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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-30
(45)【発行日】2022-09-07
(54)【発明の名称】移動足場
(51)【国際特許分類】
   E04G 1/22 20060101AFI20220831BHJP
   E04G 1/24 20060101ALI20220831BHJP
   E04G 1/36 20060101ALI20220831BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
E04G1/22 D
E04G1/24 301B
E04G1/24 302N
E04G1/36 302A
E04G1/36 302G
E04G1/36 302F
E04G1/36 302H
E04G23/08 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018129670
(22)【出願日】2018-07-09
(65)【公開番号】P2020007786
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000227146
【氏名又は名称】日綜産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(72)【発明者】
【氏名】塚田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 健二
(72)【発明者】
【氏名】阿部 睦樹
(72)【発明者】
【氏名】吉村 公一
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 暁伸
(72)【発明者】
【氏名】田中 聖人
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-101332(JP,A)
【文献】特開平9-156891(JP,A)
【文献】特開2014-145160(JP,A)
【文献】特開2017-105399(JP,A)
【文献】特開昭62-249900(JP,A)
【文献】特開平4-24182(JP,A)
【文献】特開2017-166289(JP,A)
【文献】特開2014-167229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/00- 7/34
E04G 23/00-23/08
E04G 27/00
B61D 15/00-15/12
B66F 9/00-11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車と、
上記台車上に搖動自在に取付けたスイングフレームと、
上記スイングフレーム上に前記スイングフレームとは異なる方向へ搖動自在に取付けたガイド支持フレームと、
上記ガイド支持フレーム上に取付けた平行配置される一対のガイドレールと、
上記ガイドレールの姿勢を固定する固定装置と、
上記ガイドレールに沿って移動可能であるとともに昇降可能な第一昇降足場と第二昇降足場とを備えた
ことを特徴とする昇降自在な移動足場。
【請求項2】
上記スイングフレームは、上記台車に対して前後方向或いは左右方向へ揺動自在に取り付けられており、
上記ガイド支持フレームは、上記スイングフレームに対して上記スイングフレームの前後方向と左右方向のいずれかへ揺動自在に取り付けられるとともに、
上記ガイドレールは、上記台車の進行方向に対して左右方向に沿って上記ガイド支持フレームに取り付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の昇降自在な移動足場。
【請求項3】
上記固定装置は、
上記台車と上記スイングフレームとの間に介装されて上記スイングフレームを上記台車に対して揺動および固定可能な第一ジャッキと、
上記スイングフレームと上記ガイド支持フレームとの間に介装されて上記ガイド支持フレームを上記スイングフレームに対して揺動および固定可能な第二ジャッキとを備えた
ことを特徴とする請求項1または2に記載の移動足場。
【請求項4】
上記ガイドレールは、
上記台車に連結されるチャンネル状のアウターレールと、
