段差3cとで挟まれてピストンロッド3の外周に固定される。
【0046】
また、ピストンロッド3には、その中心部を軸方向に貫通する縦孔3dと、段差3cの直上部側方から開口して縦孔3dに通じる横穴3eが形成されている。縦孔3dにおいて、横穴3eとの接続部よりも上側を縦孔3dの上部、接続部から下側(接続部を含む)を縦孔3dの下部とすると、縦孔3dの上部にはコントロールロッド5が軸方向へ摺動自在に挿入されている。
【0047】
そのコントロールロッド5の外周は、シール(図示せず)で塞がれており、コントロールロッド5とピストンロッド3との間から液体が漏れないようになっている。このように、縦孔3dの上部は塞がれている。その一方、縦孔3dの下部は、横穴3eと圧側室L2に連通するととともに、横穴3eは、伸側室L1に通じている。
【0048】
このため、伸側室L1と圧側室L2の液体は、減衰通路である伸側通路2a及び圧側通路2bを迂回して、横穴3eと縦孔3dの下部を通って相互に行き来できる。このように、本実施の形態では、横穴3eと縦孔3dの下部とを有して伸側室L1と圧側室L2とを連通する通路が構成されおり、その通路は、減衰通路を迂回するバイパス路Bとなっている。
【0049】
また、そのバイパス路Bの一部となる縦孔3dの下部には、筒状の弁座部材31が嵌合されている。そして、コントロールロッド5の下端には、ニードル5aがその尖端を弁座部材31の内周側に挿入された状態で設けられており、そのニードル5aでバイパス路Bを通過する液体の流れを絞れるようになっている。
【0050】
さらに、図示しないが、ピストンロッド3の上端部に設けられたブラケットには、アジャスタが取り付けられている。そして、このアジャスタを操作すると、コントロールロッド5がニードル5aとともにピストンロッド3内を軸方向へ移動してバイパス路Bの流路面積(絞りの程度)が変更される。このため、アジャスタの操作により減衰通路を通過する液体の流量が変わり、緩衝器Dの発生する減衰力を大小調節できる。
【0051】
具体的には、アジャスタを操作してニードル5aを弁座部材31へ向けて前進させると、バイパス路Bの流路面積が狭くなる。すると、緩衝器Dの伸縮時にバイパス路Bを通過する液体の流量が少なくなるとともに、減衰通路(伸側通路2a又は圧側通路2b)を通過する液体の流量が増えるので、緩衝器Dの発生する減衰力が大きくなる。
【0052】
反対に、アジャスタを操作してニードル5aを弁座部材31から離れる方向へ後退させると、バイパス路Bの流路面積が広くなる。すると、緩衝器Dの伸縮時にバイパス路Bを通過する液体の流量が増えるとともに、減衰通路(伸側通路2a又は圧側通路2b)を通過する液体の流量が少なくなるので、緩衝器Dの発生する減衰力が小さくなる。
【0053】
このように、本実施の形態では、ニードル5aが可変絞り弁の弁体となっており、その可変絞り弁でバイパス路Bの流路面積を大小させて、緩衝器Dの発生する減衰力を大小調節できる。しかし、バイパス路Bの流路面積は、必ずしも可変でなくてもよく、例えば、縦孔3dの上部、アジャスタ、コントロールロッド5、ニードル5a、及び弁座部材31を廃し、バイパス路Bの途中に固定オリフィスを形成してもよい。
【0054】
つづいて、ピストンロッド3の外周には、バイパス路Bを開閉する環状のシャッタ6が摺動自在に装着されている。そして、そのシャッタ6は、コイルばね7を介してロッドガイド4に連結されている。より詳しくは、コイルばね7は、ピストンロッド3の外周に装着されている。そして、シャッタ6は、コイルばね7の下端に嵌合するとともに、コイルばね7とコイルばね7の上端に嵌合した連結部材8を介してロッドガイド4に連結される。
【0055】
その連結部材8は、コイルばね7の上端部内周に嵌合する環状の嵌合部8aと、この嵌合部8aの上端から径方向外側へ突出するとともに、コイルばね7の上端を支える環状のシート部8bとを含み、このシート部8bを上側へ向けてロッドガイド4の凹部4a内に収容される。この凹部4aには、連結部材8の他にも、オイルシール42、スペーサ80、及びクッションラバー9が収容されている。
【0056】
