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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】電気転てつ機
(51)【国際特許分類】
   B61L 5/06 20060101AFI20220831BHJP
   H02K 49/02 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B61L5/06
H02K49/02 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018118098
(22)【出願日】2018-06-21
(65)【公開番号】P2019217969
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 育雄
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-071958(JP,A)
【文献】実開昭51-044807(JP,U)
【文献】特開平01-238401(JP,A)
【文献】実開昭57-042583(JP,U)
【文献】特開2012-102560(JP,A)
【文献】特開2007-211558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 5/06
H02K 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転動力に基づく前記モータの回転軸と減速機構部と転換機構部との連係動作によって分岐器を転換させる電気転てつ機であって、
前記回転軸の前記減速機構部側に設けられ、前記回転軸の回転動力を前記減速機構部に伝達するクラッチ部と、
前記減速機構部側とは反対側の前記回転軸の他端の側に設けられ、前記回転軸を制動する電磁ブレーキ部と、
前記モータおよび前記電磁ブレーキ部への通電を制御する通電制御部であって、前記モータへの通電停止および前記電磁ブレーキ部への通電開始を行うことで転換終了時の通電切替制御を行う通電制御部と、
を備え
前記モータは、前記クラッチ部と前記電磁ブレーキ部との間に配置され、
前記電磁ブレーキ部は、
前記回転軸の前記他端の末端寄りに固定された取付円板および当該取付円板の前記モータ側の側面に固定された筒状の導電体と、
前記回転軸を挿通する挿通孔を有し、前記回転軸を枢支する固定部と、
前記固定部に固定されたコイル部と、
を有し、
前記取付円板および前記導電体は、前記回転軸の前記他端の末端寄りに固定された前記取付円板を底部とし、前記モータ側に開口方向を向けて、前記回転軸と一体で回転する有底の筒状体を構成し、
前記固定部および前記コイル部は、前記有底の筒状体の内側に配置され、
前記コイル部は、前記通電制御部による通電制御がなされる電磁コイル部を内層側に、前記導電体に対向するインダクターを外層側に配置した一体構成である、
電気転てつ機。
【請求項2】
前記通電制御部は、前記電磁ブレーキ部へのブレーキ力を調整可能に設定する電磁ブレーキ調整部を有する、
請求項1に記載の電気転てつ機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道線路の分岐器を定位/反位に転換させる電気転てつ機に関する。
【背景技術】
【0002】
分岐器の転換に要する動力源としてモータを搭載した電気転てつ機が知られている。電気転てつ機は、モータで発生させた回転動力をクラッチで減速歯車等の減速機構部へ伝達し、減速機構部によって転換機構部並びに鎖錠機構部を駆動させるのに適切なトルクに変換して分岐器を転換させる。
【0003】
ここで、電気転てつ機用のクラッチは、妨害や過負荷が生じた場合に減速歯車等に加わるモータからの衝撃を緩衝したり、妨害状態が継続した場合にモータの焼損を防止する重要な構成要素である。従来、このクラッチには摩擦クラッチが用いられていた。しかし、摩擦クラッチは、温度による伝達トルク特性の変化が大きいため季節に応じた定期的なクラッチ性能の調整を行う必要があり、定期検査の工数が増えるためメンテナンス性に好ましくない点があった。そのため、近年では、摩擦クラッチよりも温度による伝達トルク特性の変化が小さいマグネットクラッチが主流になりつつある。
【0004】
ところで、電気転てつ機では、分岐器の転換終了後に生じる反転が問題となる。反転は、モータを停止させた後も、慣性により減速歯車等が回転を続けることで起こる。そして、前述のようにクラッチにマグネットクラッチを用いると、モータの慣性にマグネットクラッチの慣性が加わり、反転が生じ易くなる。