上記アウターレールの左右両側の内方にそれぞれ移動自在に挿入される一対のインナーレールと備えた
ことを特徴する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の移動足場。
【請求項5】
上記第一昇降足場と第二昇降足場は、
上記ガイドレールを走行する走行フレームと、
足場台と、
上記走行フレームと上記足場台との間に介装されるシザースリンクを有する昇降機とを備えた
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の移動足場。
【請求項6】
上記走行フレームは、
矩形の本体枠と、
上記本体枠の四隅に設けられて上記ガイドレールを走行可能な四つの車輪と、
上記ガイドレールに対して前側と後側の左右車輪を連結する一対の車輪ドライブシャフトと、
各車輪ドライブシャフトに回転動力を伝達する減速機と、
上記減速機に連結されて外部からの回転動力を上記減速機に入力するハンドルとを備えた
ことを特徴とする請求項5に記載の昇降自在な移動足場。
【請求項7】
上記昇降機は、
上記シザースリンクと、
上記走行フレームに取り付けるリンク取付けフレームと、
上記シザースリンクの基端の一方を軸支して上記リンク取付けフレームに固定するブラケットと、
上記シザースリンクの基端の他方を軸支するとともに上記リンク取付けフレームに対してスライド自在に取り付けた連結フレームと、
上記連結フレームに回転自在に螺合した螺子ロッドと、
上記螺子ロッドを回転駆動可能なモータとを備えた
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の移動足場。
【請求項8】
上記ガイドレールの両端にアウトリガーを備えた
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の移動足場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道や道路のトンネルの内壁、石油タンクやドーム状構築部の内壁等の構築、解体、補修工事の使用に適する昇降自在な移動足場に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道のトンネル内壁や高速道路のトンネルの内壁は長期間の使用中に経年劣化して、内壁が剥離したり、ボルト等の金具が錆びたりする為、常に安全を期してその点検や補修を目的としたメンテナンス作業が行われている。
【0003】
そして、このようなメンテナンス作業は鉄道のトンネル内の軌道上又は高速道路のトンネル内の路面上を走行する台車に搭載した昇降自在な移動足場を利用して行っている。
【0004】
このようなメンテナンス作業に使用される昇降自在な移動足場としては、例えば特許文献1に開示されているような移動足場が開発されている。この移動足場は、軌道上を走行する台車と、台車上に搭載した伸縮脚と作業足場とを備えており、トンネルの内壁面のメンテナンス個所の高さに応じて伸縮脚を伸縮して作業足場を昇降させ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-145160号公報(図面、要約)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、トンネル内壁の老朽化に対して、トンネルの内壁面にパネルを張り付けて対処する補修が行われるようになってきている。
【0007】
この様なパネルを利用した補修を行う場合、上記特許文献1に開示されている移動足場に対して次のような不便さを更に改善することが望まれている。
【0008】
トンネル内壁面を補修するためのパネルは一般的に大型であってパネルの貼り付けにはパネルの両端を作業者が支持する必要があるが、従来の移動足場は軌道上を走行する台車上に一つの作業台しか搭載されていないため、トンネル天井付近の内壁にパネルを張りたい場合には、移動足場の他に別途高所での作業を可能とする仮設足場を設置する必要がある。
【0009】