具体的に、その凹部4aは、下方(伸側室L1側)に開口しており、その凹部4aの上側(底側)は、下側(開口側)よりも内径が小さくなっている。凹部4aにおいて、内径の小さな部分を小径凹部4b、内径の大きな部分を大径凹部4cとすると、小径凹部4bにはオイルシール42が収容される。その一方、大径凹部4cには、連結部材8、スペーサ80、及びクッションラバー9が小径凹部4b側からこの順に収容される。
【0057】
また、大径凹部4cの開口側端部の内周には、周方向に沿って環状溝4dが形成されており、この環状溝4dにクッションラバー9の外周部が嵌合する。このクッションラバー9は、ゴム又はエラストマー等の弾性を有する部材であり、取付初期状態では、クッションラバー9の下端が凹部4aから下方へ突出する(図2)。
【0058】
ここでいう取付初期状態とは、クッションラバー9等の被取付部材がロッドガイド4等の取付対象に取り付けられた状態で、被取付部材に外力が作用していない状態をいう。例えば、クッションラバー9をロッドガイド4に取り付けた時点でクッションラバー9が自身の弾性力の反力としてロッドガイド4から受ける力は、外力には含まれない。
【0059】
また、クッションラバー9の上端は、スペーサ80の下端に当接している。さらに、このスペーサ80が連結部材8におけるシート部8bの外周部下端に当接し、このシート部8bの上端が小径凹部4bと大径凹部4cとの境界にできる環状の段差4eに当接している。つまり、本実施の形態では、連結部材8とスペーサ80がクッションラバー9と段差4eとで挟まれてロッドガイド4に保持されており、コイルばね7がその連結部材8を介してロッドガイド4に連結されている。
【0060】
なお、コイルばね7をロッドガイド4に連結するための構成は、図示する限りではなく、適宜変更できる。例えば、スペーサ80を廃し、連結部材8をクッションラバー9で直接押さえていてもよいのは勿論、連結部材8を廃してコイルばね7を直接ロッドガイド4に嵌合してもよい。
【0061】
つづいて、コイルばね7の下端に嵌合するシャッタ6は、コイルばね7の下端内周に嵌合するとともにピストンロッド3の外周に摺接する筒状のシャッタ本体6aと、このシャッタ本体6aの下端から径方向外側へ突出するとともに、コイルばね7の下端を支える環状のシート部6bとを含む。そして、取付状態のコイルばね7が自然長となった状態(取付初期状態)では、シャッタ6の下端が凹部4aから下方へ突出するとともにクッションラバー9の下端よりも下側に位置する(図2)。
【0062】
また、ピストンロッド3の外周には、シャッタ6の下端とロッドガイド4の下端4fに対向するように、環状のストッパ22がピストン2とともに装着されている。そして、緩衝器Dの伸長作動に伴い図2に示すピストン2が上側へ移動していくと、ストッパ22がシャッタ6の下端と、クッションラバー9の下端にこの順に突き当たる。さらに、そのストッパ22は、コイルばね7とクッションラバー9を圧縮しつつ上側へ移動してロッドガイド4の下端4fに当接すると、ストッパ22のそれ以上の上側への移動が阻止される。
【0063】
このように、ストッパ22とロッドガイド4が当接すると、ピストン2のそれ以上の上側への移動が阻止される。つまり、ストッパ22とロッドガイド4が当接したときのピストン位置がピストン2の伸側ストロークエンドとなる。そして、ピストン2が伸側ストロークエンドに達すると、緩衝器Dのそれ以上の伸長が阻止されて、緩衝器Dが最伸長状態(伸切り)となる。
【0064】
前述のように、シャッタ6は環状であり、そのシャッタ6の軸方向長さは、ストッパ22の上端からバイパス路Bにおける伸側室L1側の開口b1の上端までの長さ(図2中、距離y)よりも長い。このため、緩衝器Dの伸長行程において、開口b1の下端がシャッタ6の下端に達したときに(図3)、その開口b1をシャッタ6で塞げるのは勿論、ストッパ22がシャッタ6に当接し、このシャッタ6を押し上げつつ上側へ移動してロッドガイド4に突き当たるまでの間(図4)、開口b1をシャッタ6で閉塞した状態に維持できる。
【0065】
また、コイルばね7のシャッタ6側の端を自由端7a(図2)、ロッドガイド4側の端を固定端7bとした場合、コイルばね7を構成する線材同士が密着し、コイルばね7が密着長となった状態での固定端7bからシャッタ6の下端(ストッパ22側端)までの距離が、固定端7bから凹部4aの開口端までの距離z(図4)よりも短い。さらには、嵌合部8aの軸方向長さとシャッタ6の軸方向長さとを合わせた長さが上記距離zよりも短い。