【0005】
そのため、モータ軸延長上にマグネットクラッチとマグネットブレーキを取付け、慣性を抑える程度のブレーキ力を常に働かせることで、反転抑止あるいは反転量を減少させるようにしたものが最も多く使用されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実公平7-6054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、この方式は、マグネットクラッチのトルクが調整できないので負荷が軽くなると転換中の回転速度が上がり、転換終了後の転換歯車の回転速度増加となり、ブレーキ力不足で反転量が許容範囲を超え、転換不能に繋がることが起こる。この方式は、転換に必要なモータ電流に加えて、ブレーキ力を打ち消すだけの余計なモータ電流を確保してモータ側のトルクを大きくする必要があり、その分大型のモータが必要であった。場合によっては、電源容量を増やしたり、電源ケーブルを取り換えるといった付帯設備の変更が必要となる場合もあった。
【0008】
本発明は、こうした事情に鑑みてなされたものであり、転換中の余計な電力消費を抑え、且つ、転換終了後に生じる反転を防止することができる電気転てつ機を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための第1の発明は、
モータの回転動力に基づく前記モータの回転軸と減速機構部と転換機構部との連係動作によって分岐器を転換させる電気転てつ機であって、
前記回転軸を制動する電磁ブレーキ部と、
前記モータおよび前記電磁ブレーキ部への通電を制御する通電制御部であって、前記モータへの通電停止および前記電磁ブレーキ部への通電開始を行うことで転換終了時の通電切替制御を行う通電制御部と、
を備えた電気転てつ機である。
【0010】
第1の発明によれば、転換終了時にモータへの通電を停止するとともに、電磁ブレーキ部への通電を開始することができる。したがって、転換中は電磁ブレーキ部へ通電する必要が無くなるため、転換中の余計な電力消費を抑え、且つ、転換終了後の反転を防止することができる電気転てつ機を実現できる。
【0011】
また、第2の発明は、
前記通電制御部は、前記電磁ブレーキ部へのブレーキ力を調整可能に設定する電磁ブレーキ調整部を有する、
第1の発明の電気転てつ機である。
【0012】
第2の発明によれば、電磁ブレーキ部のブレーキ力の設定が調整可能であるため、例えば製造時、設置時、或いはメンテナンス時における当該ブレーキ力の調整が容易となる。
【0013】
また、第3の発明は、
前記電磁ブレーキ部は、
前記回転軸と一体で回転する筒状の導電体と、
前記導電体の内側に配置された固定部に設けた前記導電体に対向するコイル部と、
を有し、前記コイル部が通電されることで前記回転軸を制動させるブレーキ力を発生させる、
第1又は第2の発明の電気転てつ機である。
【0014】
第3の発明によれば、モータの回転軸と一体で回転する筒状の導電体と、導電体の内側において導電体と対向させて固定配置されたコイル部とで電磁ブレーキ部を構成し、コイル部の通電によってブレーキ力を発生させることができる。
【0015】
また、第4の発明は、
前記コイル部は、電磁コイル部を内層側に、インダクターを外層側に配置して構成される、
第3の発明の電気転てつ機である。
【0016】
第4の発明によれば、内層側に電磁コイル部を、外層側にインダクターを配置してコイル部を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】電気転てつ機の使用形態を説明するための鉄道線路のポイント周辺を示す平面図。
図2】電気転てつ機の駆動機構部の構成例を説明するための部分断面表示した側面図。
図3図2のA-A断面図。
図4】電気転てつ機の制御系の機能構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付す。
【0019】
図1は、本実施形態における電気転てつ機の使用形態を説明するための鉄道線路のポイント周辺を示す平面図である。本実施形態における電気転てつ機100は、ポイント2の分岐器4に対して所定位置に固定され、分岐器4に接続して使用される。
【0020】