このように、従来の移動足場では、単体でメンテナンス作業を行えない場合に、面倒な仮設足場の組み立てと分解作業が必要となるので、メンテンス作業が面倒であるとともに多大な作業時間が必要であった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、メンテナンス作業を容易としつつ時間も短縮可能な移動足場を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明の移動足場は、台車と、台車上に搖動自在に取付けたスイングフレームと、スイングフレーム上にスイングフレームとは異なる方向へ搖動自在に取付けたガイド支持フレームと、ガイド支持フレーム上に取付けた平行配置される一対のガイドレールと、各ガイドレールの姿勢を固定する固定装置と、ガイドレールに沿って移動可能であるとともに昇降可能な第一昇降足場と第二昇降足場とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、スイングフレームは、台車に対して前後方向或いは左右方向へ揺動自在に取り付けられ、ガイド支持フレームは、スイングフレームに対してスイングフレームの前後方向と左右方向のいずれかへ揺動自在に取り付けられるとともに、ガイドレールは、台車の進行方向に対して左右方向に沿ってガイド支持フレームに取り付けられてもよい。
【0013】
さらに、固定装置は、台車とスイングフレームとの間に介装されてスイングフレームを台車に対して揺動および固定可能な第一ジャッキと、スイングフレームとガイド支持フレームとの間に介装されてガイド支持フレームをスイングフレームに対して揺動および固定可能な第二ジャッキとを備えていてもよい。
【0014】
また、ガイドレールは、台車に連結されるチャンネル状のアウターレールと、アウターレールの左右両側の内方にそれぞれ移動自在に挿入される一対のインナーレールと備えていてもよい。
【0015】
そして、第一昇降足場と第二昇降足場は、ガイドレールを走行する走行フレームと、足場台と、走行フレームと足場台との間に介装されるシザースリンクを有する昇降機とを備えていてもよい。
【0016】
また、走行フレームは、矩形の本体枠と、本体枠の四隅に設けられてガイドレールを走行可能な四つの車輪と、ガイドレールに対して前側と後側の左右車輪を連結する一対の車輪ドライブシャフトと、各車輪ドライブシャフトに回転動力を伝達する減速機と、減速機に連結されて外部からの回転動力を減速機に入力するハンドルとを備えていてもよい。
【0017】
さらに、昇降機は、シザースリンクと、走行フレームに取り付けるリンク取付けフレームと、シザースリンクの基端の一方を軸支してリンク取付けフレームに固定するブラケットと、シザースリンクの基端の他方を軸支するとともにリンク取付けフレームに対してスライド自在に取り付けた連結フレームと、連結フレームに回転自在に螺合した螺子ロッドと、螺子ロッドを回転駆動可能なモータとを備えていてもよい。また、移動足場は、ガイドレールの両端にアウトリガーを備えてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の移動足場によれば、メンテナンス作業が容易となるとともに、作業時間も短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施の形態に係る昇降自在の正面図である。
図2】同じく右側面図である。
図3】(A)はベースユニット部分の正面図、(B)は平面図、(C)は側面図である。
図4】ベースユニット部分の斜視図である。
図5】(A)は第一ジャッキ部分の平面図、(B)は正面図である。
図6】レール上に走行フレームとリンク取付けフレームを重ねて取付けた状態の一部切欠き斜視図である。
図7】走行フレームとリンク取付けフレームの分解斜視図である。
図8】(A)は走行フレームの平面図、(B)は正面図である。
図9】(A)は転倒防止フランジを設けた車輪ハウジングの横断平面図、(B)は側面図、(C)は正面図である。
図10】リンク駆動機構を組み込んだリンク取付けフレームの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の一例を図1から図10に基づいて説明する。 本実施の形態に係る移動足場は鉄道におけるトンネル内壁の点検作業や補修作業といったメンテナンス作業に利用するものとして説明されるが、高速道路のトンネル内の補修工事、点検作業、或いは、ドーム状の構築物の内壁工事に利用できることは言うまでもない。
【0021】
本実施の形態では、トンネル内のメンテナンス作業に利用される移動足場であるため、台車1の車輪Sは軌道L上を走行するが、高速道路のトンネルのメンテナンス作業に利用される場合、移動足場における台車1の車輪は、路面上の走行に向くものを利用すればよい。