【0066】
このため、図4に示すように、ストッパ22とロッドガイド4が当接したときに、コイルばね7の長さが密着長(密着高さ)よりも長くなり、シャッタ本体6aと連結部材8の嵌合部8aとの間に隙間ができるので、コイルばね7及びシャッタ6の耐久性を向上できる。
【0067】
以下、本実施の形態に係る緩衝器Dの作動について説明する。
【0068】
緩衝器Dが伸長してピストン2の上側(伸長側)へのストローク量が所定以上となると、開口b1の下端がシャッタ6の下端に達してシャッタ6がバイパス路Bを閉じる(図3)。そして、このような状態からさらに緩衝器Dが伸長してピストン2が上側へと進むと、ストッパ22がシャッタ6の下端に当接し、ピストン2が伸側ストロークエンドに達する(図4)までシャッタ6がバイパス路Bを閉じたままストッパ22により押し上げられる。
【0069】
このように、ピストン2の伸長側へのストローク量が所定量以上となる伸側ストロークエンド側の所定のストローク領域は、シャッタ6でバイパス路Bを閉じる閉塞領域となっている。そして、その閉塞領域の大きさは、開口b1の下端とシャッタ6の下端が径方向視で重なる閉塞領域の始端にピストン2が位置するときのストッパ22とロッドガイド4との間の距離x(図3)に等しい。
【0070】
また、その閉塞領域にピストン2がある場合、液体がバイパス路Bを通過できなくなるので減衰通路(伸側通路2a又は圧側通路2b)を通過する液体の流量が増える。このため、ピストン2が閉塞領域にある場合には、ピストン2がそれ以外の領域にある場合と比較して緩衝器Dの発生する減衰力が大きくなる。そして、その大きな減衰力で緩衝器Dの伸長速度を減速してからストッパ22ロッドガイド4に突き当てられるので、緩衝器Dの最伸長時の衝撃を緩和できる。
【0071】
さらに、ピストン2が閉塞領域にある場合であって、ストッパ22がシャッタ6を押し上げつつロッドガイド4に接近する領域では、コイルばね7が圧縮される。このように、コイルばね7が圧縮されると弾性力を発揮して、ストッパ22とロッドガイド4を離間させる方向、即ち、緩衝器Dを収縮方向へ附勢するとともに、この附勢力はストッパ22とロッドガイド4の接近に伴い大きくなる。
【0072】
また、ピストン2が閉塞領域にある場合であって、ストッパ22がロッドガイド4に近づくと、コイルばね7とともにクッションラバー9が圧縮されるようになる。当該クッションラバー9も圧縮されると弾性力を発揮して、ストッパ22とロッドガイド4を離間させる方向(収縮方向)へ附勢するとともに、この附勢力もストッパ22とロッドガイド4の接近に伴い大きくなる。
【0073】
このように、本実施の形態では、閉塞領域にあるピストン2が伸側ストロークエンドに接近するに従って、コイルばね7とクッションラバー9の二つの弾性部材が順次機能を開始する。そして、これらの弾性部材の附勢力によっても緩衝器Dの伸長作動が妨げられるので、緩衝器Dの最伸長時の衝撃をより確実に緩和できる。
【0074】
以下、本実施の形態に係る緩衝器Dの作用効果について説明する。
【0075】
本実施の形態の緩衝器Dは、シリンダ1と、このシリンダ1内に摺動可能に挿入されてそのシリンダ1内を伸側室L1と圧側室L2に区画するピストン2と、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されてピストン2に連結されるピストンロッド3と、シリンダ1の軸方向の上端部(一端部)に装着されてピストンロッド3を摺動自在に支持する環状のロッドガイド4とを備える。
【0076】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dは、ピストンロッド3の側方から開口して伸側室L1と圧側室L2とを連通するバイパス路(通路)Bと、ピストンロッド3の外周に軸方向へ移動可能に装着されてバイパス路(通路)Bを開閉するシャッタ6と、このシャッタ6とロッドガイド4とを連結するコイルばね(弾性部材)7とを備える。
【0077】
このように、本実施の形態では、シャッタ6とロッドガイド4とをコイルばね(弾性部材)7で連結した分、ロッドガイド4に対するシャッタ6の位置を下げられる。さらに、コイルばね7は弾性変形できるので、ピストン2の伸長側への移動がシャッタ6で阻止されるのを防止できる。このため、上記構成によれば、シャッタ6でバイパス路Bを閉じる閉塞領域(図3中、距離x)を従来(図5中、距離x1)よりも容易に大きくできる。