分岐器4は、連結板8により一体に連結された可動レール10を、基本レール6の間で、枕木12に固定した床板14の上で枕木長手方向に横スライド自在に支持している。可動レール10の先端部付近の枕木は、通常の枕木12よりも長尺な転てつ機用枕木12Bとされ、基本レール6の外側に延びた部分には床板14に連結された鉄製の敷板18が設置されている。
【0021】
電気転てつ機100は、この敷板18に固定され、動作桿102には転てつ棒16を介して連結板8が連結され、鎖錠桿104には接続桿20を介して可動レール10の先端部が連結される。そして、モータ230が発生させた回転動力を、内蔵する転換機構部によって動作桿102の直線運動に変換して分岐器4を定位/反位に転換動作させるとともに、内蔵する鎖錠機構部によって鎖錠することで可動レール10の定位/反位の状態を固定し、鉄道車両通過時の外力により分岐器4の状態が変わらないようにする。
【0022】
電気転てつ機100は、開閉式のケース101内に、回路制御器110と、制御リレー112と、外部端子板114と、電磁ブレーキ制御器116と、不図示の減速機構部、転換機構部および鎖錠機構部の各機構部とを内蔵する。そして、ケース101の側部には、クラッチ部210と、モータ230と、電磁ブレーキ部250との3つを一体化した駆動機構部200を備える。
【0023】
電源や外部装置(例えば連動装置等)との信号に必要なケーブル類は一旦外部端子板114に集約されたのちケーブル束109としてケース101から纏めて引き出される。連動装置から転換指令信号を受信すると、制御リレー112からモータ230に電力が供給され、モータ230の回転動力がクラッチ部210、減速機構部(減速歯車)、転換機構部へと伝わり、転換機構部によって電気転てつ機100の解錠、転換、鎖錠の一連の動作が行われる。そして、転換終了時に回路制御器110がモータ電源を遮断するとともに鎖錠機構部の鎖錠状態を確認し、転換完了信号を連動装置に送信する。
【0024】
[駆動機構部について]
図2は、駆動機構部200の構成例を説明するための部分断面を示した側面図である。また、図3は、図2のA-A断面図である。図2および図3に示すように、駆動機構部200は、出力軸202の軸に沿って、出力軸202の突出側から順にクラッチ部210、モータ230、電磁ブレーキ部250が直線状に一体に連結されてなる。
【0025】
クラッチ部210は、モータ230の回転軸232の回転動力を所定の上限トルク以下のトルクで出力軸202へ伝達する手段であり、例えば、マグネットクラッチで構成される。回転軸232と出力軸202とは同中心軸上に位置し、それぞれがボールベアリング或いは軸受で支えられている。
【0026】
モータ230は、電気転てつ機100の駆動源であり、回路制御器110による電源投入によって電力が供給されることで転換用のトルクを発生させる。
【0027】
電磁ブレーキ部250は、転換終了時に減速歯車等を所定の停止位置(回転角度)で停止させるための手段であって、モータ230の回転軸232に連結されている。以下、電磁ブレーキ部250の構成について詳細に説明する。
【0028】
先ず、モータ230の回転軸232の他端(出力軸202側とは反対側の端部)には、アンカーリング取付円板31が固定される。そして、アンカーリング取付円板31の外周部において、モータ230側を向いた面に、導電体である円筒状のアンカーリング32が固定されている。円筒状のアンカーリング32の開口部を回転軸232の方向に向け、円筒軸はモータ230の回転軸232と同軸となるようにしてアンカーリング取付円板31に固定されている。また、アンカーリング32のアンカーリング取付円板31に取り付けられている側と反対側は、モータ230との間に隙間を設けて露出した開放状態となっており、アンカーリング32とアンカーリング取付円板31との2つの部材に着目した形状は、アンカーリング取付円板31が底部を構成し、アンカーリング32が側部を構成した有底の筒状形状と言える。このアンカーリング32は、アルミニウム、銅などの金属や合金又は合成樹脂により形成され、導電性を有する。そして、回転軸232は、アンカーリング32の円筒軸の位置において、ブレーキケース252および当該ケースに固定された電磁コイル取付台33に対してベアリング等で枢支されている。
【0029】
ブレーキケース252とともに回転軸232を枢支する電磁コイル取付台33は、中心に回転軸232を挿通する挿通孔を備えた円筒部材であって、アンカーリング32の内側に入り込むようにしてブレーキケース252に対して固定されている。
【0030】