【0022】
以下、移動足場について詳細に説明する。この実施の一例に係る昇降自在な移動足場Pは、軌道L上を走行する台車1と、台車1上に搖動自在に取付けたスイングフレーム2と、スイングフレーム2上に搖動自在に取付けたガイド支持フレーム5と、ガイド支持フレーム5上に取付けた二本の平行なレール3,3と、各ガイドレール3,3の両側に設けた固定装置としてのアウトリガー4,4と、ガイドレール3,3に沿って移動可能であるとともに昇降可能な第一昇降足場A1と第二昇降足場A2とを備えている。
【0023】
台車1は、図3に示すように、矩形の台車フレーム6と、台車フレーム6の左右両側に回転自在に取付けられた一対の車輪S,Sとを備えており、軌道L上を走行できる。台車フレーム6は矩形の本体枠6aと本体枠6aに架け渡した一対の梁材6bとで構成されている。台車1は、自走できるように、車輪S,Sを回転駆動可能な駆動源を備えていてもよい。
【0024】
この台車フレーム6の上方には、図3に示すように、スイングフレーム2と、ガイド支持フレーム5と、ガイドレール3,3と、アウトリガー4,4とでなるベースユニットBUが取り付けられている。
【0025】
スイングフレーム2は、矩形の枠体2aを有しており、図4に示すように、台車1の進行方向に対して左右方向に沿って揺動可能となるように台車1に取り付けられている。より詳しくは、スイングフレーム2は、前後両側中央に設けた第一ブラケットB1を介して台車フレーム6の梁材6bにヒンジ結合されていて、台車1の左右方向に沿って搖動自在に取付けられている。つまり、スイングフレーム2は、台車1の進行方向に沿う軸線を中央として台車1の左右方向に揺動可能である。
【0026】
また、スイングフレーム2の枠体2aの前後、左右と台車1の本体枠6aとの間の四箇所にはそれぞれ第一ジャッキJ1が介装されている。これら第一ジャッキJ1は、本体枠6aに対して台車1の左右方向へ揺動可能に取り付けた螺子軸と、螺子軸に螺合するナットと、ナットを軸周りに回転可能且つ揺動可能に保持するナットをスイングフレーム2の枠体2aに連結するブラケットB4とを備えている。よって、図5(B)に示すように、ナットを螺子軸に対して回転させると、送り螺子機構の要用で螺子軸の揺動支点とナットとの距離が変化してスイングフレーム2を第一ブラケットB1のヒンジ結合点を中心に台車1に対して左右方向へ揺動させ得るとともに、所望する位置でスイングフレーム2の姿勢を固定できる。なお、螺子軸を台車1に、ナットおよびブラケットB4をスイングフレーム2に取り付けて、第一ジャッキJ1を台車1とスイングフレーム2との間に介装してもよい。
【0027】
さらに、このスイングフレーム2の上方には、ガイド支持フレーム5がスイングフレーム2に揺動方向と直交する方向へ揺動可能に取り付けられている。ガイド支持フレーム5は、矩形の枠体5aを有しており、図4に示すように、スイングフレーム2に対してスイングフレーム2の前後方向に沿って揺動可能となるようにスイングフレーム2に取り付けられている。より詳しくは、ガイド支持フレーム5は、前後両側中央に設けた第二ブラケットB2を介してスイングフレーム2の枠体2aにヒンジ結合されていて、スイングフレーム2の前後方向に沿って搖動自在に取付けられている。つまり、ガイド支持フレーム5は、スイングフレーム2の揺動方向に直交する方向に沿う軸線を中央としてスイングフレーム2の前後方向に揺動可能である。なお、ガイド支持フレーム5は、スイングフレーム2の揺動方向とは異なる方向へ揺動可能にスイングフレーム2に取り付けられればよい。
【0028】
また、ガイド支持フレーム5の枠体5aの前後、左右とスイングフレーム2の枠体2aとの間の四箇所にはそれぞれ第二ジャッキJ2が介装されている。これら第二ジャッキJ2は、枠体5aに対してガイド支持フレーム5の前後方向へ揺動可能に取り付けた螺子軸と、螺子軸に螺合するナットと、ナットを軸周りに回転可能且つ揺動可能に保持するナットをスイングフレーム2の枠体2aに連結するブラケットB3とを備えている。よって、ナットを螺子軸に対して回転させると、送り螺子機構の要用で螺子軸の揺動支点とナットとの距離が変化してガイド支持フレーム5を第二ブラケットB2のヒンジ結合点を中心にスイングフレーム2に対して前後方向へ揺動させ得るとともに、所望する位置でガイド支持フレーム5の姿勢を固定できる。なお、螺子軸をスイングフレーム2に、ナットおよびブラケットB3をガイド支持フレーム5に取り付けて、第二ジャッキJ2をスイングフレーム2とガイド支持フレーム5との間に介装してもよい。