【0078】
さらに、閉塞領域でコイルばね(弾性部材)7が圧縮されると弾性力を発揮して緩衝器Dを収縮方向へ附勢するとともに、その附勢力は、緩衝器Dが伸長するほど大きくなる。このように、閉塞領域では、コイルばね(弾性部材)7の附勢力によっても緩衝器Dの伸長作動が妨げられるので、閉塞領域での伸側室L1の圧力が従来よりも低くても緩衝器Dの最伸長時の衝撃を緩和できる。
【0079】
また、本実施の形態の緩衝器Dは、バイパス路(通路)Bに挿入されてその流路面積を変更可能なニードル(弁体)5aと、ピストンロッド3内に挿入されるコントロールロッド5を介してニードル5aを駆動するアジャスタ(図示せず)とを備える。当該構成によれば、アジャスタの操作により、バイパス路Bを通過する液体の流量を変更して緩衝器Dの発生する減衰力を大小調節できる。
【0080】
そして、上記したような減衰力調整機構は、バイパス路Bを開閉するシャッタ6を備えていない緩衝器にも利用されている。そこで、このようなシャッタを備えた緩衝器と、シャッタを持たない緩衝器とで部品の共通化を図り、コストを低減しつつ閉塞領域を大きくする上では、本実施の形態の緩衝器Dのように、シャッタ6とロッドガイド4をコイルばね(弾性部材)7で連結するのが好ましい。
【0081】
なぜなら、例えば、図5に示す従来の緩衝器では、シャッタ600の軸方向長さを長くするとともに、バイパス路Bの開口b1を上側へずらせば、閉塞領域の大きさを大きくできる。しかし、そのようにしたのでは、ピストンロッド3の変更のみならずコントロールロッド5の変更まで必要になる。
【0082】
これに対し、本実施の形態の緩衝器Dのように、シャッタ6とロッドガイド4をコイルばね(弾性部材)7で連結すれば、開口b1の位置を変えずに閉塞領域を大きくできるので、ピストンロッド3とコントロールロッド5を変更せずに済むためである。
【0083】
なお、減衰力調整機構の構成は、適宜変更できる。例えば、本実施の形態では、ニードル5aの駆動にコントロールロッド5を利用しているが、油圧でニードル5aを駆動してもよい。さらに、コントロールロッド5で駆動する弁体は、ニードル5a以外でもよい。例えば、大きさの異なる複数の絞り孔が形成された筒状の弁体を設け、この弁体をコントロールロッドで回転駆動して横穴と対向する絞り孔を切換えてもよい。さらには、減衰力調整機構を廃するとしてもよい。
【0084】
また、本実施の形態では、シャッタ6とロッドガイド4とを連結するのにコイルばね7を利用しているが、シャッタ6とロッドガイド4とを連結する部材は、弾性を有する部材(弾性部材)であれば、コイルばね以外を利用してもよい。例えば、弾性部材としては、皿ばね、板ばね等のコイルばね以外のばね部材、ゴム、又はエラストマー等を利用できる。
【0085】
また、本実施の形態では、ピストンロッド3の外周にロッドガイド4の下端(先端)4f、及びシャッタ6の下端(先端)に当接可能なストッパ22が設けられている。さらに、ロッドガイド4には、その下端(先端)4fから開口してシャッタ6とコイルばね7を収容可能な凹部4aが形成されている。そして、コイルばね7の固定端(ロッドガイド4側の一端)7bから凹部4aの開口端までの距離z(図4)は、コイルばね7が自然長となった状態での固定端7bからシャッタ6の下端までの距離よりも短い。
【0086】
上記構成によれば、取付初期状態では、シャッタ6が凹部4aから下側へ突出し、ストッパ22がコイルばね7の附勢力に抗してシャッタ6を押し上げつつロッドガイド4側へ移動できる。さらに、ストッパ22とロッドガイド4の当接により、ピストン2のそれ以上の伸長側への移動を阻止できるので、ロッドガイド4で伸切り荷重を受けられる。
【0087】
また、本実施の形態において、コイルばね7の固定端(一端)7bから凹部4aの開口端までの距離z(図4)は、コイルばね7が密着長となった状態での固定端7bからシャッタ6の下端までの距離よりも長い。
【0088】
このため、ストッパ22とロッドガイド4が当接したときにシャッタ6が凹部4a内に収容されるとともに、コイルばね7が密着長とならない。つまり、上記構成によれば、コイルばね7が密着長となった状態で荷重を受けるのを防止できるので、コイルばね7の耐久性を向上できる。