この電磁コイル取付台33は、軟磁性材により形成され、アンカーリング32に対向する外周に巻回して配置されたコイル部35を有する。コイル部35は、内層側(回転軸232に近く、アンカーリング32から遠い側)に電磁コイル部36を配置し、外層側(アンカーリング32に近く、回転軸232から遠い側)にインダクター37を配置して構成される。電磁コイル部36は、電磁ブレーキ制御器116(図1参照)により通電制御される。また、インダクター37の外周面は、アンカーリング32の内周面との間に僅かに隙間が出来るように設定されている。
【0031】
電磁ブレーキ制御器116は、例えば、ボリュームやデジタルスイッチ等により実現される電圧調整器118(図1参照)を備えるとともに、電圧調整器118による電圧設定に応じた電流を電磁コイル部36へ供給することができる回路を搭載する。そして、電磁コイル部36を励磁させることにより、インダクター37を介して、回転軸232と一体のアンカーリング32と、電磁コイル部36との間で電磁的な作用が生じ、回転軸232を制動させる電磁ブレーキとしての機能を果たす。
【0032】
[通電制御について]
図4は、本実施形態における電気転てつ機100の通電制御に係る構成例を示すブロック図である。通電制御部270は、電気転てつ機100の外部から入力される転換指令信号に基づいて、電源部260から供給される電力をモータ230へ供給させることで転換動作を行う制御を行う。また、転換動作中以外においては、電磁ブレーキ部250を作動させるための電力を電源部260から供給するように制御する。具体的には、分岐器4の転換開始時において電磁ブレーキ部250への通電停止およびモータ230への通電開始を行うことで転換開始時の通電切替制御を行う一方、転換終了時においてモータ230への通電停止および電磁ブレーキ部250への通電開始を行うことで転換終了時の通電切替制御を行う。転換開始は転換指令信号に基づき判定することができ、転換終了は適宜公知技術を利用することで判定することができる。例えば、モータ230の回転数が規定回転数に達したか否か、転換機構部や鎖錠機構部に設置したセンサーの検知結果、等に基づいて転換終了を判定することができる。
【0033】
通電制御部270は、例えば、図1の回路制御器110や制御リレー112、電磁ブレーキ制御器116、等によって構成される。モータ230の動作制御については従来の電気転てつ機と同様であり、本願実施形態において特徴的な制御を担う構成として、通電制御部270は切替部290とブレーキ制御部280とを備える。
【0034】
切替部290は、モータ230およびブレーキ制御部280の何れに電源部260を接続させるかを切り替えるスイッチ回路であり、例えば制御リレー112によって構成することができる。この切替部290は、転換指令信号に基づく転換開始の判定がなされた場合に、電源部260をモータ230に接続させて電源部260からの電力供給先をモータ230に切り替える。また、転換終了の判定がなされた場合に、電源部260をブレーキ制御部280に接続させて電源部260からの電力の供給先をブレーキ制御部280を介した電磁ブレーキ部250に切り替える。
【0035】
ブレーキ制御部280は、電磁ブレーキ部250へ供給する電圧および電流を制御することで、電磁ブレーキ部250で発生させる励磁力を制御する手段である。例えば、図1の電磁ブレーキ制御器116がこれに該当する。ブレーキ制御部280は、電圧調整部281と、整流部283と、電流調整部285とを含む。切替部290の切り替えによって電源部260からブレーキ制御部280へと供給された電力は、電圧調整部281にて設定された適切な電圧に調整され、整流部283で電流が整流された後、電流調整部285で電磁ブレーキ部250に供給する電流が許容電流以下となるように制限されて電磁ブレーキ部250に供給される。本実施形態では、電圧調整部281による電圧調整によって、減速歯車等を所定の停止位置で停止できるだけのブレーキ力を電磁ブレーキ部250が発生するように調整される。例えば、図1の電圧調整器118は、電圧調整部281に該当する。
【0036】