【0029】
ガイド支持フレーム5の枠体5aには、図4に示すように、一対のガイドレール3,3が台車1の進行方向に対して左右方向に沿ってガイド支持フレーム5上に互いに平行に配置されて取り付けられている。各ガイドレール3,3は、共に、チャンネル状のアウターレール3Aと、アウターレール3Aの左右両側の内周に移動自在に挿入したインナーレール3B,3Bとで構成されている。なお、図4では、他部の構造の理解を容易にするために、図中で手前側に記載されたガイドレール3については、途中からその図示を省略している。
【0030】
このようにガイドレール3は、アウターレール3Aと、一対のインナーレール3B,3Bとで構成されており、必要に応じて、インナーレール3B,3Bをアウターレール3Aから突出させたりアウターレール3A内に収納したりすることができる。そして、アウターレール3Aの左右方向長さは、本実施の形態の場合、隣の軌道を走行する列車と干渉しない長さとなっており、移動足場を軌道Lに沿って移動させる際には、インナーレール3B,3Bをアウターレール3A内に最大限に収納すれば狭いトンネル内でも自由に走行できるとともに、隣の軌道Lを走行する列車等の操向を邪魔しない。
【0031】
また、各ガイドレール3,3におけるインナーレール3Bの先端には、アウトリガー4が設けられている。アウトリガー4は、インナーレール3Bの先端に取り付けたブラケット4Cと、ブラケット4Cに対して上下方向にスライド自在に取付可能な多孔を備えた支柱4Aと、支柱4Aの下端に伸縮自在に取付けたスイベルジャッキ4Bとを備えている。よって、アウトリガー4は、支柱4Aをブラケット4Cに任意の位置で固定して、全長を段階的に調節できるとともにスイベルジャッキ4Bで全長を微調整できる。
【0032】
アウトリガー4を伸縮させて軌道Lの両側の地面に接地すると、ガイドレール3,3上を移動する第一昇降足場A1と第二昇降足場A2の配置状況によって、左右方向の重量バランスに偏りがあっても移動足場の転倒を防止でき、作業者は安全にメンテナンス作業を行い得る。
【0033】
そして、進行方向である前後方向に傾斜した坂道に敷設された軌道Lや、左右方向に傾斜した坂道に敷設された軌道L上に台車1を停止させる場合、上記の第一ジャッキJ1および第二ジャッキJ2を操作して、スイングフレーム2とガイド支持フレーム5を傾斜に合わせて姿勢を調節すれば、ガイドレール3,3を水平姿勢に維持できる。
【0034】
たとえば、台車1を左下がりの傾斜地に敷設された軌道Lに停車させる場合、左側二本の第一ジャッキJ1のブラケットB4(図5参照)を上昇させつつ、右側の二本の第一ジャッキJ1のブラケットB4を下降させると、第一ブラケットB1を支点にしてスイングフレーム2が搖動し、ガイドレール3を水平姿勢で固定できる。
【0035】
同じく、台車1を進行方向に前側に傾斜した傾斜地に敷設された軌道Lに停車させる場合は、前側二本の第二ジャッキJ2の螺子軸を上昇させ、後側二本の第二ジャッキJ2の螺子軸を下降させると、第二ブラケットを支点してガイド支持フレーム5が搖動してガイドレール3を水平姿勢で固定できる。
【0036】
台車1を進行方向の前後左右に複合して傾斜する傾斜地に敷設された軌道Lに停車させる場合には、それぞれ、傾斜に応じて、第一ジャッキJ1と第二ジャッキJ2の操作によってスイングフレーム2とガイド支持フレーム5を揺動させて、ガイドレール3,3を水平姿勢にして固定すればよい。
【0037】
このように、第一ジャッキJ1と第二ジャッキJ2は、固定装置を構成しており、スイングフレーム2とガイド支持フレーム5の揺動と固定が可能であって、これによってガイドレール3,3の姿勢の調整と固定が可能である。
【0038】
第一昇降足場A1と第二昇降足場A2は、共に、走行フレーム7と、足場台24と、走行フレーム7と足場台24との間に介装されるシザースリンク9を有する昇降機とを備えている。第一昇降足場A1は、ガイドレール3,3の図1中右側に配置されるインナーレール3B上を走行し、第二昇降足場A2は、ガイドレール3,3の図1中左側に配置されるインナーレール3B上を走行する。よって、第一昇降足場A1は、図1中右側のインナーレール3B上を走行することで図1中左右方向へ移動でき、第二昇降足場A2は、図1中左側のインナーレール3B上を走行することで図1中左右方向へ移動できる。さらに、インナーレール3Bは、アウターレール3Aに対して図1中左右方向へ移動できるので、インナーレール3Bをアウターレール3Aに対して移動させても第一昇降足場A1と第二昇降足場A2は、図1中左右方向へ移動できる。