【0089】
また、本実施の形態では、コイルばね7が連結部材8を介してロッドガイド4に連結される。そして、その連結部材8がコイルばね7の上端部(一端部)内周に嵌合する環状の嵌合部8aと、その嵌合部8aの一端から径方向外側へ突出してコイルばね7の上端(一端)が当接するシート部(一端側シート部)8bとを含む。さらに、シャッタ6がコイルばね7の下端部(他端部)内周に嵌合してピストンロッド3の外周に摺接する筒状のシャッタ本体6aと、そのシャッタ本体6aの一端から径方向外側へ突出してコイルばね7の下端(他端)が当接するシート部(他端側シート部)6bとを含む。
【0090】
そして、本実施の形態では、ストッパ22がロッドガイド4に当接した状態で、嵌合部8aとシャッタ本体6aとの間に隙間ができるとともに、前述のように、ストッパ22とロッドガイド4が当接した状態で、コイルばね7が密着長とならない設定となっている。このため、シャッタ6にコイルばね7の弾性力以上の力が加わらず、シャッタ6の耐久性を向上できる。
【0091】
しかし、ピストン2の伸長側への移動を阻止するための構成は、上記に限らず、適宜変更できる。例えば、コイルばね7を密着長にしたり、シャッタ6と連結部材8又はロッドガイド4とを突き当てたりしてピストン2の伸長側への移動を阻止してもよい。そして、このような変更は、シャッタ6をロッドガイド4に連結する弾性部材の構成によらず可能である。
【0092】
さらに、本実施の形態では、シャッタ6がピストンロッド3の外周に摺接する環状のシャッタ本体6aを含む。このため、シャッタ6でバイパス路Bの開口b1を閉じた状態に維持するのが容易である。
【0093】
しかし、シャッタ6でバイパス路Bの開口b1を開閉できれば、シャッタ6は必ずしも環状でなくてもよく、シャッタ6の構成は適宜変更できる。さらには、弾性部材を介してシャッタ6をロッドガイド4に連結するための構成も適宜変更できる。具体的には、連結部材8の構成を適宜変更できるのは勿論、連結部材8を廃し、弾性部材を直接ロッドガイド4に連結してもよい。そして、これらの変更は、シャッタ6をロッドガイド4に連結する弾性部材の構成、及びピストン2の伸長側への移動を阻止するための構成によらず可能である。
【0094】
また、本実施の形態では、ロッドガイド4に形成された凹部4aの内周に環状のクッションラバー9が装着されている。そして、取付初期状態では、クッションラバー9の下端(先端)が凹部4aから外方へ突出するとともに、シャッタ6の下端(先端)がクッションラバー9の下端(先端)よりも下側(ストッパ22側)に位置する。
【0095】
上記構成によれば、緩衝器Dの伸長行程において、先ずコイルばね7が圧縮されて緩衝器Dを収縮方向へ附勢し、その後にクッションラバー9も圧縮されて緩衝器Dを収縮方向へ附勢できる。このため、コイルばね7とクッションラバー9の附勢力によっても緩衝器Dの伸長作動が妨げられるとともに、この伸長作動を妨げる力を段階的に大きくできる。よって、緩衝器Dの最収縮時の衝撃を確実に緩和できる。さらには、緩衝器Dの伸長作動を妨げる力が急激に大きくならず、緩衝器Dが車体と車輪との間に介装される場合には、車両の乗り心地を良好にできる。
【0096】
しかし、クッションラバー9は、必ずしも設けられていなくてもよい。そして、このような変更は、シャッタ6をロッドガイド4に連結する弾性部材の構成、ピストン2の伸長側への移動を阻止するための構成、シャッタ6の構成、及び弾性部材を介してシャッタ6をロッドガイド4に連結するための構成によらず可能である。
【0097】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0098】
B・・・バイパス路(通路)、D・・・緩衝器、L1・・・伸側室、L2・・・圧側室、1・・・シリンダ、2・・・ピストン、3・・・ピストンロッド、4・・・ロッドガイド、4a・・・凹部、5・・・コントロールロッド、5a・・・ニードル(弁体)、6・・・シャッタ、6a・・・シャッタ本体、6b・・・シート部(他端側シート部)、7・・・コイルばね(弾性部材)、7b・・・固定端(ロッドガイド側の一端)、8・・・連結部材、8a・・・嵌合部、8b・・・シート部(一端側シート部)、9・・・クッションラバー、22・・・ストッパ
図1
図2
図3
図4
図5