なお、ブレーキ制御部280がCPU(中央演算装置)を搭載し、プログラムを実行して制御機能を実現する構成の場合には、電圧調整部281を、設定値を記憶するICメモリ等により実現してもよい。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の電気転てつ機100によれば、分岐器4の転換終了時にモータ230への通電停止を行い、電磁ブレーキ部250の通電開始を行うことができる。そして、減速歯車等が所定の停止位置で停止するように調整されたブレーキ力で電磁ブレーキ部250を作動させることができる。クラッチ部210にマグネットクラッチを使用したことによりモータ230の慣性にマグネットクラッチの慣性が加わる状況下であっても、それを加味したブレーキ力に調整することが可能となる。本実施形態によれば、このブレーキ力は、転換動作中には発揮されない。したがって、転換中の余計な電力消費を抑え、且つ、転換終了後の反転を防止できる。また、モータ230の作動と電磁ブレーキ部250の作動とは同時に行われることがないため、両者を合わせた電力量が必要となることがなく、電源部260の容量を増やしたり、電源ケーブルを電流容量の大きなケーブルに取り換える必要もない。転換中に、ブレーキ力を打ち消すだけの余計なトルクが要求されることがないため、転換に必要なトルクを発生できるだけの容量のモータで済む。
【0038】
一方で、電気転てつ機100の負荷である分岐器には多数の種類や大きさがあり、分岐器の床板給油状態や可動レールと床板の接触状態等の保守状態も関係して、電気転てつ機100から見る負荷の大きさは分岐器毎に様々であるので、減速歯車等を目的の停止位置で停止させるには、それぞれの分岐器状態に合わせた制動トルクの調整が重要となる。その点、本実施形態の電気転てつ機100によれば、例えば設置時において、転換対象の分岐器の状態に合わせて電圧調整部281を調整することができる。したがって、個々の電気転てつ機100毎に、転換対象の分岐器(負荷)に応じた最適な制動トルク調整を行うことができ、減速歯車等の停止位置のばらつきを抑えることができる。なお、電圧調整部281による調整は、製造時やメンテナンス時等においても行うことができる。
【0039】
また、減速歯車等の停止位置にばらつきがあると、転換に要する時間(転換時間)が変動する。例えば、減速歯車等が慣性によって超過回転した場合、その分の逆回転に時間を要し、転換動作が遅れる場合がある。その点、本実施形態の電気転てつ機100によれば、減速歯車等を所定の停止位置に停止させることができるため、転換時間の変動を抑えて決まった時間内に確実に転換動作を終えることが可能となる。また、可動K字クロッシング、高速分岐器のポイント部や可動クロッシング、シーサスクロッシング等のように複数台の電気転てつ機を同時に転換させる場合や、2台の電気転てつ機によって番数の大きい分岐器を転換させる場合等においては、それらの転換動作をほぼ同時に開始させて同期させることができるようになる。したがって、何れかの電気転てつ機において転換動作が遅れる等して転換時間が増大することがない。
【0040】
なお、本発明の適用形態は、上記した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない限りにおいて適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
【0041】
例えば、上記実施形態では、電力の供給先を転換開始時にモータ230に切り替え、転換終了時にブレーキ制御部280に切り替えることとして、減速歯車等が停止した後も電磁ブレーキ部250を作動させておくこととした。これに対し、減速歯車等が停止した後は、電磁ブレーキ部250への通電停止を行う構成としてもよい。例えば、鎖錠機構部が鎖錠状態に至ったことをセンサー等で検知した際に、電磁ブレーキ部250への通電を停止することとしてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、電圧調整部281により電圧を調整することで電磁ブレーキ部250のブレーキ力を調整するとしたが、電流を調整する構成でもよい。その場合は、電流調整部285による電流調整をボリュームやデジタルスイッチ等で変更可能に構成する。或いは、電流調整部285の調整設定値を記憶するICメモリ等により実現するとしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
100 電気転てつ機、200 駆動機構部、210 クラッチ部、230 モータ、232 回転軸、250 電磁ブレーキ部、31 アンカーリング取付円板、32 アンカーリング、35 コイル部、36 電磁コイル部、37 インダクター、33 電磁コイル取付台、252 ブレーキケース、202 出力軸、260 電源部、270 通電制御部、280 ブレーキ制御部、281 電圧調整部、283 整流部、285 電流調整部、290 切替部、2 ポイント、4 分岐器
図1
図2
図3
図4