【0039】
走行フレーム7は図7図8に示すように、矩形の本体枠7aと、本体枠7aの四隅に設けられてガイドレール3,3におけるインナーレール3B上を走行する四つの車輪11と、走行フレーム7の進行方向に対して前側の左右輪11,11と後側の左右輪11,11をそれぞれ連結する車輪ドライブシャフト14と、各車輪ドライブシャフト14に回転動力を伝達する減速機16と、減速機16に連結されて外部からの回転動力を減速機16に入力するハンドルHとを備えている。
【0040】
図示はしないが、各車輪ドライブシャフト14の中央には、車輪ドライブシャフト14に連結されるべベルギアと、このべベルギアに歯合する駆動側べベルギアとを備えたギアボックス18,18が設けられている。そして、ギアボックス18,18の駆動側べベルギアは、メインドライブシャフト13を介して減速機16の出力軸に連結されている。
【0041】
減速機16は、詳しくは図示しないが、入力軸に連結されるウォームとウォームに歯合するとともに出力軸に連結されるウォームホイールとで構成されており、出力軸がメインドライブシャフト13に連結されている。また、減速機16の入力軸は、ハンドルシャフト12に連結されており、ハンドルシャフト12の先端は本体枠7aの側方へ突出しており、その先端にハンドルHが装着されている。
【0042】
よって、ハンドルHを作業者が回転操作すると、回転動力が減速機16を介して車輪ドライブシャフト14,14に伝達して車輪11,11が回転駆動される。これによって、走行フレーム7は、ガイドレール3,3上を走行でき、減速機16を介しているので、作業者は小さな力で重量物である第一昇降足場A1および第二昇降足場A2を移動させ得るので作業者の負担が軽減される。また、全車輪11を一つのハンドル操作で駆動できるので、第一昇降足場A1および第二昇降足場A2を確実にガイドレール3,3に沿って移動させ得る。
【0043】
なお、第一昇降足場A1と第二昇降足場A2を移動させる具体的な構造は以上に限定されるものではなく、モータ等のアクチュエータを利用して移動させるようにしてもよい。
【0044】
また、車輪11は、図9に示ように、ハウジング10内に収められており、ハウジング10の端部には転倒防止用のフランジ15が設けられている。このフランジ15は、図7図9に示すように、レール3の両側に張り出す断面L字状の板からなり、第一昇降足場A1および第二昇降足場A2がガイドレール3,3上を移動する際に車輪11のガイドレール3からの脱輪を防止する。
【0045】
つづいて、昇降機は、シザースリンク9と、走行フレーム7に取り付けるリンク取付けフレーム8と、シザースリンク9の基端の一方を軸支してリンク取付けフレーム8に固定するブラケット20Aと、シザースリンク9の基端の他方を軸支するとともにリンク取付けフレーム8に対してスライド自在に取り付けた連結フレーム19と、連結フレーム19に回転自在に螺合した螺子ロッド17と、螺子ロッド17を回転駆動可能なモータMとを備えている。
【0046】
シザースリンク9は、図1,2に示すように、互いに中央でヒンジ結合されるリンク9A,9b同士を多段にヒンジ結合によって積層した構造となっており、最下段のリンク9A,9Bの基端を接近させると伸長し、反対に最下段のリンク9A,9Bの基端を離間させると収縮するようになっている。
【0047】
次に、リンク取付けフレーム8は、図7図10に示すように、矩形の枠体とされており、一方のリンク9Aの基端を軸支するブラケット20Aが取り付けられている。また、他方のリンク9Bの基端は、フランジ状のブラケット21とブラケット21に取り付けた軸22を備えた連結部材20を介して連結フレーム19に連結されている。連結フレーム19は、リンク取付けフレーム8内で図10中左右方向にスライド自在に挿入されており、図示はしないが、螺子ロッド17が螺合するナットを備えている。そして、シザースリンク9の先端には、足場板24Aと巾木と手摺24Bとで構成される足場台24が取り付けられている。
【0048】
また、リンク取付けフレーム8内には、一対の螺子ロッド17を回転自在に軸支する梁材23が架け渡されており、各螺子ロッド17は、本実施の形態では、梁材23に取り付けられたモータMに減速機29を介して連結されておりモータMによって同期して回転駆動される。
【0049】
この為、モータMを正転駆動すると、一対の螺子ロッド17、17が同期して回転し、送り螺子の要領で連結フレーム19が例えば点線で示す位置に引き寄せられ、その結果連結部材20を介してリンク9A,9Bの基端が水平に引き寄せられ、シザースリンク9が図2に示すように点線の位置から実線の位置に伸長し、足場台24を上昇させる。反対に、モータMを逆転駆動すると、連結フレーム19が梁材23から離間して、シザースリンク9を収縮させて足場台24を下降させ得る。よって、モータMの駆動によって足場台24を昇降させ得るので、作業者の負担が軽減される。なお、螺子ロッド17は、露出していると埃の付着によって動きが渋くなったり、水の付着によって錆びたりする場合もあるので、蛇腹状のダストブーツ25によって保護されている。また、螺子ロッド17がダストブーツ25によって覆われるので、作業者が誤って駆動中の螺子ロッド17に触れてしまうことも阻止できるので、作業者の安全が図られる。なお、図に示したところでは、理解を容易にするために、螺子ロッド17の一方についてダストブーツ25の記載を省略している。
【0050】
このように本発明の移動足場は、台車1と、台車1上に搖動自在に取付けたスイングフレーム2と、スイングフレーム2上にスイングフレーム2とは異なる方向へ搖動自在に取付けたガイド支持フレーム5と、ガイド支持フレーム5上に取付けた平行配置される一対のガイドレール3,3と、各ガイドレール3,3の姿勢を固定する第一および第二ジャッキ(固定装置)J1,J2と、ガイドレール3,3に沿って移動可能であるとともに昇降可能な第一昇降足場A1と第二昇降足場A2とを備えている。
【0051】
このように構成された移動足場では、ガイドレール3,3上を移動ソウル第一昇降足場A1と第二昇降足場A2を備えているので、トンネルの天井付近の内壁面にパネルを張り付ける補修作業を行う際に、足場の水平を確保しつつ二つの昇降足場A1,A2に登場する作業者がパネルを支えて作業をできるようになるので、移動足場以外に仮設足場を設置する必要が無くなる。したがって、本発明の移動足場によれば、メンテナンス作業が容易となるとともに、作業時間も短縮できる。
【0052】
また、移動足場によれば、昇降足場が二つあるので、パネルの内壁への設置作業以外でも、第一昇降足場A1と第二昇降足場A2を利用して、トンネル内の離れた箇所の内壁及び側壁の構築、修理、補強、点検作業を同時に行うこともでき、作業のスピードアップを図れる。また、第一昇降足場A1および第二昇降足場A2には、それぞれ、独自に足場板24Aを水平に保つ機構も不要であるので、装置全体も安価となる。
【0053】
更に、第一昇降足場A1および第二昇降足場A2は、ガイドレール3,3に沿って移動できるので、それぞれの第一昇降足場A1および第二昇降足場A2を任意の高さに設定している状態で側壁の工事個所にも近づけることが出来る。
【0054】
また、本実施の形態の移動足場では、ガイド支持フレーム5は、スイングフレーム2と異なる方向へ揺動可能となっており、スイングフレーム2が台車1に対して前後方向或いは左右方向へ揺動自在に取り付けられており、ガイド支持フレーム5は、スイングフレーム2に対してスイングフレーム2の前後方向或いは左右方向の一方へ揺動自在に取り付けられるとともに、ガイドレール3,3は、台車1の進行方向に対して左右方向に沿ってガイド支持フレーム5に取り付けられている。つまり、スイングフレーム2とガイド支持フレーム5の揺動方向は互いに直交する方向となっており、ガイドレール3,3は、スイングフレーム2或いはガイド支持フレーム5の一方の揺動方向に沿って取り付けられているので、台車1が傾斜地に停車された際にガイドレール3,3を水平にしやすく作業負担が軽減される利点がある。
【0055】
また、本実施の形態では、固定装置は、台車1とスイングフレーム2との間に介装されてスイングフレーム2を台車1に対して揺動および固定可能な第一ジャッキJ1と、スイングフレーム2とガイド支持フレーム5との間に介装されてガイド支持フレーム5をスイングフレーム2に対して揺動および固定可能な第二ジャッキJ2とを備えている。このように構成された移動足場では、スイングフレーム2の揺動と固定を同時に行えるとともに、ガイド支持フレーム5の揺動と固定を同時に行えるので、作業者の作業負担が軽減される。なお、固定装置は、上記したところでは、螺子軸とナットとでなる第一ジャッキJ1と第二ジャッキJ2とで構成されているが、固定装置は、油圧ジャッキ、油圧シリンダや電動シリンダ等で構成されてもよい。
【0056】
さらに、本実施の形態では、ガイドレール3,3は、台車1に連結されるチャンネル状のアウターレール3Aと、アウターレール3Aの左右両側の内方にそれぞれ移動自在に挿入される一対のインナーレール3B,3Bと備えている。このように構成された移動足場によれば、移動足場の移動時にはアウターレール3A内にインナーレール3B,3Bを収容して左右方向幅をコンパクトにして狭いトンネル内や隣接する軌道Lの走行車両の邪魔をせずに移動でき、メンテナンス作業時には左右方向幅を長くして幅が広いトンネルの内壁のメンテナンス作業にも対応できる。
【0057】
また、第一昇降足場A1と第二昇降足場A2は、ガイドレール3,3を走行する走行フレーム7と、足場台24と、走行フレーム7と足場台24との間に介装されるシザースリンク9を有する昇降機とを備えているので、収縮時には全高を非常に低くできるとともに伸長時には全高を非常に高くできるので、高所作業を行えるだけでなく低所作業も可能となる。
【0058】
さらに、本実施の形態の移動足場では、走行フレーム7は、矩形の本体枠7aと、本体枠7aの四隅に設けられてガイドレール3,3を走行可能な四つの車輪11と、ガイドレール3,3に対して前側と後側の左右車輪を連結する一対の車輪ドライブシャフト14と、各車輪ドライブシャフト14に回転動力を伝達する減速機16と、減速機16に連結されて外部からの回転動力を減速機16に入力するハンドルHとを備えている。このように構成された移動足場によれば、作業者は小さな力で重量物である第一昇降足場A1および第二昇降足場A2を移動させ得るので作業者の負担が軽減され、全車輪11を一つのハンドル操作で駆動できるので第一昇降足場A1および第二昇降足場A2を確実にガイドレール3,3に沿って移動させ得る。
【0059】
また、本実施の形態の移動足場では、昇降機は、シザースリンク9と、走行フレーム7に取り付けるリンク取付けフレーム8と、シザースリンク9の基端の一方を軸支してリンク取付けフレーム8に固定するブラケット20Aと、シザースリンク9の基端の他方を軸支するとともにリンク取付けフレーム8に対してスライド自在に取り付けた連結フレーム19と、連結フレーム19に回転自在に螺合した一対の螺子ロッド17,17と、螺子ロッド17,17を回転駆動可能なモータMとを備えている。このように構成された移動足場によれば、シザースリンク9を伸縮させる連結フレーム19が一対の螺子ロッド17,17によって平行に移動するので、シザースリンク9が円滑に伸縮できる。
【0060】
そして、本実施の形態の移動足場では、上記ガイドレールの両端にアウトリガーを備えているので、ガイドレール3,3上を移動する第一昇降足場A1と第二昇降足場A2の配置状況によって、左右方向の重量バランスに偏りがあっても移動足場の転倒を防止でき、作業者は安全にメンテナンス作業を行い得る。
【0061】
なお、本実施の形態では、台車1に対してガイドレール3,3が左右方向に沿って設けられており、台車1に対して旋回できない構造となっているが、台車1とスイングフレーム2との間、或いは、ガイド支持フレーム5とガイドレール3,3との間に旋回台を設けて、ガイドレール3,3の旋回を許容してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1・・・台車、2・・・スイングフレーム、3・・・ガイドレール、3A・・・アウターレール、3B・・・インナーレール、4・・・アウトリガー、5・・・ガイド支持フレーム、7・・・走行レール、7a・・・本体枠、8・・・リンク取付けフレーム、9・・・シザースリンク、11・・・車輪、14・・・車輪ドライブシャフト、16・・・減速機、17・・・螺子ロッド、19・・・連結フレーム、20A・・・ブラケット、24・・・足場台、A1・・・第一昇降足場、A2・・・第二昇降足場、H・・・ハンドル、J1・・・第一ジャッキ(固定装置)、J2・・・第二ジャッキ(固定装置)、M・・・モータ
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